KH_005_1_006 - 国立民族学博物館学術情報リポジトリ

国立民族学博物館研究報 告 5巻1号
中 央 ア ン デ スの 民話 と アマ ゾ ンの 神話
栽培植物 ・
労働 ・
死 の起源
友
Central
Andean
枝
Folktales
Cultivated
啓
泰*
and Amzonian
Plants,
Hiroyasu
Labor
Myths : The Origin
of
and Death
TOMOEDA
In the southern part of the Central Andes there are numerous
versions of a popular fox-tale, in which the fox hero travels to the
heavens and crashes to the ground on his return. Some versions
end with the origin of cultivated plants which spill from the stomach
of the gluttonous hero who devoured them at a celestial banquet.
Dispersion after disjunction (high/low) is an invariant feature
which characterizes story-formation (combination and functioning
of tale elements) of all the versions. And this pattern recurs in
the cortamonte,one of the popular carnival activities in the northern
part of the Central Andes. In this activity numerous participants
in the festival fell a tall tree erected in an open square (disjunction) and rush to possess the objects with which it was decorated
(dispersion).
Although information on the magico-religious motive or symbolic meaning of the Andean cortamonteis lacking, its formation is quasiidentical with the story of some upper Amazonian (montana)myths,
which relate that humans obtained various cultivated plants from
the fruits of an original tree which they had felled. Andean
fox-tales and the Amazonian myths thus coincide in their message
and pattern.
The Amazonian myths treat not only cultivated plants but also
human mortality, which originates as if it were forced on those who
felled the miraculous tree. In the Central Andes the message of
this simultaneous origin of cultivated plants and man's mortality is
transmitted in a more attenuated form by another popular tale,
*国 立民族学博物館第2研 究部
240
友枝 央央 アンデ スの民話 とアマゾ ンの神 話
"Chiwaco the Liar
," a transformation of the fox-tale.
In these versions the thrush hero, acting as spiteful mediator
between the celestial God and terrestial humans, is the source of
various aspects of human life, such as agriculture, herding, or
cooking and eating. Here, man's mortality is treated indirectly
or in a reduce of form because human beings are forced to labor
hard to obtain foodstuffs and their teeth, which wear-out, represent
man's mortality.
When man participates actively in the origin process of cultivated plants, as in the Amazonian cases, he experiences death
simultaneously. Participating passively in the same process only as
the recipient of messages from the God, as in the chiwaco-tale,
lessens his mortal experiences to a degree of labor and pains, which
gives a certain negative value to the plants derived. When he does
not participate in the process, as in the fox-tale, only the dispersive
aspect of the origin process remains constant and seems to be
stressed.
Our final observation on an Andean children's play, sachatiray
(cutting tree), validates these arguments.
は じめ に
1.大
食 キ ツ ネの 墜 落 死
皿.嘘
つ き チ ワ コの証 言
IV.子
供 の遊 び一 ま とめ一
ロ.木 を切 り倒 す 罪
は
じ
め
に
中央 ア ンデ スを 西 か ら東 へ 自動車 を使 って 旅 行 した 人 は,た った一 日 の う ち に海 岸,
高 地,熱 帯 雨 林 と激 し く変 化 す る 自然環 境 とそ こ に生 活 す る人 々のi著しい相 違 を 印 象
づ け られ る。反 対 に海 岸,高 地,あ
るい は上 流 ア マ ゾ ン沿 い に 南 北 に長 旅 を した 人 は,
む しろ相 似 た よ うな 景 観 の連 続 を経 験 す る。む ろ ん二 人 の 旅 行 家 の 観 察 は 単純 にす ぎ,
実 際 は東 西 の 環 境 変 化 は も っ と連 続 的 な もの だ し,異 な る地 域 間 の 社 会 的,経 済 的交
流 は頻 繁 で,人 々の 生 活 様 式 の 共 通性 は見 か け以 上 に大 きい。 ま た似 た よ うな 山地 農
民 の生 活 に も相 違 が あ り,・た とえ ば南 部 高 地 で 沢 山 飼 育 さ れ て い る リャマ,ア ルパ カ
は北 へ 行 くにつ れ て 数 を 減 じ,北 部 高 地 で そ れ を 見 るの は稀 で あ る。 中央 ア ンデ ス を
一 つ の 文化 的 ま とま りを 有 した 統一 体 と見徹 す 場 合,そ の 内 部 に お け る類 似 性 と多 様
性 は当 然 の前 提 とな る。 ペル ー の ポ ピュ ラー ・ソ ング の中 で も コス タcosta,シ
エラ
241
国立民族学博物館研究報告 5巻1号
sierra,モ ン ター ニ ャmontafiaの
鮮 や か な対 照 とそ れ を 統 一 す る"わ が ペル ー"が 讃
美 さ れ る。
ここで は中 央 ア ンデ ス に広 く共 有 され て い る 二 つ の 民話 グ ル ー プ,カ ー ニバ ル の行
事,子 供 の遊 び,お
よび 中 央 ア ンデ ス に接 す るモ ン ター ニ ャ(上 流 ア マ ゾ ン)に 住 む
諸 族 の神 話 や 儀 礼 を 考 察 の 対 象 とす る。 そ して,そ の 内 容 が 相 互 に ど の点 で一 致 し,
どの 点 で相 違 す る か を明 らか にす る過程 を通 じて,こ れ らの 事 象 が,考 察 の対 象 と な
った 限 りに お いて,一 つ の ま と ま りを な して い る こ とが 強 調 され る。地 域 性 を明 らか
にす る こ とは 必ず し も本 稿 の主 た る関 心 で は な い が,結 果 的 に は扱 う事 象 間 の一 致 や
相 違 に は大 ま か な地 域 差 との相 関が み られ る 。
特 に本 稿 で は中 央 ア ンデ ス の諸 事 象 を 上 流 アマ ゾ ン地 域 の神 話 や 儀 礼 との 関 連 で 扱
って い る。Steward等
ゾ ン地 域 は,決
に よ る南 ア メ リカ文 化 領 域 の設 定 以 来,中
央 ア ンデ ス とア マ
して 両 者 間 の 関 連 が無 視 され た わ けで はな い が,と か く異 な る文 化 領
域 と して別 個 に扱 わ れ る研 究 上 の傾 向を 生 ん で い る。 しか し場合 に よ って は両 地 域 を
一 体 と して扱 う こ とも,今 後 の 研 究 に と って 有 効 で あ ろ う。 特 に上 流 アマ ゾ ヒ と中央
ア ンデ ス の よ うに,過 去 現 在 にわ た って不 断 の交 流 を 繰 り返 して きた 隣…
接地 帯 につ い
て は,そ れ が い え る。 本 稿 の試 み は,あ る意 味 で は,上 流 ア マ ゾ ン の神 話 に 中 央 ア ン
デ スの 民 話 を 解 釈 させ る こ とで あ る。
上 に述 べ た 理 由 か ら,本 稿 で は一 つ の 民 話 の 数 多 い ヴ ァー シ ョ ン間 の比 較,あ る い
は タイ プの 異 な る民 話 や 神話 間 の比 較 を して い く こ とに な る の で,そ の記 述 操 作 の便
宜 上,民 話 や 神 話 を,1.話
ー ジ,2.話
に よ って 意 味 され る もの と して の テ ー マ あ るい はメ ッセ
を 形 づ くる諸 要 素 の組 合 わ せ と機 能 と して の 構 成,3.そ
の具 体 的構 成
の 基本 に あ る原 理 と して の パ ター ンあ るい は形 式,と い う三 つ の 局 面 に分 けて お く。
こ こで扱 う中央 ア ンデ スの 民 話 や行 事 の資 料 はす で に 出版 され た もの が殆 どで,ど
ち らか とい えぱ フォ ー ク ロア に 興 味 を抱 く入 々 に よ って 発 表 され て い る 。 そ の大 半 は
非 専 門 的 立 場 で書 かれ,部 数 の 少 な い地 方 の郷 土 誌 と して 出版 され た り,学 術 的 性 格
の うす い 定 期 刊 行 物 に掲 載 され た もの が 多 い 。1930年 以 後 発 表 され て きた こ う した記
録 は,こ れ まで に相 当 の量 に及 ん で い るが,今
日に 至 る ま で研 究 資 料 と して 殆 ど利 用
され な い ま ま に,散 逸 して しま う傾 向 にあ る。 この 時 点 で こ う した 断片 的 な 記 録 を一
つ に ま とめ整 理 して お くこ とは,分 析 の成 果 い か ん に か か わ らず,今 後 のア ンデ ス社
会 の 研 究 に と って役 立 つ もの と考 え る。
本 研 究 は1978年 に認 め られ た 文 部省 在 外 研 究(長 期)の 成 果 の一 部 で あ り,ま た そ
の大 要 は研 究 ノー トと して す で に発 表 した[友 枝 1979:46-55]。
242
本館 の共 同研 究 会
友枝 中央アンデスの民話とアマゾンの神話
(中 央 ア ンデ ス農 牧 社会 の 民族 学 的研 究)に お い て,共 同研 究 員 の 諸 氏 か ら本 稿 の 内容
につ い て の貴 重 な示 唆 を得 た ことを 記 し,こ こに 感 謝 の 意 を表 す る。
1.大
食 キ ツ ネの墜 落 死
中 央 ア ン デ ス 高 地 の 農 民 社 会 に 伝 わ る 伝 説1eyenda,寓
話 倣bula,民
話cuentoの
類 は,こ れ ま で に数 多 く採 録 され て い るが,若 干 の 研究 を別 にす れ ば,分 析 の 対 象 と
して取 り上 げ られ る こ とが な か った 。 同 じ南 ア メ リカ で も,熱 帯 低 地 に住 む諸 部族 の
神 話 の分 析 が,Levi-Straussを
は じめ と して 多 くの人 々 の関 心 を 集 め て い るの に対 し,
この 事 実 は対 照 的 で あ る。
こ こで は,そ
う した ア ンデ ス民 話 の う ちか ら,栽 培植 物 の起 源 を 扱 って い る 神話 的
性 格 を有 す る もの,お よ びそ れ と関 係 す る一 連 の 民話 を取 り上 げて,分 析 を試 み る 。
これ らの 民話 が,そ れ 自体 で 意 味 の あ る全 体 を 形成 す る ば か りで な く,ア ンデ ス 高地
農 民 の 思 考 様 式 や 観念 体 系 に それ が 深 い か か わ りを もち,ま た 熱 帯 低 地 の 神話 群 と も
充 分 に意 味上 の 関 連 を有 し,全 体 構 造 の 一 環 で あ る こ とを 明 らか にす るの が本 稿 の 目
的 で あ る6
まず 分 析 の 出発 点 と して取 り上 げ るの は,キ
ッネ の行 為 に よ って 天 界 か ら栽 培 植 物
が人 間 界 に もた らされ た とい う,ボ リビア 領 ア ンデ ス高 地 の民 話 で,目 下 手 も とに あ
る資 料 の う ちで は,栽 培 起 源 を扱 った 話 と して 一番 早 い時 期 に採 録 され て い る。
民話1-一 大 昔 キ ツネの 口 は小 さ くてe一鳥 は今 と同 じ く木 を 住 み 家 と して い たが,天
界 で 食 事 を して い た。 あ る 日 コ ン ドル に 出 会 った キ ッ ネ は,地 上 の動 物 が噂 に だ け
聞 く天 上 の 宴 会 に招 待 して くれ と頼 む 。 天 上 で は腐 った 肉を 食 べ ず,旨 い食 物,と
りわ け砂 の よ うに 見 え る物 を食 べ て い る とい う こと で あ った 。 コ ン ドル は不 作 法 な
振 舞 い,特 に骨 を か じる不 作 法 を せ ぬ こ とを条 件 に,天 界 にキ ッ ネをつ か んで 連 れ
て行 く。 天 界 で催 され た宴 会 に は,沢 山 の トウモ ロコ シ,キ ヌア,カ ニ ャワ,食 肉
鳥 の た めの 肉が あ り,宴 会 の あ と もキ ツ ネ は ぐず ぐず して いて,コ
ン ドル が食 べ た
あ との骨 を か じって い るの を見 つ か り,コ ン ドル は罰 と して キ ッ ネを 置 き去 りにす
る。歎 い て い る キ ツ ネ は,ロ ー プ を持 って 来 た パ パ チ ウチ と い う鳥1)の 助 け を得 て,
天 界 か ら降 りて来 るが,途 中 で 出会 った イ ンコの 群 れ を,下 痢 の イ ン コ,汚 れ た イ
1)ボ
リビアで パ パ チ ウチpapachiuchiと
呼ん で い るの は,高
地で は ご く普 通 に見 か ける小 鳥
(Elena・FortUn前 ボ リビア文 化 庁 長官 に よ る教 示1979)。 種 類 な ど につ い て 詳 しい こ とは解 ら
なか った。papa-chiuchiだ とす れ ばpapa一 ジ ャガ イモ, chiuchi一 小 鳥 の ひ な。
243
国立民族学 博物館研究報告 5巻1号
ン コ,役
立 た ず2)と 三 度 に わ た って 侮 辱 し,最
マ ン トを 広 げ て くれ と 助 け を 求 め た が,誰
な か っ た か で,地
上 に 衝 突 し,熟
食 べ た 物 が 飛 び 散 っ た の で,地
に な っ た[PAREDEs 上 に は ト ウ モ ロ コ シ,キ
でDominga の 資 料 か ら判 断 し て,1949年
の 腹 か ら天 上 で
ニ ャ ワが あ る よ う
Titizanoか
ル ・チ チ ャ スNor Chichas地
ら聞 い た も の で,再
録(1973)
当 時 の もの で あ る 。 同 じ ボ リ ビ ア 領 の ス ク レSucre県
で,
ケ チ ュ ア 語 で 語 られ た も の を 採 録 して い る 。Aarne-Thompson
に 従 っ た 民 話 の 形 式 分 類 を 目 的 と し て,Anibarroは
接 に 採 集 して い る が,下
ボ リ ビ ア 領 の,特
ヌ ア,カ
こう と し
repr.1973:57-56]。
ボ リ ビ ア 領 ポ ト シPotosi県,ノ
方 の ケ チ ス ラQuechisla村
ご く最 近Anibarroも
も そ れ が 聞 こ え な か っ た か,聞
れ た オ レ ン ジ の よ う に 破 裂 し,そ
1953:23-25, こ の 話 はParedesが
後 に ロ ー プ を 噛 み 切 られ て 落 下 す る 。
ボ リビア高 地 の数 多 い民 話 を 直
記 の 民 話 は そ の 一 つ で あ る 。Anibarroに
よ る と,こ
に ケ チ ュ ア 語 農 民 の 間 に 広 く伝 わ って い る よ う で,彼
の ヴ ァ ー シ ョ ン を 集 め て い る[ANIBARRo l 976:361]。
の話 は
女 自身 で 六 つ
た だ し他 の 五 つ が 栽 培 植 物
起 源 を 扱 って い る か否 か はわ か らな い。
民 話2 コ ン ドル が キ ッ ネ を 天 上 の 宴 会 に 誘 い,背
っ た キ ツ ネ と 喧 嘩 を し た コ ン ドル は,寝
中 に 乗 せ て 連 れ て 行 く。 酒 に 酔
込 ん だ キ ッ ネ を 置 き 去 り に し て,地
って しま う 。 自 分 で 編 ん だ ロ ー プ を 伝 って 降 り て 来 た キ ツ ネ は,途
ン コ の 群 れ を 侮 辱 し,仕
け を 求 め た が,人
々 が か わ り に 大 き な 石 を 据 え た の で,そ
れ を 畑 に 蒔 い た[ANIBARRo イ ミ,ト
ウ モ ロ コ シ(二
種 類)が
ウ モ ロ コ シ,キ
く一 般 的 な 栽 培 作 物 と な っ て い る 。 カ ニ ャ ワkafiahuaは
Pandicaale Acllen[CARDENAs も い わ れAmaranthus に よ る と ク イ ミ はChenopodium な っ て い る[1970:18]。
飛 び 散 り,人
袋
々 はそ
caudatus L.で
millmiま
ヌ ア は ア ンデ ス 高 地 で ご
キ ヌ ア と同 じ 仲間 の 植 物
l969:116],ク
あ る[CARDENAs イ ミcoimiは
1969:119]。
ミユ ミ
Oblites
た はChenopodium montanum[1969:215],
キ ヌ ア と 同 じ 仲 間 と い う こ と に な る 。 な おSoukupの
L.と
れ に 衝 突 し て 死 に,胃
1976:360-361]。
二 つ の 民 話 に 出 て く る 起 源 植 物 の う ち,ト
millmiと
中 で 出会 った イ
返 し に ロ ー プ を 切 られ る 。 キ ッ ネ は 敷 物 を 広 げ て くれ と 助
か ら天 界 で 食 べ た キ ヌ ア,ク
でChenopodiecm 上 に帰
分 類 で はAmaranthzts 分 類 学 上 い ず れ を と る べ き か 解 らな い が,同
caudatus
じ名称 で
地 域 に よ っ て 違 った 植 物 を 呼 ん で い る 可 能 性 もあ る3)。 い ず れ に して も ア ンデ ス 高 地
2)三
回 に わ た る侮 辱 の ケ チ ュ ア 語 表 現 とParedesの
c◎ndiarrea), ioros klgechi michis(loros 3)Cardenasは
のCallahuaya農
244
ス ペ イ ン語 訳 は,10ros kkecha siquis(loros
trapos sucios), loros kkechichis(10rgs ボ リ ビ ア 領 に 関 す る 有 用 植 物 の 分 類, Oblitesの
民 の 薬 用 植 物 の 分 類, Soukupの
insigni丘cantes)。
はボ リビア領 テ ィテ ィカ カ 高原
はペ ル ー領 の植 物 俗 名 の分 類 で あ る。
友枝 中央 アンデ スの民話 とアマゾ ンの神話
の 一 部 で は 現在 栽培 され て い る。
数 多 くの ボ リ ビ ア 民 話 を 比 較 検 討 し たAnibarroは,結
論 と して,殆
どの話 が植 民
地 期 に ス ペ イ ン人 に よ って も た ら さ れ た も の の 残 存 で あ り,純
粋 に イ ンデ ィ オ 伝 統 で
あ る 民 話 は 見 当 らな か った と 述 べ て い る 。 した が っ て 民 話2も
そ の 例 外 で は な く,
Anibarroの
分 析 に よ れ ば,ス
ペ イ ン か ら持 ち 込 ま れ た 動 物 民 話 に 組 み 込 ま れ て 神 話
的 要 素 が 残 っ て い る と い う こ と に な る[ANIBARRo l976:42]。
民 話 の タイ プや モ チ
ー フ の 分 類 だ け で 起 源 を 同 定 す る こ と に は 無 理 が あ る と し て も,一
般 的 に い っ て ,今
日 の ア ンデ ス 民 話 の 多 く が ス ペ イ ン に 由 来 し て い る の は 確 実 で あ ろ う。
キ ッ ネ が も た ら し た 栽 培 植 物 の テ ー マ は,ペ
て い る 。Moroteが
ち で,三
ク ス コCuzco県
ル ー 領 ア ン デ ス で も い くつ か 採 録 さ れ
で 集 め た"天
界 へ の 旅"を
つ は 明 らか に 栽 培 植 物 の 起 源 に 触 れ た もの で,民
扱 った十 三 の 民 話 の う
話 の 内容 は上 記 二 例 とあ ま
り違 わ な い 。
民 話3 コ ン ドル が 夜 明 け を 待 っ て い る所 へ 食 物 を あ さ る キ ツ ネ が 来 て,挨
し た あ と,コ
ン ドル が 天 上 の 宴 会 へ 行 く と 知 る 。 キ ッ ネ の 願 い を 聞 い て,行
す る と と を 条 件 に,コ
拶を交
儀 よ く
ン ドル は キ ツ ネ を 背 中 に 乗 せ て 連 れ て 行 く。 チ チ ャ 酒 を 飲 み,
た ら ふ く食 べ た キ ツ ネ は,他
の 鳥 た ち と 喧 嘩 を し,そ
れ を 恥 じ た コ ン ドル は,酔
て 寝 込 ん だ キ ッ ネ を 置 き去 り に す る 。 天 か ら降 り る 途 中 で イ ン コ を 鼻 曲 り,お
れ ニ ワ ト リと 侮 辱 す る 。 キ ツ ネ が ふ とん,わ
た ネ ズ ミ が,棘,押
し ピ ン,割
民 話4 れ た び ん の 破 片 を ま い た の で,墜
あ る 地 上 の 人 間 の 食 糧 と な っ た5)[MOROTE 山 の 上 で 会 った コ ン ドル が"以
連 れ て 行 く よ う頼 む 。"そ
前 に 行 った 所"へ
の 時 不 作 法 を し た か ら"と
落 した キ ツ ネ は 破
1958:8]。
行 く と 知 った キ ッ ネ は,
立 た ず と イ ン コ を 侮 辱 す る 。 墜 落 して 腹 が 破 裂 し,空
ま ま 食 べ た トウ モ ロ コ シ,小
界 に 広 ま った[MOROTE 民 話5 4)オ
麦,ジ
ャ ガ イ モ が 散 り,こ
中で 大
腹 でなまの
の 最 初 の 種 か ら作 物 が 全 世
l 958:8-9]。
キ ツ ネ を 宴 会 に 連 れ て 行 く の は ハ ゲ タ カ で,キ
ユ コ011coは
局
ツ ネ は 宴 席 で む さ ぼ り食 い,
酔 っ て 寝 込 ん で しま う。 天 の 木 に 縛 った ロ ー プ を 伝 って 降 り る キ ッ ネ は,途
き い く ち ば し,役
ユ コ4)∫『
コ ン ドル は 拒 絶 した が,結
承 知 す る 。 唯 一 の 獣 の 出 現 は 他 の 招 待 客 を 驚 か し,キ
いぼ
らを 広 げ て くれ と 空 か ら叫 ぶ の を 聞 い
一一
裂 し,一そ の 腹 か ら天 界 で 嫁 ま の ま ま 食 べ た ジ ャー
ガ イ モ1一 ト ゥ モ ロ コ シ,オ
大 麦 が 散 り,今
っ
ッ ネ は 行 儀 良 く す る と約 束
ア ンデ ス 高 地 の 根 茎 類 の 一 つ で, Ullucu tubercurosus Lozano[SouKuP 1970:
358]。
5)採
録 し た 民 俗 学 者 のMoroteは
後 出 の 民 話9の
ケ チ ュ ア 語 テ キ ス トを 記 述 し た あ と,他
ァ ー シ ョ ン の 重 複 部 分 を 省 略 して い る 場 合 が あ る の で,記
のヴ
述 の 一部 に欠 け た と こ ろが あ る。
245
国立民 族学博物館研究報告 5巻1号
した が,天
界 の も の を 許 し な く食 べ る 。 天 界 か ら降 り る 途 中 で イ ン コ を 腹 す か し と
呼 ん で 侮 辱 す る 。 ネ ズ ミが キ ッ ネ の 落 下 を 知 っ て 棘 の 毛 布 を 広 げ,そ
キ ッ ネ の 腹 が 破 裂 し,天 界 で 食 べ た トウ モ ロ コ シ,小
を 人 々 が 植 え た[MOROTE Anibarroが
も,そ
麦,ジ
の上に落ちた
ャ ガ イ モ が 散 り,そ
れ
l 958:8]。'
指 摘 す る よ う に,か
りに これ らの民 話 の 起 源 が ス ペ イ ンにあ るに して
の 構 成 に は ア ンデ ス 的 特 徴 が あ り,か
つ そ れ が話 の展 開 に きわ め て重 要 で あ る
こ と を,こ
こで 指 摘 して お か ね ば な らな い 。 主 人 公 で あ る キ ッ ネ と コ ン ドル の 対 立 的
関 係 は,こ
の 話 の 大 事 な ポ イ ン トで あ る が,そ
の 原 因 は 前 者 の 不 作 法 に あ り,ま
の 不 作 法 は キ ッ ネ の 空 腹 あ る い は 負 欲 に 由 来 す る 。 こ の 場 合 に 限 らず,ア
たそ
ンデ ス民 話
の キ ッ ネ は し ば し ば 空 腹 あ る い は 貧 欲 な 主 人 公 と し て 登 場 し,し
か も獲 物 で あ る 相 手
の 計 略 に か か っ て,所
ンデ ス の 民 話 で は,
期 の 目 的 を 果 せ な い 。 一 般 的 に い っ て,ア
キ ッ ネ は 最 終 的 に は か ら か わ れ た り騙 さ れ る 存 在 で あ っ て,自
して し ま う。 ア ンデ ス の 農 民 に と って,キ
う害 獣 で あ り,キ
ツ ネ は トウ モ ロ コ シ畑 を 荒 ら し,家
畜を襲
ッ ネ に 出 会 う の は何 か に つ け て 悪 い し る しだ と さ れ る6)。
一 方 人 々 は コ ン ドル を 尊 敬 の 態 度 で 扱 い,空
向 に む け て コ カ 入 れ 袋 を 振 った り,コ
ン ドル は 山 の ス ピ リ ッ ト(ア
格 で あ る)の
分 の計 略 や企 て は失 敗
使 い,あ
で あ る コ ン ドル は,食
ブapu,ア
に 飛 ん で い る の を 見 か け る と,そ
カ の 葉 を 口 で 吹 い て,一
ウ キauquiな
の方
種 の捧 げ物 とす る。 コ
ど と 呼 ば れ,非
常 に 重要 な神
る い は そ の 直 接 の 体 現 者 と考 え られ て い る 。 世 界 最 大 の 猛 き ん
物 習 性 の 点 で は 腐 肉 食 で,し
た が って 生 きた動 物 を襲 うの はま
れである。
民 話5で
は キ ツ ネ を 天 界 に 連 れ て 行 くの が ハ ゲ タ カ に な って い る が,腐
あ る こ と で は コ ン ドル と性 質 を 同 じ く して い る 。Moroteの
テ キ ス トで はbuitreと
な っ て お り,こ れ は 腐 肉 食 の 鳥 一 般 を さ す 。 筆 者 が ア プ リマ クApurimac県
ル ・ラ チ7)に 関 し て 得 た 資 料 で は,buitreはc6ndorと
れ て い る 。 い ず れ に し て も,キ
の は 明 ら か で,肉
スCotabambas村(ア
6)キ
で コ ン ド
殆 ど 区 別 す る こ と な く用 い ら
ッ ネ と対 立 関係 に お かれ る存 在 が 腐 肉 食性 の鳥 で あ る
食 に 関 し て は キ ツ ネ は 生 肉 食 で あ る。
こ の 腐 肉 食 の コ ン ドル は 良 い 食 事 マ ナ ー の 代 表 で,人
食 べ る有 様 を,コ
肉食 の 鳥 で
々 が集 ま って 静 か に行儀 良 く
ン ドル の よ う に 食 事 を す る と い い 表 す こ と が あ る 。 ま た コ タ バ ンバ
プ リ マ ク県)で
は,12月8日
の 祭 りで,主
催 者 の提 供 す る骨 つ
ッネ の否 定 的価 値 は人 々 の 日常 的態 度 や 民話 の 内容 に 限 られ る もので,呪 術 的 局面 で の価
値 等 は また 別 の 問題 で あ る。た とえ ば キ ッネ の尾 の先 を 所有 して い ると幸 運 に恵 まれ る と い う
考 え は広 く認 め られ る。
7)捕 獲 した コ ン ドル を 牛 の背 中 に結 びつ けて 行 な う闘 牛 の一 種[c£ 友 枝 1978b:62-63]。
246
友枝 中央 アンデ スの民話とアマゾンの神話
き の 肉 料 理 を き れ い に 食 べ る こ と が 要 求 さ れ る が,そ
と 形 容 さ れ て い る[ANoNIMo 1971:200, c£ 友 枝 1978b:66]。
ク ス コ県 チ ュ ン ビ ビル カ スChumbivilcas地
の 増 殖 儀 礼 で も,コ
しで 料 理 し,コ
の 行 為 は コ ン ドル の 口 で 食 べ る
方 で,カ
ー ニバル の 頃行 なわ れ る家 畜
ン ドル の 食 事 行 為 が 表 現 さ れ て い る 。 殺 した 犠 牲 動 物 の 肉 を 塩 な
ン ドル の 大 将 に な っ て い る 呪 術 師 が 目 と 舌 を 食 べ,残
