調査研究報告書 (平成 26 年度 全国知事会 自主調査研究委託事業) 女性の貧困問題と地方自治体のとるべき施策 神奈川県立保健福祉大学専任講師 平成27年3月 岩永理恵 目次 1. は じ め に ......................................................... 1 2. 貧 困 と い う 概 念 に つ い て ........................................... 3 3. 地 方 自 治 体 は 女 性 の 貧 困 問 題 に い か に 向 き 合 っ て き た か ............... 5 3-1 調 査 方 法 ..................................................... 5 3-2 概 況 ......................................................... 6 1 三 鷹 市 ( 1979)『 50 歳 代 1 人 ぐら し 婦人 の 意 識 と 生 活 実 態 』 ....... 9 2 東 京 都 目 黒 区 ( 1982)『 グ ラ フ でみ る 高 齢 女 性 の 現 状 』 .......... 11 3 名 古 屋 市 市 民 局 ( 1982)『 障 害 を持 つ 女 性 の 生 活 実 態 調 査 』 ...... 12 4 東京都立川社会教育会館(1983) 『婦人教育セミナー報告書:昭和 57 年度』 .. 15 5 横 浜 市 女 性 協 会 ( 1996)『 横 浜 市 女 性 相 談 ニ ー ズ 調 査 報 告 書 : フ ェ ミ ニ ス ト ・ リ サ ー チ の 視 点 か ら』 .................................. 16 6 横 浜 市 市 民 活 力 推 進 局 ・ 横 浜 市 子 ど も 青 少 年 局 ( 2009)『 配 偶 者 等 か ら の 暴 力 ( DV) に 関 す る ア ン ケ ー ト 調 査 及 び 被 害 実 態 調 査 ( 面 接 調 査 ) 報 告 書 ( そ の 1)( そ の 2)』 ..................................... 17 7 川 崎 市 男 女 共 同 参 画 セ ン タ ー( す く ら む 21) ( 2013) 『 女性 の 再 就 職 関 連 事 業 ・ イ ン タ ー ン シ ッ プ 事業 修 了者 追 跡 調 査 報 告 書 』 ............ 18 ま と め ........................................................ 19 3-3 最 近 の 取 り 組 み ............................................. 20 8 財 団 法 人 横 浜 市 男 女 共 同 参 画 推 進 協 会 ( 2009)『 若 年 女 性 無 業 者 の 自 立 支 援 に 向 け た 生 活 状 況 調 査報 告 書』 ............................ 20 9 財 団 法 人 横 浜 市 男 女 共 同 参 画 推 進 協 会 ( 2011)『 男 女 共 同 参 画 セ ン タ ー等における生活困難を抱える若年(シングル)女性の自立支援プログ ラ ム 開 発 事 業 事 業 報 告 書 』 ..................................... 27 10 北 海 道 総 合 研 究 調 査 会( 2012) 『平 成 23 年 度パ ー ソ ナ ル・サ ポ ー ト ・ サ ー ビ ス の 評 価 手 続 き に 係 わる 調 査報 告 書 』 ...................... 34 11 せ ん だ い 男 女 共 同 参 画 財団 編( 2013)『 女 性 の 生 活 状 況 及 び 社 会 的 困 難 を め ぐ る 事 例 調 査 』 .......................................... 41 12 公益財団法人横浜市男女共同参画推進協会(2014) 『ガールズ編しごと準備講座& 『めぐカフェ』就労体験 修了者追跡調査報告書』 『同、結果要約』 ............ 45 3-4 ま と め ...................................................... 50 4. 女 性 の 貧 困 問 題 に 対 す る 国 の 調 査 研 究 .............................. 52 男 女 共 同 参 画 会 議 監 視 ・影 響 調 査専 門 調 査 会( 2009)『 新 た な 経 済 社 会 の 潮 流 の 中 で 生 活 困 難 を 抱 え る男 女 に関 す る 監 視 ・ 影 響 調 査 報 告書 』 .. 52 生活困難を抱える男女に関する検討会(2010) 『生活困難を抱える男女に関する検討会 報告書−就業構造基本調査・国民生活基礎調査 特別集計−』................ 58 5.「 当 た り 前 の よ う に 存 在 し て き た」 女 性 の 貧 困 問 題 ................... 62 5-1 論 文 ・ 雑 誌 記 事 か ら ......................................... 62 5-2 書 籍 か ら .................................................... 74 6. 地 方 自 治 体 の と る べ き 施 策 ........................................ 87 7. 参 考 文 献 ........................................................ 92 別表 全 都 道 府 県 の 男 女 共 同 参画 の所 管 課 、 セ ン タ ー ................... 96 1. は じめ に 本 調 査 研究 の テ ー マは 、 女 性の 貧 困 問 題と 、 こ のこ と に つ いて と るべ き 地 方 自 治体 の 施 策 、で あ る 。こ の テ ー マに 取 り 組む た め に 、ま ず は地 方 自 治 体 が女 性 の 貧 困問 題 に いか に 向 き 合っ て き たか 、 調 査 した 結 果を 述 べ る 。 調査 結 果 か ら明 ら か にな る の は 、率 直 に いっ て 、 地 方自 治 体の 女 性 の 貧 困問 題 に 対 する 関 心 の低 さ で あ る。 こ の 事 実は 、貧 困 問題 の 本 質に 由 来 す る。 「 貧 困と は 格 差 とは 似 て 異な る 言 葉 で 、人 々 の あ る生 活 状 態を 『 あ っ ては な ら ない 』 と 社 会が 価 値判 断 す る こ とで 『 発 見 』さ れ る もの で あ り 、そ の 解 決を 社 会 に 迫っ て いく も の で あ る」( 岩 田 2007: 9)。女 性 の 貧 困問 題 と いう テ ー マ を取 り 上げ る こ と こ そが 、 女 性 の貧 困 問 題を 認 識 す る、 そ し て解 決 へ と 向か う 一歩 な の で あ る。 地 方 自 治 体に よ り 状 況は 異 な るが 、 総 じ て、 そ の 一歩 を 踏 み 出す か否 か 、判 断 を 迫ら れ る 地点 に 立 って い る 。2000 年 代に 入 っ て から 貧 困 問題 が ク ロ ー ズア ッ プ さ れる よ う にな り 、 国 は生 活 困 窮者 支 援 の 枠組 再 構築 を 模 索 し 始め て い る 。地 方 自 治体 は 、 支 援の 実 施 主体 と し て 期待 さ れて いる。 他 方 で 、 女性 が 抱 え る問 題 に 取り 組 ん で きた 人 た ちに と っ て 、女 性の 貧 困 問 題 は、 当 た り 前の よ う に存 在 し て きた 。 こ の認 識 と 地 方自 治 体の こ れ ま で の取 り 組 み との 落 差 は大 き い 。 現在 、 女 性の 貧 困 問 題に 注 目が 集 ま る な かで 、 あ ら ため て ど のよ う な こ とが 提 起 され て い る ので あ ろう か 。 最 近 の関 連 文 献 から 問 題 提起 さ れ て いる 事 柄 を調 査 し た 結果 を 述べ る。 調 査 し た 結果 を 踏 ま え、 6 章 にお い て 、 地方 自 治 体の と る べ き施 策を 三 つ に ま とめ た 。 あ らか じ め 述べ れ ば 、 次の 三 つ であ る 。 Ⅰ . 施 策 の企 画 ・ 立 案・ 実 施 の前 提 と な る各 種 の 調査 に お い て、 性 別デ ー タ を 整 備す る こ と Ⅱ .生 活 困 窮者 を 支 援す る 、男 女共 同 参 画セ ン タ ー・各 種 女 性セ ン タ ー ・ 民 間 団 体 等の 活 動 と 地方 自 治 体が 果 た す 役割 の 重 要性 を 再 認 識す る こと Ⅲ 「 最 低限 度 の 経 済的 自 立 の可 能 性 に 対す る 個 人の 権 利 」 とい う 視点 の も と に 、貧 困 か ら の救 済 と 貧困 の 予 防 につ い て 、短 期 ・ 中 期・ 長 期で 目 標 を 設 定す る こ と 1 女 性 の 貧 困問 題 に つ いて 、 ま ずは そ の 実 態を 明 ら かに す る こ とか ら取 り 組 む 必 要が あ る 。 それ は 、 検討 の 前 提 とな る デ ータ が 不 備 なた め であ る 。で き る だけ 速 や かに 性 別 デー タ を 整 備す る こ と 、具 体 的 にい え ば「男 性・女 性・その 他 」の 選択 肢 の ある デ ー タ を整 備 す るこ と が 必 要で あ る。 こ の 意 味 でも 、 女 性 の貧 困 問 題へ の 対 策 は、 ま だ スタ ー ト 地 点に 立 つか 立 た な い かの 段 階 で ある 。 以 下の 章 で 取 り上 げ る これ ま で の 経過 を 踏ま え れ ば 、 民間 団 体 の 活動 を 支 援す る こ と は重 要 で ある が 、 地 方自 治 体の 生 活 困 窮 者支 援 に 対 する 積 極 的な 取 り 組 みも ま た 不可 欠 で あ る。 解 決 策 に つい て だ が 、残 念 な がら 女 性 の 貧困 問 題 「特 効 薬 」 とい うよ う な も の はな い 。 女 性と い っ ても 、 人 に より 状 況 は千 差 万 別 であ る 。女 性 の 貧 困 問題 の 解 決 には 、 貧 困か ら の 救 済と 貧 困 の予 防 の 二 面を 考 えて 施 策 を 講 ずる こ と 、 それ ぞ れ につ い て 短 期・ 中 期 ・長 期 で 目 標を 設 定す る こ と が 必要 で あ る と考 え る 。 女 性 の 貧困 問 題 は 、労 働 、 家族 の あ り 方と い っ た社 会 構 造 の根 源 的な 問 題 に 根 があ る 。 も ちろ ん 、 従来 こ れ ら の問 題 に 対し て 、 さ まざ ま な手 立 て は 打 たれ て き た 。昨 今 明ら か に なっ たの は 、そ の 不 十分 さに 加 え て、 支 援 が 届 かず に 困 窮 状態 に 陥 る人 の 少 な くな い こ とで あ る 。 これ も 背景 に あ っ て 国が 制 定 し た生 活 困 窮者 自 立 支 援法 に よ る相 談 窓 口 は地 方 自治 体 が 設 置 する こ と に なっ て い る。 地 方 自 治体 に は 、こ の 相 談 窓口 を 機能 さ せ て ほ しい 。 そ こ では 、 何 より 問 題 を 発見 す る 視座 を 養 い なが ら 、問 題 解 決 に 必要 な 施 策 を創 出 す るこ と 、 支 援を 担 う 人を 育 て て いく こ とが 求 め ら れ ると 考 え る 。 2 2. 貧 困と い う 概念 につ い て は じ め に 触れ た よ う に、 貧 困 が政 治 的 な 概念 で あ ると は い え 、本 報告 書 で 意 味 する 内 容 を 説明 し て おく 必 要 が あろ う 。 貧困 に つ い ては 、 さま ざ ま な 定 義が あ る が 、そ の 中 心に は 、 低 所得 や 生 活水 準 の 低 さに よ って 測 定 さ れ るよ う な 物 質的 な 困 窮が あ る 。 貧困 と は 、所 得 が 少 なく て 生活 水 準 が 低 いこ と で あ る。 た だ し 、 リス タ ー ( 2011) に よれ ば 、 女 性の 貧 困 を理 解 し 、 これ と闘 う と い う 視点 か ら 有 用な の は 、A・B・ ア トキ ン ソ ンが 示 し た 「最 低 水準 の 資 源 へ の市 民 的 権 利」 と い う考 え を 取 り入 れ る こと で あ る 。貧 困 のフ ェ ミ ニ ズ ム的 概 念 は 「最 低 限 度の 経 済 的 自立 の 可 能性 に 対 す る個 人 の権 利 」 と し て記 述 で き る。 こ れ によ り 、 た とえ ば 自 分自 身 の 所 得は な く快 適 な 生 活 水準 を 享 受 する 女 性 、経 済 面 で 他者 に 依 存す る 経 済 的に 脆 弱な 女 性 の 存 在を 捉 え ら れる 。 リ ス タ ー (2011) は 、貧 困 の <物 質 的 核 >、 容 認 でき な い 困 窮を 強調 し た 上 で 、そ の 容 認 でき な い 物質 的 困 窮 のな か で 暮ら し て い る人 々 が経 験 す る 、 貧困 の 関 係 的・ 象 徴 的な 側 面 を 問題 に し て、「 図表 1 物 質的 ・ 非 物 質 的 な貧 困 の 車 輪」 を 示 した 。 図表 1 物 質的 ・ 非 物質 的 な 貧困 の 車 輪 関係的・象徴的な側面 ・軽視 ・屈辱 ・恥辱やスティグマ ・尊 厳 お よ び 自 己 評 価 へ の 攻 撃 物 質 的 核「 容 ・<他者化> 認できない困 ・人権の否定 窮」 ・シティズンシップの縮小 ・声を欠くこと ・無力 引 用 : リ スタ ー ( 2011:24) 3 図 表 1 の 中 心部 も 外 輪部 も 、 それ ぞ れ を 形成 し て いる の は 社 会的 ・ 文化 的 な 関 係 であ る 。 「 中心 部 に ある 物 質 的 な必 要 は 社会 的・文 化的 に 定 義さ れ 、 関 係 的・ 象 徴 的 な外 輪 部 に取 り 次 が れ、 解 釈 され る 」、「 そし て その 外 輪 部 自 体も 、 社 会 的・ 文 化 的な 領 域 で 回転 し て いる 」 の で ある と する ( リ ス タ ー2011:23)。 つ ま り 貧困 は 、 社 会の な か での 資 源 分 配の 不 平 等を 生 み 出 し、 固 定化 す る 構 造 とプ ロ セ ス の社 会 的 ・経 済 的 ・ 政治 的 な 構造 の 一 機 能と し て理 解 さ れ る( リス タ ー 2011:83)。敷 衍 す れば 、社 会 経済 的 不 平等 と 社 会階 級 、 ジ ェ ンダ ー 、「 人種 」、障 害 と いっ た社 会 的 区分 、 ラ イ フコ ー ス が、 貧 困 を 形 づく る 。 個 人 に つい て み れ ば、 特 定 のジ ェ ン ダ ー( 本 報 告書 で の 注 目は 女 性)、 年 齢 、 障 害の 有 無 、 家族 内 の 位置 や 多 人 数世 帯 で ある こ と 、 ライ フ コー ス 上 で の 位置 ( 子 ど も期 、 老 年期 な ど ) にあ る の かが 、 貧 困 状態 に 関係 す る 。 従 来、 貧 困 に 陥り や す いと 見 ら れ 語ら れ て きた 集 団 と して 挙 げら れ る の は 、母 子 世 帯 、障 害 者 、高 齢 者 な どで あ る 。 4 3. 地 方自 治 体 は女 性の 貧 困 問題 に い か に向 き 合 って き た か 1 3-1 調査 方 法 以 上 の 貧 困に 関 す る 理解 を 手 がか り に 、 地方 自 治 体が 女 性 の 貧困 問題 に い か に 向き 合 っ て きた か 、 調査 し た 。 調査 対 象 は、 す で に 実施 さ れて き た 制 度 では な く 、 その 前 段 に位 置 す る 、政 策 の 基礎 と な る 調査 ・ 研究 報 告 と し た。 そ こ に 、国 の 政 策と は 別 に ある 、 地 方自 治 体 の 姿勢 、 地方 自 治 体 ご との 独 自 性 が現 れ る と考 え た た めで あ る 。 ... テ ー マ が、 女 性 の 貧困 問 題 であ る た め 、女 性 問 題を 扱 う セ クタ ー から 接 近 し た 。そ の た め 、地 方 自 治体 と い っ ても 、 施 策を 推 進 す る担 当 部署 の み で な く、 関 連 団 体も 含 め てい る 。 ( 1) まず 、 過去 30 年程 度 遡 って 文 献 を 調べ る た め、 国 立 女 性教 育 会館 の 文 献 情 報ポ ー タ ル Winet を用 い た 2 。 「 貧困 」×「 地 方 行政 資料 」×「 1980 − 2015 年 」で 検 索 した が 8 件 し かヒ ッ トし な い ため 、「地 方行 政 資 料」 ×「 1980− 2015 年 」の 該 当 件数 17,231 件 すべ て を チェ ッ クし 、 関 連し そ う な 文 献は 閲 覧 し た。 ( 2)渋 谷 にあ る 東 京ウ ィ メ ンズ プ ラ ザ 、神 奈 川県 立 図書 館 、横 浜 市立 図 書 館 の 地 方行 政 資 料 の開 架 、横 浜 市 戸塚 にあ る フ ォー ラ ム 男女 共 同 参画 セ ン タ ー の開 架 を チ ェッ ク し 、関 連 し そ うな 文 献 は閲 覧 し た 。 ( 3)別 表の 一 覧 に ある 全 都 道府 県 の 男 女共 同 参 画の 所 管 課 、セ ンタ ーの ホ ー ム ペ ージ を 検 索 し、 関 連 する 報 告 書 等が な い か調 べ た 。 女 性 問 題 を扱 う セ ク ター か ら 接近 し た わ けだ が 、 直接 貧 困 を テー マと し た 文 献 は少 な か っ た。 そ の ため 「 関 連 しそ う な 文献 」 を 探 すた め 、女 性 ・ 女 ・ 母子 ・ 寡 婦 ・ひ と り 親・ 老 人 ・ 高齢 者 ・ パー ト タ イ ム、 非 正規 な ど の キ ーワ ー ド も 用い て 関 連文 献 を 調 査し た 。 1 以 下 の各 章 では、様 々な文 献 からの文 章 を引 用 する。文 献 名 が見 出 しにある場 合 は、引 用 文 献 の詳 細 を省 略 し頁 数 のみ記 載 した。また、引 用 文 の下 線 は、基 本 的 に岩 永 が重 要 箇 所 を明 示 するために引 いた。 2 http://winet.nwec.jp/bunken/opac_search/?smode=1 2015 年 2 月 アクセス 5 3-2 概況 ( 1)∼ (3) に よ り、 一 通 り、 女 性 の 貧困 問 題 をテ ー マ と する 文 献及 び そ の 関 連文 献 を 探 した が 、 該当 す る 文 献は き わ めて 少 な か った 。 もち ろ ん 皆 無 であ っ た わ けで は な く、 特 に 最 近に な っ て注 目 す べ き調 査 報告 が な さ れ てお り 、「 図表 2 地 方自 治 体 の文 献 一 覧」 に ま と めた 。 こ の う ち ●印 を つ け た文 献 は 、最 近 の 特 徴が あ っ て、 女 性 の 貧困 問題 に よ り 接 近で き る 内 容で あ る ため 、 3-3 で詳 し く 取り 上 げ る 。こ こ では 概 況 と 、 ●印 の つ い てい な い 文献 を 取 り 上げ る 。 これ ら の 文 献か ら も、 女 性 の 置 かれ て い る 社会 経 済 的状 況 、 そ れに 深 く 関わ る 生 活 困窮 状 況が 読 み 取 れ る。 6 図表2 地方自治体の文献一覧 著者 年 報告書名 HP 1 三鷹市 1979 50歳代1人ぐらし婦人の意識と生活実態 2 東京都目黒区 1982 グラフでみる高齢女性の現状 3 名古屋市市民局 1982 障害を持つ女性の生活実態調査 4 東京都立川社会教育会館 5 横浜市女性協会 6 財団法人横浜市男女共同 参画推進協会 7 横浜市市民活力推進局 横浜市子ども青少年局 ● 8 財団法人横浜市男女共同 参画推進協会 ● 9 北海道総合研究調査会 1983 婦人教育セミナー報告書 昭和57年度 横浜市女性相談ニーズ調査報告書:フェミニス 1996 ト・リサーチの視点から 若年女性無業者の自立支援に向けた生活状況 2009 調査報告書 配偶者等からの暴力(DV)に関するアンケート 2009 調査及び被害実態調査(面接調査)報告書(そ の1)(その2) 男女共同参画センター等における生活困難を http://www.women.city.yokoh 2011 抱える若年(シングル)女性の自立支援プログ ama.jp/girls/girls_tyousa/ ラム開発事業 事業報告書 平成23年度パーソナル・サポート・サービスの評 2012 価手続きに係わる調査報告書 ● 10 せんだい男女共同参画財 団編 ● 2013 女性の生活状況及び社会的困難をめぐる事例 http://www.sendai調査 l.jp/chousa/ 川崎市男女共同参画セン 女性の再就職関連事業・インターンシップ事業 2013 修了者追跡調査報告書 ター(すくらむ21) 公益財団法人横浜市男女 ガールズ編しごと準備講座&『めぐカフェ』就労 12 2014 共同参画推進協会 体験 修了者追跡調査 報告書、結果要約 11 ● 7 当 然 の こ と な が ら 、( 1)( 2) で 確 認 し た 所 蔵 文 献 は 、 男 女 共 同 参 画 に 関 す る 政 策 の 流 れ に 一 致 し て い た 。世 界 的 な 流 れ と し て 、1975 年 の 国 際 婦 人 年 世 界 会 議 、 世 界 行 動 計 画 の 後 、 1976 年 か ら 1985 年 ま で の 「 国 連 婦 人 の 10 年 」は 重 要 で あ る 。国 内 で も 行 動 計 画 が 策 定 さ れ 、各 自 治 体 に も婦人関係行政の窓口が設置された。 こ の 間 、 特 に 国 連 婦 人 の 10 年 中 間 年 の 1980 年 前 後 は 、 婦 人 / 女 性 の 生活実態と意識、現状をテーマにした調査が各自治体によって行われて いる。調査によっては、収入に関する項目がみられるが、他の調査項目 との関連が調べられていないため、女性の貧困問題に関係する記述はな い 3 。 図 表 2 の 1∼ 4 の よ う に 、「 高 齢 」「 障 害 」 と い っ た 角 度 か ら 問 題 を 把握する視点はみられる。 そ の 後 、1985 年 に 男 女 雇 用 機 会 均 等 法 が 公 布 、1986 年 に 施 行 さ れ る 流 れのなかで、あるいはそれ以前からも、最もよく取り上げられるテーマ は、家内労働やパートなどの労働問題である。しかし、女性の収入は、 あくまでも家計補助的な位置づけとされ、女性の貧困に焦点が当てられ ることはない。女性を含む貧困が問題になるのは、主に母子世帯のケー スである。 1990 年 代 に 入 っ て 、セ ク シ ャ ル ハ ラ ス メ ン ト 、ジ ェ ン ダ ー と い う 言 葉 が使われ、ジェンダーフリーというテーマも登場する。また、女性に対 する暴力、男女共同参画というテーマも取り上げられるようになる。図 表 2 の 5・7 の よ う に 、女 性 問 題 に 取 り 組 ん で き た 団 体 に お い て は 、女 性 の困窮状況への気づきがみられる。 多くの地方自治体において、男女共同参画の取り組みはみられる。た だし、このテーマでは、女性問題を把握する視点が薄くなったように見 て取れ、女性の貧困問題把握に関連する記述は、見つけることができな かった。 2000 年 代 に 入 っ て か ら は 、 3-3 で み る よ う に 、 状 況 が 少 し 変 わ り つ つ あ る 。 こ れ ら を 見 て い く 前 に 、 図 表 2 の う ち 、 1∼ 5・ 7・ 11 の 文 献 を 紹 介する。 3 すでに触 れたように、収 入 といっても世 帯 収 入 の議 論 では、女 性 の貧 困 を明 らかにするとはいえない。 8 1 三 鷹 市 ( 1979)『 50 歳 代 1 人 ぐ ら し 婦 人 の 意 識 と 生 活 実 態 』 これは、三鷹市社会福祉部、三鷹市民生児童委員協議会、三鷹市社会 福 祉 協 議 会 が 実 施 主 体 と な り 、1978 年 7 月 に 実 施 し た 調 査 の 報 告 書 で あ る 。同 調 査 は 、三 鷹 市 の 単 身 50 代 女 性 全 員 を 対 象 と し 、民 生 委 員 を 調 査 委 員 と し て 実 施 し た 。単 身 50 代 女 性 を 調 査 対 象 と し た 理 由 に は 、女 性 の 貧困問題を把握しようとする視点がみられる。 す な わ ち 、社 会 福 祉 の 法 体 系 は 一 応 整 っ た が 、 「そのような中にあって、 全 く 未 開 拓 の 分 野 と し て 、中 年 独 身 婦 人 の 問 題 は 、放 置 さ れ て い る 」。 「未 婚 、生 別 、死 別 を 問 わ ず 、夫 が な く 、同 居 す る 親 族 も い な い『 ひ と り 身 』 の 50 才 代 の 婦 人 は 、女 性 蔑 視 の 社 会 的 風 潮 の 中 で 、ひ と り 苦 斗 し て い る が、それに対する社会的救済は悉んどないままに放置されているという の が 実 情 で あ る 。 そ れ は 、 取 り 残 さ れ た 福 祉 の 分 野 だ と 言 っ て い い 。」 つ ま り 、 当 時 の 社 会 福 祉 制 度 で は 捕 捉 で き て い な い 、『 ひ と り 身 』、 現 在 の 表 現 で い え ば 単 身 の 、高 齢 期 を 迎 え る 手 前 に あ る 50 代 女 性 が 抱 え る 生活問題を把握し、支援につなげようというのである。 調 査 の 対 象 と な っ た の は 494 人 で 、 そ の う ち 移 転 、 長 期 不 在 、 拒 否 な ど か ら 除 外 し た の が 92 人 、 回 答 率 は 81.4% と き わ め て 高 い 。 単 身 世 帯 で あ る 理 由 は 、多 い 順 に 、病 死( 31.9% )、未 婚( 28.3% )、離 婚( 25.9% ) である。疾病による死別や、未婚の多さは、戦争の影響であると考察さ れている。 最 終 学 歴 に つ い て み る と 、高 等 女 学 校 49.3% 、高 等 小 学 校 28.1% 、小 学 校 10.4% と な っ て お り 、年 齢 か ら み て 、相 当 高 い 学 歴 水 準 で あ る と い う 。し か し 、 「 学 歴 の 如 何 を 問 わ ず 、そ の 職 業 水 準 は 必 ず し も 高 い も の で は な い 」。職 業 を み る と 、有 業 者 の う ち 、そ の 他( 雑 業 )39.7% 、事 務 員 21.2% 、 家 政 婦 ・ 寮 母 10.6% で あ る 。 「 こ こ で 痛 感 す る こ と は 、 学 歴 や 資 格 が 必 ず し も 生 か さ れ て い な い 」、 「 個 人 的 、 私 的 努 力 で は 求 職 が 難 し い 」、「 公 的 職 業 紹 介 、 斡 旋 の 必 要 」 が 指 摘 さ れ て い る 。そ の 結 果 、月 間 収 入 は 、図 表 3 の よ う に な っ て い る 。 10 万 円 以 下 が 7 割 以 上 で あ る 。 9 医 療 、年 金 へ の 加 入 状 況 に つ い て も 聞 い て い る 。医 療 保 険 に は 、77.1% が 加 入 し 、22.9% % が 不 明 、年 金 の 回 答 率 は 66.1% % で あ る 。回 答 率 の 低 さ は、健康・老後生活への無関心と読み解いている。現在の収入源は、給 料 60.4% 、 年 金 10.2% % 、 家 賃 8.5% 、 生 活 保 護 6.0% % 、 仕 送 り 3.2% 、 そ の 他 6.2% 、不 明 5.5% % で あ る 。半 数 以 上 が 、老 後 が 不 安 で あ る と 答 え ている。 最 後 に 、 国 、 都 、 市 に 対 す る 要 望 に つ い て 、 402 人 中 31.1% %が述べた 結果を、老後保障――社会保障について、所得、労働、医療、福祉、住 宅、その他の 6 つの分野でまとめている。この内容は、発言者によりば らつきがある。 以 上 の よ う に 、50 才 代 と い う 高 齢 期 前 の 年 代 、し か も 単 身 世 帯 に つ い て調査し、単身世帯となった理由の社会的要因、収入の低さ、学歴に対 する職業的地位の低さ、社会保障の浸透具合、老後保障の問題を把握し ている。残念なことに、報告書にはまとめがなく、最後は調査協力者の 答えた要望で終わっている。望まれるのは、この問題を踏まえ、社会福 祉制度がどう対応するのかについての、調査主体の考察である。 10 2 東 京 都 目 黒 区 ( 1982)『 グ ラ フ で み る 高 齢 女 性 の 現 状 』 こ れ は 、最 初 に「 高 齢 化 の ス ピ ー ド 」を 訴 え 、図 表 や 挿 絵 を 交 え た 12 頁の小冊子である。高齢化社会の問題を提起し、市民への啓蒙のために 作成されたと思われる。 