『 道は続く 』

NPO 法人イルファー会報
第 6 号 2015 年 1 月
ジャンボ
Jambo
ジャンボはスワヒリ語で『こんにちは』
『
道 は続 く
』
で噂は広がっている。
一方、診療に意欲的な医療従事者からはコメ
イルファー副理事長
稲田
ントに沿った診療が始まっている。副作用が
頼太郎
出現したための薬剤の変更、服薬が失敗した
ケニアに移り住んで、5年近くが経とうとし
例ではウイルス量測定、更には遺伝子耐性検
ている。
査に基づく薬剤の変更等、コメントに沿った
ここでの我々の活動の目的は HIV 感染者、
診療がなされ、エイズ医療のあり方を意欲的
患者そして彼らを診療するケニア人医療従事
に吸収しようとする姿勢がうかがえるように
者にエイズ医療のあるべき姿を浸透させ、薬
なってきている。症例の類似する患者が医療
剤の真の恩恵を受けられるべくその強化を図
施設から送られてくるようになったことから
ることである。
もその意欲がうかがえる。
我々の診療所兼事務所を訪れる患者に対
それでも、我々のコンサルテーションコメ
しては、経過観察の状況を検査記録等から説
ントを必要としない(?)施設もある。その
明し、病勢(慢性病の一つとなったこの感染
施設から我々のところに来ている患者の病勢
症)への理解を深めることで、服薬の失敗を
を調べてみると、経過が順調である場合が多
減少させ、数少ない薬剤を長期にわたり服薬
い。あるいは医療従事者と患者の部族の違い
できるよう指導している。一方、患者が通う
による医療差別が見え隠れする施設もある。
医療施設の医療従事者に対しては、薬剤の副
現在はナイロビ市内にある医療施設を対
作用、服薬の失敗等に関する検査結果をもと
象として上述の活動を行っている。来年度は
に、その後の薬剤の変更をも含むベストな治
ナイロビ市から少し離れた地域にもこの活動
療方針を記したコンサルテーションコメント
を広げようと計画していた矢先、我々の活動
を患者を通じ提供する。それによって、医療
がある地方選出国会議員の目にとまった。昨
従事者への最新情報の伝達、個々の症例に適
年5月のことであった。初面談の当日、1時
したエイズ医療の在り方の教育を行っている。
間ほど話をすると、突然、“今から我々のと
言い換えればコンサルテーションクリニック
ころを見に来てくれ”とのこと。あっけにと
である。
られる暇もなく、車で小一時間、田園の広が
このプログラムに参加する患者全員が、現
るリムルという町についた。まったくもって
医療施設との大きな違いを感じている。そし
のどかな地方である。このことがきかっけで、
て、経過観察の必要性、決まった時間に服薬
この地区の診療施設から患者が来診するよう
することの重要性を認識し、自身の健康体を
になった。良好な経過をたどる患者や、どう
考えるようになってきている。さらに口コミ
なっているのかさっぱりわからないという患
-1-
者までやってくることになった。さらに20
15年には無料診療の開催まで依頼され、プ
ムワニ村9月時無料診療
に参加した先生方全員で
この地方の視察を行った。
リムルの長閑な風景
た。コンサルテーション
クリニック、さらに地域
パブリックヘルスセンター
住民対象の無料診療が
広がりを見せそうだ。
このケニアでの活動を陰から日向から支
視察中
視察 中
援していただいている多くの企業、団体、個
全員一致で開催へ向けた意見が出た。
人、そして戦士たちのおかげである。
この国会議員の目にとまったことが、そし
て現地の対応が、今後のナイロビから少し離
Y. Inada
ナイロビにて
れた地域への活動拡大につながる確信を持っ
導火線は
導火線は燃えだした
イルファー理事長
山下 潔
ナイロビ・プムワニ村の診療所兼事務所で、稲田は現在 142 名(男性 38 名、女性 104 名)の
HIV 患者のフォローアップをしている。
彼らに NPO 法人イルファーの活動に対するアンケートを実施した。
Q1:イルファーの活動をどう思いますか。
Q2:イルファーが行っている経過観察は貴方
の病勢把握・治療に重要と思いますか。
2%
0%
25%
73%
100%
非常に良い
普通
非常に悪い
良い
悪い
はい
-2-
いいえ
Q4:検査間隔はどうですか
Q3:Q2 で「はい」と答えた方に伺います。
イルファーのコンサルテーションは貴方およ
び貴方の治療に役に立っていますか。
14%
1%
21%
12%
67%
85%
非常に役立っている
適切
短すぎる
