NISE RESEARCH SNAPSHOT No. 01 2007 年 2 月版 触図教材を電子データ化し、全ての盲学校でより良く共用するため に 【研究の背景】 教材の電子データ化に際しては、その質の確保が問われます。触図の作成には様々な手法があり ますが、エンボス法は点字用紙に点を打ち描画するもので、コンピュータ上でデータを作成し、点 字プリンタで出力することができます。しかし、この出力したデータに関し、触認知による分かり やすさが十分に検証されていませんでした。 【研究結果】 電子データ化した触図(点図)の質について、盲学校等で広く使われているプロッタ機能を持つ 点字プリンタで出力した点図と点字出版所の手作業による点図とを比較した結果、電子データ出力 による点図には次の課題がありました。 ① 曲線の表現の粗さ ⑥ 交差線の交差部分の乱れ ② 点の大きさの不揃い ⑦ 点の大きさや線の太さの曖昧さ ③ 点間の乱れ ⑧ 塗りつぶしパターンの不明瞭さ ④ 「直線」の「ジグザグ」表記 ⑨ 点字プリンタの個体差による点の大きさの不一致 ⑤ 不正確な点字のパターン表示 点字出版所の手作業による点図 点字プリンタで出力した点図 【研究結果からの提言】 盲学校等における現行のシステムで、これらの課題に対処し、分かりやすい点図を作成するため には、触図教材を作成する際に、以下のような配慮が必要です。 (1) (2) (3) (4) (5) 原本の図版のうち触図にする図版の選択基準と触図にしない図版についての文章による代替等の対処 基本的には点のみで構成される点図の特性による、線種、線の長さなど作成上の制約等への対処 触覚の特性に対応した図のデザイン 図の属性として形が重要な図版と必ずしもそうではない図版等、原本の図版の種類に対応した点図作成 点図の理解を容易にするための文字情報の付加 【点図出力専用プリンタの開発】 上記のような課題点は点字プリンタの出力の精度の問題によると考えられます。より質の高い点 図を作製するためには点字プリンタの精度向上が不可欠です。 そこで、盲学校等で広く使われている ESA721Ver'95 をもとに、 その開発・販売元である株式会社ジェイ・ティー・アール(JTR)と 共同して、より上質の点図を作成することができるグラフィック出力 専用の点字プリンタを開発しました。 点字プリンタ出力で上記のような問題が生じる原因としては、ピッ チ(座標を指定できる最小の間隔)が、触図に求められる間隔に比べ て大きいこと、点字を打つために文字間や行間にピッチを合わせたこ となどがあげられます。 今回の開発では、ピッチを従来の 1/6 程度となる約 0.05 ㎜にする とともに、 (点図出力専用としたことを生かし)縦横ともほぼ同じ間隔 点図出力専用プリンタ「NISE Graphic」 としています。 【視覚障害教育情報ネットワークを活用した教材の共用】 盲学校は全国で 70 校、大半の県は全県に1校しか設置されていません。その上、児童生徒数の 少人数化多様化が進んでいます。そこで、学校単位での視覚障害教育指導法の継承発展や教材教具 の開発が大きな課題となっています。 国立特殊教育総合研究所では、「視覚障害教育情報ネットワーク」を構築し、関係者間での指導 法や教材教具に関する情報の共有化に努めています。現在、点字データの他、触図データを含め電 子化された多種多様のデータを集積し、インターネットを通じて提供しています。 ᙻᙾᨦܹᏋऴإȍȃȈȯȸǯᲢțǹȈdzȳȔȥȸǿᲣ Ⴙܖఄ ໜ܌ȇȸǿȷᚑȇȸǿȷӲᆔȇȸǿ ȇȸǿǛǢȃȗȭȸȉȷ ȇȸǿǛȀǦȳȭȸȉŴЈщ ऴإʩ੭ ॖᙸʩ੭ ໜᚪȷໜ˺ȜȩȳȆǣǢ Ⴙܖఄ ໜ܌ȇȸǿȷᚑȇȸǿȷӲᆔȇȸǿ ȇȸǿǛǢȃȗȭȸȉȷ ȇȸǿǛȀǦȳȭȸȉŴЈщ ȷȷȷ μ ఄ ໜᚪȷໜ˺ȜȩȳȆǣǢ ᙻᙾᨦܹᏋऴإȍȃȈȯȸǯǛМဇƠƨႻʝМဇƷಒࣞ 視覚障害教育情報ネットワーク(URL http://www.tenji.ne.jp)を利用した教材相互利用の概念図 【関連情報】 ●点図作製ソフト ・「エーデルプラス」 藤野稔寛氏作成のフリーウェアソフトです。 下記のURLから入手できます。 http://www7a.biglobe.ne.jp/~EDEL-plus/ ・DotDraw NISE 株式会社リコーが開発した「点図くん」の WindowsXP 版です。リコーの許諾を得て特 総研が開発しました。 下記にお問い合わせください。 企画部(大内)[email protected] ●点字プリンタ 現在入手可能で、点図出力のための様々な機 能を持つ点字プリンタには、JTR が開発し た「ESA 721」シリーズなどがあります。 JTR の Web サイトは次の通りです。 http://www.jtr-tenji.co.jp/ 本リーフレットは、特総研で行った次の研究 を基に作成しています。 【研究課題名】 盲学校および弱視学級等における情報システ ムおよび地域ネットワークを活用した視覚障 害教育にかかわる情報収集・提供の在り方に 関する研究 (平成15年度~平成17年度) 【研究組織/問い合わせ先】 研究代表者:大内 進 (メールアドレス [email protected]) 研究分担者:新井 千賀子・金子 健・澤田 真弓・ 田中 良広・千田 耕基・渡辺 哲也・ 牟田口 辰己 ● "NISE Graphic" 用点図・点字出力コード コンバータ 今回開発した点図出力専用プリンタ「NISE Graphic」で既製のデータを活用するための データ変換装置を開発しました。 問い合わせ先は次の通りです。 企画部(大内)[email protected] (金子)[email protected] ●視覚障害教育情報ネットワーク http://www.tenji.ne.jp 独立行政法人国立特殊教育総合研究所(National Institute of Special Education; NISE) 〒 239-8585 横須賀市野比 5-1-1 TEL: 046-839-6890 URL: http://www.nise.go.jp/
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