目 を 引 く の は 、 高 齢 女 性 の 現 状 の 厳 し さ で あ る 。 ま ず 、「 寡 婦 の 時 代 」 として「女性の老後生活は、配偶者の有無によって左右される。物心と もに夫に依存している者が多いからである。女性の平均寿命が男性より 5 歳 以 上 長 く 、結 婚 年 齢 の 男 女 差 が 3∼ 5 年 。そ の た め 女 性 は 男 性 よ り も 平 均 8∼ 10 年 孤 独 の 老 後 が 待 っ て い る と い わ れ て い る 。」 と す る 。 具 体 的 に は 高 齢「 女 性 の 4 人 に 1 人 は 無 収 入 」で あ る こ と 、 「女性の無 年 金 者 は 4 割 」、 「 月 収 入 の 平 均 額 は 男 性 の 3 分 の 1」で あ る と 指 摘 す る 。 他方で、 「 老 後 の 経 済 生 活 に は 、仕 事 に よ る 収 入 の ほ か 蓄 財 、子 の 扶 養 に 依存するなど種々の方法が考えられるが、どのような場合も、老人本人 の所得のもつ意味は、老人の経済的自立のみならず、精神的自立が生活 行 動 の 基 盤 と し て 重 要 な 意 味 を も つ 。」 と 述 べ て い る 。 本人の所得が重要であるという指摘は、最もではある。逆に言えば、 高齢女性の現状としては、貧困状態にあるものが少なくないため、その 状況を回避する手立てを講じるように説いているとみえる。高齢女性の 現状に照らして、その道筋は平坦とはいえないであろう。 そのなかで、 「 活 力 あ る 老 後 」の た め に 提 唱 す る の は 、① 人 に あ て に さ れる場をもつこと、②仲間がいること、③趣味を持つこと、であるが、 「 将 来 設 計 の ポ イ ン ト は 『 健 康 』」 で あ る と い う 。 高齢女性は健康に自信がない人が多く、老年になると心身の機能が衰 えて健康に対する不安が大きくなること、他方で介護者の 9 割が配偶 者・嫁・子どもの女性であり、彼女たちの心身の疲労は深刻である。老 後は子に依存する割合が高く、高齢独居の看護担い手問題は大きいとい う。 そ れ ゆ え 、「 将 来 設 計 の ポ イ ン ト は 『 健 康 』」 で あ る と い う の で あ ろ う が、ジェンダーの視点が薄く、今日的にいえば、自己責任を強調する内 容になっていると思われる。 11 3 名 古 屋 市 市 民 局 ( 1982)『 障 害 を 持 つ 女 性 の 生 活 実 態 調 査 』 こ れ は 、名 古 屋 市 市 民 局 が 研 究 者 と の 協 力 に よ り 、女 性 障 害 者 に 対 し 、 集団聞き取り調査と個人の生活史を中心としたケース調査した報告であ る。国際障害者年を契機に障害者への市民の理解は高まったが、女性障 害者には固有の問題があると考え、調査を実施した。 「調査を通して育児、家事をふくむ生活の細部にわたる困難と、女性 であるためにいっそう重い社会的自立と経済的自立の難しさが明らかに なり、国や地方自治体、また教育、医療・福祉等関係機関やそこに働く 人びとへの要望が数多く表明された」という。さらに「女性障害者の生 活 を 支 え 、そ の 社 会 参 加 を 拡 大 す る 上 で 、障 害 者 団 体・サ ー ク ル な ど が 、 実に大きな働きをしていることも知ることができた」というのも大事な 指摘である。 集 団 聞 き 取 り 調 査 の 対 象 は 、名 古 屋 市 内 に 居 住 す る 18 歳 以 上 の 肢 体 不 自由、聴力障害、視力障害を持つ女性を中心に組織された団体、グルー プ 、 サ ー ク ル に 属 し て い る 人 で あ る 。 視 力 障 害 18 名 、 聴 力 障 害 13 名 、 視力障害 6 名、肢体不自由者 9 名からなる各グループに調査した。個別 聞き取り調査は、集団聞き取り調査の対象者のなかからと、さらに障害 者団体、グループに属しているか、ボランティアグループとつながりを も つ 名 古 屋 市 に 居 住 す る 女 性 の 身 体 障 害 者 60 人 で あ る 。 調査結果の概要は、個別聞き取り調査の内容が中心となっている。調 査 対 象 者 の 基 本 的 属 性 と し て 、障 害 の 内 訳 は 、聴 覚 障 害 25 人 、視 覚 障 害 16 人( 難 聴 と の 重 複 2)、肢 体 不 自 由 19 人 で あ り 、全 体 と し て 1、2 級 の 者 が 80% を 占 め る 。さ ま ざ ま な 結 果 が 記 述 さ れ て い る が 、こ こ で は 貧 困 のフェミニズム的概念、 「最低限度の経済的自立の可能性に対する個人の 権利」に照らして、仕事、収入状況に着目する。 「図表 4 職業」によると、半数近くが仕事に就いていることが分か る 。 就 業 率 は 、 視 覚 障 害 が 最 も 高 く ( 50% )、 次 に 聴 覚 障 害 ( 32% )、 肢 体 不 自 由 者( 16% )と な っ て い る 。「 図 表 5 世 帯 主 と の 続 柄 」に 明 ら か なように、視覚障害は既婚率が低く、聴覚障害は高くて主婦層が多いこ とも関係している。肢体不自由の無職の多さは、仕事の確保の難しさに よると考察されている。 12 図表4 職業 職業 聴覚障害 視覚障害 肢体不自由 計 有 8 8 1 17 内職 4 0 4 8 パート 2 0 0 2 無 11 8 14 33 計 25 16 19 60 図表5 世帯主との続柄 職業 聴覚障害 視覚障害 肢体不自由 計 本人 4 5 1 10 配偶者 19 7 11 37 子 1 2 2 5 親 0 1 1 2 兄弟姉妹 1 1 3 5 その他 0 0 1 1 計 25 16 19 60 「図表 5 世帯主との続柄」によると、配偶者が世帯主である割合が 高い。本人が世帯主である者のうち 6 名は 1 人暮らしで、他は母子家庭 で あ る 。 既 婚 者 は 44 名 ( 73% ) で 、 そ の う ち 39 名 ( 89% ) が 、 障 害 者 同士の結婚という特徴がある。 個別の聞き取り結果を用いて、職業と収入についても図が作成され、 詳 細 に 記 述 さ れ て い る が 、全 体 と し て は 、 「働くことに対してどのような 意志と希望を持っているかに関係なく、教育課程の中や、他からの強制 で職種を限定され、選択の余地なく社会への第一歩を踏み出さねばなら な い の は つ ら い こ と で あ る 」( 24-5 頁 ) で あ る と い う 。 「『 手 に 職 を 』式 の 職 業 教 育 が も つ 問 題 点 は 男 性 に と っ て も も ち ろ ん 切 実なものであるが、生活の主な経済的担い手としては育てられなかった 女 性 に と っ て は い っ そ う 厳 し い 」、「 視 力 障 害 、 聴 覚 障 害 者 の 場 合 伝 統 的 13 な職種――和裁、洋裁、理容、三療 以外の職に女性が就くのは極めて 困 難 」で あ る 。 「 経 済 的 に も 、社 会 的 に も 自 立 し た い と 願 っ て い る 人 た ち に『自立』への足がかりを制度的に何らかの形で保障していくことは緊 急 の 課 題 」 と さ れ る 。( 25 頁 ) そ の た め 、行 政 の 要 望 に つ い て み る と 、生 活 の 現 状 に つ い て 手 話 通 訳 、 ガイドヘルパー派遣制度に関することに加え、年金制度や仕事面での要 望 が 多 い 。年 金 制 度 に つ い て は 、 「働けない場合の生活でできるだけの年 金の増額と共に、特別児童扶養手当や障害福祉年金の所得制限をなくし て ほ し い 」 と い う 要 望 で あ る 。( 46 頁 ) 仕事の面では、 「 視 力 障 害 者 の 場 合 、三 療 へ の 晴 眼 者 の 進 出 が 著 し い こ とから、三療に対する優先権の確保と共に他の職種の開拓が望まれてい る 」。「 肢 体 不 自 由 者 に つ い て は 、 他 の 障 害 と 比 べ 無 職 の 率 が 高 く 、 そ う した人達は、親あるいは兄弟の援助に依存した生活を強いられている場 合が多い。こうした人達からは、生きがいのもてる仕事をもちたいとい う 希 望 が 切 実 に 出 さ れ て い る 」。( 47 頁 ) 仕事に就くことは、経済的自立だけでなく社会的自立にとって重要で あるが、調査から分かるのは、仕事に就く困難が大きく、職業選択が極 めて制限されていることである。障害者であることの困難と女性である ことの困難が重なっている。ただし、収入という面でみると、障害年金 の重要さが見て取れる。 調査の目的には、 「 障 害 者 福 祉 施 策 、と り わ け 女 性 障 害 者 の 生 活 の 自 立 と 安 定 の た め の 施 策 の 計 画 に 必 要 な 資 料 を 得 る こ と 」が 掲 げ ら れ て い た 。 そこには、障害に対する所得保障、サービス給付に加え、女性であるた めの困難に対する支援制度が必要なことを明らかにする調査報告であっ た。 14 4 東 京 都 立 川 社 会 教 育 会 館( 1983) 『 婦 人 教 育 セ ミ ナ ー 報 告 書 : 昭 和 57 年度』 これは、立川社会教育会館が主催しているとみられる、婦人教育セミ ナーのまとめである。年間テーマは「老後にあらわれる婦人問題が、ラ イフサイクル各期の課題とどのように結びついているか明らかにするこ と 」で あ っ た 。年 間 計 画 は 、第 Ⅰ 期「 女 の 老 後 の 現 状 を 知 る 」、第 Ⅱ 期「 そ こ に み ら れ る 婦 人 問 題 を 明 ら か に す る 」、第 Ⅲ 期「 そ れ ら が 、ラ イ フ サ イ クル各期の課題とどのように結びついているか考える」であった。 まず、女の老後の現状を把握するため、専門家の講義を受け、それを もとに、①経済的な問題、②家族・家庭の問題、③精神的な問題の三つ のグループに分かれ、レポートしつつ、学習を進めたという。 専門家の講義のレジュメには「貧困女子老人社会に対処するために」 という項目が立てられている。高齢化社会とは、寡婦が増えるだけでな く、収入の少ない女性が増えるということでもあるという。対処につい て は 、す で に 高 齢 に な っ た 女 性 に 打 つ 手 は な い こ と 、 「 中・後 年 女 子 の 自 立 対 策 」と し て 老 後 を 目 標 に し た 生 活 設 計 、 「男子老人予備軍に日常生活 の 自 立 を し つ け る 」、自 立 を 支 え る た め に 自 分 よ り 若 い 世 代 と の 付 き 合 い 方を考えること、と述べられている。 こ れ を 受 け て 、第 1 に 挙 げ ら れ た の が 、経 済 的 問 題( 貧 困 、就 業 困 難 、 住宅)であった。高齢者の経済状況を述べた上で、高齢女性の場合に目 を移すのだが、 「 高 齢 者 の 生 活 実 態 を 調 査 し た さ ま ざ ま な 資 料 か ら も 、女 性 老 人 の 姿 は 浮 か び に く い 」と い う 問 題 を ま ず 提 起 し て い る 。そ の 上 で 、 就労所得、年金ともに高齢男性に比べ一層低いデータを示す。 「 な ぜ 女 性 の 老 後 が 貧 し い の か 」、そ れ は「 老 年 期 は あ ら ゆ る 意 味 で そ れまでの生涯の集約であり、それゆえ経済的地位もそれ以前の時期の経 済 状 況 と 無 縁 で は な い 」、「 ひ と こ と で 言 え ば 現 在 の 女 子 老 人 の 貧 困 は 、 老齢期に至るまでの時期を、一貫して経済的自立からは遠い状況にあっ た こ と の 反 映 で あ る 」 と す る 。( 10 頁 ) 興 味 深 い の は 、セ ミ ナ ー を 受 け て 企 画 し た 講 座 の な か で 、 「自分にとっ て老後問題の課題は何か」という問いかけに対し、経済的問題に触れた 人は 1 人しかいなかったという公民館職員の述懐である「 。<貧しさ>を 自 分 の 問 題 と し て 受 け 止 め る と い う 感 じ か ら は 遠 い よ う に 思 わ れ 」、「 < 介護>や<家族関係>をとりあげて学んだ回には感じられない」ギャッ プ で あ っ た と い う 。( 11 頁 ) こ こ に 、 貧 困 問 題 を 把 握 す る 視 点 の 重 要 さ と難しさがうかがわれる。 15 5 横 浜 市 女 性 協 会 ( 1996)『 横 浜 市 女 性 相 談 ニ ー ズ 調 査 報 告 書 : フ ェ ミ ニスト・リサーチの視点から』 これは、横浜市で女性相談に携わる 3 機関による女性相談の調査結果 で あ る 。 こ こ で は 、171 頁 か ら の「 調 査 の ま と め 」 を 参 照 す る 。「 相 談 者 の プ ロ フ ィ ー ル 」、「 相 談 内 容 」 か ら は 、 女 性 の 貧 困 問 題 へ の 言 及 が み ら れる。 「 相 談 者 の プ ロ フ ィ ー ル 」に つ い て は 、 ( 1)外 国 籍 相 談 者 の 増 加 、 ( 2) 幅 広 い 年 齢 層 の 利 用 者 、中 心 は 20 代 か ら 40 代 、の 次 に( 3)経 済 基 盤 の 不 安 定 さ 、( 4) 生 活 困 窮 者 の 増 加 、 が 挙 げ ら れ て い る 。 ( 3) に お い て は 、「 今 回 の 調 査 に は 、 相 談 者 自 身 の 収 入 や 世 帯 収 入 に 関する項目が設定されていない」ため、就労状況・雇用形態による類推 ではあるが、 「 非 就 労 で 不 安 定 な 経 済 的 状 況 に あ る 様 子 が 窺 え た 」と い う 。 ( 4) で は 、 大 多 数 の 相 談 者 が 自 宅 で 同 居 人 と 暮 ら し て い る 一 方 で 、「 ド ヤ・簡 易 宿 泊 所 」 「 路 上 ・ 野 宿 」と 答 え る 者 が い て 、そ の 数 が 微 増 し て い ること、主な収入源について大多数が「夫またはパートナーの収入」と 答えていて、相談者自身の経済的基盤が脆弱であると指摘している。 相談内容については、 ( 1)関 係 性:夫 婦 と 自 分 の 問 題 、を 挙 げ た 上 で 、 ( 2)相 談 者 が 経 験 し て い る 問 題:多 様 化 、を 挙 げ て い る 。 ( 2)で は 、 「多 くの相談者が、生活基盤の逼迫、暴力、離婚など、時代や場所を問わず 女性の社会経済的劣位の象徴となっている社会構造的な問題を経験して い る こ と が わ か っ た 」と 同 時 に 、 「 医 療 や 、体 や 心 の 健 康 、生 き 方 や 価 値 観など多様な問題も現れていた」とする。 具 体 的 に は 、離 婚 、夫 の 女 性 問 題 、別 居 な ど 婚 姻 関 係 の 破 綻 と 暴 力 で 、 全体の約 3 割から 4 割に上る。このことは、経済的困窮と切り離せない 問題で、それは、相談者の多くが安定した職業を持たず経済的に自立で きない状況にあるからである。 「正規雇用者であっても賃金の男女格差が 是正されない現状では、今後『貧困の女性化』は一層深刻な問題となる のではないだろうか」という。 フェミニスト・リサーチという観点からの調査で、女性の問題を社会 構造的に理解するという立場が明確である。女性の社会経済的劣位に加 え、婚姻関係の破綻と暴力により困窮する女性の様子と、それを発見し 対応する相談機関の実態が理解できる。 16 6 横 浜 市 市 民 活 力 推 進 局 ・ 横 浜 市 子 ど も 青 少 年 局 ( 2009)『 配 偶 者 等 か ら の 暴 力 ( DV) に 関 す る ア ン ケ ー ト 調 査 及 び 被 害 実 態 調 査 ( 面 接 調 査 ) 報 告 書 ( そ の 1)( そ の 2)』 この調査は、 「 暴 力 被 害 の 実 態 を よ り 具 体 的 に 把 握 す る た め 、暴 力 の 経 験、体調、子どもとの関係、相談や支援機関の利用、今の生活で困って いることなどについて、夫・パートナーからの暴力を受けた経験を有す る女性から直接聞き取りを行い、夫・パートナーからの暴力根絶や被害 者の自立支援のための今後の施策に役立てることを目的」としている。 調 査 協 力 者 は 25 名 と 少 数 で は あ る が 、「 5 横 浜 市 女 性 協 会 ( 1996)」 にも現れていたように、女性問題の中で暴力がクローズアップされてく るなかで、重要な調査であり、経済的自立に関連した考察のあることに 注目した。 調 査 協 力 者 の 平 均 年 齢 は 49.6 歳 で 40 代 と 50 代 が 多 い 。夫・パ ー ト ナ ー と の 関 係 で は 、同 居 し て い る 人 が 9 人 、別 居 も し く は 離 別 が 16 人 で あ る 。 現 在 の 就 労 状 況 は 、 常 勤 2 人 を 含 む 就 業 者 が 13 人 、 無 職 が 12 人 で あ る 。 本 人 の 現 在 の 月 収 は 10 万 円 未 満 が 12 人 、 20 万 円 以 上 は 3 人 と 、 経済的に苦しい。夫の年収は横浜市平均世帯年収と同等程度か高い場合 が半数であり、夫(元夫)との経済的格差が顕著である。 以上の背景があって、現在の生活の中で困っていることについては、 同 居 中 の 場 合 「 生 活 費 を 渡 し て も ら え な い こ と 、 自 身 の 経 済 力 の な さ 」、 別居あるいは離別の場合「仕事の見通しがつかないなどの経済的不安」 を挙げている。 「 同 居 別 居 に 関 わ ら ず 、経 済 的 不 安 や 就 労 、住 宅 、心 身 の 不調などは、複合して困難な状況をもたらしているので、これらの諸問 題に関する有機的かつ複合的な支援が必要とされている」とする。 さ ら に DV 被 害 と 仕 事・経 済 力 と の 関 係 に つ い て 次 の よ う に 述 べ て い る 。 「一般には、女性側に経済力があれば暴力を振るわれないし、暴力が起 き た と し て も 、す ぐ 離 婚 で き る の で は な い か と 思 わ れ が ち で あ る 」、そ う い う 場 合 も あ る が 、そ う と も 言 い 切 れ な い 。 「同居中には経済力に差がな くても(中略)一般に思われるほど暴力から逃れることは簡単ではなか っ た 」。し か し 、 「 経 済 力 の 維 持 と 回 復 は 、そ の 後 の 生 活 の 道 筋 を 見 つ け 、 行動を起こしやすくし、心理的回復を早めるといえる」としている。 暴力と女性の仕事・経済力の関係は、単純ではないが、経済的自立の 重要性は読み取ることができる。 17 7 川 崎 市 男 女 共 同 参 画 セ ン タ ー ( す く ら む 21)( 2013)『 女 性 の 再 就 職 関連事業・インターンシップ事業修了者追跡調査報告書』 最後に、最近の調査であるが、川崎市男女共同参画センターが実施し た「女性のための就業支援関連セミナー」の受講生に対する追跡調査の 報告書を取り上げる。すでに見てきたように、女性の経済的自立問題は 構造的問題であって、歴史があり根が深い。同調査は、再就職を支援す る講座の受講者のその後を調査することで、支援策の有効性と今後の課 題を明らかにする点で意義深い。 調 査 回 答 数 は 29 で 、 回 収 率 は 64.4% で あ る 。 回 答 者 の 年 齢 は 、 最 も 多 い の が 40 歳 代 、次 に 30 歳 で あ る 。8 割 以 上 の 回 答 者 に 子 ど も が い て 、 婚 姻 状 況 で は「 既 婚( 事 実 婚 を 含 む )」が 最 も 多 か っ た 。た だ し 、す く ら む 21 で 実 施 す る ほ か の 講 座 と 比 べ る と 、 「離別」 「 死 別 」の 割 合 は 高 か っ た。 回答者の再就職に対する意欲は、 「 絶 対 再 就 職 し た か っ た 」と「 で き れ ば 再 就 職 し た か っ た 」 が 半 数 ず つ で 、「 あ ま り す る 気 は な か っ た 」「 す る 気 は な か っ た 」と い う 回 答 は な か っ た 。特 徴 的 な の は 、婚 姻 状 況 が「 離 ・ 死別」の回答者の方が「既婚」回答者よりも「絶対再就職したい」とい う回答割合が多かったことである。 この再就職への意欲によって、再就職の希望の中身が異なる。収入の 希望について、全体的に一番多かったのが「家計を支えるくらいの収入 が 欲 し い 」、 続 い て 「 将 来 に 向 け て の 貯 蓄 が し た い 」 で あ っ た が 、「 で き れば再就職したい」と答えていた人は「家計の足しになるくらい」が最 も多い。 実際の再就職活動についても、再就職への意欲による違いがみられ、 「 絶 対 再 就 職 し た い 」と 答 え て い た 回 答 者 で は 75% が 実 際 に 再 就 職 活 動 を 行 っ て い る の に 対 し 、「 で き れ ば 再 就 職 し た い 」 と 答 え た 回 答 者 で は 45.5% で あ っ た と い う 。 「やはり講座受講前にどの程度の意欲があったか が実際の活動に大きく影響を与えていた」としている。 しかし、 「 離 ・ 死 別 」の 回 答 者 の 方 が「 既 婚 」回 答 者 よ り も「 絶 対 再 就 職したい」という回答割合が多かったことに鑑みると、そこには経済的 切迫度の違いもあるのではないかと思われる。さらには、再就職につい て困ったこととして子どもの預け先がないため、再就職活動すらできな い 、と い う 記 述 が 非 常 に 多 か っ た と い う 指 摘 か ら は 、女 性 た ち の「 意 欲 」 だけに還元できない問題のあることが示唆される。 18 まとめ すでに見てきた文献により、女性が社会経済的に劣位な状況に置かれ ており、それに直接起因する経済的問題が深刻な一方で、女性の経済的 自立の重要性が明らかである。しかし、経済的自立には、さまざまな障 害がある。高齢、障害を持つ場合には、社会保障による所得保障も重要 であるし、その特徴に配慮したサービスも必要である。女性の貧困問題 のいくつかの側面を具体的に把握しており、それを支援策につなげよう とする視点がみられる。 他方で、この状況認識について、立場によっては見方が異なることも う か が え た 。 東 京 都 立 川 社 会 教 育 会 館 ( 1983) で は 、 貧 困 を 自 分 の 問 題 として受け止めるようにみられない参加者の様子が述べられた。川崎市 男 女 共 同 参 画 セ ン タ ー ( す く ら む 21)( 2013) で 指 摘 さ れ て い た 、 再 就 職の意欲に関する分析からは、子どもの預け先がないため、再就職活動 すらできない、という記述からみて、女性たちの「意欲」だけに還元で きない問題のあることが示唆された。 注意しておきたいのは、行政の取り組みというより、民間の支援団体 の働きを経由して、女性のニーズがつかみ取られているようにみられる ケ ー ス の 多 い 点 で あ る 。 民 間 団 体 の 活 動 に よ る 、 と い う 面 は 、 3-3 で 取 り上げる調査報告書の特徴でもあり、6 章において地方自治体のとるべ き施策を考える上で、重要な点であると考える。 19 3-3 最近の取り組み 次に、図表 2 のうち●印をつけた文献を取り上げる。これは、次にみ て い く よ う に 、2000 年 代 に 入 っ て か ら の 問 題 把 握 の 特 徴 が あ っ て 、女 性 の貧困問題により接近できる内容となっている。 8 財 団 法 人 横 浜 市 男 女 共 同 参 画 推 進 協 会 ( 2009)『 若 年 女 性 無 業 者 の 自 立支援に向けた生活状況調査報告書』 ▽報告書の構成と目的 こ の 報 告 書 の 構 成 は 、次 の よ う に な っ て お り 、 「Ⅴ 座 談 会 」の は じ め に述べられている「調査の目的と特徴」をおさえておくことが重要であ る。 Ⅰ 検討会の実施について Ⅱ 調査の概要 Ⅲ アンケート調査結果 Ⅳ ヒアリング調査について Ⅴ 座談会「若年女性無業者の自立支援に向けて何ができるのか」 資料編 桜 井 氏・ ( 財 )横 浜 市 男 女 共 同 参 画 推 進 協 会 理 事 は 、ニ ー ト や ひ き こ も りといった若者の不就労、派遣切りに代表される非正規雇用の貧困問題 は 、こ れ ま で 男 性 の 問 題 と し て 扱 わ れ て き た が 、 「若い女性も少なからず 不 就 労 と そ れ に 伴 う 貧 困 問 題 に 直 面 」し て い る と い う 。 「そして女性と男 性 と で は 異 な る 背 景 、異 な る 問 題 」が あ る と 思 わ れ る が 、 「なかなか社会 的に認識」されない。 特に、若い女性の経済的困難、生きづらさは捉えられてこなかったと いう。 「“ 家 事 手 伝 い ”と し て 統 計 処 理 さ れ て 顕 在 化 さ れ ず 」、母 子 家 庭 や 高齢単身女性については少しずつ調査研究されてきたが、仕事に就いて いない若い女性を対象にした調査はほとんどない。そのため、まずは若 い女性の生活状況を調べようと考えたこと、さらに男女共同参画センタ ーでは従来、若い女性を対象にした事業をほとんど実施してこなかった 反省もふまえて、困難を抱えた若い女性たちに対して男女共同参画セン ターとしてどのような事業が可能なのかを検討しようと考えたという。 20 ( 26-27 頁 ) そこで、 「 若 者 女 性 無 業 者 の 自 立 支 援 に 向 け た 生 活 状 況 調 査 検 討 会 」を 設置し、このメンバーで調査を設計、分析し、まとめに向けた座談会を 開催して、その模様も報告書に収録されている。 ▽ 調 査 の 概 要 ( 4-6 頁 ) 調 査 対 象 は 、「 15 歳 以 上 35 歳 未 満 の 、 学 校 や 職 場 に 属 し て い な い 女 性」である。母子家庭の母親については各種調査データがすでに存在し ていることから対象外とし、子どものいない、シングル女性を対象とし て実施されている。 調査方法は、調査対象の特徴ゆえに、少し独特である。若年層への就 労支援や居場所支援等を行っている機関・団体を窓口としてアンケート を配布した。具体的には、横浜市内(一部神奈川県・東京都内)で就労 支援や居場所支援を実施している機関・団体の窓口(受付等)に、返信 用封筒を添付した調査票を置き、窓口を訪れた人に自由に持ち帰っても らうという方法である。その際、アンケートの趣旨を説明したポスター を調査票の近くに掲示し、さらに窓口の担当者から該当者(と思われる 女性)に調査への協力をお願いするということも行ったという。 若年層への就労支援や居場所支援等を行っている機関・団体へ合計 700 の 調 査 票 を 預 け 、 そ の う ち 、 実 際 に 対 象 者 ( と 思 わ れ る 人 ) に 配 布 さ れ た 数 は 391 で あ っ た 。実 配 布 数 391 の う ち 、回 収 数 は 55 で あ る 。 た だ し 、 回 収 し た 55 の う ち 、 夫 や 子 ど も が い る な ど の 回 答 者 を 除 い て 、 有 効 回 答 は 46 で あ っ た 。 実 配 布 数 の う ち の 有 効 回 答 率 は 、 11.7% になる。なお、ヒアリング調査は、アンケート回答者のうち連絡先を記 入した 9 名にアプローチしたが、実施できたのは 1 件であった。 ▽ ア ン ケ ー ト 調 査 結 果 の ポ イ ン ト ( 6-7 頁 ) 回 答 者 の 年 齢 は 、多 い 順 に 、「 30∼ 34 歳 」 が 18 人( 39.1% )、「 25∼ 29 歳 」 が 17 人 ( 37.0% )、「 20∼ 24 歳 」 が 11 人 ( 23.9% ) で あ っ た 。 調 査 の 対 象 者 は 、15 歳 以 上 35 歳 未 満 の 女 性 と し た が 、結 果 と し て 10 代 の 回 答 者 は い な か っ た 。「 同 居 の 家 族 は い な い 」 人 が 11 人 ( 23.9% )、「 同 居 の 家 族 が い る 」 人 が 35 人 ( 76.1% ) で あ り 、「 同 居 の 家 族 が い る 」 回 答 者が多数である。 以下、注目すべき回答結果を抜粋する。 「今のあなたにとって不安なことはなんですか」という問いに対して は 、 46 人 中 45 人 ( 97.8% ) が 「 仕 事 ・ 職 場 の こ と 」 と 回 答 し 、 次 い で 、 21 「 生 活 費・生 計 の こ と 」25 人( 54.3% )、 「 結 婚・彼 氏 の こ と 」23 人( 50.0% )、 「 ば く ぜ ん と 将 来 が 不 安 」 23 人 ( 50.0% ) と な っ て い る 。( 図 表 6) 図表 6 不安なこと(複数回答) 調 査 対 象 は 、「 15 歳 以 上 35 歳 未 満 の 、 学 校 や 職 場 に 属 し て い な い 女 性 」 で あ る が 、 46 人 中 41 人 ( 89.1% ) が 「 働 い た 経 験 が あ る 」 と 答 え 、 「 働 い た こ と が な い 」と 答 え た 人 は 2 人 で あ る 。働 い た 経 験 の あ る 人 41 人 に 、こ れ ま で 経 験 し た 仕 事 の 内 容 を た ず ね た と こ ろ 、40 人 か ら 回 答 が あ り 、40 人 が 経 験 し た 仕 事 は 全 部 で 120 件 で あ る 。1 人 平 均 3.0 件 の 仕事を経験していることになり、安定した仕事に継続して勤務する、と いう姿は浮かんでこない。 