長すぎる
役立っている
無回答
Q5:何が役に立っていますか(複数回答可)
(ア) コンサルテーション及びコメント:137 名
(イ) 血液生化学検査
:135 名
(ウ) 血球検査
:131 名
(エ) CD4 陽性細胞数 検査
:136 名
(オ) ウイルス量検査
:131 名
(カ) 薬剤耐性検査
: 31 名
NPO 法人イルファーは
HIV 感染者・患者に自分たちが受けるべき医療がどんなものかに気づいて貰い、そのような医
療を受けたいという気持、
HIV 感染者・エイズ患者を治療する医療従事者に、あるべき医療を理解させ、そのような治療
を実施できるように医療体制を改善したいという気持
に火を点ける活動を行っている。
その火が燃え上がり、ケニアの医療体制の改善に繋がることを望んでいる。
具体的には、HIV 感染者・患者の的確な病勢を把握するため、必要に応じた無料定期検査を実
施し、個々の患者に対して作成しているコンサルテーションシートをもとに、病勢を説明する
中で、エイズ治療のあり方への理解度を高めている。
また、コンサルテーションシートを手渡すことで、患者、感染者を治療している医療機関の医
療従事者の心にも火を点けている。
稲田副理事長の弛み無い努力の結果、導火線は既に燃え始めている。
-3-
プムワニ便り
10 月 26 日
五十嵐 真希
「 ナゼそこに?
ナゼそこに ? 日 本 人 」
そして、
「特報」です。
今週は、テレビ東京の番組「ナゼそこに?日本人」
晴天の日曜日。
の制作チームが、稲田先生の密着取材のためナイロ
今日は、非常に暑い! ケニアの小雨季は、あまり
ビに登場です。今日は、給食サービスの様子の撮影
雨量に期待ができなさそうです。
のため、スーパーマーケット「UCHUMI」での買い
ということは、
「干ばつ」の可能性もでてきて、北部
物の様子から、プムワニでの配達まで、ディレクタ
の遊牧民族間の牛の奪い合いが始まる・・・。
ーの徳永さん、
アシスタントディレクターの孫さん、
干ばつも洪水も、ケニアでは大きな問題です。
そして、
カメラマンの佐野さんが同行しました。 プ
ムワニでは、たくましいママ・マジワ、そして、元
気な子供たちに囲まれ、稲田先生へのインタビュー
や撮影が、楽しく、順調に行われました。どんな番
組になるのか、今から楽しみです。そして、少しで
も多くの方々に、イルファーの活動やナイロビのス
ラムの様子が伝わってくれればいいなぁと思います。
アサンテ&クワヘリ!
まき
さて、今月の配達は、お米50キロ、食用油10リ
ットル、木炭2袋です。10月の子供たちの数は、
一日平均58人(男子27人、女子31人)と、ま
12 月
“Happy Holidays from Pumwani!”
た、数が増えてきています。どうやら、ナイロビで
も干ばつ、物価高騰の影響が、最貧困層のお財布に
12 月。
影響がでているようです。学校給食は、月200ケ
師走とはよく言ったもので、年末にむけて、皆が走っ
ニアシリング(250円)の支払が必要です。しか
ています。
し、日本人にとっては少額に思える、この費用を払
ナイロビは、すっかりクリスマスモードで、大きな
えない子供たちが沢山います。その子供たちは、学
モールでは、クリスマスツリーやイルミネーション
校へ行けず、イルファーの給食の恩恵にあずかって
がキラキラしています。宗教は関係なく、なんとな
いるということです。厳しい現実です。
-4-
くウキウキする季節です。
木炭は、いつものように 2 袋。状況に応じて、今後、
しかし!ナイロビでは、
あまりウキウキしすぎると、
増量も検討します。今後足りない分は、他の団体よ
引ったくりや強盗に、大きなプレゼントをしかねま
り支援をしてもらうよう、ママ・マジワが交渉予定
せんので、
要注意! 更に、
忘年会
(End of Year Party)
です(がんばれ!)
。年末年始は、故郷に帰る人たち
や卒業式、田舎に帰るバスの群れで、ナイロビ市内
も多く、ナイロビもプムワニも、少し静けさがやっ
の交通は完全マヒ状態。 昨日は、タクシーを呼ん
てきます。治安も落ち着くことを願います。
でから3時間たっても、やってきませんでした。
(と
さて、
12月の子供たちの数は、
少ない日で45名、
ほほ)
多い日は70名とばらついていました(平均一日6
1人;男子30人、女子31人)
。それでも、ママ・
マジワは、いつものように子供たちへのお昼ごはん
の支度を大汗かきながらしてくれます。感謝!
