意見募集「体制とその有効性に関する評議員会レビュー:レビューの論点」へ の意見 2015 年 11 月 30 日 日本公認会計士協会 日本公認会計士協会は、2015 年 7 月に公表された意見募集「体制とその有効性の評議員 会レビュー:レビューの論点」について、コメントの機会を提供していただいたことに感 謝する。 当協会は、国際財務報告基準(IFRS)の設定主体である国際会計基準審議会(IASB)及 び IFRS 財団の活動に対し、IASB の前身である国際会計基準委員会(IASC)の創設以来 約 40 年にわたり深く関与しており、その活動を継続的に支持している。また、IFRS 財団 の定款に掲げられている、高品質で容易に理解でき、かつ執行可能性を持ったグローバル に受け入れられる単一の財務報告基準を作成するという IFRS 財団の目的を強く支持して いる。さらに、戦略レビュー報告に記載されているとおり、IFRS 財団の究極の目的は、IASB が策定した IFRS( 「ピュアな IFRS」 )が修正されることなくアドプションされることであ ると理解している。 また、IFRS 財団の活動にとってその財務基盤を確立することは重要であるとの認識のも と、我が国は、GDP 割に従って継続的かつ安定的に IFRS 財団へ資金拠出する仕組を確立 している。また、我が国の成熟した金融資本市場では IFRS の適用が容認されており、IFRS 適用済・適用予定企業が 90 社を超過し、時価総額は約 108 兆円(8,879 億ドル) 、時価総 額の 19%程度を占めている。我が国は、事業環境も文化的にも、多様性を有するアジア・ オセアニア地域にあって、グローバルに受け入れられる単一の財務報告基準の設定、IFRS 適用拡大促進という IFRS 財団の戦略に寄与したいと考え、従来から評議員・IASB ボード メンバーを輩出してきた。 我々のコメントが、IFRS 財団の体制の改訂に資することを希望する。 1 個別コメント 基本戦略目標 1:単一セットの基準の開発 範囲:IASB は他の企業に係る基準を開発すべきか 質問 1 上述の帰結を考慮したうえで、現在の当組織の基準開発の焦点の他(特に、民間の非営利 セクター)に IASB が任務を拡大すべきかどうかについて、どのように考えるか。 「2011 年アジェンダ協議−意見募集」に対する意見(2011 年 11 月 30 日)では、 「今後、 例えば、将来の財務報告のあり方や枠組みに対する会計基準設定主体としての展望など、 IASB の活動目的に即したより長期的な活動の方向性についてより重点をおいて検討され ることを希望する」と述べた。今回、IASB が今後取り組むべき範囲を問うており、IASB の長期的な活動を議論する上では良い開始点であると考える。 将来的(中長期的)には、民間の非営利セクターにまで拡張することを検討してもよい のであろうが、現時点では、以下の理由により範囲を拡張すべきではないと考える。 · 仮に IASB の範囲を民間の非営利セクター向けの国際基準の開発まで拡大する場合、 IASB の人的資源の限界だけでなく、該当する知識の相違があると思われ、IASB とは 別のボードを設置する必要があるのではないかと考えている。その際、その活動の財 務基盤の確立の確保が必要と考える。 · 仮に非営利企業の会計基準を開発する場合、非営利企業に適合する概念フレームワー クの検討が必要と考える。現在、IASB は概念フレームワークの改訂作業中であり、仮 に IASB が非営利セクターまで範囲を拡張する場合、概念フレームワークにおける資 産・負債の定義に及ぼす影響を検討する可能性があり(例えば、IASB 公開草案「財務 報告の概念フレームワーク」BCIN.11 項及び BC4.28 項参照) 、概念フレームワークの 完成がさらに遅延することを懸念する。非営利企業に拡張するか否かの検討は、早く ても、その完成後まで待つべきである。 まずは、各国における民間の非営利組織の会計について、どのような差異が存在し、非 営利セクターに係る国際的な基準の設定にどの程度のニーズが存在するのか、グローバル な基準を必要とし適用意欲のある非営利セクターの数等についてのリサーチが議論の出発 点となると考える。 