アクションプランとしてのIT化について

見聞録
アクションプランとしてのIT化について
勝沼
孝弘
1.ITを使った業務効率化
IT化による業務効率化・生産性の向上など、経営改善計画書等のアクションプランに良くあ
りますが、本当にIT化ができる企業は限られています。それは、企業規模の大きさではありま
せん。IT化を想定している仕組み自体に、企業「独自管理システム」が有るか無いかです。例
えば、製造業の原価管理においても、①材料の使用量を確認するチェックリスト無く、②機械の
稼働時間を把握する資料が無く、③労務時間を管理するリスト無い企業、などに、個別生産指示
書を利用したバーコードスキャンシステムを導入しても、大多数は失敗するか挫折してIT化を
放棄するでしょう。ITはツール(道具)であり、企業に仕組みを創造するモノではありません。
この場合は、いきなり個別原価管理を目指すのではなく、もっとマクロ的な視点で製造原価管
理を目指すべきでしょう。製造しているモノにより最初に管理するべき対象物は変化しますが、
製品のカテゴリーごと、製造ラインごと、得意先ごとなどで構わないでしょう。その管理方法も、
紙ベースで充分だと思います。材料でいえば、在庫量・投入量・完成品数・不良品数などを機械
ごと、あるいは工程ごとにチェックし、基準時間(日・週など)で集計すれば粗い数字ですが対
象物の材料使用量を把握することは可能です。これらのデータをエクセルなどで管理することで、
今まで見えなかった特徴が数字となって表れます。数字に対して、適切な対応策を検討すること
が大切なのです。将来的視点で、更なる精緻な数字での管理が必要であれば、それに伴ってIT
化すれば良いことです。それが企業力向上に繋がる近道です。
企業診断とちぎ
2016.8
見識眼
特に、原価管理や進捗管理には従業員の理解と協力は欠かせません。翌々、IT化導入の目的
を伝え経営者・工場長などが率先して実践し、従業員に指導しなければ上手く機能しません。あ
る企業(個別生産)で、進捗把握を目的に工場にバーコードスキャニングポイントを設け、作業
開始と終了時に「作業指示書のバーコード」をスキャンすることで進捗把握をする仕組みを導入
しました。全員の理解が得られシステムが正常に稼働するまでに 9 ヶ月以上の時間が必要でした。
2.ITを使用した販路拡大
同じくITを使用した販路拡大策もアクションプランに掲げられることが多いです。業種問わ
ずに、ホームページを使った販路開拓や同異業種との技術マッチングの場の創造、WEBショッ
ピングサイトによる新しいチャネルの創造などです。この時の重要事項は、HP 等の管理者を自
社に置くことです。できれば、ITに詳しい専任の従業員を指名し、
「導入から設置・運用」まで
IT業者と交渉し、ITスキルを向上させることが大切です。経営陣・上司は、IT 担当者に対し
て陰ながら支援することも大切です。自社でWEBを「管理・運営」する能力がなければ、作っ
て終わりのモノになってしまいます。また、更新料・年間契約料・修正料等などIT業者のカモ
にされてしまいます。
悪いIT業者は、①綺麗でないと効果が無いです、②SEO対策が大切です、③訪問者分析ツ
ールが必要です、などと市場より高い価格でサービスを提供します。また、経営者もITに関す
る知識が無いため、ビジュアルに凝ったサイトを求めます。これは非常に悩ましい問題です。
SEO対策に関しても、日本の 2 大検索エンジン(Yahoo!JAPAN・ Google)は同一の検索シス
テムを利用していますが、この仕組み(SEO)は非公開でだれも答えを知りません。過去の SEO
システムでは、リンクを大量に貼ることで上位表示させる手段は可能でしたが、数年前に SEO シ
ステムが更新されて、大量リンクサイトはブラック扱いとなり、ペナルティ対象となりました。
また、特定の PC だけに、検索結果が上位表示されるように「仕組む」ことは可能です。だから、
騙されてしまうのです。SEO 対策に、何十万もお金を掛けることは、適切な投資とは言えません。
ホームページなど運営の注意点は、①HP サイトの目的を明確に決定する、②ビジュアルなど
見た目に拘らず、HP 自体を毎日更新し魅力的なサイト作りをする、③SNS(Facebook、ブロ
グ等)と連動させて、リアルタイムの情報発信に心がける、など当たり前のことが大切です。
総合すると、ある程度のIT専門家を自社内に養成し、作業の内製化を行うことが、最適なI
Tの活用に繋がります。
(一部、特殊なITシステムは除く)
ITツールを導入すること(提言すること)は、誰でもできることです。それを支援先企業が実
践することを支援することができる専門家が求められています。
勝沼 孝弘
中小企業診断士、ITコーディネータ、1級販売士など改善計画等に対す
る実効性に定評があります。
両毛地区で「LLP 士業ネットワークわたらせ」を立ち上げて、他の士業と
連携して事業承継支援等での新しい支援の姿を創造しております。
企業診断とちぎ
2016.8