老若男女、貧富を問わず、楽しい平和なクリスマス
とお正月がみなさんのもとへやってきますよう
に・・・
そして、今日は、2014年最後の食材配達の日で
す。
夏が近づいているケニアでは、
強い太陽の光と、
埃まみれです。限りない乱暴運転の車の渋滞を潜り
抜け、稲田先生とともに、食材配達を行いました。
残念なことに、週末を担当してくれていた団体がサ
ポートを中止してまったとのことで、今回より、お
Happy Holidays!
米60キロ、食用油13リットルにふやしました。
まき
TV 放映されます
テレビ東京
月曜夜 9 時 )でナイロビの
でナイロビの稲田
テレビ 東京 「 世界 ナゼそこに日本人
ナゼそこに 日本人 」 (月曜夜
でナイロビの 稲田 の 活
動 が 紹介 されます。
されます 。
3 月放映予定、
月放映予定 、 詳細 は 決 まり次第
まり 次第ホームページでお
次第 ホームページでお知
ホームページでお 知 らせします。
らせします 。
お 楽 しみに!
しみに !
-5-
第23回無料診療キャンプ
回無料診療キャンプ報告
回無料診療キャンプ報告
2014年9月
月13日~22日
はじめに
本年の第 23 回無料診療は、
私も含め日本人総勢 15 名、
現地 ILFAR-Kenya スタッフ 3 名
(Ali Wembe,Joseph
Wambogo,Denis Oduor(検査技師))、現地非医療従事者ボランティア
現地非医療従事者ボランティア 18 名、合計 36 名体制で臨んだ。
北海道釧路市から宮城島拓人先生(釧路労災病院内科、 月時キャンプ連続 14 回参加)
北海道釧路市から宮城島拓人先生(釧路労災病院内科、9
小田寿先生(釧路労災病院内科、初参加)
大坪誠治先生(釧路労災病院口腔外科、初参加)
薬剤師の髙橋道生先生 (釧路労災病院、初参加)
鍼灸師の原田大祐先生(釧路市鍼灸医院勤務、初参加)
札幌から安藤佐知子先生(札幌市手稲渓仁会医療センター、初参加)
東京からは小児科医の堀越裕歩先生(東京都立小児総合医療センター感染症科、初参加)
薬剤師の青山寿美香先生(大森赤十字病院勤務、昨年に続く 2 回目参加)
鍼灸師の石島裕太先生(東京、初参加)
関西からは村上義郎先生(神戸大学医学部付属病院
神戸大学医学部付属病院 感染症内科、初参加)
浅川俊先生(神戸大学医学部附属病院感染症内科、初参加)
、初参加)
歯科衛生士の濱村千晶さん(大阪市名取病院歯科口腔外科、初参加)
濱村千晶さん(大阪市名取病院歯科口腔外科、初参加)
一方、現地ケニアからは、日本赤十字社からケニア赤十字社に出向派遣されている五十嵐真希さん
現地ケニアからは、日本赤十字社からケニア赤十字社に出向派遣されている五十嵐真希さん(も
ともと薬剤師)、三木将さん(ナイロビ現地の医療施設でボランティア研修を終え、初参加
三木将さん(ナイロビ現地の医療施設でボランティア研修を終え、初参加)の参加であ
る。
NPO 法人イルファー副理事長 稲田頼太郎
-6-
診療いろいろ
★ HIV 診療
コンサルテーションクリニックの患者に対して、通常は出来ない歯科と鍼灸医療による特別
通常
1 日診療で
ある。歯科では 10 名の患者に対する抜歯処置(計 14 本の抜歯)、鍼灸科では 23 名の患者が針治療、
灸治療を受けた。
★ 一般成人診療、一般小児診療
一般内科受診者は成人 1431 名、小児 562 名、合計 1993 名。後述する歯科、鍼灸科をあわせると 2390
名にのぼる。
一般成人では、筋肉痛、下腿部関節痛、腰痛、呼吸器疾患,消化器症状。
スラム地区住民の生活環境(排気ガスによる大気汚染や公衆トイレ)
や生活習慣(家屋、寝具、食材(Helicobacter
Helicobacter Pylori??))による症
Pylori
状が主訴である。
またその他の診断として、乳がん、食道カンジダ症、膵炎、癲癇、ゴ
イター、ガウト、心臓疾患が診断されている。
一方小児科では寄生虫感染症、腹痛、下痢、鼻炎、上部気道
寄生虫感染症、腹痛、下痢、鼻炎、上部気道炎、
炎、咳、
炎、
発熱等の診断で全体の 70%を超えていた。
★ 歯科診療
5 日半の診療で合計 86 名の患者に対し抜歯を主とする治療を行った。抜