働 い た 経 験 の あ る 人 41 人 に 、 現 在 の 就 労 状 況 を た ず ね た と こ ろ 、「 現 在 収 入 の あ る 仕 事 を し て い る 」 人 は 9 人 ( 22.0% ) い た 。 こ の 点 、 調 査 対 象 の 定 義 と 齟 齬 が あ る が 、そ の 理 由 に つ い て 、次 の よ う に 述 べ て い る 。 「調査に先立つ関係機関からの聞きとりや検討会での意見交換から、彼 女らが現在働いているといってもその仕事は短期間の不安定雇用が多く、 就労している状態と就労していない状態が断続的に繰り返されるという 22 こ と が 把 握 さ れ た た め で あ る 」 4。 生育歴における困難な体験について「あなたはこれまで次のような体 験がありますか(答えにくい質問にはむりに答えず、パスしてけっこう で す )」 と た ず ね た 。 そ の 結 果 は 、 図 表 7 で あ る 。 こ の 設 問 で は 、 46 人 の 回 答 者 が 体 験 し た こ と の 合 計 は「 そ の 他 」を 除 い て も 、184 に も 上 り 、 1 人平均 4 項目に○がつくなど、重層的に困難な体験をしていることが うかがわれたとしている。 図表 7 これまでに体験のあるもの(複数回答) 4 6 頁 の調 査 概 要 の 説 明 のなかでも、「なお、本 報 告 書 のタイトルは問 題 を明 らかにする意 味 で『若 年 女 性 無 業 者 の自 立 支 援 に向 けた生 活 状 況 調 査 報 告 書 』とした。が、実 際 にアンケート等 の調 査 を行 う過 程 では、調 査 票 で も検 討 会 の名 称 においても『無 業 者 』という語 は使 用 していなかった。本 文 との齟 齬 があるのはそのためであること を付 け加 えておきたい。」と注 書 きされている。この事 実 が重 要 であり、考 察 で触 れる。 23 現在の家計の状況については、 「やや苦しい」 「 苦 し い 」を あ わ せ て 23 人 ( 50.0% ) で あ る 。「 ゆ と り が あ る 」「 ま あ ま あ ゆ と り が あ る 」 を あ わ せ て 17 人( 37.0% )、家 計 の 状 況 に つ い て「 よ く わ か ら な い 」と い う 人 が 6 人 ( 13.0% ) で あ る 。 回 答 者 の 主 観 と し て 、 家 計 状 況 の 厳 し い こ と が分かる。 ▽座談会の議論のポイント 一つ目は、 「“ 家 事 手 伝 い ”で 問 題 が 潜 在 化 す る 」こ と で あ る 。 「実質的 にニートの状態にある女性が“家事手伝い”という形で問題が潜在化」 すること、 「女性も男性も若いときに非正社員として働く傾向はどんどん 強まっていますけれども、男性は年齢が上がるとそこから正社員に抜け ら れ る の に 、女 性 は そ の 後 も ず っ と 非 正 社 員 化 が 進 ん で い く と い う 状 況 」 がある(山岡氏・内閣府男女共同参画局調査課 男女共同参画分析官の 発 言 : 28-29 頁 )。 山 岡 氏 は 、「 女 性 が 経 済 的 に 自 立 す る と い う こ と に つ い て の 本 人 ・ 家 庭・社会の意識の醸成が不十分であるということや、女性に不利な雇用 構造の影響がある」と思うという。さらに齋藤氏・横浜市市民活力推進 局男女共同参画推進課担当係長は、 「 経 済 状 況 、そ れ か ら 雇 用 状 況 が た い へん厳しいので、女性が安定的な生活を望むと男性の高収入に頼る傾向 があるのかもしれません」と述べている。 二 つ 目 は 、生 活 上 の 困 難 な 体 験 の 多 さ で あ る( 図 表 7)。多 く の 困 難 を 抱えて「家事手伝い」という方もいるのではないかという。さらに、女 性特有の問題として、性被害、家族からの暴力、夫や彼氏からの暴力と いった、暴力被害の影響が大きいのではないかという指摘もある。 三 つ 目 は 、「 無 業 と 非 正 規 雇 用 を 繰 り 返 す 働 き 方 」 で あ る 。「 今 回 の 調 査で私が非常に驚いたのは、職歴がそれなりに書き込まれて、みなさん 仕事の経歴があるということでした」と語られるが、他方で「不安定な 雇用を繰り返して年齢を重ねてしまうという構造があり、問題が非常に 深 刻 で あ る 」 と い う ( 山 岡 氏 : 33 頁 )。 四つ目は、調査で捉えた回答者が、若い女性全体の中で、どこに位置 づ く 層 な の か 、と い う 問 題 が 提 示 さ れ て い る こ と で あ る 。桜 井 氏 は 、 「た とえば母子家庭の母親の場合は、すでに統計データも整いつつあり、ジ ェンダー格差がそのまま経済格差に直結しているというとらえ方ができ ると思いますが、今回調査対象にした若い無業の女性の場合はどういう ふうにとらえれば、社会的な課題として出していけるのか」と発言され た 。( 35 頁 ) 24 こ れ に 対 し 、 有 吉 氏 ・ NPO 法 人 ユ ー ス ポ ー ト 横 濱 ( よ こ は ま 若 者 サ ポ ー ト ス テ ー シ ョ ン )臨 床 心 理 士 は 、 「女性のほうが非正規化する割合が高 いということで、決して限られた人の問題ではないととらえています」 と、労働の問題にひきつけて答えている。ただし、有吉氏は、女性の問 題が小さいわけではないとしながら、 「たとえばメンタルで通院していら っしゃるにしても、男性と女性のどちらが切羽詰まっているかといった ら 、 男 性 の 方 だ と 思 い ま す 」 と 発 言 し て い る ( 42 頁 ) 五 つ 目 は 、支 援 策 に 関 連 す る 発 言 で あ る 。田 仲 氏・マ イ ク ロ ソ フ ト( 株 ) 社会貢献部社会貢献コーディネーターは、 「 仲 間 に も 出 会 え て 、か つ 自 信 、 達成感を感じられる、スキルを身につけられるものとセットにして支援 し て い く 必 要 が あ る 」( 38-9 頁 ) と す る 。 斉 藤 氏 は 、 横 浜 の 男 女 共 同 参 画センター、横浜市も様々な支援を行っており、自助グループが重要で あり参加して欲しいということ、また単純な就労支援では不十分である と 指 摘 し て い る 。( 39 頁 ) ▽ 横 浜 市 男 女 共 同 参 画 推 進 協 会 ( 2009) に 関 す る 考 察 こ れ は 、「 若 い 女 性 も 少 な か ら ず 不 就 労 と そ れ に 伴 う 貧 困 問 題 に 直 面 」 しているという問題意識を背景にした、先駆的かつ画期的な調査報告で ある。このことと表裏一体であって、若い女性の貧困問題の発見という 意義と同時に、その問題把握の難しさが随所で示されていたと思う。 図表 6 の「今のあなたにとって不安なことはなんですか」という問い に 対 し て 、 45 人 ( 97.8% ) が 「 仕 事 ・ 職 場 の こ と 」、「 生 活 費 ・ 生 計 の こ と 」 25 人 ( 54.3% ) が 答 え 、 現 在 の 家 計 の 状 況 に つ い て は 、「 や や 苦 し い」 「 苦 し い 」を あ わ せ て 23 人( 50.0% )と い っ た 状 況 か ら み て 、経 済 的な苦しさは明らかにされていると考える。 一 方 で 、座 談 会 の 議 論 で は 、ま ず「“ 家 事 手 伝 い ”で 問 題 が 潜 在 化 す る 」 ことが指摘されている。女性の経済的自立という観点が社会的に確固と したものではなく、母子家庭の母親とは異なり、ジェンダー格差がその まま経済格差に直結していると把握できないという。 「今回調査対象にし た若い無業の女性の場合はどういうふうにとらえれば、社会的な課題と して出していけるのか」というのである。 そうはいっても、女性の貧困問題を明らかにしているのは、タイトル に「無業者」を用いながら、現在の就労状況を質問し、短期間の不安定 雇用、就労している状態と就労していない状態が断続的に繰り返される 状況を明らかにしたからだと思われる。 “ 家 事 手 伝 い ”=「 無 業 者 」で は なく、 「 無 業 と 非 正 規 雇 用 を 繰 り 返 す 働 き 方 」を 含 む こ と を 明 ら か に し た 25 のだと考える。 そこに切迫した状況は見て取れない、というのが正直な感想のようで ある。他方で、生活上の困難な体験の多さ、暴力の被害も少なくないこ とが女性特有の問題として指摘されている。支援策には、従来の女性支 援、自助グループへの参加と併せて、さまざまな生活上の困難の経験に 配慮した支援、就労支援が求められている。 同 調 査 報 告 書 の 試 行 錯 誤 の 過 程 か ら 、女 性 の 貧 困 を 理 解 す る の に 、 「最 低限度の経済的自立の可能性に対する個人の権利」という視点が重要で あることを再確認できる。 26 9 財 団 法 人 横 浜 市 男 女 共 同 参 画 推 進 協 会 ( 2011)『 男 女 共 同 参 画 セ ン タ ー等における生活困難を抱える若年(シングル)女性の自立支援プログ ラム開発事業 事業報告書』 ▽ 報 告 書 の 構 成 と 目 的 ( 1-7 頁 ) 同報告書は、先に取り上げた『若年女性無業者の自立支援に向けた生 活 状 況 調 査 報 告 書 』を 踏 ま え て 、 ( 財 団 法 人 )横 浜 市 男 女 共 同 参 画 推 進 協 会が、男女共同参画センターの蓄積してきた女性支援のノウハウを生か し て 若 年 者 に 対 す る 自 立 支 援 プ ロ グ ラ ム を 組 み 立 て 、2009 年 度 に 若 年 女 性 の た め の 自 立 支 援 講 座 ( 以 下 、「 ガ ー ル ズ 講 座 」) を 試 行 実 施 し た 内 容 を報告したものである。 この報告書の構成は、以下である。 Ⅰ 本事業の背景と目的 Ⅱ 検討委員会の開催について Ⅲ 若年女性のための自立支援講座のプログラムについて Ⅳ 検討結果 Ⅴ 検討委員会まとめ 資料 はじめに「なぜ女性に特化した支援が必要なのか」を四つの点から説 明している。一つ目は、いまだに社会に根強く残っている「男性は安定 した定職に就いて家族を養い、女性はそれに依存する」というジェンダ ー意識である。 「 ニ ー ト や フ リ ー タ ー の 状 況 に あ る 男 性 は 、経 済 的 な 自 立 と 親 か ら の 独 立 を 強 く 求 め ら れ る 傾 向 が あ る 」、 「女性は男性にくらべて、 出口がはっきりせず、自分の足で社会に出て行くことがイメージしにく い と い う 特 徴 が あ る と い え る 」。 二つ目は、若い世代が就職の難しさ、失業率の高さ、非正規雇用の増 加に直面している「働きづらさ」があるが、男性に比べて女性の状況は あまり問題とされていない。三つ目は、結婚、家族の変化で、未婚率の 上昇、その背景にある男性の雇用不安定化、性別役割分業観の下での家 族の経済的基盤が成り立たなくなっていることを挙げている。 四つ目は、以上の内容を総合したものともいえるが、現行若者支援サ ービスの状況と女性に特化したサービスの必要性である「 。既存の若者支 援プログラムは、若年女性無業者が置かれている状況、そのニーズが男 性とは異なるという前提に立っておらず、ジェンダー視点があるとはい 27 えない」ため、女性に特化したプログラムが必要であるという。 以 上 の 背 景 が あ っ て 、事 業 の 目 的 は 、 「女性のライフプランニング支援 事業を実施する男女共同参画センターにおいて活用できる、生活困難を 抱える若年(シングル)女性の自立を支援するモデル・プログラムを開 発 し 、 支 援 の あ り 方 に つ い て 検 討 す る こ と で あ る 」。 事業の中身は、 ( 1) 「 ガ ー ル ズ 講 座 」の 本 格 実 施( パ ソ コ ン 講 座 、し ご と 準 備 講 座 、講 座 修 了 生 が 講 師 を 務 め る 就 労 研 修 講 座 )、 ( 2)検 討 委 員 会 の設置・運営(ガールズ講座の検証と改善、多様な出口を視野に入れた 講座修了後の支援のあり方についての検討、地域の支援機関の連携、ネ ッ ト ワ ー ク に よ る 支 援 の あ り 方 に つ い て の 検 討 )、 ( 3)報 告 書 の 作 成 で あ る。 ▽若年女性のための自立支援講座のプログラムについて 【ガールズ講座】 事 業 と し て 2010 年 度 に 行 っ た の は 下 記 の 太 枠 で 囲 ん だ 第 3 期・第 4 期 の 2 コ ー ス で あ る が 、 こ の 講 座 は 2009 年 度 に 試 行 実 施 し 、 報 告 書 に お けるプログラムの評価は、試行実施の講座を含め、すべての参加者から のフィード バックを受 けて分析し ている。プ ログラムの 構成は左図 にあるよう に、パソコ ン講座とし ごと準備講 座から成る。 その他、プ ログラムの 詳細は、報 告書を参照 されたい。 28 【就労研修講座】 「ガールズ講座」修了生のうち就労体験希望者を対象として研修を実 施、研修を修了した者を一定期間スタッフとして雇用する「就労体験カ フ ェ( め ぐ カ フ ェ )」を 男 女 共 同 参 画 セ ン タ ー 横 浜 南( フ ォ ー ラ ム 南 太 田 ) で運営している。就労研修講座は、すでにカフェスタッフとして就労し ているメンバーが代わる代わる講師役になり、希望して研修を受ける後 輩に自分が身につけた技術や体験を伝えるという目的で行っているとい う。 【受講者のプロフィール】 受 講 者 数 は 、 合 計 86 人 で あ る 。 年 齢 は 、 20 代 前 半 が 37% ( 32 人 ) と 最 も 多 く 、20 代 後 半 27%( 23 人 )、 30 代 前 半 21%( 18 人 )、35 歳 以 上 12%( 10 人 )、 10 代 3%( 3 人 ) で あ る 。 学 歴 は 、 大 卒 と 短 大 卒 を 合 計 す る と 47%を 占 め て お り 、 よ こ は ま 若 者 サ ポ ー ト ス テ ー シ ョ ン 登 録 者 と の 比較では、やや学歴が高いという。 非 正 規 で の 就 労 経 験 の み の 者 が 59%( 51 人 )と 多 い 。正 規 で の 就 労 経 験 が あ る 者 は 26%( 22 人 ) と 約 3 割 、 就 労 経 験 が な い 者 は 15%( 13 人 ) と な っ て い る 。同 居 状 況 は 、両 親 と 同 居 し て い る 者 が 64%( 55 人 )と 最 も 多 く 、 ひ と り 親 家 庭 の 者 は 16%( 14 人 )、 一 人 暮 ら し を し て い る 者 は 9%( 8 人 )、 恋 人 と 暮 ら し て い る 者 は 3%( 3 人 ) で あ る 。 心 身 の 健 康 状 態 に つ い て は 、不 調 の 訴 え の 記 述 が 合 計 30 件 、講 座 の な かでは、通院、服薬経験が多数語られており、申込書から読み取れる以 上に、心身の調子が悪い受講者が多いとされている。心身の不調以外で の 困 難 な 経 験 に つ い て は 40 件 の 記 述 が あ り 、最 も 多 か っ た の は 、 「コミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 、 対 人 関 係 が 苦 手 」 と い う 内 容 で 20 件 、 次 い で 「 自 信 が 持 て な い 」こ と に か か わ る 記 述 が 10 件 、 「 経 済 的 困 窮 、不 安 」に か か わる記述が 5 件などであった。 以上を受けて、受講者の類型を、正規就労の経験の有無により、2 つ のグループに分類している。 ▽検討結果のポイント 以 上 を 踏 ま え て 、対 象 者 の 特 徴 を 次 の よ う に 規 定 し 、こ れ を 踏 ま え て 、 女 性 限 定 の プ ロ グ ラ ム を 実 施 す る 必 要 性 が あ る と す る ( 31-2 頁 )。 29 学 校 、職 場 、家 庭 等 で 生 活 上 の さ ま ざ ま な 困 難 を 経 験 し て き て お り 、 心 身 の 健 康 状 態 が 十 分 で な く 、人 間 関 係 を 苦 手 と し て い る 人 が 多 い と い う 特 徴 が あ る 。主 体 的 に 生 き 方 を 自 己 選 択 し て い く た め に は 、職 業 に 直 結 す る ス キ ル 習 得 以 前 に 、安 心 感 や 自 己 肯 定 感 の 回 復 ・ 獲 得 、社 会 生 活 上 の 基 本 的 ス キ ル を 身 に つ け る こ と 、人 と の か か わ り 方 の 練 習 を す る こ と な ど を 必 要 と し て い る 。こ れ ら の 事 柄 は 、地 域 若 者 サ ポ ー トステーションの対象者の特徴と重なり合う。 し か し 、女 性 の 場 合 、当 事 者 自 身 も 家 族 な ど 周 囲 も 、独 立 し て 自 立 し て 社 会 で 生 き て い く イ メ ー ジ を 明 確 に 描 き に く い 。若 い 女 性 が 無 業 の ま ま 生 家 に と ど ま っ て も 、「 家 事 手 伝 い 」 と し て み な さ れ 、 問 題 が 可視化されないという特徴がある。 また、女 性は 、ケ ア役 割、いわ ゆ る「母性 的」役 割を とる か、性的 ア ピ ー ル を 武 器 に す る か 以 外 に 、社 会 で 他 者 と 関 わ っ て 生 き て い く あ り 方 が 描 き に く い 。そ の ど ち ら に も 当 て は ま ら な い と 感 じ る 女 性 、ス テレオタイプに違和感を持つ女性は、社会に安心して居られる場所、 自分の力を発揮できる場所を得にくい。 さらに、受講生について、正規雇用での就労経験の有無により 2 つの タイプに分けている。 ① タ イ プ 1: 就 労 経 験 が な い 、 あ る い は 非 正 規 の 就 労 経 験 の み 学校生活において、あるいは学校を離れて社会に出る段階でなん ら か の「 つ ま ず き 」が あ っ た の で は な い か と 推 測 さ れ 、以 後 、不 安 定 な 状 況 に あ る 。非 正 規 就 労 の 内 容 と し て は 、数 ヶ 月 か ら 数 年 の 期 間 の 、 ア ル バ イ ト 、 派 遣 を 複 数 経 験 し て い る 。 20 代 以 下 の 人 、 高 等 教 育 機 関を卒業していない人に多くみられる。 ② タ イ プ 2: 正 規 就 労 の 経 験 が あ る 過酷な労働条件、激務で消耗、パワーハラスメント、会社都合、 う つ 病 な ど な ん ら か の 原 因 に よ り 、正 規 就 労 か ら 無 職 あ る い は 非 正 規 就 労 へ 移 行 し て い る 。本 プ ロ グ ラ ム の 申 込 書 に は 参 加 動 機 と し て「 働 く → ひ き こ も る の ル ー プ か ら 抜 け 出 せ な い 」と い っ た 記 述 も あ り 、厳 し い 状 況 か ら 抜 け 出 す こ と が 困 難 な こ と が う か が え る 。 30 代 の 人 、 高等教育機関を卒業している人に多くみられる。 30 上記の 2 つのタイプからは、働く女性の二極化する状況がうかがえる が、何らかの挫折を経験してきているという点は、両方のタイプに共通 しているという。 この後詳しく書かれている、プログラムそのものの内容について、報 告書を参照されたい。ここでは、講座修了後の追跡調査結果のうち「講 座 か ら 現 在 ま で の 変 化 に つ い て 」 を 紹 介 し て お き た い 。( 図 表 8) 図表 8 あてはまる変化 注目したのは、 「 仕 事 に 就 け た 」か と い う 項 目 へ の 回 答 で 、他 の 設 問 と は 明 ら か に 異 な る 結 果 で あ る 。た だ し 、 「 No」と 答 え た 人 の う ち 10 人 は 現在就労しており、講座受講前にもときどき行っていたアルバイトを継 続しているなど、現在の仕事が講座に通った成果とは思っていないとい うことかもしれないという。あるいはアルバイトや派遣で働いている状 態を「仕事に就けた」とは認識しておらず、正社員でなければ「仕事に 31 就 け た 」 こ と に な ら な い 、 と 考 え て 「 No」 を 選 択 し て い る と い う 可 能 性 も あ る 、 と し て い る 。( 48-9 頁 ) 今後の希望について、現在働いていない人は「アルバイトをできるよ う に な り た い 」、少 し で も 働 い て い る 人 は「 週 5 日 フ ル タ イ ム で 働 き 、収 入を上げたい」と回答している。ただ「現実には体調不良でフルタイム 就 労 は 難 し い こ と や 、雇 用 の 受 け 皿 が 少 な い 現 実 を 認 識 し て お り 」、 「『 働 くこと=週 5 日働くこと』という社会常識がプレッシャーになっている こ と が う か が え る 」 と い う 。( 54 頁 ) ▽ 検 討 委 員 会 で の 結 論 ― ― プ ロ グ ラ ム の 課 題 と 成 果 ( 69-73 頁 ) まず、 「ライフプランニングの視点から本プログラムの意味を考えると、 否定的な経験による傷つきから回復のきっかけをつかめずにいた人にき っ か け を 提 供 し 、一 歩 踏 み 出 す 後 押 し を し た と い え る 。」と し た 。た だ し 、 これは自立に向けて一歩を踏み出す入り口で、 「働いて食べていける状態」 ではない、という。 「 自 立 と は 収 入 を 得 る こ と だ け な の か 」と い う 視 点 も 提 示 し て い る が 、 「社会で自立して生きていくためには、働いて収入を得られるようにな る 意 味 は 大 き い 」し 、 「 実 際 、働 き た い 、働 か ね ば と 思 っ て い る 受 講 者 が 多いのも事実」という。 ▽ 横 浜 市 男 女 共 同 参 画 推 進 協 会 ( 2011) に 関 す る 考 察 同 書 は 、先 に 手 が け ら れ た 2009 年 の 報 告 書 と は 異 な り 、支 援 プ ロ グ ラ ムの作成と実施が目的であるため、受講者の実態把握、経済的困難の指 摘が減っている。あるいは、はじめに四つの点から説明された「なぜ女 性 に 特 化 し た 支 援 が 必 要 な の か 」 と い う 問 題 意 識 に 基 づ い て 、( 経 済 的 ) 自立を支援するという立場を明確にしたとも取れる。 (経済的)自立、としたのは、このプログラムが、女性が主体的に生 き方を自己選択していくためとして、 「職業に直結するスキル習得以前に、 安心感や自己肯定感の回復・獲得、社会生活上の基本的スキルを身につ けること、人とのかかわり方の練習をすること」に重点を置いているた めである。 他方で、女性にとっても、あるいは少なくともプログラム受講生にと っ て は 、就 労 へ の 意 欲 は 大 き く 、プ レ ッ シ ャ ー の あ る こ と が 見 て 取 れ る 。 しかも正社員、正規雇用への意欲のある者も少なくないようである。受 講生について正規雇用での就労経験の有無で 2 つのタイプに分けられて いる。 32 正規雇用の経験がある場合、過酷な労働条件、激務で消耗、パワーハ ラスメント、会社都合、うつ病などなんらかの原因により、無職あるい は非正規就労へ移行していることを踏まえると、労働環境の劣悪さとい う問題、いわば経済的自立の前提条件の改善が必要であることが示唆さ れる。 33 10 北 海 道 総 合 研 究 調 査 会( 2012) 『 平 成 23 年 度 パ ー ソ ナ ル・サ ポ ー ト ・ サービスの評価手続きに係わる調査報告書』 ▽報告書の構成と目的 この報告書は、次のような構成になっている。 1 調査の概要 2 モデル・プロジェクトの事業主体 3 収集データの概要 4 対象者の属性 5 PS 事 業 の 支 援 の 定 量 的 分 析 6 支援モジュールに関する分析 7 事務局機能に関する分析 8 平 成 22 年 度 調 査 に お け る 追 跡 調 査 9 「5 つの理念」に基づくプロセス評価について 10 パーソナル・サポート・サービスの今後に向けた検討課題 (参考資料) パーソナル・サポート・サービスとは「生活上様々な困難に直面して い る 人 に 対 し 、個 別 的 ・ 継 続 的 ・ 包 括 的 に 支 援 を 行 う も の 」( 1 頁 ) で あ る 。2010 年 度 よ り 全 国 5 地 域 で モ デ ル・プ ロ ジ ェ ク ト が 実 施 、2011 年 度 に 14 地 域 が 追 加 、 2012 年 度 に は 8 地 域 が 追 加 さ れ る と い う 。 こ の 調 査 は 、 2011 年 度 ま で に 実 施 さ れ た 19 地 域 に お け る 支 援 の 成 果 報 告 書 で あ り 、 パ ー ソ ナ ル ・ サ ポ ー ト ・ サ ー ビ ス ( 以 下 、 PS) の 必 要 性 や 効 果 を 整 理し社会的認知を広げるために企画されている。 したがって、本報告書のテーマの本筋は、本研究のテーマと直接関連 す る も の で は な い 。注 目 す る の は 、 「生活上様々な困難に直面している人」 という支援対象者の状況である。男女別のデータが少ないが、就労状況 について、男女の状況の異同を検討できる。 ▽対象者の属性 こ こ で 把 握 さ れ た 対 象 者 は 、1 地 域 あ た り 概 ね 30 件 程 度 の 情 報 を 収 集 し た 、 計 528 件 で あ る 。 調査対象の年代は、 「 30 歳 代 」が 123 人( 23.3% )、 「 40 歳 代 」が 117 人 ( 22.2% )、「 20 歳 代 」 が 103 人 ( 19.5% )の 順 に 割 合 が 高 い 。 調 査 対 象 の 性 別 は 、「 男 性 」 が 342 人 ( 64.8% )、「 女 性 」 が 185 人 ( 35.0% ) と 、 34 女性よりも男性の割合が高い。しかし、図表 9 から明らかなように、ど の年代においても 3 割程度は、女性の支援対象者がいる、ともいえる。 図表 9 年代別の性別の割合 ( N=525) 同居の有無については、 「 同 居 者 有 り 」が 343 人( 65.0% )、 「 単 身 」が 172 人 ( 32.6% ) と な っ て い る 。 年 代 別 に み る と 、 50 歳 代 ま で は 「 同 居 者 有 り 」 の 割 合 が 高 く な っ て い る が 、 60 歳 以 上 で は 、「 単 身 」 の 割 合 が 65.6% と 半 数 を 超 え て い る 。( 11 頁 ) 結婚の有無については、 「 未 婚 」が 320 人( 60.6% )と 最 も 高 く 、次 い で 「 離 別 ・ 死 別 」 が 106 人 ( 20.1% ) と な っ て い る 。 年 代 別 に み る と 、 30 歳 代 ま で は 7 割 以 上 が 「 未 婚 」 で あ り 、 40 歳 代 ・ 50 歳 代 で は 約 25% が 「 離 別 ・ 死 別 」 と な っ て い る 。 な お 、 60 歳 以 上 で は 「 離 別 ・ 死 別 」 が 46.9% と 最 も 高 く な っ て い る 。( 12 頁 ) 疾病の有無は、 「 有 」が 181 人( 34.3% )、 「 既 往 」55 人( 10.4% )、 「無」 が 219 人( 41.5% )、と な っ て い る 。年 代 別 に み る と 年 代 が 高 く な る ほ ど 「 有 」の 割 合 が 高 く な っ て お り 、60 歳 代 以 上 で は 45.3% と 約 半 数 に な っ て い る 。( 14 頁 ) 障 害 の あ る 方 は 148 人( 28.0% )で 、障 害 の な い 方 は 284 人( 53.8% ) で あ っ た 。年 代 別 に み る と 、30 歳 代 で は 、障 害 の あ る 方 が 43.1% と な っ て お り 、 最 も 高 い 割 合 と な っ て い る 。( 15 頁 ) 生 育 歴 に お け る 課 題 に つ い て み る と 、図 表 10 の よ う に 、全 体 で は 、 「精 35 神 疾 患 」を 抱 え て い る 人 の 割 合 が 最 も 高 く 、次 い で「 家 庭 の 貧 困・借 金 」 の 割 合 が 高 く な っ て い る 。( 16 頁 ) 図 表 10 生 育 歴 に お け る 課 題 ( 複 数 回 答 、 N=528) 就 労 の 有 無 に つ い て 、現 在 就 労 し て い る 方 は 115 人( 21.8% )、就 労 し て い な い 方 は 368 人( 69.7% )と な っ て い る 。年 代 別 に み る と 、20 歳 未 満 で は 現 在 就 労 し て い る 方 が 28.2% と な っ て い る が 、 20 歳 代 と 60 歳 代 は そ れ ぞ れ 16.5% 、 17.2% と 低 い 割 合 と な っ て い る 。( 18 頁 ) 図 表 11 に は 、現 在 就 労 し て い る 方 に つ い て 、性 別・年 代 別 の 就 労 の 形 態 が 示 さ れ て い る 。全 体 的 に「 ア ル バ イ ト・パ ー ト 」の 割 合 が 多 い た め 、 男 女 の 差 は 明 確 で は な い が 、 20 歳 未 満 と 60 歳 代 を 除 い て 、 女 性 の 方 が 「アルバイト・パート」の割合が高い。とはいえ、ケース数が少なく、 20 歳 未 満 の 女 性 は 1 ケ ー ス が 「 無 回 答 」 で あ り 、 60 歳 代 は 、「 そ の 他 」 が 2 ケ ー ス の た め 、 こ の 数 値 で あ る 。