本文(和文) - 日本公認会計士協会

IASB 意見募集「2015 年アジェンダ協議」に対する意見
2015 年 12 月 28 日
日本公認会計士協会
日本公認会計士協会は、2015 年 8 月に公表された意見募集「2015 年アジェンダ協議」
ついて、コメントの機会を提供していただいたことに感謝する。
当協会は、国際財務報告基準(IFRS)の設定主体である国際会計基準審議会(IASB)及
び IFRS 財団の活動に対し、IASB の前身である国際会計基準委員会(IASC)の創設以来
約 40 年にわたり深く関与しており、その活動を継続的に支持している。また、IFRS 財団
の定款に掲げられている、高品質で容易に理解でき、かつ執行可能性を持ったグローバル
に受け入れられる単一の財務報告基準を作成するという IFRS 財団の目的を強く支持して
いる。さらに、戦略レビュー報告に記載されているとおり、IFRS 財団の究極の目的は、IASB
が策定した IFRS(
「ピュアな IFRS」
)が修正されることなくアドプションされることであ
ると理解している。
我々は、IASB 意見募集「アジェンダ協議 2011」に対するコメントで、IFRS 適用の安定
的な運用を図るためにも、概念フレームワークの開発(特に、その他の包括利益の取扱い)、
基本的な分野に関する IFRS の開発(収益認識・リース・金融商品・保険契約)、さらには
実務上の運用に焦点を当てるべきである旨をコメントしたが、このコメントの骨格は引き
続き有効であると考えている。
我々は、IASB が、アジェンダ協議 2011 に関して受け取ったコメントに対応して、主要
なプロジェクト(収益認識・金融商品・リース・保険契約)に焦点が当てられ、また、概
念フレームワークの枠組みが示されたことを評価する。しかし、概念フレームワークでは、
純損益の意義や負債と持分の区分など本来取扱うべき重要な基本的概念が先送りされてい
る。これらは意見の集約に時間がかかるものであることは理解しているものの、リサーチ・
プロジェクト等で議論を継続していただくことを希望する。また、IFRS の不整合や実務適
用上の論点の把握など IFRS の維持管理・適用についても、引き続き取り組んでいただきた
い。
さらに、IFRS の使用が世界的に広がっている中で、各法域で個別財務諸表に IFRS を使
用するか否かも潜在的な論点となり得る。共通支配下の企業結合の基準については、各法
域の判断で個別財務諸表に IFRS を使用する場合の弊害とならないよう、迅速かつ包括的な
対応を希望する。
我々のコメントが、IASB の今後のアジェンダ選定に資することを希望する。
1
個別コメント
IASB のプロジェクトのバランス
1
IASB の作業計画は、テクニカル・プロジェクトの 5 つの主要な領域を含んでいる。
(a) リサーチ・プログラム
(b) 基準レベルのプログラム
(c) 「概念フレームワーク」
(d) 開示に関する取組み
(e) 維持管理及び適用に関するプロジェクト
当財団のリソースを上記の各領域にどれだけ割り当てるべきなのかを決定する際に、IASB
はどのような要素を考慮すべきか。
下記の明確化を前提に、55 項で記述されている要素に同意する。
· IFRS のプロジェクトの優先順位付けの中で、55 項(a)に掲げられる利用者にとっての重
要度が大切であることは当然であるが、IFRS を使用して財務諸表を作成し、監査する
ことが実務的に可能である点も重要であると考える。この点は、55 項(e)に含まれている
と理解するが明確化していただきたい。
·
また、我々は、情報提供の環境が急速にデジタル化しており、デジタル情報により、
情報の入手・加工が容易化しているという認識を持っている。投資家が、従来の一般
目的財務報告書全体に依拠して投資等、経済的意思決定を行っているのか、あるいは、
デジタル情報に依拠して意思決定を行っているのか、デジタル情報に依拠している場
合どのような情報が重視されるのかなどのリサーチの実施を検討していただきたい
(IFRS 財団意見募集「体制とその有効性に関する評議員会レビュー:レビューの論点」
への JICPA 意見(2015 年 11 月)参照)
。
利用者にとっての重要度は、上記の側面も考慮して決定していただきたい。
2
リサーチ・プロジェクト
2
IASB のリサーチ・プログラムは第 32 項に記載されており、IFRS 第 5 号についてリ
サーチのトピックを追加する可能性が第 33 項に記載されている。
IASB は次のことを行うべきか。