歯数はなんと 108 本に及んだ。
★ 薬剤科
処方箋の枚数は 5 日半で
1971 枚、一日平均 358 枚、
もし薬剤科一人なら処方箋
を受け取ってから 1 分間で患者に渡さなければならない。
★ 鍼灸診療
受診者数は 5 日半で合計 311
名。 ケニア人のは鍼灸を
は鍼灸をまったく怖がらない。
腰痛が全体の約 40%を占めており、特に女性の体重過多が気になる。住民
%を占めており、特に女性の体重過多が気になる。住民
の生活環境、食の環境が大きく影響していると思われる。
★ HIV 抗体及びその他検査のカウンセリング
成人科ブースで一通りの診断がつき、
処方箋を書き終わったところで、受診者に抗体検査の希望を聞く。
1431 名中 202 名(女性 133 名、男性 69 名)の希望者があり、検査の
名)の希望者が
結果、女性 6 名(5%)、男性 5 名(7%)が陽性であった。
抗体陽性が判明した受検者は後日事務所来診の予約を取り、血球検査、
血液生化学検査、更に免疫担当細胞数(CD4 陽性細胞)の測定を行っ
陽性細胞)
た。来診した 5 名の中にはすでに治療開始しなければならないほど
CD4 陽性細胞の低下を示した者が 3 名いた。
-7-
イルファー2014
年度の活動報告
イルファー
6 月 『ジャンボ 5 号』の発行
7 月 5 日 フリーマーケットに出店
7 月 12 日 日本赤十字社東アフリカ地域代表 五十嵐真希さんによる講演会「ケニア地域
保健強化事業」を聴講(環境科学セミナー、北里大学)
9 月 13 日~22 日 第 23 回無料診療キャンプの実施
11 月 30 日 稲田副理事長を囲む会を開催(現地の状況等について講演の後、質疑応答)
12 月 20 日 第8回イルファーを知ってもらう会&チャリティーコンサート(弦楽合奏お
よびケニア紅茶の試飲と販売、バザー)
NPO 法人イルファーとは
会 員 募 集
入会申込書をお送りします。ご連絡ください。
入会申込書はホームページから印刷もできます。
個人会員
正会員
米国のイナダ-ラングエイズ研究財団(ILFAR)の
全活動を引き継ぎ、2011 年 10 月 7 日に設立
設立しまし
設立
た。
賛助会員
入会金
年会費/1口
入会金
年会費/1口
3,000円
3,000円
1,000円
1,000円
目的は、ケニアにおける
HIV/AIDS モデル医療体
目的
制の構築し、患者のフォローアップを継続・拡大
し、その資料をもとに現地医療施設へ真のエイズ
医療のあり方の浸透を図ることで、ケニアの
HIV/AIDS 患者へエイズ医療の恩恵を提供すると
ともに、広く国内外(主に日本国、ケニア共和国)
の一般市民及び医療従事者の、HIV/AIDS への理解
を深めることです。
団体会員
正会員
賛助会員
入会金
年会費/1口
入会金
年会費/1口
10,000円
10,000円
5,000円
5,000円
寄付だけでもお受けいたします
ゆうちょ銀行での入金は、
口座名
NPO 法人イルファー
入金口座番号 0016000160-7-652003
ケニアでの活動
モデル医療体制の構築活動
無料診療キャンプ
子供の生活支援活動及び教育支援活動
HIV/AIDS に関する学びの場、活動の場の提供
他の金融機関からゆうちょ銀行への振込は、
ゆうちょ銀行 9900
店番
019
店名
〇一九店
預金種目
当座
口座番号
0652003
日本での活動
HIV/AIDS に関する教育活動、啓発活動
会報の発行
知ってもらう会&チャリティーコンサート
支援の呼びかけ
銀行振込みは
銀行名
三菱東京 UFJ 銀行八王子支店
口座番号
普通口座 0245769
口座名
特定非営利活動法人イルファー
です。よろしくお願いします。
特定非営利活動法人イルファー 発行人 山下 潔
〒192-0023 東京都八王子市久保山町 1 丁目 9 番地 18
TEL:
: 042-691-9755
Home Page : http://inadaetal.wordpress.com/
E-Mail: [email protected]
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