( 20 頁 ) 36 図 表 11 性 別 ・ 年 代 別 の 就 労 の 形 態 ( N=115) 現在就労していない人の直近の就労形態については、男女の差が明確 に 見 て 取 れ る 。 40∼ 60 歳 以 上 の 男 性 に お い て は 、「 正 社 員 」 の 割 合 が 高 37 い 一 方 、 20∼ 30 歳 代 の 「 ア ル バ イ ト ・ パ ー ト 」 の 男 女 、 そ し て 、 40∼ 60 歳 代 の 女 性 の 「 ア ル バ イ ト ・ パ ー ト 」 が 高 い 割 合 を 示 し て い る 。( 図 表 12)( 23 頁 ) 図 表 12 年 代 別 ・ 性 別 の 直 近 の 就 労 形 態 ( N=368) さ ら に 、最 初 に 就 い た 就 労 形 態 で も 同 様 で あ り 、30∼ 50 歳 代 以 上 の 男 性 で は 「 正 社 員 」 が 高 い 割 合 を 示 し て い る が 、 一 方 で 、 20 歳 代 の 男 女 、 38 30 歳 代 、60 歳 代 以 上 の 女 性 で は「 ア ル バ イ ト・パ ー ト 」に 関 し て も 高 い 割 合 を 示 し て い る 。( 図 表 13)( 25 頁 ) 図 表 13 最 初 に 就 い た 就 労 形 態 ( 20 歳 未 満 と 年 代 無 回 答 を 除 く ) 現在抱えている問題領域について、男女別にみると、女性は「家族・ 地 域 と の 関 係 」が 45.9% と 男 性 と 比 べ て 高 く な っ て い る 。 ( 図 表 14) ( 29 頁) 39 図 表 14 男女別の問題領域 ▽ 北 海 道 総 合 研 究 調 査 会 ( 2012) に 関 す る 考 察 2011 年 度 ま で に 実 施 さ れ た 19 地 域 に お け る PS の「 生 活 上 様 々 な 困 難 に直面している人」という支援対象者に関する調査結果をみてきた。調 査対象者は、全支援対象者から任意で選ばれた人たちであり、いくらか バイアスがあるかもしれない。 どの年代においても 3 割程度は、女性の支援対象者がいることを確認 で き た 。 同 居 の 割 合 は 、 横 浜 市 男 女 共 同 参 画 推 進 協 会 ( 2009) に 比 べ る とやや低く、男性の割合が多いからかもしれない。生育歴における課題 で「精神疾患」を抱えている人の割合に次いで「家庭の貧困・借金」の 割合が高く、貧困問題を確認ができる。 性別でのデータを確認できたのは、就労状況についてである。現在就 労している方について、全体的に「アルバイト・パート」の割合が多い ため、男女の差は明確ではなかった。 現 在 就 労 し て い な い 人 の 直 近 の 就 労 形 態 に つ い て は 、 20∼ 30 歳 代 の 「 ア ル バ イ ト ・ パ ー ト 」 の 男 女 、 そ し て 、40∼ 60 歳 代 の 女 性 の「 ア ル バ イト・パート」の割合が高く、男女と年代の差が明確であった。最初に 就 い た 就 労 形 態 で も 、 20 歳 代 の 男 女 、 30 歳 代 、 60 歳 代 以 上 の 女 性 で は 「 ア ル バ イ ト・パ ー ト 」の 割 合 が 高 く 、男 女 と 年 代 の 差 が 明 確 で あ っ た 。 若い年代の男性が置かれている状況と、女性の状況が似ているというこ とができる。 現在抱えている問題領域についてみると、女性は「家族・地域との関 係」の割合の高さが特徴的であった。この点は、すでに紹介してきた文 献で指摘されていた内容と一致している。このようにみていくと、そも そも、性別でのデータを収集するかどうか、という点に、調査設計、分 析の視点の違い、発見する事実に違いが生じると分かる。 40 11 せ ん だ い 男 女 共 同 参 画 財 団 編( 2013) 『女性の生活状況及び社会的困 難をめぐる事例調査』 ▽報告書の構成と目的 こ の 報 告 書 の 構 成 は 、 次 の よ う に な っ て お り 、「 1 調査の概要」で調 査の目的が述べられている。 はじめに 1 調査の概要 2 事例調査結果 3 「国民生活基礎調査」分析結果 4 まとめ及び提言 5 資料 「 2000 年 代 以 降 、 そ れ ま で 『 家 族 福 祉 』 や 『 企 業 福 祉 』 に よ っ て 隠 さ れていた『問題』が顕在化し始めている」が、適切な社会保障制度改革 は立ち遅れている。 「何らかの事情でひとたび標準化されたライフコース から外れた女性は大きなリスクを抱え、セーフティーネットの対象外と なり生活困難に陥っている」という。 女 性 は 、「 家 族 福 祉 」 の な か に あ っ て 、「 親 と の 同 居 や 『 家 事 手 伝 い 』 という立場、結婚して夫の被扶養者(=主婦)となることで一定の生活 が可能」であり、その状況は問題にされてこなかった。一方、女性は、 「企業福祉」の対象ではなく、非正規・不安定の雇用状態で経済的に自 立できなくても問題にされてこなかった。 「所得や生活水準の低さといった数値に反映される側面だけでなく、 社会参加や社会的つながりの制限なども含めて『隠れた困難』の実態、 これまで可視化されず、問題にされにくかった若年女性のケースを明ら か に す る こ と を 目 的 に 、事 例 調 査 を 実 施 し た 」。さ ら に 、厚 生 労 働 省「 国 民 生 活 基 礎 調 査 」( 2007 年 ) の デ ー タ を 使 用 し 、 全 国 及 び 東 北 地 方 の 相 対 的 貧 困 率 を 分 析 も 行 っ て い る 。( 1 頁 ) ▽ 事 例 調 査 の 概 要 ( 2-4 頁 ) 調査対象は、 「 A 非 正 規 雇 用 で 働 く 20∼ 30 代 の 未 婚 女 性 」、 「B 単身世帯 で 暮 ら す 高 齢 女 性 」、「 C ひ と り 親 と し て 子 育 て を し て い る 女 性 」、「 D 配 偶 者 や パ ー ト ナ ー か ら 暴 力 を 受 け た 経 験 の あ る 女 性 」、で あ る 。 「 従 来『 貧 困』という観点からは捉えられてこなかった女性の困難に焦点」をあて 41 るため、上記 4 つのカテゴリーを設定した。 こ の 対 象 に 限 定 し た 理 由 は 、先 に 引 用 し た よ う に 、 「夫婦と子ども 2 人 という家族形態などのいわゆる『標準モデル』が急激に解体」する一方 で、従来このモデルを前提にしてきた「セーフティーネットの不完全性 の問題が、同時に複合的に現れる可能性」という問題認識にある。4 つ のカテゴリーごとに自立の妨げになっていることを検証し、困難な状況 の回避・脱出のための有効な支援を考える出発点とするとしている。 事 例 調 査 は 、依 頼 し た 支 援 機 関 を 通 じ て 承 諾 が 得 ら れ た 女 性 計 16 名 で 、 その内訳は、A 5 名、B 2 名、C 3 名、D 6 名、である。 ▽ 事 例 調 査 結 果 の ポ イ ン ト ( 5-52 頁 ) 「 A 非 正 規 雇 用 で 働 く 20∼ 30 代 の 未 婚 女 性 」 の 現 状 と 課 題 と し て 、 5 点挙げられている。①「現状を変えたい」願望があるが、多くの課題が そ れ を 困 難 に し て い る 、② 経 済 的 自 立 に 関 す る 規 範・期 待 が 低 い 、③「 一 人前」 「 安 定 し た 立 場 」と し て 結 婚 に 大 き な 比 重 が 置 か れ る 、④ 就 労 支 援 機関が効果的に活用されていない、⑤「結婚」を考えると将来設計が展 望しにくい。 5 事例の共通点は、非正規雇用である。そのため、経済的困難がある と さ れ て い る が 、1 人 暮 ら し を し て い る 2 事 例 と 、家 族 と 同 居 し て い る 3 事例では実態としての差は大きい。後者は、同報告書の表現に依拠すれ ば 、「 家 族 福 祉 」 に 守 ら れ て い て 経 済 的 困 難 は 見 え に く い 。「 結 婚 」 と い う新たな・別の「家族福祉」が正規就職と同列視される。他方で結婚を 視野に入れた途端に将来設計を描きにくくなる事例があったことを指摘 している。 まさに、女性の「経済的自立に関する規範・期待が低い」のであり、 それと表裏一体の関係にあって、経済的自立の資源、経路は不確かであ る。 「 B 単 身 世 帯 で 暮 ら す 高 齢 女 性 」の 現 状 と 課 題 は 、3 点 挙 げ ら れ て い る 。 ①金銭・財産に関する決定権が本人にない場合がある、②社会保障制度 に関する情報アクセスが不十分、③健康状態の悪化が生活の幅を左右し がちである。事例には、高齢期の問題が現れているが、女性の問題とし て特徴的なのは①であり、財産管理や公的制度の利用にかかわる決定権 が剥奪されてきた状況がうかがえる。 「C ひとり親として子育てをしている女性」の現状と課題は、6 点挙 げられている。①経済的な不安が避けられない、②実家による支援の比 重が大きい、③同居家族がもつセーフティーネットとしての機能、④実 42 家による支援のリスク、⑤家族以外の人からの支援も重要な社会的資源 である、⑥就業経験は大きな支えになる。 この特徴は、A のカテゴリーと重なる部分が多い。すなわち、正規雇 用で育児休業中の 1 事例を除き、経済的に不安定であること、実家とい う「家族福祉」に支えられている部分が大きい、という点である。もち ろん、子育てのサポートを必要とし、子どもに対する児童扶養手当とい った社会保障給付があるという制度上の対応の違いなどもある。 しかし、 「 生 活 の 安 定 に と っ て 就 業 実 績( と く に 正 社 員 )と 並 ん で 、実 家 の 援 助 が 依 然 と し て 大 き な 比 重 を 占 め て い る 」、「 ひ と た び 実 家 に 何 ら か の 困 難 が 生 じ た 時 、容 易 に リ ス ク へ と 転 換 し 、経 済 的 困 難 に 直 結 す る 」 と考えられる。 「D 配偶者やパートナーから暴力を受けた経験のある女性」の現状と 課 題 は 、 4 点 挙 げ ら れ て い る 。 ① DV の 影 響 は 複 合 的 ・ 多 面 的 に 生 活 に 現 れ る 、② DV 関 連 情 報 は い ま だ 不 足 、啓 発 も 不 十 分 、③ 家 族 ・ 親 族 以 外 の ネットワークが力になる、④世帯類型を問わず受けられる支援サービス が少ない。 こ の 特 徴 に も 示 さ れ て い る よ う に 、D は 、 「 家 族 福 祉 」が 前 提 と さ れ る 社会にあって家族から被害を受ける深刻な事例である。生活再建の支え となるのは、家族・親族以外の人間関係であり社会資源である。6 事例 のうち 2 事例が現在生活保護受給であり、離婚調停中に受給が 1 事例で あ っ た 。問 題 は 、 「 世 帯 類 型 や 配 偶 関 係 を 問 わ ず 受 け ら れ る 、個 人 単 位 の 支援サービスの少なさ」であるという。 ▽ 「 国 民 生 活 基 礎 調 査 」 分 析 結 果 の ポ イ ン ト ( 53-72 頁 ) 分 析 結 果 の ま と め と し て 、次 の よ う に 述 べ ら れ て い る 。 「現代の日本社 会では、中年期までの期間であれば、夫婦家族世帯や 3 世代世帯のよう な形態で生活していれば、貧困に陥る危険は低くおさえられる。これに 対して、未婚の単独世帯や一人親世帯などの形態の場合には、相対的貧 困率が高い。また、高齢になると、貧困に陥る危険が高まる。これらの 要 因 は 、 性 別 と 密 接 に 関 わ っ て い る 。」 た だ し 、「 親 族 関 係 に 経 済 的 に 依 存していると、その関係が破綻した場合に困窮してしまうおそれが大き いという点にも注意が必要である」としている。 こ の 特 徴 は 、す で に 見 て き た 事 例 調 査 で も 指 摘 さ れ て い た よ う に 、 「家 族福祉」に守られる、あるいは「家族福祉」が前提にある。その結果で あり原因として女性の「経済的自立に関する規範・期待が低い」ことが あ り 、女 性 の 経 済 的 自 立 の 資 源 、経 路 は 不 確 か で あ る 。 「D 配偶者やパー 43 トナーから暴力を受けた経験のある女性」のケースで明らかであるよう に、家族により被害を受ける場合、生活再建の支えとなるのは家族以外 の人的・社会資源であるといえよう。 ▽まとめ及び提言 以上を踏まえ、調査を通して明らかになった女性の生活困難を 4 点に まとめ、3 つの提言を行っている。 ①女性の経済的自立に対する社会的規範・期待の低さが、非正規雇用 で働く女性の「不安定な生活から抜け出したい」という葛藤や悩みを社 会問題とすることを妨げてきた、②金銭や財産の決定権が女性にない、 ③家族というセーフティーネットの両義性、④女性が抱える困難の複合 性、である。 これに対する提言は、①現行制度の「谷間」に目を向ける、②リスク の重複をふまえる、③支援者にはジェンダー視点が不可欠である、とい う 3 点である。 ▽ せ ん だ い 男 女 共 同 参 画 財 団 編 ( 2013) に 関 す る 考 察 16 名 と 少 数 の 事 例 調 査 で あ る が 、「 国 民 生 活 基 礎 調 査 」 の 分 析 と 併 せ て 、近 年 、女 性 の 貧 困 が 問 題 化 し た 背 景 と 特 徴 が よ く 描 き 出 さ れ て い る 。 ま ず は 、こ れ ま で 女 性 が「 家 族 福 祉 」の な か に あ っ て 、 「 企 業 福 祉 」の 対 象とされず、経済的自立に対する社会的規範・期待の低い、という実態 が 明 ら か に さ れ た 意 義 は 大 き い 。 2000 年 代 に 入 り 、 4 章 で 取 り 上 げ る 国 の調査報告もあって、女性の貧困問題を捉える視野が開けた。 とはいえ、発見された女性の貧困問題は、深刻かつ複雑である。さら にこの問題を読み解き、今後の支援につなげていく見通しとしては、横 浜市男女共同参画推進協会による一連の調査・プロジェクト実施実績に 学ぶ点が多いと考える。 44 12 公 益 財 団 法 人 横 浜 市 男 女 共 同 参 画 推 進 協 会( 2014) 『ガールズ編しご と 準 備 講 座 & 『 め ぐ カ フ ェ 』 就 労 体 験 修 了 者 追 跡 調 査 報 告 書 』『 同 、 結 果要約』 ▽報告書の構成と目的(3 頁) 同報告書は、先に取り上げた『若年女性無業者の自立支援に向けた生 活 状 況 調 査 報 告 書 』、さ ら に『 男 女 共 同 参 画 セ ン タ ー 等 に お け る 生 活 困 難 を 抱 え る 若 年( シ ン グ ル )女 性 の 自 立 支 援 プ ロ グ ラ ム 開 発 事 業 事 業 報 告 書』の続編と位置づけられる。 2010 年 度 に 立 ち 上 げ 、継 続 実 施 し て き た 就 労 体 験 事 業( ガ ー ル ズ 支 援 事 業 と 称 さ れ て お り 、詳 し く は 先 に 取 り 上 げ た 報 告 書 を 参 照 )に つ い て 、 開 始 か ら 5 年 目 の 段 階 で 、事 業 の 実 効 性 を 検 証 し 、今 後 を 考 え て い く た め に 2012 年 度 ま で の 支 援 の 修 了 生 を 対 象 と し 、 追 跡 調 査 を 行 っ た 。 同報告書は、 1 調査の目的 2 アンケート調査 3 調査結果の分析 概要、結果 から構成されている。 ▽調査の概要 ガ ー ル ズ 講 座 第 1 期 ( 2009 年 6∼ 7 月 ) ∼ 第 8 期 ( 2012 年 10∼ 11 月 ) 修 了 者 157 人 、 め ぐ カ フ ェ 就 労 体 験 修 了 者 の う ち ガ ー ル ズ 講 座 を 受 講 し て い な い 者 6 人 の 合 計 163 人 が 調 査 対 象 で あ る 。調 査 方 法 は 、調 査 票 の 郵 送 で 、 回 収 数 62、 回 収 率 は 調 査 票 不 達 者 数 ( 7 人 ) を 除 く 156 人 を 母 数 と し て 、 39.7% で あ る 。 ▽調査結果 ガ ー ル ズ 講 座 を 受 講 し た 時 、 平 均 受 講 年 齢 は 27.5 歳 、 2013 年 8 月 1 日 現 在 の 平 均 年 齢 は 30.0 歳 で あ る 。 同 居 の 有 無 は 、「 同 居 し て い る 人 は い な い 」 が 11.3% 、「 同 居 し て い る 人 が い る 」 が 87.1% で あ る 。 最 終 学 歴 に つ い て は 、「 四 年 制 大 学 卒 業 」 が 32.3% 、「 短 大 卒 業 」 が 14.5% 、「 高 校 卒 業 」 が 12.9% 、 一 方 、「 高 校 中 退 」、「 専 門 ( 各 種 ) 学 校 中 退 」等 の 学 校 中 退 者 は 、27.4% で あ っ た 。現 在 の 健 康 状 況 に つ い て は 、 「 ま あ ま あ よ い 」 が 66.1% 、「 あ ま り よ く な い 」 が 19.4% 、「 悪 い 」 が 6.5% と な っ て い る 。 「ガールズ講座や『めぐカフェ』就労体験の修了後にしたことはなん 45 ですか。 ( 複 数 回 答 )そ の 中 で 、特 に 役 立 っ た も の・し て 良 か っ た こ と は なんですか。 ( 3 つ ま で )」と い う 質 問 に 対 す る 回 答 が 、次 の 図 表 15 で あ る。 図 表 15 ガ ー ル ズ 講 座 や「 め ぐ カ フ ェ 」修 了 後 に 経 験 し た 事 / 特 に 役 立 っ たもの ガールズ講座や「めぐカフェ」修了後にした事については、多い順に 「 相 談 機 関 や 支 援 機 関 に 行 っ て 相 談 を し た 」 が 71.0% 、「 ハ ロ ー ワ ー ク に 行 っ た 」が 43.5% 、 「 求 人 に 応 募 し た 」が 43.5% で あ る 。こ の 並 び は 、 修了後にしたことの中で、特に役立ったものと似ており、多い順に「相 談 機 関 や 支 援 機 関 に 行 っ て 相 談 を し た 」 が 24.2% 、「 求 人 に 応 募 し た 」 46 が 11.3% 、 「 障 害 者 手 帳 を 取 得 し た 」が 11.3% 、 「ハローワークに行った」 が 9.7% で あ る 。 ガ ー ル ズ 講 座 終 了 後 の 仕 事 や 活 動 に つ い て は 、「 し た 」 が 61.3% ( 38 人 )、 「 し て い な い 」が 29.0%( 18 人 )と な っ て い る 。講 座 修 了 後 、経 験 し た 仕 事 は 、「 ア ル バ イ ト 」 が 73.7% 、「 そ の 他 」 が 34.2% 、「 派 遣 」 が 21.1% と な っ て い る( 複 数 回 答 )。現 在 の 就 労 状 況 及 び 予 定 に つ い て は「 し て い る 」 が 46.8% 、「 し て い な い 」 が 46.8% と な っ て い る 。 ▽ 調 査 結 果 の 分 析 の ポ イ ン ト ( 32-40 頁 ) 【事業の有効性】 回 答 者 の 内 、 現 在 ( 2013 年 8 月 1 日 )、 収 入 の あ る 仕 事 や 活 動 を し て い る 人 は 46.8% と い う 結 果 に つ い て 、講 座 の 有 効 性 を 示 し て い る と い う 。 一 方 で 、雇 用 環 境 が 厳 し い 状 況 で 、働 き づ ら さ を 感 じ て い る 女 性 た ち が 、 ガールズ講座や就労体験修了後すぐに就職先を見つけ、働き始めること は大変難しいこと、講座修了者の就労条件の厳しさを指摘している。 ガールズ講座の成果として、同じように悩む女性たちとの出会いによ って、さまざまな困難を構造的・社会的な課題として捉えられるように なったこと、 「 め ぐ カ フ ェ 」就 労 体 験 の 成 果 と し て 、就 労 体 験 を 通 し て 手 応えを感じた修了者にとっては、大きな自信にもつながっていることが 見て取れる、としている。また、女性に特化した支援の有効性と必要性 も強調している。 修 了 後 に し た こ と・役 立 っ た こ と の う ち 、 「 障 害 者 手 帳 を 取 得 し た 」は 19.4% 、 す な わ ち 修 了 者 の 5 人 に 1 人 が 障 害 者 手 帳 を 取 得 し た と い う 結 果に着目している。障害がある場合には、障害者手帳を取得することも 前向きな選択肢の一つとして提示しており、ガールズ講座の受講がき っかけとなり、障害者就労の道という「次の新しい世界の扉を開い」て もらったという自由記述も見られたという。 【修了者の現在の状況とこれまでの経験について】 注目すべきは、ガールズ講座や就労体験に参加する以前に、学校や家 庭 で 経 験 し た こ と に つ い て 、2012 年 度 に 横 浜 市 が 実 施 し た「 横 浜 市 子 ど も・若 者 実 態 調 査 」 ( 以 下 、市 調 査 )で の 設 問 項 目 と 回 答 項 目 を 一 部 同 じ ものにして調査を行い、比較をしている点である。 学 校 で の 経 験 に つ い て は 、「 友 達 と よ く 話 し た 」 が 本 調 査 で は 54.8% だ が 、市 調 査 で は 90.1% で あ り 、大 き く 差 が あ り 、市 調 査 で は「 友 達 に い じ め ら れ た 」 が 25.7% で あ る の に 対 し て 、「 ク ラ ス メ イ ト な ど か ら い 47 じ め ら れ た 」48.4% と 、2 倍 近 い 結 果 で あ っ た 。家 庭 で の 経 験 と し て は 、 「 家 か ら ほ と ん ど 出 な い 状 態 が 半 年 以 上 続 い た 」が 45.2% と 、半 数 近 く が ひ き こ も り の 状 態 を 経 験 し て い る の に 対 し 、 市 調 査 で は 1.9% と な っ て お り 、 20 倍 以 上 の 開 き が あ る 。 ほかにも、 「 親 や 兄 弟 な ど か ら 暴 力・虐 待 を 受 け た 」17.7% に 対 し て 市 調 査 の 「 親 か ら 虐 待 を 受 け た 」 1.7% 、「 経 済 的 に 苦 し い 生 活 を 送 っ た 」 16.1% に 対 し て 市 調 査 6.1% 、 と い う よ う に 、 困 難 な 状 況 に つ い て は 、 市調査よりも高い結果であるという。 【今後の支援のあり方について】 就職活動にチャレンジをしたもののうまくいかず、再びひきこもりが ちになってしまった修了者が少なくないことがわかり、修了者たちを対 象とした支援として、新たな講座の開講、あるいはガールズ講座の複数 回受講を可能にしてほしいといった意見もあったという。他方で、就労 していても、さまざまな困難や課題を抱えつつ働いていることが推測さ れ、継続して働き続けられるよう、フォローアップの支援も検討してい かなければならないとしている。 これらのことを踏まえ、 「ガールズ講座のようなグループ型の支援を継 続しつつ、その後の支援としては、より個別的な対応が求められている と言える」としている。他方で「修了者同士がゆるやかにつながる場づ くりの支援を継続して実施すること、そしてその場を、地域で多様な活 動を行う市民らの力を借りて開かれたものにしていくこと」の大切さも 指摘している。 最後に、若年無業女性の問題について、このような調査で明らかにな った事実、あるいは現場で聴き取った当事者の声等を社会に発信し、社 会の問題として働きかけていく必要を述べている。 ▽ 横 浜 市 男 女 共 同 参 画 推 進 協 会 ( 2014) に 関 す る 考 察 こ れ が 、 横 浜 市 男 女 共 同 参 画 推 進 協 会 が 2009 年 か ら 取 り 組 ん で き た 「若年無業女性」に対する調査及び支援事業の最新報告である。同事業 の 意 義 に つ い て は 、 ま ず 、 横 浜 市 男 女 共 同 参 画 推 進 協 会 ( 2011) に 関 す る考察で述べたことに重なる点がある。 すなわち、さまざまな困難や課題を抱えていることを前提に、就労以 前の、自信とか自己肯定感の回復が目指され、その効果が現れているこ とである。他方で、ガールズ講座や「めぐカフェ」修了後にした事につ いては、相談・支援機関への相談に加え、就職活動が多く、実際、就労 48 した者も少なくない。就労への意欲の高さがうかがえるわけだが、労働 環境の厳しさ、就労継続の困難さにも触れられており、これらの問題が 継続している。 そ の な か で 、 横 浜 市 男 女 共 同 参 画 推 進 協 会 ( 2011) で は 観 察 さ れ て い なかった別の可能性として示されたのが、障害者就労である。修了後に し た こ と ・ 役 立 っ た こ と の う ち 、「 障 害 者 手 帳 を 取 得 し た 」 は 19.4% 、 すなわち修了者の 5 人に 1 人が障害者手帳を取得したという結果は注目 に値する。 さらに、本研究の女性の貧困問題というテーマから注目したいのは、 2012 年 度 に 横 浜 市 が 実 施 し た 「 横 浜 市 子 ど も ・ 若 者 実 態 調 査 」( 以 下 、 市 調 査 )と の 比 較 で あ る 。 「 経 済 的 に 苦 し い 生 活 を 送 っ た 」と い う 項 目 に つ い て 、修 了 生 16.1% 、市 調 査 6.1% で あ る 。市 調 査 の 数 字 も 決 し て 小 さいとはいえないが、その 3 倍近い数値である。暴力、虐待の経験、ひ きこもりの経験からみても、相対的により困難な状況にある修了生の様 子を確認できる。 49 3-4 まとめ 3-3 で 2000 年 代 に 入 っ て か ら 実 施 さ れ た 5 つ の 調 査 報 告 を 取 り 上 げ 、 考察した内容をまとめておこう。 横 浜 市 男 女 共 同 参 画 推 進 協 会 ( 2009) と せ ん だ い 男 女 共 同 参 画 財 団 編 ( 2013) は 、 女 性 の 貧 困 問 題 を 把 握 す る も の で あ り 、 北 海 道 総 合 研 究 調 査 会( 2012)は PS 事 業 が メ イ ン テ ー マ で あ る が 、女 性 を 含 む 生 活 困 窮 者 の状況を把握できるものとして取り上げた。 これらは、女性の貧困問題を把握する視点を備えているにもかかわら ず、問題が潜在化しているため、社会問題化する手立てが模索されてい るとみてとれる。問題が潜在化しているとは、就労・収入状況が即生活 困窮につながらず、ジェンダー格差が経済格差に直結しているともいえ な い こ と に あ る 。 せ ん だ い 男 女 共 同 参 画 財 団 編 ( 2013) は 、 こ れ ま で 女 性が「家族福祉」の中にあって「企業福祉」の対象とされず、経済的自 立に対する社会的規範・期待が低いという点を強調していた。 こ の こ と を 踏 ま え 、ま ず は 、女 性 の 貧 困 を 理 解 す る の に 、 「最低限度の 経済的自立の可能性に対する個人の権利」という視点が重要であること を確認する必要があると考える。 次に、支援を設計する上で重要なことは、横浜市男女共同参画推進協 会の一連の報告に明らかである。同協会の支援プログラムが目標とする のは、 ( 経 済 的 )自 立 で あ る 。プ ロ グ ラ ム は 、女 性 が 主 体 的 に 生 き 方 を 自 己選択していくためとして、 「 職 業 に 直 結 す る ス キ ル 習 得 以 前 に 、安 心 感 や自己肯定感の回復・獲得、社会生活上の基本的スキルを身につけるこ と 、人 と の か か わ り 方 の 練 習 を す る こ と 」 (横浜市男女共同参画推進協会 2011) に 重 点 を 置 く 必 要 が あ る 。 もちろん、これだけで十分だというのではない。横浜市男女共同参画 推 進 協 会 ( 2014) が 、 支 援 プ ロ グ ラ ム 実 施 5 年 を 経 過 し て ま と め た 実 績 と 課 題 報 告 は 貴 重 で あ る 。就 労 へ の 意 欲 が 高 く て も 、労 働 環 境 が 厳 し く 、 就労継続の困難さにも触れられており、いわば経済的自立の前提条件の 問題がある。そもそも調査報告で取り上げられている女性たちの抱える 問題は、 「 横 浜 市 子 ど も・若 者 実 態 調 査 」と の 比 較 で 、相 対 的 に み て も 深 刻であることが明らかにされていた。 こ の こ と を 踏 ま え る と 、 せ ん だ い 男 女 共 同 参 画 財 団 編 ( 2013) が 強 調 していたように、世帯類型、婚姻状況、雇用形態を問わず、リスクの重 複を踏まえた支援体制の構築が求められるのだと考える。 3-2 及 び 3-3 で 取 り 上 げ た 事 例 は 、 筆 者 の 調 査 可 能 な 範 囲 の も の で あ 50 り、貴重な例を見落としているのではないかという危惧はある。とはい え、管見の限り、地方自治体が女性の貧困問題に注目し施策を講じてき たとは言い難い。 ここで取り上げた先駆的な事例を 6 章の地方自治体のとるべき施策、 の検討で参照するのはもちろんであるが、その前に、4 章において国の 取り組み、さらには「当たり前のように存在してきた」という女性の貧 困問題を指摘する関係者・識者の見解を紹介し、検討したい。 51 4. 女 性 の 貧 困 問 題 に 対 す る 国 の 調 査 研 究 女 性 の 貧 困 問 題 に 対 す る 国 の 取 り 組 み と し て 、本 研 究 で 着 目 す る の は 、 内 閣 府 男 女 共 同 参 画 局 の 調 査 研 究 報 告 書 で あ る 。 