研究開発 (PDF 886KB)

研究開発
01
ナブテスコの
研究開発の考え方
ナブテスコは、
「モーションコントロール」
をキーワードに、
コンポーネント技術とシステム技術
を統合し、高精度な制御装置、駆動装置等の開発に取り組んでいます。先端企業である顧客
との信頼関係をベースに、高度な顧客ニーズを感知し既存技術を深耕しながら、
コンポーネ
ント販売からソリューション提供事業への転換を図っており、
既存技術を応用したエネルギー
関連など新商品・新事業の創出を追求しています。
その実現に向け、
ナブテスコでは、
さまざまなアクションを展開しており、海外大学・研究機
関との共同研究やM&Aを積極的に推進しています。
また、大学・研究機関が集積する京都に
所在する京都リサーチパークに移転・拡充した
「ナブテスコ デジタル・エンジニアリングセン
ター(NDEC)」
を通じて、企業・大学との
「社外連携」
「大学連携」
をオープンイノベーション
方式の活用により促進しています。
これらの取り組みを通じて、多様な技術の採り込みと開発
スピードの向上、
グローバルな技術人財の育成を図り、新商品・新事業の創出を推進してい
く方針です。
02
研究開発体制
技術本部の役割
①社内カンパニーの支援
技術本部では、各事業分野トップクラスの品質を確立するため、社内カンパニーの課題や人
財育成に対して、
提言や支援を行っています。
また、
知的財産戦略の策定・展開を図り、
各事業
での強い競争力の構築と技術契約における正当な権利と利益の確保に努めています。
ITを取
り込んだ開発・設計ツール
(Computer Aided Engineering (CAE)・Digital Engineering
(DE)・3Dプリンター)
や独自の材料技術を駆使し、
製品開発の初期段階でのシミュレーション
を通じて事前検証を精緻に行うフロントローディング型開発支援、電子技術・センサー技術
提供による人財育成を含めた開発支援を行っています。
ディスクブレーキ熱解析例 ②新事業の創出
技術本部では、
市場ニーズ、
技術シーズを問わず将来のビジネスの芽を探索しており、
社内カ
ンパニー発、技術本部発の案件を併せると100件以上の開発テーマに取り組んでいます。
ま
た、
複数の開発テーマにおいて、
国内外大学・研究機関や企業と共同研究を推進し、
高レベル
な技術開発をスピーディーに行っています。NDECでは、
オープンイノベーション方式を通じ
た広範な産学連携により、
新事業の創出を図っています。
高速電磁弁の
連成(構造⇔流体)解析例
③基盤技術の充実
(表面処理技術、
熱処理技術)
近年の各種機械の省エネ化や長寿命化は進化が目覚ましく、
それを実現しているのが最新の
表面処理技術や熱処理技術と言われています。技術本部ではこれら最新の基盤技術を積極
的に導入し、
その有効性を試験室レベルで先行して実証しており、
その実証結果を社内公開
し、各社内カンパニーと協働で、製品毎・部品毎に適用していきます。新興国による技術の
キャッチアップが進むなかで、
この様な基盤技術を充実するとともに、他社には模倣ができな
いように“ブラックボックス化”し、
製品競争力の維持・拡大に役立てています。
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Nabtesco Integrated Report 2015
ロボット動的シミュレーション例
03
主要な研究開発分野
Additive Manufacturing
(3Dプリンター活用による製造技術の獲得へ)
3Dプリンター技術は、従来のRP(Rapid Prototyping:試作)からAM(Additive
Manufacturing:付加製造法)
と呼ばれる新たな段階に進化しています。
当社では、
NDECに
3Dプリンター関連技術を集約するとともに、
樹脂系3Dプリンター
(光造形装置)
に加え、
金属
系3Dプリンター
(金属積層造形機)
を導入し、
AMの研究を進めています。
まずは社内向けの造
形サービスを展開すべく研究開発に着手しました。
また、
関連基盤技術である材料開発にもリ
ソースを投入していく予定です。
センサー技術
(色センサー・水センサーの試作から量産化へ)
ナブテスコは、
半導体の微細加工技術や、
白色LEDを使って潤滑油の色を測定する独自技術を
採用した潤滑油状態監視センサーを開発しました。
これにより、
潤滑油のコンタミネーション、
劣化、水分量等を定量的にリアルタイムに測定することが可能となり、
さまざま分野での活用