(a) リサーチ・プログラムに新たなプロジェクトを加えるべきか。加えるとすれば、どのプ
ロジェクトか、その理由は何か。また、追加するプロジェクトを進めるために、現在進行
中のどのリサーチ・プロジェクトの優先順位を下げるべきかについても説明されたい。
(b) リサーチ・プログラムから、外貨換算(第 39 項から第 41 項参照)及び高インフレ(第
42 項から第 43 項参照)についてのプロジェクトを削除すべきか。賛成又は反対の理由は
何か。
(c) 他にリサーチ・プログラムから削除すべきプロジェクトはないか。
3
リサーチ・プログラムの各プロジェクト(質問 2 への回答で提案した新しいプロジェク
トを含む)について、相対的な重要度(高・中・低)及び緊急度(高・中・低)をどのよ
うに考えるか。
なお、特にランクを高又は低とした項目について、それらのランク付けに至った具体的な
要因は何か。
質問 2
リサーチ・プロジェクト間の相互関係
リサーチ・プロジェクトが 32 項に掲げられているが、そのうちのいくつかは相互に関連
しているものがある。相互関係のある論点(横断的論点)を検討する場合、どのプロジェ
クトで検討するのか、範囲を明確にさせる必要があると考える。また、横断的論点を検討
する上では、1 つのプロジェクトにまとめる方が望ましい場合もあり得ると考える。
例えば、開示原則プロジェクトでは、今後公表予定のディスカッション・ペーパーにお
いて、(a)非 IFRS 情報の表示を禁止すべきではないこと、(b)非 IFRS 情報の表示に関する
ガイダンスを新開示基準で提供すべきであることなどの予備的見解を含むことを暫定決定
している。一方、基本財務諸表プロジェクトで損益計算書の構造を検討する場合、非 IFRS
情報(営業利益・EBIT・EBITDA など)の表示が論点となり得るため、開示原則・基本財
務諸表プロジェクトのそれぞれの範囲を明確にするか、あるいは、横断的論点に関して 1
つのプロジェクトにすることも検討されたい。
その他、のれん及び減損と無形資産、資本の特徴を有する金融商品と株式に基づく報酬
にも相互関連性があると考える。
(a) IFRS 第 5 号「売却目的で保有する非流動資産及び非継続事業」をリサーチ・プログラ
ムに追加すべきと考える。
IFRS 解釈指針委員会に提起されているいくつかの論点に対応するため、年次改善又は狭
い範囲のプロジェクトで短期的に解決しようとすると、意図せざる帰結が生じたり、問題
3
の根本的な解決には至らない場合があることを懸念する(質問 5 参照)
。基準間の整合性を
確保するため、広範囲のプロジェクトで包括的に検討することが望ましい。
(b)外貨換算及び高インフレ
外貨換算
外貨換算のプロジェクトをリサーチ・プログラムから削除することに反対する。削除す
るのではなく、長期的に取り組むリサーチ・プロジェクトとすることが適切と考える。企
業活動がグローバル化している状況下で、法域によっては、機能通貨を決定する際の要因
が複雑である可能性があると考える。また、各法域の制度が自国通貨中心に設計されてい
る場合などへの配慮も必要と考える。
高インフレ
高インフレのプロジェクトをリサーチ・プログラムから削除することに同意する。
インフレの閾値を引き下げると、IAS 第 29 号は高インフレではなく一般インフレの会計
基準に性格を変更することになるため、IAS 第 29 号の適用拡大は適切でないとしたこと、
インフレ会計は資本維持概念と関係するため、(今回は見直さないとしても)概念フレーム
ワークで検討することが最善であるとの 2015 年 4 月の IASB 会議での暫定決定は適切と考
える。
(c)特になし。
質問 3
各プロジェクトの重要度及び緊急度による優先順位並びにコメントについては以下を参
照されたい。
リサーチ・
プロジ
重
緊急
プロジェクト
ェクト
要
度
の段階
度
評価
高
のれん及び減損
高/中
コメント
·
IFRS 第 3 号「企業結合」
の適用後レビュー
(PIR)
段階
の結果も受け、慎重に議論を進めていただきた
い。その際、(a)減損テストの改善、(b)のれんか
ら区分した他の無形資産の識別、(c)のれんの償
却の要否に対処するとされていることから、各
論点の相互関連性を考慮する必要があると考え
る。当協会は、のれんを償却する要求事項を設
けることに基本的に同意しているが、減損のみ
アプローチについては、得られる便益と減損テ
ストのコストの程度、償却アプローチについて
は、償却年数の決定について実務上の論点が重