そ れ は 、 3-3 に ま と め た地方自治体の先駆的な最新の取り組みを引き出し、後押ししたとみら れ る か ら で あ る 。男 女 共 同 参 画 局 に お か れ た 、 「 監 視・影 響 調 査 専 門 調 査 会 ( 2004 年 7 月 28 日 ∼ 2011 年 2 月 15 日 )」、「 生 活 困 難 を 抱 え る 男 女 に 関 す る 検 討 会 ( 2008 年 9 月 9 日 ∼ 2010 年 3 月 31 日 )」 の 活 動 で あ る 。 監 視 ・ 影 響 調 査 専 門 調 査 会 は 、2008 年 6 月 よ り「 新 た な 経 済 社 会 の 潮 流の中で生活困難を抱える男女について」をテーマとし、男女共同参画 の視点より、生活困難者の実態把握及び政府の関連施策について調査を 行 っ て お り 、 2009 年 11 月 に 『 新 た な 経 済 社 会 の 潮 流 の 中 で 生 活 困 難 を 抱える男女に関する監視・影響調査報告書』を公表している。 「生活困難を抱える男女に関する検討会」は、上記監視・影響調査を 実施するにあたり、男女共同参画会議並びに監視・影響調査専門調査会 の審議の基礎資料とするための専門的な調査分析を実施することを目的 と し て 、学 識 経 験 者 の 参 集 を 求 め て 2008 年 9 月 か ら 開 催 さ れ た も の で あ る 。同 検 討 会 は 、2010 年 3 月 に『 生 活 困 難 を 抱 え る 男 女 に 関 す る 検 討 会 報告書−就業構造基本調査・国民生活基礎調査 特別集計−』を公表し ている。 この二冊の報告書は、女性・男性それぞれの困難について述べている が、ここでは、女性の貧困問題と関係する部分を中心に述べる。 男 女 共 同 参 画 会 議 監 視・影 響 調 査 専 門 調 査 会( 2009) 『新たな経済社会の 潮流の中で生活困難を抱える男女に関する監視・影響調査報告書』 ▽ 報 告 書 の 構 成 と 目 的 ( 1-4 頁 ) この報告書の構成は、次のようになっており、はじめに「生活困難」 に着目し、これを取り上げる理由が述べられている。目次が詳しく、報 告 書 の 内 容 が 分 か り や す い 5。 5 報 告 書 は、内 閣 府 男 女 共 同 参 画 局 の HP 上 で閲 覧 できる。 h t t p : / / w w w. g e n d e r. g o . j p / k a i g i / s e n m o n / k a n s i e i k y o / s e i k a t s u k o n n a n / i n d e x . h t m l 2015 年 2 月 19 日 アクセス 52 1「 生 活 困 難 」 と は 何 か 2 はじめに∼なぜこの問題を取り上げるのか. 3 経済社会の新たな潮流 4 経済社会の変化のもとで生じている生活困難の実態 5 男女共同参画の観点からみた生活困難の現状と背景 6 生活困難の防止・生活困難者支援に関する課題と関連する施策 7 男 女 共 同 参 画 の 課 題 の 視 点 か ら み た 生 活 困 難 の 防 止・生 活 困 難 者 支 援 の取組 「 生 活 困 難 」と は 、 「 経 済 的 困 難 に 加 え 、教 育 や 就 労 等 の 機 会 を 得 ら れ ない、健康を害する、地域社会において孤立するなどの社会生活上の困 難 も 含 め た 広 い 概 念 」で あ る と い う 。 「自分の力だけでは乗り越えられな い何らかの不利な状況(健康、教育、家庭の事情等)を抱えるために、 個人あるいは世帯として経済的な自立の困難に直面している状態」に加 え、 「 経 済 的 な 困 難 か ら 派 生 し て 、あ る い は そ れ 以 外 の 何 ら か の 不 利 な 状 況にあるために、地域社会で人間関係を保てずに孤立したり必要なサー ビスを享受できなかったりする社会生活を営む上での困難」も含めてい る。本研究の貧困概念と重なる内容である。 なぜ、 「 生 活 困 難 」を 取 り 上 げ る の か と い え ば 、結 婚 や 家 族 を め ぐ る 変 化、雇用・就業をめぐる変化、さらに昨今の金融危機に端を発した経済 あるいは雇用情勢の急激な悪化がある。そのなかで、最初に挙げている のが、女性の生活困難のリスクが顕在化してきたことである。 「女性の生活困難は、単身女性世帯や母子世帯には以前からみられた 問題であったが、配偶者による扶養がある標準世帯モデルの陰に隠れて みえにくい問題であった。しかし、単身世帯やひとり親世帯が急増し、 また配偶者である男性の雇用不安も増す中において、女性が自ら生計を 維 持 す る 必 要 性 が 増 し つ つ あ る 。」 そ し て 、重 要 な 指 摘 と し て 、 「 女 性 の 生 活 困 難 の 背 景 に は 、男 女 共 同 参 画社会の進展が道半ばであるといった問題が根底にある」としている。 雇用・就業面での男女格差が大きく、出産を契機とした離職、非正規雇 用が多いなど、自分自身で生計を維持していける社会環境が十分には整 っていない。 ▽ 生 活 困 難 を め ぐ る 動 向 ( 4-11 頁 ) 生活困難が女性に多くみられることをデータによって明らかにしてい 53 る 。図 表 16 に 明 ら か な よ う に 、ほ と ん ど の 年 齢 階 層 で 男 性 に 比 べ て 女 性 の方が相対的貧困率が高い。高齢になるとその差はさらに拡がる。この データは、最近の女性の貧困問題に対する関心の高まりのなかで、特に 注目を集めたものである。 た だ し 、図 表 17 に み る よ う に 、近 年 、勤 労 世 代 の 男 性 の 未 婚 者 の 相 対 的 貧 困 率 の 上 昇 が 見 ら れ 、2007( 平 成 19)年 で は 、勤 労 世 代 の 未 婚 者 に おいて、男性の貧困率が女性の貧困率を上回る状況もみられる。高齢単 身世帯、勤労世代の単身世帯で相対的貧困率が高く、中でも女性の方が 厳 し い 状 況 に あ る 。 母 子 世 帯 で 、ま た 特 に 離 別 者 で の 相 対 的 貧 困 率 が 高 く、その影響が母子世帯の子どもにもみられる。 図 表 16 年 齢 階 層 別 ・ 男 女 別 : 相 対 的 貧 困 率 ( 2007 年 ) 54 図 表 17 配 偶 関 係 別 : 相 対 的 貧 困 率 ( 2007 年 ) ▽分野別にみた生活困難をめぐる実態と支援ニーズ 分野別として、①ひとり親世帯、②子ども、③若者、④高齢者、⑤国 際結婚、⑥在留外国人女性とその子ども、⑦女性と労働をめぐる問題、 ⑧ DV 等 の 女 性 に 対 す る 暴 力 被 害 等 、⑨ 生 活 上 の 障 害 を 抱 え る 人 々 、⑩ そ の他の生活困難をめぐる実態、を挙げている。 3 章でみてきたような調査研究のテーマと重なる中身である。たとえ ば 、③ 若 者 の 項 目 で は 、次 の よ う に 述 べ ら れ て い る 。 「 い わ ゆ る『 ニ ー ト 』 については、現状では家族に支えられて生活できる場合であっても経済 的 に 自 立 で き な い と い う 点 で 潜 在 的 な 困 難 層 」で あ る が 、 「女性の問題が 見 え に く い 」。「 ヒ ア リ ン グ で 指 摘 さ れ た こ と で あ る が 自 立 に 対 す る 本 人 及び親の意識が男性に比べて女性の方が低く支援に結び付きにくいとい っ た こ と 」が 考 え ら れ 、 「 実 際 、若 者 の 自 立 を 支 援 す る 機 関 に つ な が る の も 男 性 が 圧 倒 的 に 多 い 」 と い う 。( 図 表 18) ニ ー ト と 同 様 の 困 難 を 抱 え ていても「家事手伝い」として潜在化している女性が非常に多いことが 懸 念 さ れ る と 指 摘 し て い る 。( 図 表 19) こ の デ ー タ は 、 横 浜 市 男 女 共 同 参画推進協会と一致している。 55 図 表 18 図 表 19 地域若者サポートステーションの男女別利用状況 非 労 働 力 人 口 の 構 成 ( 平 成 20 年 平 均 ) また、④高齢者については、かねてから相対的貧困率が高く、経済的 に 厳 し い 状 況 に あ る の が 、未 婚 男 女 及 び 離 別 女 性 で あ る と 指 摘 し て い る 。 ( 図 表 20) 56 図 表 20 高齢単身世帯の年間収入の分布 婚 姻 状 況 別( 55∼ 74 歳 単 身 世 帯) ▽ 生 活 困 難 の 現 状 と 背 景 ( 12-16 頁 ) 生活困難をめぐる状況を分析して分かったことは、 「生活困難な状況に ある人々は、その困難が複合的に生じ、固定化し、また連鎖している状 況にある」ということである。そのなかで、女性がより生活困難に陥り やすい理由を 4 点から説明している。①妊娠・出産・育児等のライフイ ベントの影響、②女性の就業構造、③女性に対する暴力等の影響、④背 景にある固定的性別役割分担意識、である。 さらに男女共通にみられる状況として、①成育家庭をめぐる問題、② 学歴の影響、③自尊感情の侵害による社会不適応、④雇用構造をめぐる 問題、⑤生活上の障害、⑥外国籍、⑦地域ネットワークの弱体化、を挙 げている。 ▽ こ の 上 で 、同 報 告 書 で は 、具 体 的 な 施 策 83 施 策 を 調 査 、ヒ ア リ ン グ 聴 取 し 、現 状 分 析 し 結 果 を 掲 載 し て い る 。こ れ も 注 目 す べ き 内 容 で あ る が 、 このことについては、5 章で参照することにしたい。 57 生 活 困 難 を 抱 え る 男 女 に 関 す る 検 討 会( 2010) 『生活困難を抱える男女に 関する検討会報告書−就業構造基本調査・国民生活基礎調査 特別集計 −』 ▽ 報 告 書 の 構 成 と 目 的 ( 1-4 頁 ) この報告書は、 「 生 活 困 難 を 抱 え る 男 女 に 関 す る 検 討 会 」に お い て 、生 活困難の状況や雇用の状況等について、主に男女別の比較を中心とした 分析を行うために、同検討会委員の阿部彩氏、小杉礼子氏、白波瀬佐和 子 氏 に よ り 、 政 府 が 実 施 す る 統 計 調 査 (「 就 業 構 造 基 本 調 査 」「 国 民 生 活 基 礎 調 査 」) を 特 別 集 計 し た 内 容 を 報 告 す る も の で あ る 6 。 各 氏 の 論 文 3 本が掲載されている。 ▽ 経 済 的 困 難 を 抱 え る 非 典 型 世 帯 の 増 大 :ひ と り 暮 ら し と ひ と り 親 世 帯 に着目して(白波瀬佐和子氏) 同論文は、就業構造基本調査データを用いて、相対的貧困率によって 捉えた経済的困難に直面するひとり暮らしとひとり親世帯について論じ ている。 結論として、 「 ひ と り 暮 ら し 世 帯 に つ い て は 、特 に 、離 死 別 女 性 の 貧 困 率 の 高 さ が 目 立 っ た 」こ と「 近 年 50 代 の 壮 年 層 で 男 性 ひ と り 暮 ら し の 上 昇がみられ、生涯未婚率の上昇とも相まって経済的困難にも直結する場 合が多い」ことを指摘している。女性離死別者の経済的困難の高さは図 表 21 に 示 さ れ て お り 、「 特 に 若 年 の 離 死 別 女 性 へ の 経 済 的 援 助 、 そ し て また子育て支援が求められる」としている。したがって、ひとり親、特 に母子家庭の極めて厳しい経済状況が指摘されている。母子家庭の就労 率は高いが、就労が貧困回避として十分機能しておらず、現金給付と教 育、医療を中心とする現物給付も必要なことを指摘している。 6 報 告 書 は、内 閣 府 男 女 共 同 参 画 局 の HP 上 で閲 覧 できる。 h t t p : / / w w w. g e n d e r. g o . j p / k a i g i / k e n t o / k o n n a n / h o u k o k u s h o . h t m l 2015 年 2 月 19 日 アクセス 58 図 表 21 女 性 ひ と り 暮 ら し の 配 偶 関 係 別 貧 困 率 の 変 化 ▽若い女性の職業キャリアと貧困問題(小杉礼子氏) 同論文は、就業構造基本調査データを用いて、親の経済状態と子供の 学 歴 、学 校 卒 業 時 の 就 職 の 性 別・学 歴 別 の 差 異 、就 業 形 態 と 収 入 の 関 係 、 就業形態別・性別・学歴別の職業能力開発・自己啓発の実施状況につい て論じている。 最後に若い女性の非正規雇用化の背後に性別役割分業観に基づく本人 の 選 択 が あ る と 考 え 、そ う し た 価 値 観 に 基 づ く 家 族 形 成 の リ ス ク と し て 、 結婚相手にめぐり合わなかったり、離死別に至ったりすることがある、 と い う 想 定 で の 検 証 が な さ れ て い る 。「専 業 主 婦 志 向 だ か ら 、ア ル バ イ ト で い い 」と い う 選 択 を す る こ と の リ ス ク を 、パ ー ト・ア ル バ イ ト と 正 社 員 の年齢段階別有配偶率、離死別率を見ることによって検討されている。 この結果、初職がパート・アルバイトである女性の有配偶率は正社員 と変わらなかったが、離死別比率は初職がパート・アルバイトの女性の ほ う が 高 く 、 初 職 か ら 「ア ル バ イ ト で い い 」と い う 選 択 が リ ス ク を 伴 う こ とを指摘した。 ▽日本の貧困の動向と社会経済階層による健康格差の状況(阿部彩氏) 同論文は、 「 国 民 生 活 基 礎 調 査 」の 個 票 を 用 い て 、1995 年 か ら 2007 年 59 にかけての個人の属性別の貧困率の推移および社会経済階層による健康 状況の格差について推計したものである。さまざまな貧困率の動向が分 析 さ れ て い る が 、3-3 で 取 り 上 げ た 取 り 組 み に 照 ら し て 、 「主な活動別の 貧困率」に注目したい。 図 表 22 を み る と 、男 性 で は「 主 に 仕 事 」、女 性 で は「 主 に 仕 事 」 「主に 家事で仕事あり」 「 家 事 専 業 」が 最 も 低 い 貧 困 率 で あ る 。就 労 し て い る こ と、または、専業主婦であること(就労している夫がいると推測され る ) が 、 経 済 的 安 定 を も た ら し て い る と い え よ う 7。 図 表 23 を み る と 、高 齢 者 で は 、就 労 と 経 済 的 安 定 が 結 び つ い て お ら ず 、 仕 事 が あ る 層(「 主 に 仕 事 」 「主に家事で仕事あり」 「 家 事・通 学 以 外 が 主 で 仕 事 あ り 」) と 仕 事 が な い 層 (「 家 事 専 業 」「 そ の 他 」) に 大 き な 貧 困 率 の差がない。男女差については、すべてのカテゴリーで女性の貧困率が 男性の貧困率を上回っており、高齢女性の経済的不安が懸念される。 7 ただし、2004 年 から 2007 年 にかけて、男 性 、女 性 ともに「主 に仕 事 」をしている人 々の 貧 困 率 も上 昇 しており、 男 性 で は 9 . 0 7 % か ら 9 . 8 5 % 、 女 性 で は 11 . 9 3 % か ら 1 3 . 3 9 % の 上 昇 と な っ て い る ( 共 に 、 2 0 - 6 4 歳 、 付 表 P 6 ( 2 ) ) とのことである。 60 図 表 22 主な活動別 性別 貧 困 率 : 20-64 歳 ( 2007 年 ) 図 表 23 主な活動別 性別 貧 困 率 : 65 歳 以 上 ( 2007 年 ) 61 5.「 当 た り 前 の よ う に 存 在 し て き た 」 女 性 の 貧 困 問 題 3 章 に み た 地 方 自 治 体 の 取 り 組 み 、4 章 に 取 り 上 げ た 国 の 調 査 研 究 の 世 の中への影響力・発信力は大きい。しかし、その基盤ともいえるのが、 さまざまな立場の民間の活動や発言である。ここでは、最近の関連文献 をレビューし、問題提起されていることを述べていきたい。 文 献 は 、 Cinii を 利 用 し 「 女 貧 困 」 の キ ー ワ ー ド で 検 索 し た 。 5-1 では、まずアクチュアルなテーマを扱う論文・雑誌記事を取り上げる。 こ ち ら の 文 献 の 詳 細 は 文 末 の 参 照 文 献 リ ス ト を 参 照 さ れ た い 。5-2 で は 、 同 様 の キ ー ワ ー ド で 検 索 し た 書 籍 を 取 り 上 げ る 8。 5-1 論文・雑誌記事から 検 索 は 、時 期 の 限 定 を か け ず に 行 っ た が 、2008 年 前 後 か ら 件 数 が 増 加 しており、多くが近年の論考であった。そのため、ここで取り上げるの も お お む ね 2000 年 代 以 降 の も の で あ り 、便 宜 上 、5 つ の 立 場 ・ 領 域 に 分 けて述べる。 ■労働問題、労働組合活動からの視点 最初に紹介したいのは、労働問題、労働組合活動に焦点を当てている 論考である。すでにみてきたように、就労し、自前の収入を得て経済的 に自立することは、貧困を回避するために極めて重要である。しかし、 女性の場合、就労してもなお貧しいのであり、その深刻な状況は、繰り 返し問題提起されてきた。 労働組合活動に従事されてきた方たちは、早くから女性の貧困問題に 気づいていた。それは「労働組合の活動を徹底して行うことで、人びと のニーズについて、相談者側の決めつけではない、幅広い拾い方を可能 に し 」、「 女 性 の 貧 困 の 根 の 深 さ を 意 識 化 し て い く こ と が 必 要 で 、 そ の 方 法として有効なのだということがよくわかる」 ( 伊 藤・青 山・笠 原 2007) か ら で あ る 。「 貧 困 の 実 態 を 把 握 す る ア ク シ ョ ン リ サ ー チ か ら 始 め て 、 5 年くらい政府にデータを送り続けていた」 ( 伊 藤・鈴 木・竹 中 ほ か 2006: 伊藤氏発言)という。 しかし、政府、行政はその実態を把握できていない。それは、女性の 貧困問題を捉える視点の欠如による。たとえば、次の発言からその内実 がよく理解できる。 「 厚 生 労 働 省 の フ リ ー タ ー 統 計 は お か し い 。な ぜ な ら 8 論 文 ・ 雑 誌 記 事 に つ い て は 、 2 0 1 4 年 11 月 、 書 籍 は 2 0 1 5 年 2 月 に 検 索 し た 結 果 で あ る 。 62 フ リ ー タ ー の 定 義 が 間 違 っ て い る か ら で す 。 15 歳 以 上 34 歳 未 満 人 口 の うち、既婚の男性はフリーターに含みますが、結婚している女性はフリ ーターに入れないで「主婦」に入っている。だから、女性の方がフリー タ ー が 多 い 実 態 が あ ま り に も 知 ら れ て い な い の で す 。」( 伊 藤 2008)。 そ こ に は 、 次 の よ う な 問 題 が あ る 。「『 女 性 の 安 全 ネ ッ ト は 男 性 』 と い う発想が、女性個人の経済的自立や生活保障を弱め、女性の貧困を見え にくくしているわけだが、こうした差別意識は、若い男性の貧困にもつ な が っ て い る 。80 年 代 以 降 、 『若者は親がいる』 『若者はまじめに働く気 がない』という偏見の下に、若者の非正規労働が野放しにされ、このた め 、バ ブ ル 崩 壊 後 不 況 期 に 、15∼ 24 歳 の 男 女 の 半 数 が 非 正 規 と い う 異 常 な 事 態 を 見 過 ご し に さ れ る 原 因 と な っ た 」( 竹 信 2009)。 「女性では、初職(初めての就業)の半数が非正規です。男性は 3 割 ですから、若い女性たちがいかに正規の仕事に就きにくいかが分かりま す 。そ し て 第 1 子 の 妊 娠・出 産 を 契 機 に 6 割 が 仕 事 を 辞 め て い ま す 。」 (大 西 2014)と い う の が 実 情 で あ る 。そ し て「『 家 事・育 児 + 仕 事 = 非 正 規 』 が女性の働き方のスタンダードになりつつあります。 ( 中 略 )有 期 契 約 で 契約解除の不安にさらされ、結婚、子育てを積極的に選択できない、と い っ た 『 自 立 』 と は ほ ど 遠 い 状 況 に 置 か れ て い ま す 。」( 鴨 2007)。 「生活できる雇用をしてくれない。そっちを直せとしか言いようがな い で す ね 。」 ( 伊 藤・鈴 木・竹 中 ほ か 2006:鈴 木 氏 発 言 )と い う わ け だ が 、 労働組合にも問題がある。 「女性たちがパートタイマーの要求や派遣の要 求を労働組合の課題に取り上げるように、何度声高に叫んでみても、女 は男に養ってもらえばいいという性別役割の意識が労働組合も強く、男 性正社員の賃上げ要求が優先され、女性社員やパート・派遣の要求は付 帯 要 求 と し て 後 回 し に さ れ て き ま し た 。」( 伊 藤 2009)。 これらの状況があって、女性の貧困の深刻な事態を目の当たりにして い て も 、そ れ を う ま く 問 題 化 で き な い こ と が 次 の よ う に 表 現 さ れ て い る 。 「相談に駆け込んでくるのは破綻した人たち。すれすれでガマンして吸 収 さ れ て い る 女 性 た ち が 、風 俗 で 働 い て い た り 家 族 の 中 で 隠 さ れ て い る 。 男の場合は主たる生計保持者であるべきという社会的な期待があるから 破綻すると見えやすい。女性の場合、耐えられなくなって噴出すること はあるけど、そもそも期待されていないから表れない。だから女の貧困 の あ り 方 は く っ き り と 描 き 出 せ て い な い 気 が す る 。」( 伊 藤 ・ 鈴 木 ・ 竹 中 ほ か 2006: 丹 羽 氏 発 言 ) もちろん、行政も対策をとってこなかったわけではないのだが、別の 問 題 も あ る 。 伊 藤 ・ 鈴 木 ・ 竹 中 ほ か ( 2006) の な か で 鈴 木 氏 は 次 の よ う 63 に 発 言 し て い る 。「 私 は も う DV 支 援 は 、 官 庁 の 上 の 方 は 誰 も 本 当 に は 関 心を持っていないと思う。あれはもう終わっていると。今の流行りは子 ど も 虐 待 。 あ と は 福 祉 を 削 っ て 『 自 立 』 の 支 援 。」 そ し て 、「 ず っ と 公 務 員だけをやってきた人が相談部署にいては、有効な支援は難しい。支援 経験のある民間が委託という形でも何かを示さないと。私は民間委託は 結構だと思うのね。でも行政からの民間委託は、民間の経験を活用する と い う よ り 安 く 使 う こ と だ け が 主 眼 。」と い う 問 題 も 指 摘 し て い る 。島 田 ( 2013)は 、 「 行 政 は 、少 子 化 対 策 の 一 環 と し て も 、非 正 規 労 働 ・女 性 労 働 問 題 に 敢 え て メ ス を 入 れ る ぐ ら い の 構 え で 臨 む べ き と 考 え る 」と い う 。 ■支援者・活動家 上述のように女性の貧困ということを問題化する難しさがあることは、 女性の問題に着目してきた次の方たちの発言にもうかがえる。この問題 把握の難しさ自体が問題であることを、あらためて確認できる。 シ ン グ ル マ ザ ー の 問 題 に 取 り 組 ん で き た 赤 石( 2009)は 、 「女性たちは 以前から貧困であった。そして今、さらに深刻化する貧困にさらされて い る 。し か し 、女 性 た ち の 貧 困 は 見 え づ ら い 。」 「『 子 ど も が 大 き く な る に つれて貧しくなってきた』という人も多い」という。 シ ン ポ ジ ウ ム を 記 録 し た 雨 宮 ・ 伊 田 ・ 杉 本 ほ か ( 2013) に は 、 次 の よ う な 記 述 が あ る 。雨 宮 氏 は 、 「女性はずっと黙らされてきたという歴史も あるので、一口では言えないような、そういう個人的な生きづらさを掘 り 下 げ て い く と 見 え る 『 女 性 の 貧 困 』 と い う の も あ る 」。 杉本氏は、 「 や っ ぱ り『 女 性 の 貧 困 』と 言 っ た 場 合 、暴 力 の 問 題 と 切 り 離せないと思いました。 (中略) 『女性は貧困で当たり前』 『見えない貧困』 て言われているけれども、実は、見えている。でもあまりにも普通の風 景なので、それがおかしいと思わないような感じで存在しているのかな と す ご く 感 じ た り し ま す 。」。つ ま り 、 「私たちの身に沁みついた中立性の 感 覚 そ の も の か ら 、 女 性 が あ ら か じ め 排 除 さ れ て い る 。」( 伊 田 氏 発 言 ) というのである。 鈴 木 ( 2013) は 、 女 性 の 抱 え る 問 題 で 男 性 よ り 大 き な 比 重 を 占 め る の は 、 家 族 ・ 地 域 を め ぐ る 問 題 、 さ ら に は DV・ 虐 待 ・ 暴 力 被 害 等 で あ る と 指摘する。鈴木氏は、一般社団法人インクルージョンネットよこはま理 事 で あ り 、 本 報 告 書 で も 3-3 に 詳 述 し た 「 横 浜 市 男 女 共 同 参 画 推 進 協 会 ( 2009) 『 若 年 女 性 無 業 者 の 自 立 支 援 に 向 け た 生 活 状 況 調 査 報 告 書 』を 引 用しながら未婚女性の貧困問題について、現場の状況を踏まえ考察して い る 。未 婚 女 性 に 特 に 顕 著 な 問 題 は 、親 や 兄 弟 か ら の 暴 力 で あ る と い う 。 64 他方で、 「 労 働 に つ い て の ジ ェ ン ダ ー バ イ ア ス の 女 性 自 身 の 内 面 化 は 、決 して浅いものではないように思われる」とも述べている。 具 体 的 に は 、「『 女 性 に と っ て 労 働 は そ れ ほ ど 人 生 の ウ ェ イ ト の 高 い も のではない』というようなバイアスが当事者にも、周囲にもあるため来 所行動につながりにくいということが推測できる点である。実際に、支 援 現 場 に 来 て い る 未 婚 女 性 の 中 に は 、『 就 活 よ り 婚 活 し た 方 が い い か な ぁ?』と悩みながら来所しているケースも見受けられる」という。 竹 信( 2009)は 、 「ホームレスの自立に役立てようとスタートした雑誌 『ビッグイシュー』編集部」が次のような立場をとっていることを指摘 し て い る 。「『 こ の 雑 誌 を 売 る と い う こ と は 、 ホ ー ム レ ス と 公 言 し て い る ことになる。女性が売っていると、暴力や性被害にあうことが心配なの で 販 売 は 断 り 、 保 護 施 設 な ど を 紹 介 し て い る 』」。 ホ ー ム レ ス を 支 援 す る 方たちの認識として、女性が保護すべき対象として存在してきたことを 明らかにしている。 そ こ で 、支 援 に あ た っ て 次 の よ う な こ と が 必 要 で あ る と い わ れ る 。 「女 性のエンパワメントが必要だ。困難に陥ったとき、あなたは、支援を受 ける権利があると伝える必要がある。 ( 中 略 )さ ら に 、子 育 て 以 外 に 母 親 の 自 尊 心 を 支 え る も の は 必 須 だ 。」( 杉 山 2014)。 上 述 の 赤 石 氏 は 、「 1 人 1 人の個を支える福祉制度のしくみこそが求められている」と述べてい る ( 赤 石 2009)。 ■単身女性の視点 栗田氏は、さまざまな場所で発言されており、自身の「仕事」につい て 、 次 の よ う に 話 す 。「 36 歳 の 私 が 結 婚 ・ 就 職 ・ 恋 愛 に 縁 が な い 女 と し て生きてこれている、まさにこの私の生き様を持って『可能性』を見出 し、それこそ人間関係のオルタナティブを作り上げていくことが、今の 私 の 『 仕 事 』 だ と 思 っ て い る 。」( 栗 田 2009a) この発言の背景には、社会の根底にある問題を次のように把握されて いるからだと考えられる。 「女性の身体的な生存というレベルにおいてこ そ、政治・経済的な観点から語られなければいけないという、知ってい る 人 か ら す れ ば 『 当 た り 前 』 の こ と を 痛 感 さ せ ら れ る 。」( 栗 田 2009b)。 「やっぱり女性は結婚すれば何とかなるとどこかで思わされているし、 それがほんとうは全然違うとしても、何かそういうイメージが社会のな か に 流 布 さ れ て い る と 。」( い ち む ら ・ 栗 田 ・ 増 山 ほ か 2009)。 こ の こ と が あ っ て 、女 性 に 現 れ る 問 題 は 深 刻 で あ る 。 「とにかくひたす ら 誰 か を『 支 え る こ と 』を 求 め ら れ て る わ け だ か ら 、 (実際に誰かを支え 65 ているわけではないとしても、そういうメッセージを受け続けていたと したら)自分の主体的な判断がうまく行えない。自分というものが見え ない中で、他人に合わせることを良しとしなければいけないのだとした ら、自信も失われ『うつ』の発症率が高いということは実感として分か る 。」( 栗 田 2009b)。「 女 性 の な か で 、 よ く 話 さ れ る の が 、 自 己 価 値 の 低 さ と い う か『 自 信 が な い 』 『 自 分 な ん て ど う で も い い ん だ 』と い う 感 覚 が 、 セクシュアルな関係、ひいては経済も含んだ社会的地位にものすごく響 い て い る の で は な い か と 。」( い ち む ら ・ 栗 田 ・ 増 山 ほ か 2009)。 