イバイ島太陽光発電システム整備計画準備調査(PDF)

無償資金協力
案件概要書
2016 年 2 月 23 日
1.基本情報
(1) 国名:マーシャル諸島共和国
(2) プロジェクトサイト/対象地域名:イバイ島
(3) 案件名:イバイ島太陽光発電システム整備計画(The Project for PV Power Generation
System in Ebeye Island)
(4) 事業の要約:本事業は、イバイ島に太陽光発電設備及び制御装置等を整備することによ
り、再生可能エネルギーの導入促進を通じた電力の安定供給と燃料消費の削減を図り、
もって同国の環境・気候変動対策に寄与することを目的とする。
2.事業の背景と必要性
(1) 当該国におけるエネルギーセクターの開発の現状・課題及び本事業の位置付け
マーシャルはエネルギー資源に乏しく、電力供給の 99%以上(米国内務省島民事務局
2013)を輸入燃料によるディーゼル発電に依存している。輸入燃料は、国際的な石油価格
の変動を受けやすく、また、他の島嶼国同様、輸送コストが上乗せされ割高であることから、
国民生活に大きな影響を与えている。また、設備の故障時や悪天候により燃料輸送に問題が
生じた際に長時間停電するなど、エネルギー安全保障上の脆弱性を抱えている。
こうした状況を受け、マーシャル政府は 2009 年 9 月に「国家エネルギー政策及び行動計
画(National Energy Policy and Energy Action Plan。以下、「NEPEAP」という。)」を策定
し、2020 年までに電力供給の 20%を再生可能エネルギーで賄うことを目標として掲げた。
現在、我が国をはじめ、アブダビ基金等による支援の下で、首都マジュロを中心に太陽光発
電システムの導入が徐々に進んでいるが、目標達成のためには同国人口の 21%を占め、未
だ再生可能エネルギーの導入が進んでいないイバイ島でも推進する必要がある。
イバイ島はクワジェリン環礁に位置し、首都マジュロ(人口約 27,800 人)に次ぐ人口約
11,400 人(コーズウェイで結ばれているガゲグウェ島含む)
(2011 Census)を擁している。
同島の最大電力需要は約 2,100kW であり、それに対する電力供給として、配電網がコーズ
ウェイで陸続きの近隣の島を含め敷設されているが、その発電は島南端に設置されたディー
ゼル発電設備(1,200kW×3 基)のみに依存している。
また、イバイ島では家庭用飲料水を各家庭で貯める天水タンク(15%)とクワジェリン環
礁ユーティリティ(電気・水道)公社(Kwajalein Atoll Joint Utility Resources。以下、
「KAJUR」
という。)が管理する大型の海水淡水化装置(日産 11 万ガロン、84%)に依存しており(2015
ADB)、特に干ばつ時など海水淡水化装置への電力の安定供給は、水供給の観点からも重要
な課題となっており、ディーゼル発電以外の電力供給確保が求められている。
なお、同国に対して JICA が実施した開発計画調査型技術協力「エネルギー自給システム
構築プロジェクト」
(2013-15 年)において、イバイ島に太陽光発電を導入することは、同
国の再生可能エネルギーの比率向上と同島の安定的な電力供給を図る上で有効との提言が
得られている。同プロジェクトの提言を受けたマーシャル政府は本事業を同国が掲げる
NEPEAP を推進するものとして位置付けている。
(2) エネルギーセクターに対する我が国協力方針等と本事業の位置付け
2012 年 4 月に決定された対マーシャル国別援助方針では、環境に配慮した持続的経済成
長と国民の生活水準の向上を基本方針に掲げ、「環境・気候変動」を重点分野としている。
また、JICA 国別分析ペーパー(大洋州版)において、マーシャルを含むミクロネシア地域
に対しては、特に「環境」と「ライフラインの確保」を優先事業とし、海運とともにエネル
ギー関連事業を展開するとしており、本事業はこれら方針・分析に合致する。
(3) 他の援助機関の対応
ADB はイバイ島の海水淡水化装置への協力を行っており、右装置への電力安定供給の観
点から配電設備の更新を行う予定。また、アブダビ基金が同国向けに太陽光発電導入に係る
協力を行っているが、現在のところマジュロのみが対象となっている。
(4) 本事業を実施する意義
本事業は、マーシャル政府の課題・エネルギー政策、我が国の援助方針にも合致すること