り を コ ン ドル そ
の 他 の 食 肉 鳥 に な っ て い る 参 加 者 が 食 べ る 。 そ の あ と主 催 者 の 義 理 の 息 子(DH)が,
骨 を 一 本 残 らず 集 め,二
本 ず つ 揃 え て 数 え,最
後 に一 本 残 る と良 い しる しだ と され る。
骨 は 儀 礼 を 行 な う場 所 の 近 く に 穴 を 掘 っ て 埋 め る[ROEL 民 話1の
キ ッ ネ が 骨 を か じ る 不 作 法 は,空
1966:32]。
し た が っ て,
腹 あ る い は 食 欲 ゆ え の 過 剰 な 行 為 で あ り,
コ ン ドル に 対 す る 一 種 の冒?と
な る。
民 話1は
の 他 の 話 の 中 で は コ ン ドル は キ ツ ネ を 背 中 に 乗 せ て い
唯 一一の 例 外 だ が,そ
る 。 これ も コ ン ドル の 食 物 習 性 と 関 連 が あ り,生
コ ン ドル の 爪 は,あ
ま り発 達 して お らず,獲
き た 動 物 を め った に 襲 わ な い と い う
物 を 持 ち上 げ た りす る の に 適 し て い な い 。
ア プ リマ ク 県 の 農 民 は コ ン ドル の 足 は ニ ワ ト リの よ う だ と い って い る 。 コ ン ドル と キ
ツ ネ に は 空(鳥)/地(獣),腐
軽 蔑 の 態 度 で 扱 い,行
肉/生
儀 の 良 さ/悪
肉 の 対 比 が あ り,農
民 た ち は そ れ ぞ れ を 尊 敬/
さ の 代 表 と して い る 。
キ ツ ネ の 墜 落 は 侮 辱 した 相 手 の イ ン コ に 仕 返 し と し て ロ ー プ を 切 られ る た め に 生 じ
る 。 イ ン コ は 民 話 の 中 に あ ま り登 場 して い な い の で,そ
の 性 格 が は っ き り しな い が,
トウ モ ロ コ シ畑 を 荒 らす 害 鳥 と して 人 に 嫌 わ れ て い る8)。 こ の 鳥 は 群 れ に な っ て 集 中
的 に 畑 を 襲 う こ とが あ り,ア
ヤク チ ョ県 の 一 部 で は
た ち は 畑 の 所 有 者 に 不 幸 が あ る 前 兆 だ と い う(Pascual こ う しだ こ と が お き る と,農
学 専 攻 生 に よ る教 示1978)。
Castroア
民
ヤ ク チ ョ大 学 人 類
イ ン コ に与 え られ た こ う した 否定 的 価 値 は む し ろ キ ツ
ネ と の 共 通 点 で あ る 。Moroteに
よ れ ば イ ン コ は 民 話 の 中 で は お し ゃべ り,噂
し て 登 場 す る よ う で[MOROTE 1958:30],キ
好 きと
ッ ネ も 好 奇 心 の 強 い 存 在 で あ っ て,こ
の 民 話 的 性 質 の 面 で も一 致 して い る 。
ま た イ ン コ に 対 す る"汚
解 さ れ(cf. P.284),大
ル と違 っ て,む
れ た 尻"と
い う キ ッ ネ の 侮 辱 は,大
き な く ち ば しに 対 す る 侮 辱 は キ ツ ネ の 大 口 に 通 じ る 。 コ ン ド
し ろ イ ン コ と キ ツ ネ は 性 質 を 同 じ く し,天/地
い る の で あ ろ う 。 ペ ル ー 領 中 部 の ワ ロ チ リHuarochiri地
古 い 神 話 の 記 録 に も,コ
8)中
食 を い い 表 して い る と
ン ドル,キ
ッ ネ,イ
で 両 者 の対 比 が され て
方 で 採 られ たi6世
紀末 の
ン コ の 対 照 的 扱 い が 見 られ る の は 興 味 深
央 ア ンデ ス に は 少 く と も三 種 の イ ン コが 棲 息 す る よ う で,Bo1borhynchus a.aurifrons(Psilo-
pisiagon a. aurifrons), Bolborhynchus andicolus(B.・orbygnesius), Aratinga zvagteri frontata[KOEPCKE
1970:74]。
高 地 で 普 通 に 見 か け る の は 二 番 目 の も の ら し く,小 形 で 尾 が 短 い 。
247
国立民族学博物館研究報 告 5巻1号
い9)。 栽 培 植 物 の 起 源 を 扱 った キ ツ ネ 民 話 は,ペ
こ の 話 で は キ ッ ネ の 大 食 が 別 の 形 で 強 調 さ れ,民
ル ー 南 部 の プ ノPuno県
話1-5に
に も あ り,
はな い星 の女 の エ ピソ ー
ドが 加 わ って い る 。
民 話6 キ ッ ネ の 頼 み を 聞 き 入 れ,コ
ン ドル が 天 界 の 祭 に 連 れ て 行 く 。 た らふ く食
べ た あ と も 帰 り た が らな い キ ツ ネ を 残 して,コ
の あ と星 の 女 に 会 い,家
ン ドル は 行 って し ま う 。 キ ツ ネ は そ
に 泊 め て も ら う 。 次 の 日女 が 一 粒 の カ ニ ャ ワ を 煮 る よ う い
い つ け る と,大
食 の キ ッネ は勝 手 に十 粒 を 料 理 す る 。煮 え た カ ニ ャ ワは 量 が増 えて
ふ き こ ぼ れ,キ
ツ ネ は 食 べ き れ ず,家
trag6nと
の 中 に あ ふ れ る。 そ れ を 見 た 星 の 女 は 大 喰 い
非 難 す る 。 悲 観 し た キ ッ ネ はu・・
一 プ を 編 ん で 腰 に巻 き,星
て も ら い,下
の 舌,お
界 へ 降 り る が,途
中 で イ ン コ を 見 か け,ジ
前 を 殺 す と 侮 辱 した の で,仕
れ と キ ッ ネ は 助 け を 求 め る が,誰
沢 山 の カ ニ ャ ワ が 散 り,人
の 女 に手 伝 っ
ャ ガ イ モ の 舌,チ
ュー ニ ョ
返 しに ロー プを 切 られ る。 ふ とん を 広 げ て く
も そ れ を 聞 か ず,岩
の 上 に 墜 落 し,腹
々 は そ れ を 植 え た[RAMIREz が 破 裂 して
1955:235r236]。
厳 密 に い え ば こ の 話 は 果 して プ ノ 県 で 採 ら れ た か ど う か は っ き り し な い し,民
者 の 記 録 で も な い 。 し か し,民
星 の 女 の エ ピ ソ ー ドは,次
話1の
ッ ネの 助 力者 で もあ る
の ヴ ァ ー シ ョ ン を 導 く上 で 重 要 な 意 味 を 有 して い る 。 これ
は 星 の 女 を 妻 に し た 男 の 話 で,"天
ケ チ ュ ア 語 で 採 録 さ れ,彼
パ パ チ ウ チ と 同 じ に,キ
俗学
界 へ 昇 っ た 若 者"と
とArguedasの
題 さ れ て い る 。Liraに
共 訳 に よ って,1949年
さ れ て い る 。 採 録 地 は ク ス コ県 の マ ラ ン ガ ニMarangani地
よ って
に ス ペ イ ン語 で 発 表
方 で あ る。
民 話7 夫 婦 者 が 一 人 息 子 に 畑 の 不 寝 番 を い い つ け た が,若
ま い,ジ
ャ ガ イ モ を 盗 ま れ る 。 次 の 日 も ほ ん の ち ょ っ と眠 っ た す き に 盗 ま れ,三
目 の 番 を して い る と,多
望 ん で 一 人 を 捕 え た が,他
者 は 明 け方 に眠 って し
日
勢 の美 しい女 が ジ ャガ イモ を掘 る の を見 る。 自分 の妻 に と
の 女 は 天 へ 昇 って し ま う 。 両 親 に 秘 密 で 二 人 の 生 活 を 始
め,そ
の あ と 女 の 反 対 を 押 し 切 っ て,若
が,そ
れ で も家 の 外 へ 出 さ ず 他 の 人 に は 秘 密 に して お く。 二 人 の 間 に 生 れ た 子 供 が
死 ん だ あ と,男
者 は 両 親 の 家 へ 連 れ 帰 り,一
緒 に生 活す る
の 留 守 中 に 女 は 天 界 へ 戻 っ て し ま う 。 妻 を 探 し ま わ る 若 者 か ら事 情
を 聞 い た コ ン ドル は 同 情 して,二
9)ク ニ ラヤCun五rayaの
匹 の リ ャ マ を 提 供 す る こ と を 条 件 に,若
者 を天 界
神 は 自分 が生 ませ た娘 を連 れ て逃 げ る女 神 のカ ビヤ カCavillacaを
い,途 中で 出会 う動 物 に女 の居 場所 を 訊 ね,近
追
くにい る と答 え た コ ン ドル に は長 命 と死 ん だ獣
肉 を食 う ことを 認 め,プ ー マ には敬 愛 され悪 人 の飼 う リャマ を 食 う権 利 と大 祭 で 踊 り手 の 頭 に
飾 られ る名誉 を与 え,タ カを 幸 運 の鳥 と し,他 の鳥 を食 う権 利 と頭 飾 りの 名誉 を 与 え る。 一方
遠 くて 追 いつ け な い と答 えた スカ ンク に は 日中 の 出歩 きを 禁 じ,臭 気 を 放 って嫌 わ れ る と し,
キ ッ ネ には憎 しみ を抱 く人 間 に追 わ れ,殺 され皮 をふ みつ け に され ると し,イ ンコ には騒 が し
い 叫 び声 で人 に気 付 か れ お どか され畑 か ら追 わ れ る鳥 とす る[AVILA l966;25-27]。
248
友枝 中央 アンデ スの民話 とアマゾンの神話
へ 連 れ て行 く。一 匹の リャ マを食 べ て しま って か ら,コ ン ドル は若 者 を 乗 せ て 飛 び
立 ち,途 中 で 肉 を要 求 す るた び に,若 者 は も う一 匹 の リャマ の 肉 を切 って 与 え,そ
れ が な くな る と,落 と され るの を 恐 れ て,自 分 の 尻 の 肉 を切 り与 え る10)。一 年 が か
りで 旅 を して天 界 の海 へ 着 き,そ こで水 浴 して コ ン ドル も男 も若返 る。 コ ン ドル は
女 に会 う方 法 を教 え,男 は祭 で 教会 へ 集 ま った女 た ちの う ち,一 番 後 に い るの を捕
え る (星 の 女 は見 た 目に どれ も同 じで 見 分 けが つ か な い)。 女 は若 者 を 家 に案 内 し,
腹 を す か し寒 が って い る男 に,キ ヌ アを少 量渡 して,料 理 を い い つ け る。 空 腹 の男
が勝 手 に量 を 増 や して煮 る と,出 来 上 った キ ヌア は量 が増 え て 家 の 中 に あ ふ れ て し
ま う。 それ を 見 た 女 は 男 の勝 手 な行 為 を 叱 責 し,両 親 に も会 わ せ ず,一 年 後 に は若
者 か ら遠 ざか り,姿 を 見せ な くな る。 悲 しん で い る 男 に会 った コ ン ドル は,二 匹 の
リャマ の提 供 を 条 件 に,男 を地 上 に連 れ 帰 る こ とを承 知す る。 途 中 の 海 で再 び 若返
り,天 界 か ら無 事 に 両 親 の も とへ 帰 った 男 は,す で に年 老 い た二 人 と一緒 に,悲
み の ま ま に再 婚 す る こ と もな く生 涯 を過 した 〔ARGuEDAs 1949:105-114, し
LIRA
l965:127--14011), repr・LARA 1973:311-320]。
天 界 と地 上 界 の 上 下 移 動 を 軸 に展 開 す る民 話6と7は,そ
の構 成 が 全 く同 じで あ る。
両 者 間 に生 じる変 化 は,民 話 の構 成 要 素 間 の関 係 の あ り方 あ る い は機 能 に 関 した もの
で あ る 。 まず 民 話6は 天/地 に お い て地 上 界 を 栽 培 植物(カ
ニ ャワ)前 と して い る の
に 対 し,民 話7は 栽 培 植 物 後 を扱 って い る(夫 婦 は特別 立 派 な ジ ャガイ モ 畑 を 所有 し
て い た とあ る)。 栽 培 植 物 起源 で は,コ
ン ドル はキ ツ ネ と対 立 的関 係 丑
ζお か れ るが,
若 者 に一
は友 好 的 で あ り助力 者 で あ る。
結 果 的 に主 人 公 の キ ツ ネ は墜 落死 す る が,若 者 は無 事 地 上 に生 還 す る。 つ ま り,民
話7は 栽 培 植 物 起 源 の キ ツネ 民話 の構 成 を踏 襲 しな が ら,あ た か も時 代 を 起 源 後 に移
行 させ て しま った よ うで,栽 培 植 物起 源 の テ ー マ に変 え て,若 返 り(永 生 き)を 扱 っ
て い る。 た だ し,現 実 に存 在 す る 栽 培植 物 を起 源 論 的 に説 明 す るの と違 って,現 実 に
存 在 しな い若 返 りは エ ピソ ー ド的 に 扱 わ れ て い る。 コ ン ドル が永 生 きで あ る とか 若 返
りの 秘 密 を 知 って い る とい う考 え 方 は,ア ンデ ス の農 民 の 間 に広 く認 め られ る12)。
10)つ
ま り若 者 の尻 の 肉 は コ ン ドル の食 う死 肉 の一 部 で あ る。 《腐 肉化 す る主 入 公》 は ア マ ゾ ン
の火 の 起源 神 話 の 中 に もあ り,こ の一 致 は興 味 深 い 。
11)Liraの 採 録 したケ チ ュア語 民 話 の い くつ か が, Arguedasと
の 共 訳 で1949に 発 表 され,後
に
ケ チ ュア語 の テ キス トと一 緒 に学 術研 究 誌 のFolklore Americanoに
発 表 され た。
12)コ ン ドル は老 い る こと もな い し自然 に死 ぬ こ と もな い。 自分 の老 いを 知 り,く ちば しが 摩 粍
し,脚 にふ るえを お ぽ え,羽 毛 の輝 きを 失 い,目 が お と ろ え る と,サ ル カ ンタ イ山 の近 くの ワ
イ ナ コチ ャ湖 に行 って,水 浴 を して若 返 る。 コ ン ドル が 自分 の 命 を絶 つ とき は,高 い所 か ら落
下 して 自殺 す る[PAcHEco 1967:185-186]。
249
国立民族 学博物 館研究報告 5巻1号
上述 の 同一 構 成 の二 つ の民 話 間 に生 じた メ ッセ ー ジの 変形(栽 培 植 物起 源 →若 返 り)
と全 く同 じ現 象 が,熱 帯低 地 ア マ ゾ ンの神 話 に も指 摘 で きる こ とは,注 目を 要 す る。
中 央 ア ンデ ス に接 す る ペル ー領 東 部 熱 帯 低 地(い わ ゆ る モ ン タ ーニ ャmontafia地
の,マ チゲ ンガMachiguenga族
と ピー ロPiro族
帯)
の神 話 間 に生 じて い るの が そ れで,
両 部族 は と もに ア ラ ワ ク語 系 で,隣 接 し合 った 地 域 に 居住 して い る。
マ チ ゲ ンガ族 の栽 培 植物 の起 源 神 話 の要 約 は ほぼ 次 の 通 りで あ る:昔 人 間 が 土 だ け
を 食 べ て い た時 代,天 界 か ら人間 の姿 で降 りて 来 た月 が,あ る娘 と結 婚 し,人 間 界 に
マ ニ オ ック や他 の栽 培 植物 と料理 の仕 方 を 教 え る。 その 後 出 産 が原 因で 女 が死 に(以
前 に 生 れ た子 供 た ちが 太 陽 や星 にな る),娘
を死 なせ た と怒 る 義 母 は月 に 女 の死 体 を
食 べ るよ うに 強 い,月 はや む な く実行 す る。 天 界 へ 戻 った 月 は そ れ以 来 食 人 者 と な っ
て,人 間 が死 ぬ と,そ の魂 を 捕 え,料 理 して食 べ る[PEREIRA I942:240-244]。
一 方 永 遠 の生 命 を扱 う ピー ロ族 の神 話 の要 約 は次 の 通 りで あ る:突 然 死 んで しま っ
た ピー ロ の若 者 が,月 と と もに 天界 か らや って 来 て,生 前 の婚 約 者 との結 婚 の祭 が催
され る 。月 は そ の席 で天 界 か ら持 参 した若 返 りの マサ トmasato酒(マ
ニ オ ック の発
酵 酒)を 提 供 す る が,見 か けが 異 様 だ った ので 人 々 に拒 絶 され る 。 夜 明 け に月 と若 者
は天 界 に戻 って しま い,一 年 後 に若 者 が妻 と母 親(テ キ ス トか ら月 の酒 を飲 んだ と判
断 で きる)を 天 界 に連 れ 去 り,そ こか らは誰 も戻 って 来 な い[ALvAREz l960:76-
79]。
ピー ロ族 は何 故 人 間 は若 返 りを手 に 入 れ そ こな った か とい う観 点で テ ー マ を扱 うが,
それ は栽 培植 物以 後 の 出来 事 で あ る(神 話 に 畑 や人 間 の作 る マ サ ト酒 がで て くる)。
また 民話7の 主 人 公 と 同 じ に,月 の マサ トを飲 んだ 娘 と母 親 は永 遠 の生 命 を得 て,別
の 世 界 に住 ん で い る か ら,獲 得 した 若 返 りが や は りエ ピソー ド的 に も扱 わ れて い る こ
と にな る。
マチ ゲ ンガ族 の栽 培 植 物 起 源 の テ ー マは,ピ ー ロ神 話 の 若 返 りの テ ー マ に移 行 す る
が,両 神 話 の 基 本構 成 は 同 じで あ る。 ま た,天/地
ル な神 話 構 成 は,民
話6-7に
の上 下 軸 を移 動 す る コス モ ロ ジカ
も共 通 す る。 す な わ ち,ア
ンデ ス 高地 農 民 の栽 培 植 物
起 源 の 民 話 と,熱 帯 低地 モ ンタ ー ニ ャの マチ ゲ ンガ族 の 栽 培 植 物 起 源 の 神話 は,話 の
基 本 形 式 が 同 じで あ る。 そ れ だ け に と ど ま らず,そ
の変 形 と して 若 返 りの テ ー マを 有
す る話 を,そ れ ぞ れ が導 い て い る点 まで,一 つ の セ ッ トにな って一 致 して い る13)。
目下 の と こ ろ,数 多 い キ ッ ネ民 話 の 中 で,栽 培 植 物 の 起 源 を 扱 った の は,上 記 の 六
13)Pereira, Alvarez採
録 に よ る神 話 の 詳 し い 内 容,お
の 分 析 結 果 に つ い て は 友 枝[1976:159-184]参
250
照 。
よ び そ れ を 含 む モ ン タ ー ニ ャ諸 族 の 神 話
友枝 中央 アンデスの民話 とアマゾ ンの神話
例 に 限 ら れ る 。 以 下 に あ げ る の は,テ
ー シ ョ ン で,そ
れ,厳
ー マ が 無 数 の キ ツ ネ の 発 生 に 変 形 して い る ヴ ァ
の 一 つ は 言 語 学 者 のFar飴nに
よ りク ス コ地 方 で ケ チ ュア語 で 採 録 さ
密 に ス ペ イ ン語 と 英 語 に 訳 さ れ て い る 。
民 話8 キ ッ ネ が コ ン ドル に 会 い,天
界 の 祭 に 連 れ て 行 く よ う頼 み,コ
中 に 乗 せ て 運 ぶ 。 小 人 た ち14》 が 祭 を 催 して い て,主
催 者 は 肉 入 りの ス ー プ を ひ っ
き り な し に 提 供 す る 。 祭 が 済 ん で コ ン ドル が 帰 りを 誘 っ て も,も
ネ は 拒 絶 し,主
ン ドル は 背
っ と食 べ た い キ ッ
催 者 も い な く な っ て 一 入 取 り残 さ れ る 。 そ の あ と キ ツ ネ は 星 の 女 に
会 い 宿 泊 を 許 さ れ る 。 あ る 日 星 の 女 に一 粒 の カ ニ ャ ワ を 料 理 す る よ う い い つ か った
キ ッ ネ は,量
が 少 な い と思 っ た の で,勝
ニ ャ ワ は あ ふ れ だ し,キ
手 に十 粒 を 取 り 出 して 料 理 す る 。 煮 え た カ
ッ ネ が い く ら食 べ て も 減 らず,そ
た ち の カ ニ ャ ワ を 食 い つ ぶ す 大 食 と い っ て,キ
ロ ー プ を 編 み,女
に 手 伝 っ て も ら い,そ
コ を い わ れ な し に,ジ
れ を 見 た 星 の 女 は,自
ッ ネ を 非 難 す る 。 悲 観 した キ ッ ネ は
れ を 伝 っ て 降 り る が,途
ャ ガ イ モ の 舌,チ
ュ ー ニ ョの 舌,お
中で 見 か け た イ ン
前 を 殺 す と 侮 辱 し,イ
コ に ロ ー プ を 切 られ る 。 墜 落 す る キ ッ ネ は 助 け を 求 め た が,誰
突 し て 破 裂 し,そ
分
も 聞 か ず,地
の 腹 か ら何 千 何 百 と い う キ ツ ネ が 生 れ た[FARFAN ン
面 に衝
1943:119-
122]。
Farfan採
録 の 話 は 星 の 女 の エ ピ ソ ー ドを 含 み,プ ノ 県 の 民 話6と
全 く 同 じで,結
末
の 起 源 物 が 植 物 の カ ニ ャ ワ か ら無 数 の キ ツ ネ に 変 わ っ て い る 。 大 食 の キ ツ ネ が 食 べ た
神 秘 的 カ ニ ャ ワ が 地 上 に 散 っ て,現
一
かで
実 の カ ニ ャ ワ に な る か,現
,一粒 の 小 さ い 穀 物 の 力 三 ヤ ワ や キ ヌ ア は,し
i殖儀 礼 で も用 い られ て い る[友
実 の害 獣 の起 源 と な る 一
ば しば 無 数 性 の シ ン ボ ル と し て,増
枝 1978a:36-37]。
無 数 の キ ツ ネ の 発 生 はMorote
も同 じ クス コ地 方 で 採 録 して い る。
民 話9 コ ン ドル が キ ッ ネ を 背 中 に 乗 せ て 一 緒 に 天 界 の ミサ を 聞 き に 行 く。 キ ッ ネ
が 悪 さ を し た の で,コ
ン ドル に 置 き 去 り に さ れ る 。 キ ッ ネ は ロ ー プ を 自 分 で 編 み,
そ れ を 伝 っ て 降 り る 途 中 で,通
り か か っ た イ ン コ を 鼻 曲 り と 侮 辱 し,ロ
ー プ を切 る
な と 警 告 し て 噛 み 切 られ て し ま う 。 墜 落 す る キ ッ ネ は 毛 布 を 広 げ て くれ と 助 け を 求
め た が,ネ
ズ ミが 尖 っ た 石 こ ろ を 置 い た の で,衝
破 片 か ら沢 山 の キ ツ ネ が 増 え た[MOROTE Moroteは
14)ケ チ ュア語 テ キ ス トでrunachakunaと
Farfanの 訳 はenanitos(小
つ の 谷 に 散 った
1958:6-7]。
こ の 話 を ケ チ ュ ア 語 で 記 録 し,十
ー シ ョ ン と の 比 較 を 行 っ て い る 。 民 話8の
突 し て くだ け,七
一 の モ チ ー フ に 分 け た 上 で,他
のヴ ァ
場 合 は天 界 の カニ ャ ワの粒 が無 数 の キ ツネ
あ り, runa =人 間, cha一 縮 小辞, kuna・=複 数 で
人 た ち)。
251
国立民族学博物館研究報 告 5巻1号
を 生 ん で い る よ う だ が,天
界 で 食 事 を し て い な い この 話 で は,キ
ッ ネ の破 片 が キツ ネ
に な って い る 。 キ ッ ネ の 天 界 へ の 旅 は ミサ を 聞 き に 行 くた め で,食
物 の 動 機 は な い が,
そ の 不 作 法 な 振 舞iいは 依 然 と して 同 じ で あ る 。
民 話10 11ero"に
コ ン ドル が キ ッ ネ を 天 界 に 連 れ て 行 く。 コ ン ドル は 天 界 で は"紳
な っ て,白
い え り巻 き を し黒 服 を 着 て い る 。 キ ツ ネ は た ら ふ く食 べ,料
場 へ 入 っ て 肉 を 盗 み,テ
ル を ひ っ く り 返 し,コ
る の を 拒 絶 し,コ
編 み,地
ー ブ ル の 下 に も ぐ っ て 骨 を 探 し,天
界 の 犬 と 争 い,テ
ン ドル を 嚇 か す 。 置 き 去 り に され て か ら,三
中 で イ ン コ を 侮 辱 し て,最
て い る と 感 違 い す る が,途
民 話11天
返 し,小
中 で 気 付 い て 毛 布,わ
カ月 か け て ロー プを
ら,ふ
の 上 に 衝 突 し,破
ツ ネ は 不 作 法 に 振 舞 い,宴
の ロ 一
一プ が イ ン コ に 切 られ た[MOROTE 記 述 を 省 略 し て い る の で,こ
し た 表[MOROTE l 958:18]か
こ と は わ か る 。 民 話1-6の
較 して み る と,起
られ な い 。 民 話8は
l958:9]。
かの 助 けを か りて ロー
l958:8]。
の 話 の 細 部 は 不 明 だ が,モ
ら判 断 して,少
チ ー フの 比較 を
く と も無 数 の キ ツ ネ の 発 生 だ と い う
栽 培 植 物 起 源 を 扱 う グ ル ー プ と 民 話8-11の
源 物 以 外 に は,そ
片 が大 きい
会 の テー ブ ル を ひ っ く り
さ い コ ン ドル と 肉 片 を 争 う 。 見 捨 て られ て か ら,誰
Moroteが
ー プを 伝
と ん を 広 げ て く れ と助 け を
や 雌 や の 沢 山 の キ ツ ネ に な っ た[MOROTE 界 で 宴 会 が あ り,キ
プ を 編 み,そ
ーブ
後 に ロ ー プ を 切 られ る 。 は じ め は 早 く降 り
れ を 聞 い た ネ ズ ミが 固 い 棘 を 置 い た の で,そ
の や 小 さ い の や,雄
理
ン ドル の え り巻 き を ワ イ ンで 汚 して しま う 。 酔 っ て 地 上 へ 帰
上 へ と ど くか ど う か を 先 端 に 取 り つ け た 空 缶 の 音 で 確 か め て,ロ
って 降 り,途
求 め,そ
士caba-
の 構 成,内
グル ー プ を比
容 に 明 ら か な 違 い と い った もの は 認 め
天 界 の カ ニ ャ ワ が キ ッ ネ に 変 じ て い る か ら,栽
培 植 物 起 源 とキ ツ
ネ 起 源 の 中 間 に 位 置 して い る とい え る 。
民 話10は
コ ン ドル を 紳 士 と 表 現 し て お り,不
行 儀 の 良 さ が,民
て,民
話8は
作 法 な キ ツ ネ に 対 置 さ れ る コ ン ドル の
話 の 表 現 内 容 か ら直 接 に 確 認 で き る で あ ろ う。 キ ッ ネ の 発 生 に 関 し
カ ニ ャ ワか ら生 れ た 無 数 の キ ツ ネ,民
の キ ッ ネ,民
話10は 大 小,雌
あ って も,分
類 の 仕 方 が 異 な って い る 。Moroteが
ち,結
話9は
七 つ の 谷 に 分 け られ た 無 数
雄 に 分 け られ た 無 数 の キ ッ ネ で,同
末 に つ い て 数 の 上 で 一 番 多 い の は,単
じ く無 数 の キ ッ ネ で
集 めた クス コの ヴ ァー シ ョンの う
に キ ツ ネ の 死 に 終 る も の で,他
を 含 め る と こ の 数 は も っ と 多 く な る 。 資 料 の 上 か ら は,何
地 域 の話
らか の 起 源 を 扱 う ヴ ァー シ
ョ ン は 中 央 ア ンデ ス 南 部 に 限 ら れ る 。
民 話12 キ ッ ネ が コ ン ドル に 招 待 さ れ て 天 界 へ 行 き,コ
変 え る 。 動 物 の キ ツ ネ は テ ー ブ ル に つ け ず,調
252
ン ドル は 立 派 な 紳 士 に 姿 を
理 場 を 駈 け ま わ り,骨
か じ りを し,
友枝 中央 アンデスの民話とアマゾンの神話
棒 で 叩 か れ て 逃 げ て い る 間 に,コ
訊 ね,イ
ン ドル に 取 り残 さ れ る 。 キ ツ ネ は イ ン コ に 出 口 を
ン コ は ロ ー プ を 編 む こ と を 教 え,下
界 へ 降 りる キ ツ ネ の ロ ープ を支 え て 助
け る 。 途 中 イ ン コ に 会 っ た キ ツ ネ は 鼻 曲 り と 侮 辱 し,ロ
ー プ を 切 られ て 墜 落 す る 。
助 け を 求 め ら れ た 精 霊 は キ ッ ネ の い う通 り羽 根 を 広 げ た が,キ
ち た[MoRoTE 1958:10ユ
ッ ネ は別 の 方 角 に落
。
行 儀 の 良 い 紳 士 の コ ン ドル に 対 す る 動 物 の キ ッ ネ の 食 物 を め ぐ る 不 作 法 が 顕 著 で あ
る が,結
末 は キ ッ ネ の 死 だ け で あ る 。 民 話1-6か
ら 判 断 し て,こ
の キ ツ ネ は栽 培 植
物 を もた らす 条 件 を 充 分 に 備 え て い る 。 精 霊 の 助 け は こ れ ま で に な い 新 しい 要 素 だ が,
カ ト リ ッ ク 要 素 は以 下 の い くつ か に も 見 られ る し,す
で に 民 話9の
キ ッネの 動 機 は天
コ ン ドル は 天 界 で 悪 さ を せ ぬ よ う 忠 告 し て お い た が,酔
った キ ツネ は約 束
界 の ミサ を 聞 き に 行 く こ と で あ っ た 。
民 話13 を 守 らず,怒
っ た コ ン ドル は 眠 っ て い る キ ツ ネ を 置 き 去 り に す る 。 イ ン コ に 会 っ
て 侮 辱 す る 。 墜 落 し な が らわ らを 広 げ て くれ と叫 ぶ が,地
[MOROTE 民 話14 面 に衝 突 して 破裂 し た
1958:10]。
ハ トの 結 婚 式 が 天 界 で あ り,他
の 鳥 た ち が 祭 を し,そ
か に 自 分 の 体 を コ ン ドル の 脚 に 縛 り つ け,天
寝 て し ま い,取
界 へ 行 く。 ワ イ ン を 沢 山 飲 ん で 酔 っ て
り残 さ れ た 蛙 は チ フ ワchijwaの
結 ん で 伝 っ て 降 り て 来 る が,途
繊 維 でu一
プ を 編 み,一
端を木 に
中 で イ ン コ を トウ モ ロ コ シ 泥 棒 と の の し り,ロ
を 切 られ て 墜 落 し た[MoRoTE ープ
1958:10]。
チ フ ワ と い う 植 物 が 何 で あ る か は っ き り し な い が,テ
語 農 民 が チ ジ ワchilliwaと
れ を 知 った 蛙 が ひ そ
ィ テ ィ カカ 湖 周 辺 の ア イ マ ラ
呼 ん で い る植 物 と同 じか も知れ ない 。 これ は高 原 に生 育
す る禾 本 科 の 茎 の 細 い 草 で,丈
が30セ
ン チ 位 あ り,ト
ト ラ舟 を 作 る と き な ど の 丈 夫 な
ロ ー プ を 編 む の に 利 用 して い る(山 本 紀 夫 国 立 民 族 学 博 物 館 助 手 に よ る 教 示1979)。
民 話14の 主 人 公 は キ ツ ネ で は な く,カ
エ ル で,目
下 の と こ ろ 中 央 ア ンデ ス の キ ツ ネ 民
話 の 唯 一 の 例 外 で あ る 。 話 の 構 成 に は 殆 ど 変 化 が な い と い え る が,先
ドル と キ ツ ネ の 対 立 性 に つ い て は,民
に指 摘 した コ ン
話14に は そ の 要 素 が な い 。 カ エ ル は コ ン ドル に
そ れ と 知 られ ず に 天 界 へ 自 分 を 運 ば せ て い る 。
民 話15 キ ッ ネ と コ ン ドル が い て,キ
か ら天 界 へ 連 れ て 行 く よ う頼 み,コ
ツ ネ が ひ な を 喰 わ な い よ う に,キ
ッ ネ が ワ シ6guilaに