栗 田( 2008)で は 、解 決 の 道 筋 と し て 、次 の 三 つ を 提 案 し て い る 。 「① 貧困状態にある男性の意識の問題、たとえば「男が妻子を養わなければ ならない」という認識が男性たちをより一層追い詰める要因になってい ることへの気づきです。②女性の貧困を可視化し、女性が心身ともに自 立できる労働とセーフティーネットを充実させることが、すなわち男性 の貧困問題の解決につながることを共有化したいと思います。③今ある 『労働市場』に『男性並み』に参入することではない働き方を作り出し て い く こ と で す 。」 ■研究者 すでに繰り返し、女性の貧困問題の捉えがたさに言及してきたが、さ らに深く多角的な視点を得るため、研究者による論考をみていきたい。 庄 司( 1984)は 、1980 年 代 の 論 文 で あ る が 、論 点 が よ く ま と め ら れ て お り 、現 代 に も 当 て は ま る 。庄 司 は 、 「家族ぐるみの貧困へのさまざまな 対応として、収入増をはかるための共働き、支出の節減をはかるための 世帯の分割や世帯員の輩出が生じることを考えるならば、戦後の、とり わ け 高 度 成 長 期 と い わ れ る 日 本 社 会 の 構 造 的 変 化 を 画 し た 1960 年 代 以 降の、共働き、母子世帯、単身女性の増加傾向を、女性の自立志向のあ ら わ れ や 、そ の 実 現 の 過 程 と だ け い い き る こ と は で き な い で あ ろ う 。」と いう。 他方で、 「 女 性 の 賃 金 が 男 性 の そ れ よ り も 低 い と い う 事 実 に よ っ て 、女 性は通常、主たる稼ぎ手たることができず、それゆえに貧困問題の担い 手とみなされることすらできなかった、ということからして、ここでは 問 題 を ひ と ま ず 賃 金 の 男 女 格 差 に 限 定 し て お こ う 。」と し て こ の 問 題 を 論 じている。 「 母 子 世 帯 の 家 計 構 造 の 特 徴 は 、す で に 述 べ た 労 働 者 家 族 に お ける貧困をさらに一段と激しく表現したもの」となっており、母子世帯 の「被服費においては下着類が節約されていることに、その生活の厳し さ が う か が わ れ る 」 と 述 べ て い る 。 ま た 、「 女 性 と 貧 困 と の か か わ り は 、 66 高齢単身女性の貧困問題に象徴的に表現されているといってよい」とし た。 女 性 の 貧 困 問 題 を 把 握 す る 視 点 の 弱 さ は 、さ ま ざ ま な 領 域 で み ら れ る 。 須 藤( 2001)は 、次 の よ う に 貧 困 研 究 の 課 題 を 指 摘 す る 。 「貧困研究は性 別概念を必要としてこなかった。それは研究の歴史性であり、かつ貧困 の定義にかかわる問題である(中略)ジェンダー概念が貧困研究にもた らす意味は、貧困の定義の検証である。世帯を単位とした貧困線ではと らえきれない女性の貧困は、どのような貧困の定義によって可能になる の か 。」と 述 べ 、貧 困 研 究 に お け る ジ ェ ン ダ ー 概 念 の 脆 弱 さ と い う 問 題 を 指摘する。 藤 原( 2009)は 、統 計 の 問 題 か ら 社 会 保 障 制 度 の 問 題 を 指 摘 す る 。 「女 性の場合、既婚者はフリーターから除くとされ、政府統計自体に男女で 異なる定義が用いられた。 ( 中 略 )今 日 の 貧 困 層 の 拡 大 は 、女 性 の 貧 困 を 見ようとしないまま社会が放置してきた結果である。そして、女性にと っては、一方で雇用分野の男女平等を標榜しつつ、他方で家族責任の分 断・性別分業の強化・非正規雇用の拡大の道を開き、妻の座の経済的優 遇 と 母 子 世 帯 へ の 給 付 削 減 を 行 っ た 1985 年 こ そ 『 貧 困 元 年 』 で あ る 。」 丸山氏は、社会福祉制度のなかにジェンダー規範、望ましい女性の生 き 方 が 埋 め 込 ま れ て い る 、 と い う 点 に 焦 点 を 当 て た ( 丸 山 2014.7)。 丸 山 氏 は 、な ぜ 女 性 の ホ ー ム レ ス は 少 な い の か 、形 成 さ れ に く い 女 性 世 帯 、 社 会 福 祉 の 網 、と い う 論 点 を 提 示 し て い る( 丸 山 2014)。 「それまでのホ ームレス研究では強い意志を持った自立した人間像が想定されていまし たが、私が話を聞いた女性たちは、自分の意思も明確ではなかったり、 他人に大きく影響されていました。 ( 中 略 )貧 困 と い う の は 経 済 的 な 概 念 ですが、女性の抱えている問題や生きづらさは、経済的な概念だけでは 語 れ な い だ ろ う と 感 じ て い ま す 。」( 丸 山 2014.7)。 丸 山 ( 2008) は 、 社 会 福 祉 制 度 が 、 母 子 を 対 象 に し た 制 度 と 単 身 の 女 性 の 制 度 が 、そ も そ も 異 な る 系 譜 で 設 け ら れ て き た こ と を 論 証 し て い る 。 「性別役割分業が前提とされた社会の中では、労働市場における女性の 地位は依然として低い。そのため賃労働を主として担う男性パートナー をもたない女性に対しては、最低限の生活を保障する福祉制度がさまざ ま な 形 で 発 達 し て き た 。」( 丸 山 2008)。 こ こ で は 丸 山 ( 2008) か ら 、 単 身の女性の制度、の説明を詳しく引用する。 「売春婦への対応が、放置しておけば売春する『おそれ』があるとい う認識のもとに、売春にとどまらないさまざまな困窮状態にある女性を 保 護 す る も の と し て も 機 能 し て い っ た 。」 「 1970 年 に は 厚 生 省 か ら 通 達 が 67 出され、 『 転 落 の お そ れ な し と 認 め た 婦 女 子 』に つ い て も 、日 常 生 活 を 営 むうえで問題があり、他機関を利用できないときには、婦人保護事業で 扱ってさしつかえないことが確認された。 ( 中 略 )特 に 大 阪 で は 、精 神 病 院退院後の人を受け入れる施設が他県と比べて不足していたことから、 この婦人保護事業が精神・知的障害者の受け皿となり、障害者福祉を補 完 す る 役 割 を 果 た し て い た と い う 。」 「保護の対象になるか取締りの対象となるか、人びとの共感を得られ るか非難されることになるのかは、女性のニーズをいかに解釈するかを め ぐ る 、き わ め て 政 治 的 な 問 題 な の で あ る 。現 在 の と こ ろ DV 被 害 者 の 保 護においても、公的対応はおもに既存の二系統の助成施設、すなわち母 子 施 設 / 売 春 婦 の 保 護 施 設 の い ず れ か を 利 用 し て 行 わ れ て い る 。( 中 略 ) この二つの母親と売春婦という女性の位置は、どちらも婚姻制度の安定 化 の た め に 不 可 欠 な も の だ っ た の で あ る 。」 求 め ら れ て い る 施 策 は 、「 家 庭内での性別役割と、それを前提にして成立している労働市場自体の見 直しを含む貧困対策」ではないかという。 障害を持つ女性については、 「 多 く の 人 は 、頼 れ る う ち は 親 や 親 族 の 元 で生活をするか、施設入所となるか、扶養してくれる人と『結婚』する か 、 生 活 保 護 を 申 請 す る か … 。『 選 択 肢 』 は 限 り な く 少 な い 。( 中 略 ) 結 婚が『できた』障害女性は、無理をしてでも女性役割を引き受けること を 求 め ら れ も す る 。」 と 瀬 山 ・ 臼 井 ( 2009) に よ る 分 析 が あ る 。 女性の貧困問題を論じる難しさは、結婚によって家族を構成し、一つ の 世 帯 と み な さ れ る こ と に も あ る 。 石 黒 ( 1998) は 、 多 重 債 務 世 帯 を 分 析し、女性の生活水準の低さ、困窮状況、特に「同一世帯内部での女性 の 実 際 の 消 費 水 準 の 低 さ ( 男 性 に 比 べ て )」 を 明 ら か に し て い る 。「 多 重 債務世帯の生活水準はジェンダーによって大きく異なり、特に<女>世 帯 の 単 身 と 、< 男 + 女 > 世 帯 で の「 夫 婦 + 子 供( + 親 他 )」世 帯( そ れ も 特に筆頭債務者が女性の場合)で、生活水準の低さや貧困の深刻さがた いへん目立つ」という。 そこには次のような事情もある。 「 日 本 の よ う に『 借 金 の 返 済 の た め の 借 金 』と い う 自 転 車 操 業 に よ っ て 、 『まじめに返済しようとする人が一番 損をし、また消費者信用会社の一番の上客である』という構図が頻繁に 発生する場合、多重債務に陥る過程の中でこの構図に女性が多く当ては まる可能性が高いことも考えられる。また債務を救済する場面でも有配 偶者は夫婦での出席が条件とされる機関も多く存在し、 『 返 済 責 任 』を 問 う救済機関の場合には、債務者でない配偶女性も債務返済に参加させら れ て い る 。」 68 そ し て も う 一 つ 石 黒( 1998)が 指 摘 す る の は 、 「多重債務者の男女間の 違 い が 指 摘 さ れ に く か っ た 理 由 」と し て 、 「 自 己 破 産 件 数 を 公 表 す る『 司 法統計年報』にそもそも男女別指標がないこと」を挙げている。世帯の 中にこそ問題があるのだとすれば、分析の単位を「世帯」から「個人」 に移さなければならない。 住宅問題を検討し、妻の就業を変数とする世帯の階層化が進展してい る こ と を 指 摘 す る 平 山( 2014)は 次 の よ う に 述 べ る 。 「人びとの状態を個 人単位で捉えるのか、世帯単位でみるのかは、分析上のテクニカルな問 題 で あ る だ け で は な く 、社 会 の な か の 人 間 が『 ま ず 個 人 と し て 存 在 す る 』 と認識するのか、 『個人である以前に世帯という共同体のメンバーとして 生きる』と考えるのか、という人間・社会観の違いを反映する側面をも つ 。」 この「人間・社会観」の話は、昨今の女性の貧困問題に対する関心が 「貧困女子」としてクローズアップされたことと無縁ではない。阿部 ( 2014)は 、 「『 貧 困 女 子 』で は な く 、 『 女 性 の 貧 困 』と し て 問 題 を 捉 え る こ と が 、 重 要 で あ る 」 と 指 摘 す る 。「『 女 性 の 貧 困 』 を 、 女 性 自 身 の 人 権 の 問 題 で あ る と 認 識 し 、若 年 期 か ら 高 年 期 ま で の 幅 広 い 年 齢 層 に お い て 、 どのようなライフコース(結婚経験や離婚経験の有無、子どもの有無、 親の有無、就労形態など)であっても、貧困のリスクに対応できるよう な 政 策 を う つ 必 要 が あ る 。」 と い う 立 場 で あ る 。 ■「貧困の女性化」について 本 報 告 書 で は 、日 本 の 状 況 の み 扱 っ て き た が 、 「女性 貧 困 」の キ ー ワ ードで検索した場合、初期の文献には、アメリカで問題になった「貧困 の 女 性 化 」 に 関 す る 文 献 が 多 く み ら れ る 。「『 貧 困 の 女 性 化 』 が 初 め て 主 張 さ れ た の は 、 Pearce( 1978) の 1950 年 代 初 頭 か ら 70 年 代 中 頃 に か け て の 米 国 に つ い て の 研 究 」 で あ る ( 湯 川 2011)。 マ ー サ ・ N・ オ ザ ワ( 1990)は 、「 1976 年 に ア メ リ カ に お け る 貧 困 者 の 大 部 分 、つ ま り 1500 万 人 の 貧 困 な 成 人 の お よ そ 3 分 の 2 が 女 性 で あ っ た 。 この事実を強調するために、貧困の女性化という言葉が用いられた」と いう。同文献は、必要な施策として、就労による所得の向上、養育費徴 収システムの強化、個人控除を還付可能にする、低所得の母子世帯の職 業訓練を挙げている。 最近のアメリカでは、 「 福 祉 受 給 者 、ウ ェ ル フ ェ ア・マ ザ ー 及 び 低 所 得 者を対象としたさまざまな自立支援のアプローチが模索されている」と い う 。稲 葉( 2014)に よ れ ば 、 「その一つのアプローチとしてマイクロエ 69 ン タ ー プ ラ イ ズ・デ ィ ベ ロ ッ プ メ ン ト・プ ロ グ ラ ム は 1980 年 代 半 ば か ら 注目を浴びている。このアプローチは、バングラデシュのグラミン銀行 の 少 額 融 資 の モ デ ル を ア メ リ カ に 導 入 し た も の 」だ と い う 。ま た 、 「 TANF 制 度 の 枠 で 福 祉 受 給 者 が 自 営 業 を 通 し て 自 立 す る 際 の 課 題 と し て 、1)所 得 と 資 産 の 関 係 、 2) 育 児 サ ー ビ ス 、 3) 医 療 保 険 な ど の 制 度 的 問 題 や 支 援不足など」も指摘している。 他 方 で 、「『 貧 困 の 女 性 化 』 に つ い て は 様 々 な 研 究 が な さ れ て き た が 、 その基本的に意味するところは、貧困層に占める割合は女性の方が男性 より高く、しかもその差は拡大しているということである。これは必ず しも絶対的に貧困が激化しているということではなく、女性が男性に比 べ て 貧 困 化 し て い る と い う 相 対 的 な 概 念 で あ る 」 と 湯 川 ( 2011) は 述 べ ている。 湯 川 ( 2011) に よ る と 、「 メ キ シ コ を 含 む ラ テ ン ア メ リ カ 14 ヵ 国 の 平 均 で は 15 歳 以 上 の 女 性 の 46.7% は 無 収 入 と さ れ る が 、 彼 女 等 全 て が 貧 困 と い う 訳 で は な い こ と は も ち ろ ん で あ る 」、し か し「 家 計 内 の 所 得 分 配 を知ることは容易ではない」と先に日本に関する文献でも指摘されてい たことと同様の点が問題にされている。 「女性世帯主家計を男性世帯主家 計と比較すると、前者の方が概して貧困率は低く、この点からは貧困の 女性化という主張はメキシコには当てはまらない」が「時系列的にみる と、男性世帯家計に対する女性世帯主家計の優位性は徐々に失われてお り、その意味では貧困の女性化が進んでいる」という。 鈴 木 ( 2010) も ま た 、「 女 性 全 体 で み て も 、 女 性 世 帯 主 世 帯 で み て も 、 必 ず し も 貧 困 者 に 女 性 が 多 い と は い え な い こ と 、女 性 と 貧 困 の 関 係 に は 、 国 が お か れ た 状 況 や 文 化 、制 度 の 違 い が 大 き い こ と を 示 し て い る 」こ と 、 「世帯内の不平等をどう扱うか」が問題であると指摘している。 ■検索した論文・雑誌記事で取り上げられていた調査 最後に、検索した論文・雑誌記事で取り上げられていたいくつかの調 査報告を紹介したい。断片的ではあるが、女性の貧困状態が把握できる 貴重な資料と考える。 一 つ 目 は 、加 藤 ・ 梅 津 ・ 三 浦 ほ か( 2014)で 参 照 さ れ て い た 、 『女性高 齢 者 生 活 実 態 調 査 』で あ る 。全 日 本 年 金 者 組 合 女 性 部( 2012 年 9 月 ) 『女 性高齢者生活実態調査の結果』と、全日本年金者組合神奈川県本部女性 の 会( 2012 年 10 月 ) 『安心して生きていける年金に! 調査結果』が発刊されている。 70 女性高齢者実態 『 女 性 高 齢 者 生 活 実 態 調 査 』 は 、 2012 年 2 月 ∼ 4 月 、 年 金 者 組 合 女 性 組 合 員 を 対 象 に 実 施 さ れ 、 回 収 数 は 18,481 人 で あ る 。 年 齢 は 多 い 順 に 、 「 70 歳 ∼ 74 歳 」 が 26.0% 、「 65∼ 69 歳 」 が 21.9% 、「 75 歳 ∼ 79 歳 」 が 18.0% 、「 60∼ 64 歳 」 が 14.2% な ど と な っ て い る 。 家 族 構 成 は 、 一 人 暮 ら し の 女 性 が 約 25% 、 夫 婦 だ け の 暮 ら し が 41% 、 その他未婚の子ども・兄弟姉妹・親・孫などと一緒に暮らす女性が、あ わ せ て 約 20% で あ る 。既 婚 の 子 ど も 家 族 と 一 緒 に 暮 ら す 、い わ ゆ る 3 世 代 家 族 は 11% と 少 な い 。 年 金 種 別 を み る と 、厚 生 年 金 が 42.3% 、国 民 年 金 が 34.0% 、共 済 年 金 が 21.0% 、 遺 族 年 金 が 15.0% 、 無 年 金 が 2.7% 、 そ の 他 が 2.0% 、 障 害 年 金 が 0.8% と な っ て い る 。 共 済 年 金 の 割 合 の 高 さ は 、 年 金 者 組 合 の 加 入者にもと教員、公務員が多いからであるという。このことは、次の年 金月額にも現れている。 図 表 24 年金月額 1 0円 2.9% 2 1∼ 4 万 円 台 12.2% 3 5∼ 9 万 円 台 29.2% 4 10∼ 14 万 円 台 21.9% 5 15∼ 19 万 円 台 18.3% 6 20 万 円 以 上 10.3% 7 無回答 3.8% 図 表 24「 年 金 月 額 」に 示 し た よ う に 、共 済 年 金 受 給 者 が 一 般 女 性 に 占 め る 割 合 が か な り 高 い た め 、 年 金 額 15 万 円 以 上 、 20 万 円 以 上 の 比 重 が 高 い 。と は い え 、そ れ で も 最 も 多 い の は 月 額 5∼ 9 万 円 台 で あ る 。年 金 額 10 万 円 未 満 の 女 性 は 、 44.3% と な っ て い る 。 その他、家計における保険料や税金の負担の重さ、必要な特に介護サ ービスが提供されるか、などの不安が述べられているが、特に注目した いのは、高齢者のかかえている大きな悩みは子どものこと、という指摘 である。いくつか自由記述を引用する。 ・ 息 子 の 結 婚 、 息 子 の 仕 事 が な い こ と が 悩 み 。( 鳥 取 ) ・3 人 目 の 子 ど も が 無 保 険 の ア ル バ イ ト で 定 職 が な い 。2 人 目 の 子 ど も は 職 に 就 い て い る が 結 婚 で き る 収 入 で な い 。( 鳥 取 ) 71 ・ 30 代 な か ば す ぎ た 息 子 の 仕 事 が 安 定 せ ず 悩 ん で い ま す 。ま だ 、娘 も 息 子 も 結 婚 せ ず 、 何 と か な ら な い も の か と 思 っ て い ま す 。( 静 岡 ) ・ 45 歳 の 長 男 と 2 人 暮 ら し 。 10 年 前 か ら 働 か な い の で 将 来 が 心 配 。( 静 岡) ・次女の生活が成り立たない。次女は 2 月で失業。夫は低賃金。その息 子 長 男 は 通 信 教 育 大 生 、 二 男 は 高 校 入 試 、 家 の ロ ー ン 5 万 円 。( 長 崎 ) ・未婚の息子 1 人を養っているため、年金だけでは生活が難しい。貯金 を 取 り 崩 し て 何 と か 暮 ら せ る 。( 広 島 ) ・長男が仕事上の失敗から引きこもりになって 5 年近くなっているのが 一 番 の 悩 み 。 今 は 時 間 を か け て 見 守 る 以 外 な い と の 思 い 。( 広 島 ) ・44 歳 の 次 女 が ま っ た く 結 婚 す る 気 が な い 。幼 い と き は 明 る く 積 極 的 な 困らない子でしたが、どうしてこうなったのか不思議。いろいろ試みた が 効 果 な く 途 方 に く れ て い る 。( 神 奈 川 ) ・ 娘 が い つ ま で も 独 身 で い る の が 心 配 。 早 く 結 婚 し て ほ し い 。( 青 森 ) ・ 未 婚 の 息 子 が 失 業 中 で な か な か 就 業 で き な い 。( 東 京 ) ・娘 が 失 業 中 で 仕 事 が 見 つ か ら な い 。独 り 身 な の で 将 来 も 心 配 で す 。 (広 島) 子 ど も の 収 入 が 安 定 し な い 、失 業 し て 仕 事 が な い 、引 き こ も っ て い る 、 という訴えである。仕事に関しては子どもといっても息子に関する言及 が多く、娘については結婚しない、という訴えが多いが、仕事の不安定 さを心配する声も小さくはない。 二 つ 目 は 、 ア エ ラ の 野 田 ・ 仲 宇 佐 ・ 斉 藤 ( 2012) に 掲 載 さ れ た も の で ある。 「 大 卒 シ ン グ ル 300 人 徹 底 ア ン ケ ー ト で 探 る『 貧 困 女 子 』と『 富 裕 女 子 』」と い う タ イ ト ル で あ る 。ア ン ケ ー ト の 対 象 は 、大 卒 初 任 給 水 準 な ど を も と に「 年 収 250 万 円 以 下 」の 200 人 と 、 「 年 収 500 万 円 以 上 」の 同 じ 年 代 の シ ン グ ル 女 性 100 人 で 合 計 300 人 で あ る 。 「 年 収 250 万 円 以 下 」 の 200 人 の な か に は 、 月 収 か ら 家 賃 を 除 く と 、 残 る の は 8 万 円 以 下 、と い う 人 が 20% を 占 め る 。正 規 雇 用 は 43% で あ る 。 転職回数が多く、病気やけがで仕事を辞める、求職した経験がある人の 割 合 も 23% に 及 ぶ 。 興味深いのは、交際相手に関する記述である。交際相手の有無につい て は 、「 年 収 250 万 円 以 下 」 と 「 年 収 500 万 円 以 上 」 で さ ほ ど 変 わ ら ず 、 どちらも半数に届かない。異なるのは、彼の年収である。以下の図に明 確なように、 「 年 収 250 万 円 以 下 」の 女 性 の 場 合 、彼 の 年 収 が 500 万 円 以 72 上 は 少 な く 8% 程 度 で あ る 。 「 年 収 500 万 円 以 上 」の 女 性 の 場 合 は 、70% に 近 い 。( 図 表 25) 図 表 25 関 連 し て 、 山 藤 ( 2013) に は 、 取 り 上 げ て い る ケ ー ス ご と の 家 計 の 内 訳が書かれていている。家計の内訳が、家賃、スマホ、奨学金、食費の 順 に 挙 げ ら れ て お り 、こ れ が 支 出 の 優 先 度 を 示 す と も 思 わ れ 、興 味 深 い 。 73 5-2 書籍から 書 籍 に つ い て も 、 Cinii を 利 用 し 「 女 貧困」のキーワードで時期の 限定をかけずに検索した。主に日本の状況について言及したものをピッ ク ア ッ プ し た と こ ろ 、 全 部 で 50 件 で あ っ た 。 年 代 ご と に ま と め た の が 、 以下の一覧である。 1. 女 性 学 研 究 会 ( 1984)『 女 た ち の い ま vol. 2』 勁 草 書 房 . 2. 林 千 代 ( 1992)『 母 子 寮 の 戦 後 史 : も う 一 つ の 女 た ち の 暮 ら し 』 ド メ ス出版. 3. 杉 本 貴 代 栄 ( 1993)『 社 会 福 祉 と フ ェ ミ ニ ズ ム 』 勁 草 書 房 . 4. 杉 本 貴 代 栄 ( 1997)『 女 性 化 す る 福 祉 社 会 』 勁 草 書 房 . 5. 樋 口 美 雄・岩 田 正 美( 1999) 『 パ ネ ル デ ー タ か ら み た 現 代 女 性:結 婚 ・ 出産・就業・消費・貯蓄』東洋経済新報社. 6. 一 番 ヶ 瀬 康 子 ( 2003)『 高 齢 社 会 の 女 性 福 祉 』 vol. 1: ド メ ス 出 版 . 7. 杉 本 貴 代 栄 ・ 笹 谷 春 美 ・ 中 井 紀 代 子 ほ か ( 2004)『 フ ェ ミ ニ ス ト 福 祉 政策原論: 社会福祉の新しい研究視角を求めて』ミネルヴァ書房. 8. 岩 田 正 美 ・ 西 澤 晃 彦 編 ( 2005)『 貧 困 と 社 会 的 排 除 : 福 祉 社 会 を 蝕 む もの』ミネルヴァ書房. 9. 女 性 労 働 問 題 研 究 会 ( 2006)『 貧 困 と 疲 弊 : 女 性 労 働 の い ま 』 青 木 書 店. 10.生 田 武 志 ( 2007)『 ル ポ 最 底 辺 : 不 安 定 就 労 と 野 宿 』 筑 摩 書 房 . 11.北 九 州 市 立 男 女 共 同 参 画 セ ン タ ー ( 2007)『 女 性 と 経 済 ジェンダー 白書』明石書店. 12.フ リ ー タ ー ズ フ リ ー ( 2008)『 女 性 で 、 安 心 。 貧 乏 で も 、 安 心 』 vol. 02: フ リ ー タ ー ズ フ リ ー 人文書院. 13.伊 藤 セ ツ ( 2008)『 生 活 ・ 女 性 問 題 を と ら え る 視 点 』 法 律 文 化 社 . 14.桜 井 陽 子 ( 2008)『 豊 か な 国 の 女 性 の 貧 困 化 』 全 国 女 性 会 館 協 議 会 . 15.杉 本 貴 代 栄( 2008) 『 女 性 が 福 祉 社 会 で 生 き る と い う こ と 』勁 草 書 房 . 16.牧 野 富 夫 ・ 村 上 英 吾 ( 2008)『 格 差 と 貧 困 が わ か る 20 講 』 明 石 書 店 . 17.鈴 木 大 介 ( 2008)『 家 の な い 少 女 た ち : 10 代 家 出 少 女 18 人 の 壮 絶 な 性と生』宝島社. 18.門 倉 貴 史 ( 2008)『 セ ッ ク ス 格 差 社 会 :「 恋 愛 貧 者 」「 結 婚 難 民 」 は な ぜ増えるのか?』宝島社. 19.い ち む ら み さ こ( 2009) 『 女 性 と 貧 困 生 き 抜 く 道 は 、ど こ に あ る の か ? 74 ロスジェネ』かもがわ出版. 20.杉 本 貴 代 栄 ・ 須 藤 八 千 代 ・ 岡 田 朋 子 ( 2009)『 ソ ー シ ャ ル ワ ー カ ー の 仕事と生活:福祉の現場で働くということ』学陽書房. 21.( 2009)『 女 た ち の 21 世 紀 No.57【 特 集 】 女 性 の 貧 困 ― 何 が 見 え なくしてきたのか?』アジア女性資料センター. 22.宮 下 忠 子 ( 2010)『 思 川 : 山 谷 に 生 き た 女 た ち : 貧 困 ・ 性 ・ 暴 力 も う ひとつの戦後女性史』明石書店. 23.女 性 労 働 問 題 研 究 会 ( 2010)『「 安 心 」 な 雇 用 実 現 へ の 模 索 』 24.大 沢 真 理 ・ 日 仏 女 性 研 究 学 会 ・ 日 仏 会 館 研 究 セ ン タ ー ( 2010)『 女 性 の 貧 困 化 に 社 会 は ど う 立 ち 向 か う の か:グ ロ ー バ ル 危 機 の 中 で の 日 仏 比較:国際女性デー・日仏シンポジウム』東京大学社会科学研究所. 25.日 本 婦 人 団 体 連 合 会( 2010) 『 女 性 の 貧 困:変 わ る 世 界 と 日 本 の 遅 れ 』 ほるぷ出版. 26.松 井 彰 彦 ・ 川 島 聡 ・ 長 瀬 修 ほ か ( 2011)『 障 害 を 問 い 直 す 』 東 洋 経 済 新報社. 27.大 阪 弁 護 士 会 ( 2011)『 貧 困 の 実 態 と こ れ か ら の 日 本 社 会 : 子 ど も ・ 女性・犯罪・障害者、そして人権』明石書店. 28.( 2011)『 貧 困 研 究 vol.6』( シ リ ー ズ 貧 困 研 究 の 課 題 6 女性と貧 困)明石書店. 29.中 村 淳 彦 ( 2012)『 デ フ レ 化 す る セ ッ ク ス 』 宝 島 社 . 30.荻 上 チ キ( 2012) 『 彼 女 た ち の 売 春( ワ リ キ リ ): 社 会 か ら の 斥 力 、出 会い系の引力』扶桑社. 31.橘 木 俊 詔 編 ( 2012)『 格 差 社 会 』 ミ ネ ル ヴ ァ 書 房 . 32.杉 本 貴 代 栄( 2012) 『 フ ェ ミ ニ ズ ム と 社 会 福 祉 政 策 』ミ ネ ル ヴ ァ 書 房 . 33.( 2012)『 現 代 思 想 特 集 女 性 と 貧 困 』 第 40 巻 第 15 号 : 青 土 社 . 34.花 輪 陽 子・ま さ こ ふ じ い( 2013) 『「 貧 困 女 子 」時 代 を か し こ く 生 き る 6 つ の レ ッ ス ン:単 身 女 性 の 3 人 に 1 人 手 取 り -家 賃 =8 万 5000 円 未 満 』 角川書店. 35.丸 山 里 美 ( 2013)『 女 性 ホ ー ム レ ス と し て 生 き る : 貧 困 と 排 除 の 社 会 学』世界思想社. 36.須 藤 八 千 代・宮 本 節 子( 2013) 『 婦 人 保 護 施 設 と 売 春・貧 困・DV 問 題 : 女性支援の変遷と新たな展開』明石書店. 37.杉 山 春 ( 2013)『 ル ポ 虐 待 : 大 阪 二 児 置 き 去 り 死 事 件 』 筑 摩 書 房 . 38.大 阪 弁 護 士 会 ( 2013)『 知 っ て お き た い ! 養 育 費 算 定 の こ と : 貧 困 母 子世帯をなくすために』かもがわ出版. 39.( 2013)『 フ ェ ミ ニ ズ ム は ど こ へ 』 女 性 ラ イ フ サ イ ク ル 研 究 所 : 三 学 75 出版. 40.( 2013)『 女 た ち の 21 世 紀 No.73【 特 集 】 生 活 保 護 ― ― 女 性 の 貧 困 とセーフティネット』アジア女性資料センター. 41.