キャリア・コンサルティング好事例 [その他の取組事例 26-2] キャリア・コンサルネット スポーツ選手(プロサッカー選手)のセカンドキャリア ~キャリア・コンサルタントとして~ 中澤 舟 Career in parson’s 代表 取り組みに至った背景 アスリートのセカンドキャリアの安定の必要性 アスリートは、プロ選手になるためにそれまでの人生(キャリア)をスポーツに捧げてきた。 社会人未経験や就職活動も行ってきていない選手が多い。高校卒業でプロになると受験、履 歴書の書き方、社会がどういうものかということなどが理解できていない中社会に出ていか なければならないこと。大学卒業者も高校、大学とスポーツ推薦で入学していた場合は勉強 や就活を全くしてこない状況で一人でキャリアを考えていかなければならない。 引退後のキャリアプランの必要性 引退後の人生(キャリア)を漠然と不安に思う選手も中にはいるであろう。不安を少しでも 解消しプロでサッカーに集中出来るためにセカンドキャリア支援を行う。現役中の選手の中 にはやはり引退後のことを思うことはある。そこで現役中に何か資格を取りに行ったり、セ カンドキャリアの準備をして行かなければいけないということ。 取り組み内容のポイント 一般では経験できないキャリアを持つ方へのキャリアカウンセリング アスリートのキャリアカウンセリングを行うとなると双方時間をかけて行かなければならな いこと。 ① 1人のサッカー選手の話を聞いた。プロサッカー選手での想いや考えを聞い た。 職務履歴書を書く際、日々プロサッカー選手として沢山のイベントや取材を受けてきてお りどれを職務履歴書に書いてどれを書かないでおくのかを考え整理した。 ② 職歴を 1 つ書くのに 5 時間ほどかけて落とし込んでいった。職務経歴書に書 ききれない程の経験をする中でどれを削ってどれを書くのか選択していかな ければならない。 また、一般では経験できない経歴を持っており、一般の職務経歴書の書き方を変えていか なければいけないこと 1/5 キャリア・コンサルティング好事例 [その他の取組事例 26-2] キャリア・コンサルネット キャリア・コンサルタントの役割 アスリートの強みをしっかり理解してあげる。 継続力→長年スポーツに取り組む継続力 規律性→チームの規律を守る 柔軟性→様々な状況に対応する力 発信力→自分の意見をしっかり言える力 創造力→自分の力で作っていく力 計画力→自分のコンディション・練習を考える力 課題発見力→課題を発見し改善する力 実行力→何事にもチャレンジする力 主体性→自分で考え練習に取り組む力 アスリートの心理的葛藤を理解し受容・共感する ・時間が自由に使える 引退して競技一色だったのが自分の時間を持てる。時間的な余裕。 競技以外での職業の選択。 競技を中心に生活をしていたのが、引退、解雇後職業の選択を迫られ、何かしなくてはと いう状況になる。 ・社会での役割を知る 今まで競技中心の生活で一般社会に出たことのないアスリートが引退、解雇後年相応の社 会的役割を認知して焦ることもある。 稼ぐことの大変さを知る。 今までアスリートとして、必要な物を提供され、必要なことは他のスタッフがしていた事 を今度は自分でしなくてはいけないことを知る。 2/5 キャリア・コンサルティング好事例 [その他の取組事例 26-2] キャリア・コンサルネット ・キャリアの選択の範囲が狭い その競技を極めてきた者にとって、指導者になりたいや携わりたいといった競技中心の職 業の選択をしてしまうことがあり、幅広い職業選択が必要になる。 ・怪我による職業選択の限定 怪我により引退、解雇を余儀なくされたアスリートにとっては、怪我をしたところにもよ るが職業を選択する上でどの職業が怪我に影響がないのかが分からない。 ・感謝の気持ちを忘れない 今までの競技生活を通して支えてくれた人への感謝の気持ちを忘れず仕事の励みにしよ うとする。 ・他のネットワークの構築 今までは、練習場と家の行き来で終わったのが引退して他の場所に出向くことで、また他 の人との交流をすることで限られた世界から広い世界に変わっていく。 ・何でも自分の思い通りに行かない 競技を通して、自分の思い通りに行かないと練習を改善したりと解決できていたが、社会 に出ると、仕事で思い通りに行かないこともありその改善方法も分からない。 ・アスリートでないという現実を知る 引退、解雇後気持ちを切り替えるのには時間がかかり、自分がしてきた競技などを観ると 空しい気持ちにかられる。 ・孤独感 今まで競技生活の中で人間関係を構築してきたアスリートにとって社会に出た時にネッ トワークが無く孤独感にかられることがある。 引退(解雇)した選手に対して、4S 点検をキャリア・コンサルタントとして意識しておく 状況→しっかり自分の状況を理解をする。 自己→自分をしっかり見つめ直す。 サポート→自分の周りにサポートしてくれる人や資源はあるのか? 戦略→キャリアをどのようにこれから築いていくのかを考える。 これを繰り返し考えていく。キャリア・コンサルタントとしてキャリアカウンセリングの際 しっかり理解しておく必要がある。 ・キャリアに方向性感覚を持つ→現役の時からセカンドキャリアをどうしたいのかしっかり 考えておく。 ・節目だけはキャリアデザインする→(解雇)引退時などの節目ごとに、何が得意か、何が やりたいか、何に意味を感じるかを自問して、キャリアを自覚的に選択する手助けをする。 ・アクションをとる→デザインしたら、その方向に、力強い最初の一歩を歩み、元気を持続 する。MER(最低必要努力投入量)を超えるまでは良い我慢はしつつ、がんばってアクシ ョンを繰り返す。 ・ドリフトも偶然も楽しみながら取り込む→次の転機までは安定期にも退屈することがない ように、偶然やってきた機会も生かす。ドリフトもデザインの対として楽しむ。 キャリア・コンサルタントとして、組織に働きかけを行い、キャリア・コンサル タントが入ることで、選手に良い影響を与えることが出来る事を証明していかな ければいけない。 3/5 キャリア・コンサルティング好事例 [その他の取組事例 26-2] キャリア・コンサルネット 取り組みの成果 キャリア・コンサルタントの必要性の再認識 アスリートに対してメンタルトレーナーやアスレッチックトレーナーがあるようにアスリ ートに対してキャリアプランニングをしていくことの重要性とキャリア・コンサルタントの 必要性を今回の事例時に自ずと気づいた。 アスリートが直面する問題に触れたことでの意識の変化 若く引退したため、またサッカー選手として実績が無いためプラスに書く事が出来ない、今 までの経験をどのように書き落として行けばいいかわからない等、現実を目の当たりにする ことでアスリートへの支援にはキャリア・コンサルタントが重要だということを気づいても らいキャリアプランについて真剣に考えてくれたこと。 取り組みを通じて見えてきたことや今後の展開・課題 今回のセカンドキャリア支援でキャリア・コンサルタントとして気づいたこと 若者は、若者支援や公的機関以外にキャリア・コンサルタントの存在をどれだけ知っていて、活 用できているでしょうか? また、若者支援や公的機関での役割だけでなくキャリア・コンサルタントとして、組織への働き かけが必要といえます。 それほど、この業界を離れると、若者は、キャリアカウンセリングやキャリア・コンサルタント の存在を知らずに自身の問題に直面することは少なくありません。私は若者にもっと具体的にキ ャリア・コンサルタントの仕事を知ってもらいたいと切望しています。若者にもう一度 career= 人生であることを思い出してもらい、相談者にとって、価値のある人生の相談場所を提供しなけ ればいけないと考えており、その上で履歴書添削や模擬面接は必要だと考えています。 そのように考える私のキャリア・コンサルタント像をもっと広く伝えて行きたいと思っています。 若者にとってまずは、キャリア・コンサルタントが憧れの存在になるべきではないかと考えてい ます。そして、なにより今、幅広く活躍できる様な場所を開拓して行きたいのです。若者にキャ リア・コンサルタントとして憧れる存在になり、キャリア・コンサルタントを知ってもらいたい と考えています。 若者に興味を持ってもらい、なりたい仕事の上位にキャリア・コンサルタントが来るように、 私は、これからもキャリア・コンサルタントをキャリアコンサルティング協議会と協働しなが ら発信し続けたいと強く思っています。 4/5 キャリア・コンサルティング好事例 [その他の取組事例 26-2] キャリア・コンサルネット 導入先のコメント 今回の話を聞いてもらい。今まで取り組んできたことの棚卸になった。 キャリア・コンサルタントの名前を聞いた時には何をする人かが良くわからなかったが履 歴書や職務経歴書の添削をしてもらい、今抱えている不安を聞いてもらった時に少しだけ キャリア・コンサルタントの仕事がわかった気がする。まだまだ、アスリートには同じよ うな境遇の仲間がいる。 もっと今回のような支援があればいいと思った。 中澤 舟(なかざわ しゅう) Career in parson’s 代表 関西カウンセリングセンター認定キャリア・コンサルタント 1990 年京都府生まれ。高校卒業後、DNP グループに就職する。退職 後、接客業、IT 通信業界、人材業界など様々な職種を経験する。高校時 代、恩師と一緒になでしこ女子サッカーのスカウティングのお手伝いを 3度程させて頂いた際、スポーツ選手の現状を知り、若いなりにも何か したいと想い、そんな想いを日々持ちながらサッカーコーチとしてスポ ーツに関わっていました。キャリア・コンサルタントの資格取得後は、 スポーツ×キャリアの融合をテーマにキャリア・コンサルタントとして スポーツ選手のセカンドキャリアについて考え活動しています。今回キ ャリア・コンサルタントの皆様にスポーツ選手のセカンドキャリアにつ いて少しでも興味・関心をもって頂ければ幸いです。 リンク先: http://nakazawashu1002.wix.com/career-in-parsons 5/5
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