26年度改定で導入された休日・時間外・深夜加算

26年度改定で導入された休日・時間外・深夜加算について
日本胸部外科学会 診療問題委員長 ・ 東京医科歯科大学 心臓血管外科
荒井 裕国
疑義解釈資料
厚生労働省保健局医療課 2014年11月5日
【処置・手術】
(問2)
処置の通則5及び手術の通則12に掲げる休日加算1、時間外加算1及び
深夜加算1の施設基準通知に、
「当直等を行った日が年間12日以内であること。」
とあるが、12日とは、診療科単位と考えて良いか。
(答)
診療科単位ではなく、届出を行った診療科全体の合計で12日以内である
必要がある。
ただし、本事務連絡の発出時点で既に届出している医療機関にあっては、
平成26年12月までの期間については、診療科単位で年間12日以内であれ
ばやむを得ないものとする。
日本胸部外科学会による緊急加算に関するアンケート
実施時期 : 2014年9月
対象 :日本胸部外科学会で把握している胸部外科3領域
(心臓血管外科・呼吸器外科・食道外科)の1,499施設
回収率 : 62%(931施設)
日本胸部外科学会による緊急加算に関するアンケート
質問―1 加算について(該当の番号に○をつけてください。)
1.加算がとれている
2.加算がとれる状況にあるが、未だとっていない
3.加算をとれる状況でない
質問―2 施設基準について(該当の番号に○をつけてください)
1.妥当である
2.緩和してほしい
3.より厳しくすべきである
質問―3 加算をとれる状況でない施設にのみ伺います。
施設基準を満たさない項目にチェックをお願いします(複数回答可)。
 予定手術前の当直(緊急呼び出し当番を含む)の免除
 交代勤務制(常勤医師3名以上、夜勤の翌日の日勤は休日、日勤と夜勤を連続させる場合は休
憩を置くこと)
 チーム制(医師5人ごとに1人の緊急呼び出し当番を置き、休日・時間外・深夜の対応を一元化し、
緊急呼び出し当番の翌日は休日)
 時間外・休日・深夜の手術・1000点以上の処置の実施に係わる医師(術者または第一助手)の手
当支給
 採血・静脈注射及び留置針によるルート確保について、原則として医師以外が実施していること
 その他の施設基準
ご意見
胸部外科3領域全体(心臓血管+呼吸器+食道外科)
全施設
(n=936)
加算について
4
0.4%
1.加算がとれている
2.加算が取れる状況にあるが未だとっていない
3.加算がとれる状況でない
4.その他
施設基準について
1.妥当である
2.緩和してほしい
3.より厳しくすべきである
4.その他
大学病院*
(n=165)
1
16.5%2
3
73.6%
9.5%
4
0.4%
1
14%
3
66%
2
19%
3: 1% 4: 1%
3: 1.2% 4: 1.2%
2
70.4%
4
1%
1
35%
1
27.2%
2
63%
一般病院
(n=771)
1
16.9% 2
7.5%
3
75.2%
3
1%
4: 1%
1
26%
2
72%
* 大学病院の分院は一般病院として集計
胸部外科3領域での比較
心臓血管外科
(n=383)
加算について
4
1%
1.加算がとれている
2.加算が取れる状況にあるが未だとっていない
3.加算がとれる状況でない
4.その他(未回答を含む)
施設基準について
1.妥当である
2.緩和してほしい
3.より厳しくすべきである
4.その他(未回答を含む)
1
13% 2
1
20% 2
3
70%
3
1%
呼吸器外科
(n=399)
1
25%
1
32%
2
73%
1
18% 2
3
71%
3
77%
3
1%
2
65%
4
0%
10%
9%
4
2%
食道外科
(n=190)
3
2%
11%
1
24%
2
74%
心臓血管外科領域
全施設
(n=383)
加算について
4
1%
1.加算がとれている
2.加算が取れる状況にあるが未だとっていない
3.加算がとれる状況でない
4.その他(未回答を含む)
施設基準について
1.妥当である
2.緩和してほしい
3.より厳しくすべきである
4.その他(未回答を含む)
4
1%
1
20% 2
3
70%
3
1%
大学病院*
(n=65)
9%
4
2%
3
65%
3
1%
1
32%
2
65%
1
8%
一般病院
(n=318)
4
0%
2
26%
4
2%
3
71%
3 4
1% 2%
1
35%
2
62%
1
23%
2
6%
1
31%
2
66%
* 大学病院の分院は一般病院として集計
呼吸器外科領域
全施設
(n=399)
加算について
