転移性腎細胞癌に対する 子標的薬を中心とした 治療

近畿大医誌(M ed J Kinki Univ)第40巻1,2号 3∼10 2015
3
転移性腎細胞癌に対する 子標的薬を中心とした
治療戦略
吉 村 一 宏
近畿大学泌尿器科学教室
はじめに
細胞障害性反応を惹起させる免疫療法である .肺外
転移にはほとんど効果がないが肺転移に対しては20
局所進行性腎細胞癌や転移性腎細胞癌に対する薬
%までの奏効率を示し,まれに部 ・完全寛解も認
物治療としては,インターフェロン(IFN)
αやイン
められることから魅力的な治療法であり限られた症
ターロイキン2(IL-2)を中心としたサイトカイン
療法が肺転移症例に効果を示す以外に有効な治療法
例に施行されている
はなく,他の部位への転移を有する症例では予後は
を中心に転移性腎細胞癌に対する薬物療法の治療戦
きわめて不良であった.
略について概説する.
このような状況の中,近年腫瘍発生メカニズムの
研究が進みその
子生物学的特徴に基づいた 子機
能制御を目的とした 子標的薬が実臨床の場で 用
.本稿では現在までにわが国
において保険適応となっているこれらの 子標的薬
組織型からみた薬物療法の治療戦略
されるようになってきた.わが国における腎細胞癌
RCC を組織型からみた場合,最も頻度の高いもの
は淡明 RCC(clear cell renal cell carcinoma:
(renal cell carcinoma:RCC)
に対する薬物療法は,
IFN や IL-2 によるサイトカイン療法に代わって,
ccRCC)であり,成人に発生する RCC の60∼80%を
占めるとされている.次いで乳頭状 RCC
(papillary
ソラフェニブ,スニチニブ,アキシチニブ,パゾパ
ニブの4つの受容体チロシンキナーゼ阻害剤
renal cell carcinoma:pRCC)が10∼15%,嫌色素
性 RCC(chromophobe renal cell carcinoma:
(Tyrosine kinase inhibitor:TKI)とエベロリムス
とテムシロリムスの2つの mTOR(mammalian
chRCC)が5∼10%の頻度でみられ,全体の1%以
下において集合管癌(collecting duct carcinoma)
target of rapamycin)阻害剤による 子標的治療が
中心となっている.図1に米国とわが国における
が発見されると言われている.病理組織型で予後を
RCC に対する治療薬承認の時系列を示す.これらの
子標的薬の主な抗腫瘍メカニズムは,RCC の
chRCC は予後が比較的良好で ccRCC と pRCC は
その中間くらいになることが知られている.また,
化・増殖のメインシグナル伝達経路である増殖因子
→増殖因子受容体→ Akt → mTOR 経路を阻害す
また肉腫様 RCC(sarcomatoid renal cell carcinoma:sRCC)はいずれの病理組織型からも変化
ることと,腫瘍増殖に不可欠な血管新生を抑制する
しうるため独立した病理組織型サブタイプとは え
ことである .一方,サイトカイン療法は,患者であ
られていない.しかしながら,sRCC を認める症例で
る宿主の非特異的免疫能を活性化させることにより
は一般に予後不良であり治療に抵抗性となることが
検討すると,集合管癌が極度に予後不良であり,
多い.現在まで報告されている 子標的薬治療の臨
床 試 験 は そ の 多 く が ccRCC を 対 象 と し た RCT
(randomized control trial)であり,ccRCC に対す
る 子標的薬治療のアルゴリズムについは世界的に
検討されている.一方,その他の組織型に関しては
症例数が少ないこともあり,ccRCC ほどには検討さ
れていないのが現状である.
pRCC に対する 子標的薬治療
図
米国・日本における RCC に対する薬物療法
の変遷
pRCC に対するソラフェニブの有用性についての
4
吉 村
報告 では,米国およびカナダでの nonrandomized,
open-label program において評価可能であった
pRCC 107例のうち90例(84%)で腫瘍の縮小効果を
認め,3例が PR
(partial response),87例が最低8
週間の SD(stable disease)を得たと報告している.
Choueiri ら は多施設共同後ろ向き研究で41例の転
移性 pRCC に対するソラフェニブ,スニチニブの効
果を検討しており,腫瘍縮小効果は全体で5%,ス
一
宏
験がおこなわれており ,pRCC type I は MET が
ん遺伝子の突然変異と密接な関連がみられることか
ら,pRCC type I に対する有用性が期待されている.
