10.奈良県 川上村・匠の聚(たくみのむら)[PDF:218KB]

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奈良県 川上村・匠の聚(たくみのむら)
団体概要
・設立の経緯:平成11年(1999年)
「吉野」
「源流」という自然風土を活かした「自
然と共に有る創造的生活」の提案・実現をめざし、滞在型芸術文化教育施設「匠の聚」
が誕生。7 棟の住居兼アトリエにジャンルの異なるアーティストを迎え、在住芸術家と
して活動してもらう仕組みを整える。
・ねらい:①芸術家の定住、活動拠点化、創造活動支援。②イベントなどを通じて、都
市圏との人・文化の交流促進。③子供たちを中心とした、文化教育的貢献を通じて、
川上村全体の活性化、その波及効果の拡大を目指す。
・施設概要:芸術家の居住、創作の場としてのアトリエ 7 棟、ギャラリー、カフェ、売
店、工房室、研修室、コテージ5棟、小西保文アトリエ記念館・穴窯・イベント広場
がある。
・主な事業内容:イベントの開催(5 月 GW 期間中に「アートフェスティバル」、11 月文
化の日近くの連休に「山のふゑすた」)、川上村の情景フォトコンテスト、企画展、芸
術家を講師とした文化教室やワークショップの開催、施設運営。
現状分析
1.匠の聚のミッションとビジョンの整理(実践ゼミⅠ)
設立時、
「定住・移住支援」を目的に、芸術による村おこし計画として匠の聚は開業し、
村外への情報発信に比重を置き事業を展開していく。その結果、村内における文化・教
育・福祉へ向けた役割や取組みは遅れる格好となっていった。また開業10年を迎えた
年に、匠の聚の代表格として活動していた作家2名が相次いで亡くなるという不幸が重
なり組織基盤が不安定となる。併せて、川上村と匠の聚芸術家と事務局との三者間の連
携も不安定となり、それぞれの変化も、事業目標も共有できない状況のまま現在に至る。
今回この実践ゼミにおいて、開業15年を迎えた匠の聚が、改めてどのような理念の
もとに事業を行っているかを見直す良いきっかけとなった。下記の通り、実践ゼミをと
おしてミッションとビジョンを明確にする中で、匠の聚がもつ基本理念を再度確認でき
た。
⇒ミッション:
「自然と共に有る創造的生活」の提案と実現。創造的活動を通じて交流人口
を増やし、定住・移住を促す事。
ビジョン
:吉野川上の地に根ざしたものづくり・創造的活動を促進する事業を行う場
づくりを担っていく事。
2.変化に対応しながら成長していく必要性を認識(実践ゼミⅡ)
開業以来15年、匠の聚を川上村から任された職員2名は、これまで異動も無く組織
文化を形成してきた。内・外部環境、在住作家の活動スタイルなど変化は数多くある中
で、ここ数年は日々の業務に追われその変化に対応できない状況となっていた。併せて
川上村と芸術家と匠の聚事務局との連携、情報共有がスムーズにできない組織形態が明
確となる。これからもそれぞれ様々な変化があり、その変化に対応しながら成長してい
く必要性をそれぞれが再認識できた。
⇒話し合い/共有/分析/検討・チェック・フィードバックを行う三者間の仕組みが必
要。
3.文化芸術施設としての持続可能性への不安(実践ゼミⅠ・Ⅱ・Ⅲ)
匠の聚の業務形態が実質 2 名体制であり、抱えている事業に対し、手が足りておらず、
人材と体制に不安がある現状。また、地域振興の役割を担う芸術文化施設として、将来
的な運営を見越すと、事業構想や経営面、それに伴う意思決定の仕組みにおいて持続可
能性への不安が残る。
中長期計画策定に向けて
1.
「自然と共に有る創造的生活」の提案と実現に向けた事業展開
匠の聚は、芸術家たちが暮らし、創作をしているという特徴があり、また、施設とし
て、滞在型の創作活動ができる環境が整っている。来年度は、この特徴と環境を、匠の
聚がもつ資源として活かしていけるよう、これまで続けてきた事業を大きく変えずに、
事業目標の明確化と意味付けを丁寧に行う。また、事業を行っていくなかで、振り返り
や検討、改善を行うスキームを組み込み、それをもとに再来年度の事業構想を練ってい
く。
2.
「村づくり」の場をめざして
川上村は、定住・移住促進を施策のひとつに掲げている。匠の聚は、その一翼を担っ
ていく村内公共施設として、文化的・教育的貢献事業のみにとどまらず、地域振興とい
う観点における「村づくり」の場を目指していく。とくに、創造活動を通じた交流の場
として、作品、インスピレーション、アイディアなど、有形無形のあらゆるものが生ま
れるような「匠の聚」らしさを大事にしていく。そして、そのように生まれたものが根
付いていくような基盤づくりを進めるにあたって、事務局やアーティストはもちろんの
こと、村内・村外の多くのひとを巻き込んでいく。匠の聚が、そういった「村づくり」
の場として機能していくような方向性を、どのように続けて行けるかを中長期計画策定
のなかで検討していきたい。