(3) 地域づくり 森林資源を利用した地域の振興 森林から供給される資源を最大限に生かしていくため、従来の木材利用に 加え、新たな用途への期待が高まるCLTの製造・供給や、木質バイオマス のエネルギー利用を創出し、川上から川中、川下を結び付ける効率的な流通 体制(サプライチェーン)を構築することで森林・林業や地域の活性化を目 指します。 また、公共建築物をはじめとする様々な分野での木材利用を促進するとと もに、品質の確かな「媛すぎ・媛ひのき」等の製品に持続的な森林経営が担 保された森林認証を付加し、 「愛媛県産材製品市場開拓協議会」が中心となっ て、国内外へ販路を拡大していきます。 加えて、県産材が安定的に供給される仕組みづくりと、需要者ニーズに適 確かつ迅速に対応できるような加工・流通体制を構築し、効率化・低コスト 化に取り組みます。 しいたけ等の特用林産物については、木材生産の長期性を補う短期収入源 として農山村地域経済の活性化に果たす役割は大きいため、消費者ニーズに 応え、安全・安心な商品を提供するとともに消費拡大に努め、地域における 就業機会の確保や収入の増加を図ります。 こうした木材の新たな利用や、品質の確保、生産効率を高めていくために は、基礎となる研究・技術開発に、国、大学や民間等と連携を図りながら積 極的に取り組んで行く必要があります。 そこで、重点項目として、 ① 木材需要の創出と利用拡大 ② 川上から川下にわたる一体的な活性化 ③ 木材加工・利用技術の開発と普及 を掲げ、積極的に取り組んで行きます。 1 木材需要の創出と利用拡大 ① 媛すぎ・媛ひのき等品質の確かな製品の国内外への販路拡大 県では建築用材として、品質性能の優れた県産製材 品のブランド化と安定供給による信頼性の確保を図 るため、 「JAS2級以上、含水率 20%、丸みなし」 という条件をクリアーした製材品を愛媛ブランド材 「媛すぎ」 ・ 「媛ひのき」と命名し、木材流通業者や製 材工場等によって組織された「愛媛県産材製品市場開 拓協議会」とともに、知事トップセールスやマッチング商談会などを通じ て、広く国内外へ積極的に販売していきます。 また、建築用材に加え、内装材についてもブランド化を図るとともに、 各製材工場の得意とする製材品をパッケージングして販売するため、新た なビジネスモデルを構築して販売力の向上を図ります。 ② 建築物への積極的な県産材の利用推進 住宅建築やリフォームでの県産材の需要拡大を図るため、 「木と暮らしの 相談窓口」(平成 20 年5月設立)を利活用し、一般県民に幅広く木材の良さ や各種施策のPRを行うとともに、県産材利用住宅への支援を行います。 また、平成 22 年に「公共建築物等における木 材の利用の促進に関する法律」が制定されたこ とから、県と県内の市町では、同法に基づく木 材の利用の促進に関する方針を樹立し、公共建 築物の木造化を図る取組を推進しています。 さらに、老人ホーム等の介護施設や低層階の 店舗等を中心に、民間施設に対しても木材の利用促進を図ります。 ③ 木質バイオマスの総合的利用の推進 木材の総合的な利用を推進するため、木質バイ オマス発電やペレットボイラーの導入等に支援 を行い、低質材の利用用途の拡大を図ります。 また、林内に放置されている林地残材等に対す る搬出補助を行い、製紙用チップ等の利用の促進 を図ります。 さらに、 木質バイオマス資源の搬出・流通の低コスト化を実現するため、 既存の方法にとらわれない林地残材の有効な搬出手段について実証を行 うなど、地域の実情の応じた低質材搬出システムの構築に向けた取組を進 めます。 ④ 森林認証材供給体制の整備 森林認証制度は、国際的な森林減少 森林認証制度 や劣化の問題と木材のグリーン購入 の高まりをうけ、世界的に普及しつつ FM(森林管理)認証 適切に管理された森林 あり、国内においても東京オリンピッ ク・パラリンピック競技大会を契機と して森林認証材の積極的な活用が期 COC認証 待されているほか、木材輸出等におい 分別管理・ラベル添付 ても国際基準である認証材であるこ とが求められつつあります。 消費者の選択的な購買 持続的な森林経営を支援 そのため、持続的な森林経営が求め られるFM認証を組織的に取得する 仕組みづくりと、認証材流通への取組を加速させ、森林認証材という新た な価値を付加した愛媛ブランド材等の供給体制整備を推進します。 ⑤ CLTの普及促進 CLTは、中高層建築物への木材利用を図る新 たな建築素材として注目されていますが、建築基 準法における基準強度の告示などがなされていな いため、部材として普及が進んでいません。 今後、平成28年度早期に行われる基準強度の 告示等の機会をとらえ、設計者等への研修会を通じて、建築関係者への普 及を進めます。 また、CLT建物の建築を支援することを通じて、一般県民への普及を 進め、CLTの一般化を図ります。 2 川上から川下にわたる一体的な活性化 ① 県産材の安定的・効率的な供給体制の構築 県産材の販路拡大を行うためには、全国の木 材需要に応じた定時、定量、定質な原木供給が 必要不可欠となっています。