要であると考える。
4
リサーチ・
プロジ
重
緊急
プロジェクト
ェクト
要
度
の段階
度
コメント
·
US GAAP とのダイバージェンスを避ける観点
から、FASB と共同で作業することを希望する。
開示に関する取組み
開発
−開示原則
段階
高
高/中
·
IASB は提案した 10 ポイント計画に対応してい
るところであり、現状では、短期的プロジェク
トとして限定的な修正のみが行われていると理
解している。主要な開示上の問題を解決し、開
示の質を向上させるため、開示原則のディスカ
ッション・ペーパーで根本的な開示の考え方が
提示されることを希望する。
·
また、IAS 第 7 号「キャッシュ・フロー計算書」
の修正案として、財務活動から生じる債務の調
整表が提案されて、短期的な解決が図られるこ
とになるが、改めて開示原則プロジェクトの
IAS 第 7 号の根本的な見直しの中で、債務の定
義等を含めて抜本的に検討すべきと考える
(IASB 公開草案「開示に関する取組み:IAS
第 7 号の修正案」に対する JICPA 意見(2015
年 4 月)参照)
)。
·
実務記述書「財務諸表への重要性の適用」の性
格については、位置づけが曖昧であると考える。
共通支配下の企業結
開発
合
段階
高
高/中
·
IFRS タクソノミとの関係も考慮要因と考える。
·
「アジェンダ協議 2011−意見募集」への JICPA
意見では、
「企業結合は財務報告の基本に係る事
項であり、組織再編が行われた場合に実務にば
らつきがみられるため、財務諸表の比較可能性
に問題が生じ、ひいては資本市場に重要な影響
を及ぼす。特に、我が国では共通支配下にある
企業同士の企業結合が多く見られることから、
本プロジェクトの再開が必要と考える」と述べ
た。具体的に当てはまる IFRS がないことが実
務上の課題となっており、この考えは現在でも
変わらない。
·
現在、IASB は範囲(新規株式公開の準備に行わ
5
リサーチ・
プロジ
重
緊急
プロジェクト
ェクト
要
度
の段階
度
コメント
れる共通支配下の企業結合など)を絞った検討
をしていると理解しているが、上述のように、
一般的な共通支配下の取引を含めて幅広く検討
することを希望する。
·
加えて、各法域の判断で個別財務諸表に IFRS
を使用する場合の弊害とならないよう、迅速か
つ包括的な対応を希望する。
基本財務諸表
評価
段階
高
中
このプロジェクトでは、主に業績報告を取扱うと理
解している。
純損益/OCI

純損益の定義は、極めて重要な基本的概念であ
り、本来、現在検討中の概念フレームワークプ
ロジェクトで十分に検討すべきと考える。しか
し、概念フレームワークプロジェクトでは範囲
を限定するアプローチを採用し、当該論点を取
扱わないことを前提とすると、本プロジェクト
で純損益の定義を取扱うことになる場合、重要
性は高い。
·
アジェンダ協議 2011 に対する多くの意見では、
純損益の概念、OCI の性質、リサイクルの概念
的基礎の重要性は高いとされたことに留意して
いる。
·
純損益を定義するか、又は少なくとも何を純損
益として認識すべきかの区別の基礎を提供する
ことを要望する(IASB 公開草案「財務報告に関
する概念フレームワーク」への JICPA コメント
参照)
。
非 IFRS 指標・段階利益
·
代替的業績指標(APM)をはじめとする非 IFRS
指標の報告の増大が IFRS の有用性に対するリ
スクになると一部利害関係者が懸念している。
APM の有用性は否定するものではないが、比較
可能性の観点から外部報告は慎重に行うべきで
6
リサーチ・
プロジ
重
緊急
プロジェクト
ェクト
要
度
の段階
度
コメント
あり、開示に関する取組み又は基本財務諸表で
検討すべき課題と考える(IFRS 財団意見募集
「体制とその有効性に関する評議員会レビュ
ー:レビューの論点」への JICPA 意見(2015
年 11 月)参照)
。各社が非 IFRS 指標を表示す
ることにより、同業種間での比較可能性が確保
されていない可能性がある。また、多くの利用
者は、ある程度標準化された小計(営業利益・
EBIT・EBITDA など)の必要性を強調してい
ることから、まずは純損益計算書上の構造に焦
点を置くことも検討されたい。
持分法
開発
高
中/低
·
IFRS タクソノミとの関係も考慮要因と考える。
·
範囲を限定したプロジェクト又は年次改善プロ
段階
ジェクトで対応した結果、根本的な問題が解決
されていない場合がある(質問 5 参照)
