スピントロニクス研究推進体

研究推進体名
スピントロニクス研究推進体
Promotion of Spintronics Research
スピンや磁性の物性研究から生まれる新知見を新規なスピントロニクス・デバイスへと育
研究課題
Ⅸ
科学技術の共通基盤の充実、強化
て、それらを既存の電子・光・医療等のシステム技術へと応用展開して生まれる社会への波
及効果を探究します。
推進体概要
今日、様々な材料を使ったスピンの研究から生まれる多くの新知見は、物質の奥に潜む「なぞ」
を解く有力な鍵と認識されるようになってきました。私たちは、これらの鍵を、スピン特性を最大
限引き出しつつ、既存の電子・光・医療等のシステムに融合・統合できる形態のデバイスにまとめ
ていくことを目指し、本学の各所に散らばるスピンの研究室に呼びかけて推進体とし、材料・物
性・デバイス、回路・システム・アーキテクチャの各階層間で相互作用が起こせる基盤(技術およ
研究代表者
像情報工学研究所
びコミュニティ)
を創ろうとするものです。
教授 宗片 比呂夫
Tel:045-924-5185
Fax:045-924-5185
e-mail:[email protected]
研究内容の紹介
スピントロニクスとスピン特性について
スピンで生じる熱輸送特性
磁性体の電子状態
スピンが揃った電子を活用したプラズモン伝播
対向する2つの量子ホールエッジチャネル
(スピン軸がそろった自
に は スピ ン 分 裂
由電子の一次元パス)
を近接させたデバイス構造において、量子
(回転軸の上・下向
ホールエッジチャネルAにプラズモン波束を入力すると、
量子ホー
きでエネルギーが
ルエッジチャネルBにプラズモン起因の信号が検出されました。
藤
異なる状 態 )があ
澤研究室によって朝永-ラッティンジャー流体の励起素過程観測
るため、薄膜試料
とともに、
プラズモン信号の伝達が世界に先駆けて示されました。
の一端を暖めると
スピンの流れが生
まれ、それによって
大きな熱電変換が
得られないか、
とい
う研究が吉野研究
室で進行中です。
歪でスピントロニクス
スピンを活用した将来の光アイソレータ
効果)
が得られる垂直磁気異方性・高スピン偏極率材料や、応
必要不可欠です。水本研究室では、将来の半導体基板上の光
巨大な磁気抵抗効果(スピン軸の向きで素子抵抗が変化する
光アイソレータはレーザーなどの能動光素子の動作安定化に
力効果を利用した超低消費電力なスピントロニクスデバイス、
集積化をにらんで、半導体導波路で光アイソレータを実現する
スピンは原子(原子核と電子)の回転軸。例えば、磁石は全原子の回転軸がそろった状態の
そのため
研究に取り組んでいます。鍵の一つがスピンと光の相互作用が
原子集団です。この回転軸を電気信号や光パルスで制御して従来の電子・光デバイスでは実
の成膜中
大きい光学材料薄膜の集積化です。
現できないデバイスを創造する分野がスピントロニクスです。前項で触れたスピン特性とは、
教授 北本 仁孝
応力観察
磁石の S‐N 極が長時間保たれることに象徴される「不揮発性」
、スピンを透過した光が反射
像情報工学研究所 情報記録部門
システム
して元に戻っても最初の光と一致しない「非相反性」、単独スピンは上向き・下向き回転軸し
による薄
か許されない「量子性」などを意味します。以下に我々の研究の一端を紹介します。
膜成長の
構成員
研究分担者
大学院総合理工学研究科 物質科学創造専攻
准教授 菅原 聡
応用セラミックス研究所 セラミックス機能部門
准教授 谷山 智康
大学院理工学研究科 電子物理工学専攻
教授 中川 茂樹
大学院理工学研究科 電子物理工学専攻
准教授 Pham Nam Hai
大学院理工学研究科 電気電子工学専攻
スピントロニクス/CMOS融合技術
既存の CMOS 技術にスピンによる機能を加え、従来の CMOS ロジックを凌駕する高性能・
低消費電力集積回路を実現します。菅原研究室ではスピン機能を実装した高機能トランジス
教授 水本 哲弥
タであるスピン MOSFET と擬似スピン MOSFET、
およびこれらを用いた回路・アーキテクチャ
量子ナノエレクトロニクス研究センター
の研究・開発を進めています。
准教授 庄司 雄哉
研究など
が 、中 川
研究室で
進 められ
ています。
大学院理工学研究科 物性物理学専攻
教授 吉野 淳二
大学院理工学研究科 物性物理学専攻
教授 藤澤 利正
スピン集団で薬剤デリバリ
スピンから光を取り出す
する機能性ナノ粒子でくるんでやれば、
カプセルを体外から操
属を電極にした発光ダイオードを駆動すると、波面が回転する
多孔質中空カプセル中に薬剤を入れ、それを磁気や光に応答
電界でスピン集団の向きを制御
強誘電体 BaTiO3 基板上に形成した Fe 薄膜上に正の電界を印加すると磁壁(スピン集団の
回転軸が逆転する境界線)が紙面の上方に移動し、負の電界を加えると下方に移動する実験
が谷山研究室で進行中です。基板中の電気分極と Fe 薄膜中のスピン向きとの間に強い関連
がある証拠です。
磁性体金属はスピンの向きが揃った電子源です。
このような金
作してカプセルを所定の患部に移動させて、薬剤放出や温熱操
光(円偏光)
が得られます。宗片研究室では円偏光が右・左まわ
作が実現できる。
このような目標にむかって、
ナノ構造の作製と
りと電気的に切り替え可能な発光ダイオードを試作し、円偏光
磁 気・
の産業
光応答
応用拡
性の研
大を研
究が北
究中で
本研究
す。
室で進
行中で
す。
活動計画
まず、期間前半部(平成 26-28 年度)ではスピン・磁性の研究から生まれる新知見の確立とデバイス概念の構築に重点を置
いた研究を展開し、期間後半部(平成 28-30 年度)では、デバイス試作とその応用によるシステム技術への展開、具体的には、
既存のコンピューティング、通信、医療・ヘルスケアの各システムへの融合に重点を置いた研究を先導します。
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