このため、川上か ら川下までの業界団体が中心となり、原木の需 要動向の把握と情報の共有を図り、需要に応じ た木材生産システムの構築を図ります。 また、原木の流通方法についても、供給量の確保と原木価格の安定の観 点から、契約に基づく安定的な供給体制への移行を推進するとともに、低 質材等の品質を問わないものについては、山からの直送等により流通コス トの低減を図ります。 ② 県産材の加工流通の拡大・競争力の強化 愛媛県産材の産地化を図るため、品質の確 かな製品の生産を行う必要があることから、 木材乾燥や強度表示を行う設備の導入を支援 し、更なる高品質化を推進ます。 また、需要の少ないヒノキ大曲材等の有効 活用を図る観点から、CLTの加工施設整備 についても支援を行います。 さらに、今後、供給が増える大径材の利用を促進するため、ラミナや板 材を生産する製材工場の誘致についても検討します。 ② 特用林産物を活用した複合経営による山村地域の定住促進 森林からの恵みである「乾しいたけ」や「乾たけのこ」について、生産・ 加工施設の整備や生産団体が行う技術研修 会等の開催を支援し、効率的な生産による増 産を進めることで農林家の所得向上を図り ます。 また、消費者ニーズに応じた品柄や安全・ 安心な商品の提供を目指すとともに、県内外 における消費宣伝活動を関係団体と連携し て取り組みます。 さらに、新規生産者の確保に向け、地方創生に取り組む市町や地域と協 力して、都市部からのUIJターン者等に、林産物、農産物等との複合経 営を働きかけ、安定した収入を確保することで山村への定住を促進します。 3 木材加工・利用技術の開発と普及 ① 新たな木質材料等に関する試験研究 県産材に高い信頼性を付与し、非住宅建築 物等への木材利用を進めるため、CLTをは じめとした新たな木質系構造材料や耐火等の 研究を推進します。 また、内装材の開発や広葉樹の利用につい ても研究を進めます。 CLTの強度試験 ② 木質バイオマス等木材の有効利用に関する試験研究 低質材・未利用材の活用を図るため、木質バイオマス発電への利用や新 たなマテリアル利用について検討を行い、社会の多様なニーズに対応した 研究開発を進めます。 9 用語解説 あ行 ●愛媛県産材製品市場開拓協議会 信頼性のある県産材の生産・ 販売体制整備や大消費地等での市場開拓等 を目的として、県内木材加工業者等で組織する団体。 ●エリートツリー 第1世代(精英樹)の中でも特に成長や材質の優れたもの同士を交配し てできた第2世代 以降の選抜された個体。 か行 ●花粉症対策品種 花粉発生量を大幅に抑えた少花粉や無花粉のスギやヒノキ。 ●川上・川中・川下 川上とは、木材生産等を行う林業で、川中は、原木流通を担う原木市場。 川下は、製材・チップ・プレカット等の加工業や、製品等が最終消費者に 届くまでの工務店、住宅メーカー、製紙会社等をいう。 ●公益的機能 森林の機能のうち、生物多様性保全機能、地球環境保全機能、土砂災害 防止/土壌保全機能、水源かん養機能、快適環境形成機能、保健・レクリエ ーション機能、文化機能。 ●コンテナ苗 根と培土が成形された根鉢付苗。コンテナ苗は従来の苗と比較して、活 着率が良い、季節を問わず植栽できる、植え付けが容易-などのメリットが ある。 さ行 ●CLT 板の層を各層で互いに直交するように積層接着した厚型パネルのこと。 35 ●森林経営計画 森林所有者等が一体的まとまりのある森林で作成する5年を1期とした 森林の施業及び保護の計画。市町村長等の認定を受け、計画どおり実行す ることで、税制、補助金などの優遇措置を受けることができる。 ●森林吸収源対策 国際的に森林による二酸化炭素吸収量を温室効果ガスの削減量に算入す ることが認めており、それに向けた森林整備等の取り組み。 ●森林総合監理士 森林・林業に関する専門的かつ高度な知識及び技術並びに現場経験を有 し、長期的・広域的な視点に立って地域の森林づくりの全体像を示すとと もに、市町村等への技術的支援を適確に実施する者のことで、国が認定、 登録を行う。 ●森林認証 独立した第三者機関が、一定の基準等を基に適切に管理される森林及び その経営組織を認証するFM(森林管理)認証と、認証された森林から生 産された木材・木材製品へラベルを付けることにより、消費者の選択的な 購買を通じて、適切な管理を支援するCOC(加工流通過程の管理)認証 がある。 た行 ●多面的機能 公益的機能+木材等生産機能。 な行 ●認定林業事業体 林業労働力の確保を目的とした「林業労働力の確保の促進に関る法律」 に規定される事業体。 ●ネクストフォレスター 次代を担う新たな林業従事者。 36 えひめ森林・林業振興プラン ~第5次愛媛県総合林政計画~ 平成28年3月 愛媛県農林水産部森林局林業政策課 〒790-8570 愛媛県松山市一番町4丁目4-2 電話 089‐912‐2587 FAX 089‐912‐2594
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