英国王立音楽院 The Royal Academy of Music (RAM) A college of the University of London The Academy’s mission, since its foundation in 1822, has always been to provide musical training at the highest level. 入学案内 英国王立音楽院日本センター 〒211-0007 神奈川県川崎市中原区上丸子天神町65-1-203 担当者高本陽子 TEL/FAX:044-744-1687 Eメール:[email protected] ホームページhttp://www.ram.ac.uk RAM日本同窓会ホームページ http://ramalumni.jp/ 英国王立音楽院 (Royal Academy of Music) の紹介 1822年に創立された英国王立音楽院(アカデミー)は、大学学部課程から博士課程まであるロンドン大学連合の唯一の大学 音楽院であり、プロの音楽家を目指す学生のための教育を長年実践し続け、今までに多くの優れた音楽家を送り出していま す。 校舎はロンドンの中心にあり、最寄の地下鉄駅はベーカーストリートです。大学周辺にはマダムタッソー(タッソーろう人形館)や 美しい公園で有名なリージェンツパークがあり、便利で閑静な環境の中にあります。 現在50カ国以上の国から学生が集まり、総学生数は約760名 です。アカデミーは、ここ数年で新しいリサイタルホールや練習室を増設し、またメディア音楽、ミュージカルシアター、ジャズ、オ ペラコースが開設され、音楽の役割や用途が激しく変わっている時代の変化に合わせて、伝統を大事にしながら新しいものをと り入れ発展を続けています。 アカデミーの卒業生で世界的に活躍している音楽家としては、ベルリンフィル指揮者であるサイモン・ラトル、マリンビストのエベ リン・グレニー、作曲家のマイケル・ナイマンやエルトン・ジョン、最近ではピアニストのフレディ・ケンプ、メゾソプラノのキャサリン・ ジェンキンス、指揮者のエドワード・ガードナーや合唱団指揮者のギャレス・マローンなど大勢います。また日本人卒業生では、 川畠成道さん(ヴァイオリン)、熊本マリさん(ピアノ)、三浦友理枝さん(ピアノ)、名倉誠人さん(マリンバ)、橋本杏奈(クラリネッ ト)など多数いらっしゃいます。 RAMコース 【大学院課程】 ■ロンドン大学演奏修士(Master of Arts in Performance) www.ram.ac.uk/postgrad 通常2年間プログラム。(1年間で修了も可能。)大学学部卒業後にさらに高いレベルの演奏能力を修得してプロの演奏家を目 指すコース。学生は専攻教授の指導のもと、各自の希望に沿ってフレキシブルにコース内容が組まれプロとなる準備をする。ま た在学中には学内外での多くの演奏機会がある。同プログラム修了時にはロンドン大学修士号 (Master of Arts)が授与される。 <主なコース内容> ソロ、アンサンブル(室内楽)の演奏クラス、音楽批評クラス、プロフェッショナルに必要なプロモーションスキル等 2 ■ロンドン大学音楽修士(MMus) www.ram.ac.uk/postgrad Concert ProjectとPerformance and Researchのプログラムがあり、通常2年間コース。どちらのプログラムとも実技と音楽理論 研究から構成され、修士論文の作成をする。そのため、英語においても入学時に高いレベル(IELTS7.0)が必要。 (詳細は英文プロスペクタスまたはRAMホームページwww.ram.ac.ukを参照) 【大学学部課程】 ■音楽学士(BMus)コース4年間 演奏実技と幅広い音楽専門知識の習得を重視する学部コース。学部1~2年は共通の核となる学科で構成され、3年~4年で は専攻に添って幅広い科目より選択。 <主なコース内容> 専攻個人レッスン、アンサンブル(室内楽)、アカデミック授業 1.Techniques and Analysis―音楽理論、和声にあたる 2.Introduction to Performance Practice―時代別作曲家の奏法の違い等学ぶ 3. Introduction to Technology-学内の新しいコンピューター設備にて音楽テクノロジーについて学ぶ 4.Topics in Western Music History-音楽史 5. Electives 3年次以降は自由選択科目の履修を通して得意分野を深める。 <例:Mozart, Opera, Brahms, Conducting, digital recording など> ■短期留学プログラム(イヤーアブロード) 大学学部在学生が対象コース ○期間:1ターム(9月~12月)、2ターム(9月~翌年3月)、3ターム(9月~翌年7月)から選択 ○コース内容:個々の学生の長所や希望に合わせてテーラーメイドのコースが作られ、専門実技とアカデミック科目の授業を受 けることができ、コース終了時には成績証明書が発行されます。参加期間は、1年間または3カ月、6カ月の入学も可能。 ○授業料:1年間£10,795 英ポンド (約1,940,000万円)(奨学金対象外プログラムです。) RAMには以下の専攻があります。 弦楽器、木管楽器、金管楽器、打楽器、指揮、合唱指揮、ピアノ、ピアノ伴奏、パイプオルガン、声楽、オペラ、作曲、ジャズ、古 楽器、ミュージカル、ハープ、ギター、アコーディオン 3 RAM 募集要項 2016 年実施内容: 応募資格: ●大学学部課程(BMus) 高校卒業またはそれと同等の資格があり、音楽的素養とはっきりした目的意識があること。 ●大学院課程(MA in Performance, MMus) 大学卒業者で、高い音楽的素養があること。 受験申込方法: 1.UCAS Conservatoires (www.ucas.com/ucas/conservatoires)ウエブページより申込書(Application Form)に入力してオ ンラインで提出 ※入力の方法でお困りの方は、日本センターまでお気軽にお問合せ下さい。 2.推薦文2通(Academic ReferenceとPractical Reference) Academic Reference― 以前に音楽レッスンを受けた先生やクラス担任、または音楽以外の先生(教授)からの推薦文 Practical Reference― 現在音楽のレッスンを受けている先生からの推薦文 推薦文が日本語の場合は翻訳を添付して下さい。翻訳でお困りの場合は、日本センターまでご連絡下さい。 3.2015年度受験料(オーディションフィー)£150 英ポンド (約27,000万円)ポンド UCAS Conservatoires利用料£20英ポンド (UCAS Conservatoiresオンラインからクレジットカードでの支払いとなります。) 〈オーディション申込締め切り〉2015年10月1日 注)作曲科(Composition)受験の方は10月1日までにCUKASにて申請書 (Application Form)を提出後、作品をRAMまでお送り下さい。 ≪注意≫東京オーディションにおいては、指揮科、Musical Theatre、Jazz、Percussion、Organ、 Operaの募集をしていませ ん。これらの専攻科目への入学を希望される方は、現地ロンドンでのオーディションを受験してください。 <学校見学> 英国王立音楽院では、随時学校見学を受け付けています。事前予約が必要ですので、RAM日本センター、あるいはロンドンの RAM日本オフィスにご照会ください。*RAM日本オフィス(ロンドン)担当者 グレゴリー与子美 TEL: +44-7986-196332 Eメール:[email protected] 4 RAM東京オーディション =2016年度9月入学オーディション= 日程:2015年11月4,5日(水)実施 場所:東京都目黒区ヤマハ音楽振興会予定 <大学院課程> 実技演奏と英語による面接 実技演奏は自由選曲で、形式、時代、速度の対照的な2~3曲を選んで約40分のプログラムを準備して下さい。繰り返しは自 由ですが、曲の一部省略は認められません。ソナタ等の楽章の抜粋は認めます。実技演奏終了後に面接があります。 <大学学部課程およびイヤーアブロード> 実技演奏と英語による面接 実技演奏は自由選曲で、形式、時代、速度の対照的な2~3曲を選んで約30分のプログラムを準備して下さい。繰り返しは自 由ですが、曲の一部省略は認められません。ソナタ等の楽章の抜粋は認めます。演奏後に初見演奏や聴音、ソルフェージュに 関する口頭での質疑応答があり、その後面接があります。 注1)専攻楽器によっては、上記以外の実技演奏のルールがありますので、RAMホームページにてご確認いただくか、日本セ ンターまでお問合せ下さい。 注2)伴奏者は受験生各自が伴ってください。東京在住の伴奏者をお探しの方は、日本センターにてご紹介ができます。 ●東京オーディションでは、RAM日本人卒業生が通訳として同席し必要に応じて受験者のサポートを致します。 ●オーディション結果は12月中旬過ぎにUCAS Conservatoiresを通して発表となり、入学書類は12年末までに各自に郵便で 送られます。 5 〓英語力〓 オーディションに合格した方は、下記のIELTSまたはPearsonスコアが入学の条件と なり、翌年5月1日までにスコア取得が必要となります。 