召 使 い と して で も い い
ン ドル の 脚 に つ か ま って 行 く。 他 の 鳥 た ち は キ
ッ ネ の ロ を 縫 い つ け る よ う に い う が,キ
ツ ネ は忠
告 を 忘 れ て ワ シ の ひ な を 喰 っ て し ま う 。 ワ シ は キ ッ ネ を 喰 う こ と に す る[MOROTE
1958:8]。
253
国立民族学博物館研 究報告 5巻1号
採 録 者 が 指 摘 す る よ う に,こ
の 話 の 中 で は コ ン ドル と ワ シ が 混 同 して 使 わ れ て い る 。
先 に コ ン ドル が ハ ゲ タ カ に 変 わ っ て い る 話(民
話15で
は 栽 培 植 物 起 源 へ の 言 及 は お ろ か,話
話5)を
あ げ た が,そ
れ と違 っ て,民
の 構 成 自 体 が くず れ て お り,Moroteが
十 一 に 分 け た モ チ ー フ の う ち 四 つ し か 含 ん で い な い 。 コ ン ドル と ワ シ の 食 物 習 性 の 違
い を 無 視 した 混 同 は,民
話 の 構 成 自 体 を 弱 化 して い る 。 カ エ ル が 主 人 公 に な っ た 場 合
と あわ せ て 考 慮 され る べ き点 で あ ろ う。
民 話16 コ ン ドル が ハ ゲ タ カ と の 争 い に 勝 ち,コ
コ ン ドル に 連 れ て 行 って も ら っ た キ ッ ネ は,行
ず,不
作 法 に 振 舞 い,そ
ン ドル の 友 人 が 天 界 で 祝 宴 を 開 く。
儀 良 くす る と 約 束 し た に も か か わ ら
れ を 恥 じ た コ ン ドル は キ ッ ネ を 置 き 去 り に す る 。 ロ ー プ を
切 断 す る の は イ ン コ で,コ
ン ドル が キ ッ ネ の 死 体 を 川 に 投 げ 捨 て,そ
ラ ス び ん の 上 に 落 ち た の で,死
体 が 切 れ ぎ れ に な っ た[MOROTE 民 話12以 後 こ こ で 扱 っ て い る キ ツ ネ 民 話 の 結 末 は,主
の 破 片 化 の 特 別 な 強 調 は,地
と い う点 に も見 られ る(民
結 果 と し て,キ
1958:8]。
人 公 の 単 な る 墜 落 死 で,民
16も そ の 一 つ で あ る 。 た だ 単 な る 墜 落 死 と若 干 違 って い る の は,死
ドル が 死 体 を 川 に 投 げ 捨 て る)の
れ が割 れ た ガ
話
体 の 再 処 理(コ
ン
ツネ の死 体 が 破 片 化 して い る。 死 体
上 界 で わ ざ と 仕 掛 け た 固 い 物 や 尖 った 物 の 上 に 落 下 す る
話2-3,5,9-10)。
ま た 全 体 的 に い って,表
て 主 人 公 の 衝 突 と 破 裂 が 強 調 さ れ る 傾 向 に あ り,た
現 内容 と し
と え ば 柔 らか い 物 の 上 に 落 ち る の
を 期 待 す る が 実 現 しな い 。 あ る い は 破 裂reventar,こ
な ご な に な るdespedazarと
い
っ た 表 現 が 用 い られ て い る 。 栽 培 植 物 が そ う し た 過 程 と して 発 生 す る と い う こ と は,
注 目 し て お か ね ば な らな い 。 民 話16の 死 体 再 処 理 と破 片 化 は 単 純 死 を 扱 う話 と無 数 の
キ ッ ネ の 発 生 を 扱 う話(民
民 話17 話8-11)の
中 間 に 位 置 して い る 。
コ ン ドル が キ ツ ネ を 天 上 の 祭 に 招 待 し,キ
ツ ネ は 角 笛 と太 鼓 を 持 っ て,コ
ン ドル の 背 に ま た が って 行 く。 コ ン ドル は 宴 席 に 着 くが,キ
テ ー ブ ル の 下 に 這 い 込 ん で 不 作 法 を 働 き,怒
ツ ネ の た め の 席 は な く,
った コ ン ドル に 置 き去 り に さ れ ジ 編 ん
だ ロ ー プ を 伝 って 降 り る 途 中 で イ ン コ を 侮 辱 し,地
面 に 落 下 し破 裂 し た[MOROTE
l958:8-9]。
こ の 話 に あ る 楽 士 と して の キ ッ ネ の 参 加 は,他
Lima県
ヤ ウ ヨYauyo地
民 話18数
の 地 域 の 民 話 に も あ り,次
羽 の コ ン ドル が 種 々 の 楽 器 の 演 奏 者 と し て 祭 に 行 く と知 った キ ツ ネ は,
一 番 後 ろ の コ ン ドル に,リ
り の 祭 が 一 週 間 続 き,帰
ャ マ 肉 の 提 供 を 申 し 出 て 連 れ て 行 っ て も ら う。 宴 会,踊
りた が らな い キ ツ ネ を 無 理 や り 乗 せ て,コ
帰 る 。 酔 っ た キ ツ ネ は コ ン ドル が 旋 回 し た と き に 振 り落 さ れ,大
254
の は リマ
方 の もので あ る。
ン ドル は 地 上 へ
声 で 助 けを 求 めて
友 枝 中央 ア ンデ ス の 民話 とア マ ゾ ンの神 話
も 聞 か れ ず,岩
の 上 に 落 ち て くだ け 散 っ た[VARILLAs 1965:52--54]。
キ ツ ネ の 単 純 な 破 裂 死 に 終 っ て い る こ の 話 の 中 で は,コ
ン ドル と キ ッ ネ の 対 立 関 係
が 弱 め られ て い る 。 こ の 点 で は む し ろ両 者 の 関 係 は 民 話7の
近 く,要
コ ン・
ドル と若 者 の 関 係 に
素 的 に も リ ャ マ 肉 の 提 供 は 共 通 し て い る 。 キ ッ ネ は コ ン ドル の 背 に 乗 って 生
還 しか け,酔
っ て い た た め に 振 り 落 と さ れ る 。 民 話 は キ ツ ネ の 死 を 意 図 さ れ た もの と
して 扱 わ ず,ロ
ー プ 切 断 の モ チ ー フ を 欠 い て い る 。 コ ン ドル は 笛 の 演 奏 者 で あ る が,
実 際 に も コ ン ドル の 骨 で 作 っ た 笛 が ア ン デ ス の 一 部 で は 使 用 さ れ て お り,特
と して 扱 わ れ る 。 た だ し現 実 の コ ン ドル は 鳴 き 袋 が な い の で,鳴
ロ コ シ 畑 で や か ま し く さ え ず っ て 作 物 を 荒 らす イ ン コ と,人
か に 喰 う コ ン ドル を,ア
別 な楽 器
鳥 で は な い 。 トウ モ
里 離 れ た高 原 で 腐 肉を 静
ンデ スの 農 民 は対 照 的 に見 て い る よ うで あ る。 キ ツ ネの 墜 落
死 に 終 る 話 は 他 に も 数 多 く採 録 さ れ て い る 。
民 話19天
上 の 栄 光 に つ い て 知 り た が る キ ッ ネ を コ ン ドル が 連 れ て 行 く が,天
残 して 帰 っ て し ま う。 ロ ー プ を 編 ん で,伝
ー プ を 切 らぬ よ う警 告 し,口
[MOROTE っ て 降 り る 途 中 で コ ン ドル に 会 い,ロ
だ しに 怒 っ た コ ン ドル に 切 られ,ベ
る よ う に と 叫 び な が ら墜 落 し,鼻
の 先 か ら突 っ込 ん で,脳
民 話20天
ッ ド の上 に落 ち
と腹 が 破 裂 して 死 ん だ
1958:7]。
こ れ は ア ヤ ク チ ョ 県 の ヴ ァー シ ョ ン で あ る が,同
て お り,キ
界 に
じ地 方 でBustamanteも
採録 し
ツネ の天 上 へ の旅 の 動 機 は や は りカ トリ ック的 で あ る 。
界 で 日 曜 の ミサ が あ り,地
上 で 食 事 を と も に し て 友 達 に な っ た キツ ネ が,
肉 の 提 供 を 条 件 に コ ンードル に 連 れ て一
行 って も ら う。 ミサ の あ と キ ツ ネ は 自 分 が サ ン
・ペ ドロ か ら 昼 食 に 招 待 さ れ た と い い,空
腹 に な った コ ン ドル は 辛 抱 し き れ ず に 帰
っ て し ま う 。 残 さ れ た キ ツ ネ は サ ン ・ペ ド ロが 提 供 した ロ ー プ を 伝 って 降 り る 途 中
で イ ン コ を 侮 辱 し,ロ
ー プ を 切 ら れ て,地
上 へ み じ め に も 衝 突 し た[BUSTAMANTE
1943: 171]。
栽 培 植 物 起 源 を 扱 う話 で は キ ッ ネ の 大 食 も し く は 空 腹 が 強 調 さ れ る が,こ
空 腹 な 状 態 に あ る の は む し ろ コ ン ドル で あ る(サ
は っ き り し な い)。
の話で は
ン ・ペ ド ロ の 食 事 が 本 当 か ど う か は
こ う した 部 分 の 変 換 が 生 じ る と,民
話 の起 源 神話 的性 格 が 失 な わ
れ て し ま う よ う で あ る 。 次 の プ ノ県 の 民 話 も主 人 公 の 墜 落 死 に 終 る も の だ が,こ
は 民 話1と
民 話21地
反 対 に,キ
こで
ツ ネ は 骨 を か じ る こ とで 満 足 す る よ う要 求 さ れ て い る 。
上 生 活 に 飽 き た キ ツ ネ が,し
もべ と して 仕 え る か ら と い っ て コ ン ドル に
天 界 へ 連 れ て 行 く よ う頼 む 。 コ ン ドル は キ ツ ネ に 骨 や パ ン くず や 肉 の 残 り で 満 足 す
る よ う 条 件 を だ し,宴
席 で 約 束 を 守 ら さ れ て い る キ ツ ネ は 不 満 で,地
上の生活をな
255
国立民族学博物館研究報告 5巻1号
つ か し む15)。 キ ッ ネ の 悪 さ に 怒 っ た コ ン ドル に 置 き 去 り に さ れ,自 分 で 編 ん だ ロ ー
プ を 伝 い,神
に 愛 さ れ る 子 よ 敷 布 を 広 げ よ と 叫 ん で 降 り,途
と思 って い る の か と イ ン コ を 侮 辱 し,ロ
し ま っ た[B肌TRAN ー プ を 切 られ,ア
中 で お前 だ け が飛 べ る
ンデ ス に 衝 突 し て 死 ん で
l 94・1:120-121]。
話 の 中 に・
カ ト リ ッ ク 要 素 が あ る 例 は す で に い くつ か あ っ た(民
こ の 話 で は そ の 要 素 は キ ッ ネ の 叫 び の 中 に あ り,次
話9,12,19-20)。
の ボ リ ビ ア の 例 や 民 話29(後
出)
と 同 じで あ る 。 い ず れ に して も カ ト リ ッ ク 要 素 を 含 む 民 話 は 栽 培 植 物 の 起 源 を テ ー マ
と して い な い。
民 話22 コ ン ドル が 美 し い 娘 の 参 加 す る天 界 の 祭 が あ る と教 え,キ
って も ら うが,帰
ツネ は連 れて 行
り た が ら な い キ ツ ネ を 残 し て コ ン ドル は 去 る 。 地 上 へ と ど く長 さ
を は か り な が ら16)編 ん だ ロ ー プ を 伝 っ て 降 り る 途 中,お し ゃ べ り に 夢 中 の イ ン コ に
無 視 さ れ た キ ツ ネ は,侮
切 られ,落
辱 を 感 じ,く
ちば しに つ いて の の しる。 ロー プ を イ ンコ に
下 す る キ ツ ネ は 農 夫 を 見 て,毛
布 を 広 げ よ,キ
リス トの 降 臨 だ と叫 ぶ が,
キ ツ ネ と 知 っ た 人 々 に 無 視 さ れ,岩 に 衝 突 し て 破 裂 して し ま っ た[PAREDES 1973:
60-61]。
こ の 話 で は キ ッ ネ の 動 機 は 食 物 よ り も む し ろ美 し い 娘 に あ る ま う で,キ
と 好 色 は 無 関 係 で は な い 。 ア ンデ ス の キ ッ ネ 民 話 に は,キ
ッ ネが 好 色 の ゆ え に捕 え た
獲 物 に 騙 され 取 り逃 が す 話 が あ る 。 ペ ル ー 領 フ ニ ンJunin県
方 で は 楽 士 と して の キ ッ ネ が 登 場 し,殆
ツネ の大 食
ワ ン カ ヨHuancayo地
ど 地 上 に 生 還 し か け る が,結
局農 夫 に棒 で 叩
か れ て死 ぬ。
民 話23 て,ト
コ ン ドル が キ ッ ネ を 祭 に 誘 い,背
ゥ キ ト鳥 の 結 婚 の 祭 が あ り,ワ
に乗せ て運 ぶ 。 天 上 で全 て の 鳥 が集 ま っ
イ チ ャ オ 鳥 は 笛,ガ
ビ オ タ は 太 鼓 を 奏 し,ハ
ゲ タ カ は 床 を 掃 除 す る 。 四 つ 足 の キ ッ ネ は 皆 の 注 目 を 集 め,一
く。 皆 が 帰 った あ と 寝 込 ん だ キ ッ ネ に コ ン ドル は 怒 り,置
本 足 で 踊 り太 鼓 を 叩
き去 り にす る 。 マゲ イ の
繊 維 で ロ ー プ を 編 み,キ
シ ュ ワ ル の 木 に 結 ん で 伝 い 降 り,途
中 で ガ ビ ラ ンに ロ ー プ
を か じ る な と 警 告 し,反
対 に 切 ら れ る 。 最 初 は 早 く 降 りて い る と 感 違 い す る が,気
付 い て マ ン トを 広 げ よ と 叫 び,農
夫 が マ ン トや ポ ン チ ョで 受 け 止 め た が,ク
み 畑 を 荒 らす キ ツ ネ と わ か り,皆
で 叩 き 殺 し た[JIMENEz 記 録 の う ち で 最 も 古 く,1900年
1940:7-8]。
前 後 に ワ ン カ ヨ に 隣…
接 す る タ ル マTarma地
イ を盗
..
方で
15)こ の キ ツ ネは,民 話1と は む しろ反対 に,骨 を か じる こと(骨 や パ ン くず や 肉 の残 り)で満 足
す るよ うコ ン ドル に要 求 され て い る。 ただ し,キ ッネ は そ の要 求 に不 満 で あ るか ら,条 件(約
束)を め ぐる対 立 は同 じで あ る。
16)地 上 に と ど く長 さの は か り方 は,民 話10と 全 く同 じで,空 缶 の 音 でた しか め る。
256
友 枝 中央 ア ン デ ス の民 話 と アマ ゾ ンの 神 話
Vienrichに
よ り採 録 さ れ た,二
つ の ヴ ァ ー シ ョ ン も キ ツ ネ の 単 純 死 で 終 って い る 。
古 い 話 で も起 源 に 何 ら言 及 し て い な い も の が あ る こ と は,キ
ョ ンが,栽
ツ ネの 単純 死 の ヴ ァー シ
培 植 物 起 源 民 話 か ら発 生 の モ チ ー フ が 脱 落 し た の だ,と
単 純 に歴 史 的 に 解
す る わ け に い か な い こ と を 示 して い る 。
民 話24 キ ツ ネ は 天 界 あ 祭 が あ る と 知 り,チ
ャ ラ ンゴ を演 奏 す る よ う招 待 され た と
い っ て,リ
ン ドル に 連 れ て 行 って も ら う 。 天 界 の
ャ マ ニ 頭 の 支 払 い を 条 件 に し,コ
門 番 は キ ツ ネ の 到 着 に 驚 くが,秀
れ た 楽 士 だ と い って 入 れ て も ら い,立
派 にワイラ
シ ュ を 演 じ て 皆 を 喜 ば せ る 。 コ ン ドル が 帰 りを 誘 っ て も 拒 ん だ の で 取 り残 さ れ,自
分 で ロ ー プ を 編 み,一
ロ 鳥 を 侮 辱 し,ロ
れ を 聞 か ず,地
EsplNozA 方 を 門 扉 の か ん ぬ き に 結 び つ け 伝 っ て 降 り る 途 中,セ
ー プ を 切 られ て,わ
-408,HoussE ら や マ ン トを 広 げ て くれ と頼 む が,誰
上 に 落 ち て ば ら ば ら に な っ た[VIENRIcH 1967:278-282, c£ MoRoTE そ れ を 伝 って 天 界 へ 昇 り,途
に ロ ー プ を 切 られ,助
METREAux repr・
1935:407
ン ドル に ロ ー プ を た ら して く れ る よ う頼 み,
中 で イ ン コ に か らか わ れ,怒
け を 求 め た が 聞 か れ ず,地
62--65,cf. METREAux カ ヨ,タ
1958:13-14, l906:3241, もそ
1946:394-395]。
民 話25 キ ツ ネ が 月 を 知 り た が り,コ
民 話24の
ル ニカ
l 935:408-409, キ ツ ネ は 楽 士 で,民
ル マ で あ る の は,ペ
話17-18,23と
っ て 嚇 し た の で,仕
面 に 衝 突 し た[VIENRIcH MoRoTE 1906:
1958:14]。
共 通 す る 要 素 で,採
録 地 が リマ,ワ
ン
ル ー 領 中 部 に 限 られ た 要 素 と い う こ と に な る 。 楽 士 と し
て の キ ッー
ネ は 大 食 で 不 作 法 な キ ツネ ー
の 性格 が 弱 め られ て い る よ う で,二
が 生 還 しか け る の も,こ
返 し
例 で はキ ッ ネ
れ と 関 連 が あ る か も知 れ な い 。 天 上 世 界 に つ い て 知 り た が る
点 で は 他 の と 同 じ だ が,民
話25の
キ ツ ネ は 月 を 知 りた が り と あ り,唯
知 り た が る キ ツ ネ の モ チ ー フ は,お
一一で あ る 。 月 を
そ ら く最 も早 い 時 期 に 記 録 さ れ た ア ンデ ス 民 話 と
い え る話 と 同 じで あ る の は 興 味 深 い 。 有 名 な ク ロ ニ ス タ のInca Garcilasoの
記録の
中 に 月 の し み の 起 源 に 触 れ た の が あ る。
民 話26 キ ッ ネ が 美 し い 月 に 恋 を して,天
抱 き締 め 自分 に 押 しつ け た の で,そ
上 に 昇 って 月 を 抱 擁 す る 。 月 が キ ツ ネ を
の あ と が 月 の し み に な っ た1?)[GARCILAso
l967:122]。
こ れ ま で に検 討 して き た キ ッ ネ 民 話 は 栽 培 植 物 起 源(民
17)Garcilasoは
話1-6),無
数 の キ ツ ネ起 源
自分 が 子供 の頃 に 聞 い た馬 鹿 げ た話 と して これ を 紹介 して い る が,月 の しみ の
起源 は,ア マ ゾ ン神 話 の 中で は しば しば イ ンセ ス トと結 びつ く。 ペル ー 領 ア マ ゾ ンの カ シナ ワ
族 の神 話 で は イ ン セス トを 犯 した 男 の頭(顔 に ウ イ トの液 を 塗 られて い る)が,し
みの あ る月
に な るが,月 の起 源 と共 に人 間 の 死が 始 ま る[D'ANS 1975:113-122】 。
257
国立民 族学博物館研究報 告 5巻1号
(民 話8-11),キ
ツ ネ の 単 純 死(民
話12-25)で
あ る が,他
に類例 を見 な い起 源 物 を扱
った 若 干 の 話 が あ る 。 そ の 一 つ は プ ノ県 の ア イ マ ラ語 農 民 の も の で,構
成 は これ まで
の と 類 似 して い る が,火
の起 源 を 扱 う。
民 話27キ
身 の 言 に よ れ ば 創 造 主 に 呼 ば れ て 天 界 へ 行 く が,翼
ッ ネ が,自
ツ ネ が ど う 旅 を し た か 誰 も 知 らな い 。 天 上 で の 仕 事 が 済 ん で,創
の ない キ
造 主 も姿 を 消 し,
一 人 取 り残 さ れ た キ ッ ネ は 下 界 へ 降 り ら れ な い 。 白 い 雲 に 下 界 へ 連 れ て 行 く よ う 頼
み,創
造 主 に 呼 ば れ て 来 た が,家
族 を 残 し て い る と 同 情 を か い,白
雲 は途 中 の黒 雲
の 所 ま で 運 ん で 行 く 。 黒 雲 は 乗 せ た キ ツ ネ を あ ら れ と一 緒 に 放 り 出 し,キ
い た サ ボ テ ンの 上 に 落 ち,そ
に な っ た[FRANco ツ ネ は乾
こ か ら火 が 立 ち 昇 っ た 。 以 来 地 上 に 火 が 存 在 す る よ う
1975:149-150]。
コ ン ドル が 登 場 せ ず,ま
た 天 界 へ の 旅 の 手 段 は不 明 と な って い る 。 ロ ー プ 切 断 の 墜
落 に か わ って,白
雲 と 黒 雲 に キ ツ ネ は 乗 っ て 下 降 す る 。 要 素 は 異 な っ て い る が,ロ
プ 切 断 と 白 雲/黒
雲 の 上 下 切 断 の 構 成 は 変 わ らな い 。 き つ ね に 同 情 す る 白雲 と そ れ を
放 り 出 す 黒 雲 は,上
下 関 係 に あ り,異
編 み を 助 け た イ ン コ と,そ
な っ た キ ッ ネ の 扱 い を す る 。 民 話12で は ロ ー プ
れ を 切 断 す る イ ン コ が い た 。 イ ン コ以 外 に も キ ッ ネ の 下 降
を 助 け る存 在 は す で に い くつ か あ っ た(民
話 と 同 一 構 成 で,要
話1,6,8,11,18,20)。
つ ま り これ まで の
素 的 に 若 干 異 な った だ け の 民 話 が 火 の 起 源 を 扱 う こ と に な る 。
起 源 に 関 し て い え ば 民 話1-6は
栽 培 植 物 で,民
同 一 と い う こ と に な る 。Lcvi-Straussは
話27は 火 で あ っ て,両
者 の構 成 は
ア マ ゾ ン 神 話 の 分 析 を 通 じて,火
話 → 栽 培 植 物 起 源 神 話 の 変 形 を 明 らか に して い る[LEvl-SfRAuss ンデ ス 民 話 で は 同 一 構 成 の 話 が 火 と栽 培 植 物 起 源 を 扱 い,メ
物 の き わ め て 近 い 関 係 を 示 し,Levi-Straussの
と こ ろ で,こ
の起 源 神
1964:169]。
ア
ッセ ニ ジ と して の両 起 源
検 討 結 果 を,簡
明 な 形 で 支 持 して い る。
の 話 で は サ ボ テ ン の 上 に 墜 落 した キ ッ ネ か ら火 が 発 生 して い る 。 尖 っ た
も の あ る い は棘 の 上 に 落 ち る キ ツ ネ は す で に い くつ か 登 場 し て い る か ら(民
9-10,16),要
ー
話3,5,
素 的 に は こ れ ら と も共 通 して い る 。 ク ス コ の ヴ ァ ー シ ョ ン に は サ ボ テ ン
の起 源 を扱 った もの が あ る。
民 話28 地 面 に 衝 突 した キ ッ ネ の 脳 が 高 原 に 飛 び 散 り,そ
い う 山 に 沢 山 生 え て い る 白 い サ ボ テ ン が 生 じ た[MOROTE 採 録 者 のMoroteが
資 料 を 省 略 して い る の で,詳
仕 方 か ら判 断 し て,民
話9と
l958:9]。
し い 内 容 は 不 明 だ が,彼
の 記述 の
同 じ 内 容 で 結 末 部 分 だ け が 異 な って い る と 見 倣 して 良 い 。
上 記 の 内 容 か ら 判 断 す る と,ワ
ラホ は ア ン デ ス 高 原 に あ る丈 の 短 い サ ボ テ ン で,直
1メ ー トル 内 外 の 範 囲 に 密 集 して 生 え,そ
258
れ か ら ワ ラ ホwar綾ioと
れ が あ ち こ ち に 点 在 して い る(中
径
央がやや
友 枝 中央 ア ンデ スの 民 話 とア マ ゾ ンの神 話
盛 り上 っ た 様 子 は 脳 の 形 に も 似 て い る)。 高 原 で は ご く普 通 に 見 か け る も の で あ る 。
ア イ マ ラ の 民 話27の
居 住 地 が3,800メ
サ ボ テ ン が 何 か は民 話 の 記 述 か ら は 解 らな い が,ア
ー トル の テ ィ テ ィ カ カ 高 原 で あ る こ と か ら し て,ワ
イ マ ラ農 民 の
ラホ と同 じ種 類
だ とい う の は 確 実 で あ る 。 ア イ マ ラ と 同 地 域 に 住 む カ ヤ ワ ヤCallawayaの
warakkoと
呼 ば れ る サ ボ テ ンが 知 られ て い る[OBLITEs ー マ とす る 民 話27は
白 雲/黒
雲 に よ る キ ツ ネの 墜 落死 だ が
上 界 を つ な ぐ ロ ー プ の 切 断 や コ ン ドル/キ
う で,以
1969:369]。
,ア
間 で も
火 の起 源 を テ
イ マ ラ農 民 は天 界 と地
ツ ネ の モ チ ー フ を 知 らな い わ け で は な い よ
下 の 二 つ は 民 話27と 同 じ採 録 者 に よ って い る 。
民 話29昔
は 天 界 と地 上 界 を 結 ぶ 二 本 の ロ ー プ が あ り,そ
あ る 日 キ ツ ネ は 天 界 へ 昇 り,仕
事 を 済 ま せ,地
れ を 伝 って 上 下 で き た 。
上 へ の 大 事 な 知 らせ を 叫 び な が ら降
りて 来 る 。 途 中 で イ ン コを 侮 辱 し,任 務 を 帯 び て い る 自 分 の ロ ー プ に 触 れ る な と 警
告 し,反 対 に 切 ら れ 墜 落 す る 。 イ モ ム シ に い い つ け て,聖
騙 し,下
に カ ー ペ ッ トを 敷 か せ よ う と し た[FRANco テ キ ス トに は な い が,脚
な る任 務 で 降 り る の だ と
l 975:171-172]。
注 と して キ ッ ネ は 墜 落 して ば らば ら に な っ た と あ り,そ
れ
か ら判 断 す れ ば キ ツ ネ の 単 純 死 に 終 る 。 キ ッ ネ の 叫 び に あ る 聖 な る 任 務 は 民 話21-22
に 共 通 して い る 。 キ ッ ネ の 聖 な る 役 割 は 後 に 検 討 す る で あ ろ う 。 上 記 に は コ ン ドル が
登 場 せ ず,昔
は天 地 を つ な ぐ ロ ー プ が あ っ た と し て い る が,こ
チ ゲ ン ガ 族 に も あ り,そ
の モ チ ー フ は先 述 の マ
の 切 断 に よ り天 と 地 の 分 離 状 態 が 起 源 し,そ
の は 酒 に 酔 っ た 悪 い 男 で,そ
の原 因 とな った
れ が 墜 落 死 して 棘 の あ る ハ リネ ズ ミの 起 源 と な り,天
の 分 離 の 際 に 良 い 人 間 だ け が 天 界 に 残 っ一
た一
こ と一
に な っ て い る[ALVA】IEZ 24]。
次 の 話 に よ り,ア
イ マ ラ 民 話 に も コ ン ドル/キ
地
1'940:22」
ッネ の対 立 関係 が あ る こ とが確
認 で き る。
民 話30キ
ッ ネ が 自 分 の 幸 運 な 生 活 を 自慢 し吹 聴 して い る の を 聞 い て,コ
ン ドル が ・
懲 し め に キ ツ ネ の 妻 を 連 れ 去 る 。 妻 を 探 し求 め 歎 い て い る キ ツ ネ の 所 ヘ コ ン ドル が
現 れ,高
い 所 へ 連 れ て い く と 申 し 出,背
中 に乗 せ て 崖 の 上 へ 運 ぶ。 深 い 谷 底 に妻 が
つ な が れ て い る と教 え ら れ た キ ツ ネ は,ロ ー プ を 伝 っ て 降 り る が,途 中 で イ ン コ を 見
つ け,ロ
ー プ に 触 れ る な と警 告 して 切 られ,谷 底 に 墜 落 し て く だ け 散 っ た[FRANCO
l975:97-100]。
妻 を 探 す キ ツ ネ は 民 話7の
主 人 公 と 共 通 す る が,コ
ン ドル と 対 立 的 に 扱 わ れ た こ の
キ ツ ネ の 場 合 は 墜 落 死 す る 。 ま た こ れ ま で の 民 話 が 全 て 天 界 と地 上 界 を 扱 っ て い た の
に 対 し,同
じ く上 下 軸 で 展 開 す る が,こ
出 来 事 で あ る 。 キ ツ ネ の 天 界 旅 行 が,こ
の 話 で は 谷 の 上 下 の 関 係 で,い
こ で は 地 上 界 で 生 じ,空
わ ば地 上 界 の
間 的 に縮 少 され て 反
259
国立民 族学博物館研究報 告 5巻1号
覆 す る。 構 成 に は変 りが な く,内 容 は世俗 的教 訓 を 含 ん だ もの とな って い る。
これ まで に検 討 して きた約 三 十 の民 話 は,天 界 へ 旅 した キ ッ ネが 墜 落死 す る とい う
単 純 な話 で,そ の構 成 は全 て に共 通 す る。 そ れ ば か りで な く,要 素 的 に見 て も民話 は
相 互 に重複 し,あ る民 話 に登 場 す る要 素 はた い て い別 の 民話 の どれ か に も見 られ る。
ま たそ の 分布 は 中央 ア ンデ ス の 南,中
部 に 限 られ る(図1)。
上 述 の事 例 が 現 在 まで
に採 録 され た もの の全 て で あ る とは い え な い に して も,そ の殆 どで あ る とい って良 い
で あ ろ う。話 を構 成 す る要 素 か らい って も限 定 され,地 域 的分 布 も限 られ て い る これ
らの民 話 は,一 つ の ま と ま りを 有 して お り,そ の全 体 につ い て は次 の よ うに指 摘 を す
る こ とが で き る。
1.要
素 が 限 定 され構 成 が単 純 な この 民話 は,数 多 い ヴ ァー シ ョンの 間 に変 異 を あ
ま り生 みだ して い な い 。 つ ま り この 民 話 の グ ル ー プ は一 つ の ま と ま りと して比 較 的 安
定 し て い る。2.全
体 と して の変 異 が小 さい な が ら も結 末 の部 分 に は変 異 が顕 著 で,
まず キ ッネ の単 純 死 に終 る もの と何 らかの 起 源 に言及 す る もの と,二 つ の グル ー プ に
分 け られ る 。起 源 論 的 民 話 の グ ル ー プ は さ らにい くつ か に分 類 が可 能 で,次 表 の よ う
に示 す こ とが で きる 。
この 変 異 の小 さ い ま と ま りの 中 で生 じて い る変 異 は,あ る程 度 そ の ま と ま りの 内 部
に お いて,お
よそ の傾 向 と して な ら説 明 が可 能 で あ る。 た とえ ば,栽 培 植物 の起 源 民
話 で は,キ ッ ネの 大 食 と不 作 法 や,コ ン ドル との対 立 が強 調 され る傾 向 が あ り,単 純
死 に終 る話 に は必 ず しもそ うで な い のが あ る。 ま た この点 で は,結 局 は単純 死 に終 る
が,楽
士 と して登 場 す るキ ツ ネの 二 例 で は(民 話18,23),主
人 公 が生 還 しか け る の
表1 キツネの墜落死 と起源物
0(破裂死)
(民 話12-25,29-30)
天 界へ 旅 し
たキツネ
動 物 起 源(何 千 とい うキ ッ ネ)
(民話8-11)
野 生 植 物(サ ボ テ ン)一 火
(民話27) (民話28)
起源
民 話1-6,811, 27-28
一
一種tsの 栽 培 植 物1
植 物紀源
カニ ャワ
民話6
民 言舌1-6,27
-28
一 ク ラスの 栽 培植 物
(穀 類)(民 話1-2)
栽培植物
民 話1-6:
複数種 の栽培
植物
民 話1-5
複 数 ク ラスの 栽 培植 物