を推進してまいります。
海外大学・研究機関との共同研究
デンマークのDTU
(Technical University of Denmark)
と風力発電関連の解析を行い、
その
研究成果をEWEA2014
(European Wind Energy Association)
で発表しています。
2015
年度は、
更にその解析研究を進め、
第2段階に入るとともに実機の風車を用いた試験にも着手
する予定です。
その他、
米国UW
(University of Washington)
とアクチュエーターの研究開
発、
スイスのETH
(Eidgenössische Technische Hochschule Zürich)
とのパワーエレクト
ロニクス関連の研究開発を行っています。
デンマーク工科大学
デンマーク工科大学での打合せ風景
研究開発体制と主要な研究開発分野
技術本部の役割
社内カンパニーの支援
●技術・品質側面の課題解決・人財育成
●知的財産戦略の策定・展開
新事業の創出
●市場ニーズの探索
●社外組織との共同研究の推進
基盤技術の充実
●基盤技術の実証・適用
●ブラックボックス化による競争力維持・強化
オープンイノベーション・共同研究
ナブテスコ デジタル・
エンジニアリングセンター
(京都リサーチパーク内)
●国内大学・企業との産学連携研究
●人財・技術交流を通じた人財育成
【海外研究機関との共同研究】
デンマーク工科大学(DTU)
ワシントン大学(UW)
スイス連邦工科大学チューリヒ校(ETH)
主な研究開発分野
3Dプリンター技術の活用
●樹脂系3Dプリンター(光造形装置)
●金属系3Dプリンター(金属積層造形機)
センサー技術
●潤滑油状態監視センサー
風力発電関連
・デンマーク工科大学との共同研究
アクチュエーター関連
・ワシントン大学との共同研究
パワーエレクトロニクス関連
・スイス連邦工科大学チューリヒ校との共同研究
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研究開発
04
トピックス
京都リサーチパークへ
「ナブテスコ デジタル・エンジニアリングセンター
(NDEC)
」
を移転・拡充
2013年11月に神戸工場内に開設したNDEC
を2015年7月に京都リサーチパークに移転・
拡充しました。
大学・研究機関が集積する京都に拠点を持
つことにより、
地場の企業・大学との
「社外連携」
「大学連携」
をオープンイノベーション方式の
活用により促進し、
開発期間の短縮、
研究開発
費の効率的な運用に加え、
人材・技術交流を通
じた人財育成を推進してまいります。
京都リサーチパーク
3Dプリンターの活用
(社内活用の定常化、
新たな活用法の模索)
従来、
NDECではグループ会社のシーメットの樹脂系3Dプリンターを導入し、
社内カンパニー
の開発支援や、
鋳物などものづくりでの試作検討を行ってきました。
2014年度は、
独自の造形
方法も試行し、
従来は作れなかった形状の造形物が出来るようになりました。
また、
特許係争に
3Dプリンターを活用するという新たな取り組みを行い、
成果を出すことができました。
また、京都リサーチパークへの移転・拡充を機に、金属系3Dプリンター(金属積層造形機)
を新たに導入し、
製品プロトタイプの成型が可能となりました。
3Dプリンター関連技術をNDECに集約する
ことで、樹脂による製品の原理試作、金属によ
る量産設計前試作までの開発期間を大幅に
短縮できる最先端インフラが整いました。
今後
は3Dプリンターの特徴を活かした製品開発に
加え、3Dプリンター自体を使ったものづくり
(Additive Manufacturing)
技術の獲得に注
力してまいります。
金属系3D プリンター(金属積層造形機)
05 「うごかす、とめる」+「みる、なおす」
当社はこれまで、
「うごかす、
とめる」
をキーワードに、
モーションコントロール技術を磨き、高
精度、高効率の製品を提供してきました。今後は、開発中のセンサー技術を強化し、製品や製
品の周辺環境の状態監視を行う
「みる」
を実現し、故障などが発生する前に
「なおす」、予測型
のソリューションを提供します。
これにより、
ものづくり現場での効率化、
輸送機器の安全性向
上と環境効率改善、風力発電・太陽熱発電など再生可能エネルギー事業拡大など、社会の基
盤となる重要な製品・サービスに高度な技術を提供してまいります。
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