Erlotinib は EGFR(epidermal growth factor receに対する 子標的薬であるが,局所進行性,転
ptor)
移性 pRCC45例に対して臨床第Ⅱ相試験がおこなわ
れ,PR 5例(11%)
,SD 24例(53%)で6ケ月での
ニチニブ群では17%と満足できるものではなかった
PFS はわずか29%であったものの,OS の中央値は
27ケ月であったと報告されている .27ケ月という
ものの,無増悪生存期 間(progression-free survival:PFS)でみるとスニチニブ群で11.9ケ月,ソ
OS の 中 央 値 は ソ ラ フ ェ ニ ブ,ス ニ チ ニ ブ で の
pRCC 治療に比し長くなっていることから,他剤と
ラフェニブ群で5.1ケ月とスニチニブ群で有意に
の併用療法を含めた今後の詳細な検討結果が期待さ
PFS が 長し ccRCC に対するスニチニブ投与と同
様の有用性が認められたとしている.しかし一方で
れる.
chRCC に対する 子標的薬治療
pRCC に対するスニチニブの有用性を疑問視する報
告も散見され,Plimack ら は臨床第Ⅱ相試験で23
前述したように chRCC は RCC 全体の5∼10%
例の転移性 pRCC に対してスニチニブを投与した
を占めるに過ぎない比較的まれな組織型腫瘍である
ところ,PR 症例は見られず,SD が8例認められた
ものの PFS の中央値はわずか1.6ケ月であり,全生
が,常染色体優性遺伝疾患であるバート-ホッグ-デ
存期間(overall survival:OS)の中央値は10.6ケ月
であったと報告している.フランスからも同様の報
はよく知られている.BHD 症候群は気胸や顔面皮
膚の小腫瘍をともなう腫瘍症候群で,両側,多発性
告がされており ,28例の局所進行性,転移性 pRCC
の chRCC が発生し,BHD 症候群患者の約 1/3に腎
に対してスニチニブを投与したところわずか1例で
腫瘍が見つかるとされている.そのうち5%はオン
有用性を認めたのみであったとしている.
コサイトーマであり,約50%の症例では chRCC と
pRCC,chRCC を 含 め た non-ccRCC に 対 す る
mTOR 阻害剤の効果については,テムシロリムスを
オンコサイトーマの混合型であると言われている.
ューベ(Birt-Hogg-Dube:BHD)症候群との関連性
用いた検討の中でサブ解析の結果が報告されてい
chRCC は比較的予後良好で転移性 chRCC と診断
されることが少ないことから,chRCC に対する 子
る .この臨床第Ⅲ相試験は,予後不良な転移性
標的薬の有用性についての評価は難しいのが現状で
RCC 症例を対象に626例が登録され,そのうち124例
が non-ccRCC であった.症例はテムシロリムス群,
ある.Stadler ら は20例の進行性 chRCC に対しソ
ラフェニブを投与し,PR 1例,SD 17例,PD
(pro-
インターフェロン群,テムシロリムス+インターフ
gressive disease)2例であったと報告している.
ェロン群の3群に割り付けされ,OS,PFS について
検討されている.ccRCC,non-ccRCC を含めた全体
集合管癌に対する 子標的薬治療
の解析では,テムシロリムス群の OS の中央値は
集合管癌の発生頻度は全体の1%以下と非常にま
10.9ケ月,インターフェロン群7.3ケ月,テムシロリ
れであるが,診断時に約 1/3の症例で転移を有する
ムス+インターフェロン群8.4ケ月であり,PFS の
予後不良な組織型腫瘍である.進行性集合管癌に対
中央値はそれぞれ5.5ケ月,3.1ケ月,4.7ケ月という
する治療の中心は現在のところ尿路上皮癌治療に準
結果であった.non-ccRCC に関しても OS はインタ
ーフェロン群に比し有意にテムシロリムス群で 長
じた化学療法であり,TKI や mTOR 阻害剤の有用
性については十 なエビデンスがなく今後の検討が
していた.pRCC55例については,テムシロリムス群
の OS の中央値11.6ケ月(インターフェロン群4.3ケ
期待される.
月),PFS の中央値7.0ケ月(インターフェロン群1.8
ケ月)でありテムシロリムス群で有意に 長したと
報告されている.