(穀 類 と根 茎 類)(民
話
3-5)
260
友 枝 中央 ア ンデ ス の民 話 と アマ ゾ ンの神 話
も興 味 深 い 。大 食 と音 楽 の対 極 性 が ア ンデ ス農 民 の観 念体 系 の 中 に あ る よ うに 思 わ れ
るが,こ れ を 明 らか にす る には未 だ 資 料 が 不 充 分 で あ る18)。な お 上記 二 例 は中 部 地 方
の もの で あ り,楽
士 と して の キ ッ ネ は 同地 方 に も う一 つ あ る(民 話24)。 これ を 含 め
て 中部 地 方 に は 四 つ の ヴ ァー シ ョンが あ り,い ず れ も単 純 死 に終 る。栽 培 植 物 も し く
は何 らか の 起 源 に 触 れ る民話 は南 部 に限 られ て い る。
また この 何 らか の 起 源 を扱 う話 と単 純 死 の 話 の間 に も,あ る傾 向 と して の相 違 が認
め られ る。 す で に 指 摘 した よ うに キ ッ ネの 破 裂死 は共 通 した要 素 だ が,前 者 に は これ
を こ とさ らに強 調 した もの が あ る。 わ ざ と仕 掛 け られ た 固 い物 や 尖 った物 の上 に落 ち
る キ ッ ネ は,民 話2-3,5,9-10に
だ け あ り,い ず れ も起 源 を 扱 って い る。 しか し
上 に指 摘 した 点 は あ くまで 傾 向 で あ って,栽 培 植 物(あ る い は何 らか の起 源)を 扱 う
話 と単 純 死 の話 を 明確 に区 分 す る原 則 とまで はい え な い。 それ を認 め孝上 で な ら,前
者 の 民話 構 成 に お いて は主 人 公 キ ツ ネ が他 の構 成 要 素 との 間 に有 す る関 係 の緊 張 度 が
比 較 的高 い とい う ことが で き る。起 源 を もた らす キ ッネ は,い わ ば 《激 し く地 上 に打
ちつ け られ る》 の で あ る。
起 源 民話 に 限 って み る と,栽
8 -11),火(民
が,ア
話27),サ
培 植 物(民 話1-6)の
ボ テ ンの ワ ラボ(民 話28)が
ほ か に,無
数 の キ ツネ(民 話
あ る 。 この うち栽 培 植 物 と火
ンデ ス農 民 の少 な く と も日常 的 価 値 判 断 に お いて は,有 用 な事 物 で あ り,肯 定
的 価 値 を有 す る こ とは疑 い得 ない 。 また ア マ ゾ ン神 話 との 照 合 の 限 りで は栽 培 植 物 と
火 は起 源 論 的 に は一 体 を な して い る。 そ れ に 対 して キ ツ ネ は畑 や 家 畜 を襲 う害 獣 で あ
り,否 定 的 価 値 を 与 え ら れ,民 話 的 性 格 にお い て失 敗 者 で あ る。 サ ボ テ ンの ワ ラホ も
有 害 無 益 で あ る。Oblitesの
が か くされ て お り,知
記 述 に よれ ば,綿 毛 に覆 わ れ た この サ ボテ ンに は鋭 い棘
らず にそ の上 に腰 を お ろ した り踏 みつ けた りす る と,激 しい痛
み に 襲 わ れ る19)[OBLITEs l969:369]。
筆者 の 関心 は ア ンデ ス栽 培植 物 の民 話 的 起 源 にあ る が,こ こ でそ れ だ け を取 り出 し
て しま え ば,栽 培 植 物 起 源 民 話 が他 の ヴ ァー シ ョ ンとの 間 に保 つ 関係,つ
ま り一 つ の
ま と ま り と して の民 話 の性 質 は失 な わ れ る。 次 章 以 下 に は栽 培 植 物 の起 源 とい うメ ッ
18)こ
こで扱 って い るキ ッ ネ と関係 の深 い もの と して 次 の民 話 が あ る。 キ ッ ネが 鳴 き声 の良 い ワ
ィチ ャオ鳥 に歌 と飛 び方 の秘 訣 を聞 く。頼 み を聞 い て ワ イチ ャオ は笛 を貸 し,そ れが 吹 け るよ
うにキ ツネ の 口を 縫 い つ け,人 工 の羽 を つ け てや る。笛 が 気 に入 った キ ッ ネ は ワイ チ ャオ に返
さず,飛 んで い くが,途 中で 墜 落 し,縫 い 糸 は切 れ て しま う。 な お,不 完全 なが らキ ツ ネ の大
口 と その縫 いつ け は民話15に もあ る。
19)キ ッ ネの否 定 的 価 値 が 日常 的 判 断 にお い て で あ るの と同様,ワ ラ ホ も とき と して肯 定 的 価 値
を もつ 可能 性 が あ る。干 ば つが ひ ど くて 高 地 の牧 草 が枯 れて しま うと,ア ヤ クチ ョ県 ル カナ ス
Lucanas地 方 の 人 々は,ワ ラホの棘 を焼 いて しま って か ら,家 畜 の飼 料 にす る(Pascual Castro
によ る教 示1978)。
261
国立 民族学博物館研究報告 5巻1号
セ ー ジ を検 討 して い くが,そ の際 に留 意 す る の は,こ れ と他 の メ ッセ ー ジ(キ ツ ネ と
ワ ラホ の起 源,あ
るい は民 話7の 若 返 り)を 有 す る話,あ
るい はメ ッセ ー ジ0(単
純
死)の 話 との 関連 を 保 たせ て お くこ とで あ る。論 旨を 明 らか にす るた め に結 論 を先 に
い え ば,起 源 す る栽 培 植 物 は,否 定 的 価 値 の 側面 を有 す る ことで 他 の 起 源 物 と共 通 し,
それ と関 連 して,栽 培 植 物 は 四 散 した状 態 で 発 生 す る とい う ことで あ る。 そ こで,以
下 の検 討 の 前提 とな るの は,ユ.上 下 間 の切 断 とそ れ に よる 四 散状 態 の発 生 とい う形 式
に従 って,2.天
界 に昇 った キ ッネ が墜 落 死 す る とい う構 成 を通 じて,3.栽
培植物
の起 源 とい う メ ッセ ー ジを 有 す る民 話 が,中 央 ア ンデ ス の 南 部 に い くつ か あ る,と い
うこ とで あ る。 こ こで い う形 式,構 成,メ
ッセ ー ジ は,あ く まで他 の現 象 との 照 合 を
行 な い,一 致 や 相違 を明 らか に して い くた め の記 述 操 作 上 の 便宜 的 な設 定 にす ぎな い 。
皿.木
を切 り倒 す 罪
こ れ ま で に 検 討 して き た こ と か ら,中
(メ ッ セ ー ジ が 変 化 して い る 民 話7,民
央 ア ンデ ス の キ ッ ネ 民 話 の全 て に 共 通 す る
話26を 除 く)不
変 の 様 相 は,上
れ に よ る 墜 落 物 の 破 片 化 と 四 散 の 現 象 で あ る 。 栽 培 植 物,キ
ラ ホ の 起 源 を 扱 う民 話 は,そ
れ が 起 源 論 的 で あ る か ら,単
の グ ル ー プ と 区 別 で き る が,上
い い か え る と,民
下 間 の切 断 とそ
ッ ネ,火,サ
な る キ ッ ネ の死 に終 る民 話
記 の 基 本 的 パ タ ー ン に 従 っ て い る 点 で は,同
話 的 表 現 に よ れ ば,ア
じで あ る。
ンデ ス の 栽 培 植 物 は 分 裂 四 散 の 現 象 を 通 じて
起 源 す る と い う こ と に な る 。 単 に 栽 培 植 物 の 起 源 で は な く,コ
な 分 裂 四 散 を 含 め た 栽 培 植 物 起 源 を,民
ボテ ンの ワ
ン テ ク ス トか ら明 らか
話 の メ ッセ ー ジ と して 理 解 し よ う と す る の が
本 稿 の 基 本 的 な 目的 で あ る。 そ の た め に は まず 分 裂 四 散 の パ ター ンを取 りあげ て お く
必要 が あ る。
こ れ か ら検 討 す る の は,中
つ で,そ
央 ア ンデ ス の カ ー ニバ ル の 祭 で 催 され る 多彩 な行 事 の一
こ に は キ ッ ネ 民 話 の 切 断 と分 裂 四 散 の パ タ ー ンが 反 覆 さ れ て い る 。 し か し 同
一 パ タ ー ン に 従 っ て い て も,行
事 の 構 成 は 民 話 の そ れ と は 別 の 内 容 と な って い る 。 こ
の 行 事 は コ ル タ モ ン テcortamontc,ユ
ン サyunsa,シ
そ の ほ か 地 方 に よ っ て 様 々 な 呼 び 方 が あ る が(以
テ と す る),内
ル ロcilulo,ウ
ミ シ ャhumisha,
下 で 一 般 的 にい う場合 は コ ル タ モ ン
容 の 面 で は 地 方 的 な 変 異 に 乏 し く,こ
の 点 で は お そ ら くキ ッ ネ 民 話 に
比 べ て も っ と一 様 で あ ろ う 。
行 事 が さ か ん な の は ペ ル ー 領 の 中,北
ンデ ス 南 部)に
262
つ い て の 報 告 事 例 は,目
部 で,南
部 お よ び ボ リビ ア 領(つ
ま り中 央 ア
下 の と こ ろ非 常 に 限 られ て い る 。 こ の 分 布 の
友 枝 中央 ア ンデ スの 民 話 と ア マ ゾ ンの神 話
か た よ り は文 献 記 録 の 上 だ け の 検 討 で あ る か ら,そ
い 。 しか し 文 献 例 か ら判 断 す る 限 り で は,先
れ に つ い て 断定 的 な こ とは い え な
に 検 討 した キ ッ ネ 民 話 が 中 央 ア ン デ ス の
南,中
部 に か た よ って い る の と 対 照 的 で あ る こ と は,注
1)。
い い か え れ ば 切 断 と 分 裂 四 散 の パ タ ー ン は,南
で は コ ル タ モ ン テ の 行 事 構 成 に,そ
目 し て お か ね ば な らな い(図
部 で は キ ツ ネ 民 話 構 成 に,北
部
れ ぞ れ の 内 容 を 伴 って 表 現 さ れ て い る と い う こ と
で あ る20)。
行 事 の 具 体 例 と し て,比
較 的 記 述 内 容 が 豊 富 な ペ ル ー 領 中 部 フ ニ ン県 ハ ウ ハJauja
地 方 の コ ル タ モ ン テ を,ま ず 取 り上 げ る 。 ハ ウハ 市 の 一 部 で あ る ワ ク リ ャ スHuacllas
の コ ル タ モ ン テ は 二 日 間 の 行 事 で,第
ぶ)と
一 日 の ヒ ー ロ ・ワ ン タ イjhilo huantay(木
第 二 日 の ヒ ー ロ ・サ ク タ イjhilo saqtay(木
る の は 一 組 の 男 女 で,そ
を 切 る)か
れ ぞ れ パ ド リ ー ノpadrino,マ
を運
ら成 る 。 行 事 を 主 催 す
ド リ ー ナmadrinaと
呼 ばれ
る。
行 事1 第 一 日 の 朝,角
笛waqraと
が パ ド リー ノ の 家 に,斧,ロ
小 太 鼓tinyaの
ー プ,山
演 奏 を 合 図 に,多
刀 を 持 っ て 集 ま り,一
勢 の男 た ち
方 女 た ち は チ チ ャ酒 の
壺 を 携 え て マ ド リー ナ の 家 に 集 ま る 。 男 た ち は 暫 く酒 を 飲 み 交 し た あ と郊 外 へ 出 か
け,幹
が 真 直 で 枝 葉 の 茂 っ た 木 を 選 び,に
ぎ や か に 騒 ぎ な が らそ れ を 切 り倒 し,何
人 か の 男 が 肩 に か つ い で 町 へ 戻 って 来 る 。 一 方 マ ド リー ナ の 家 に い た 女 た ち は 頃 合
い を み て,用
意 した 食 物 や 酒 を 運 ん で,戻
が 出 会 う と 互 い に メ リケ ン粉,パ
す り つ け 合 っ だ り して,び
ウダ ー,ペ
って 来 る 男 た ち を途 中 で 出迎 え る 。 男女
ン キ を ひ っ か け 合 っ た り,棘
の草 を こ
と し き り カ ー ニ バ ル の 遊 び を す る21)。 そ の あ と で 食 物 と
酒 が 皆 に 提 供 さ れ る 。 再 び 木 を か つ い で 町 へ 戻 っ た 男 た ち は,そ
れを教会堂の前に
運 ぶ 。 マ ド リー ナ と 女 た ち が,こ
ン の 一 種 の ロ ス カ,
の 木 に 紙 テ ー プ,旗,果
実,パ
チ チ ャ 酒 や ア グ ア ル デ ィ エ ン テ 酒 入 り の び ん な ど を 枝 に 吊 し て,飾
りつ け る 。 飾 り
つ け た 木 の 根 元 を 深 い 穴 に さ し込 ん で 真 直 に 立 て 固 定 さ せ る 。 二 日 目 の 午 後 二 時 頃
に な って,楽
隊 が カ ー ニ バ ル の 音 楽 を 演 奏 して い る パ ド リー ノ の 家 へ,着
飾 った 男
20)こ の こ とは切 断 と四散 の 形 式 が この局面 にだ け限 られ る とい うこ とで は な い。筆 老 の関 心 は
む しろ こ こで い う分 裂 四散 の形 式 に ア ンデ ス社 会 の思考 が どの よ うな 意 味 を盛 るか にあ り,栽
培植 物 起 源 を扱 うの は そ の一 部 で あ る。 民話 の局 面 に 限 って も,北 部 に はア チ カ イAchicay民
話 が あ り,こ の有 名 な民 話 も切 断 と四散 の形 式 を 有 す る だ けで な く,構 成 に お いて 先述 の キ ツ
ネ民話 と一致 す る。 数 多 い ヴ ァー シ ョ ンの 中 に は墜 落死 した 人 喰 い老 女 の破 片 か ら棘 あ る い は
山 び こが 発生 した とい う起 源 を 扱 った のが あ る。 も しキ ッ ネ民話 か らこの ア チ カイ民 話 に分 析
を続 けて いけ ば,民 話 の短 か いサ イ クル の 閉 じた体 系 を扱 う こ とにな る。棘 の発 生 は すで に キ
ッネ民 話28に あ る。
21)水,粉,ペ
ンキ の類 を互 い にか け合 った り,果 物 や 卵 を投 げつ け合 うの は,ア ンデ ス の ど こ
の村 や町 で もみ か け るカ ー ニバ ル の遊 びで,コ ル タモ ンテ の場 面 に限 らな い 。
263
国立民族学 博物 館研究報告 5巻1号
女 が そ れ ぞ れ に 組 を つ く っ て 集 ま る 。 パ ド リ ー ノ は 彼 等 を 連 れ て マ ド リー ナ の 家 を
訪 問 し,そ
こ に も組 に な って 男 女 が 多 勢 集 ま って い る 。 合 流 し た 多 勢 の 男 女 は ハ ゥ
、
ハ の 町 を ひ と ま わ り 踊 り歩 い た あ と,飾
っ た 木 の 所 へ や って 来 る 。 組 に な っ た 男 女
が 全 員 で 木 の ま わ り で 輪 を か い て 踊 り,輪
の 中 に 入 っ た パ ド リ ー ノ と マ ド リー ナ が
最 初 に 木 の 幹 に 斧 を 入 れ る 。 そ の あ と 踊 っ て い る 男 女 を 一 組 ず つ 招 い て,同
に 木 を 切 る よ う 依 頼 す る 。 斧 入 れ を 済 ま せ た 男 女 は 次 の 組 と交 替 し,こ
繰 り 返 し な が ら,歌
女 の 組 が,最
後 の 斧 を 入 れ て 木 を 切 り倒 す 。 行 事 を 引 き受 け た ら必 ず 実 行 しな け れ
裁 の 表 現 で,い
族 用 語 か らす れ ば,木
で は,パ
の カ ト リ ッ ク の 擬i制親
見 た て られ る こ と に な ろ う。
ド リー ノ ス ・デ ・モ ン テ と主 催 者 を 呼 ん で
が 木 を 提 供 し,女 が 飾 り を 提 供 す る と 記 述 さ れ て い る[SALGUERO 同 じハ ウ ハ の マ ス マMasmaの
カ ー ニ バ ル の水 曜,木
jala pato(ア
行 事2 ド リ ー ナ で あ る か ら,こ
が 洗 礼 子 の ア イ ハ ー ドahij adoに
実 際 に 同 じ ハ ウハ の バ カPaca村
92-93]。
形 を 火 に くべ る の は 約 束 不 履 行 に 対 す る 非
わ ば 木 の 再 生 を 不 可 能 に し た 人 物 を 処 刑 す る 表 象 的 行 為 と思 わ
れ る 。 行 事 の 主 催 者 は パ ド リー ノ,マ
い る し,男
れ を 火 に くべ て し ま う
l 958・39-43]。
記 述 が 短 い た め に は っ き り し な い が,人
難,制
れ を何 度 も
と踊 りを続 け る。 次 の 年 に この行 事 を 引 き受 け る意 志 の あ る 男
ば な らな い 。 そ う で な い と 人 々 は不 恰 好 な 人 形 を つ く り,そ
[EsPINozA じよ う
曜,金
曜,土
村 の 例 を み る と,こ
曜 の 四 日 間 に わ た り,も
ヒ ル を 引 き ち ぎ る)と
こで は コル タ モ ンテ は
う 一 つ の 行 事 バ ラ ・バ ト・
交 互 に催 され る。
女 た ち が 手 を つ な い で 輪 に な っ て 踊 っ て い る 広 場 に,楽
が 切 っ た 木 を 運 ん で 来 る と,女
紙 テ ー プ の セ ル ペ ン テ ィ ー ナ,旗
を 輪 に な っ て 踊 り,パ
た ち が 木 の 枝 に パ ン,果
を 飾 り,広
実,飲
隊 を 伴 った 男 た ち
み 物 や 酒 入 り の び ん,
場 に こ れ を 立 て る 。 飾 った 木 の ま わ り
ド リー ノ ス が ひ と 組 の 男 女 を 招 い て 木 を 切 らせ,斧
ん だ 男 女 は 酒 を 振 舞 わ れ て 輪 の 中 に 戻 る 。 最 後 に 木 が 倒 れ る と,見
押 し寄 せ て,飾
1939:
入れが済
物 の 子 供 た ちが
りの 品を 奪 い 合 う。最 後 の斧 を 入 れ て 次年 の主 催 を 引 き受 け る こ と
に な ゐ た 男 女 を,皆
で か か え あ げ て 祝 福 す る 。 役 を 引 き 受 け た 約 束 の し る し に,切
り倒 した 木 の 下 半 分 を 女 が,上
半 分 を 男 が 取 る[MATEu 1942:52-53]。
ハ ウハ 地 方 の コ ル タ モ ン テ の 記 述 は 数 多 い の で,全
て を あ げ る わ け に は い か な い が,
Divila[1952:864-865], Bonilla[1946:78-82], Rodriguez[1953:12,16/17,
36ユ,Vivas[1953:70-71], Ordoya[1957:174], reras[1972:40-49ユ
が あ り,い
Adams[1959:194-195], ず れ も に ぎ や か で 楽 しい 行 事 で,こ
の地 方 に テ ィ ピ
カ ル な 催 し と し て 記 述 して い る 。 単 に そ の 存 在 を 確 認 す る だ け な ら,資
264
Cont-
料 は も っ と多
友枝 中央 アンデ スの民話 とアマゾ ンの神話
くな る 。 これ ま で に得 て い る資 料 か ら判 断す る と,コ ル タモ ンテ は殆 ど例 外 な くカ ー
ニバ ル の 祭 の 一 部 と して催 され る。 カ ー ニバ ル は ペル ー,ボ
リビア を通 じて 中央 ア ン
デ ス に広 く行 な わ れ て い るが,コ ル タ モ ンテに 関 して は南 部 の 事 例 は少 な い。 次 の は
南 海 岸 イ カIca地
方 の もので,こ
こで はユ ンサ と呼 ばれ て い る。 構 成 内 容 は 先 述 の
ハ ウハ の二 例 と同 じで あ るが,他 に は報 告 され て い な い若 干 の興 味 あ る記 述 が あ る。
行 事3 ユ ンサの 催 しを 引 き受 け た人 は数 日前 に木 の 用 意 をす る。 人 々 は枝 の 茂 っ
た 幹 の太 い木(一 般 に は ヤ ナギ を 使 うが,と き に シナモ ンそ の他 の木 を利 用 す る)
を 選 び,根
ご と引 き抜 いて,そ れ を 二 頭 の牛 に ひ かせ て 主 催 者 の 家 へ運 ぶ 。 木 の枝
に キ タ ス エ ニ ョ,提 灯,花,旗,果
実,パ
ン,魚 の イ ワ シ な どを 吊 し,そ れ を主 催
者 の家 の 前 に立 て る。 木 の傍 に テ ー ブル を 据 え,そ の上 に刃 の 欠 けた斧,ワ
イ ン,
ピス コ酒 が 置 かれ て い る。 夜十 時 頃 ユ ンサ の 楽 隊 演 奏(ギ タ 「 と太 鼓)が 始 ま り,
"結 婚"し た 男女 が組 に な って 集 ま り,木 の ま わ りで全 員 が 踊 る 。踊 りの 輪 の 中 に見
張 り とい うの が いて,順 番 に男女 の組 を招 き,斧 を 手 渡 して,き め られ た 回 数 だ け
斧 を 入 れ る よ う指 示 す る。 斧 を渡 され た男 女 は暫 く輪 の 中 で 踊 り,斧 を と ぐ真 似 を
した り,斧 を 首 に か け た り して,こ
っけ い な仕 草 で見 物 人 を 笑 わせ る。 最 初 に女,
次 い で 男 が 斧 を 入 れ る。 見張 りの 役 目 は,男 女 が指 示 通 り斧 入 れ を した か ど うか を
監 視 す る こ とで,斧 入 れ が済 む と急 いで 二人 か ら斧 を取 りあ げ る。 ま た木 の"傷 口"
に砂 をぬ りこん で,ユ
ンサ が あ ま り早 く切 り倒 され な い よ う注 意 す る。 男女 の 組 が
順番 に斧 入 れ を繰 り返 し,木 が 倒 れ る と一 同 が 歓 声 を あ げ,見 物 の 子 供 た ち は木 に
む らが って 飾 り 物 を奪 い取 る。 これ が危 険 な ので,あ
る時 期 か ら食 物 類 は飾 らず,.
別 に ざ るの 中 に用 意 し,最 後 に木 を 倒 した 男女 が皆 に分 配 す る よ うに な った 。 木 を
倒 した男 女 が 次 の ユ ンサ の主 催 を 引 き受 ける[DoNAIRE 1959:37-43]。
いず れ の 行 事 で も例 外 な く一 対 の 男 女 が 組 に な って 参加 し,踊 りや斧 入 れ を して い
る 。 イ カ の事 例 か らこの 男 女 の組 が結 婚 の意 味 を 包 含 し得 る こ とが 確 認 で きる 。一 般
的 に い って,コ ル タ モ ン テ は未 婚 の若 い男 女 に 人 気 の あ る催 しだ が,既 婚者 が 参 加 し
て い る場 合 で も夫 婦 が組 をつ くる こ とは な く,こ の 催 しに 限 って 男 女 の組 が で き る。
先 述 の ハ ウハ地 方 の記 述 内容 か らもそ れ は 明 らかで あ る。 男女 の カ テ ゴ リカル な 区分
は この 行 事 の 中 に 良 く組 み込 まれ て い る とい え る。
もう一 点 イ カの 記述 で 興 味 を ひ くの は,刃 の欠 け た斧 の使 用 と切 り口 に砂 を ぬ りこ
む ことで あ る。 これ は ユ ンサ が あ ま り早 く切 り倒 され な いた め の 配 慮 と説 明 され て い
る が,刃 の欠 け た斧 は と もか く と して,切
り口 に砂 を ぬ り こむ 効 果 は殆 ど な い で あ ろ
う。 お そ ら く これ は何 らか の 表 象 的行 為 で あ ろ うが,そ れ はた だ ち に,《容 易 に切 り倒
265
国立民族学博物館研究報告 5巻1号
せ な い 木 》 と い う モ チ ー フ を 有 した い くつ か の ア マ ゾ ン 低 地 諸 族 の 神 話 を 想 起 さ せ る 。
ペ ル ー 領 上 流 ア マ ゾ ン(モ
と,天
ン タ ー ニ ャ)の
カ シ ナ ワCashinahua族
と地 を 分 け て 支 え て い る 大 木 が あ り,そ
の 神話 に よ る
れ を 切 り倒 そ う と し て い る 人 々 が い る 。
し か し夜 に な る と 切 り 口 が ひ と りで に ふ さ が って し ま う の で,天
て い る[D'ANs 1975:93-94]。
また ブ ラ ジル領 の ジ ェ語 族 の栽 培 植 物 起 源神 話 に も
容 易 に 倒 れ な い 木 の 話 が あ る 。 た と え ば ア ピナ エApinaye族
の 男 と 結 婚 した 星 の 女 が,有
と 地 は い つ も分 か れ
の は そ の 一 つ で,人
袋 類 の オ ポ ッサ ム に 姿 を 変 え て,義
シ の 実 が な っ た 大 き な 木 の 所 在 を 教 え る 。 人 々 は こ れ を 知 っ て 大 喜 び を し,斧
倒 し に か か る が,一
間
理 の 母 に トウ モ ロ コ
で木 を
休 み す る う ち に 切 り 口 が ふ さ が っ て し ま う。 人 々 は 使 い を や っ て
別 の 斧 を 取 り 寄 せ,や
っ と の こ と で 木 を 倒 し た[NIMuENDAJu l 939:165--167, c£
1、Evl・STRAuss 1964:165-166]。
容 易 に 倒 れ な い 木 を 扱 っ て い る 上 記 二 つ の 神 話 の い ず れ も が,天
て い る の は 興 味 深 い 。 前 者 は 天 と地 の 分 離 を テ ー マ と し,後
と地 の 関 係 に 触 れ
者 は天 界 の星 の 女 が地 上
の 人 間 に 教 え た 栽 培 植 物 の 起 源 を テ ー マ と し て い る 。 天 と地 の 分 離(ロ
に よ っ て 生 じ る地 上 の 栽 培 植 物 は,ア
ー プ の 切 断)
ン デ ス の キ ツ ネ 民 話 の 基 本 構 成 で あ り,要
に み て も 星 の 女 は ア ン デ ス 民 話 に 登 場 し て い る(民
話6-8)。
培 植 物 起 源 神 話 と コ ル タ モ ン テ の 関 係 に つ い て は,の
な お,別
素的
の ア マ ゾ ン栽
ち に あ らた め て 詳 し く検 討 す る
こと に な る。
同 じ イ カ 地 方 の ユ ン サ に つ い てHousseも
が 早 い が,内
パ ン,イ
り,種
録 と し て は こ ち らの 方
容 は 全 く同 じ と い っ て 良 い ほ ど で あ る 。 飾 り物 の 記 述 は こ の 方 が 豪 華 で,
ワ シ,果
実,生
き た ま ま の ニ ワ ト リや ク イ(モ
々 の 作 物 と あ る が,観
な い[HoussE だ が,ア
記 述 して お り,記
ル モ ッ ト)・ハ ム,肉
の かた ま
察 し た 機 会 が 農 園 主 の 催 す ユ ン サ で あ っ た か ら か も知 れ
l946:128--130]。
つ い で に もう ひ とつ 南 部 か ら 報 告 されて い る事 例
プ リマ ク 県 の ソ ラ ヤSoraya村
の 場 合 を あ げ て お く。 こ れ は 最 近 の 記 録 で あ
る。
行 事4 ソ ラ ヤ で は ユ ンサ は カ ー ニ バ ル の 灰 の 水 曜 日 に 行 な い,広
エ の 木 に は果実,セ
場 に立 て た モ イ
ル ペ ン テ ィ ー ナ,風 船,玩 具 を 飾 り つ け て あ る[FLORES 1978:
45-46]。
確 か な こ と は い え な い が,筆
料 か らす る と,ア
者 が 調 査 し た 同 じ ア イ マ ラ エ スAymaraes地
プ リマ ク県 の ユ ンサ は,比
方の資
較 的 最 近 に な って外 部 か らカ ーニ バ ル 行
事 と して 持 ち 込 ま れ た 可 能 性 が 高 い 。ペ ル ー 領 北 端 の 海 岸 部 ピ ウ ラ 県 の タ ラ ラTalara
の 町 で も,こ
266
の 行 事 は ユ ンサ と い わ れ,TauroやCaminoの
辞 典 的解 説 に よ る と・
友 枝 中央 ア ンデ ス の民 話 と ア マ ゾ ンの 神 話
北 部 の ラ ンバ イ ェ ケLambayeque県
で も ユ ン サ で あ る[TAuRo 1967:401]。
行 事5 タ ラ ラ の ユ ン サ は カ ー ニ バ ル の 月 曜 に あ り,木
は アル ガ ロ ー ボか ヤ ナ ギ を
用 い,種
々 の 果 実,ワ
し魚,そ
イ ン,シ
ャ ンパ ン,ジ
ュ ー ス,干
木 の 頂 点 に は 緑 と 赤 の 旗 を 結 び つ け る[CARRION 行 事6 石 け ん,小
ワ ト リ,貨
ベ ル タ ーLibertad県
種 ロ ス カ,酒
幣 な ど を 吊 し,カ
ン カ チ,香
実 の メ ン ブ リ ヨ,パ
入 りの び ん を 吊 す 。 北 海 岸 の トル ヒ リ ョTrujilloの
柱)と
呼 ん で い る[CAMINo お そ ら く ユ ン サ と 同 一 語 源 と思 わ れ る が,カ
ンCelendinで
ラ ウ ス,ハ
は ウ ン シ ャhunshaと
呼 ば れ,カ
ウ ン シ ャ の 祭 は 町 の バ リオbarrio毎
水,
ー ニ バ ル の 最 終 日 に 切 り倒 す 。 リ
の 山 岳 地 帯 で は 木 に ハ ン カ チ,果
木 の こ とをパ ー
一
・upalo(木
行 事7 1978:24]。
ラ ンバ イ ェ ケ の ユ ン サ の 飾 り つ け は 見 事 で,ブ
山 羊,ニ
の 他 を 枝 に 飾 り,
ンの一
町 で は単 に この
1945:67-68]。
ハ マ ル カCajamarca県
の セ レ ンデ ィ
ーニ バ ル行 事 の一 つ とな って い る。
に 組 織 さ れ,種
々 の品 で 飾 った 木 を
道 路 の 真 中 に 立 て る 。 夕 刻 に な って 人 々 が 歌 い 踊 り な が ら木 を 切 り倒 す 。 木 が 倒 れ
る と 子 供 た ち が 歓 声 を あ げ る 。 最 後 の 斧 入 れ を し た 人 は,次
け で な く,そ
年 の役 を 引 き受 け るだ
の と き か ら次 の 日 ま で 祭 の 飲 食 物 の 提 供 も す る[MARINAs 1978:
16-19]。
リベ ル タ ー県 も そ う だ が,ア
スQuichesで
は,木
ン カ シ ュ 県 の ポ マ バ ンバPomabamba地
の こ と を モ ン テmonteあ
方 のキチェ
る い は シ ル ロciluloと
称 し,カ
ーニ
バ ル の最 終 日 にす る。
行 事8一
カ ー ニ バ ル の 最 終 日 はpallapacuy(残
り物 の 仕 末)で
る 。 シ ル ロの 木 を 提 供 す る 人 が き ま って お り,木
飾 る 。 木 の 傍 に タ ブ ラ オtablaoと
大宴 会 が 行 な われ
に セ ル ペ ン テ ィ ー ナ,風
い う 即 席 の テ ー ブ ル を 設 け,肉
他 が 盛 られ る 。 参 加 者 は 音 楽 に合 わ せ て 木 の ま わ り で 踊 り,組
船 な どを
料 理,果
実その
に な った男 女 が順 に
山 刀 で 木 を 切 る 。 同 時 に 粉 や セ ル ペ ン テ ィ ー ナ を 投 げ 合 って 遊 ぶ 。 参 加 者 た ち は,
木 を 切 り倒 す と次 年 に 同 じ よ う な あ る い は そ れ 以 上 に 立 派 に 飾 っ た 木 を 用 意 し な け
れ ば な らな い か ら,注
意 して 切 り つ け る 。 主 催 を 引 き 受 け た ら食 物 の 提 供 も 義 務 で
