安全なエクササイズの実施:補助者3名に よるバックスクワット

EXERCISE TECHNIQUE
Exercise Safety: The 3-Person Spot for the Back Squat
安全なエクササイズの実施:補助者3名に
よるバックスクワット
Joseph Kenn[ジョセフ・ケン、MA、CSCS,*D、アリゾナ州立大学ヘッドストレングス&コンディショニングコーチ(アメリカン
フットボール担当)
、アリゾナ州テンペ]
■スタートポジション
実施者の背部にいる補助者がリーダー
側部の補助者2名は、それぞれバー
準備姿勢
となる。従って、両側にいる補助者2
の少し後ろの位置に立つ。こうするこ
名(側部の補助者)は、背部にいる補
とで、実施者の背後でバーを支え続け
助者の指揮に従う。
ることができ、実施者を補助する役割
まず、準備姿勢は写真1に示す通り
である。エクササイズ実施においては、
①
②
④
③
写真1∼4 ①3名の補助者の準備姿勢、②背部の補助者の準備姿勢、③側部の補助者の準備姿勢、④背部の補助者の動作
40
Volume 10, Number 6, 2003
⑤
⑥
⑦
⑧
写真5∼8 ⑤側部の補助者の動作、⑥背部の補助者のキャッチ、⑦背部の補助者のキャッチのとき
の腕の位置、⑧側部の補助者のキャッチ
を果たすことができる。もし両側の補
とはない。
両手はバーの約1フィート(約0.3m)
助者がバーの前の位置に立っていたと
3名の補助者でエクササイズを補助
下に位置しておく。そうすれば、下降
すると、実際のところ実施者の身体か
する場合、背部の補助者がリーダーと
動作中に補助者の手が邪魔になること
らバーを離してしまう形になってしま
なる。従って、背部の補助者は実施者
はないだろう。
うかもしれない。
を補助するうえで、例えば、
「このま
背部の補助者:エクササイズ中
までは実施者はこのリフトを成功させ
背部の補助者は、実施者の下降を追
■下降(下方への動作)
られない」などといった様々な判断を
跡しながら、実施者に補助が必要かど
背部の補助者:準備姿勢
行わなければならない。そして、実施
うか判断したり、もしくは実施者の能
補助者は実施者のおよそ1∼3フィ
者が補助を必要とするときには、背部
力にかかわらずエクササイズを完了さ
ート(約0.3∼0.9m)後方に立つ。こ
の補助者が、側部の補助者2名に対し
せるかどうかを判断するなどの準備を
のとき、膝は少し曲げて、前後開脚の
て口頭で「補助をする」指示を出すこ
行う(写真4)
。
スタンスをとる(写真2)
。実施者と
とになる。
側部の補助者:エクササイズ中
補助者の間のスペースとしては、実施
側部の補助者:準備姿勢
側部の補助者は、実施者の動きを追
者がエクササイズのスタート時点で深
側部の補助者は、少し膝を曲げた姿
跡する。常に実施者を補助できるよう
く身体を下ろす動作が、補助者に邪魔
勢で立つ(写真3)
。側部の補助者は
に準備をしておき、背部の補助者から
されずに実施できるだけの広さが必要
実施者の少し背後の、バーと真っ直ぐ
「補助をする」という指示がきたとき
となる。補助者の両手は「キャッチ」
向かい合う位置に立つ。補助者の両手
に動けるように準備をしておく(写真
の際の位置、すなわち、わきの下の位
は「V」型をとる(写真3)
。こうす
5)
。
置に置く。ただし、補助者の両手が実
ることで、補助が必要なときに補助者
施者の上半身のどの部位にも触れるこ
がバーを掴むことができる。補助者の
Volume 10, Number 6, 2003
41
EXERCISE TECHNIQUE
⑨
⑩
⑪
⑫
写真9∼12 ⑨背部の補助者のリカバリーポジション、⑩3名の補助者でラックにバーを戻すときの
位置、⑪背部の補助者のラックに戻すときの位置、⑫側部の補助者のラックに戻すときの位置
■キャッチ
合は、片手でプレートを押さえるよう
ンスを支えるためにバーに手を移し替
背部の補助者:キャッチ
にする。
えて、安全にバーをラックに戻すよう
背部の補助者が実施者を補助しよう
にする(写真10)
。実施者は、リフト
と決定したら(写真6)
、ただちに前
■リカバリーと上昇(上方への動作)
をあきらめてはならない。補助者は実
後開脚のスタンスで前方に踏み出して
背部の補助者:リカバリーポジショ
施者がウェイトを戻すのを助け、効率
実施者の側に駆け寄る。補助者は胸の
ン
よく安全な方法でリフトを完了させる
部分で実施者の背部を押し上げ、実施
背部の補助者は、実施者を直立姿勢
者のわきの下に両腕を入れて上に持ち
まで戻し、さらに実施者がラックのと
挙げるようにする。このとき、両手は
ころまで後退する準備させるよう安定
背部の補助者は、実施者の両手の内
実施者の三角筋前部と胸上部の頂点付
させる(写真9)
。このとき、実施者が
側でバーを持ち、実施者がラックまで
近にある(写真7)
。この姿勢をとる
直立姿勢までリフトを完了させるよう
後退するのを助ける(写真11)
。
ことで、補助者と実施者の両者は、リ
にすることが重要である。補助つきで
側部の補助者:ラックヘ
カバリーポジションまでウェイトを持
リフトが完了する前に、スクワットラッ
側部の補助者は、外側の手をバーの
ち上げることができる。
クに戻るのは、実施者にとっても補助
端に、内側の手を実施者の手の外側に
側部の補助者:キャッチ
者にとっても間違いであると言える。
置く。もし実施者がワイドグリップで
側部の補助者に「補助をする」とい
■ウェイトをラックに戻す
者は両手でバーを掴み、リカバリーポ
ラックに戻す
バーに多数のプレートが付いている場
42
Volume 10, Number 6, 2003
背部の補助者:ラックヘ
あれば、補助者の内側の手はプレート
う指示が出されたら(写真8)
、補助
ジションに実施者が戻るのを助ける。
訓練を受けているのである。
バーが直立姿勢のときの位置まで戻
ったら、ただちに補助者はバーのバラ
に置く(写真12)
。
Volume 25, Number 1, pages 29-31