またエベロリムスの有用性に関してもヨーロッパ
において pRCC に対する第Ⅱ相臨床試験が進行中
である .このほかにも c-MET と VEGFR2 をター
ゲットとした
子標的薬である Foretinib の臨床試
リスク 類からみた薬物療法の治療戦略―欧米およ
びわが国における診療ガイドラインと治療アルゴリ
ズム―
RCC のリスク 類としてはサイトカイン療法が
主 体 で あ っ た 時 代 に Motzer ら が 提 唱 し た
MSKCC(Memorial Sloan-Kettering Cancer Center)リスク 類が, 子標的薬治療がおこなえるよ
転移性腎細胞癌に対する 子標的薬を中心とした治療戦略
うになってからも患者個別に治療を検討する際にし
5
ばしば 慮されている.このリスク 類は予後因子
ではスニチニブ,ベバシズマブ+IFN,パゾパニブ
が,また poor リスク症例に対してはテムシロリム
となる5つの臨床的パラメーターを用いて患者を3
スが推奨されている.他の治療として favorable/
群に
intermediate リスクの症例ではソラフェニブ/サイ
トカイン,また poor リスク症例ではスニチニブ/ソ
ける も の で,予 後 因 子 数 が 1 つ の 場 合 は
favorable,1∼2では intermediate,3つ以上の予
後因子が認められれば poor とし,転移性 RCC の予
ラフェニブが推奨されている.二次治療では,サイ
後とよく相関したと報告された(表1)
.
トカイン治療後にアキシチニブ,ソラフェニブ,パ
2014年の NCCN ガイドラインによる臨床病期Ⅳ
期の RCC の治療指針では,外科的に切除可能な孤
ゾ パ ニ ブ の 3 つ の TKI が 推 奨 さ れ て い る が,
立性転移の場合,腎摘除術+転移巣切除を施行し,
NCCN ガイドラインではカテゴリー1となってい
たスニチニブが,ここではその他の治療として推奨
再発があれば一次治療の薬物治療を推奨している
されている.スニチニブがサイトカイン治療後の患
(図2).孤立性転移巣としては,肺・骨・脳,肝,
者に奏効することは周知のことであるが,おそらく
膵尾部,対側腎などがある.転移巣切除を推奨する
二次治療として前向き RCT のエビデンスがないこ
理由としては,転移巣切除の症例ではほとんどの症
とから標準治療から外されていると推測される.こ
例で再発するものの長期の無増悪生存が期待できる
れは実際の臨床現場とは少し乖離しているように思
ことによる.次に原発巣の摘除が可能でかつ2か所
われる.TKI 治療後は NCCN ガイドラインと同様
以上の多発転移がある場合,全身療法の前に cytor-
に,アキシチニブとエベロリムスを標準治療として
eductive nephrectomyを施行することを推奨して
いる.しかし全身性に骨転移が進み疼痛や骨髄抑制
推奨しているが,TKI 2剤 用後の三次治療として
エベロリムスを推奨している.両アルゴリズムとも
のある症例や多発肺転移による呼吸障害あるような
症例では手術療法は推奨されない.最後に医学的あ
に,poor リスク症例に対しテムシロリムスを 用し
た場合の二次治療の選択肢については明確な表記が
るいは外科的に切除が不能の場合は,はじめから一
なく,
実臨床では TKI が多く 用されているものの
次治療の薬物治療が推奨されている.ccRCC に対す
る一次治療についてみてみると,スニチニブ・ベバ
エビデンスに基づいたものではない.
シズマブ+IFN・パゾパニブと予後不良患者にはテ
ルゴリズムを示す(表3)
.これは2011年10月に改定
最後に日本泌尿科学会腎癌診療ガイドラインのア
ムシロリムスがカテゴリー(推奨グレード)1で推
されたものであるが,一次治療にサイトカイン療法
奨されている.ただしわが国ではベバシズマブは承
(肺転移に対する IFN-α治療)が推奨治療として記
認されていないため 用できない.その他には,高
載されている点とアキシチニブの記載がない点が,
用量 IL-2 とソラフェニブが特定の患者のみに,ま
海外の診療ガイドラインと異なる.アキシチニブに
た循環器疾患や・呼吸器疾患など他のリスクを有す
る患者にはテムシロリムスがカテゴリー 2B として
推奨されている.