前 回 に 劣 ら ぬ も の を 用 意 せ ね ば な ら な い 。 木 が 倒 れ る と 子 供 た ち が 寄 っ て た か って
飾 り の 品 を 奪 い 合 う。 と き に 変 装 した 男 が い て,ふ
ざ け た 仕 草 を す る[NORIEGA
1977:14-16]。
ウ ン シ ャ を 催 す セ レ ン デ ィ ン と シル ロ を 催 す キ チ ェ は,と
東 斜 面 に あ り,い
もに 中央 ア ンデ ス北 部 の
わ ゆ る セ ハ ・デ ・モ ン タ ー ニ ャ に 位 置 して い る 。 キ チ ェ と 同 じ くア
ン カ シ ュ 県 で も,高
地 部 カ ル ワ スCarhuas地
方 の マ ル カ ラMarcara村
で は,先
述
267
、
国立民族学博物 館研究報告 5巻1号
の ハ ウ ハ 地 方 と 同 じ に コル タ モ ン テ,コ
チ ワ リ ッ トwachiwalitoと
もい う。 ま た カル ワス 地 方 に接 した ワ イ ラス 地方 の 山地
で は モ ン テ ィ ・ワ リmonti hualliと
ARIAS 1954:2],こ
行 事9 ル タ ア ル ボ ル と こ の 行 事 を 呼 ん で い る が,ワ
い う い い 方 が あ る が[ANoNIMo れ は コル タ モ ンテ のケ チ ュア 語 表 現 で あ る。
マ ル カ ラの 村 で は行 事 を ワ チ ワ リ ト と い うが,木
テ ィrangra qotiで
た 男 女 で,木
l945/6:117,
あ る 。 カ プ リの 木 を 使 用 す る が,提
の 頂 上 に ペ ル ー 国 旗 を 飾 り,ハ
て る 。 女 の 役 は こ の 木 を"着
飾 らせ るvestir"こ
の 相 手 を 見 つ け て 組 に な っ て 踊 り,木
供 す るの は前 年 に木 を 倒 し
ン カ チ,果
ょ っ と し た 小 物 を 飾 る 。 木 を 立 て る の は 男 の 役 で,ロ
を 切 る こ と は ラ ン ラ ・ホ
実,セ
ー プ を 使 っ て 引 き 起 こ して 立
とで あ る 。 参 加 者 は そ れ ぞ れ 自 分
を 切 る と き に は,次
倒 さ せ よ う と す る 。 三 十 年 前 ま で は,木
の 年 に や らせ た い 人 物 に
を 倒 し た あ と,参
幹 に 縛 り つ け 鞭 で 叩 く習 慣 が あ った[GHERsI 1960:114卜
加 者 の何 人 か を一 人 ず つ
一117]。
ペ ル ー 領 北 東 部 熱 帯 低 地 の 町 や 村 に も こ の 行 事 は さ か ん で,比
の が,ロ レ トLoreto県
マ イ ナMayna地
ル ペ ン テ ィ ー ナ,ち
較 的 内容 の詳 しい も
方 の タ ミ シ ャ クTamishiacuの
れ て い る 。 こ こ で 呼 ば れ て い る ウ ミシ ャhumishaと
町 か ら報 告 さ
ユ ン サyunsa,ウ
ン シ ャhunsha
は 同一 語 源 で あ ろ う。
行 事10 ウ ミ シ ャ に 用 い る の は ヤ シ の 木 で,人
々 は森 へ 行 って 良 く茂 っ た 丈 の 高 い
木 を 選 ん で 切 り 倒 す 。 町 の 広 場 に 運 ん だ ヤ シ の 木 を,顔
た 人 達 が,カ
ー ニ バ ル の 歌 を う た い な が ら立 て る 。 幹 の 先 端 か らの び て い る ヤ シ の
葉 を 左 右 に 分 け,そ
こ に ピ フ ァ ヨ,サ
旗,セ
れ ぞ れ ま と め て ね じ っ た 束 に し,そ
ポ テ,パ
イ ナ ッ プ ル,コ
ル ペ ン テ ィ ー ナ,風
を 入 れ る)な
て か ら,木
に種 々の 顔 料 を 塗 りた く っ
船,缶
コ ナ,グ
入 り ミル ク,貨
ァ ヤ バ な ど の 果 実,衣
幣,び
ど を 飾 り つ け る 。 木 を 立 て た 次 の 日,主
の ま わ り で 笛 の ケ ー ナ,太
奏 に 合 わ せ,歌
い 踊 り,木
鼓,小
の 端 を 結 ん で 輪 状 に し,そ
っ く り箱(中
ペ ル ー 東 部 語 彙 集 に よ る と,ウ
マ ル テ ィ ンSan Martfn県
を 飾 り,男
一 人 が 切 り 倒 す と,子
に ポ ピ ュ ラ ー な 行 事 と あ り,丈
カ ヤ リ川 下 流 の
ミ シ ャhumishaは
サ ン・
の 高 い 木 を 立 て,そ
女 が 組 に な って 木 の ま わ り で 踊 りつ つ 斧 を 入 れ,最
供 た ち が 飾 りつ け の 品 を 奪 い 合 う[TOVAR シ ャ は 東 部 低 地 の 町 や 村 だ け で な く,全
268
ラカ な どの 楽器 演
町 を は じ め 流 域 一 帯 に 広 く行 な わ れ て い る よ う で あ る[ORTIz
1974:795-796]。TovARの
食 物,酒,旗
な ど
1978:35-39]。
ウ ミ シ ャ と こ の 行 事 を 呼 ぶ の は ペ ル ー 領 北 東 部 低 地 に 一 般 的 で,ウ
プ カ ル パPucallpaの
に 蜂,蛙
催者 の提 供 す る食 事 を 済 ま せ
太 鼓 の タ ン ボ ル,マ
を 切 り倒 す[CAsTILLo 類,靴,
の先 に
後 に男 の
l966:107]。
ウ ミ
く同 じ行 事 が 上 流 ア マ ゾ ン の い くつ か の 部 族
友 枝 中 央 ア ンデ ス の 民話 と アマ ゾ ンの 神 話
の 間 で も現 在 行 な わ れ て い る 。
行 事11オ
マ グ ァOmagua族
は マ ニ オ ックい もの収 穫 期 にあ た るカ ー ニバ ル に ウ
ミ シ ャ の 祭 を す る 。 こ れ は 収 穫 祭 の 性 格 を 有 し,人
々 は シ ナ ミ リ ャsinamillaと
い
う ヤ シ の 木 を 切 り,幹
の 先 か ら 出 た 葉 を そ の ま ま 束 ね て 編 み,二
こ れ に パ ン,果
実,旗
を 飾 りつ け,ヤ
踊 りな が ら,リ
ボ ンと花 で 飾 った斧 で幹 の根 元 に切 りつ け る。 最 初 の 斧 入 れ は主 催
者 が や り,順
シの木 を 主 催者 の家 の前 に立 て る。 参 加者 が
に 参加 者 が これ に な らう。木 が倒 れ る と皆 で飾 りを奪 い合 う。 最 後 の
斧 入 れ を した 人 が 次 年 の 主 催 者 と な る が,そ
え られ る 。 木 を 切 る 最 中 に,サ
て 乱 入 し騒 ぎ ま わ る が,斧
[GIRARD 行 事12 つ の ア ー チ にす る。
ル,野
の人 には 飾 りの旗 の一 番 大 きい の が 与
豚 な ど に 変 装 した 十 数 人 の 男 が 棒 を 手 に し
入 れ に は 加 わ らな い 。 祭 が 済 む と参 加 者 は 水 浴 を す る
1958:183-184]。
ヤ ー グ ァYagua族
tanac6と
は カ ー ニ バ ル の 時 期 に 村 の 広 場 の 中 心 に レ タ ナ セre-
い う あ を 立 て る 。 木 は チ ャ ボ ナchapona侮
α7磁 麟077忽Mart・)で,
笛 と 太 鼓 の 演 奏 を 伴 って 森 か ら多 勢 で 切 り 出 して くる 。 木 に は 飾 り物,贈
す 。 祭 は3日
間 続 き,木
の ま わ りで に ぎ や か な 踊 り を して 楽 し く過 ご す 。 三 日 目 に
木 を 斧 で 少 しず つ 切 り,騒
ぎ は木 が 倒 れ る とき頂 点 に達 す る 。最 後 の斧 入 れ を した
人 が 来 年 の 主 催 を す る。 シ ャ ツ,ナ
合 うfGIRARD l958:31-32ユ
イ フ,菓
子,食
物 な ど 倒 れ た 木 の 飾 り物 を 奪 い
。
同 じ も の が コ カ マCocama,ウ
ミ シ ャumishaが
イ ト トWitoto,ボ
ー ラBoraの
コ カ マ 語 で あ る と の 理 由 で, Girardは
カ マ 族 に 由 来 す る と して い る[GIRARD 1958:32]。
ア ンデ ス 地 帯 で 同 じ行 事 が あ る こ と に つ い て は,何
に 由 来 す る か 否 か は,用
り物 を 吊
上 述 諸 族 の 類似 の行 事 は コ
彼 は 同 じ地 域 の コ ロ ニ ー 社 会 や
も指 摘 して い な い 。 行 事 が コ カ マ
語 の 上 だ け で 断 定 で き な い が,と
の モ ン タ ー ニ ャ地 帯 で は,い
諸 族 に もあ り,ウ
も か く,ペ
ルー領アマゾ ン
くつ か の 部 族 社 会 お よ び コ ロ ニ ー 社 会 の 町 や 村 に,ウ
ミ
シ ャ と い う 行 事 が 広 く行 な わ れ て い る の は確 か で あ る 。
最 初 に 述 べ た よ う に,こ
れ ま で に 得 た 文 献 資 料 に よ る 限 り,中
タ モ ン テ は ペ ル ー 領 の 北,中
(行 事3,5),高
地 部(行
部 に 分 布 して い る(図1)。
事1,2,4,9),東
部 斜 面(行
ま た この地 域 内で は海 岸 部
事7,8)の
そ し て 熱 帯 低 地 部 モ ン タ ー ニ ャ に も広 く認 め られ る か ら(行
デ ス,モ
ン タ ー ニ ャを 通 じて,そ
の 北,中
央 ア ンデ ス で は コ ル
いず れ に もあ る。
事10,11,12),中
央 アン
部 で は きわ めて ポ ピュ ラー な行 事 と見 徹 し
て 良 い22)。
22)た
と え ば フ ニ ン 県 に 近 い ワ ヌ コHu6nuco県
で あ る 。Villarealの
ワ ヌ コ県 ヘ ス スJes6s村
で もコル タモ ンテ は一 般 的 で カ ー ニバ ル の行 事
に つ い て 短 い 記 述 が あ る[VILLAREAL 1959= 94]。
269
国立民族学博 物館研究報告 5巻1号
中 央 ア ンデ ス の コ ル タ モ ン テ に つ い て は,決
も と こ の 地 域 に あ っ た もの で な く,モ
定 的 な 証 拠 に は 欠 け る が,こ
ン タ ー ニ ャ 低 地 か ら,そ
れ が もと
れ も比 較 的 最 近 に 伝 え
られ た も の で あ る 可 能 性 が 高 い 。 そ の 第 一 の 理 由 は 名 称 か ら の 推 定 で あ る 。 コ ル タ モ
ン テ は 一 部 で は ユ ン サ と呼 ば れ(行
同 じで あ り,そ
事3,4,5),ウ
ン シ ャ(行
事6)は
多分それ と
れ は モ ン タ ー ニ ャ地 帯 で 一 様 に 用 い ら れ て い る ウ ミ シ ャ(行 事10,11)
か ら き た もの で あ ろ う。 北,中
部 の ケ チ ュ ア 語 の 中 に はyunsa, れ に 類 す る語 は 見 つ か ら な い 。 ま た,コ
ル タ モ ン テcortamonteは
hunshaあ
るい は そ
東 部 低 地 の 人 々 に は そ の ま ま 森 林 を 意 味 す るmontc(山)も,森
ス ペ イ ン 語 だ が,
林 の ない 高 地 や 海岸
部 の 人 た ち に は あ ま り な じ ま な い 。 殆 ど 全 て の 飾 りの 記 述 に で て く る 果 実 も,ど
ち ら
か と い え ば熱 帯 低地 との結 びつ きの 方 が 強 い 。
第 二 の 理 由 は,現
在 こ の 行 事 の 他 地 域 へ の 伝 播 が,中
央 ア ン デ ス 部 で は 進 行 して い
る こ と で あ る 。 中 央 ア ン デ ス 南 部 に つ い て 文 献 報 告 が 殆 ど な い こ と は 先 に 指 摘 した が,
実 際 に は ク ス コ 県 の 村 で も 催 さ れ て い る 。 た と え ば キ ス ピ カ ンチ スQuispicanchis
地 方 の マ ル カ パ タMarcapata村
わ れ た が(ユ
で は,数
ン サ と い っ て い る),村
ち 込 ん で い る(山
年 前 の カ ー ニバ ル に この行 事 が始 めて 行 な
の メ ス テ ィ ソ の 一 人 が 首 都 リマ で 見 た も の を 持
本 紀 夫 に よ る 教 示 1979)。
エ ス 地 方 の カ ラ イ バ ンバCaraybamba村
筆 者 も1979年
に ア プ リ マ ク県 ア イ マ ラ
で コ ル タ モ ン テ を 観 察 す る 機 会 が あ っ た が,
こ れ も 十 数 年 前 に 始 ま っ た も の で あ る 。 こ う した 一 部 農 村 地 帯 へ の 最 近 の 伝 播 に は,
都 市 部 で の 他 地 域 出 身 者 と の 接 触 の 結 果 と み られ る も の が あ る 。 ペ ル ー の 首 都 リ マ で
も,各
地 方 出 身 者 が 集 ま って い る バ リア ー ダbarriadaで
は,カ
ー ニバ ル の と き に コ
ル タモ ンテ が あ ち こちで 催 され て い る。
い つ 頃 か ら 中 央 ア ンデ ス地 帯 で 行 な わ れ る よ う に な っ た か は わ か ら な い が,そ
れほ
ど古 い と も思 わ れ な い。 ペル ー 中部 のハ ウハ 地 方 は コル タ モ ンテが 非 常 に さか ん な 所
だ が,そ
こ で も,シ
カ ヤSicaya村
を1945年
に 調 査 し て い るEscobafは,村
わ れ る コ ル タ モ ン テ が ご く最 近 の もの で あ る と の 情 報 を 得 て い る[EscOBAR 122]。 ま た ア ヤ ク チ ョ市 お よ び そ の 周 辺 で は,今
ラ ー な 行 事 だ が,1940年
述[BusTAMANTE つ い て 書 い て い るParedesの
1973:
日で は コル タ モ ンテ は非 常 に ポ ピ ュ
当 時 の カ ー ニ バ ル に つ い て の か な り詳 しいBustamanteの
1943:67-71]の
で行な
記
中 で は 触 れ ら れ て い な い 。ボ リ ビ ア の 民 俗 全 般 に
カ ー ニ バ ル の 記 述[PAREDEs l 976:194-203]の
中にも
こ の 指 摘 は な い23)。
23)ボ
リ ビ ア 高 地 の オ ルvOruro地
方 の カ ー ニ バ ル は 非 常 に 盛 大 で,現
在 で は観 光 産 業 の一 部
に も な って い る 。 こ の 様 々 の 催 しや 踊 り の 中 に も コ ル タ モ ン テ に 類 す る 記 述 は な い
ALcALDIA 270
MuNlclPAL 1971]。
な おParedesの
ヵ 一 ニ バ ル の 記 述 は1940年
〔c£且 一t
当 時 の もの で あ る 。
友 枝 中央 ア ンデ ス の民 話 と ア マ ゾ ンの 神 話
第 三 に,コ
問 わ ず,そ
ル タ モ ン テ の 行 事 が 単 純 な せ い も あ ろ う が,ア
の 内 容 は著 し く 共 通 して い る の で,殆
ま た こ の こ と は,モ
テ の 成 立 が,比
シ ャ)自
ンデ ス,モ
ンタ ー ニ ャを
ど地 域 差 とい った も の が 見 ら れ な い 。
ン タ ー ニ ャ か らの 伝 播 に よ る 中 央 ア ンデ ス 北,中
較 的 最 近 の も の だ と い う 推 定 だ け で な く,モ
部 の コル タ モ ン
ン タ ー ニ ャ の 行 事(ウ
ミ
体 の 成 立 が 新 しい の で は な い か と 思 わ せ る 。
コ ル タ モ ン テ は 先 に 述 べ た よ う に カ ー ニ バ ル の 行 事 だ が,若
干 の例 で は別 の機 会 に
催 さ れ る 。 ハ ウ ハ 地 方 は コ ル タ モ ン テ が さ か ん な 所 で カ ー ニ バ ル に 行 な わ れ る が,オ
ル コ ト ゥ ナOrcotunaの
て9月
に あ る[RoMo [EscoBAR l 973:121]。
村 で は 守 護 聖 人Virgen 1957:37-39]。
de Cocharcasの
祝祭 の一 部 と し
ま た シ カ ヤ 村 で も ク リス マ ス に 行 な っ て い る
行 事 の 内 容 に は 変 り が な い が,こ の よ う に 開 催 期 日 に つ い て
は っ き り した 変 化 が 生 じ て い る の も注 目 して お か ね ば な ら な い 。 コ ル タ モ ン テ の 分 布
と伝 播 の 過 程,そ れ に 伴 う 内 容 の 変 化 な ど は,歴 史 的 変 化 と し て 具 体 的 に 追 跡 で き る 可
能 性 を 有 し,中 央 ア ン デ ス の 文 化 伝 播 の あ る 側 面 に つ い て 示 唆 を 与 え る も の と な る24)。
上 記 三 点 を 考 慮 す る と,比
較 的 最 近 の あ る 時 期 に,中
モ ン タ ー ニ ャ へ の 入 植 者(白
人,メ
部 族 社 会 と の 接 触 過 程 で,こ
の 地 に 現 在 見 られ る 行 事 の 形 態 が 成 立 した と 想 定 で き る 。
ス テ ィ ソ,イ
上 記 の オ マ グ ア や ヤ ー グ ア 族 の 行 事11,12は,い
央 ア ン デ ス 地 域 か ら進 出 し た
ンデ ィ オ な ど様 々 で あ る)と
った ん そ う した過 程 を 経 た 上 の もの
と 考 え た 方 が 妥 当 で あ る 。 オ マ グ ァ も ヤ ー グ ア も ロ レ トLoreto県
Iquitos市
周 辺 に 住 む 変 容 化 の 進 ん だ 部 族 で あ る 。 た だ し,こ
の 首 府 イ キ ー トス
の 行 事 が 成 立 す る に は,
何 らか の モ デ ル に な る も の が 部 族 社 会 の 祭 や 儀 礼 に あ っ た は ず で,事
に 類 す る 儀 礼 が ウ ィ ト ト族 に あ り,1907年
原住 民
当 時 にFarabeeが
実 ユル タモ ンテ
ジ ャ リ コjalikoの
祭を
観 察 して い る 。
儀 礼1 焼 畑 を 始 め る 頃 に,人
ー トの 丸 太 を 切 り 出 し,村
首 長 は こ の 丸 太 の 先 端 に,胸
副 首 長(複
数)は,横
々 は 森 へ 行 って,直
径3フ
ィ ー ト,長
さ50∼70フ
ィ
の 首 長 の 家 へ 運 ん で 来 る 。 村 人 が 畑 仕 事 に 従 事 す る 間,
の あた りで 腕 を組 ん だ姿 の女 性 の 胸 像 を彫 る。 助 手 の
た え た 丸 太 の 上 部 を 平 た く け ず り,両
側 面 に は 赤,黒,黄
の
三 色 で ア ナ コ ン ダ 蛇 を 表 す 文 様 を 描 く。 八 カ 月 た っ て 最 初 の 収 穫 物 が 実 る 頃 に,ジ
ャ リ コ と い う 盛 大 な 祭 を 催 す 。 祭 の 日,首
長 の 指 示 で 六人 の男 が 食 物 を集 め る。 樹
皮 布 の 仮 面 を つ け ジ ャ ガ ー に 変 した 二 人 は,鈎
状 に な った棒 で 副 首 長 の家 の屋 根 を
24)先 史 学 で は,中 央 ア ンデ ス形 成 期 文化 の成 立 に お け る東 部熱 帯 低 地 との関 連 は,い わ ゆ るジ
ャガ ー信 仰 の伝 統 を は じめ と し,非 常 に重 視 され て い る。 ペ ル ーの 考 古学 者Telloは
チ ャビン
文 化 の ジ ャガ ー信 仰 か らイ ンカ の ビ ラコチ ャ神信 仰 を 発 展 の系 列 の 中 で把 え,そ の成 立 の基 盤
に熱 帯 低 地 の ジ ャガ ー神 話 や双 子 神 話 を据 えよ う と した[T肌Lo 1923:93-320]。
271
国立民族学博物館研究報告 5巻1号
ひ っか いて 壊 し,木 を 表 す 仮面 をつ けた 二 人 は石 斧 で 家 の柱 を切 りつ け る。 ま た 鳥
の 文様 を描 いた 仮 面 の 二 人 は 畑 へ行 って 荒 らす 。 こ う した乱 暴 を防 ぐた め に,村 人
は彼 等 に食 物 を 提 供 す る 。乱 暴 者 は それ を 首長 の家 へ持 ち帰 る。 夜 に村 人 が 集 ま り,
次 の 日まで 踊 りあか す 。女 は地 面 で 踊 り,男 は丸 太 の プ ラ ッ トフォ ー ムの 上 で 手 に
した杖 で 体 を 支 え,女
と向 い合 せ で 踊 る。歌 は太 陽,月,植
物,果 実,動 物 を讃 え
て お り,足 を 交 互 に 踏 み か え,右 足 で 強 く踏 み 鳴 ら して 踊 る。 踊 りの あ と,首 長 は
女 性 像 の 部 分 を 小 さ く切 って,各 家 族 の 長 に分 け与 え,各 人 は これ を 家 に持 ち帰 っ
て火 に くべ る。 首 長 は像 の頭 の部 分 を 火 に くべ る。 祭 は収 穫 感 謝 儀 礼 と思 わ れ るが,
内容 の正 確 な 意 味 は解 らな い[FARABEE l922:139-140]。
焼 畑 開 始 後 八 カ月 とあ る か ら,こ の祭 は カ ー ニバ ル の 時 期 に 一 致 す る。五 十 年 後 に
同 じウ ィ ト ト族 の儀 礼 をGirardも
記 述 して お り,ヤ デ ィ クyadikと
呼 ばれ て い る。
儀 礼2 焼 畑 作業 の時 期 に首 長 が 開催 を 予告 して おい た ヤ デ ィ ク儀 礼 は,マ ニ オ ッ.
ク の収 穫 期 に 行 な わ れ,前
もって 食 物,酒 を豊 富 に用 意 す る。 祭 の 当 日森 か ら長 さ
13メ ー トル ぐらい の丸 太 を,祭 の"王"と"王
女"を 先 頭 に,飾
りを つ け身 体 に彩
文 した 多勢 の人 た ちが,首 長 の 家 に運 んで 来 る。 この 行 列 は 村 に 着 くまで 人 に見 ら
れ て は い け な い。 丸 太 は地 面 に打 ち込 ん だ何 本 か の 杭 の 上 に 横 た え る 。丸 太 に は女
性 の 像 が彫 られ,蛇 の 文 様 が 描 か れ る。 杖 を もった 男 た ちが この上 で,地 面 で 踊 る
女 た ち に 向か い合 って 踊 る。 とき に木 を 切 る真 似,押
し倒す 真似 をす る。 丸 太 の 上
で 踊 る 男 た ち と別 に,白 い樹 皮 布 の仮 面 を つ けた 十人 位 の 男 た ち が踊 り,種 々の ふ
ざ けを して,家 の柱 に登 った り,食 物 を 盗 ん だ り,斧 で柱 に 切 りつ け た り,畑 荒 し
を す る 。"空 腹 な"彼 等 は踊 り手 を 嚇 か し,そ こへ 首 長 が 介 入 して,仮 面 を は ぎ取 り,
そ の あ と食 物 を与 え,以 後 は人 間 と して 振 舞 う。 収 穫,神 話 上 の人 物,月,太
陽を
讃 え る歌 が あ る。 踊 り は夜 に始 ま って翌 朝 まで続 き,首 長 と老 人 は それ に参 加 せ ず,
祭 が ドラマ化 して い る神話 を 朗 唱 して い る[GIRARD Girardの
1958:80-83]。
記 述 に は儀 礼 の表 象 的 解 釈 が か な り加 わ って お り,そ れ が彼 自身 の もの
か 原 住民 の もの か判 然 と しな い の で別 記 す る と,1.丸
太 の彫 像 と蛇 は神 話 的 男女 の
一 対 を表 し,丸 太 に よ って生 命 の木 が表 され る。2.儀
礼 は生 命 の木 を 切 った あ との
栽 培 植物 の起 源 やそ の と き豊 富 な収 穫 を得 た とい う神 話 の ドラマ化 で あ る。3.丸
太
を 運 ぶ飾 った 人 た ち は 天 体 の神 格 や 神 話 的 英 雄 を 表 す[GIRARD l958:80--83]。
ウ ィ ト ト族 の ヤデ ィク に相 当す るi祭は隣 接 す る オ カ イ ナOcaina族
で は ダ ヤ ウ ィカ
dayawikaと
呼 ば れ て い る。
儀 礼3 祭 の ひ と月 前 に踊 りの プ ラ ッ トフォ ー ム にす る た め,倒 す 木 を きめ る 。 当
272
友 枝 中央 ア ン デ ス の民 話 と ア マ ゾ ン の神 話
日 飾 り た て た 多 勢 の 男 女 が,一
対 の 男 女 を 先 頭 に森 へ 行 き 丸 太 を 切 り 出 して くる 。
こ の 一 団 は 村 へ 丸 太 を 運 び 終 る ま で 人 に 見 られ て は い け な い 。 丸 太 に は 女 性 像 が 彫
られ,蛇
の 文 様 が 描 か れ 神 話 上 の 人 物 が 表 さ れ て い る[GIRARD こ の 儀 礼 に つ い て の イ ン フ ォ ー マ ン トの 説 明 と して,1.丸
1958:136-137]。
太 の 像 は 最 初 の 女 で,
始 め て 栽 培 植 物 を 手 に 入 れ た 女 性 で あ る ア メ ナ コ ンAlnenakognを
初 の 蛇 を 表 す 。2.歌
3.最
表 し,文
の 中 で は 蛇 が 太 陽 あ る い は 創 造 主"父"と
初 の 女 は 大 地 で,蛇
と女 の 対 は 太 陽 と 大 地,祭
様 は最
一 体 視 さ れて い る。
の 王 と 王 女 に 相 当 す る[GIRARD
1958: 136-137]。
さ ら にGirardは
こ の 儀 礼 と 同 じ も の が,ヤ
に も あ る と 指 摘 して い る が,内
2-4は
リグ ァyariguaと
容 に つ い て 詳 し くは 記 録 して い な い(儀
い ず れ も マ ニ オ ッ ク の 収 穫 期 に あ た って,収
を 有 し,そ
呼 ば れ て,ボ
礼4)。
儀礼
穫 感 謝 あ るい は豊饒 儀 礼 の性 格
の 内 容 は 神 話 時 代 の 再 現 あ る い は ド ラ マ化 で あ る,とGirardは
い る 。 実 際 彼 に よ って 神 話 が 採 録 さ れ て お り,以
ー ラ族
見徹 して
下 の 二 神 話 が そ れ ぞ れ 儀 礼2,3に
対応 して い る 。
神 話1 ア ナ コ ンダ の ブ イ ナ イ メBuinaimeが
ア メ ナ ・コ ゴ エ ナAmena・cogoena
と い う女 と 交 わ り,男 子 を 出 産 す る 。 四 日 後 に 赤 ん 坊 は 沢 山 の 栽 培 植 物(有
オ ッ ク,無
毒 マ ニ オ ッ ク,ト
ウ モ ロ コ シ,ナ
ン キ ン マ メ)を
毒マニ
実 らせ た 木 に 姿 を 変 え,
母 親 は そ の た め に豊 富 な 食物 を手 に 入れ た 。 当時 土 だ け を食 べ て いた 人 々 はそ れ を
知 り,空
腹 の た め に 実 を 手 に 入 れ よ う と して 木 を 倒 した 。 木 の 幹 か ら水 が あ ふ れ,
枝 か ら は 栽 培 植 物 が 生 れ た 。 別 の ヴ デ ー シ ョ ンで 慧 ブ イ ナ イ メ が 人 間 に 食 物 と水 を
与 え る た め に 斧 で 生 命 の 木 を 切 っ た[GIRARD 神 話2 ア メ ナ コ ンAmenacognと
ノ ィ ム ラNoimuraと
い う 娘 が,地
ひ そ か に 交 わ り,子
熱 湯 を 注 い で 蛇 を 殺 し,娘
1958:75-76]。
底 か ら現 れ 人 閲 に 姿 を 変 え る 蛇
供 を身 ご も る。 秘 密 を 知 った娘 の母 親 が
は 谷 の 上 流 で ひ そ か に 男 子 を 出 産 す る 。 四 日後 に 戻 る と
今 ま で 見 た こ と の な い 美 しい 木 が 生 え て い た 。 木 は た ち ま ち 成 長 し,有
マ ニ オ ッ ク,マ
カ モ(カ カ オ の 一 種 か),ト
食 べ て い た 人 々 は,娘
を 拾 い,畑
毒 と無 毒 の
ウ モ ロ コ シな どの 実 を つ け た 。 当時 土 を
か ら秘 密 を 聞 き だ し,そ
の 木 を 倒 し,散
らば っ た 果 実 や 種 子
に 植 え た 。 木 が 倒 れ た あ と に 大 き な 泉 が 生 じ た 。 木 を 倒 し た た め に,そ
れ ま で 死 ぬ こ と の な か っ た 人 間 は 死 ぬ よ う に な っ たLGIRARD これ ま で に 検 討 して き た コ ル タ モ ン テ(中
い くつ か の 部 族 の 収 穫 儀 礼 と 神 話(モ
す る こ と が で き る 。1.儀
礼1-4は,そ
央 ア ンデ ス),ウ
ン タ ー ニ ャ)の
1958:133-134]。
ミ シ ャ(モ
資 料 か ら,ま
ン タ ー ニ ャ),
ず次 の よ うに結 論
の 観 察 記 録 者 が 指 摘 す る よ う に,ア
マゾ ン
273
国立民族学博物館研究報告 5巻1号
諸 族 の 作 物 収 穫 期 に 行 な わ れ る 感 謝 儀 礼 も し くは 豊 饒 儀 礼 の 性 格 を 有 し,そ
栽 培 植 物 の 起 源 を 含 む 神 話 的 世 界(神 話1-2)を
た 儀 礼 の 行 為 あ る い は 事 物 に つ い て の,観
的,観
の内容 は
再 現 あ る い は ド ラ マ 化 して い る 。 ま
察 者 あ る い は儀 礼 を 行 う人 自身 に よ る表 象
念 的 解 釈 も し く は 説 明 が 加 え られ て い る 。
2. そ し て,儀
礼1-4お
よ び 神 話1-2の
内 容 と 行 事1-12の
内 容 の 間 に は,非
常
に 類 似 した 面 が あ る 。 あ た か も行 事1-12は
神 話1-2の
内 容 を そ の ま ま 再 現 して い る
か の ご と く で,両
神 話1-2間
の 類 似 よ り もむ しろ強 い と見
者 の 類 似 は,儀
え る ほ ど で あ る(お
礼1-4と
そ ら く儀 礼1-4の
意 味 内 容 は も っ と包 括 的 で あ っ て,神
話1-2
は そ の 一 部 に過 ぎ な い た め で あ ろ う)。 そ の 神 話 的 背 景 や 表 象 的 解 釈 に つ い て は 根 拠
を 示 して い な い が,Girardは
オ マ グ ア と ヤ ー グ ア の 行 事11-12を
豊 饒 儀 礼 と 見 徹 して
い る 。 行 事 と神 話 の 内 容 の 類 似 を 知 れ ば 当 然 と も い え そ うで あ る 。
3. しか しな が ら,Girardの
記 述 の 中 で 収 穫 儀 礼 と さ れ た 行 事11-12を
中 央 ア ンデ ス お よ び モ ン タ ー ニ ャ の 行 事1 -10に
つ い て は,い
別 に し て,
ず れ の 観 察 記 録 者 もそ
の 内 容 を 収 穫 儀 礼 に 類 す る もの と 規 定 して い な い 。 そ れ ば か り で な く,こ れ ま で に 多
数 報 告 さ れ て い る ア ン デ ス お よ び モ ン タ ー ニ ャ の コル タ モ ン テ は,宗
を 欠 い て い る し,そ
の 観 念 的 背 景 と い っ た も の を 有 して い な い 。 こ れ は 行 事 を 行 な う
人 々 の レベ ル で 見 て も,観
判 断 す る 限 り,コ
教 呪術 的 な動 機
察 者 の レベ ル で 見 て も 同 じ で あ る 。 こ れ ま で 得 た 資 料 か ら