。

短期的に持分法の簡素化を検討するのではな
く、持分法とは一行連結なのか、測定なのかな
ど根本的な問題に関して、中長期的に取組むべ
きと考える。
資本の特徴を有する
開発
金融商品
段階
高
中/低

負債と持分の区分は、極めて重要な基本的概念
であり、本来、現在検討中の概念フレームワー
クプロジェクトで十分に検討すべきと考える。
しかし、概念フレームワークプロジェクトでは
範囲を限定するアプローチを採用し、当該論点
を取扱わないことを前提とすると、本プロジェ
クトで負債と持分の区分を取扱うことになる場
合、重要性は高い。
·
負債と資本の区分は、特に、財務業績に影響す
る観点からも極めて重要と考える。負債の変動
のみが収益・費用に含まれるからである。
·
結果的に、概念フレームワークと基準間で負
債・持分の定義を整合させるべきと考える。
引当金、偶発負債及
評価
高
低
IFRS 第 3 号の企業結合時の偶発負債に関する要件
7
リサーチ・
プロジ
重
緊急
プロジェクト
ェクト
要
度
の段階
度
び偶発資産
コメント
と現行 IAS 第 37 号「引当金、偶発負債及び偶発資
段階
産」の規定との不整合の解消が必要と考える。
採掘活動/無形資産/
休止
研究開発
中
中
(*) 
無形資産プロジェクトを削除することには反対
する。研究開発も含め、無形資産全般について
討議する必要がある。

のれん及び減損プロジェクトでは、無形資産の
識別・測定が検討対象とされており、相互関連
性を考慮して検討する必要がある。
(*)のれん及び減損に関連する部分は高/中、その他は
中/低
動的リスク管理
開発
中
中
段階
高度に専門的な分野であり、動的リスク管理に関係
する企業にとっては重要であるが、関係する企業の
範囲はさほど広くない可能性が高い。
事業の定義
評価
中
中/低
·
実務上及び監査上の課題として、事業の定義及
段階
びガイダンスの適用が困難である場合がある。
したがって、まずは事業の定義及びガイダンス
の明確化を優先すべきであり、事業と資産の間
の会計処理の相違を削除するか否かは、長期的
な検討課題と考える。
·
US GAAP とのダイバージェンスを避ける観点
から、FASB と共同で作業することを希望する。
汚染物価格設定メカ
評価
ニズム
段階
退職後給付
評価
中
中/低
広く各法域の状況のリサーチが必要と思われる。
中
中/低
キャッシュ・バランス・プラン(混合型制度)の検
段階
討だけでなく、包括的に見直す可能性も含め、長期
的に取り組むべき領域と認識している。
株式に基づく報酬
評価
中
中/低
段階
資本の特徴を有する金融商品プロジェクトとの相互
関連性を考慮する必要がある。例えば、所定の金額
と同額の変動数の資本性金融商品を引き渡す義務を
有する場合、負債と資本の区分は IFRS 第 2 号「株
式に基づく報酬」と IAS 第 32 号「金融商品:表示」
の間で整合していない。
外貨換算取引
休止
中
低
削除するのではなく、長期的に取り組むリサーチ・
8
リサーチ・
プロジ
重
緊急
プロジェクト
ェクト
要
度
の段階
度
コメント
プロジェクトとすることが適切と考える(質問 2 参
中
照)。
法人所得税
評価
低
中
段階
概念フレームワークの認識・測定の考え方(蓋然性
規準の要否)と相互関連性があると考える。その結
果次第では、不確実な税務ポジション、繰延税金資
産の回収可能性のガイダンスなどを含む見直しの要
否の検討が必要となる可能性があると考える。
割引率
評価
低
中/低
段階
現状では、基準ごとに使用される測定属性・割引率
を調査したリサーチペーパー案がほぼ出来上がって
いることから、基本とすべき無リスクの割引率決定
についての考慮要因が各法域で異なる可能性も念頭
に追加的なリサーチを行い、概念フレームワークの
測定の延長で整理すべきではないかと考える。
高インフレ
休止
中
削除
リサーチ・プログラムから削除することに賛成する
(質問 2 参照)
。
主要なプロジェクト
4 主要なプロジェクトに関する IASB の現在の作業計画について、コメントがあるか。
IASB が、アジェンダ協議 2011 に関して受け取ったコメントに対応して、主要なプロジ
ェクト(収益認識・金融商品・リース・保険契約)に焦点が当てられ、また、概念フレー
ムワークの枠組みが示されたことを評価する。しかし、概念フレームワークでは、純損益
の意義や負債と持分の区分など本来取扱うべき重要な基本的概念の検討が先送りされてい