二次治療としては TKI 治療後には
アキシチニブとエベロリムスがカテゴリー1,また
サイトカイン治療後にはアキシチニブ・ソラフェニ
ブ・スニチニブ・パゾパニブの4つの TKI がカテゴ
リー1として推奨されている.
2番目に ESM O(European Societyfor M edical
Oncology)2012のアルゴリズムを示す(表2).一次
治療の標準治療としては NCCN ガイドラインと同
様に,リスク 類が favorable/intermediate の症例
表
Motzer らによる RCC リスク
NCCN ガイドライン2014によるⅣ期 RCC の
治療アルゴリズム
類
予後因子
Karnofsky PS
LDH
ヘモグロビン
補正カルシウム値
診断から薬物治療までの期間
図
<80%
>正常上限値の1.5倍
<正常下限値
>10mg/dl
12ケ月未満
リスク 類
予後因子数
Favorable
Intermediate
Poor
0
1∼2
>3
6
吉 村
表
一
宏
ESMO ガイドライン2012による薬物療法のアルゴリズム
組織型および治療ライン
ファーストライン治療
淡
明
細
胞
癌
リスクおよび前治療
標準治療
他の治療
Favorable または
Intermediate リスク
スニチニブ
ベバシズマブ+IFN-α
パゾパニブ
サイトカイン
(高用量 IL-2 を含む)
ソラフェニブ
Poor リスク
テムシロリムス
スニチニブ
ソラフェニブ
サイトカイン療法後
ソラフェニブ
パゾパニブ
アキシチニブ
スニチニブ
チロシンキナーゼ阻害剤投与後
エベロリムス
アキシチニブ
ソラフェニブ
チロシンキナーゼ阻害剤2剤投与後
エベロリムス
セカンドライン治療
サードライン治療
テムシロリムス
スニチニブ
ソラフェニブ
非淡明細胞癌
表
日本泌尿器科学会腎癌診療ガイドライン2011
(2011年10月改訂)
M SKCC リスク 類
または前治療
1次
治療
2次
治療
低 or 中リスク
間や相対用量強度(RDI)を 慮すると,テムシロリ
ムスとアキシチニブを除き,実際は少なくとも20-30
%のコストダウンが見込まれる.テムシロリムスと
推奨治療
アキシチニブは有害事象の面から RDI がそれほど
IFN-α(+低用量 IL-2)(肺)
IL-2
スニチニブ
ソラフェニブ
高リスク
テムシロリムス
スニチニブ
サイトカイン抵抗性
ソラフェニブ
スニチニブ
TKI 抵抗性
エベロリムス
mTOR 阻害剤抵抗性
臨床試験など
低下しないと思われるので,実際の薬価に近い支払
いが必要となってくると えられる.患者は高額医
療費扱いとなるものの3割あるいは1割の一時払い
が必要となる.初めて処方する際に支払い窓口で問
題になることもあるので,事前に説明するなどの配
慮も必要となってくる.
薬物療法による有害事象とそのコントロール
実臨床においては,必ずしも各治療アルゴリズム
どおりに薬物療法が進められるわけではない.治療
ガイドラインを参
にしながら,投与量・投与スケ
関しては,ガイドライン発刊後にわが国で保険適応
ジュールを 慮し,有害事象を個々の患者ごとにい
となったことが理由であると えられる.IFN-αに
関しては肺転移巣に低頻度ではあるが奏効し,低用
かに適切かつ柔軟にコントロールできるかが,患者
量 IL-2 と併用することにより生存期間も
長する
篤な有害事象が発現し投与期間が短くなるし,有害
ことが示されている
のベネフィットにつながる.投与量が多すぎると重
が, 子標的薬との比較試験
事象を恐れて投与量を減量しすぎると長期投与は可
がなく経験的なものがエビデンスの中心となってい
能になるものの治療効果につながらない.投与量と
る.
投与スケジュールの設定,そして予想される有害事
医療経済的側面からみた 子標的薬治療
象のマネージメントが最大の効果を引き出せる重要
なキーポイントとなる.その中で最も重要と思われ
わが国において承認され現在 用されている4つ
るのが有害事象に関する知識と経験である.表5に
の TKI と2つの mTOR 阻害剤について,その薬価
わが国で 用されている 子標的薬の有害事象プロ
と標的 子・投与法・標準投与量・発売日などを表
ファイルを示す.