ル タ モ ン テ の 記 録 に は,表
か な 指 摘 は な い 。 む し ろ,そ
象 的 意 味 や 背 景,宗
教 呪術 的動 機 の明 ら
う した もの を 欠 い た 楽 し い に ぎ や か な 催 し と し て,人
々
は コル タモ ン テ に参加 して い る。
中 央 ア ン デ ス の コ ル タ モ ン テ と モ ン タ ー ニ ャ 諸 族 の 神 話,儀
な 歴 史 的 関 係 が あ る とす る な ら,こ
礼 の 間 に,先
の 関 係 は 次 の よ う に い え る 。 コ ル タ モ ン テ は,ア
マ ゾ ンの 栽 培 起 源 を 含 む 神 話 お よ び 関 連 した 儀 礼 を コ ピ ー して,中
られ た も の だ が,そ
れ は 形 式 と構 成 の み に 限 定 さ れ,オ
託 して 表 明 して い た 意 味(メ
述の よう
ッ セ ー ジ)は
央 ア ンデ ス に伝 え
リジ ナル が そ の形 式 と構 成 に
伝 え ら れ な か っ た し,ま
た 明 らか な別 の 意
味 が 加 え られ る こ と も な か っ た 。
中 央 ア ンデ ス の コ ル タ モ ン テ は,い
物 を 奪 い 合 う 行 為 で あ り,モ
ず れ の 場 合 も,木
ン タ ー ニ ャ の 神 話 は,木
を 切 り 倒 し,倒
を 切 り倒 し,倒
れ た木 の飾 り
れ た 木 に な って
い た 果 実 を 人 々 が 手 に 入 れ る 話 で あ る 。 両 者 の 構 成 の 一 致 は も う少 し 詳 し く見 る こ と
が で き る 。 す な わ ち,〔 蛇(男)と
ss結婚"し て い る(行
親)の
274
事3)〕
間 に 洗 礼 子(木)が
人 間(女)が
性 的 に 交 わ る(神
,〔 二 人 の 間 に 子 供(木)が
い る(行
事 ユ,2)),〔
話2)):〔
主催者 は
生 れ る 〕:〔 一 組 の 男 女(洗
礼
一 本 の 木 が 種 々 の 果 実 を つ け る(神 話
友 枝 中央 ア ンデ ス の民 話 とア マ ゾ ンの 神 話
1,2)〕:〔
木 は 種 々 の 品 で 飾 ら れ て い る),〔
木 を 人 々 が 切 り倒 す(神
〔木 を 人 々 が 切 り倒 す 〕,〔 散 っ た 果 実 や 種 子 を 人 々 は 畑 に 植 え る(神
話1,2)〕:
話2)〕:〔
倒れた
木 の 飾 り物 を 奪 い 合 う 〕。
神 話1-2の
行 事3の
ヴ ァー シ ョン で あ る ア ピナ エ の栽 培 植 物 起源 神 話 の仲 々倒 せ な い 木 と
欠 け た 刃 の 対 応 は,す
食 物 で あ る が,コ
で に指 摘 して お いた 。 また 神話 上 起 源 す る栽 培 植 物 は
ル タ モ ン テ の 飾 り に も食 物 は 欠 か せ な い 要 素 で あ る 。 ア ンデ ス の 行
事 と ア マ ゾ ンの 神 話 に こ れ だ け の 類 似 す る 対 応 が あ り な が ら,コ
ル タモ ンテ に一 切 の
神 話 的,宗
し ろ不 思 議 な く ら い
教 呪 術 的,あ
る い は 観 念 的 背 景 が 欠 け て い る の は,む
で あ る 。 オ カ イ ナ 族 の 誰 か が ア ン デ ス 山 中 で コ ル タ モ ン テ の 情 景 に 出 会 っ た ら,自
分
た ちの 神話 を想 起 す る に違 い ない と思 わ れ るほ どで あ る 。
以 上 の 三 点 を 一 応 の 結 論 と した 上 で な ら,こ
こ で,中
央 ア ンデ ス の コ ル タ モ ン テ が
豊 饒 や 再 生 の 観 念 と結 び つ き 得 る か も しれ な い こ と を,仮
説 と して 提 起 で き る で あ ろ
う 。 そ れ は コ ル タ モ ン テ が カ ー ニ バ ル 行 事 の 一 部 と して 催 さ れ る こ と に 関 連 し て い る 。
GirardやFarabeeの
記 述 か らす る と,儀
礼1-2は
マ ニ オ ッ ク の 収 穫 期 に 行 な わ れ,
そ れ は カ ー ニ バ ル の 時 期 と一 致 す る 。 さ ら にGirardは
ャ を 彼 等 の 収 穫 感 謝 あ る い は 豊 饒 儀 礼 と 見 倣 し,そ
オ マ グ アや ヤ ー グ アの ウ ミシ
れ が カ ーニ バ ル に行 な われ る とい
う書 き 方 を して い る 。 中 央 ア ン デ ス の カ ー ニ バ ル に も,少
く と も そ の 一 部 に は,豊
饒
観 念 と の 結 び つ き が あ る 。 ア ン デ ス の カ ー ニ バ ル の 祭 は 複 雑 な 要 素 か ら成 って い る が,
こ れ ま で の 資 料 を 詳 細 に 分 析 して い け ば,祭
の 中 に 生 と死(再
生),混
饒 と い っ允 様 相 を 明 らか に す る一
こ一
と が で き そ う で あ る 。 た と え ば,家
乱 と秩 序,豊
畜 の 増殖 儀 礼 が
カ ー ニ バ ル の 一 部 と し て 行 な わ れ て い る 地 方 は 数 多 い25)。 コ ル タ モ ン テ そ の も の に は
目 下 見 当 ら な い が,そ
れ が 組 み 込 ま れ て い る カ ー ニ バ ル を 全 体 と して 分 析 す る こ とで,
行 事 の 意 味 を 明 ら か に す る こ と が で き る で あ ろ う。
さ て,こ
れ まで に 検討 して き た
1,・2章
る 。 中 央 ア ン デ ス 南 部 の 民 話 に お い て,栽
か ら,結
局 の と こ ろ,次
の よ う に要 約 で き
培 植 物 の 起 源 と い う メ ッ セ ー ジ は,天
と地
の 間 の ロ ー プ の 切 断 に よ る キ ッ ネ の 死 体 の 四 散 と い う構 成 を 通 じ て 伝 え られ る 。 切 断
と 四 散 と い う 形 式 は 北 部 の コ ル タ モ ン テ に 反 覆 さ れ,木
合 う(四
散)と
い う 行 事 を 構 成 す る26)。 こ の 構 成(し
を 切 り(切
断)飾
り物 を 奪 い
た が っ て 形 式 も)は
モ ンタ ー 二
25)中 央 ア ンデ ス の家 畜 増 殖 儀礼 につ い て は友 枝[1978a:1-39]を
参照。
26)コ ル タモ ンテ で木 を 切 る場合 に,天 地 の上 下 同 様 に木 の上 下 関係 が 意 味 を もち得 る こ とは行
事2に あ り,次 年 の役 を 引 き受 け た組 の女 が 木 の下 部 を,男 が 上 部 を取 る。 飾 りつ け(木 の上
部)は 女 の役 目で あ る。 木 が地 面 に倒 れ た 衝 激 で実 際 に飾 り物 は散 る し,見 物 人(主 と して子
供)が 「
腹 を すか せ た小 鳥 の よ うに」 群 が る し[DAvlLA 1952:865],「 ハ ゲ タカ の よ うに 食物
を む さぼ り食 う」[HoussE 1946:131]。 食 物 の奪 い合 いが危 険 な ので,行 事3で はあ る時期
か ら食 物 は飾 りつ け な い(c£p.265)。
275
国立民 族学博物 館研究報告 5巻1号
ヤ の 神 話 に 反 覆 さ れ,始
(四 散)と
源 的 な 木 を 切 っ て(切
った 果 実 を 拾 っ て 畑 に 植 え る
い う神 話 構 成 を 通 じ て,栽 培 植 物 の 起 源 と い う メ ッセ ー ジ が 伝 え られ る2?)。
ア ン デ ス 南 部 の 民 話 と モ ン タ ー ニ ャ の 神 話 は,構
一致 し
断)散
,栽
成 に お い て は 異 る が,形
式 に お いて
培 植 物 の 起 源 とい う メ ッセ ー ジ に お い て 一 致 す る 。
と こ ろ で,モ
ン タ ー ニ ャ 神 話2の
メ ッセ ー ジ は 栽 培 植 物 の 起 源 だ け で な く,同
人 間 の 死 の 起 源 を 扱 って い る 。 ま た ア ピナ エ の 神 話(c£P.266)は
同 時 に 人 間 の 老 齢 化 を 扱 って い る 。 こ の 栽 培 植 物 と人 間 の 死(あ
源 の 同 時 性 は,ア
時 に
栽 培 植 物 の起 源 と
る い は 老 齢 化)の
起
マ ゾ ン神 話 に 広 く認 め られ る 。 ジ ェ語 系 諸 族 の 一 連 の 火 の 起 源 神 話,
お よ び そ の 変 形 と し て 導 か れ る 栽 培 植 物 起 源 神 話 を 分 析 した 所 で,Levi-Straussは
「老 齢 化(あ
る い は 死)は,栽
培 植 物 と 交 換 に,人
間 に よ って 支 払 わ れ ね ば な ら な か
った 代 償 で も あ る か の よ う に,人 間 に 対 して 押 しつ け られ る 」[】LEVI-STRAUSs 169]と
述 べ て い る 。 オ カ イ ナ 族 に よ れ ば,人
物 を 手 に は 入 れ た が,そ
皿.嘘
間 は 始 源 的 な 木 を 切 り 倒 し て,栽
1964:
培植
のた め に死 を 経 験 す る よ うに な った ので あ る。
つ きチ ワ コ の 証 言
少 な く と も形 式 の レベル で は,ア
植物 起 源 の神 話1-2と
一致 し,か
ンデ ス 栽 培 植 物 起 源 の 民 話1-6は
ア マ ゾ ン栽 培
つ メ ッセ ー ジを 共 有 して い る。 しか しな が ら後 者
の 場 合 に は,栽 培 植 物 起 源 に加 え て,人 闘 の有 限 の生 命(死
あ るい は老 齢 化)の 起 源
が あ る。 ア マ ゾ ンの栽 培 植 物 起 源 は,あ れ これ の起 源 で はな くて,死 を伴 う もの と し
て い わ ば特 定 化 され て い る。 も しア ンデ スの キ ツネ 民話(1-6)に
も,何
で死 の起 源 が 同時 に含 まれ て い る と した ら,民 話1-6と
意 味 上 の一 体 性
神 話1-2の
らか の形
は,よ り密 度 を増 す とい え るで あ ろ う。本 章 の 目的 は それ を 検 証 す る こ とで あ る。
す で に指 摘 した よ う に,民 話1-6(栽
話7で
培 植 物 起 源)の 構成 の イ ンヴ ァー シ ョ ンが 民
あ る。 両 者 の間 に は次 の よ うな 相 関 し合 った 変 形 が あ った 。 〔民 話1-6〕
話7〕:〔
栽 培 植物 前 〕→ 〔栽 培 植 物 後 〕:〔コ ン ドル/主 人 公(キ
→ 〔民
ッ ネ)〕→ 〔コ ン ドルU
主 人公(若 者)〕:〔主 人 公 の 死 〕→ 〔主 人 公 の 生 還 〕。 そ して メ ッセ ー ジの変 化 は 〔栽 培
植 物起 源 〕→ 〔若 返 り〕 で あ った。 構 成 の局 面 で の転 倒 が 必 然 的 に メ ッセ ー ジの 転 倒 を
意 味 す る とい う保 証 はな い が,民 話1--6の
栽 培 植物 起 源 を 民 話7の
《死 を 遠 ざ け る若
返 り》 の逆 と一 応 想 定 す る こ と はで き よ う。
27)ア マ ゾ ン神 話 の神 秘 的 な 木 の上 下 が 天 地 の上 下 と関連 す る こ とは先 に指 摘 した(cf・ p・266)。
神 話2の 神 秘 的 な木 に関 して も,天 地 の 上下 関 係 と結 びつ く可能 性 が残 され て い る。Girard
の 記述 に混 乱 が あ って は っき りしな いが,殺 され た蛇(木 の父)は 天 上存 在 で もあ った ら しい。
276
友 枝 中央 ア ンデ スの 民 話 とア マ ゾ ンの神 話
実 際,〔 民 話1-6〕 → 〔民話7〕 へ の変 形 に対応 して いた 〔マ チゲ ンガ神 話(栽 培 植
物 起 源)〕→ 〔ピ ー ロ神 話(若 返 り)〕 の 間 に は,そ れ が 成立 して い る。 マチゲ ンガ神 話
で は,栽 培 植 物 を 天 界 か ら手 に 入 れ た人 間 は,あ た か もそ の代 償 と して,死 後 に天 界
の 月 に食 べ られ る運 命 を 辿 る よ うに な る 。 この神 話 は,他 の栽 培 植 物 起 源 ア マ ゾ ン神
話 の よ うに(た
とえ ば神 話2),人
間 の死 を 地 上 で 扱 わず,天
あ る28)。 以 上 の 指摘 を した 上 で,あ
らた め て民 話1-6お
界 で 扱 って い る だ けで
よ び その 変 形 と して の別 の
民 話 を 検 討 して い くこ と にす る。 ㌧
民 話1-6と
神 話1-2は
メ ッセ ー ジ と形 式 で 一 致 して い る もの の,両 者 は構 成 の レ
ベル で は相 異 な って い る。 そ こで 注 目 され る の は,ア ンデ ス 民話 の起 源 の過 程 には人
間 が 一 切 参 与 して い ない こ とで あ る 。 ア マ ゾ ン神 話 で は,神 秘 的 な木 を 切 り倒 す こ と
に よ って,人 間 は栽 培 植 物 の 獲 得 に直 接,積 極 的 に参 与 す る 。 つ ま り人 間 は神 話構 成
の重 要 な要 素 とな って い る。 民 話1-6は,破
裂 した キ ッネ の腹 か ら飛 び 散 った もの
が 地 上 栽 培 植物 の起 源 とな った,と 語 って い るだ けで,ど の テ キ ス トを 検 討 して も,
キ ッ ネの 《お か げ》 で 人 間 が 栽 培 植 物 を手 に入 れ る こ とが で き た,と い うニ ュ ア ンス
さ え うか が え な い 。
また ア マ ゾ ン神話 は,栽 培 植 物 前 の状 態 を 「土 を 食 べ て い た」 と か 「腐 った もの を
食 べ て いた 」 と特定 化 し,栽 培 植 物 の獲 得 に よ る人 間 状 態 の根 源 的 移 行 を 明確 に して
い るが,民 話1-6の
栽 培植 物 前 は特 に規 定 され て い な い。 わ ず か に民話1が,地
上
世 界 で は腐 った もの を食 い,当 時 の キ ッネ の 口 は小 さか った と して,現 実世 界 との転
倒 状 態 を 暗 示 して い る傷 現 実 に はキ ツネ の 【
ユは大 き一
くて,生 肉食 で あ り,民 話 の 中 で
キ ッ ネ と対 立 的 扱 い を受 け る コ ン ドル の方 が腐 肉食 で あ る(話 の コ ンテ ク ス トか らい
って栽 培 前 の コ ン ドル は腐 肉を 食 べ て い な か った)。 しか しな が ら,い ず れ に して も,
民話 は人 間 存 在 につ い て全 く無 関 心 な 態 度 を とる こ と に は変 りが な い と いえ る。
も し民 話1-6に
人 間 を 直接 に参 与 させ た と した ら,そ れ は新 た に構 成 要 素 が 加 わ る
こ とで あ り,民 話 構成 上 の変 形 が生 じるで あ ろ う。 実 際 に,ア ンデ ス の栽 培 植 物起 源
を 扱 い な が ら,ア マゾ ン神 話 と 同 じ くそ こに人 間 存 在 を 参 与 させ て い る民 話 が,中 央
ア ンデ ス南 部 に あ り,民 話1-6の
民話1の 採 録 者Paredesが
変形 と して 導 く こ とが で き る。 次 の 民話 が そ れで,
ボ リビ ア領 高地 の ポ トシ県 の 同 じ村 で得 て い る。
28)マ チゲ ンガ 族 に は人 間 の死 の起 源 を扱 った別 の神話 が あ る。 そ れ によ る と,創 造 の神 は人 間
を 柔 らかい 木 で作 り,そ れ に苦 情 を い った 人 間 に腹 を たて て,死 ぬ よ うに運 命 づ け た。 も し堅
い木 で作 られ て い た ら人 間 は死 ぬ こ とは なか った[FERRERO 1966:385]。 これ は後 出 のチ ワ コ
民 話 に あ る柔 らか い歯 の 起源 と相 似 の 関係 にあ り,マ チゲ ンガ 族 の神 話 は 人 間の 死 を扱 い,チ
ワ コ民 話 は 《人 間 の歯 の死 》つ ま り 《部分 的 な 死》 の 起源 を扱 う。
277
国立民族学博物館研究報告 5巻 ユ号
民話31大
地 が完 全 に丸 裸 で,動 物 た ち は弱 肉強 食 の 争 い を して いた 。 そ れ を 憐 れ
ん だ 神 は キ ツ ネを 呼 び,た だ一 つ の畝 に この全 て の 種 子(複 数)を 蒔 くと一 本 の木
が 生 え,ジ
ャガ イ モ,ト ウモ ロ コ シ,キ ヌ ア,カ ニ ャ ワが そ れ に実 り,必 要 な 食 糧
が 手 に 入 る だ ろ う,と 人 間 た ちに伝 え させ た。 当時 は小 さ くて美 しい形 の 口で 口笛
を 吹 くよ うな話 し方 を して い た キ ッネ は,人 間 や動 物 を 集 め,色,大
じて これ らの 種 を 選 び分 け,一
々 は一 生 懸 命 働 い て,苦
ネ の嘘 を知 り,罰
[PAREDEs き さ,形 に応
つ 一 つ 違 った 土 地 に植 え る よ うに,と
い った 。 人
労 の あ げ くに 作 物 を 育 て あ げ た。 あ と にな って 神 は キ ッ
と して 口 を 耳 の所 ま で 裂 い て,嘘
つ きに ふ さ わ しい大 口 に した
l953:25-26, repr・1973:62]。
この民 話 で は キ ツ ネは 神 の指 示 を 伝 え る メ ッセ ン ジ ャーで,神
悪 意 を 含 んだ 仲 介 伝 達 を し,そ
と人 間 の 間 に あ って
の た め に 現 実 の 栽 培 植物 とそ れ を 育 て るた め の労 働
(労 苦)が 人 間 世 界 に起 源 した とい う こ とに な る。 テ キ ス トで は 神 はSer Supremo
とあ り,こ れ は キ リス ト教 的 な至 高 神 で あ る。 ア ンデ ス の人 々 は神 が 天 界 に 存在 す る
と普 通 に は考 えて い る(こ の点 は後 の民 話32で よ り明 らか に な る)。 民 話1-6の
キッ
ネ も天 界 か ら地 上 界 へ 栽 培 植物 を運 ぶ メ ッセ ンジ ャー で あ った 。 神 が い る天 界 の 栽培
植物 は神 秘 性 を 帯 び て い た が,現 実 に地 上 界 に起 源 す る栽培 植 物 は,あ
り得 た か も知
れ ぬ もの に比 べ て,人 間 の 労苦 を必 要 とす る ゆえ に 劣 って い る。 地 上 に起 源 す る栽 培
植 物 を,そ
う した 意 味 で,特
定 化 して い な い民 話1-6で
性 もは るか に薄 れ て い る(民 話6の
は,天
界 の 栽 培 植 物 の 神秘
カ ニ ャワだ けが 神秘 性 を有 して い るが)。
天 と地 の関 係 を め ぐって,地 上 に栽 培 植 物 が 起 源 す る過 程 に関 して は,民 話31と 民
話1-6の
間 に は 次 の よ う な対 応 が あ る。 〔民 話31〕→ 〔民話1--6〕:〔 天 の 神 が キ ツネ に
渡 した種 々の栽 培 植 物 の 種 子〕→ 〔天 の宴 会 で キ ツ ネが 食 べ た種 々の 栽 培 植 物 〕:〔種 々
の 種子 が一 本 の木 に な る〕→ 〔
種 々 の 栽培 植 物 が キ ツ ネの 腹 に入 る〕:〔別 々の 畑 に 蒔 く
栽 培 植 物 の起 源 〕→ 〔四 散 状 態 で の栽 培植 物 の起 源 〕。 一 方 民 話31と 神 話1-2の
明 らか で,〔 民 話31〕→ 〔神話1-2〕:〔
対応 も
一 本 の 木 に種 々の栽 培 植 物 が な るはず だ った 〕
→〔
一 本 の 木 に種 々の 栽 培植 物 が な って い た〕:〔 キ ツ ネの 嘘 に よ り別 々の 畑 に植 え る
栽 培 植 物 の 起源 〕→ 〔
木 を切 り散 らば った果 実 を植 え る栽 培 植 物 の起 源 〕。
要 素 的 に み て も構 成 全 体 か らみ て も,民話31が 同 じ中央 ア ンデ ス の 民話1-6に
近い
こ とは 明 らか で,地 上 の栽 培 植 物起 源 の 原 因者 は依 然 と して キ ッネ だ し,そ の 仲 介者
と して の 役 割 は天 界 と地 上 界 の 関係 を め ぐ って い る。 あた か も民 話1-6の
構成 に 人
間 の参 与 と い う新 しい要 素 を 取 り入 れ た か の ご と き民 話31は,民
構成 を 踏
話1-6の
襲 しか つ それ を 変 形 して,独 自の 構 成 を な す に い た って い る。 この 観点 か らす る と,
278
友 枝 中央 ア ンデ ス の 民話 と ア マ ゾ ンの 神 話
神 話1-2の
構 成(異 種 の 栽 培 植 物 が な った 一 本 の 木 を 切 り 倒 し,散
らば った果 実 を 植
え る)は,民
話31の 部 分 構 成(一
本 の 木 にな るは ず だ った異 種 の 栽 培植 物 を 別 々の 畑
に 植 え る)と
な っ て い る 。 民 話31の 基 本 構 成 が 天 と 地 の 関 係 を め ぐ っ て い る こ と は,
次 の ク ス コ 地 方 の 短 い 簡 明 な ヴ ァ ー シ ョ ン が 明 らか に す る で あ ろ う 。
民 話32 い つ の 頃 だ か は わ か ら な い が,タ
イ タ チ ャTaytachaは
一 本 の植 物 に人 間
の 食 べ る 全 て の 作 物 が 実 る よ う に 指 示 し た 。 植 物 の て っぺ ん に 小 麦 が,脇
十 本 の トウ モ ロ コ シ が,そ
マPachamamaが
して 根 に は ジ ャ ガ イ モ が 実 る は ず だ った 。 しか しパ チ ャ マ
そ ん な に 沢 山 の 実 り を 与 え る わ け に は い か な い と 怒 っ て 抗 議 した 。
以 来 ジ ャガ イ モ,ト
た ら,人
に は 五 本,
ウ モ ロ コ シ,小
間 の 女 も 一 度 に 五 人,十
麦 は 別 々 に 実 る 。 も しパ チ ャ マ マ の 抗 議 が な か っ
人 の 子 供 を 生 む こ と に な っ て い た[VALDERRAMA
1977:57]Q
民 話31に 比 べ て 断 片 的 で あ る が,天
と地 の 関 係 を 明 瞭 に 扱 って い る の は 興 味 深 い 。
タ ィ タ チ ャ は ケ チ ュ ア 語 で カ ト リ ッ ク の 神(キ
の 存 在 と さ れ て い る 。 一 方 パ チ ャ マ マ は,普
る よ う に,地
上(む
し ろ地 下)存
者 の キ ッ ネ を 消 去 し,天/地(む
リス ト)の
こ とで あ り,一
般には天上
通 に は地 母 神 あ るい は大 地 の 母 と 訳 さ れ
在 で 女 性 的 性 格 が 与 え ら れ て い る 。 民 話32は,仲
し ろ地 下),男/女
の 対 立 的 関 係 か ら,現
介
実の種 々
の 栽 培 植 物 が 生 じた と 語 っ て い る 。 こ れ と 反 対 に 次 の ヴ ァ ー シ ョ ン は 民 話31に 比 べ て
非 常 に 詳 し く な って い る 。 こ れ は ボ リ ビ ア 高 地 ス ク レ県 カ ン チ スCanchis地
ン パ ラ エ スYamparaezで
民 話33神Diosが
民 俗 学 者 のCostaに
世 界 を 創 造 し,人
間,大
よ り採 集 され て い る。
地,動
物,植
物,太
た 。 こ れ ら に 色 や 性 質 を 備 え さ せ る の は 後 の 仕 事 に残 し,そ
造 物 へ 自分 の 意 図 を 伝 え る た め に,神
方の ヤ
陽,月,星
を創 っ
の と き に な って,被
は 誤 って キ ッ ネ を 仲 介 に 選 ん だ の で,創
創
造 は
不 完 全 に な った 。 天 上 か ら 「人 間 は 衣 服 な しで 裸 で 暮 ら せ る よ う 腰 を 覆 う羽 毛 を 与
え る 」 と 神 は 伝 え た が,人
間 は,何
故 だ か わ か ら な い が,こ
で,キ
ッ ネ に 神 が 何 と い った か と 訊 ね る と,キ
ら,糸
を つ む ぎ,指
の 腹 が は れ,胸
は 畑 に 種 を 蒔 く必 要 は な く,木
小 麦 が 実 る と い う が,人
し,植
の 声 を 聞 か な か った の
ッ ネは 女 た ちが 働 いて衣 服 を作 るか
が 痛 む ま で 仕 事 を せ よ と い っ た,と
や 草 が 容 易 に 実 を つ け,ト
間 に 問 わ れ た キ ッ ネ は,大
ウ モ ロ コ シの 果穂 の先 に
地 に 種 を ま き,労
物 は 神 の 真 実 の 子 で あ る 動 物 の た め に と って お か れ る,と
は 一 日 に 一 度 食 事 を す れ ば 良 い と い う が,キ
働 を して暮 ら
教 え る。神 は人 間
ツ ネ は 日 に 三 度 食 事 を せ よ,特
者 の 女 た ち は こ の 掟 を し っ か り守 れ と い っ た 。 羊 は 青,赤,緑,白,黒,黄
を 備 え,着
教 え た。 神
飾 る の に 糸 を 染 め る こ と は な い と 神 は い う が,キ
に怠 け
の虹 色
ッ ネ が 羊 の 色 は 白,黒,
279
国立民族学 博物館研究報告 5巻1号
茶 の 三 色 限 り で,ほ
か の 色 に 染 め た け れ ば 金 を 払 って ア ニ リ ン を 買 い 求 あ よ と伝 え
る 。 キ ツ ネ が 指 示 す る た び に,事
た 人 間 が,キ
れ ば,全
態 は そ の 通 り に 定 ま り,創
ッ ネ を 介 して 衣 服 の 作 り 方 を 神 に 問 う と,壺
て を 美 し い 糸 に 変 え て や る と 神 は い っ た が,女
りで 暮 ら し,望
み は 叶 え られ ぬ,と
で 世 界 が 創 られ,人
repr・PAREDEs 造主の指示に不満だ っ
の 中 に 少 し羊 毛 を 用 意 す
た ちは生 涯 糸 つ む ぎ と機織
キ ッ ネ は 神 の 返 答 を 伝 え た 。 キ ツ ネ の 気 ま ぐれ
間 は 神 の 意 図 を 暗 め て 受 け 入 れ た[CosTA 1950:166-168,
1953:21-23,1973:62-65]。
創 世 記 の ア ンデ ス 版 と も い え る こ の 長 い 民 話 は,栽
培 植 物 だ け で な く,そ れ を 含 め
た 人 間 文 化 の 起 源 と い っ た も の を 扱 って い る 。 し か し そ の 構 成 は 民 話31と 全 く同 じで,
そ れ を 繰 り返 し話 を つ な げ て,種
で,い
々 の 起 源(衣
ず れ も人 間 の 労 苦 を と も な う)を
ネ は,物
を 運 ぶ 民 話1-6の
服,栽
培 植 物,食
事 習 慣,染
色 の発 生
語 って い る 。 天 上 の 神 と 人 間 を 仲 介 す る キ ツ
主 人 公 と 違 っ て,神
の 伝 言 を 運 ぶ メ ッ セ ン ジ ャ ー で あ り,
こ の 点 で 民 話31の
キ ツ ネ は 両 方 を 運 ん で い る 。 民 話33に は 人 間 が 神 の 声 を 聞 か な か っ
た の で と あ り,天
と 地 の 通 信 に お け る切 断 を 明 らか に す る 。 そ の 結 果 と し て 人 間 界 に
労 苦 を と も な う栽 培 植 物(あ
る い は 種 々 の 文 化)が 起 源 す る の だ が,民
と地 を つ な ぐ ロ ー プ の 切 断 の 結 果 と して,地
民 話31-33で
に 比 べ て,は
は,現
話1-6で
は,天
上 界 に 栽 培 植 物 が 四 散 して 起 源 し て い る 。
実 の 栽 培 植 物 や 文 化 は,あ
り得 た か も知 れ ぬ 理 想(神 秘 的)状
態
る か に 劣 っ た も の と して 規 定 さ れ て い る 。 こ の 悲 観 論 的 起 源 に よ れ ば,
人 間 は い わ ば 嘘 つ き キ ツ ネ の 《せ い で 》 栽 培 植 物 を 手 に 入 れ さ せ ら れ た の で あ る 。 民
話1-6が
起 源 す る 栽 培 植 物 に ポ ジ テ ィ ヴ な 価 値 を 与 え ず,キ
さ せ な い の は,民 話31-33の
コ 地 方 の 村 で は,栽
papa(キ
話1-6と
に 民 話1と
ス
培 植 物 に 形 態 が 似 通 った あ る 種 の 野 生 植 物 を ア ト フ ・・Neパatoq
呼 ん で い る こ と も[MEJIA か りで,特
悲 観 論 的 起 源 と 関 連 した も の に な る 。 ま た こ の 点 で,ク
ッ ネ ・ジ ャ ガ イ モ),ア
と こ ろ で,民
ツ ネ の 《お か げ 》 を 感 じ
トフ ・サ ラatoq 1931:23-24],あ
民 話31-33は
sara(キ
ツ ネ ・ ト ウ モ ロ コ シ)と
わせ て考 慮 す べ きで あ ろ う。
い ず れ も 中 央 ア ンデ ス 南 部 で 採 録 さ れ た も の ば
民 話31はParedesに
よ り 同 一 村 か ら採 集 さ れ て い る 。 一 定 範 囲
に あ る二 つ の民 話 グル ー プに は歴 史 的 な関 係 が あ る と考 え るべ きで あ る。 この 場合 可
能 性 が 高 い の は,数
多 い ヴ ァ ー シ ョ ン が 中 央 ア ンデ ス の 南 部 一 帯 に 伝 わ っ て い る キ ッ
ネ の 墜 落 死 の 話(栽
培 起 源)に,ボ
の 民 話 が 成 立 し た と い う こ と で,そ
リ ビ ア で 新 しい 要 素 が 加 え られ て,嘘
の 反 対 は 想 定 し難 い 。 実 際,中
央 ア ンデ ス ー 帯 に
嘘 つ き キ ッ ネ の モ デ ル と な り 得 る 民 話 が あ る 。 次 の 二 つ の 民 話 が そ れ で,ペ
部 の ア ヤ ク チ ョ県 の パ リナ コ チ ャ スParinacochas地
280
つきキッネ
ルー領中
方 で採 録 され て い る。主 人公 は
友枝 中央 アンデスの民話 とアマゾ ンの神話
チ ワ コchihuacoと
い う鳥 で,大
き さ は 山 鳩 ぐ ら い で,ア
ンデ ス 高 地 で は ど こで で も
見 か け る ツ グ ミの 一 種 で あ る 。
民 話34昔
の こ と 父 な る 太 陽 は チ ワ コ に 命 じて,何
マ ンカ チ ャAri-Mancachaと
い う 壺 に 入 れ,望
か を作 る と き に は材 料 を ア リ ・
み 事 は こ の 壺 に 頼 め ば 良 い,と
間 に 伝 え さ せ た 。 実 や 葉 を 壼 に 入 れ るだ け で 望 む 食 物 が す ぐ に 出 来,マ
で も毛 糸 で も,そ
々 の 材 料 を 使 っ て 料 理 し,衣
織 り物 に し,や
を 蒔 き,収
穫 し,大
服 を 着 る の に は,ア
っ か い な 仕 事 を し な け れ ば な ら な い,と
は 人 間 が 休 み な く働 き苦 労 し て い る の を 知 り,チ
う に し た の で,チ
い に 働 き,な
ワ コを 罰 し,腸