範囲:より広範な企業報告 質問 2 IASB が上述のような協力を通じてより幅広い企業報告における進展に積極的な役割を果 たすべきであるという提案に同意するか。 IASB が財務報告の伝統的な境界線外の領域に作業範囲を拡張するよりも、既存の協力形 式をより適切なアプローチとして引き続き考えているとする評議員会の見解(28 項)に同 2 意する。質問 1 で記載したのと同様、IASB の人的資源には限度がある。 ただし、我々は、代替的業績指標(APM)はじめとする非 IFRS 情報の報告の増大が IFRS の有用性に対するリスクとなるという一部利害関係者の懸念(25 項)を理解している。APM の有用性を否定するものではないが、比較可能性の観点から外部報告は慎重に行うべきで あり、今後、IASB が「開示に関する取組み」ないし「基本財務諸表(業績報告)」プロジ ェクトにおいて検討すべき課題であると考える。 構造化された電子報告での IFRS の目的適合性:IFRS タクソノミ 質問 3 IFRS タクソノミに関する当財団の戦略に同意するか。 「IFRS 財団は、デジタル世界における自らの使命を支援するために、IFRS タクソノミ を開発し維持管理することが重要と考える」 (31 項)とする IFRS 財団の意見に反対しない。 ただし、以下コメントする。 · IASB 公開草案「開示に関する取組み(IAS 第 7 号の修正案) 」に対する意見(2015 年 4 月 17 日)では、 「我々は、IASB 及び関係者が、タクソノミに関連するデュー・プロ セスへの適切な関与方法及びその範囲を明確にすべきであると考える。また、今後の タクソノミ更新案を判断する際に、どのような指針に基づくべきかを適切に決定する ことが必要であると考える」とコメントした。2015 年 11 月公表のコメント募集「IFRS タクソノミ TM デュー・プロセス」は、JICPA の指摘事項を議論する上では良い開始点 であると考える。 また、 IFRS タクソノミ更新案を組込んだ IAS 第 7 号の修正案は、 IFRS タクソノミのデュー・プロセスの変更案の公開協議前の試行であったとは理解するが、 今後、コメントを求める場合、タクソノミに詳しくない会計専門家に理解可能な方策 がとられることを希望する。 · IFRS タクソノミは、標準化の性格を有しているとも考えることができ、業種別タクソ ノミなどの開発に至れば、原則主義に基づき、企業固有の財務情報の提供を重視する IFRS の考え方と相反することになりかねない。それらのバランスをいかにとるのかの 議論をまず進めていただきたい。 質問 4 投資家及び他の利用者に対する一般目的財務報告へのデジタル・アクセスを改善するため の規制当局の取組みを、IASB がどのように最も適切に支援することができるか。 コメントはない。 3 テクノロジーのより幅広い開発に直面した IFRS の目的適合性 質問 5 IFRS の目的適合性を維持できるように、テクノロジーの思考の変換に考慮に入れるような 他のステップがあるか否かに見解・コメントはあるか 我々は、情報提供の環境が急速にデジタル化しているという認識を持っている。投資家 が、従来の一般目的財務報告書全体に依拠して投資等の経済的意思決定を行っているのか、 あるいは、デジタル情報に依拠して意思決定を行っているのか、デジタル情報に依拠して いる場合、どのような情報が重視されるのかなどのリサーチの実施を検討していただきた い。 基本戦略目標 3:適用及び導入の首尾一貫性 質問 6 IFRS の首尾一貫した適用を促進するために当財団が行っている事項について、どのように 考えるか。人員確保や他の制約を考慮したうえで、この領域において当財団が行うことが 可能であり、かつ、行うべきであることとして、他に何があると考えるか。 1.監査人との対話の重要性 2012 年 2 月に公表した評議員会の第 2 回目の戦略レビューの報告書(戦略レビュー報告 書)では、IFRS の首尾一貫した適用にあたり、会計士団体・監査人との協力に触れていた。 