4に示す.3カ月の薬価をみてみると,エベロリム
スニチニブは近接効果の点では6剤の中で最も強
スが210万円(20,600ドル)以上と群を抜いており,
いと思われる半面,骨髄抑制が注意を要する有害事
他の5剤は150-60万円(14,700∼5,900ドル)となっ
象である.上位6位には入ってないが,治療を継続
ている.しかし,各薬剤の平 投与量・治療成功期
してゆく上で重要な有害事象として全身
怠があ
転移性腎細胞癌に対する 子標的薬を中心とした治療戦略
表
RCC
7
子標的治療薬薬価一覧
薬剤名
ヴォトリエント錠 インライタ錠 スーテントカプセル ネクサバール錠 アフィニトール錠 トーリセル点滴静注液
200mg
1mg/5mg
12.5mg
200mg
5mg
25mg 1mL
一般名
会社名
パゾパニブ
アキシチニブ
(グラクソ・スミス
(ファイザー)
クライン)
スニチニブ
(ファイザー)
ソラフェニブ
(バイエル)
エベロリムス テムシロリムス
(ノバルティス) (ファイザー)
VEGFR-1,2,3
VEGFR-1,2,3 Raf, VEGFR-1,2
PDGFR-α, β VEGFR-1,2,3 PDGFR-α, β
PDGFR-β
KIT, FGFR-1,3
KIT, RET, FLT-3 KIT, FLT-3
標的 子
1日1回連日
経口
投与法
1日1回
1日2回連日
1日2回連日
4週投与2週休薬
経口
経口
経口
mTOR
mTOR
1日1回連日
経口
週1回
注射
¥4,142
5mg
¥9,094.4
1mg
¥2,006.2
¥7161.8
¥4547.2
¥12,711.1
¥132,915
1日薬剤量
800mg
10mg
(5mg×2)
50mg
800mg
(400mg×2)
10mg
25mg
1日薬価
¥16,568
¥18,188.8
¥28,647.2
¥18,188.8
¥25,422.2
-
3ケ月薬価
¥1,491,120
1ケ月3割負担
¥149,120
¥152,785.9
¥160,424.3
¥152,785.9
¥213,546.4
¥159,498
発売月
2014年3月
2012年8月
2008年6月
2008年4月
2010年4月
2010年9月
申請に用いた
日本人データ
国際共同
第Ⅱ相試験
国際共同
第Ⅲ相試験
国際共同
第Ⅲ相試験
国際共同(アジア)
第Ⅱ相試験
薬価
(1錠/1カプセ
ル/1バイアル)
表
RCC
¥1,527,859.2 ¥1,604,243.2 ¥1,527,859.2 ¥2,135,464.8
国内第Ⅱ相試験 国内第Ⅱ相試験
¥1,594,980
子標的治療薬の有害事象プロファイル
パゾパニブ
アキシチニブ
スニチニブ
ソラフェニブ
エベロリムス
テムシロリムス
下痢
53.4%
高血圧
84.4%
血小板数減少
61.0%
手足症候群
58.8%
口内炎
49.3%
口内炎
27.5%
高血圧
42.8%
手足症候群
75.0%
手足症候群
36.9%
高血圧
35.0%
腎機能障害
31.2%
間質性肺疾患
10.4%
疲労
38.4%
下痢
64.1%
甲状腺機能低下症
35.5%
下痢
20.9%
肝機能障害
27.8%
高血圧
8.8%
肝機能障害
35.1%
蛋白尿
53.1%
高血圧
35.0%
脱毛症
17.8%
血小板数減少
23.5%
発疹
7.7%
毛髪脱色
32.9%
発声障害
50.8%
白血球数減少
32.7%
発疹
14.1%
間質性肺疾患
17.4%
血小板数減少
6.0%
食思不振
30.1%
疲労
48.4%
口内炎
16.8%
アミラーゼ増加
14.0%
高血糖関連
16.4%
高コレステロール血症
5.5%
り,長期投与の症例ではほぼ全例に見られると え
チニブ4投2休で不耐容になった後,2投1休に変
てよい.そのため,添付文書上に記載されている4
した症例の有害事象に関する後ろ向き解析結果を
週間投与2週間休薬(4投2休)の標準投与スケジ
報告している .それによると,2投1休の方が
ュールを維持できることはきわめて少ないと思わ
れ,2週間投与1週間休薬(2投1休)や5日間投
Grade 3 以上の全身 怠と手足症候群の発現を有意
に減少させている.また2投1休に変 してからの
与2日間休薬など,投与スケジュールの工夫が必要
治療成功期間は24.4カ月と長く,治療効果は CR 14
となってくる.現時点では前向き試験のエビデンス
%,PR 48%と4投2休と同等であった.これは欧米
人に比べスニチニブの有害事象が強い我々日本人に
はないが,Najjar らは2013年の ASCO GU でスニ
8
吉 村
とって,非常に参
一
宏
になるデータであり,RDI も全
く同じであることから添付文書の推奨投与スケジュ
など,そのマネージメントは容易ではない.また,
ールに加えてもよいのではないかと思われる.次に
は各薬剤の有害事象に関する詳細な情報を把握して
ソラフェニブであるが,一般に重篤と思われるもの
おく必要もあり,巧みに いこなす経験も必要とな
は少ないが,他の薬剤と比べて脱毛症(17,8%)が
ってくるであろう.しかし悪い面ばかりではない.