「 大 学 非 常 勤 職 員 の ワ ー ク ラ イ フ バ ラ ン ス 」 研 究 会 ( 2014)『 大 学 × 非 正 規 ×女 性 の「 貧 困 」を 問 う:京 都 大 学 非 常 勤 職 員 の 実 態 調 査 報 告 』 42.大 理 奈 穂 子・栗 田 隆 子・大 野 左 紀 子 ほ か( 2014) 『高学歴女子の貧困: 女子は学歴で「幸せ」になれるか?』光文社. 43.梶 原 公 子( 2014)『 25 パ ー セ ン ト の 女 た ち : 未 婚 、 高 学 歴 、 ノ ン キ ャ リアという生き方』あっぷる出版社. 44.岩 崎 博 充( 2014) 『 50 歳 で も 間 に 合 う 女 の 老 後 サ バ イ バ ル マ ネ ー プ ラ ン!「老後プア」から身をかわす』主婦の友社. 45.NHK「 女 性 の 貧 困 」 取 材 班 ( 2014)『 女 性 た ち の 貧 困 “ 新 た な 連 鎖 ” の衝撃』幻冬舎. 46.仁 藤 夢 乃( 2014) 『 女 子 高 生 の 裏 社 会:「 関 係 性 の 貧 困 」に 生 き る 少 女 たち』光文社. 47.鈴 木 大 介 ( 2014)『 最 貧 困 女 子 』 幻 冬 舎 . 48.大 和 彩 ( 2014)『 失 職 女 子 。: 私 が リ ス ト ラ さ れ て か ら 、 生 活 保 護 を 受 給 す る ま で 。』 WAVE 出 版 . 49.赤 石 千 衣 子 ( 2014)『 ひ と り 親 家 庭 』 岩 波 書 店 . 50.鈴 木 大 介 ( 2015)『 最 貧 困 シ ン グ ル マ ザ ー 』 朝 日 新 聞 出 版 . 50 件 の 書 籍 が 出 版 さ れ た 年 で 区 分 し 、グ ラ フ に あ ら わ し た の が 、図 表 26 で あ る 。 図 表 26 を み て 気 づ く の は 、 1990 年 代 ま で に 出 版 さ れ た 書 籍 の 少 な い こ と 、そ れ に 対 し 2000 年 代 以 降 は 増 加 し て い る 傾 向 で あ る 。特 に 2008 年 は 、世 界 金 融 危 機 に よ る 世 界 的 な 不 況 よ っ て 起 こ さ れ た と さ れ る「 派 遣 切 り 」が 問 題 と な り 、 「 年 越 し 派 遣 村 」を 象 徴 と し て 、日 本 の 貧 困 問 題 が 社 会 に 明 ら か に さ れ た 年 で あ っ た 。2008 年 に 出 版 さ れ た 書 籍 で は 、日 本 の 貧 困 問 題 の 一 部 と し て 女 性 の 貧 困 問 題 が 取 り 上 げ ら れ て い る 。 女 性 の 貧 困 問 題 そ の も の が 、よ り 焦 点 化 さ れ て き た の は 、2008 年 以 降 で あ る 。 い く つ か の 雑 誌 で 特 集 が 組 ま れ 、 5-1 で 取 り 上 げ た よ う な 雑 誌 記事がみられるようになる。そして、女性の貧困問題がいわばブームと な っ た の が 、 2014 年 で あ っ た 。 76 図 表 26 以 下 で は 、2014 年 の 文 献 に 着 目 し 、最 近 の ブ ー ム と も な っ て い る「 女 性の貧困問題」とはどのような中身なのか、いかなることに関心が向け られているのか、検討する。 ■ 41.「 「 大 学 非 常 勤 職 員 の ワ ー ク ラ イ フ バ ラ ン ス 」 研 究 会 ( 2014) 2014 『 大 学 ×非 正 規 ×女 性 の「 貧 困 」を 問 う:京 都 大 学 非 常 勤 職 員 の 実 態 調 査 報 告 』 9 この調査の問題意識は、第一に、時間雇用・有期雇用の非常勤職員に は女性が多く、それは「家計補助的」労働であるから問題がないという 社会通念を検証するためである。第二は、非常勤契約をかけもちして家 計を維持するひとは、どのような働き方を望んでいるのか、明らかにす る こ と で あ る 。ア ン ケ ー ト と イ ン タ ビ ュ ー 調 査 に よ り 、 「女性の家計補助 的な仕事」として不可視化されてきた非常勤職員の労働と生活の実態と 希 望 を 明 ら か に す る こ と を 目 的 と し て い る 。( 9 頁 ) ア ン ケ ー ト の 対 象 は 、 京 都 大 学 の 非 正 規 雇 用 職 員 で 、 配 布 数 1009 件 、 9 同 調 査 は、菊 地 (2013)でも紹 介 されている。 77 有 効 回 答 数 321 件 ( た だ し 、 集 計 対 象 は 期 日 を 過 ぎ て 届 い た 回 答 も あ わ せ て 325 件 )で あ る 。 「 回 答 者 の 像 」を 中 心 に 、ア ン ケ ー ト 調 査 の 結 果 を 紹介したい。 回 答 者 の う ち 、女 性 が 9 割 、平 均 年 齢 は 41 歳 で 、既 婚 、非 婚 は ほ ぼ 半 々 である。つまり「非常勤職員は夫に扶養されている既婚女性」という一 般 に 抱 か れ た イ メ ー ジ は 誤 り だ 、と い う こ と で あ る 。 「半数は既婚者であ るものの、もう半数はシングルであり、子どもを扶養している者も少な くない。結婚・子育てをしている割合は同世代の平均を大きく下回って いる。このような結果から、主に自らの生計を立てるために非常勤職員 と し て 働 い て い る シ ン グ ル 女 性 た ち の 存 在 が 浮 か び 上 が っ て く る 。」( 68 頁) 京 大 で の 手 取 り は 平 均 収 入 135.75 万 円 、京 大 以 外 の 仕 事 を あ わ せ て も 平 均 149.55 万 円 で あ る 。世 帯 年 収 は 、平 均 512.2 万 円 で あ る が 、ば ら つ き が 大 き い 。 200 万 円 以 下 が 14% 、 無 回 答 が 32% 存 在 し て い る 。( 図 表 27) 図表27 世帯の年収 35.0% 30.0% 25.0% 20.0% 15.0% 10.0% 5.0% 0.0% 職務評価では、 「 自 分 の 仕 事 は 恒 常 的 だ が 、補 助 的 か 基 幹 的 か に つ い て はどちらともいえない」という自己認識がみてとれ、正規職員に比べる と負担は少ないと認識している。給与については「もっと評価されても 78 いい」が 4 割、正当な評価だという回答が 3 割で迷いが見られる。性別 役割分業意識やそれを固定する諸制度についての見解は明快でないもの の 、ど ち ら か と い え ば 自 立 志 向 が 強 い 印 象 だ と さ れ て い る 。 ( 68− 69 頁 )。 ■ 42. 大 理 奈 穂 子・栗 田 隆 子・大 野 左 紀 子 ほ か( 2014) 『高学歴女子の貧 困:女子は学歴で「幸せ」になれるか?』光文社. 本書の構成は、次のようである。 はじめに 1. どうして女性は高学歴でも貧困なのか――二人の高学歴女子をめぐ る現状 2. なぜ女性の貧困は男性よりも深刻化しやすいのか? 3. 女子の高学歴化は、彼女たちと社会に何をもたらしたのか? 4. 女は女というだけで貧乏になるのだ 5. 「アート系高学歴女子」のなれの果てとして、半生を顧みる 各章、執筆者が異なる共著書である。ここでは、いくつか注目すべき 主 張 を 引 用 す る 。1 章 の 執 筆 者 の 一 人 で あ る 栗 田 氏 は 、 「とにかく女性の 貧 困 は( 女 性 に 限 ら な い と い う 声 が 瞬 時 に 上 が り そ う だ が )、と り わ け そ の人の意思や努力との相関関係が強いわけじゃない。むしろ、社会制度 やシステムなど構造的な問題とハッキリ指摘できる。 ( 中 略 )そ れ は 、今 では『貧困女子』などとマスコミにも登場するテーマになったから、私 の問題意識はズレてはいなかったのだろう。追い風も吹いているみたい だ 。」( 32-33 頁 ) 後 に 取 り 上 げ る 文 字 化 さ れ た NHK の 番 組 の よ う に 、 マ ス コ ミ で も 取 り 上げられる「貧困女子」への注目にも言及している。ただし、そこには 問 題 が あ る 。「 女 性 の 貧 困 問 題 の ど 真 ん 中 に は 高 齢 女 性 だ っ て い る の に 、 メディア側は『若い女性』の画を求めたがる。だがその結果、社会構造 や 制 度 的 問 題 と は 認 識 さ れ に く く な る 副 作 用 だ っ て 生 じ て い る 。( 中 略 ) 貧 困 女 性 が 、TV の 画 面 で 見 世 物 的 に 消 費 さ れ る こ と は あ っ て も 、社 会 構 造 の 問 題 と し て の『( 全 年 齢 に ま た が る )女 性 の 貧 困 』が 注 目 さ れ な い と い う こ と こ そ 、 ま さ に 『 女 性 の 貧 困 』 で あ る 。」 と い う 。( 33 頁 ) 2 章の執筆者である大理氏は、先に取り上げた「京都大学非常勤職員 の実態調査報告」とも重なる非常勤講師が直面させられる困難を分析し ている。その上で「既婚男性>独身男性>独身女性>既婚女性。研究者 79 の採用はこの順に決まる――。この業界にこんな身もフタもない『言い 伝え』が存在することは、結婚にきわまるこの国の性別役割分業の、根 強 さ と 容 赦 の な さ を 如 実 に 物 語 っ て い る 。」と し 、最 後 に 次 の よ う に 述 べ て い る( 83 頁 )。 「 女 性 の 非 常 勤 講 師 は 往 々 に し て 、一 方 で は 性 別 役 割 分 業規範の桎梏によって、他方では研究者コミュニティ自体の持つ男性的 な排他性によって、研究の世界、およびその先にある専任職ポスト獲得 の 機 会 か ら も 遠 ざ け ら れ て し ま い が ち な の で あ る 。」 3 章 は 、女 性 の 高 等 教 育 に つ い て 分 析 し て い る 。著 者 の 水 月 氏 は 、 「『 女 子へ高等教育を!』という流れを、女子大の源流を辿ることで概観」す る ( 118 頁 )。 そ の 結 果 は 次 の よ う で あ る 。「 明 治 時 代 に お い て 、 上 流 階 級 の 子 女 に 対 す る『( 高 等 教 育 化 に よ る )女 子 の 自 立 』と い っ た 高 邁 な 理 念が存在していたことは、喜ばしい発見であった。しかし、現実には、 当時の社会や政府の一般的な価値観が反映され、 『 良 妻 賢 母 』方 の( 家 を 守る)女性の育成が重んじられていたことは、一方で残念なことであっ た 。」( 118 頁 )。今 は 、高 学 歴 女 子 の 絶 対 数 は 男 子 に 迫 り つ つ あ る 。問 題 は、社会的影響力のあるポストについている女性の数の少なさであると いう。 「 問 題 解 決 を 図 る 意 思 決 定 の 場 に 、当 事 者 が 参 加 で き な い シ ス テ ム 」 こ そ が 問 題 で あ る と い う ( 122 頁 )。 ■ 45. NHK「 女 性 の 貧 困 」取 材 班( 2014) 『女性たちの貧困 “新たな連鎖” の衝撃』幻冬舎. 本 書 は 、 2013 年 2 月 に 放 送 さ れ た 、 お は よ う 日 本 『“ 望 ま な い 妊 娠 ” 女 性 た ち の 現 実 』、同 年 7 月 の 地 方 発 ド キ ュ メ ン タ リ ー『 彼 女 た ち の 出 産 ∼ 2013 あ る 母 子 寮 の 日 々 』、 2014 年 1 月 の ク ロ ー ズ ア ッ プ 現 代 『 あ し たが見えない∼深刻化する“若年女性”の貧困∼』と、その続編となる NHK ス ペ シ ャ ル『 調 査 報 告 女 性 た ち の 貧 困 ∼“ 新 た な 連 鎖 ”の 衝 撃 ∼ 』 について、番組で紹介することができなかった取材の内容も含めてまと め た も の で あ る ( 251 頁 )。 目 次 は 次 の よ う で あ り 、各 章 、NHK の 取 材 さ れ た 記 者 が 執 筆 し て い る 。 はじめに――「理想はないですね、基本」 1. 見えない貧困 2. 非正規雇用の現実 3. 「母一人」で生きる困難 4. セーフティーネットとしての「風俗」 80 5. 妊娠と貧困 6. “新たな連鎖”の衝撃 7. 解決への道はどこに データが語る若年女性の貧困 おわりに――人生のスタート地点で「夢」や「希望」が奪われる社会と は NHK の 取 材 班 が 若 年 女 性 の 貧 困 に 着 目 し た の は 、子 ど も の 虐 待 問 題 を 取 材 し て き た と い う 背 景 が あ っ た( 22 頁 )。 「子どもを安定した環境で育て られない母親たちはどんな困難を抱えているのか、私たちは直視してい く 必 要 が あ る と 思 っ た 。」 と い う ( 23 頁 )。「 女 性 の 貧 困 の 『 今 』 を 見 つ めるだけでなく、子どもたちの『将来』について考えることで“貧困の 連 鎖 ” の 実 態 解 明 」 に つ な げ た い と い う 趣 旨 で あ る ( 64 頁 )。 収 入 に つ いて詳細を取材することは失礼であろうと心配していたが、どのシング ルマザーもお金の質問に丁寧に答えてくれて、社会の無理解を解消して 欲 し い と い う 思 い が あ っ た の で は な い か と 述 べ て い る ( 70 頁 )。 2 章は非正規雇用の問題を取り上げているが、そこには「女性の貧困 に つ い て 考 え る と き 、雇 用 の 問 題 は 避 け る こ と が で き な い 。」と い う 問 題 認 識 が あ る ( 40 頁 )。「 女 性 は 、 若 い う ち は 父 親 に 、 結 婚 す れ ば 夫 に 、 歳 を取れば息子によって守られる。そんな時代はもはやないにもかかわら ず、母子世帯で育った若い女性たちやシングルマザー、さらには貧困率 が最も高い高齢の女性たちの現状を見れば、 『 男 』を 欠 い た 途 端 、女 性 た ち の 暮 ら し は 一 気 に 困 窮 す る の だ と い う 現 実 を 思 い 知 ら さ れ る 。」( 41 頁 )。 5 章 で は 、「 女 性 た ち を 見 て い て 痛 感 す る の は 、 妊 娠 が あ っ と い う 間 に 安 定 を 奪 っ て し ま う と い う 現 実 」 と 指 摘 す る ( 156 頁 )。「 非 正 規 雇 用の女性たちが妊娠を機に仕事や住まいを失うのはもちろん、正社員で あってもぎりぎりまで妊娠を隠し、 『 急 病 に な っ た 』と 職 場 に 伝 え て そ の 間 に 出 産 を す ま せ る と 、 真 剣 に 話 す 女 性 も い た 。」( 156 頁 )。 4 章では、働くことを余儀なくされたシングルマザーの生活に欠かせ ない三つの要素、就労・育児支援・居住をワンストップで提供している の が 、 風 俗 店 で あ る と 指 摘 す る ( 101 頁 )。「 生 活 に 困 窮 し た 一 人 が 抱 え る問題は、多岐にわたっている。行政による支援の制度があっても、縦 割りでそれぞれがつながっていないことはよく指摘されている問題だ。 若 い 女 性 は 、特 に 支 援 と つ な が り に く い と い わ れ て い る 。」 ( 120 頁 )。そ こ で 期 待 さ れ て い る の が 、2015 年 4 月 か ら ス タ ー ト す る「 生 活 困 窮 者 自 立 支 援 法 」の 実 施 で あ り 、 「風俗店がセーフティーネットになっていると 81 いう皮肉な現実を、いかに改善していくことができるのか。取材を続け て い き た い 。」 と し て い る ( 121 頁 )。 ■ 46. 仁 藤 夢 乃 ( 2014)『 女 子 高 生 の 裏 社 会 :「 関 係 性 の 貧 困 」 に 生 き る 少女たち』光文社. 本書の執筆者は、 「家庭や学校に居場所や社会的つながりを失った高校 生 を『 難 民 高 校 生 』と 呼 び 、さ ま ざ ま な 事 情 や 苦 し み を 抱 え た 10 代 の 少 女 た ち の 自 立 を 後 押 し す る 活 動 を 行 っ て い る 。」( 3 頁 ) そ の 活 動 で 直 面 す る「 性 搾 取 や 違 法 労 働 の 現 場 に は 、 『 衣 食 住 』と『 関 係 性 』を 失 っ た 少 女 が 多 く 存 在 し 、『 貧 困 』 状 態 か ら 抜 け 出 せ な く な っ て い る 。」 と い う 状 況を文字化し、読者に伝えている。 本 書 の 構 成 は 、 1 章 か ら 5 章 ま で 取 材 を 通 し て 出 会 っ た 「 JK< 女 子 高 生 > 産 業 」で 働 く 少 女 の 事 例 を 取 り 上 げ 、6 章 で 分 析 、7 章 で「 少 女 た ち のその後」に言及している。それぞれの事例が、少女たちの状況をよく 知らせているため、この内容が本書の眼目ではあるが、ここでは特に貧 困に関連する分析を引用する。 調 査 を 踏 ま え 、「 JK リ フ レ や お 散 歩 で 働 く 少 女 の 多 く は 、 家 庭 か ら 排 除されている。家庭が貧しく経済的に困窮していても、誰にも頼れずに 苦しんでいても、虐待やネグレクトを受けていても、彼女たちはきれい な服を着ておめかしをするため、 『 貧 困 』や『 孤 立 』状 態 に あ る こ と に は 気 づ か れ な い 。」と い う( 121 頁 )。た だ し 、「 両 親 と の 仲 も 学 校 で の 成 績 も よ く 、将 来 の 夢 も あ っ て 受 験 を 控 え て い る よ う な『 普 通 の 』女 子 高 生 」 も お り 、「 JK 産 業 」 で 働 く 少 女 を 3 つ の 層 に 分 類 し て い る ( 176 頁 )。 ①貧困層 貧困状態にあり、生活が困窮している層。 ②不安定層 経済的困窮家庭の子ではないが、家庭や学校での関係性や 健康・精神状態に不安や特別な事情を抱えている層。 ③生活安定層 経済的にも家庭や学校における関係性的にも困窮してお らず、その他特別な事情も抱えていない層。 「③生活安定層」の少女たちが売春や犯罪の入り口に立っていること は 衝 撃 的 で 、こ の 10 年 間 、 「①貧困層」 「 ② 不 安 定 層 」の 子 ど も た ち が「 そ ちらの世界に引っ張られていく」ことを社会が放置してきた結果である と い う ( 177 頁 )。「 少 女 た ち は ま だ 子 ど も で 社 会 を 知 ら ず 、 判 断 能 力 も ない。一方で、雇う側、買う側は大人だ。彼らは身の危険をわかってい 82 るからこそ、規制をくぐり抜けるようにして、少女をうまく利用してい る。 『 JK 産 業 』は そ ん な グ レ ー ゾ ー ン を 狙 っ た『 脱 法 産 業 』な の だ 。」 ( 192-3 頁 )。 他 方 で 、「 家 庭 や 学 校 に 頼 れ ず 、『 関 係 性 の 貧 困 』 の 中 に い る 彼 女 た ち に 、 裏 社 会 は 『 居 場 所 』 や 『 関 係 性 』 を 提 供 す る 。」( 209 頁 )。 こ れ は 、 本来、行政の相談窓口や社会保障に求められる機能であるが、そこに大 きな問題がある。 「 社 会 保 障 も 法 律 も 、基 本 的 に 未 成 年 は 保 護 者 に 守 ら れ て い る こ と が 前 提 と さ れ て い る 。行 政 は 、学 校 は 、大 人 は 、10 代 の 子 ど もたちの『秘密』を守ってくれない。仕事や住まいを与えてくれる裏社 会のスカウトよりたちが悪い。 ( 中 略 )そ ん な 経 験 か ら 、も と も と 声 を 上 げ て い た 子 ど も た ち も 声 を 上 げ ら れ な く な っ て い く 。子 ど も が『 助 け て 』 と言えない社会はおかしい。 ( 中 略 )私 た ち は 、子 ど も た ち の 信 頼 を 取 り 戻 す と こ ろ か ら 始 め な け れ ば な ら な い 。」( 202 頁 )。 ■ 47. 鈴 木 大 介 ( 2014)『 最 貧 困 女 子 』 幻 冬 舎 . 同 書 は 、「 ま え が き 」 に お い て 、「 貧 困 問 題 は ク ロ ー ズ ア ッ プ さ れ れ ば されるほどに、混乱を招いているように思える」とし、そもそも貧困に 陥 る の は 低 所 得 に 加 え て「 三 つ の 無 縁 」 「 三 つ の 障 害 」と 分 類 す る 。三 つ の 無 縁 と は 、「 家 族 の 無 縁 ・ 地 域 の 無 縁 ・ 制 度 の 無 縁 」、 三 つ の 障 害 と は 「精神障害・発達障害・知的障害」である。これが素人分類だと断りつ つ、 「 貧 乏 で も が ん ば っ て い る 人 は い る し 、貧 困 と か 言 っ て い る 人 間 は 自 己責任」という戯言は払拭できるはずで、具体的な支援策は専門性の高 い 人 た ち で 議 論 し て 欲 し い と い う 。( 10-11 頁 ) 著者が注目するのは「世の中には、こうした分類・分析・論証や議論 から外れたところで、目も当てられないような貧困の地獄の中でもがい て い る 女 性 、そ し て 未 成 年 の 少 女 た ち 」の 存 在 で あ り 、 「セックスワーク ( 売 春 や 性 風 俗 産 業 )の 中 に 埋 没 す る『 最 貧 困 女 子 』」で あ る 。 ( 12 頁 )。 目次は次のようである。 まえがき 1. 貧困女子とプア充女子 2. 貧困女子と最貧困女子の違い 3. 最貧困少女と売春ワーク 4. 最貧困少女の可視化 5. 彼女らの求めるもの 83 あとがき 「最貧困女子」という言葉で、真っ先に著者の脳裏に浮かんだのは、 『 出 会 い 系 の シ ン グ ル マ ザ ー た ち 』( 2010 年 ・ 朝 日 新 聞 出 版 ) で 取 材 し た 、 20 名 程 度 の 女 性 た ち で あ っ た ( 54 頁 )。 彼 女 た ち は 「 私 的 に 売 春 を するシングルマザー」で、なぜ売春行為で得る稼ぎを必要とするのか、 他に仕事をしていないのか、仕事ができない状況なら生活保護を受給で きないのか、離婚の理由、前夫からの養育費、子どもの養育状況など、 聞 き だ し た い こ と は 尽 き な か っ た が 、取 材 で き な か っ た と い う 。 「考えて も考えても救いの光がどこにあるのか分からない、どう解決すればいい の か 糸 口 も 見 え な い 、 そ ん な 、『 ど ん 底 の 貧 困 』 だ っ た 。」( 55-56 頁 )。 「彼女らは売春ワーク(ワークとすら言えない状態だったが)に関与 す る こ と で 、や は り 自 ら 社 会 の 批 判 の 対 象 と な っ て し ま っ て い た ( 。中略) 痛みの大きさも、そもそもその存在自体も、可視化されていない。分か りづらい。一見すれば本人の自己責任にも見えるし、差別や批判の対象 と な り が ち で あ る 。以 上 が 、セ ッ ク ス ワ ー ク 周 辺 者 と な っ た 貧 困 女 子 が 、 様々な支援のチャンスや接点をふいにして『最貧困』へと陥っていく所 以 だ 。」( 80 頁 ) しかし、 「 セ ッ ク ス ワ ー ク と 貧 困 に は 、さ ら に も っ と 深 い 闇 が あ る 」と し て 、「『 貧 困 の 中 、 虐 待 家 庭 に 育 ち 、 セ ッ ク ス ワ ー ク に 吸 収 さ れ て い っ た 少 女 た ち 』の 現 場 」を 取 り 上 げ る( 81 頁 )。少 女 た ち が 求 め る も の は 、 「 補 導 な ど に 怯 え ず ゆ っ く り 寝 る こ と が で き る『 宿 泊 場 所 』、そ の 宿 泊 や 食 事 を 確 保 す る た め の『 現 金 と 仕 事 』、現 金 を 得 る た め の ツ ー ル と し て 不 可 欠 な『 携 帯 電 話 』、そ し て『 隣 に い て く れ る 誰 か 』」だ と い う 。そ の「 彼 女 ら の 欲 し い 物 の ほ と ん ど を 、 行 政 や 福 祉 は 与 え て く れ な い 。」、 そ の た め セ ッ ク ス ワ ー ク に 「 捕 捉 」 さ れ る と い う ( 100-101 頁 )。 そして、 「 セ ッ ク ス ワ ー ク の 底 の 底 」に い る「 最 貧 困 女 子 の リ ア ル 」は 、 「 自 己 責 任 論 な ど 、絶 対 に さ し は さ む 余 地 」が な い 、 「なぜなら彼女らは、 その『自己』というものが既に壊れ、壊れてしまっている」のだとする ( 134 頁 )。「『 援 助 交 際 』『 援 交 少 女 』 と い う 、 誰 が 作 り 出 し た か 分 か ら な い 無 責 任 な 言 葉 と 、そ こ に 固 定 化 さ れ た イ メ ー ジ 」を 払 拭 し( 153 頁 )、 「セックスワークの中に埋没する『最貧困女子』を可視化」する必要性 を 訴 え て い る ( 167 頁 )。 以 上 の こ と が 、具 体 的 な 描 写 を 盛 り 込 み つ つ 説 得 的 に 描 写 さ れ た の ち 、 5 章では、最貧困女子の救済策として、著者が聞き取れた「当事者が求 84 め る も の 」 を 述 べ て い る ( 170 頁 )。「 第 一 に 必 要 な こ と は 、 彼 女 ら が 路 上に飛び出る前に、それ以前に地元同年代で作るコミュニティの中でセ ックスワークに取り込まれる前に、彼女らを救済すること(中略)彼女 ら が 共 有 す る の は 、貧 し さ よ り も『 寂 し さ 』と い う こ と 」だ と す る( 179 頁 )。 「 次 に 、未 成 年 が 既 に セ ッ ク ス ワ ー ク に 取 り 込 ま れ た 後 に つ い て 」 ( 183 頁 ) は 、「 毎 日 の 売 春 と い う の は や は り 非 人 道 的 な 行 為 」( 184 頁 ) と し た 上 で 、「『 少 女 自 身 に よ る 独 立 』と い う 選 択 肢 」( 185 頁 )を お く こ と だ という。 「 た だ 何 も 言 わ れ ず に 自 由 に 休 め る 場 所 が 欲 し い 。こ れ が 家 出 少 女 ら か ら 聞 き 取 っ た 、 彼 女 ら の 最 大 の 希 望 だ っ た 。」 と い う ( 184 頁 )。 そ し て 、「 苦 肉 の 策 と も い え る の が 、『 セ ッ ク ス ワ ー ク の 脱 犯 罪 化 ・ 正 常 化 ・ 社 会 科 』だ 」( 187 頁 )。「 当 事 者 と 支 援 者 の 断 絶 を 取 り 除 く た め に も、段階的なセックスワークの社会化を望みたい。制度的な変革が無理 だとすれば、せめてセックスワークの経営サイドの意識改革を促すよう な動きと、従来の女性支援勢力が、きちんと手を結んで同じテーブル上 で 話 を し て ほ し い と 思 う の だ 。」( 196 頁 )。 最 後 に 、 恋 活 = 恋 愛 活 動 の シ ス テ ム 化 、 を 挙 げ る ( 197 頁 )。「 女 性 の 貧 困 、セ ッ ク ス ワ ー ク と 貧 困 な ど の 議 論 の 場 に 、 『 恋 愛 』の 二 文 字 を 見 た ことがほとんどない。 『 貧 困 女 子 脱 出 の 得 策 は 恋 活 』な ど と 言 え ば 、そ の 言葉の安っぽさに失笑を買うか、フェミニストの逆鱗に触れるのが関の 山だ。だがこれは、当事者の中でしかできないこと(中略)地雷男の特 徴と失敗例を共有するだけでもいい。これは社会が用意する制度などで は 決 し て 解 決 で き な い 、 そ し て 大 き な 問 題 だ 。」 と 述 べ る ( 206 頁 )。 ■ 48. 大 和 彩( 2014) 『 失 職 女 子 。:私 が リ ス ト ラ さ れ て か ら 、生 活 保 護 を 受 給 す る ま で 。』 WAVE 出 版 . 同 書 の 中 身 は 、「 は じ め に 」 ま と め ら れ て い る 「 無 職 ( 元 OL)」 か ら 「 と き ど き ウ ェ ブ に 文 章 を 寄 稿 し て い る 、 無 職 になった者」です。 ほんの少し前の私は、リストラや契約打ち切りで無職になり、転職活 動 で は 100 社 近 く か ら 不 採 用 に な り 、 貯 金 も す べ て 使 い 果 た し 、 生 活 に 困って途方にくれていました。 借 金 ・ 風 俗 勤 務 ・ 自 死 ― ― こ の 三 つ の う ち 、「 ど れ に し よ う か な ・・・」 と思い悩んでいたときに知ったのが、<生活保護>という制度でした。 85 結果、私は現在、借金も風俗勤務も自死もすることなく、生活保護の支 援を受けながら、自立を目指してなんとか日々を送ることができており ます。 目次は、 1. 失職女子は、お金がない! 2. 失職女子とハローワーク 3. 失職女子のライフライン 4. 失職女子、生活保護を申請 5. 失職女子、住まいを探す 6. 失職女子の現在と、未来 おわりに となっている。小学生のころから、就職して親から経済的自立を果た すことが夢であったという著者が、就職して失職し、ハローワークで提 供される支援を利用し、生活保護を受給するまでの過程、出来事を述べ たものである。困窮状態に陥った当事者が、自分自身の状況を描き、生 活保護という支援を利用する意味について語っているのが、これまで取 り上げた書籍と違う点である。 「生活保護受給は、 『 ま さ か 自 分 が 経 験 す る こ と に な る と は 』の 最 た る 出 来 事 」 で あ っ た ( 202 頁 )。 生 活 保 護 受 給 後 、 体 調 は 不 安 定 だ が 、「 金 銭 で は な い 、大 き な 贈 り 物 」を 得 た と い う 。