また、今回のレビューにおいても、IASB の取組みには、証券規制当局との相互関係の構築 の他、監査規制機関・各国の会計団体との相互関係が含まれるとしている(53 項)。 「IASB 及び IFRS 解釈指針委員会デュー・プロセス・ハンドブック」案への意見(2012 年 8 月 31 日)でも触れたとおり、IFRS の首尾一貫した適用を促進する上では、監査人との対話が引 き続き重要であることを改めて強調したい。 2.IFRS の引用 我々は、IFRS のブランドの維持の重要性は承知している。しかし、IFRS の引用につい て、IFRS の強制適用国のみ包括的契約の締結が認められていると理解しているが、任意適 用国であっても、状況を勘案して範囲を広げるべきと考える。特に我が国では、非営利目 的で IFRS 促進のために IFRS を引用する場合であっても、個別に確認手続きが求められて おり、手続きが煩雑で、IFRS の普及活動に障害が出ることを強く懸念する。我が国のよう に、継続的に資金拠出している法域については手続負担も含め追加負担なく IFRS を引用で きるよう適時に対応していただきたい。 3.IFRS 教育 教育は IFRS の首尾一貫した適用を促進するために重要な要素である。IFRS 財団が世界 中で展開しているフレームワークに基づく IFRS 教育を引き続き充実し、非英語圏である我 4 が国のような国での展開は、翻訳に負担が生じることも念頭におき、継続的に資金拠出し ている法域については、追加負担なく実施していただきたい。 JICPA は、IASB の教育担当ディレクターと協働してフレームワークに基づく研修を 2 年連続で開催しており、我が国の公認会計士の資格取得のための教育機関(実務補習所) で研修の実施をルーティン化するか否かの意思決定のクリティカルな段階にある。JICPA で具体的な方針を決めるに当たり、適時にグローバルな IFRS 教育の提供に関する基本的な 方針を示していただけると大変有難い。 基本戦略目標 4:機関としての IFRS 財団 ガバナンス 質問 7 当財団のガバナンスの 3 層構造の機能をどのように改善するかについて、何か提案がある か。 現行の 3 層構造は IFRS 財団の使命にとって適切であり、IFRS 財団のガバナンスの基本 的要素であるという評議員会の見解(77 項)に同意する。 主要会計事務所からの拠出水準が、IASB の独立性に対する潜在的なリスクとして一部の 利害関係者から懸念の発生源として言及されているが(101 項) 、主要会計事務所は、グロ ーバルな公共の利益に敏感であり、 主要会計事務所からの拠出水準が IASB の独立性に影響 を与える可能性は非常に低いと考える。加えて、評議員会の監督活動が、モニタリング・ ボードへの説明責任とともに、 IASB の独立性を確保し保護する上で役立っている (101 項) 。 3 層構造は引き続き維持される必要があると考える。 IFRS 財団に特有の論点 評議員会 質問 8 評議員の全体的としての地理的分布及びその決定方法について、どのように考えるか。 「全 体枠」の評議員の選任数を 2 名から 5 名に増加させる提案に同意するか。 1. 総論 仮に現在の評議員の選任方針を継続する場合でも、評議員の全体枠の増加には反対しな い。しかし、我々は、評議員メンバーの安定化と IFRS 財団への資金拠出モデルの強化の観 点から、(a)レギュラー(常任)メンバー、(b)ローテーション・メンバー、(c)全体枠(選任 数増加を前提)に分けて評議員を選出することを提案する。 2. レギュラー(常任)メンバー設置の提案 評議員メンバーの安定化と IFRS 財団への資金拠出モデルの強化の観点(質問 14 へのコ メント参照)から、現行の GDP 割を前提とした一定額以上の継続的な資金拠出、金融資本 5 市場の成熟性・先進性(例えば、時価総額、上場企業数、信頼性の高い財務報告制度の確 立・運用状況) 、IFRS 開発へのコミットメントなどを優先的要因として、該当する法域か らレギュラー(常任)メンバーを選出し、それ以外の法域から、その他の追加的要因(潜 在的な IFRS の適用拡大可能性等)を考慮してローテーション・メンバー、グローバルなパ ブリックインタレストの観点から全体枠のメンバーを選出することを提案する(要件を充 足しているか否かにより、各メンバー枠を数年ごとに見直すことが前提である) 。 