から、我が国が本事業の実施を支援する必要性及び妥当性は高い。
なお、マーシャルの所得水準は相対的に高いことから、「所得水準が相対的に高い国に対
する無償資金協力の効果的な活用について」に基づき、無償資金協力の供与の適否について
精査が必要である。
マーシャルは、小島嶼国であり、気候変動や自然災害に対する脆弱性を抱えている(「環
境的脆弱性」)ことに加え、国内市場が小さく、国際市場から地理的に遠いなど、経済的に
も脆弱である(「経済的脆弱性」)。
したがって、本事業は、上記の観点を満たすものであり、無償資金協力の供与が適当と判
断できる。
3.事業概要
(1) 事業概要
① 事業の目的
本事業は、イバイ島に太陽光発電設備及び制御装置等を整備することにより、再生可能エ
ネルギーの導入促進を通じた電力の安定供給と燃料消費の削減を図り、もって同国の環境・
気候変動対策に寄与することを目的とする。
② 事業内容
ア) 施設・機材等の内容:【機材】太陽光発電設備(600kW)、制御システム等。また
蓄電池等の要否、維持管理能力等を協力準備調査により確認する。
イ) コンサルティングサービス/ソフトコンポーネントの内容:詳細設計及び施工監理/
運営・維持管理についての技術指導。
ウ)調達・施工方法:詳細は協力準備調査により確認する。
③ 他の JICA 事業との関係
我が国は、環境・気候変動対策無償資金協力「太陽光を活用したクリーンエネルギー導
入計画」(2010 年度 E/N 締結)や、上述の開発計画調査型技術協力「エネルギー自給シ
ステム構築プロジェクト」を通じて再生可能エネルギー導入のロードマップを策定する等、
同国の気候変動緩和策を支援している。また「ハイブリッド・アイランド構想」の一環で、
大洋州地域広域で技術協力の実施を検討中(2016 年~2020 年を予定)。これらの協力と
ともに、当国電力セクターを包括的に支援するものとして相乗効果が期待される。
(2) 事業実施体制
① 事業実施機関/実施体制:天然資源開発省、クワジェリン環礁ユーティリティ(電
気・水道)公社(KAJUR :Kwajalein Atoll Joint Utility Resources)
。KAJUR はクワ
ジェリン環礁内の公益事業を行うために設立された政府出資の事業公社。
② 他機関との連携・役割分担:ADB 支援による配電設備の更新計画があり、それを考
慮した事業計画を策定する。
③ 運営/維持管理体制:政府事業公社である KAJUR が運営・維持管理を担う。なお、
前述の環境・気候変動対策無償資金協力で導入された太陽光発電設備はマーシャル
エネルギー公社(MEC: Marshalls Energy Company)により適切に維持管理されて
おり、KAJUR に対してもソフトコンポーネントと併せて MEC からの技術支援が期
待される(詳細は、協力準備調査にて確認)。
(3) 環境社会配慮
① カテゴリ分類 □A ■B □C □FI
② カテゴリ分類の根拠:本事業は、
「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010 年
4 月公布)に掲げる影響を及ぼしやすいセクター・特性及び影響を受けやすい地域に該当
せず、環境への望ましくない影響は重大でないと判断されるため。
(4) 横断的事項:本案件は再生可能エネルギーの利用促進により輸入ディーゼル燃料の使用
削減を図るものであるため、気候変動緩和策と位置付けられる。
(5) ジェンダー分類:ジェンダー主流化ニーズ調査・分析案件
(6) その他特記事項:特になし。
4. 過去の類似案件の教訓と本事業への適用
バヌアツの「地方電化プロジェクト」(1999 年 6 月~2002 年 5 月)の事後評価結果等で
は、維持管理及び運営管理を指導できる現地人材及び持続的な事業運営に関する予算の確保
の必要性のほか、機材の故障の発生に即応すべく現地調達可能な機材の導入の検討や予見さ
れる問題への対処方法への支援の必要性が指摘されている。
したがって、本事業と並行して実施中の課題別研修「マイクログリッドにおける再生可能
エネルギー導入のための計画担当者研修」等の技術協力を通じて、適切な維持管理方法や人
材育成を実施するなど先方実施機関の維持管理能力の向上を図る。
以 上
[別添資料]地図
別添
マーシャル諸島共和国「イバイ島太陽光発電システム整備計画」
地図
プロジェクトサイト