DISKCON USA 2008 カンファレンス参加報告

DISCKON USA 2008 REPORTS
DISCKON USA 2008
カンファレンス参加報告
ヘッド・ディスク部会 副部会長
武藤 弘(富士通株式会社)
理事・技術委員会委員長
兒玉直樹
(株式会社 日立グローバルストレージテクノロジーズ)
Executive summary:
DISKCON US 2008 が 9 月 17 日、18 日の 2 日間に渡り開催された。今年は Data Storage:Fueling Your Future と題して、SSD
とリソグラフィー技術に集中した講演が企画された。講演数は 33 件、講演の聴衆は、80-150 名程度であった。7 月に開催され
た Diskcon-Japan のテクニカルフォーラムのほうが聴衆は多かった。 SSD は、エンタープライズ向けの SLC NAND Flash による高パフォーマンス SSD と、モバイル向けの MLC NAND Flash に
よる低消費電力 SSD に二極化する。モバイルでの SSD の利点はそれ程明確でない。消費電力の観点でもストレージ以外の部
分、例えば液晶ディスプレイなどの消費電力が多く、PC 全体では SSD の低消費電力のメリットが薄まってしまう。OBJECTIVE
ANALYSIS(半導体アナリスト)の Jim Handy のプレゼンによれば、現状 8GByte 程度を境にして、容量が小さい場合は SSD が
コスト的に有利との見方を持っており、Low cost PC や MP3 プレーヤー、携帯電話、等々で SSD(フラッシュメモリ)の採用
が進むと観ている。
並列処理(Multi channel 処理)が可能な半導体メモリの特性を活かした超高速エンタープライズ向け SSD と、比較的小容量
の SSD が今後とも生き残って行く印象を持った。何れにせよ、SSD ではコントローラの最適設計が非常に重要なポイントと成る。
SSD は、2009 年で1-2$/GB、< 1$/GB になるのは 2010 以降と見られている。
Seagate の Tim Rausch による HAMR の報告があった。殆どの内容は、昨年 5 月の TMRC の発表と同様であるが、記録密度
が 200 Gbpsi (707 kBPIx276 kTPI) である事や S/N が 12.8dB(媒体 S/N=13.7dB)である事など、徐々にデータが増えてきている。
Seagate では PSIM (Planar Solid Immersion Mirror) による集光でデモを行っているが、近接場光による加熱(NFT: Near Field
Transducer)も検討しており、シミュレーションでは 10nm 径程に集光できとのこと。
IDEMA Japan News No.87
DISCKON USA 2008 REPORTS
DISKCON 二日目の主題はファインプロセス。特に BPM や DTM 向けのプロセスに関するプレゼンが多い。Paul Hofemann
(Molecular Imprints 社)によれば、ロードマップ上 2011 年頃に記録密度 1Tbpsi に達し、BPM 技術が必要としている。その時
の円板の価格は、現状$4- $6/disk に対して$1- $2 の価格増加に押える必要があるとの説明。その為の一つとして、媒体の標準
化が必須とのこと。設備メーカとしては妥当な意見である。
Seagate 社の Dieter Weller (Chief Technologist, Patterning Technology & Advanced Media) からは BPM に関するプレゼンが
あった。BPM での 10Tbpsi 記録の実現へ向けてドット位置、サイズ、磁気特性等の許容バラツキの検討を行っている。
プレゼンによれば、HSQ と呼ばれるレジストを使用することで、Pitch:18nm の場合でも位置やサイズのσが 5%未満を達成
できるとしている。これは記録密度で 2Tdpsi に相当する。更に、e-beam と Self Assembly 技術を組み合わせてドット密度を高
める試みも行って居る。e-beam により作ったドットの間に幾つのドットを作ることが出来るかを実験しており、現在のところ
3 個、つまり 9 倍の multiplication が可能な事を確認している(ドットの写真を提示)
。将来(10Tbpsi)へ向けては、媒体表面
の平坦化が課題としている。
概 要 :
DISKCON US は、年 1 回、IDEMA US の主催で開催される HDD 関連企業によるイベント。HDD 関連の設備メーカの
展示会とともに、最新情報が報告される会議が開かれる。開催期間は 9 月 17 日、18 日の 2 日間。プレゼンテーション
は 5 つのセッションに渡り、合計 33 件が行われた。
Roth-Rau 社の Steve Brown によるプレゼンが withdraw と成った。セッションは以下の通り。
9/17
Session 1 : Market perspective on HDD and SSD technology and adoption
Session 2 : Storage applications and system architecture
Session 3 : The basis for success - component, testing and evaluation
9/18
Session 4 : Reading and writing the fine print: A review of current and future lithography equipment
Session 5 : Walking the fine line to the future: Process developments for fine lines and deatures
9 月 17 日(水)
Joel Weiss のプレゼンテーションで IDEMA US 2008 は始まった。今後生み出される情報量にも触れ、2007 年に 281
ExBytes であったものが、2011 年には 1.773 ZetaBytes に増加する勢いである。これまでエクサバイト(10 の 18 乗)
という単位で扱えた情報量が新たにゼータバイト(10 の 21 乗)という単位が必要になる訳である。