大学院 MA in Performance IELTS 6.0 Pearson 58 大学院 MMUS IELTS 7.0 Pearson 70 大学学部課程(BMUS) IELTS 5.5 Pearson 51 短期留学プログラムイヤーアブロード IELTS 5.5 Pearson 51 ※MA in Performanceコースは、IELTS5.5または Pearson51のスコアが取得できれば大学院サティフィケートコース (Postgraduate Certificate)への入学が許可されます。 但し、9月入学後にRAM内での英語コース履修が義務付けられ、英語コース内で実施するIELTSテストで6.0取得が必要となり ます。 【アイエルツ(IELTS)】 IELTSには特有の出題形式や傾向がありますのでまずそれを知ることから初めてください。テキスト問題集は、大きな書店(紀伊 国屋など)の洋書売り場などで購入できます。またインターネットのAmazon.comでも販売されています。できれば11月オーディ ションまでに一度IELTSテストを受けてみることをお勧めします。 一般的な問題集として:例CAMBRIDGE IELTS with Answers (Cambridge University Press) RAM日本センターでは、IELTS対策準備方法や、IELTS英語塾のご紹介などしています。英語対策でお困りのことがありました らお気軽にご相談下さい。 IELTS試験申込先:(財)日本英語検定協会 http://www.eiken.or.jp/ielts/index.html Pearson Test of Academic English 世界多数の大学、大学院、政府機関のプログラムより認定を受けた新しいコンピューターを使用する英語テストです。受験会場 は東京と大阪で、詳細および受験申込みは以下のリンクをご覧ください。 http://www.pearsonpte.jp/ 6 学費と奨学金 2015年度授業料: 短期留学プログラム 大学学部課程(BMus) 大学院MA in Performance 大学院MMus(2年間) £10,795 £20,700 £21,475 £23,275 英ポンド 英ポンド 英ポンド 英ポンド (約1,940,000万円) (約3,730,000万円) (約3,860,000万円) (約1,190,000万円) ※入学金はありません。(円換算£1=180円、2015年5月1日現在) 入学奨学金:オーディション合格者の中から優秀とみなされた方に授与されます。 最近の例:一人£3000英ポンドや£1,000 英ポンド が授与されました。 ※非常に優秀とみなされた場合、より高額の奨学金が授与されることもあります。 英国王立音楽院は、留学生に国別の奨学金を授与しています。奨学金の金額は多様ですが、日本を含める多くの国から来る 留学生に学費全額および半額の奨学金を授与することもあります。 <生活費> 滞在費用を含めた生活費の目安は、1ヶ月約£1,100 英ポンド (約18~20万円)です。但し、生活費は個人差があり、また住 居費用も住む地域や形態(フラットや学生寮など)により異なります。 学生ビザ取得 学生として英国に滞在する場合、渡英前に以下のビザ申請センターにて入国許可証(エントリークリアランス)の取得が必要で す。必要書類を準備のうえ、日本出発の少なくとも1ヶ月前を目途に手続きしてください。 www.gov.uk/check-uk-visa <ビザ申請センター> 東京オフィス:東京都港区東新橋2-3-14 エディフィチオトーコービル4階 大阪オフィス:大阪府中央区南船場2-4-1 美貴ビルディング6F 宿泊施設 RAM には、学校独自で運営する学生寮はありません。ロンドンに在住する音楽専攻の学生が多く利用している学校周辺の民 間寮の紹介、申し込み方法が入学予定者に案内されます。 アカデミーに最も近い民間寮(自炊)はInternational Students House(ISH)で、費用は個室で、最初の30日間は £934.84 英ポンド で、その後は週当たり£181.23 英ポンド です。(2015年4月より) 詳細はISHホームページをご覧下さい。www.ish.org.uk/ また、RAM学生用のフラットとしてMarylebone Flats(学校より徒歩10分)があります。 International Students Houseの写真 www.ram.ac.uk/accommodation 7 よくある質問と答え FAQs Q: 合格率は? A:募集人数は設定されていませんので倍率はありません。RAM東京オーディションの歴史のなかで、僅かに3~4名の 合格者しかでなかったこともありますし、受験者の9割が合格となった年もありました。