ア リ ・マ ン カ チ ャの 壺 に 入 紅 て 衣 服 や 食 物 を 作 る よ う に,と
仕 立 て ね ば な ら な い と 伝 え,人
を 知 っ た 神 は 怒 り,こ
日 に 三 度 食 事 を し,衣
ワ コ に 命 じ て,
人 間 に 伝 え させ た 。 し
服 の た め に 糸 を つ む ぎ,
が一 本 だ けで 食 物
腹 に 悩 ま さ れ る と い っ た[MARTINEz l951:503-504]。
容 は 同 じで あ る。両 方 を 重 ね る
ワ コが もた ら した事 物 の起 源 は次 の よ うにな る。 栽 培植 物 とそ れ に伴
う農 耕 労 働 の 起 源,衣
培 植 物)の
服 とそ の た め の や う か い な 仕 事 の 起 源,火
起 源,一
間 の 参 与 と い う新 しい 要 素 が 加 わ る もの と して,民
記 民 話(嘘
を 使 用 し料 理 す る 食
日 に 三 度 の 食 事 習 慣 の 起 源 。 嘘 つ き チ ワ コ は 民 話33の
ネ と 全 く同 じ で あ る 。 した が っ て 民 話31,33(嘘
化 で あ る が,上
1944:98-99]。
間 は 神 の 掟 だ と 思 っ て チ ワ コ の い う通 り に し た 。 嘘
二 つ の 民 話 は 同 一 地 方 か ら採 られ た も の で あ り,内
物(栽
が 一 本 しか な い よ
れ か らは お 前 の 胃 袋 に は 何 も残 る ま い,腸
が す ぐ に 出 て し ま い,空
を 染 め,
い った 。 あ と に な って 太 陽
間 が 苦 労 せ ず に 済 む よ う望 ん だ 神 は,チ
か し チ ワ コ は 火 を 使 って 料 理 し,一
ま物 を 食 べ
ル パ カ を 飼 い,糸
ワ コ は い つ も 空 腹 で 食 物 を 探 して ま わ る[SALAs 民 話35 世 界 の 始 ま り に,人
こ と に よ り,チ
ゲ イで も綿
れ を 壺 に 入 れ る だ け で 布 が 出 来 る は ず だ っ た 。 しか し チ ワ コ は,
食 物 を と る た め に は 土 地 を 耕 や し,種
ず,種
人
つ き チ ワ コ)に
つ き キ ツ ネ)は,起
話1-6(墜
キッ
源 にか か わ る人
落 死 キ ツ ネ)の
構成変
関 して は 単 に 主 人 公 が チ ワ コ か ら キ ッ ネ に
な った だ け の ヴ ァ ー シ ョ ン と い う こ と に な る 。 チ ワ コ の 話 は ア ヤ ク チ ョ県 で は ラ ・マ
ルLa Mar地
方 の チ ユ カ スChillcasに
もあ る。
民 話36 神 は 人 間 の 歯 を 鉄 で つ く る は ず だ った が,神
ワ コ は 「お 前 た ち の 歯 は 澱 粉 トウ モ ロ コ シ(白
ら か い 」 と 叫 ん だ の で,神
の 決 定 を伝 え にや って きた チ
い ト ウ モ ロ コ シ)で
が 定 め た 通 り に な らず,チ
つ く ら れ て,柔
ワ コの い う通 りに な って し ま
っ た が,神
は チ ワ コ を 罰 し て 皮 膚 病 に 悩 む 鳥 に し た[MoRoTE 1954;110]。
民 話37神
は 衣 服 の た め に 人 間 が あ ま り 働 か ず に 済 む よ う に,衣
服 は ただ の 木 の 葉
で つ く ら れ る と き め た 。 そ の 触 れ を チ ワ コ に伝 え させ た が,人
間 が 木 の葉 を ま と う
281
国立民族学博物館研究報告 5巻1号
だ け な の は 馬 鹿 げ て い る か ら,仕 事 を して 衣 服 を つ く ら ね ば な ら な い と チ ワ コ が 伝
え た の で,そ
か い せ ん に 悩 ま さ れ て い る[MoRoTE 民 話38神
チ ワ コ が,犂
を 人 間 は 食 べ る と い っ た の で,そ
を 受 け た[MORρTE 民 話39 神 は チ ワ コ を 使 って,パ
道 は 短 くて,一
と 嘘 を つ い た 。 怒 っ た 神 は チ ワ コ を 罰 し,絶
真 直 で,空
[MOROTE 上 記 四 つ の 話 は 同 一 の イ ン フ ォ ー マ ン トに よ っ て い る が,採
の 通 り に 人 間 は つ む ぎ,染
あ て,布
を 織 る。 チ ワ コは罰 され て 空 腹 と
l954:111-112]。
は 人 間 が 全 て の 野 生 の 実 を 食 べ る と 定 め,こ
を ひ い た り,草
を と っ た り,仕
れ を チ ワ コ に 伝 え さ せ た が,
事 を して,六
の 通 り に な った が,チ
カ 月 た って 収 穫 し,そ
ワ コは空 腹 とか いせ ん の 罰
1954:111]。
ンパ スPampasの
村 か ら ア ヤ ク チ ョの町 ま で の
日 の 距 離 に な る と い わ せ よ う と した が,チ
腹 で 苦 しむ 鳥 に し た が,世
ワ コは 二 日の 道 の りだ
え ず 跳 ね て 歩 き,口
か ら尻 ま で 腸 が
界 の不 完 全 さ は 神 を欺 いた 鳥 のせ い で あ る
l 954:112]。
録 者 は 独 立 した ヴ ァ ー
シ ョ ン と して 扱 っ て い る 。 天 上 の 神 と 地 上 界 の 人 間 の 仲 介 を し,天
え る と い う 構 成 の 繰 り返 し で あ る か ら,そ
培 植 物 と 労 働,遠
さ ら にMoroteは
の指 令 を変 え て 伝
れ が 一 連 の 話 を な す か 別 個 に 扱 わ れ る か は,
あ ま り問 題 に は な らな い 。 チ ユ カ ス の チ ワ コ が 起 源 す る の は,柔
働,栽
れ
く な った 道 の り で,い
ら か い 歯,衣
服 と労
ず れ も劣 っ た も の と し て 起 源 して い る 。
ク ス コ 県 か ら も い くつ か 採 録 して い る 。
民 話40 神 は 人 間 が 一 日 に 一 度 食 事 を す る の が 適 当 と 考 え,チ
ワ コに そ う伝 え させ
た が,チ
の 通 り に な って し ま
ワ コ は 一 日 に 三 度 か 四 度 食 べ よ と 嘘 を つ い た の で,そ
った 。 怒 った 神 は,今
日 か ら お 前 は 休 み な し に 跳 ね て 暮 ら し,夜
腹 を す か して 朝 を 迎 え る と 呪 い,チ
キ(食
い る 人 の こ と を チ ワ コ と い う[MOROTE 民 話41神
そ の 決 定 を 伝 え る よ う 依 頼 さ れ た ア カ ク ユhakakllu鳥
¶
べ た 途 端 に 糞 を す る)に
る と伝 え た の で,そ
ワ コ の 腸 を 真 直 に した の で,こ
な り,い
は 羊 が 十 二 色 を 備 え,人
l954:108]。
間 が 染 め 粉 を 買 う必 要 が な い よ う に き め た が,
の 通 り に な り,ア
方 で は チ ワ コ,他
よ る と,ピ
トpitoと
Koepckeに
よ れ ば,ピ
282
は,羊
の 毛 は 四 色 に 限 られ
カ ク ユ は 罰 せ ら れ た[MoRoTE 1954:112]。
で 同 一 イ ン フ ォ ー マ ンー
トか ら得 ら
方 は ア カ ク ユ 鳥 に な っ て い る 。 ア カ ク ユ はMoroteに
も 呼 ば れ,寒
冷 な高地 の草 む らに 棲 息 す る。 な お 鳥 類 学 者 の
トと い う 鳥 はColaPtes rupicola Punaで
頭 頂 と く ち ば し は 灰 色 で,羽
の 鳥 は パ サ ・シ
つ も空 腹 に 悩 ま さ れ て い る 。 食 べ て ば か り
上 記 二 つ は キ ス ピ カ ン チ ス 地 方 の ワ ロHuaro村
れ た が,一
は 空 腹 に 襲 わ れ,
キ ツ ツキ の仲 間 で あ る。
根 は 黄 色 に 黒 の 棒 縞 と斑 点 が あ り,尾
は 黄 色 く,う
な じ
友枝 中央 ア ンデ スの民話 とアマゾンの神話
の 部 分 が 赤 い[KoEPcKE I970:84]。
民 話41で
は 罰 の 内 容 が わ か ら な い が,ア
カク
ユ の 特 徴 は チ ワ コ と 同 じ に 嘘 を つ い た 罰 と し て あ る 。 次 の 二 つ も ク ス コ県 で,民
は キ ス ピ カ ン チ ス 地 方 の ウ ル コ スUrcosの
シ ク ア ニSicuaniの
民 話42種
ナ ナ,ア
話43は
カ ン チ スCanchis地
ゥ ナ,オ
れ ぞ れ に,今
つ け て い る 実 の 形 に 応 じて,バ
レ ン ジ の 果 実 が 実 る は ず で,し
高 原 に も 育 つ は ず だ った 。 知 らせ を 告 げ る の に,神
か も果 実 は 谷 だ け で な く
が 誤 っ て ア カ ク ユ を 送 り,こ
鳥 が 果 物 は 川 の ほ と り の 暖 い 所 に だ け 育 つ と 叫 ん だ の で,そ
神 は ア カ ク ユ の く ち ば し を ひ き の ば し,い
に した[MoRoTE 方
もので あ る。
々 の 棘 の あ る 灌 木 に は,そ
ン ズ,ト
も の,民
話42
の 通 り に な り,怒
の
った
つ も岩 を つ つ い て 穴 を あ け て 暮 ら す よ う
1954:111]。
民 話43 ア カ ク ユ は も と 美 しい 鳥 だ っ た 。 神 は こ の 鳥 に 命 じ,人
間 は 一 日}c-一 度 食
事 を す る よ う定 め さ せ た 。 しか し ア カ ク ユ は 神 が 一 日 に 三 度 食 事 せ よ と い っ た,と
叫 び ま わ り,以
取 り 上 げ,土
来 人 間 は 三度 食 事 をす る。 これ を 知 った神 は ア カ クユ の 羽 根 の 色 を
色 の に 変 え,歌
え な い よ う に う な じの 所 か ら 舌 を 引 き抜 い た 。 そ れ で
ア カ ク ユ は う な じ の 部 分 に 赤 い 斑 点 が あ り,嘘
[MENDozA 1940:40, cf. MoRoTE を つ い た 自 分 を 呪 って 泣 い て い る
l 954:109-110]。
民 話42は 何 故 高 地 に は 栽 培 果 実 が 育 た な い か と い う観 点 で 起 源 を 扱 っ て い る 。 し た
が っ て 現 実 の 種 々 の 灌 木 は,栽
培 果 実 に 形 が 似 た 実 を つ け る 野 生 植 物 で あ り,キ
ツネ
の トウ モ ロ コ シ や キ ツ ネ の ジ ャガ イ モ と い う 名 称 に 通 じ る も の で あ る(cfp.280)。
ま た こ の 野 庄 の 灌 木 が い ず れ も棘 を 存 して い る こと は,キ
ボ テ ン が 発 生 した 民 話28(関
連 し て 民 話27)に
ッ ネ の 死 体 か ら 棘 の あ'るサ
通 じ る も の と し て,興
る 。 こ こ で 扱 って い る チ ワ コ 民 話 の ヴ ァ ー シ ョ ンは,嘘
味 深 い要 素 で あ
つ き キ ッ ネ 民 話 も含 め て,人
間 文 化 の 起 源 を 悲 観 論 的 に 規 定 す る こ とで 一 致 して い る 。 栽 培 植 物 に 限 る と,民
話31
そ の 他 は あ り得 た か も知 れ ぬ 神 秘 的 植 物 に 較 べ て 現 実 の は 劣 っ て い る と し て 起 源 物 を
扱 う 。 ア ヤ ク チ ョ県 の 民 話38は,そ
し,民
の理 想 的 植 物 が 神 の 予 定 す る野 生 植物 で あ った と
話42は 野 生 の 灌 木 に 実 る 栽 培 果 実 と して い る 。 い ず れ に して も,こ
は 神 秘 的 植 物 と 野 生 植 物 を 近 づ け,そ
れ を 栽 培 植 物 と対 立 さ せ る こ と で,自
れ らの 民話
然 と文 化
に 関 す る態 度 を 示 して い る 。 チ ワ コ 民 話 は さ ら に ペ ル ー 領 中 部 の フ ニ ン県 に も あ る 。
民 話44 チ ワ コ は 羽 根 が き れ い で,鳴
き 声 も良 い,空
を 飛 ん で い け る 鳥 で,天
と地
の 仲 介 を つ と め る 神 の お 気 に 入 り で あ った 。 地 上 に 人 間 が 住 む よ う に な って,人
は 死 ぬ ま で 長 持 ち す る 鉄 の 歯 に 恵 ま れ,三
ワ コ に い わ せ た 。 チ ワ コ は 白 い トウ モ ロ コ シ の 歯 を 備 え,一
日 に 一 度 食 事 す る こ と に な る,と
間
神 はチ
日 三 度 の 食 事 と伝 え
283
国立民族学博物館研究報 告 5巻1号
た 。 命 令 に そ む い た チ ワ コ を 神 は 罰 し,き
の よ う に し て し ま った の で,食
足 を 縛 っ た の で,チ
た な く醜 い 鳥 に 変 え,消
化 器 の部 分 を管
べ た 物 が た ち ま ち尻 か ら出て しま う。 見 え な い縄 で
ワ コ は 地 上 を 跳 び は ね,あ
ま り飛 ぶ こ と が で き な い[9UIJADA
1954:5,repr.1969/70:152]。
チ ワ コ の 羽 根 の 色,食
物 習 性,飛
び 方 な ど の 属 性 は,一
の 結 果 と し て 説 明 さ れ て い る29)。QUijadaは
チ ワ コ の 習 性 に つ い て,い
あ る 指 摘 を し て い る 。 ワ ン カ ヨ地 方 の 農 民 の 間 で は,チ
る 鳥 と さ れ,雨
待 ち 望 む 雌 が,そ
くつ か 興 味
ワ コは雨 期 の 到 来 を前 触 れす
が 近 づ い て い る し る し で,巣
ロ コ ト ン,ト
が 激 し く降 る1月
か ら3.月 は チ ワ コ の 一 番 楽 しい と き で,ギ
ゥ ナ の 果 実 が 豊 富 で,チ
終 る と チ ワ コ は 歌 わ な くな り,悲
ズ を つ い ば み,糞
作 りや ひ な の 養 い に 雨 を
ん な 関 心 の な い 雄 と争 って い る の だ と さ れ る 。 チ ワ コが 鳴 き だ す の
は12月 の 半 ば か らで,雨
ワ コは果 実 畑荒 しの鳥 で あ る。 雨 期 が
し そ うで,空
腹 を み た す の に,沼
や 汚 物 ま で 食 べ る[QUIJADA 小 麦 な ど を 貯 え,夏
地 を あ さ って ミ ミ
1954:5-6]。
ま た この 鳥 は 高 原 の 草 む らや 山 頂 に 貯 蔵 所 を 持 っ て い て,ソ
ラ マ メ,ト
ウ モ ロ コ シ,
の 乾 期 に 備 え る と も い わ れ て い る 。 中 央 ア ンデ ス の 農 耕 は 雨 期 と
乾 期 の サ イ ク ル に 従 っ て 営 ま れ て お り,雨
ワ コ が,栽
の処 罰
が 降 る の を 喜 ん で 鳴 く。 こ れ は 巣 作 り の 時 期 と も一 致 す る ら し く,雄
雌 の チ ワ コ が 争 って い る と,雨
ンダ,メ
連 の 民 話 の 中 で,神
培 植 物,そ
期 と 乾 期 で 鳴 き声 が サ イ ク ル 化 して い る チ
れ も労 働 を 伴 う農 耕 栽 培 の 起 源 者 で あ る の は 興 味 深 い 一 致 で あ
る 。 乾 期 の 貯 蔵 所 が 実 際 に あ る か ど う か わ か ら な い が,ア
ン デ ス 農 民 に と って は,乾
期 は雨 期 の 収 穫 の 貯 え で 生 活 す る 季 節 で あ る 。
チ ワ コ は 様 々 な 人 間 の 行 為 の た と え に も使 わ れ,汚
下 痢 し て い る 人 の こ と を チ ワ コの よ う な 尻 汚 し(ヘ
食 べ て ば か り い る人,落
l954:9]。
れ た 人 の こ と を ア ン ラ ・チ ワ コ,
チ ャ ・シ キjecha siqui)と
ち 着 き の な い 人 の こ と を チ ワ コ の よ うだ と い う[Qupa)A
汚 れ た 尻 ヘ チ ャ ・ シ キ は イ ン コ に 対 し て も用 い られ(c£P・247),と
畑 を 荒 ら す 害 鳥 で あ り,大
い い,
もに
食 あ る い は 空 腹 の 代 表 と な って い る 。 ワ ン カ ヨ地 方 か ら も
う 一 つ の ヴ ァ ー シ ョ ン が 報 告 さ れ て お り,こ
れ は聖 書 に あ る ノア の 洪 水伝 説 と結 びつ
い て い る。
民 話45 神 は 我 々 の 父 ノ ア を 助 け る た め,世
か を,白
鳩 に確 か め に行 かせ た。 長 旅 で 疲 れ た 白鳩 が もう天 界 に戻 れ な い と い うの
で,チ
ワ コ が 代 り に 行 っ て や る と 申 し 出 た 。 年 老 い た ノ ア は チ ワ コ を 鳩 だ と 取 り違
29)Koepckeに
よ る とチ ワ コ は 学 名 でTardus c・
ehiguanco。 黄 色 の 長 い くち ば し,地 上 を 跳 ね て 歩
く様 子 や 尾 を 絶 え ず 上 に あ げ る習 性 な ど は,こ
284
界 の洪 水 の あ との 大 地 が 乾 いた か ど う
の 鳥 の 特 徴 で あ る ら しい[KoEPcKE 1970:104]。
友 枝 中央 ア ンデ ス の民 話 と アマ ゾ ンの 神 話
え,ど
う し て 泥 だ ら け か と 問 う と,チ
ワ コ は 大 地 の 泥 で 白 い 羽 根 が 汚 れ た の だ と答
え た 。 信 用 さ れ た チ ワ コ は 何 日 か あ と に 神 に 呼 ば れ,人
し,一
週 間 に 三 度 の 食 事 で 充 分 だ し,人
も堅 くな る だ ろ う,と
間 は あ ま り 働 く必 要 は な い
の 歯 は トウ モ ロ コ シ の よ う に 白 く,石
伝 え る よ う 命 ぜ ら れ た 。 チ ワ コ は 人 間 に 神 の 知 らせ だ と して,
時 間 を 無 駄 に せ ず 働 き,一
日 に 三 度 の 食 事 を し,そ
の た あ 歯 は 石 の よ う に 白 く,ト
ウ モ ロ コ シ の よ う に 堅 く な る,脳と 伝 え た 。 以 来 あ わ れ な ワ ン カ の 人 々 は,殆
日 働 き,食
よ り
事 を 日 に 三 度 と り,歯
ど丸 一
は長 持 ちせ ず 虫 に 喰 われ て 痛 み に悩 ま され る。神
は あ とで 歯 の 抜 け か わ り を 認 め た が,食
事 の こ と は そ の ま ま に き ま った 。 神 が 罰 と
し て 見 え な い 糸 で 足 を 縛 っ た の で チ ワ コ は 跳 ね て 歩 く 。 青 い 実 だ け を 食 べ,'そ れ も
胃 袋 に た ま ら ず 尻 か らす ぐに 出 て し ま う。 畑 か ら石 で 追 わ れ,夏
の果 実 の な い と き
は 糞 を 食 べ て い る 。 チ ワ コ は 妻 や 子 供 に も見 捨 て られ た の で,今
で も そ れ を 探 して
泣 い て い る[VILLANEs 1978:121-123]。
こ の 話 は さ ら に 色 の 分 配 に つ い て の エ ピ ソ ー ドが 続 き,チ
る こ と が で き な か っ た の で,灰
色 の ま ま だ と チ ワ コ の 色 を 説 明 して い る 。 こ れ ま で の
と こ ろ 嘘 つ き チ ワ コ の 民 話 は,主
ョ ン も含 め て,十
少 な い が,後
ワ コは そ の分 配 に あず か
人 公 が ア カ クユ 鳥 や キ ツ ネ に代 わ って い るヴ ァー シ
ほ ど報 告 さ れて い る。 数 の 上 で は 墜落 死 キ ツ ネ の ヴ ァー シ ョンよ り
者 と 違 っ て,中
央 ア ンデ ス 北 部 に も 分 布 し て い る こ と が わ か る 。 以 下 の
は い ず れ も ア ン カ シ ュ 県 の も の で あ る。
民 話46神
は 美 し い 豊 か な 世 界 を つ く った が,歯
で 神 は歯 を 包 ん で チ ワ コ に 運 ば せ た6だ
包 み を 置 き 忘 れ,か
を 与 え る こと を忘 れ て いた 。 そ れ
が チ ワ コ は そ の 性 質 の ゆ え に,酒
を飲んで
わ りに 白 トウモ ロコ シで つ くった歯 を 入間 に と ど けた 。 そ れ で
人 間 の 歯 は 虫 に 喰 わ れ て し ま う 。 行 為 を 悔 い た チ ワ コ は,償
い に,寒
た い と き は 固 い 物 を 石 に こ す り つ け て 火 を お こす 秘 密 を,人
間 に教 えた 。 チ ワ コの
科 を 知 っ た 神 は,二
度 と 繰 り 返 さ ぬ よ う に と,チ
ワコを 血 が 出 るま で 鞭打 った。 そ
の た め チ ワ コ の 尻 に は で き 物 が あ る と い う[YAuRI 民 話47世
な く,怠
界 創 造 の あ と,人
くて 暖 を と り
l961:75, repr・1979:80ユ
間 の 生 活 は 豊 か で 畑 仕 事 も な く,雨
や 日で りの悩 み も
け て ば か り い た 。 そ れ を 不 満 と し た 神 は チ ワ コ に 命 じて,一
食 事 を す る よ う 伝 え た 。 チ ワ コ は 長 旅 の 途 中 で 怠 け,酒
神 の 命 令 だ か ら何 度 で も食 事 を す る よ う に,と
食 べ た 。 そ れ ゆ え 人 間 は 今 で も 日 に 五 回 も 食 べ て,仕
チ ワ コ を 罰 し,足
を 鎖 で 縛 っ た の で,以
に 酔 い,伝
伝 え た の で,人
。
日に一 度 だ け
言 を 忘 れ た の で・
間 は 喜 ん で た らふ く
事 の時 間 を 無 駄 に す る。神 は
来 チ ワ コ は 跳 ね て 歩 く[YAURI 1979:80
--8・1]。
285
国立民族学博物館研究報告 5巻1号
民 話48昔
の こ と 地 上 に 増 え た 人 間 は,必
要 に せ ま ら れ て 畑 を 耕 し,小
足 し た の で 神 に 送 る よ う依 頼 した 。 神 は ス ズ メ に 種 を 運 ば せ た が,こ
中 で 袋 を あ け て 地 上 に ば ら ま き,少
で 叩 き,以
の怠 け者 は途
し だ け 人 間 に と ど け た 。 怒 った 神 は ス ズ メ を 鞭
前 の 美 し い 金 色 の 羽 根 は 灰 色 に な り,コ
メ は 跳 ね て 歩 き,い
麦の種が不
オ ロ ギ を 足 に つ け た の で,ス
つ も空 腹 で い う と 神 に 呪 わ れ た[YAuRI 1961:124]。
上 記 三 つ の ヴ ァ ー シ ョ ン は 同 一 の 採 録 者 に よ る も の で あ る 。 中 央 ア ンデ ス 中,南
の も の と 較 べ た 北 部 の ア ン カ シ ュ県 の ヴ ァ ー シ ョ ンは,も
な い が,幾
ズ
部
ち ろ ん構 成 自体 には 変 りが
分 嘘 つ き チ ワ コ の 性 格 が 弱 ま って い る よ う で あ る 。 チ ワ コ は 嘘 の と い う よ
り誤 っ た メ ッ セ ー ジ を 伝 え る と い っ た 方 が あ た って い る 。 関 連 し て い る こ と だ が,民
話46の
チ ワ コ は 柔 らか い 歯 を 与 え た の を 悔 い て,人
コ ン テ ク ス トか ら,火
間 に火 を もた ら して い る。民 話 の
はた と え代 償 にせ よ ポ ジテ ィヴ な価 値 の あ る もの と して起 源 し
て い る 。 こ の 償 い と して の 起 源 物 も 南,中
部 の ヴ ァ ー シ ョ ン に 見 ら れ な い 特 質 で,北
部 の 民 話 の チ ワ コ に 対 す る 扱 い は 多 少 あ い ま い に な っ て い る。 チ ワ コ 民 話 の ヴ ァ ー シ
ョ ンが 一 部 に は 火 の 起 源 を 語 り,一
部 に は 栽 培 植 物 の 起 源 を 扱 って い る こ と は,墜
死 キ ツ ネ 民 話 の グ ル ー プ が 栽 培 植 物(民
こ と が,単
話1--6)と
火 の 起 源(民
話27)を
落
扱 って い る
な る 偶 然 で な い こ と を 示 して い る 。 ま た 起 源 と い う に は 多 少 あ い ま い で あ
っ た 民 話35の 火 の 使 用 の 意 味 を,民
話46の
チ ワ コが 明 らか に す る 。
民 話49昔,人
間 は 食 べ る こ と だ け に 専 念 し て い た 。 そ れ が 誤 りだ と 気 付 か せ よ う
と し た 神 は,チ
ワ コ を 呼 び,食 べ る こ と に か ま け て 魂 の こ と を 忘 れ ぬ よ う,こ れ か ら
一 日一 度 だ け 食 事 を せ よ,と
何 度 で も 食 べ よ,と
え,チ
人 間 に 伝 え よ う と し た 。 チ ワ コ は 入 間 に,好
きなだ け
神 の 命 令 と反 対 の こ と を 伝 え た 。 神 は チ ワ コ に 鞭 打 ち の 罰 を 与
ワ コ の 尻 に は で き 物 が あ る 。 人 間 は 嘘 の 命 令 に 従 っ た ま ま,物
質 的 な こ とだ
け に 関 心 を 抱 い て,精 神 的,道 徳 的 な こ と を な お ざ り に し て い る[ANOMINo 1945/
6:106]。
民 話50神
は チ ワ コ に 命 じ,人
間 の 歯 は 骨 で 出 来 て い て,動
物 の は トウ モ ロ コ シ で
出 来 て い る と 伝 え さ せ た 。 神 の 命 令 を 反 対 に し て チ ワ コ が 伝 え,そ
の で チ ワ コ に は 治 ら な い 傷 が あ る[ANoNIMo チ ワ コ 民 話 の ヴ ァ ー シ ョ ン に は,い
が,特
に 民 話49は 教 訓 的 で,地
れ を 神 が 罰 した
l 945!6:175]。
ず れ も 天 上 の 神 と い うキ リス ト教 的 観 念 が あ る
上 存 在 の 人 間 の 堕 落 へ の 反 省 と な って い る 。 チ ワ コ の
伝 言 以 前 か ら人 間 は 堕 落 し て い た の だ か ら,こ
の話 で は起 源論 的性 格 は 他 の に 比べ て
う す れ て い る 。 劣 った 状 態 と し て 現 実 を 規 定 す る こ と に は 依 然 と して 変 り は な い が,
他 の 話 が あ り得 た か も 知 れ ぬ 理 想 に 現 実 を 対 比 さ せ る の と違 い,こ
286
の 話 は あ り得 るか
友枝 中央 ア ン デ ス の民 話 とア マ ゾ ンの神 話
も知 れ ぬ 理 想 に 現 実 を 対 比 さ せ て い る。 次 の ヴ ァ ー シ ョ ン も ア ン カ シ ュ 県 で,ケ
チ ュ
ア語 で 採 録 され て い る。
民 話51大
昔 人 間 が 存 在 す る 前 の こ と,全
し っ か りふ た を し た 金 の 壺 を 渡 し,大
能 の 神 は チ ワ コ を メ ッセ ン ジ ャ ー と して,
き な 川 に 捨 て る よ う指 示 した が,好
い チ ワ コ は ふ た を あ け て し ま う 。 壺 か ら シ ラ ミ,ノ
の 病 気 が と び 散 り,チ
ワ コ は あ わ て て 空 の 壼 を 捨 て た が,シ
所 に 戻 っ て シ ラ ミ取 り を し て い て 嘘 が ば れ,神
ワ コ の 尻 は 汚 れ て い る[CARRANzA 民 話52 同 じ大 昔,創
造 主 は チ ワ コ に,人
人 間 は 一 日 に 三 度 食 事 を し,鹿
ニ の 一 種)や
全て
ラ ミに襲 わ れた 。神 の
に 厳 し く鞭 で 叩 か れ た の で,以
来チ
l 978:31-32]。
鹿 が 襲 う か ら人 間 は 武 器 を 携 え よ,と
で,以
ミ',ピ ケ(ダ
奇 心 の強
間 は 三 日 に一 度 だ け 食 事 を す る よ う に,
伝 え さ せ た 。 チ ワ コ は 高 い 山 か らや っ て 来 て,
を 襲 う た め に 武 器 を 携 え よ,と
神 の言 葉 を 伝 え た の
来 人 間 は 一 日 に 三 度 食 事 を し,食 料 と して 鹿 を 狩 る30)。 神 は チ ワ コが ど ん な
風 に 伝 え た か を 知 っ て,以 後 予 告 者 と し て 用 い だ の で,夜
キ ッ ネ,プ
ー マ,山 猫,蛇
の 出 現 の た び に,前
明 け,日 暮 れ,雨 の た び に,
触 れ を す る[CARRANzA l 978:32-
33]。
民 話51-52は
言 語学 者 に よ り同一 の イ ンフ ォ ー マ ン トか ら ケ チ ュ ア語 で 採 録 され て
い る 。 二 つ の 話 は 連 続 して 語 ら れ て お り,チ
者 に 対 し て,イ
ワ コが 全 て の厄 災 の原 因か と訊 ね た 採 録
ン フ ォ ー マ ン トは そ う で も な い と して,民
話52を 引 き 続 き 語 っ て い る 。
つ ま り三 度 の 食 事 と鹿 の 狩 は チ ワ コ の 《お か げ 》 で あ り,厄
起 源一
した の で あ り,同
じ ア ン カ シ ュ県 の 民 話46の 火 の 扱 い と 一 致 して い る 。一
中央 ア ン
デ ス 北 部 の チ ワ コ は,中,南
れ ゆ え に,本
災 の 原 因 者 の 償 い と して
部 の 民 話 に 比 べ て 性 格 が あ い ま い で あ る が,あ
るいはそ
章 の 目 的 で あ る これ らの 民 話 の メ ッ セ ー ジ を 検 討 す る 上 で,重
要 な手 懸
りを 与 え て い る。
一 日 に 三 度 の 食 事 習 慣 の 起 源 を 扱 った ヴ ァ ー シ ョ ン は,民
47,49,52と
数 多 い が ・ 民 話52だ
ヴ が 例 外 で,他
は い ず れ も あ り得 た か も し れ ぬ 一 日
一 度 の 食 事 に 対 し て 劣 った も の と そ れ を 規 定 して い る(民
へ の 反 省 と し て,あ
肯 定 的 に 扱 う が,そ
話33,35,40,43,45,
話47i,49は
人間状態の堕落
り得 る 一 日 一 食 と対 比 さ せ て い る)。 民 話52は 現 実 の 食 事 習 慣 を
れ は 民 話51(同
一 の イ ン フ ォ ー マ ン トに ょ る)が
起 源 者 と して い る の と 関 連 して い る 。 つ ま り民 話51-52は,全
チ ワ コを 厄 災 の
て の 病 気 と い う 《死 の
30)狩 猟 に関 して鹿 と人 間 の立 場 が逆 転 して い る。 チ ワ コ民 話 には堅 い歯 と柔 らか い 歯 の逆 転 を
扱 った も いの が 多 い(民 話36,44-46,50)。
モ ン ター ニ ャのカ シボCashibo族
の話 は二 つ を
組 み合 わ せ た起 源 にな って い る。神 は人 間 に堅 い歯 を鹿 に柔 らか い歯 を 与 え るはず だ ったが ・