3. 全体枠の増加 現在の評議員の選任方針を継続する場合でも、全体枠の評議員の選任数を 2 名から 5 名 に増加させる提案に反対しない。上述の我々の提案も、全体枠の存在を前提としている。 現行の地域枠について、以下の点をコメントする。 · アジア・オセアニア地域の重要性:アジア・オセアニア地域は、(a)経済成長が著しく、 世界経済への影響力が増していること、(b) 欧州における EU のような経済共同体がな く、多様な言語・文化・慣習を持つ国家・民族から構成され、国数が多く、IFRS 適用 の過程にある国も多いことなどから、IFRS アドプション促進の戦略上、IFRS 財団と の密接な連携が必須となる非常に重要な地域である。したがって、全体枠の変更に伴 う調整を行う際には、アジア・オセアニアから正当な数の評議員が確保されるべきで ある。 · 出身国の金融資本市場の成熟性・先進性:多様性確保の観点から、地域枠を維持する 場合でも、単なる地理的な分散にのみ集点を置くことは望ましくない。メンバー選出 にあたって、個人の属する法域の金融資本市場の成熟性・先進性、IFRS 開発へのコミ ットメントなどを優先的に考慮すれば、個人の資質(信頼性の高い財務報告制度の確 立・運用状況についての知見、分析力など)も卓越している可能性が高く、その他、 言語(英語を母国語とするか) ・文化・慣習のバランス、ジェンダーバランスを加味す ることが、財団の目的である、より高品質な国際基準の使用の実現につながると考え る。 · 各地域の定義:各地域・出身の定義が曖昧であるため、定義を明確化する必要がある。 例えば、サウジアラビア出身の評議員は現状「その他」から選出されていると推測さ れるため、問題が顕在化していないが、本来は、どの地域に属するのか明確ではない (欧州かアジア・オセアニアなのか、いずれにも属さないため、「その他」なのか)。 なお、IFRS 財団の website 上、IASB のボードメンバーの地理的配分と定款上の人数 枠との関係は明確に示されている(その他枠からの選出者を明示している)一方、評 議員の場合は必ずしも明示されていないため、一般的にわかるように明示していただ きたい。また、地理的配分の考え方には、各地域の出身を国籍(二重国籍の考え方を 含む)で考えるのか、主な活動地域で考えるのかという潜在的論点も存在すると考え る。 6 質問 9 専門家としての経歴に関し適切なバランスを取ることに関する現在の定め方について、ど のようなに考えるか。何らかの変更が必要と考えるか。必要と考える場合、どのようなこ とを提案するか、その理由は何か。 現在の評議員の内、監査人出身者は 1 名のみであり、専門家としての経歴に関する適切 なバランスが提供されていない。監査人は公益への貢献に敏感であり、IASB の独立性への 潜在的リスクと考えることには同意できない。 定款(第 7 条)では、通常 2 名は著名な国際的な会計事務所のシニア・パートナーでな ければならないと記載されている。評議員会は該当規定の見直しを計画しているとのこと である(82 項)が、国際的な会計事務所に所属するシニア・パートナーは、グローバルな 公共の利益に基づき行動する習慣があり、国際的な会計・監査の実務経験は IFRS 財団にと って有益と考えるため、当該規定を残すべきと考える。 特に、デュー・プロセス監視委員会(DPOC)の範囲は、IASB がデュー・プロセス・ハ ンドブックに準拠しているか監視することであり、IASB の技術上の決定に最終権限を持た ないとしても、基準の実務適用上の問題に精通している監査人の関与は不可欠であると考 える。したがって、監査人の人数に関する定款規定を残すべきと考える。 質問 10 戦略及び有効性レビューの焦点及び頻度を上記のように変更する提案に同意するか。 評議員会は、遅くとも前回レビューの完了から 5 年後に開始すべき旨を明示するように定 款の修正を計画している(86 項) 。全体的な戦略レビューについては期間の明確化の観点か ら同意する。