1.妥当である
2.緩和してほしい
3.より厳しくすべきである
4.その他
2
73%
9%
3
75%
3
78%
3
1%
1
25%
1
13% 2
15%
10%
3
77%
一般病院
(n=347)
1
10% 2
1
13% 2
1.加算がとれている
2.加算が取れる状況にあるが未だとっていない
3.加算がとれる状況でない
4.その他
施設基準について
大学病院*
(n=52)
2
69%
1
31%
3 4
1% 1%
1
24%
2
74%
* 大学病院の分院は一般病院として集計
食道外科
全施設
(n=190)
加算について
4
0%
1.加算がとれている
2.加算が取れる状況にあるが未だとっていない
3.加算がとれる状況でない
4.その他
施設基準について
1.妥当である
2.緩和してほしい
3.より厳しくすべきである
4.その他
1
18% 2
3
71%
3
2%
大学病院*
(n=54)
11%
1
24%
2
74%
3
59%
1
26%
一般病院
(n=136)
4
1%
3
1%
1
35%
2
63%
2
9%
3
75%
2
15%
3
2%
1
15%
4
1%
1
19%
2
79%
* 大学病院の分院は一般病院として集計
胸部外科3領域全体(心臓血管+呼吸器+食道外科)
1. 予定手術前の当直免除
施設基準を満たさない項目
2.交代勤務制
3.チーム制
4.緊急手術手当の支給
5.医師以外によるルート確保
6.その他の施設基準
加算がとれる状況でない全施設
(n=689)
% 100
80
60
79
86.6
% 100
一般病院
(n=580)
% 100
80.7 81.7
80
70.6
61.5
60
80.7
56
40
20
大学病院*
(n=109)
40
14.1
5.2
0
20
0
1 2 3 4 5 6
80
60
87.6
82.6
78.6
55
40
13.8
0.9
1 2 3 4 5 6
20
14.1
6
0
1 2 3 4 5 6
* 大学病院の分院は一般病院として集計
胸部外科3領域での比較(加算がとれる状況でない施設のみ)
1. 予定手術前の当直免除
施設基準を満たさない項目
2.交代勤務制
3.チーム制
4.緊急手術手当の支給
5.医師以外によるルート確保
6.その他の施設基準
心臓血管外科
(n=267)
% 100
% 100
85.4
80.1
80 71.2
60
80
54.3
40
20
呼吸器外科
(n=309)
60
食道外科
(n=134)
% 100 96.3
90.3
84.1
79.9
0
20
59.5
60
58.2
40
14.9
7.1
0
1 2 3 4 5 6
85.1
80
40
14.2
4.1
89.6
20
12.7
3
0
1 2 3 4 5 6
1 2 3 4 5 6
心臓血管外科
1. 予定手術前の当直免除
施設基準を満たさない項目
2.交代勤務制
3.チーム制
4.緊急手術手当の支給
5.医師以外によるルート確保
6.その他の施設基準
加算がとれる状況でない施設
(n=267)
% 100
80
54.3
40
20
一般病院
(n=225)
% 100
85.4
80.1
80 71.2
60
大学病院*
(n=42)
60
% 100
78.6
66.7 66.7
80
64.3
60
40
14.2
4.1
0
20
0
1 2 3 4 5 6
86.7
82.7
72
52.4
40
9.5
20
0
1 2 3 4 5 6
15.1
4.9
0
1 2 3 4 5 6
* 大学病院の分院は一般病院として集計
呼吸器外科
1. 予定手術前の当直
施設基準を満たさない項目
2.交代勤務制
3.チーム制
4.緊急手術手当の支給
5.医師以外によるルート確保
6.その他の施設基準
加算がとれる状況でない施設
(n=309)
% 100
80
60
% 100
90.3
84.1
79.9
80
59.5
40
20
大学病院*
(n=39)
60
一般病院
(n=270)
% 100
89.7
84.6
79.5
80
61.5
60
40
14.9
7.1
0
20
59.3
40
17.9
20
2.6
0
1 2 3 4 5 6
90.4
84.8
79.3
14.4
7.8
0
1 2 3 4 5 6
1 2 3 4 5 6
* 大学病院の分院は一般病院として集計
食道外科
1. 予定手術前の当直
施設基準を満たさない項目
2.交代勤務制
3.チーム制
4.緊急手術手当の支給
5.医師以外によるルート確保