鹿 が 泣 い て頼 ん だ ので,反 対 に し,そ れで 人 間 の歯 は も ろい[EsTRELLA l977:76]。
287
国立民族学博物館研究報告 5巻1号
原 因》 の 導 入 に 対す る償 い と して,三 度 の食 事 を肯 定 的 に扱 って い る。 いい か え れ ば,
人 間 はそ の 存 在 の以 前 か ら(民 話51は 厄 災 の起 源 を人 間 が 存在 す る前 と して い る)死
す べ き運 命 にあ り,い わ ば その か わ りに 三度 の食 事 とい う大 食 を許 され る。 オ カ イ ナ
族 の神 話2は 土 を 食 べ て い た人 間 が 豊 富 な 食糧 を手 に入 れ(栽
培 植 物 の 起 源),そ
の
か わ りに永 遠 の 生 命 を そ う失 す る。 両 者 の違 い は食 物 の獲 得 と死 の起 源 の前 後 関 係 を
入 れ 替 えた だ け の もの とな る。
ア ンカ シ ュ県 の 民話 は火 の起 源 につ い て も,三 度 の食 事 と同 じ扱 い を して い る。 民
話46の チ ワ コは 柔 らか い歯 を人 間 に与 え た あ とで,火 の使 用 の秘 密 を教 え る。 柔 らか
い 歯 の起 源 は民 話36,44-46,50に
歯 に 比べ て,劣
も あ り,い ず れ もそれ を あ り得 た か も知 れ ぬ 堅 い
った もの と して い る。 柔 らか い つ ま り消耗 す る歯 は人 間 の《小 さ い死 》
とか 《部 分 的 死 》 とで もい うべ き もの で あ り,人 間 は それ を 経 験す る よ うにな った か
わ りに,火 を 有 用 な もの と して 獲 得 して い る 。Levi-Straussに
一 体 を な して い る火 の起 源 神話(ア
ピナ エ族)は
よれ ば 栽 培植 物 起 源 と
,火 の獲 得 に伴 う人 間 の死 の起 源 を
扱 って い る。
火 の起 源 を 扱 って い る も う一 つ の ヴ ァー シ ョンは ア ヤ ク チ ョ県 の 民話35で あ る。 こ
の 場合 は火 だ けの 起 源 で は な く,火 で な ま もの を 料理 す る ことの 起 源 で あ り,そ れ は
や っか い な仕 事 と して,ア
リ ・マ ンカ チ ャの 神 秘 的料 理 に比 べ て 劣 って い る。 中,南
部 の 嘘 つ き チ ワ コは いず れ もそ の性 格 が明 白で,全 て の起 源 物 は あ り得 た か も しれ ぬ
もの に対 して 劣 って い る。 しか し北部 の民 話 の や り方 に した がえ ば,上 記 の火 を使 っ
た 料 理 の起 源 は,《 人 間 は料 理 を獲 得 す るが,同
む こ とが で き る。 実 際,中,南
時 に そ れ は労 苦 を 強 い られ る》 と読
部 の 民話 の全 て が 起 源 物 を否 定 的 に扱 うの は,そ れ が
労 働 も し くは労 苦 を伴 う とい う理 由 だ け か らで あ る。
結 局 の と ころ,中 央 ア ンデ スの チ ワ コ民 話 は,神 話2や そ の他 ア マ ゾ ン神話 が 栽培
植 物 獲 得 の代 償 と しての 死 あ る いは老 齢化 の起 源 を 直 接 に 扱 うの と ちが って,起 源 物
の獲 得 に伴 う労苦,労 働 の起 源 と して 間接 的 に死 を 扱 って い る と い うこ と にな る。死
の起 源 とい うア マ ゾ ン神 話 の明 白な メ ッセ ー ジ は,中 央 ア ンデ ス の民 話 の中 で は,柔
らか い歯 とか労 働 の起 源 と して,弱 め られ て伝 え られ て い る。 チ ワ コ民 話 が 扱 う起 源
の過 程 には,人 間 は神 の 指 令 の 受 け手 と して直 接 に参 与 して い る。 しか しそ の 参 与 の
仕 方 は,神 秘 的 な 木 を切 り倒 す とい う積 極 的 な参 与 に較 べ る と,は るか に消 極 的,受
動 的で あ る。死 の起 源 の メ ッセ ー ジが 強 い か弱 いか は,こ の相 達 と 関連 して い る。
嘘つ き チ ワ コ民話 の ヴ ァー シ ョ ンの 一 つ で あ る民 話31は 種 々の栽 培 植 物 の 起 源 を 扱
い,他 の起 源 物 同 様 に,そ れ が労 働 を 伴 うゆ え に否 定 的 に 扱 わ れ て い る。 この 民 話 の
288
友 枝 中央 ア ンデ ス の 民 話 とア マ ゾ ンの神 話
中 で は,人 間 の労 働 もし くは 労 苦 は,本 来 一 本 の 木 に種 々の 作 物 が 実 るはず だ った の
に,キ
ツネ の嘘 に よ り,種 子 を 選 り分 け別 々 の畑 に植 え ね ば な らな か った こと に よ っ
て,生
じて い る。 つ ま り神 秘 的 植 物 に 比 べ た場 合,現 実 の 栽 培 植 物 は 《拡 散》 した状
態 で扱 わ れ ね ば な らな いた め に,労 働 を伴 う。
1∼2章
に検 討 して きた こ とか ら次 の結 論 が得 られ るで あ ろ う。1。 中央 ア ンデ ス
南 部 にの み あ る栽 培 植 物 起 源 民 話1-6は,南,中
部 に広 く分 布 す る天 界へ 昇 った主 人
公 が 墜 落 し破 裂 死 す る と い う構 成 を も った数 多 い民 話 の 一 部 で あ り,栽 培 植 物 起 源 の
メ ッセ ー ジを有 す る。2. 中 央 ア ンデ ス北 部 に は この 構 成 を もつ 民話 は見 当 らな い が,
民 話構 成 が備 えて い る切 断 と四 散 の 形式 は,木 を切 り倒 し飾 り物 を 奪 い合 うと い う構
成 の コル タモ ンテ行 事 と一 致 して い る 。3.中
央 ア ンデ ス北,中 部 に 広 く分 布 す る コ
ル タモ ンテ は,目 下 の段 階 で は 明 らか な メ ッセ ー ジを 欠 い て い るが,こ れ と歴 史 的 関
連 を有 す る こ とが確 実 な モ ンタ ーニ ャの 栽培 植 物 起 源 神 話 は,前 者 と構 成 に お いて 一
致 し,栽 培 植物 と死 の 同時 起 源 とい うメ ッセ ー ジ を有 す る。4. 中 央 ア ンデ ス の民 話
1-6と
モ ンタ ー ニ ャ神 話1-2は,し
た が って形 式(切 断 と四 散)に お い て一 致 し,
か つ 栽 培 植 物 起源 の メ ッセ ー ジ にお い て一 致 す る。
そ して3章 の 嘘 つ きチ ワ コ民 話 の 検 討 を 通 じて次 の結 論 が 得 られ る。1.栽
起 源 民 話1-6と
培植物
形 式 にお い て 一 致 し,人 間 の 参与 と い う要 素 に よ る構 成 変 化 を生 じる,
中央 ア ンデ ス全 域 に あ るチ ワ コ民 話 は,北,中
部 の ヴ ァー シ ョン にお い て 弱 い な が ら
死 の起 源 を 扱 い,南 部 に お いて 労 働 の 起 源 を扱 いか つ それ を 伴 う起 源 物 を否 定 的 に扱
う。2. チ ワ コ民 話 の ヴ ァー シ ョ ンで あ る民 話31の 栽培 植 物 はジ それが 拡 散 的 に扱 わ
れ る た め の労 働 の 同 時起 源 ゆ え に,否 定 的側 面 を有 す る。3. 人 間 が 直接 に参 与 しな
い 栽 培 植物 起 源 民 話1-6は,死
も し くは 弱 い死(柔
らか い 歯,労
働)の 起 源 を扱 わ
な い が,四 散 して 発 生 す る栽培 植 物 につ い て 民 話 は 沈黙 し,少 な くと も積 極 的価 値 を
与 え な い 。4.四
散 状 態 の発 生 は民 話1-30(7,26を
部(民 話8-11,28)は
除 く)の 全 て に共 通 し,そ の一
否 定 的 価 値 を有 す る事 物 の起 源 す ら扱 う。 そ して 天 と地 を 仲介
す る起 源老 チ ワ コ と キ ッ ネは と もに現 実 世 界 にお け る空 腹 の モデ ル で あ る。
パ チ ャマ マ 民話32は 仲 介 者 の キ ツ ネや チ ワ コが 存 在せ ず,死 や労 働 の起 源 を直 接 に
扱 わ ず,人 間生 殖 ポ テ ンシ ャル の 減少 と して,現 実 の 栽 培 植物(別
対 応 す る人 間状 態 を 規定 して い る。 話 の 聞 き手 た ち が,女
供 を生 ん だ ら蟻 み た い に人 間 が 増 え て しま う,と
的 な植 物 が あ るの な ら,そ
[VALDERRAMA、
々 に実 る植物)に
が 一 度 に 五人 も十 人 も 子
い った の に対 して,語
うな って も一 向 に 困 らな い,と
り手 は 神秘
い う 意 味 の 答 を して い る
1977:57]。
289
国立民族学博物館研究報告 5巻1号
中 央 ア ンデ ス の民 話 が,栽 培 植物 の起 源 とい う よ りは農 耕 の 起 源(栽 培 植 物 と労働)
と把 え,あ る い は それ を 四 散 した状 態 で の 栽 培 植物 の起 源 とい い 換 え て い る と した ら,
これ らの民 話 は,ア マゾ ン神話 と比 べ た 場 合 に,ソ フ ィス トケ ー トされ て い る とい う
見 方 も成 り立 つ で あ ろ う。
W.子
供 の 遊 び 一 ま とめ一
中 央 ア ンデ ス の コル タ モ ンテ につ い て は,2章
で 検 討 し,ま た,そ の意 味 す る と こ
ろが 明 らか で な い こと を指 摘 した 。 この行 事 の重 要 な構 成 部 分 で あ る木 を切 り倒 す と
い う行 為 は,ア
ンデ ス の子 供 た ちの 遊 び の 中 に もと り入 れ られ て い る。 この遊 びが 真
似 ご とで あ るた め に,い ずれ の記 述 者 も,遊 び の行 為 を 説 明 す るに あ た って,真 似 の
対 象 とな る もの に つ い て の記 述 を せ ざ るを得 な い。 そ こに 遊 び の 表 す 意味,表 象 性 が
明 瞭 と な り,そ の 内 容 は これ まで に検 討 して きた民 話 や 神 話 の 表 す 意 味 と充 分 な 関 連
を有 して い る。 次 の 例 は ア ヤ クチ ョ県 パ リナ コチ ャス地 方 の もの で,遊 び は ワ イ リン
・ワ イ リン ・キ キ リチhuaylin huaylin kikirichiと 呼 ば れ る。 ワ イ リンは風 に吹 か
れ て 木 の 枝 が 鳴 る音 で あ り,キ キ リチ は 夜 明 け を告 げ る雄 鶏 の とき の声 と され る。
遊 び1 遊 び は 八 才か ら十 五 才 ぐらい の男 女 の子 供 が 集 ま って行 な う。 その 中 か ら
普 通 は 二 人 の た き木取 りに な る子 供 を きめ る が,大 人 を 真似 た仕 事 をす るの で,力
が強 く丈 夫 な 男 の子 が な る。 別 の 力 の あ る子 供 が 両 足 を 投 げ 出 して地 面 に座 り,他
の子 供 た ちが 順 に 同 じよ う に座 って,前 の人 を 両 腕 で しっか りか か え込 む 。 この 列
に な って 地 面 に坐 った子 供 た ちが 木 あ るい は草 を表 して い る 。列 が で き る と全 員 揃
って 体 を 左 右 に 動 か し,風 に枝 や葉 が ゆれ る様 を 表 して,レ
チ ・レチrechi rechi
とか ク ラ アァ スkraasと 声 を あ げて,木 が たて る音 を 真 似 る。二 人 の た き木取 りが
や って 来 て,木 蔭 で休 み を と る情 景 を 演 じ,朝 早 く起 きて仕 事 に かか らね ば な らぬ
とか,旨
く仕 事 が ゆ け ば い い が とか,も
う夜 がふ けた か ら寝 よ うとか,二 人 で話 を
かわ す 。 寝 た ふ りを した 二 人 は いび きを か いて,木 の こ とは気 に もと めな い で い る。
木 に な って い る子 供 た ち は体 を ゆ す りつ づ け,や が て ワィ リン ・ワ ィ リン ・キ キ リ
チ と叫 ぶ 。 雄 鶏 の 鳴 き声 で 目を さ ま したた き木 取 りは 酒 を飲 み,コ カの 葉 を 噛 み,
タバ コを 吸 うふ りを してか ら,仕 事 に取 りかか る。 元 気 づ け に最 後 の一杯 を 飲 み千
した た き木 取 りは,棒 で幹 の まわ りの地 面 を掘 り,根 を 起 こす真 似 を す る。 そ の あ
と一 本 一 本 の 木 に さわ り,こ の木 は 丈 夫 だ とか弱 い とか の 批評 を して,列 の 最後 尾
の子 供 を ひ き離 しに か か る。 そ の前 に お前 は何 とい う木 か と訊ね,訊 ね られ た方 は
290
友 枝 中央 ア ンデ スの 民 話 とア マ ゾ ンの神 話
体 を ゆ ら しな が ら,自 分 が そ のつ も り にな って い る木 の名 を 答 え る。 弱 い木 の 名 を
答 え る と,た き木 取 りは これ は簡 単 で 仕 事 は す ぐ済 む と さ げす み の 声 を あ げ る。 列
か ら力 ず くで 引 き離 した木 は別 の所 に運 ん で立 て る。 順 に これ を 繰 り返 し,相 手 の
答 が変 わ るた び に そ れ に応 じた 反 応 を し,棘 の木 な らば用 心 深 く扱 う。 次 第 に丈 夫
な木 にな るの で 仕 事 が 困難 に な り,疲 れ た 二 人 は 大 きな木 を 引 き はが す 前 に 休 憩 し,
コカを 噛 ん だ り タバ コを 吸 う。 再 び仕 事 にか か り,最 後 の子 供 を は が して遊 び の第
一 段 階 が 終 る。 た き木 取 りは立 た せ た 子 供 た ち を 円形 に集 め,互 い に 頭 を もたせ か
け合 うよ うに して,木 を一 カ所 に集 め る。 この 輪 の 中 に た き木 取 りが 入 り,下 で火
をつ け る仕 草 を す る 。火 が 燃 え移 った木 は燃 え る木 の は じけ る音 を真 似 なが ら,た き
木 取 りの 上 にお お い に か ぶ さ り,焼 い て しま い遊 びが 終 了 す る[ANONIMo l951:
667-669]。
記 録 者 は この 遊 び の 深 い意 味 は農 民 た ちの 絶 え 間 な い労 働 で,こ の 真 似 ご と遊 び の
中 で,た とえ ば た き木取 りと い った,様
々な 仕事 の一 つ を表 す のだ,と 述 べ て い る 。
遊 び はパ リナ コ チ ャ に隣 接 す る ル カ ナ スL,ucanas地
か ら も報 告 され て お り,遊 び の 名 は 同 じだ が,単
方 の チ ャ ビー ニ ャChavifia村
に サ チ ャテ ィ ラィsachatirayと
も
い うの は,木 を切 るあ るい は 根 ごと 引 き抜 くのが 目的 の 遊 び だ か らで あ る と説 明 され
て い る。
遊 び2 一 番 力 の あ る男 が地 面 に座 り,そ れ ぞれ に一 本 の喬 木,灌 木 あ るい は草 に
な った子 供 た ちが 順 に前 の 人 を かか え込 んで 座 り列 に な る。た き木 取 りの 二 人 は 力
の あ る子 が な り,朝 方の情 景 を演 じた あ と.仕事 にか か る。 た き木 取 りは 一 本 ず つ 木
を切 る こ とに し,そ の 前 に 木 の 名前 を訊 ね る。 一 人 ずつ 力ず くで 引 きは が し,相 手
は これ に抵 抗 す る。 途 中で休 み を と り,木 を切 り終 る と,木 を積 む た め に一 人 の子
をた たせ,他
の もそれ に もた せ か け るよ うに して 円形 に並べ,そ の 下 に た き 木 取 り
が 入 って 火 をつ け る。 その 瞬 間 に た き木 は幹 の は ぜ る音 を真 似 て,た
にお お い か ぶ さ り,押 しつ ぶ し焼 い て しま う[ANoNIMo き木取 りの 上
l971:190-191ユ
。
遊 びの 内容 は前 出 の と全 く同 じだ が,真 似 ご と行 為 を 記 述す る の に,こ こで は 木 を
切 る とい う表 現 が 用 い られ て い る。 この 遊 び に 関す る報 告 例 は非 常 に数 少 いが31》,次
31)内
容 に つ い て は 不 明 だ が,194Q年
当 時 の ア ヤ ク チ ョ市 周 辺 で サ チ ャ テ ィ ラ イsachatirayと
い う遊 び が 一 般 的 で あ っ た こ と は,Bustamanteの
67]。 ま た ど の 地 方 か 不 明 だ が(あ
テculle st6は 遊 び1-2と
ヤ ペjaka 11ap6と
全 く同 じや り方 で,同
い う 遊 び も あ り,遊
に あ っ て,違
り方 は 同 じで,意
った 意 味(テ
1959:2139]。
味 が 違 う[PAREDEs ー マ)を
ィ(モ
1943:
記 録 して い る ク エ ・ス
じ意 味 で あ る 。 同 じ記 録 者 に よ る と,バ
び 方 は 同 じ だ が,ク
襲 う と い う 意 味 に 変 化 し て い る[SoRIANo 遊 び も,や
記 録 か ら う か が え る[BusTAMANTE る い は ア ンカ シ ュ県 か),Sorianoが
ル モ ッ ト)の
カ ・
家 族 を イ タチ が
ボ リ ビ ア に あ る サ ン ・ ミゲ ル と い う
l976:59-61]。
同 じ遊 び 方(構i成)が
各地
与 え られ て い るの は非 常 に興 味 深い 。
291
国立民 族学博物館研究報告 5巻1号
の は タ ル マ 地 方 の も の で,今
世 紀 の 初 め に 記 録 さ れ て い る 。 記 録 者 のVienrichは
で に こ の 当 時 に お い て,こ
い る 。Vienrichも
う した 遊 び が"文
明 化"の
す
た め消 え 去 って い くの を嘆 いて
ま た こ の 遊 び の 中 に 哲 学 的 な 意 味 を 見 出 し て い た よ うで,シ
ョー
ペ ン ハ ウ エ ル 的 な ペ シ ミズ ム と そ れ を 表 現 して い る し,遊
び の 記 述 を 含 む 一 章 を"ウ
イ ン ・ウ イ ンhuin huin"と
な わ ち 人 間 と 運 命"と
遊 び3 題 して い る が,副
題 に は"す
男 女 の 子 供 が 交 互 に 連 な って 座 り,腕
ン と 歌 い な が ら,一
と 体 を 左 右 に ゆ ら し,ウ
本 の 木 に な って い る 。 男 の 子 の 一 人 が,杖
た 老 人 に な っ て 登 場 し,つ
イ ン ・ウイ
を つ き道 具 を手 に し
ぶ れ た 小 屋 を 再 建 す る た あ の 木 を 探 し に 森 へ や って 来 る 。
列 に な っ て い る子 供 た ち の 頭 を 叩 い て,そ
の あ と 自 分 の 手 の 匂 い を 嗅 ぎ,こ
ョ ケ で 固 い 木,ケ
ヤ ン で 少 し柔 らか い,ラ
ヌ ア ル で 柔 らか い 木,ラ
ず れ る 木 と い う よ う に,木
を 噛 み,木
あ る。
れは リ
ン ブ ラ シ ュで く
の 品 定 め を し て い く 。 選 び 終 る と 休 み を と り,コ
カ の葉
を 切 るた め に一 息 いれ る。 木 を 選 び 抵抗 す る子 供 の腕 を 取 って 列 か ら引
き 離 そ う と し,疲
言 を い い,自
れ 果 て た あ げ くにや っと成 功 す る。仕 事 の 困難 さ につ い て ひ と り
分 の 不 運 を 嘆 き,年
老 い て 腰 が ま が り,殆
ど 盲 で,助
け て くれ る 家 族
も な い 憐 れ な 老 人 に 対 す る厳 し さ に 嘆 息 す る 。 列 の 子 供 た ち は ウ イ ン ・ウ イ ン と歌
い つ づ け る 。 悪 魔bruj oに な って い る 別 の 男 の 子 が,耳
じ い さ ん,木
が 割 れ た と 叫 ん で,か
て て 聞 き す ま し,木
・カ チcachi も と に 戻 り,滝
らか う 。 老 人 は 驚 い て 立 ち あ が り,耳
の 葉 の 音 だ と思 い 直 し,再
に 叫 ん で 老 人 を か らか い,子
cachiと
合 唱 す る 。 老 人 は 木 の 所 に 確 か め に 行 き,手
に そ の 上 に 乗 せ,建
で 触 れ て 調 べ,
ん だ 列 か ら子 供 を ひ き 離 し
人 か の 子 供 を 集 め,頭
を もたせ か
謹 に 備 え る 穀 物 を 貯 蔵 で き る家 が あ る こ と を 喜 ぶ 。 や が
に トウガ ラシを つ ぶ す た め の 日用 の石 を 探 し に行 く。 そ こ
い さ ん 家 が つ ぶ れ た と 叫 び,子
イ ン ・ウ イ ン,カ
肩 を 優 し く叩 い て,材
の不 自
て 物 を つ く る。 仕 事 を お え 家 を 建 て る 力 が ま だ 自 分 に あ っ た こ
を さ け,飢
へ 悪 魔 が 登 場 し,じ
チ
の子 は 間隔 を置 い て そ の 中 に 入 れ る 。一 番 小 さい 子 を最 後
て 料 理 を お も い た ち,川
た,ウ
の 枝 を 払 い,並
い 木 や 曲 った の を 除 い て,何
け 合 って 輪 状 に 並 べ,女
と に 満 足 し,雨
い さ ん 木 が 割 れ た,カ
の 音 か 山 び こ が 木 の 割 れ る 音 に き こ え た の だ ろ う と い い,耳
を 切 り,悪
に手をあ
び 腰 を お ろす 。悪 魔 は また 同 じよ う
供 た ち は ウ イ ン ・ウ イ ン,じ
由 を 嘆 く。 ふ た た び 仕 事 に か か り,木
て,木
の き こ え な い 老 人 に 近 寄 り,
供 た ち も,じ
い さん 家 が つ ぶ れ
チ ・カ チ と 声 を 合 わ せ る 。 小 屋 に 戻 った 老 人 は 一 人 一 人 の
木 を 調 べ て ま わ り,お
っか り さ せ て い る 。 お 前 は チ ュ ル コで 固 い,お
前 は こ の 小 屋 の 支 え だ,お
前は家を し
前 は キ ス ワ ル コ で 弾 力 が あ り,お
前
は タ ロ で 美 し い と し)う よ う に 話 しか け て い く。 特 に 女 の 子 に つ い て は 香 り の あ る美
292
友 枝 中央 ア ンデ ス の 民 話 と ア マ ゾ ンの 神 話
しい 花 に た とえ て い る。 最 後 に小 屋 に入 り,石 の か ま ど を きづ き,料 理 に と りか か
り,ト ウガ ラシ を石 で つ ぶ す 。 そ の最 初 の 一 撃 を 合 図 に 家 が こわ れ,全 員 で 老 人 を
押 しつ ぶ す 。や っと這 い 出 した老 人 は残 酷 な運 命 を 嘆 き,木 を割 りた き木 と して 村
へ 持 ち帰 る こ とに し,一 人 一 人 をか つ い で 別 の 所 へ 運 ん で い く[VIENRICH n.d.:33
-35] 。
・まず この遊 び は 《容 易 に切 り倒 せ な い木 》 とい うア マ ゾ ン栽 培植 物 起 源 神 話 の モ チ
ー フを 再 現 して い る。不 鮮 明 なが らもイ カ地 方 の コル タ モ ンテ(行 事3)に
は,そ れ
ら しき ものが 認 め られ た 。実 際 ど の コル タモ ンテ で も,時 間 を か けて少 しずつ 木 を切
って い くので あ り,歌 と踊 りは数 時 間 も続 くの が通 例 で あ る。 リベ ル ター県 の 山地 を
旅 行 して い る際 に,Mir6 Quesadaは
小 村 で 催 され て い た コル タ モ ンテ(こ こで は シ
ル ロと 呼 ばれ て い る)に 出会 い,人 々が わ ざ と刃 の な い斧 を使 うの を 見 て,祭 が 長続
き し チ チ ャ 酒 が 沢 山 飲 め るよ うに,そ
gUESADA うす るの だ と コ メ ン ト を加 え て い る [MIRO
l947:44]。
子 供 た ちが互 い に し っか りつ か ま り合 った 列 が 表 す 木 は,そ の 内容 か らい って 栽 培
植 物 で は ない 。 しか しそれ が た き木 と して(料 理 に近 い事 物)あ る い は家 屋 の 材 料 と
して 用 い られ る限 りに お いて,有 用 植物 と して の共 通 性 を 示 す 。 そ して この 様 々 な木
や 植 物 か ら成 る一本 の木 は,種 々の 栽 培 植物 を実 らせ た 神 秘 的 な木(神 話1-2,民
31-33)と
同 じで あ る。 た き木 取 りや老 人 に な った 子 供 は,列
人 引 き離 す行 為 を 繰 り返 し,そ れ は木 を 切 るcortarと
話
にな った子 供 を一 人 一
表 現 され るが,神 話1-2で
は
(数 多 い ア マゾ ン神 話 の ヴ ァー シ三 ンの一 部 で しか な い),人 々が 神秘 的 な 木 を 切 り倒
す。
神 秘 的 な木 は,神 話1-2に
お いて は,切
り倒 さ れ,そ
の四 散 した 実 が 栽 培 植 物 の
起 源 とな る。 民話31に お いて は,神 秘 的 栽 培 植 物 が キ ツネ の 嘘 に よ り別 々の 畑 に植 え
られ る現 実 の 種 々の 栽培 植 物 と な って い る。 遊 び1-3で
は一 列 にな った 子 供 を 別 々
に 引 き離 し,そ れ が た き木 や建 築 の材 木 とな る。 全 体 の 列 か ら一 入 の子 を 引 き離 す と
き,つ ま り一 本 の 木 と して切 り出す の に 際 して,木
に は名 前 が 与 え られ性 質 が付 与 さ
れ て,全 体 か ら分 離 した別 々の木 と な り,そ れが た き木 や 用 材 とな る 。遊 び の 中 に あ
る 全体 か らの分 離 とそ れ に 伴 うカテ ゴ リカ ル な扱 い は,神 話 や 民 話 の よ うに起 源 と し
て 通時 的 に発 生 を 扱 うの で は な い が,共 時 的 に は様 々 な木 のカ テ ゴ リー の発 生 を扱 う。
特 に 遊 び3は この 分 離 後 の カ テ ゴ リーの 存在 を 明瞭 に木 の利 用 と結 び つ け て い る。 老
人 は 小 屋 の用 材 にな った 木 の 特 徴 と役 目 につ い て コ メ ン トして い る。
神 話2の 人 間 は木 を切 りば らば らに散 った 果 実 に よ って様 々の 栽 培 植 物 を獲 得 し,
293
国立民族学博物館研究報 告 5巻1号
永 遠 の生 命 を そ う失 した 。 神話2の
ヴ ァー シ ョンで あ るア ピナ エ族 を は じめ とす る ジ
ェ語 系 の神 話 の 人 間 た ちは,容 易 に 倒せ な い木 を 切 って 栽培 植 物 を獲 得 し,老 齢 化 を
経 験 す る よ う に な る。 容 易 に 切 り倒せ な い木 を 切 り,一 本 一 本 の た き木 を 得 た た き木
取 りの子 供 は,そ れ を 燃 料 と して 使 うと き に,た き木 にな った子 供 た ち に押 しつ ぶ さ
れ 焼 死 す る。 焼 死 は あた か も全 体 と して の木 を 一 本 一 本 別 々の た き木 と して しま った
こ とへ の 仕 返 しで あ るか の ご と くに,た き木 取 りに押 しつ け られ るの で あ る。 この 点
で 遊 び1-2は
栽 培 植 物 の獲 得 と人 間 の死 を 直 接 に交 換 す る神 話2と 共 通 す る 。
一 方 遊 び3で 木 を切 る子 供 は,壮 年 の た き木 と りを 演 じる遊 び1-2の
子 供 と違 っ
て,彼 等 以 上 の労 苦 を 強 い られ は す るが,死 ぬ こと は な い。 遊 び3で は木 を切 るの は
老 人 で あ り,そ れ は 木 を切 る前 に 《予 め 老 齢化 して》 登 場 す る。老 人 は容 易 に倒 せ な
い木 を 前 に して 自 分 の老 齢 ゆ えの 不 運 を 嘆 くが,や
っと木 を 切 り倒 しお えた あ と には,
《一 時 の若 返 り》 さえ 感 じる。 苦 心 して建 て た 小 屋 の 用 材 た ち に,料
理 を始 め た 瞬 間
に押 しつ ぶ され る が,死 ぬ こと は な く,そ の木 を た き木 と して 用 い る余 地 を残 して い
る。 容 易 に倒 せ な い 木 を や っと切 り倒 して 栽培 植 物 を獲 得 した ジ ェ語 系神 話 の 人 々 は,
同時 に オ ポ ッサ ム を 食 べ た た め の老 齢 化 を経 験す る よ う に な る(た き木 の獲 得 とい う
点 で は,火
を手 に入 れ 死 を経 験 す る よ うに な るア ピナ エ の起 源 神 話 と も共 通 す る)。
遊 び3は この 意 味 で ジ ェ語 系 の神 話 と共 通 す る。 ア マ ゾ ンの栽 培 植 物起 源 神話 で は人
々 は栽 培 植 物 を獲 得 す る代 償 と して 死 や 老 齢化 を経 験 し,両 者 の 同 時起 源 を語 って い
る。 中 央 ア ンデ ス の遊 び1-3は
た き木 や 用材 の獲 得 と焼 死 や 老齢 化 の 応 報性 を テ ー
マ と して い る。
自分 に と って 必 要 な 植物 を獲 得 し,そ の 代償 と して の死 あ るい は 老 齢 化 を経 験 す る
と い う点 で は,ア マ ゾ ン栽 培 植 物 起 源 神 話 とア ンデ スの 子 供 の 遊 び は 完全 に一 致 して
い る。 しか もこの 一致 は獲 得 の仕 方 に まで及 ん で い る。 神話 の人 々 は苦労 して木 を切
り倒 し,ば らば らに な った種 々 の栽 培 植 物 を 獲得 す る の で あ り,た き木 取 り も老 人 も
苦 労 して 木 を 切 り,一 本 一 本 に な った 木 を た き木 や用 材 と して 獲 得 す る。 た き木 取 り
と老 人 は,神 話 の 人 間 と 同 じに,必 要 な事 物 を得 る た め に,斧 を 振 る って切 断 と四 散
の過 程 に積 極 的 に参 与 して,自
らの死 や 老 齢 化 を 経 験 す る 。 子 供 の遊 び1-3は,こ
の過 程 に人 間 が 消 極 的 に しか 参与 しない チ ワ コ民話31-52が
の起 源 しか 扱 わ ず,全
く人 間 が 参 与 しな い キ ツ ネ 民話1-6が
い の か を,明 瞭 に説 明 して い る。
294
何 故 《小 さい死 》 か 労 働
何 故 そ れ す ら も扱 わ な
友 枝 中央 ア ンデ ス の民 話 と ア マ ゾ ンの 神 話
Zo=キ
Ch=チ
Co=コ
Ju=子
ッ ネZorro民
話
ワ コChihuaco民
話
ル タ モ ン テCortamonte行
供0遊
びJuego
事
図1 中央 ア ンデ ス民 話 ・行事 の分 布
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