つまり、RAMが求める音楽レベル にある学生が多くオーディションに集まれば、全員が合格することもあります。 Q: オーディションではどのような基準で合否が決まるのですか? A:一人一人の音楽性とこれまでの経験、そして今現在パーフェクトでなくともこれから伸びていく可能性があるかが大きな ポイントです。更に付け加えれば、異なる言語、文化の国で勉学していく強い意志とパーソナリティがあるか等も大きな 要素です。 Q: 専攻レッスンの先生は選べますか? A:学生が選ぶことはできませんが、希望を提出することは可能で、RAMではできるかぎりの考慮をします。但し、希望通り になる保証はされてないことをご了解ください。 Q: オーディションでの演奏は暗譜? A:暗譜で弾くことを義務づけられてはいませんが、暗譜で演奏することが望ましいです。特にピアノの場合は通常暗譜で す。但し、楽器によって暗譜が難しい場合はこの限りではありません。 Q: 面接ではどんなことが質問されるのか? A:審査官により質問の内容は多少異なりますが、よく聞かれるのは、どうして留学をしたいのか、RAMを選んだ理由、今後 の自分の目標は何か、当日弾いた曲、楽器についての知識、興味ある音楽の分野などです。なお、面接で大切なこと はいかに正しい英語をスラスラ話すかではなく、多少間違っても自分から表現することです。困ったりわからないときに は間違ってうなずいてしまうよりも通訳に尋ねましょう。正確な英語が話せるかではなく、話す内容が問われています。 Q: A: オーディションでは、今までどのような曲が弾かれたか? オーディションにおいて演奏された曲を別紙リストにしましたので、参考にして下さい。 8 ∮RAM東京オーディションにおいて演奏された曲 ♪ピアノ ○ バッハ:平均律、パルティータ、イギリス組曲 ○ スカルラッティ:ソナタ ○ ベート―ヴェン:ソナタ ○ ハイドン:ソナタ ○ モーツァルト:ソナタ ○ ショパン:ソナタ、バラード、スケルツォ、エチュード、舟歌 ○ シューマン:ソナタ、クライスレリア―ナ、幻想小品集、アレグロ、交響的練習曲 ○ ブラームス:ソナタ、小品(2つのラプソディ等) ○ リスト:パガニーニ練習曲、バラード ○ グリーグ:ソナタ ○ ドビッシ―:映像、ベルガマスク組曲、版画 ○ ラヴェル:クープランの墓、夜のガスパール、ソナチネ、鏡 ○ ラフマニノフ:ソナタ、前奏曲、音の絵 ○ デティーユ:ソナタ ○ ヒナステラ:ソナタ ♪ヴァイオリン ○ バッハ:無伴奏パルティータ ○ マスネー:タイス ○ モーツァルト:ソナタ、コンチェルト ○ グリーク:ソナタ ○ ベートヴェン:ソナタ ○ サラサーテ:序奏とタランテラ ○ ブラームス:ソナタ ○ イザイ:無伴奏ソナタ ○ パガニーニ:カプリス ○ シベリウス:コンチェルト ○ チャイコフスキー: ソナタ ○ ショスタコヴィチ:コンチェルト ○ サンサーンス:コンチェルト ○シマノフスキーソナタ1楽章 ○メンデルスゾーンバイオリン協奏曲 ○ シューベルト幻想曲 ♪チェロ ♪フルート ○バッハ:無伴奏パルティータ ○バッハ:ソナタ ○ドボルザーク:コンチェルト ○プーランク:ソナタ ○エルガー:コンチェルト ○フォーレ:ファンタジー 9 RAM教授名リスト ピアノ ヴァイオリン ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● Sulamita Aronovsky Nicola Eimer Christopher Elton William Fong Ian Fountain Rustem Hayroudinoff Diana Ketler Joanna MacGregor Hamish Milne Pascal Nemirovski Daniel-Ben Pienaar Carole Presland Tanya Sarkissova Colin Stone Michael Young 他 ピアノ伴奏、室内楽指導 ● ● ● ● ● ● ● Ian Brown Julius Drake Michael Dussek Nicola Eimer Iain Ledingham Malcolm Martineau Andrew West 他 ハープ ● Karen Vaughan ● Helen Tunstall 他 Remus Azoitei Diana Cummings Richard Deakin Mayumi Fujikawa Clio Gould Erich Gruenberg Sophie Langdon Hu Kun So-Ock Kim Mateja Marinkovic Nicholas Miller György Pauk Tomotada Soh Joshua Fisher 他 フルート ● ● ● ● ● ● William