6.その他の施設基準
加算がとれる状況でない施設
(n=134)
% 100 96.3
89.6
% 100 96.9
81.3
80
71.9
85.1
80
60
58.2
40
20
大学病院*
(n=32)
12.7
3
0
% 100 91.2
80
65.6
60
60
40
40
20
0
1 2 3 4 5 6
一般病院
(n=102)
12.5
20
0
1 2 3 4 5 6
88.2
84.3
52.9
12.7
3.9
0
1 2 3 4 5 6
* 大学病院の分院は一般病院として集計
施設基準非達成率:胸部外科3領域全体
予定手術前の当直免除
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
81%
79%
特に、この項目の達成が厳しいとの意見
が多かった。
人員不足のために、この項目を達成しよう
とすると予定手術が施行できなくなるため
であり、特に地方の病院(大学病院含む)
で影響が出易いと思われた。
その対応策として、
診療科全体で年12回の免除を、回数を
増やすか医師あたりに変えてほしい。
対象から第一助手を外して術者のみとし
てほしい。
等の要望事項が挙げられた。
大学病院
一般病院
施設基準非達成率:胸部外科3領域全体
交代勤務制
100
100
80
60
チーム制
82%
88%
40
80
83%
60
71%
40
20
20
0
0
人員不足のために、夜勤・緊急
呼び出しの翌日を完全に休日に
すると手術のみならず外来業務
等にも支障が生じるために実施
できない。
その対応策として、
夜勤・緊急呼び出しの翌日は、
外来業務なら認める。
術者および第1助手以外であ
れば手術の参加を認める。
休みは半日でも可とする。
大学病院
大学病院
一般病院
一般病院
等の要望事項が挙げられた。
施設基準非達成率:胸部外科3領域全体
手当支給
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
自治体病院などの公的病院では給与支給の条例改正が必要であ
り、現時点で対応できていない。また、手当額の基準が無く、その
支給額は施設間で大きく異なっている。
手当額は適正か?
3万円(東大)、1万5千円、1万2千円、1万円、5千円、千円(国立病
院機構の決定)、医師千円・看護師5百円と様々
62%
55%
手当の多寡は要件には関係ないので、手当の額が僅かであっ
ても基準がクリアされるために施設基準が形骸化し、必ずしも
医師のインセンティブ向上に繋がらない可能性がある。
他科との公平性、公務員の給与格差などの悪平等的考え方が
障害となっている。
病院が得た加算から手当への充当率の指標がない(看護師確
保のため等の他の資金に流用され得るとの懸念の指摘あり)。
手術点数に応じた配分ではない。
手当対象は適切か?
大学病院
一般病院
術者・第1助手のみが対象となっており、MEや看護師、麻酔
科医には配分されない。
施設基準非達成率:胸部外科3領域全体
医師以外によるルート確保
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
この項目は、9割近い施設で達成されている。
しかしながら、
小児病院では、医師がルート確保を
行っており、
例外規定が必要と考えられる。
14%
大学病院
14%
一般病院
総括
今回の診療報酬改訂は、
1)外科医の労務改善とインセンティブの付与で、外科医の労働に対する評価が向上し、
将来的な外科医不足への解消に繋がり得ること
2)定時手術前夜の当直や呼び出し免除により、手術の安全性向上に寄与し得ること
3)加算要件としての施設基準は、過剰労働への歯止め
を意図した政策と解釈される。
しかしながら、今回のアンケート結果より、胸部外科3領域においては、全体の4分の3近
い施設で加算の要件が満たされていないことが明らかとなった。
改訂された加算基準は、医師数が多く重症の少ない診療科にとっては有利であるが、少
ない医師数で地域医療を支えている地方の第一線病院では主にマンパワーの制約から
その導入が難しい。その影響が胸部外科領域で顕著に出ており、約7割の施設が施設基
準の緩和を要望している。
一方で、現状の容認に基づく施設基準の緩和は、病院の増収をもたらすが、現場の労
務環境悪化を招きかねない。
今後、 28年度の保険改訂に向けて、細目の精緻化・手当配分の適正化・例外規定など、
より現実的な視点で施設基準の見直しが必要と考えられる。