多いことが特徴的である.また,当初の中間報告で
有害事象には On-target と Off-target という
は約25%に発疹が報告されていたが,最終の報告で
方がある.On-target の有害事象は
は14%と10%以上低下している.おそらくこれは,
よって標的 子(たとえば VEGFR)を攻撃・抑制す
実臨床における RDI が低下していることと,多くの
ることで起こる事象で,近接効果や OS,PFS など有
経験症例による有害事象マネージメントとしての減
効性と相関を示すもので,たとえば,スニチニブの
量・休薬が的確にされていることが影響していると
血 小 板 減 少・甲 状 腺 機 能 低 下 症・手 足 症 候 群 や
えられる.エベロリムスでは,腎・肝機能障害,
血小板減少,間質性肺疾患(ILD)はマネージメント
mTOR 阻害薬の ILD,アキシチニブの高血圧など
がそれにあたる .アキシチニブに至っては,有害事
が難しい有害事象である.同じ mTOR 阻害薬のテ
象として高血圧が出現するまで増量していくといっ
ムシロリムスと比べると全体に有害事象発現頻度が
たユニークな投与方法が推奨されている.このよう
高いが,一次治療と二次治療以降の 用など患者背
に有害事象の出現によってむしろ効果が期待できる
景が異なることに加えて,投与経路や投与量が異な
こともあることから,できる限り積極的に有害事象
ることも影響していると思われる.特に ILD に関し
てはエベロリムスの方が高い頻度で発現する報告が
のコントロールに努める必要がある.一方,Offtarget の有害事象は, 子標的治療のメカニズムに
あり ,著者らの研究グループ
(全国38施設 n=180)
関係なく起こり,有効性との相関がないと えられ
においても後ろ向き調査を施行したところ22.2%に
る.たとえば,下痢,全身 怠,食思不振などがそ
ILD がみられ,市販後特定調査結果の22.9%とほぼ
同様の結果であった.テムシロリムスの有害事象を
れにあたる.コントロールが困難であれば早々に違
みると,発疹58.5%,口内炎57.3%,高コレステロ
場合は,治療抵抗性 PD となったところで治療を変
ール血症42.7%,高グリセリド血症39%などの有害
するが, 子標的治療の場合,切り替えるタイミ
事象が発生しているが,わが国の 用成績調査から
ングと薬剤選択は非常に重要なポイントといえる.
循環器疾患や糖尿病など合併症のある患者に対して
え
子標的治療に
う薬剤への変 が推奨される.一般に癌化学療法の
の報告をみると大きく頻度が下回っている.
しかし,
逐次 替療法
現時点で同系統のエベロリムスと比較するには長期
投与の中間報告・最終報告結果をみないと何とも言
実臨床における薬物治療を えると,各診療ガイ
えないと思われ,重篤な有害事象である Infusion
ドラインでも示されていように,一次治療の単剤治
reaction,ILD,感染症などは十 なインフォームド
コンセントのうえに,
注意して 用する必要がある.