しかし、範囲を限定したフォローアップレビューは、状況の変化に応じ、5 年 にとらわれず実施するべきと考える。 IASB 質問 11 定款に示す IASB のメンバー数を 16 名から 13 名に削減する提案及び地域的分布の改訂に 同意するか 1. 現状からのメンバー数削減に反対 2014 年 7 月以降、IASB は暫定的に 14 名で運営されている(90 項)ことを考えると、運 営上の問題が存在するのであれば 16 名から 14 名までの削減には強い反対はしない。しか しながら、IASB は現在の 14 名で十分に機能していると考えており、さらに 13 名まで減ら す必要性を見出せない。評議員会が IASB を小さくする方が効果的であると考えるに至った 要因(90 項)に関して以下でコメントする。 · コミュニケーションを容易にすること、個々のボードメンバーによる参加及び関与が 7 拡大すること、審議会の会議の組成及び管理が容易となること、審議会メンバーの当 事者意識と責任感を高めるのに役立つことが挙げられている。これらは、提案されて いる任期の延長など、ボードメンバー定員削減以外の方策により対処するべきと考え る。 · ASAF において地域的代表が拡大され、ASAF メンバーが貴重な法域・地域のインプッ トを提供することが確保されることから、ASAF の設置により審議会メンバー人数の削 減する機会を提供するとされている。しかしながら、ASAF は基準設定における主要な 技術的論点に関して法域・地域のインプットを行う諮問機関である一方、審議会メン バーは基準設定における議決権を有するため、両者の役割は全く異なる。 · ボードメンバー定員削減により、IFRS 財団の他の場所で使用できる財務資源が解放さ れるとされている。高品質で容易に理解でき、かつ執行可能なグローバルに受け入れ られる単一の財務報告基準を開発する IFRS 財団の目的を達成するには、高度な専門的 能力と豊富な実務経験を有する審議会メンバーを確保することに第一義的に財務資源 を使用すべきと考える。財務資源の継続的確保の方策については、質問 8 へのコメン トを参照されたい。 2. アジア・オセアニア地域枠削減に反対 アジア・オセアニア地域枠を 4 名から 3 名に削減する案に強く反対する。現に、4 名のメ ンバーが機能している現状を踏まえれば、削減する根拠を見出せない。 · アジア・オセアニア地域の重要性:アジア・オセアニア地域は、(a)経済成長が著しく、 世界経済への影響力が増していること、(b) 欧州における EU のような経済共同体はな く、多様な言語・文化・慣習を持つ国家・民族から構成され、国数が多く、IFRS 適用 の過程にある国も多いことなどから、IFRS 財団の IFRS アドプション促進の戦略上、 重要性がますます高まっていると考える。 · 個人の資質・出身国の金融資本市場の成熟性・先進性:多様性を確保する観点から、 地域枠を設定することは適切であるとしても、単なる地理的な分散にのみ集点を置く ことは望ましくない。定款に示されているとおり、IASB のメンバー資格の主たる要件 は、依然として専門的能力と実務経験である(92 項)。メンバー選出にあたって、個人 の属する法域の金融資本市場の成熟性、先進性、会計基準設定の経験、IFRS 開発への コミットメントなどを優先的に考慮すれば、個人の資質(会計に関する高度な知識、 分析力など)も卓越している可能性が高く、その他、言語(英語を母国語とするか) ・ 文化・慣習のバランス、ジェンダーバランスなどを加味することが、各法域で受け入 れやすいより高品質な国際基準設定の実現につながると考える。 8 質問 12 定款第 27 条を削除するとともに、第 25 条の文言(IASB メンバーの経歴に関するバラン スを定めている)を修正する提案に同意するか。 市場及び金融規制者を含める点に関して、3 層構造の十分かつ適切な機能で補完できるこ と、かつ現状でも規制者出身はすでに 4 名おり、定款変更は不要と考える。 IASB のメンバー資格の主たる要件は、定款で示しているとおり、依然として専門的能力 と実務経験であるとされている(92 項)。