そ れ は「『 私 な ん か で も 、生 き て い て い い ん だ ・・・・・・』 と い う 、 じ わ じ わ 心 に 沁 み わ た っ て い く よ う な 心 情 」 で あ る ( 214 頁 )。 他 方 で 、 生 活 保 護 を 受 給 す る 直 前 、 申 請 す る と き は 、「『 貧 困 生 活 を 送 る と 、IQ が 下 が る 』と 最 近 ネ ッ ト で 読 み ま し た が 、ホ ン ト に そ の 通 り( 中 略)活字を読んでも、一つひとつの文字は読めるのに、それを言葉や文 として頭のなかで結びつけてロジカルに捉えることができないという状 態までボケが進んでおり、福祉課でせっかくもらった『生活保護のしお り 』な ど に 目 を と お し て も 、た だ の 文 字 の 羅 列 に し か 見 え ず 困 り ま し た 」 ( 203 頁 ) と 、 当 事 者 の 実 感 が 端 的 に 示 さ れ て い る 。 86 6. 地 方 自 治 体 の と る べ き 施 策 本 報 告 書 で は 、2 章 で 貧 困 と い う 概 念 に つ い て 説 明 し た 上 で 、3 章 で 女 性 の 貧 困 問 題 に 対 す る 地 方 自 治 体 の 取 り 組 み 、4 章 で 国 の 調 査 、5 章 で 女 性の貧困問題に関する論文・雑誌記事、書籍を検討してきた。そのなか で、すでにさまざまな解決策、政府・行政がとるべき施策が示されてお り言及してきたが、ここであらためて「地方自治体がとるべき施策」に ついて述べる。 Ⅰ.施策の企画・立案・実施の前提となる各種の調査において、性別デ ータを整備すること これまでに女性の貧困問題について論じられてきたこと、明らかにさ れてきたことを述べてきたが、まだまだ十分に実態が明らかにされてい るとは言えない。それがなぜかといえば、検討の前提となるデータが不 備なためである。女性のおかれている状況を明らかにするには、さらに は性に中立な社会制度を構築するには、性別データを整備することが不 可欠である。具体的には、選択肢を「男性・女性・その他」と設定する こ と で あ る 10。 たとえば、先に言及した、男女共同参画会議監視・影響調査専門調査 会( 2009) 『新たな経済社会の潮流の中で生活困難を抱える男女に関する 監 視 ・ 影 響 調 査 報 告 書 』 の 44-45 頁 で は 、 国 の 施 策 の 全 体 的 な 傾 向 が 分 析 さ れ て い る 11。 ○ 男女別の状況やニーズの把握が行われている施策は調査対象とした 83 施 策 ( 実 件 数 76 件 ) の う ち 25 施 策 で あ っ た 。 内 訳 は 「 ア . ① 若年 期におけるライフプランニングを考えるための教育の充実」に関する施 策 ( 1 施 策 )、「 ア . ③ 暴力被害当事者等のエンパワーメントに向けた 支 援 の 充 実 」に 関 す る 施 策( 7 施 策 )、男 女 雇 用 機 会 均 等 確 保 に 関 す る 施 策 、「 イ . ① 雇 用 の 場 の 改 革 」 に 関 す る 施 策 ( 2 施 策 )、「 イ . ② 10 性 に中 立 的 な社 会 制 度 、という観 点 から性 的 マイノリティ への配 慮 も肝 要 と考 え、選 択 肢 に「その他 」を入 れる ことを提 案 したい。この 点 について、「虹 色 ダイバーシティ」の村 木 氏 にご教 示 いただいた。「 トランスジェンダーは就 職 困 難 層 でもあり、貧 困 リスク が高 い」と考 えられており、貧 困 問 題 に取 り 組 むには、性 的 マイノリティのデータも収 集 することは必 要 と考 える。 1 1 さ ら に 詳 し く は 、 内 閣 府 男 女 共 同 参 画 局 影 響 調 査 事 例 ワ ー キ ン グ チ ー ム ( 2 0 0 3 年 11 月 ) 『 影 響 調 査 事 例 ワ ーキングチーム中 間 報 告 書 ∼男 女 共 同 参 画 の視 点 に立 った施 策 の策 定 ・実 施 のための 調 査 手 法 の試 み∼』を、 最 新 の状 況 は、内 閣 府 男 女 共 同 参 画 局 「『ジェンダー統 計 』をめぐる最 近 の動 向 等 について(平 成 25 年 6 月 21 日 )」(統 計 委 員 会 基 本 問 題 部 会 第 2WG 説 明 資 料 資 料 9)を参 照 されたい。 87 女性の就業継続や再就職を支援するための環境整備」に関する施策(7 施 策 )、「 ウ . ① 困難を抱える親子を地域で支える仕組みづくり」に関 す る 施 策 ( 4 施 策 )、「 ウ . ③ す る 施 策( 2 施 策 )、 「 エ .① 国際化に対応した支援体制の強化」に関 家庭や地域における男女共同参画の推進」 に 関 す る 施 策( 2 施 策 )で あ る 。な お 平 成 21 年 度 補 正 予 算 の 対 象 で あ る 12 施 策 の う ち 、男 女 別 の 状 況 や ニ ー ズ の 把 握 が 行 わ れ て い る 施 策 は 1 施 策であった。 ○ 男 女 別 に デ ー タ を 把 握 し て い る 施 策 は 全 部 で 18 施 策 で あ っ た 。 ○ 生活困難の防止及び生活困難を抱える人々への支援に関連する施策 において、男女別の状況やニーズの施策への反映、男女別データの把握 はいずれも十分であるとはいえず、今後の改善が求められる。 さらに「男女別に実績、効果を把握しているのは 7 施策」である。こ れでは、女性の貧困問題は顕在化しないし、施策にも結びつかない。作 業自体は地道で多岐にわたるが、まずは、地方自治体においても、施策 の企画・立案・実施の前提となる各種の調査で、性別データを整備する ことの必要性を強調したい。 Ⅱ .生 活 困 窮 者 を 支 援 す る 、男 女 共 同 参 画 セ ン タ ー・各 種 女 性 セ ン タ ー ・ 民間団体等の活動と地方自治体が果たす役割の重要性を再認識するこ と 3 章では、地方自治体が女性の貧困問題にいかに向き合ってきたか、 調査した。調査対象は、すでに実施されてきた制度ではなく、その前段 に位置する、政策の基礎となる調査・研究報告であるが、女性の貧困問 題をテーマとする文献及びその関連文献はきわめて少なかった。地方自 治体といっても、施策を推進する担当部署のみでなく、関連団体も含め た女性問題を扱うセクターから接近することで、関連する文献を見つけ ることができた。 3-2 の ま と め で 述 べ た よ う に 、 行 政 の 取 り 組 み と い う よ り 、 民 間 の 支 援団体の働きを経由して、女性のニーズがつかみ取られているようにみ ら れ る ケ ー ス が 多 か っ た 。 3-3 で 取 り 上 げ た 、 最 近 に な っ て 実 施 さ れ た 注目すべき調査報告は、横浜市及び仙台市の男女共同参画センターの自 主的な取り組みと、パーソナル・サポート・サービスを端緒とした、最 近の生活困窮者自立支援の流れに位置する動きに基礎がある。 日本には、すでにさまざまな社会保障・社会福祉制度が整備されてい 88 る 。 し か し 、 5-2 で 詳 述 し た 最 近 の 書 籍 で 強 調 さ れ て い る の は 、 支 援 が 必 要 な 人 に 届 か な い こ と で あ る 。2015 年 4 月 か ら 全 面 実 施 さ れ る「 生 活 困 窮 者 自 立 支 援 法 」 は こ の こ と を 意 識 し て 設 計 し た と さ れ て い る 12。 法 の第一の、そして福祉事務所設置自治体の必須事業は「自立相談支援事 業」であり、次のような内容が掲げられている。 ・訪問支援(アウトリーチ)も含め、生活保護に至る前の段階から早期 に支援 ・ワンストップ型の相談窓口により、情報とサービスの拠点として機能 ・一人ひとりの状況に応じ自立に向けた支援計画を作成 ・地域ネットワークの強化など地域づくりも担う 「 自 立 相 談 支 援 事 業 」は 、 「 自 治 体 直 営 の ほ か 、社 会 福 祉 協 議 会 や 社 会 福 祉 法 人 、 NPO 等 へ の 委 託 も 可 能 」 と し て い る 。 こ れ は 、 困 窮 状 態 の 方 の ニーズを捉えてきた実績が民間団体にあることを認めているためと考え る。民間団体の活動を支援し、協働することは、地方自治体の重要な役 割だと考える。 しかし、 「 自 立 相 談 支 援 事 業 」に よ り 期 待 さ れ る 効 果 と し て 挙 げ ら れ た 次の二点をみると、国及び地方自治体の役割の重要性を強調しておかな ければならない。 ○ 生 活 保 護 に 至 る 前 の 段 階 か ら 早 期 に 支 援 を 行 う こ と に よ り 、生 活 困 窮 状態からの早期自立を支援。 ○ 生 活 困 窮 者 に 対 す る 相 談 支 援 機 能 の 充 実 に よ り 、福 祉 事 務 所 の 負 担 軽 減とともに、社会資源の活性化、地域全体の負担軽減が可能に。 繰 り 返 し 述 べ て い る よ う に 、 5-2 に 取 り 上 げ た 書 籍 で は 、 社 会 福 祉 の サービスや生活保護制度が必要な人に届かないこと、困窮状態にある人 にとって、制度のハードルが極めて高いことが明らかにされていた。そ の 人 た ち に 支 援 を 届 け る 一 つ の 手 立 て と し て 、「 生 活 困 窮 者 自 立 支 援 法 」 が実施されるのだとすれば、いったんは、社会福祉のサービスや生活保 護 制 度 の 利 用 者 が 増 え る こ と を 覚 悟 す る 必 要 が あ る 。つ ま り 、 「生活困窮 者自立支援法」の実施が、即座に福祉事務所の負担軽減につながるとは 12 以 下 の「生 活 困 窮 者 自 立 支 援 法 」の説 明 は、厚 生 労 働 省 の HP にある『新 たな生 活 困 窮 者 支 援 制 度 の創 設 』 (H25.8.2 生 活 困 窮 者 自 立 促 進 支 援 モデル事 業 担 当 者 連 絡 会 議 資 料 を一 部 修 正 ) 、を参 照 した 。 h t t p : / / w w w. m h l w. g o . j p / f i l e / 0 6 - S e i s a k u j o u h o u - 1 2 0 0 0 0 0 0 - S h a k a i e n g o k y o k u - S h a k a i / s e i d o g a i y o u . p d f 2015 年 2 月 22 日 アクセス 89 いえない。むしろ、福祉事務所の体制を強化することを志向すべきでは ないのかと考える。 『女性高齢者生活実態調査』で明らかにされていたように、年金額の 不十分さ、無年金の問題、保険料負担の重さ、医療や介護サービスの充 実を望む声は大きいし、現状で不備な点は多い。生活保護へのハードル も 高 い 。 せ ん だ い 男 女 共 同 参 画 財 団 編 ( 2013) が 強 調 し て い た よ う に 、 世帯類型、婚姻状況、雇用形態を問わず、リスクの重複を踏まえた支援 体制の構築が求められている。Ⅰ.に述べたことを踏まえれば、女性の 貧困問題への対策は、まだスタート地点に立つか立たないかの段階なの であり、地方自治体の生活困窮者支援に対する積極的な取り組みを期待 したい。 Ⅲ 「 最 低 限 度 の 経 済 的 自 立 の 可 能 性 に 対 す る 個 人 の 権 利 」と い う 視 点 のもとに、貧困からの救済と貧困の予防について、短期・中期・長期で 目標を設定すること 施策の立案において重要なのは、その理念である。最初に述べた貧困 の 概 念 で 紹 介 し た 、女 性 の 貧 困 を 理 解 す る の に 、 「最低限度の経済的自立 の可能性に対する個人の権利」という視点が重要であると考える。女性 の人権への意識、女性が自立する存在であることを認めることが、出発 点である。 そ の 上 で 、Ⅰ .Ⅱ .に か か わ る こ と だ が 、女 性 の 貧 困 問 題 の 解 決 に は 、 貧困からの救済と貧困の予防の二面を考えて施策を講ずること、それぞ れについて短期・中期・長期で目標を設定することであると考える。す でにさまざまな文献で確認されたことだが、女性の貧困を支えている構 造は根深く多岐にわたる。残念ながら女性の貧困問題「特効薬」という ようなものはない。女性といっても、人により状況は千差万別である。 まずは、貧困状態にあって苦しんでいる女性の救済が優先されなけれ ばならない。これは、短期的な目標であり、現在の支援制度のさらなる 活用や、緊急支援の充実が求められる。女性の貧困問題が子どもの貧困 問題と表裏一体になっている実態からすれば、この支援は、子どもの貧 困の予防につながる。 さらに、貧困の予防という面から考えれば、就労し、自前の収入を得 て経済的に自立することが極めて重要である。しかし、女性の場合、就 労してもなお貧しいのであり、その深刻な状況は、繰り返し問題提起さ れてきた。就労継続の厳しい、劣悪な労働環境が改善されること、いわ 90 ば経済的自立の前提条件の問題が解決されなければならない。 具体的な支援を設計する上で重要なことは、横浜市男女共同参画推進 協会の一連の報告が参考になる。同協会の支援プログラムが目標とする のは、 ( 経 済 的 )自 立 で あ り 、ま ず 女 性 が 主 体 的 に 生 き 方 を 自 己 選 択 し て いくために、 「 職 業 に 直 結 す る ス キ ル 習 得 以 前 に 、安 心 感 や 自 己 肯 定 感 の 回復・獲得、社会生活上の基本的スキルを身につけること、人とのかか わ り 方 の 練 習 を す る こ と 」( 横 浜 市 男 女 共 同 参 画 推 進 協 会 2011) が 必 要 とされていた。これは、女性だけでなく、男性を含む若者支援の中でも 強調されていた支援のポイントである。 とすれば、最終的に求められるのは、性に中立な社会制度の構築であ る。女性の貧困問題がトピックに挙げられる今こそ、これに向けた取り 組みが、地方自治体に求められるのだと考える。 91 7. 参 考 文 献 「 女 性 と 貧 困( 特 集 赤 石 千 衣 子( 2009) 『 貧 困 』問 題 と 共 依 存 社 会 ) 『 ア デ ィ ク シ ョ ン と 家 族 』 26( 2): 102-0 8. 雨 宮 処 凛 ・ 伊 田 久 美 子 ・ 杉 本 志 津 佳 ほ か ( 2013)「 シ ン ポ ジ ウ ム 女 性 と 貧 困 :『 見 え に く い 貧 困 』『 サ イ レ ン ト ・ プ ア 』 を 考 え る ( 堺 大 会 ( 2013 年 )記 録 )」 『 フ ェ ミ ニ ス ト カ ウ ン セ リ ン グ 研 究 』11:50-74 . 「『 貧 困 女 子 』の レ ト リ ッ ク に 隠 さ れ た『 女 性 の 貧 困 』」 『一 阿 部 彩( 2014) 冊 の 本 』 19( 5): 4 3-45. 「 貧 困 元 年 と し て の 1985 年 藤 原 千 沙( 2009) 制度が生んだ女性の貧困 特 集 女 性 の 貧 困 --何 が 見 え な く し て き た の か ?」 『 女 た ち の 21 世 紀 』 57: 19-21 . 平 山 洋 介 ( 2014)「 住 宅 政 策 と ジ ェ ン ダ ー 特集 女性の貧困と住まい」 『 住 宅 会 議 』 91: 5 -9. 稲 葉 美 由 紀 ( 2014 )「 ア メ リ カ の 貧 困 問 題 と 社 会 福 祉 : 母 子 世 帯 へ の 開 発的福祉の取り組みに関する一考察」 『 言 語 文 化 論 究 』32:71-90 . 石 黒 由 美 子( 1998)「 多 重 債 務 問 題 と ジ ェ ン ダ ー : 多 重 債 務 と 貧 困 の 女 性 化 」『 国 立 婦 人 教 育 会 館 研 究 紀 要 』 2 : 69-77 . い ち む ら み さ こ・栗 田 隆 子・増 山 麗 奈・浅 尾 大 輔・大 澤 信 亮( 2009) 「女 性 と 貧 困:生 き 抜 く 道 は 、ど こ に あ る の か ? 」 『ロスジェネ 別冊』 4-47. 伊 藤 み ど り ( 2008)「 貧 困 の 女 性 化 か ら 連 帯 へ ( 脱 WTO /FTA 草 の 根 キ ャ ン ペ ー ン 、ピ ー プ ル ズ・プ ラ ン 研 究 所 共 催 シ ン ポ ジ ウ ム 資 本 と 国 家 の 東 ア ジ ア 共 同 体 構 想 へ の 否 ! と オ ル タ ナ テ ィ ブ ! )」『 ピ ー プ ル ズ ・ プ ラ ン 』 4 2: 130-4 . 伊 藤 み ど り ( 2009)「 女 性 の 貧 困 は 、 な ぜ 無 視 さ れ る の か 」『 金 融 労 働 調 査 時 報 』 695: 4 -10. 伊 藤 み ど り ・ 青 山 薫 ・ 笠 原 光 ( 2007)「 イ ン タ ビ ュ ー 状 況 を バ ネ に エ ン パワーする女性たち 伊藤みどりさん(特集 労働と生活の場から 貧 困 を 撃 つ )」『 ピ ー プ ル ズ ・ プ ラ ン 』 39: 28-39. 伊 藤 み ど り ・ 鈴 木 純 子 ・ 竹 中 俊 恵 ほ か ( 2006)「 座 談 会 女 性 の 貧 困 化 と 『 再 / チ ャ レ ン ジ 』( 特 集 能 力 主 義 で 「 女 性 の 自 立 」 は 可 能 か ? 『 再 / チ ャ レ ン ジ 』支 援 策 を 問 う ) 『 女 た ち の 21 世 紀 』47:4-11. 岩 田 正 美 ( 2007)『 現 代 の 貧 困 』 筑 摩 書 房 . 加 藤 郁 子 ・ 梅 津 弘 子 ・ 三 浦 マ サ 子 ほ か ( 2014)「 全 日 本 年 金 者 組 合 神 奈 川 県 本 部 女 性 の 会 の み な さ ん 12 万 人 不 服 審 査 請 求 へ:年 金 者 座 談 92 会 年 金 減 額 生 き る 権 利 奪 う の か ( 特 集 女 性 の 貧 困 は い ま ( 上 )) 『 女 性 の ひ ろ ば 』 4 23: 40-45 . 鴨 桃 代 ( 2007)「 二 極 化 さ せ ら れ た 女 性 労 働 ス タ ン ダ ー ド は 「 家 事 ・ 育 児 +仕 事 」 =非 正 規 ?!( 格 差 と 貧 困 に 立 ち 向 か う )」『 ま な ぶ 』 601: 79-82. 菊 地 夏 野 ( 2013)「 大 学 に 埋 め 込 ま れ る 女 性 の 貧 困 : 京 都 大 学 非 常 勤 職員実態調査から (特集 学ぶことの権利:ジェンダー・階層・ エ ス ニ シ テ ィ )」『 女 た ち の 21 世 紀 』 74: 29-31 . 栗 田 隆 子( 2008) 「 女 性 と 貧 困 ネ ッ ト ワ ー ク --ひ と り で あ っ て も 、共 に い ても、家にいても、外にいても、女性が「生きていく」というこ と ( 女 性 の 労 働 、 女 性 的 労 働 -- そ し て NFO ( Non Family Organiza tion))」『 フ リ ー タ ー ズ フ リ ー 』 2: 54-9. 栗 田 隆 子 ( 2009a )「『 フ リ ー タ ー 独 女 』・ フ ェ ミ ニ ズ ム に お け る 『 他 女 』 として語ること、ないしは私の『他女』と関わること(特集 今ジ ェ ン ダ ー の 視 点 で 問 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山 紀 子 ・ 臼 井 久 美 子 ( 2009)「 障 害 女 性 と 貧 困 93 特 集 女 性 の 貧 困 --何 が 見 え な く し て き た の か ?」『 女 た ち の 21 世 紀 』 57: 2 2-24. 島 田 博 子 ( 2013)「 女 性 の 非 正 規 労 働 者 : 集 中 す る 貧 困 と 差 別 」『 科 学 的 社 会 主 義 』 178 : 60-63. 須 藤 八 千 代( 2001)「 貧 困 問 題 女 性 と 貧 困 ( 特 集 社 会 福 祉 シ ス テ ム の 再 検 討 --ジ ェ ン ダ ー の 視 点 か ら )」『 社 会 福 祉 研 究 』 81: 4 0-49. 杉 山 春 ( 2014 )「 母 親 た ち の 誇 り 支 え る こ と こ そ ( 特 集 女 性 の 貧 困 は い ま ( 上 ))」『 女 性 の ひ ろ ば 』 423: 52-55. 鈴 木 春 子 ( 2010)「 女 性 と 貧 困 --「 貧 困 の 女 性 化 」 を め ぐ っ て ( 特 集 貧 困 と 統 計 )」『 統 計 』 61( 5): 9 -14. 鈴 木 晶 子 ( 2013 )「 未 婚 女 性 の 貧 困 問 題 を 考 え る : 若 者 支 援 ・ 困 窮 者 支 援 か ら の レ ポ ー ト ( 特 集 家 族 形 成 と 労 働 )」 『日本労働研究雑誌』 55( 9): 66-75. 庄 司 洋 子 ( 1984)「 貧 困 と 女 性 」 女 性 学 研 究 会 編 『 講 座 女 性 学 2 ( 女 た ち の い ま )』 勁 草 書 房 . 山 藤 章 一 郎 ( 2013)「 ニ ュ ー ス を 見 に 行 く ! 現 場 の 磁 力 ( 第 316 回 ) 大 塚 貧 困 を 這 い ま わ る 女 た ち 「 奨 学 金 」 発 「 デ リ ヘ ル 嬢 」 着 」『 週 刊 ポ ス ト 』 45( 23): 136-39. 湯 川 攝 子 ( 2011)「 新 自 由 主 義 政 策 と 貧 困 の 女 性 化 : メ キ シ コ の 事 例 研 究 」『 京 都 産 業 大 学 論 集 社 会 科 学 系 列 』 28: 141-57. 94 謝辞 文献の収集にあたりご協力いただいた、神奈川県立保健福祉大学図書 館の職員のみなさま、神奈川県立図書館、横浜市立図書館、国立女性教 育 会 館 女 性 教 育 情 報 セ ン タ ー 、全 日 本 年 金 者 組 合 、 「大学非常勤職員のワ ークライフバランス」研究会の方々に心より感謝いたします。 また、調査の出発点にあたりご助言くださった田宮遊子氏(神戸学院 大 学 )、 6 章 の 執 筆 に 関 連 し て ご 教 示 く だ さ っ た 「 虹 色 ダ イ バ ー シ テ ィ 」 の村木真紀氏に感謝申し上げます。 最後になりましたが、あらためて「女性の貧困問題」について考える 機会をくださった全国知事会地方自治政策センターのみなさまに感謝申 し上げます。 95 別表 全都道府県の男女共同参画の所管課、センター 都 道 府 県 ・政 令 指 定 都 市 男 女 共 同 参 画 主 管 課 一 覧 都道府県 政令都市 担 当 課 (室 ) 北海道 環 境 生 活 部 くらし安 全 局 道 民 生 活 課 男 女 平 等 参 画 グループ 青森県 環 境 生 活 部 青 少 年 ・男 女 共 同 参 画 課 男 女 共 同 参 画 グループ 岩手県 環 境 生 活 部 青 少 年 ・男 女 共 同 参 画 課 宮城県 環境生活部 共同参画社会推進課 男女共同参画推進班 秋田県 生活環境部 男女共同参画課 山形県 子 育 て推 進 部 若 者 支 援 ・男 女 共 同 参 画 課 福島県 青 少 年 ・男 女 共 生 課 茨城県 知 事 公 室 女 性 青 少 年 課 男 女 共 同 参 画 グループ 栃木県 県 民 生 活 部 人 権 ・青 少 年 男 女 参 画 課 群馬県 生 活 文 化 スポーツ部 人 権 男 女 共 同 参 画 課 埼玉県 県民生活部 男女共同参画課 千葉県 総合企画部 男女共同参画課 東京都 生活文化局都民生活部男女平等参画課 神奈川県 県 民 局 くらし県 民 部 人 権 男 女 共 同 参 画 課 新潟県 県 民 生 活 ・環 境 部 男 女 平 等 社 会 推 進 課 富山県 生 活 環 境 文 化 部 男 女 参 画 ・県 民 協 働 課 石川県 県民文化局 男女共同参画課 福井県 総 務 部 男 女 参 画 ・県 民 活 動 課 山梨県 企 画 県 民 部 県 民 生 活 ・男 女 参 画 課 (男 女 共 同 参 画 担 当 ) 長野県 県 民 文 化 部 人 権 ・男 女 共 同 参 画 課 岐阜県 環境生活部 男女参画青少年課 静岡県 くらし・環 境 部 県 民 生 活 局 男 女 共 同 参 画 課 愛知県 県民生活部 社会活動推進課 男女共同参画室 三重県 環 境 生 活 部 男 女 共 同 参 画 ・NPO 課 滋賀県 総合政策部 男女共同参画課 京都府 府民生活部 男女共同参画課 大阪府 府 民 文 化 部 男 女 参 画 ・府 民 協 働 課 兵庫県 健 康 福 祉 部 こども局 男 女 家 庭 課 奈良県 健 康 福 祉 部 こども・女 性 局 女 性 支 援 課 和歌山県 環 境 生 活 部 県 民 局 青 少 年 ・男 女 共 同 参 画 課 96 鳥取県 地域振興部 男女共同参画推進課 島根県 環境生活部 環境生活総務課 男女共同参画室 岡山県 県民生活部 男女共同参画青少年課 広島県 環境県民局 人権男女共同参画課 山口県 環境生活部 男女共同参画課 徳島県 保 健 福 祉 部 男 女 参 画 ・人 権 課 香川県 総 務 部 県 民 活 動 ・男 女 共 同 参 画 課 愛媛県 県 民 環 境 部 管 理 局 男 女 参 画 ・県 民 協 働 課 高知県 文 化 生 活 部 県 民 生 活 ・男 女 共 同 参 画 課 福岡県 新社会推進部 男女共同参画推進課 佐賀県 くらし環 境 本 部 男 女 参 画 ・県 民 協 働 課 長崎県 県民生活部男女共同参画室 熊本県 環 境 生 活 部 県 民 生 活 局 男 女 参 画 ・協 働 推 進 課 大分県 生 活 環 境 部 県 民 生 活 ・男 女 共 同 参 画 課 宮崎県 総 合 政 策 部 生 活 ・協 働 ・男 女 参 画 課 鹿児島県 総務部県民生活局 青少年男女共同参画課 男女共同参画室 沖縄県 子 ども生 活 福 祉 部 平 和 援 護 ・男 女 参 画 課 札幌市 仙台市 さいたま 市 市 民 まちづくり局 市 民 生 活 部 男 女 共 同 参 画 室 男 女 共 同 参 画課 市民局 市民協働推進部 男女共同参画課 市 民 ・スポ-ツ文 化 局 市 民 生 活 部 男 女 共 同 参 画 課 男 女 共 同 参 画 のための総 合 的 な施 設 (男 女 共 同 参 画 センターなど) 都道府県 施設名称 北海道 北 海 道 立 女 性 プラザ 青森県 青 森 県 男 女 共 同 参 画 センター「アピオあおもり」 岩手県 岩 手 県 男 女 共 同 参 画 センター 宮城県 - 秋田県 秋 田 県 北 部 男 女 共 同 参 画 センター 秋田県 秋 田 県 中 央 男 女 共 同 参 画 センター 秋田県 秋 田 県 南 部 男 女 共 同 参 画 センター 山形県 山 形 県 男 女 共 同 参 画 センター「チェリア」 97 福島県 福 島 県 男 女 共 生 センター「女 と男 の未 来 館 」 茨城県 茨 城 県 女 性 プラザ男 女 共 同 参 画 支 援 室 栃木県 とちぎ男 女 共 同 参 画 センター「パルティ」 群馬県 ぐんま男 女 共 同 参 画 センター 埼玉県 埼 玉 県 男 女 共 同 参 画 推 進 センター「With You さいたま」 千葉県 千 葉 県 男 女 共 同 参 画 センター 東京都 東 京 ウィメンズプラザ 神奈川県 県 立 かながわ女 性 センター 新潟県 新 潟 ユニゾンプラザ 富山県 富 山 県 民 共 生 センター「サンフォルテ」 石川県 石 川 県 女 性 センター 福井県 福 井 県 生 活 学 習 館 「ユー・アイ・ふくい」 山梨県 山 梨 県 立 男 女 共 同 参 画 推 進 センター「ぴゅあ総 合 」 山梨県 山 梨 県 立 男 女 共 同 参 画 推 進 センター「ぴゅあ峡 南 」 山梨県 山 梨 県 立 男 女 共 同 参 画 推 進 センター「ぴゅあ富 士 」 長野県 長 野 県 男 女 共 同 参 画 センター「あいとぴあ」 岐阜県 男 女 共 同 参 画 プラザ 静岡県 静 岡 県 男 女 共 同 参 画 センター「あざれあ」 愛知県 愛 知 県 女 性 総 合 センター「ウィルあいち」 三重県 三 重 県 男 女 共 同 参 画 センター「フレンテみえ」 滋賀県 滋 賀 県 立 男 女 共 同 参 画 センター「G-net しが」 京都府 京 都 府 男 女 共 同 参 画 センター「らら京 都 」 大阪府 大 阪 府 立 女 性 総 合 センター「ドーンセンター」 兵庫県 兵 庫 県 立 男 女 共 同 参 画 センター「イーブン」 奈良県 奈 良 県 女 性 センター 和歌山県 和 歌 山 県 男 女 共 生 社 会 推 進 センター「りぃぶる」 鳥取県 鳥 取 県 男 女 共 同 参 画 センター「よりん彩 」 島根県 島 根 県 立 男 女 共 同 参 画 センター「あすてらす」 岡山県 岡 山 県 男 女 共 同 参 画 推 進 センター「ウィズセンター」 広島県 広 島 県 女 性 総 合 センター「エソール広 島 」 山口県 - 徳島県 徳 島 県 立 男 女 共 同 参 画 交 流 センター「フレアとくしま」 香川県 かがわ男 女 共 同 参 画 相 談 プラザ 愛媛県 愛 媛 県 男 女 共 同 参 画 センター 高知県 こうち男 女 共 同 参 画 センター「ソーレ」 98 福岡県 福 岡 県 男 女 共 同 参 画 センター「あすばる」 佐賀県 佐 賀 県 立 女 性 センター「アバンセ」 長崎県 長 崎 県 男 女 共 同 参 画 推 進 センター 熊本県 熊 本 県 男 女 共 同 参 画 センター 大分県 大 分 県 消 費 生 活 ・男 女 共 同 参 画 プラザ「アイネス」 宮崎県 宮 崎 県 男 女 共 同 参 画 センター 鹿児島県 鹿 児 島 県 男 女 共 同 参 画 センター 沖縄県 沖 縄 県 女 性 総 合 センター「てぃるる」 99
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