Bennett Michael Cox Kate Hill Samuel Coles Clare Southworth Keith Bragg 他 トランペット ● Mark David ● Paul Beniston 他 クラリネット ● Mark van de Wiel ● Angela Malsbury 他 RAM客員教授名リスト (抜粋) ● ● ● ● ● Stephen Hough Imogen Cooper Daniel Hope Maxim Vengerov Barbara Bonney Visiting Professor of Piano Visiting Professor of Interpretation of Piano and Song Visiting Professor of Violin Menuhin Professor of Music Visiting Professor of Opera (上記にVisiting Professor 客員教授は数名しか入っていません。詳細および各教授のプロフィールは、 RAMホームページにてご覧下さい。) 10 ★☆英国王立音楽院での体験談と卒業に寄せて★☆ 大学学部(BMus) バイオリン専攻 佐藤英莉香さん ■体験談(3月5日のブログより) ☆今日はサイモン・ラトル氏のセレモニーでした☆ 管楽器のド派手なファンファーレの演奏開始と共にローマ法王のようなマントを纏ったラトル氏、英国王立音楽院の学長、ロンド ン大学の理事長、あともう一人金のトロフィー?のような物を持った人がゆっくりと縦一列に並んでホールに登場しました。 登場の間、私たち演奏者、オーディエンスは敬意を表すために起立した状態でした。 来賓の席には有名一流音楽家の方々もいらっしゃいました。 こういった英国式のセレモニーを経験できるだけでも貴重な思い出になるというのに、 ラトル氏の指揮で演奏できるなんて音楽をやっていてこれ以上の贅沢は無いんじゃないかという気持ちです。 リハーサルについてですが、ラトル氏がやってくる10分前から会場の空気がソワソワしているのがよくわかりました。私は興奮し すぎて呼吸があまり上手くできていませんでした。(笑) 真っ白なスタンドカラーのシャツを着たラトル氏が登場しただけで会場の空気が一気に変わったのが今でも忘れられません!演 奏者全員で起立して指揮者を迎えるのは初めてでした。緊張してこわばった表情で起立している演奏者を見てラトル氏は、『そ んな風に迎えられたら緊張してしまうよ~!!』といって会場にいる人たちを笑わせていました。ラトル氏はとにかく音質にこだわ る方でした。全てのアドバイスがとても的確で分かりやすく (それでも決して単純ではない) 、言葉の一つ一つがとっても丁寧 で、優しくて、演奏者たちはもう皆虜でした……! アドバイスを受ける前と後で演奏が全然違うんですよ!!神様が現れたのかと思いました。 今回私は前から2列目というなんとも幸運な席で演奏することができたので、楽譜見ないで、ラトル氏の顔ばかり眺めていまし た。(笑) 楽譜なんか見ていたらもったいないなんて思ったのは人生初ですよ!! 一番感動したのは、リハーサルの最後に 『指揮者というのは実は孤独なんだ。みんなでこの音楽を作りたいから、ここで演奏しているみんなと必ず一回は目が合うように するからね。』 とおっしゃったことです。それを聞いて演奏者たちは皆ため息を漏らしていました。 実際本番で私は一番盛り上がっているところでラトル氏と目が合って、嬉しすぎて倒れそうになりました。(笑)演奏が終わった 後、ラトル氏は演奏者に向かって静かに『wonderful』と言ってから客席の方を向き、お辞儀をしました。私の拙い文章力でどれ だけ伝わるかはわかりませんが、とにかく、本当に本当に素晴らしい指揮者でした。 11 ■卒業に寄せて ファンデーションプログラムを含めたこの五年間はとても長く感じましたが、たくさんのことを学びました。誰もが憧れる一流音楽 家の方々と一緒に演奏をしたり、指導を受けられるチャンスを次々と学生に提供できる音楽院は世界に数ある音大の中でもごく わずかですが、ロイヤルアカデミーはその中の一つだと言えるでしょう。また、そのような一流音楽家や世界の大舞台で活躍す る仲間と接することによって、演奏の技術だけでなく演奏家としての自覚や姿勢、振舞いなど、音楽家にとって技術面以外に必 要な要素も学ぶことができました。五年間を振り返ってみると、ロイヤルアカデミーがどれほど貴重で素晴らしい経験ができる音 楽院なのかを改めて実感します。授業もとても充実していますし、こんなに色々な経験ができる音大は他には無いのではないか と思います。 12
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