したがって、IFRS 開発及び IFRS 適用上の課題 が増加する状況で、会計実務・監査実務の経験は多大な貢献が期待でき、両方を備えた監 査人出身者は IASB にとって不可欠である。 監査人出身者は現在 1 名のみであり、最適ミックスが提供されておらず、監査人出身者 を増やすべきと考える。 質問 13 IASB メンバーの再任時の任期について、定款の第 31 条を上記のように修正する提案に同 意するか。 任期当初 5 年、再任後 3 年という定款を変更して、再任後の任期は最大 5 年までとする 提案に同意する。 再任期間を 5 年にすることにより、概念フレームワークの改訂など、審議に時間を要す る重要なプロジェクトに関して、当初からの審議に参加し、審議経過を熟知している IASB メンバーを投票時に確保できるのではないかと考えられる。 なお、ボードメンバーの経験年数の最適ミックスを達成するため、既存の IASB メンバー へも新たな任期の適用が認められるべきと考える。この場合、適用時の経過措置の検討な どが必要と考える。 資金調達 質問 14 上記の財団の資金調達モデルについて、何かコメントがあるか。資金調達に対する制約を 考慮に入れて、資金提供モデルの機能を強化し得る方法について、何か提案があるか。 各国の GDP に比例した各国の資金調達体制に基づく資金調達モデルは適切であり維持す べきとの評議員会の見解(97 項)に同意する。 上記を達成するため、我々は、IFRS 財団の評議員メンバー選出について、現行の GDP 割を前提とした一定額以上の継続的な資金拠出、金融資本市場の成熟性・先進性(例えば、 時価総額、上場企業数、信頼性の高い財務報告制度の確立・運用状況)、IFRS 開発へのコ ミットメントなどを優先的要因として、該当する法域からレギュラー(常任)メンバーを 選出し、それ以外の法域から、その他の追加的要因(潜在的な IFRS の適用拡大可能性等) を考慮してローテーション・メンバー、グローバルなパブリックインタレストの観点から 9 全体枠のメンバーを選出することを提案する(要件を充足しているか否かにより、各メン バー枠を数年ごとに見直すことが前提である)。(質問 8 へのコメント参照)。これにより、 評議員メンバーの安定化と IFRS 財団への資金拠出モデルの強化が図られると考える。 また、GDP 割の資金調達を達成していない地域(98 項)からの資金調達を促進するため の方策として、資金拠出に関する GDP 割と実際の拠出額の時系列の比較のアニュアル・レ ポートへの掲載等、開示を検討していただきたい。 なお、自ら生成した収入(コマーシャル活動による財源調達)に過度に依存することは、 IFRS 財団が公益のために活動する団体であるとのイメージを損なうリスクがあるため、財 源の大半は公的支援拠出によって賄われるべきと考える。 質問 15 財団の構造及び有効性レビューの一部として、財団が検討すべき他の論点はあるか IFRS 解釈指針委員会 解釈指針委員会は全体として、IFRS の実務上の適用及び IFRS に準拠して作成された財 務諸表の分析に関する技術的な専門性及び国際的な事業及び市場での経験の多様性が最善 の組合せとなるような人々の集団で構成されるべきとされている(定款第 39 条)。会計基 準の実務適用上の問題に幅広く精通しているのは我が国では監査人・作成者メンバーであ ると考える。解釈指針委員会の使命を果たす上では、人選に当たって、個人の属する法域 の金融資本市場の成熟性、先進性、会計実務適用の経験、IFRS 適用へのコミットメントな どを優先的に考慮すれば、個人の資質(特に、会計基準の実務上の適用に係る高度な知識 及び実務経験、分析力など)も卓越している可能性が高く、その他、言語(英語を母国語 とするか) ・文化・慣習のバランス、ジェンダーバランスなどを加味することが、高品質か つ透明性の高い解釈指針委員会の構成につながる。属性に関する人員枠が定款で定められ ていない以上、所属組織の属性間のバランスに過度にこだわるべきではないと考える。 以 上 10
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