る。範囲を限定するアプローチを採用するのであれば、今回のプロジェクトで識別された
論点、及び純損益の意義のように取扱わなかった領域を整理し、今後の概念フレームワー
クの在り方に関する方針を示していただくことを強く要望する(IASB 公開草案「財務報告
に関する概念フレームワーク」への JICPA コメント(2015 年 11 月)参照)
。
これらは意見の集約に時間がかかるものであることは理解しているものの、リサーチ・
プロジェクト等で議論を継続していただくことを希望する(例えば、重要な基本的概念を
再審議過程で取扱うのか、又は取扱わない場合には継続的に検討するため、資本の特徴を
有する金融商品、開示に関する取組み、基本財務諸表などのリサーチ・プロジェクトで取
扱う範囲を明確化するなど)
。また、IFRS の不整合や実務適用上の論点の把握など IFRS
の維持管理・適用についても、引き続き取り組んでいただきたい。
9
維持管理及び適用に関するプロジェクト
5
IASB と解釈指針委員会は、利害関係者のニーズを満たすために、導入支援の適切な組
合せを提供しているか、
その支援は十分か
(第 19 項から第 23 項及び第 50 項から第 53 項
参照)
。
年次改善及び狭い範囲のプロジェクトの問題点
IFRIC から提起された論点に対して IASB が迅速に対応することで、適切に運営されて
いる場合もあるが、年次改善又は狭い範囲のプロジェクトでの検討だけでは問題の根本的
な解決には至らない場合がある。
「限定的な修正」についてはそれを行うことの適否、及び対象とすべき論点の範囲に関
する決定について慎重に検討し、グローバルな基準設定主体としての IASB の信頼性を損な
わないように対応していただくことを希望する。
(IASB 公開草案「IFRS 第 10 号及び IAS
第 28 号の修正の発効日」への JICPA コメント(2015 年 10 月)参照)
移行リソース・グループ(TRG)
IFRS 第 15 号については、TRG において議論された実務対応上の論点が IASB でも検討
された結果、改定案が公表されている。
基準の明確化という観点ではメリットがある一方、早期適用している企業もあるため、
混乱の原因となりえる。適用前の基準書が頻繁に変更されることがないようにしていただ
きたい。
一方、IFRS 第 15 号等、重要な新基準の適用については、様々な実務上の論点が生じる
可能性が考えられるため、改訂を前提とせず議論を継続し、議論過程を様々な場で広めて
いくことは必要ではないかと考える。
変更のレベル
6
IASB の作業計画は、全体として、基準の変更が適切なペースで、原則主義の基準設定
に適切な詳細さで行われているか。賛成又は反対の理由は何か。
質問 4 及び 5 のコメント参照
その他のコメント
7
IASB の作業計画について、他に何かコメントはあるか。
IFRS の使用が世界的に広がっている中で、各法域で個別財務諸表に IFRS を使用するか
否かも潜在的な論点となり得る。共通支配下の企業結合の基準については、各法域の判断
で個別財務諸表に IFRS を使用する場合の弊害とならないよう、迅速かつ包括的な対応を希
望する。
10
アジェンダ協議の頻度
8
個別の主要なプロジェクトの完了に必要な時間を考慮して、IASB は、アジェンダ協議
を、現在要求されている 3 年ごとではなく、5 年ごととすることが適切であると提案して
いる。これに同意するか。賛成又は反対の理由は何か。
反対の場合、どのような間隔を提案するか。その理由は何か。
主要なリサーチ・プロジェクト及び次の主要な基準レベルのプロジェクトを完了するに
は 3 年以上かかるため、主要なプロジェクトの多くが 3 年後も依然として作業計画に含ま
れること(58 項)を考慮し、アジェンダ協議の間隔を 5 年とすることが提案されていると
理解する。しかしながら、我々は、以下の理由から 5 年とすることに反対し、3 年を維持す
べきと考える。
·
各国の IFRS 関係者にとって、アジェンダ協議は貴重な意見発信の機会である。実際の
基準設定には 3 年以上かかるが、世界経済の進展により、新たな経済事象・ビジネス
モデルの発生、新たな適用上の問題の発生など、会計基準の迅速な対応が求められる
可能性があることを考慮すれば、5 年では対応が遅くなることを懸念する。
·
主要なプロジェクトが完了しており、今後は既存の基準の維持管理に焦点を置くこと
になると思われるため、方向性確認の間隔は 5 年よりも 3 年の方が望ましい。
以 上
11