初日の主題は SSD。先ず TrendFOCUS, Gartner, および IDC から SSD を中心とした市場動向の報告があった。これら
によると、異口同音にエンタープライズ向けの SLC NAND Flash による高パフォーマンス SSD とモバイル向けの MLC
NAND Flash による低消費電力 SSD に二極化する
IDEMAのブース
とのこと。
但しモバイルでの SSD の利点はそれ程明確で
ない。消費電力の観点でもストレージ以外の部
分、例えば液晶ディスプレイなどの消費電力が多
く、PC 全体では SSD の低消費電力のメリットが
薄まってしまう。
OBJECTIVE ANALYSIS(半導体アナリスト)の
Jim Handy のプレゼンによれば、現状 8GByte 程
度を境にして、容量が小さい場合は SSD がコスト
的に有利との見方を持っており、Low cost PC や
IDEMA Japan News No.87
DISCKON USA 2008 REPORTS
MP3 プレーヤー、携帯電話、等々で SSD の採用が進むと観ている。これに対して Note PC や Desk top PC では、ビット
コスト等の点で不向きとの結論を出している。
エンタープライズ向けでは高速化の為のマルチチャネルの制御、モバイルでは記録回数の制御や書き込み速度の遅さに
対する工夫が必要となる。何れにせよ、SSD ではコントローラの最適設計が非常に重要なポイントと成る。
エンタープライズ向けに好適な SSD の普及率は、2012 年のエンタープライズ機全体で 13%に過ぎない。
(Gartner、
High Capacity SATA:16.82M 台、High-Performance FC/SAS:37.16M 台に対して Enterprise-Grade SSDs:7.2M 台。
)
これに対して、ランチスピーカーとして講演した SanDisk の Rich Heye (Senior VP and GM of SSD business unit) は、
2012 年頃には 5 台に 1 台のノート PC は SSD を搭載するとしている。この背景には、インターネットの活用が進み、容
量の小さな SSD で十分という背景もあるが、その他の根拠が明確ではなく、SSD メーカーならではの考え方の様だ。
並列処理(Multi channel 処理)が可能な半導体メモリの特性を活かした超高速エンタープライズ向け SSD と、比較的
小容量の SSD が今後とも生き残って行く印象を持った。小容量の SSD は、低コストのフラッシュメモリが手に入れられ
れば誰でも開発可能である反面、エンタープライズ向け SSD は高度な制御技術が必要となり、その開発にはエンタープ
ライズ製品を持つ HDD メーカが有利と成る。
第一日目の最後のプレゼンとして Seagate の Tim Rausch による HAMR の報告があった。殆どの内容は、昨年 5 月の
TMRC の発表と同様であり、
HAMR による記録結果としては TMRC 時と同様の磁界ドミナントの記録磁化の MFM 像(磁
化遷移部が直線状)を示している。但し、記録密度が 200 Gbpsi (707 kBPIx276 kTPI) である事や S/N が 12.8dB(媒
体 S/N=13.7dB)である事など、徐々に公表データが増えてきている。
Seagate では PSIM (Planar Solid Immersion Mirror) による集光でデモを行っているが、近接場光による加熱(Near
Field Transducer)も検討しており、シミュレーションでは 10nm 径程に集光できとのこと。
9 月 18 日(木)
DISKCON 二日目の主題はファインプロセス。特に BPM や DTM 向けのプロセスに関するプレゼンが多い。Paul
Hofemann(Molecular Imprints 社)による Kickoff talk で二日目が始まった。ロードマップ上 2011 年頃に記録密度
1Tbpsi に達し、BPM 技術が必要としている。その時の円板の価格は、現状$4- $6/disk に対して$1- $2 の価格増加に押
える必 要があるとの説明。その為の一つとして、媒体の標準化が必須とのこと。設備メーカとしては妥当な意見である。
二日目のプレゼンは次に示す様な状況 IBM, HGST, Seagate,HP を除くと設備メーカからのプレゼンである。
IBM(Almaden を含む)
3 件
ASML 2 件
HGST 2 件
Molecular Imprints 2 件
Obducat, Intevac, Molecular Foundry, HP, KLA-Tencor, Veeco, Seagate それぞれ 1 件
設備メーカからのプレゼンが多い中、Seagate 社の Dieter Weller (Chief Technologist, Patterning Technology &
Advanced Media) からは "Achieving Tight Sigmas in Bit Patterned Media" と題した BPM に関するプレゼンがあった。
BPM での 10Tbpsi 記録の実現へ向けてドット位置、サイズ、磁気特性等の許容バラツキの検討を行っている。これは今
年 5 月に開催された Intermag での発表とほぼ同じ内容("Stagged" Media)
。先の HAMR と同様に磁気特性やデータな
ど少しアップデートされている。
プレゼンによれば、HSQ と呼ばれるレジストを使用することで、Pitch:18nm の場合でも位置やサイズのσが 5%未満
を達成できるとしている。これは記録密度で 2Tdpsi に相当する。更に、
e-beam と Self Assembly 技術を組み合わせてドッ
ト密度を高める試みも行って居り、このアイディアは先の Intermag でも報告されている。今回は、e-beam により作っ
たドットの間に幾つのドットを作ることが出来るかを実験しており、3 個、つまり 9 倍の multiplication が可能な事を確
認している点が新しい(ドットの写真を提示)
。将来(10Tbpsi)へ向けては、媒体表面の平坦化が課題としている。
IDEMA Japan News No.87