療のみで完結することは珍しく,二次治療,三次治
アキシチニブは,スニチニブと比較し
色のない近
るのは周知のごとくである.この逐次 替療法は,
接効果を示す上に重篤な有害事象も少ない.ソラフ
ェニブと比較しても有害事象による中止率が低く,
OS を 長させるという観点からは経験的に有用で
はないかと思われるが,それを証明することが困難
長期投与が可能な薬剤である .しかし,Grade 2 以
であり,実際にエビデンスに乏しいことも事実であ
上の高血圧は必発で,重篤な合併症を引き起こす可
る.1次→2次治療について
療,四次治療といった具合に逐次療法が行われてい
蛋白尿も高頻度に認められ,時に Grade 3 以上にな
えてみると,TKI →
TKI,TKI → mTOR 阻害薬,mTOR 阻害薬→ TKI
のオプションがあり,3次治療まで えると,同一
り,コントロールが極めて困難な状況となるが,生
薬剤を再度
命を脅かすほどの有害事象ではないため放置されて
なシークエンスがある.誰もが関心を寄せるのは適
いることも少なくない.パゾパニブは,食欲減退,
切な薬剤選択と薬剤切り替えのタイミングであり,
下痢などの有害事象のほか,疲労,高血圧が報告さ
実際に最も重要なポイントではあるが,明確な治療
れているが,Grade 3 以上の肝機能障害が出現する
ことがあり,投与開始から1∼2ケ月までくらいは
指針などはなく判断が難しいと えられる.
肝機能障害に留意する.
次療法の大規模前向き試験で結果が明らかになって
能性もあり,積極的な降圧治療が必要である.また,
このように 子標的薬の有害事象は多彩で重篤な
こともあり,減量・休薬や投与スケジュールの変
用する re-challenge も含めさまざま
臨床でのエビデンスを見てみると,現在までに逐
い る の は, AXIS 試 験, RECORD -3 試 験 と
TNTORSECT 試験の3つである.厳密に言うと
転移性腎細胞癌に対する 子標的薬を中心とした治療戦略
9
AXIS 試験は,一次治療がサイトカインはじめいろ
いろと含まれているため,スニチニブ抵抗性のみに
ろ向き研究結果からは,TKI → TKI による逐次療
法の方が良い結果を示しているものが多い.実際に
限定して解析する必要がある.これら3つの逐次
治療を担当している我々にとって,逐次 替療法は
替療法について簡単に説明する.まず,AXIS 試験の
個々の患者の生存期間を 長できる有用な治療手段
スニチニブ抵抗性患者についてであるが,アキシチ
であると認識しているが,このように客観的に逐次
ニブ群(n=184)とソラフェニブ群(n=185)の2
療法の有効性を前向きに臨床試験で証明すること
群にランダム化され,二次治療としての有用性が検
は,試験デザイン,薬剤切り替えのタイミング,薬
討された.Independent reviewer による PFS の中
央値は,アキシチニブ群4.8カ月 vs 3.4カ月(p=
剤によって異なる有害事象プロファイルなど,一朝
0.0107)と,スニチニブ治療後の二次治療薬として
で主に 用されてきたスニチニブにパゾパニブが加
アキシチニブの有用性が示され承認された .しか
わり,今後は逐次療法の組み合わせが広がり,大き
し,OS では両群間に差がなく生存期間の
く変わっていくものと思われる.
