実践! 消費者トラブル解決法 - 中国経済産業局

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実践! 消費者トラブル解決法
産業部 消費経済課
消費者相談室
消費者相談室では、多様化・複雑化する消費生活や消費者取引等について、消費者か
らの苦情、相談、問い合わせなどを受け付けています。また、悪質な消費者取引に巻き
こまれないための法律知識を身につけていただき、快適で充実した消費生活をお送りい
ただくために各種情報を提供しています。
ここでは、最近当室に寄せられた相談事例をもとに、消費者の方へのアドバイスを紹
介します。
相談事例1
高額な学習教材の購入契約とクレジット契約をキャンセルしたい
(相談内容)
自宅を突然訪問してきた学習用教材のセールスマンに小学生用の学習教材の購入を
勧められ、その場で個別クレジット(20 回分割払い)を利用して 20 万円の学習教材を
購入してしまいました。その後、クレ
ジット会社から自宅に確認の電話があ
り、「購入したことは間違いありませ
ん。」と答えました。その後、しばらく
して冷静に考えると、やはり高額なの
で購入契約とクレジット契約をキャン
セルしたいのですが、できるでしょう
か。
■アドバイス
「緊急警報 悪質商法」
(経済産業省)より
一定の期間内であれば契約の解除ができ、クレジット会社に支払った代金
を取り戻すことができます
個別信用購入あっせん関係受領契約(以下「個別クレジット契約」という。)がクー
リング・オフされると、個別クレジット契約の原因取引である購入契約も同時にクーリ
ング・オフされます。
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平成 20 年の割賦販売法の改正前は、個別クレジット業者による販売業者への立替払
い後、売買契約がクーリング・オフされても、消費者(購入者)は、既払金を個別クレ
ジット業者から取り戻すことは基本的にはできませんでした。
しかし、平成 20 年の割賦販売法の改正により、特定商取引法に定める 5 類型取引(訪
問販売、電話勧誘販売、連鎖販売取引、特定継続的役務提供、業務提供誘引販売取引)
を原因行為とする個別クレジット契約についてクーリング・オフが導入され、個別クレ
ジット契約がクーリング・オフされた場合に、購入契約等もクーリング・オフされたも
のとみなされることになりました。いわゆる「クーリング・オフの連動」です。
(割賦販売法第 35 条の 3 の 10 第 5 項、同法第 35 条の 3 の 11 第 7 項)
クーリング・オフの効果として個別クレジット契約が解除され、消費者はクレジット
契約で支払済みのクレジット代金をクレジット会社に対して返還請求できるという制
度です。(割賦販売法第 35 条の 3 の 10 第 9 項、同法第 35 条の 3 の 11 第 11 項)
■ポイント
1. 販売会社等との契約書に「クーリング・オフ」の記載があるか、きちんと確認しま
しょう。
① 申込みの撤回または解除(クーリング・オフ)は、法定書面の受領日から、個別
クレジット契約の原因取引である特定商取引法対象取引の類型に応じて、以下の
期間になっています。
(ア) 訪問販売・電話勧誘販売・特定継続的役務提供
8日
(イ) 連鎖販売取引・業務提供誘引販売取引
20 日
ただし、クーリング・オフ期間が過ぎても、個別クレジット業者や販売業者が虚
偽の説明を行ったり、威迫して困惑させたりする違法な行為によるクーリング・
オフ妨害があった場合は、クーリング・オフを行うことができる旨を記載した書
面を改めて交付するまでは、クーリング・オフ期間は起算されません。
② クーリング・オフ期間の起算点は、個別クレジット業者の個別クレジット契約申
込受領時の法定書面と個別クレジット契約締結時の法定書面のいずれか早い方の
受領した日となります。
③ クーリング・オフの効力は、クーリング・オフの書面による通知を発送した時点
で生じます(発信主義)
。
(割賦販売法第 35 条の 3 の 10 第 2 項、同法第 35 条の 3
の 11 第 4 項)
④ 個別クレジット業者に対して個別クレジット契約のクーリング・オフの通知をし
た場合には、通知発信時に、当該個別クレジット契約の原因となった購入契約(売
買契約・役務提供契約等)もクーリング・オフされたものとみなす効果が発生す
ることになります。なお、個別クレジット業者は、購入者等から個別クレジット
契約のクーリング・オフ通知を受け取った場合、販売業者等に対して、クーリン
グ・オフ通知を受け取った旨の通知を行わなければなりません。(割賦販売法第
35 条の 3 の 10 第 4 項、同法第 35 条の 3 の 11 第 6 項)
⑤ その結果、購入者等は、個別クレジット業者に対して個別クレジット契約のクー
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リング・オフ通知書面を発送すれば、購入契約(売買契約・役務提供契約等)に
ついては別途クーリング・オフ通知書面を発送する法律上の必要がなくなりまし
たが、実務上は双方に送ることが望ましいと思われます。
2. 個別クレジット契約がクーリング・オフされた場合、頭金は返還義務があり、また
商品及び権利の返還費用は販売業者の負担になります。
① 購入者等と個別クレジット業者との間の個別クレジット契約はクーリング・オフ