長には
一夕にはいかないことが窺える.これまで一次治療
つながっていない.次に,RECORD-3 試験である
が,無治療の転移性 RCC 患者を2群にランダム化
あることは間違いないが,合併症や患者の状態によ
し,一次治療としてスニチニブとエベロリムス標準
ってはパゾパニブ,テムシロリムスあるいはソラフ
投与量による治療を施行し,PD となった時点でク
ェニブを選択する場合も えられる.また,肺転移
ロスオーバーするというプロトコールである .ス
症例に限っては IFN-αが今後も
ニチニブ→エベロリムスの方が PFS,OS の中央値
ではないかと思われる.基本的にスニチニブ治療で
が長く有用性があるような結果であったが,クロス
有効であった症例においては,その切り替え時期に
オーバーできた症例が両群ともに50%以下であり,
ついて議論のあるところではあるが,二次治療とし
OS の Kaplan-M eier をみるとほぼプラトーになっ
たところでの比較となっているためあまり意味のあ
てはスニチニブと同じ TKI であるアキシチニブが
る比較とは言えず,実際にシークエンス可能であっ
mTOR 阻害薬が推奨され,また不忍容であった場合
は有害事象の少ない薬剤が望ましい.次に薬剤変
た症例のみの解析が必要と思われる.INTORSECT
試験は,一次治療のスニチニブで PD となった患者
合併症がなければ一次治療でスニチニブが主流で
用されていくの
推奨される.スニチニブに有効性がなかった場合は
のタイミングについてであるが,有害事象の発現に
512人をソラフェニブ群とテムシロリムス群の2群
よる安全性の面からと,腫瘍に対する有効性の状況
にランダム化して PD となるまで治療を継続し,治
の面からとの両方から判断をすることが必要となっ
療効果を比較検討する前向き試験である.この試験
てくる.On-target と Off-target の有害事象を見極
めた上で,有害事象を厳重にコントロールして治療
は,二次治療の薬剤選択を TKI failure 後に再び同
系統の TKI を 用するか,あるいは系統を変えて
mTOR 阻害剤を
を継続するか,あるいは早めに薬剤の切り替えを検
用するのがい い の か,TKI →
討するか,個々の患者に対して臨機応変に対応する
TKI vs TKI → mTOR 阻害剤を初めて前向き RCT
で比較検討した試験である.結果として,PFS では
ことが必要である.Escudier ら は,以下のような
薬剤変 を勧めている.すなわち緩徐な進行を認め
差はないものの,OS の中央値ではソラフェニブ
る場合は,変 の必要がない可能性もあるため慎重
16.64カ月,テムシロリムス12.27カ月で,ソラフェ
な検討が必要とし,急速な進行の場合は薬剤変 を
ニブ群に有意な
長が認められた
(P=0.014)
.後治
検討する.また,新病変が出現した場合はただちに
療の内容についても 析されたが特異的な差は認め
なかった.他にも二次治療までの逐次療法を前向き
薬剤変 とし,M ixed Response の場合は投与中の
薬剤を継続しながら,手術や放射線療法などの孤立
に比較している試験には,ソラフェニブ→スニチニ
性病変を標的とする治療を 慮する.忍容できない
ブ vs スニチニブ→ソラフェニブを比較した第 相
試験(SWITCH 試験)があるが,安全性情報の報告
有害事象の場合は有害事象が発生しないような努力
はあるものの最終結果は出ていない.また,三次治
く有害事象のマネージメントに努めるとしている.
療まで検討したドビチニブとソラフェニブの第Ⅲ相
RCT(GOLD 試験)は,プライマリーエンドポイン
トの PFS 中央値が,ドビチニブ群:3.7か月,ソラ
をするとともに,ただちに薬剤を変 するのではな
おわりに
フェニブ群:3.6か月と差がなく,OS 中央値に関し
RCC の薬物療法は最初の 子標的薬が出現して
から約7年が経過し,治療の主流はサイトカイン療
ても,11.1か月と11.0カ月でほぼ同様の結果で,残
法から 子標的療法へと大きく変貌した.現在まで
念ながら有用性は示されなかった.また,多くの後
のところ転移性 RCC に対しわが国で保険適応が認
10
吉 村
められているのはソラフェニブ,スニチニブ,エベ
ロリムス,テムシロリムス,アキシチニブ,パゾパ
ニブの6剤である.6剤ともに転移を有する RCC
一
宏
II study. J Clin Oncol 28: 15s, suppl; abstr 4604
11. Ravaud A, et al. (2009) First-line sunitinib in type I
and II papillary renal cell carcinoma (prcc): Supap, a
患者に対し有効な薬剤ではあるがほとんどの症例で
phase II study of the French Genito-Urinary Group
(GETUG) and the Group of Early Phase Trials (GEP).
CR が期待できないことから,QOL を損なうことな
く PR,SD の状態をいかに長く得られるかが 子標
J Clin Oncol 27(15S): abstr5146
12. Dutcher JP,et al.(2009)Effect of temsirolimus versus
的薬治療の限界であり到達点である.今後は組織型
interferon-alpha on outcome of patients with advanced
やリスク 類などの患者個々の臨床的背景を 慮し
renal cell carcinoma of different tumor histologies. M ed
Oncol 26(2): 202-209
たきめの細かい治療をおこなう必要かあると えら
れる. 子標的薬単剤による有効性だけでなくイン
ターフェロンとの併用など症例に応じた薬剤選択を
おこない個別化医療をすすめる治療戦略が今後ます
ます重要になってくると思われる.
文
献
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