によって、契約の当初に遡って無効となります。したがって、個別クレジット業
者は、個別クレジット契約が有効であることを前提としたクレジット代金の請求
を購入者等にすることができません。
(割賦販売法第 35 条の 3 の 10 第 7 項、同法
第 35 条の 3 の 11 第 9 項)
② クーリング・オフが行われた場合、その効果として両当事者はそれぞれ原状回復
義務を負うことになります。販売業者が購入者等から既に頭金を受領している場
合には、それを購入者等に返還しなければならないとともに、商品の引渡し又権
利の移転が既にされていれば、購入者等はその商品又は権利を販売業者に返還す
る義務を負うことになります。
(割賦販売法第 35 条の 3 の 10 第 13 項、同法第 35
条の 3 の 11 第 14 項)
ここでは、販売業者が商品の引取り又は権利の返還の手間を負いますが、その費用
は購入者等が支払うという合意がなされていると、その費用と既に支払った代金とが
相殺されて、クーリング・オフの規定が無意味になるおそれがあるため、商品及び権
利の返還費用は販売業者の負担にしています。
(割賦販売法第 35 条の 3 の 10 第 10 項、
同法第 35 条の 3 の 11 第 12 項)
また、①及び②の規定は片面的強行規定と解され、これらの規定に反し、購入者等
に不利な特約は無効となります。
相談事例2
エステのように長期間にわたる契約を途中で解約できるだろうか
(相談内容)
スマホのサイトで「エステ無料体験コース」
という広告を見つけて申込み、近くの店舗に行
って無料エステを体験しました。
「会員になると
安くなるから」と勧誘され、24 回のエステコー
ス 470,000 円と化粧品 213,000 円の契約をしま
した。
しかし、数回通ったが効果がないので解約し
たい。
クーリング・オフ期間は過ぎていますが、今
から解約してもらえるでしょうか。
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「契約はよく理解して慎重に」(経済産業省)より
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■アドバイス
契約の期間内であれば、将来に向かって契約を解除することができます
特定商取引法第 41 条では、継続的に提供される 6 つの特定役務(エステティック・
語学教室・家庭教師・学習塾・パソコン教室・結婚相手紹介サービス)のうち、法律で
定められた期間と金額を超えるものを「特定継続的役務提供」としています。
具体的には、いわゆるエステティックの場合、期間が 1 か月を超え、かつ、契約金額
が 5 万円を超えるものが対象となります。
(同法政令第 11 条)
事業者は、特定継続的役務提供の契約を締結する場合、その役務内容、契約金額、ク
ーリング・オフや中途解約に関する事項など、一定の事項を記載した概要書面と契約書
面を消費者に交付しなければなりません。
(同法第 42 条)
そして、消費者は事業者が交付した契約書面を受領してから 8 日間はクーリング・オ
フをすることができます。
(同法第 48 条)
また、クーリング・オフが経過した後でも契約の期間内であれば、将来に向かって契
約を解除することができます。
(同法第 49 条)
中途解約をした際、契約書に損害賠償額の予定や違約金の定めがあるときでも、事業
者が消費者に請求できる損害賠償額の上限が定められています。
エステ開始前に中途解約をした場合、事業者が請求できる損害賠償額の上限※は 2 万
円となっています。また、エステ開始後に中途解約をした場合は、事業者が請求できる
損害賠償額の上限※は、①すでに提供された役務の対価に相当する額に加えて、②エス
テ契約が締結されたときの契約金額から、すでに役務が提供された対価に相当する額を
引いた額の 10%に相当する額、又は、2 万円のいずれか低い額を合算した額となってい
ます。
さらに、エステ契約を中途解約した場合には、関連商品として購入した商品の契約も
解除することができます。この場合も、事業者が請求できる額の上限が決められていま
す。具体的には、①関連商品が返還された場合は、原則として通常の使用料に相当する
額、②関連商品が返還されない場合は、商品の販売価格に相当する額、③関連商品の引
き渡し前である場合は、契約の締結及び履行のために通常要する費用の額が上限※とな
っています。
※これらの金額の支払遅延があった場合には法定利率による遅延損害金の額を加算した金額を
超える額の支払いを請求することができない。
■ポイント
1. 特定継続的役務提供は、契約期間が一定程度の長期にわたるため、契約を締結する
場合には、概要書面や契約書面を必ず受け取り、クーリング・オフや中途解約等の
契約内容をよく確かめるようにしましょう。
2. 美容を目的とした医療サービスに脱毛や脂肪吸引、植毛等がありますが、これらの
施術が治療を目的とする医療行為に当たるときは特定継続的役務提供になりません。
この場合には、特定商取引法で定めるクーリング・オフや中途解約が適用されない
ので注意しましょう。
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経済産業省 中国経済産業局 広報誌
旬レポ中国地域 2016 年 2 月号
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