2016 年 2 月 12 日 パワー半導体の世界市場に関する調査結果 2015 -産業機器・自動車向けパワー半導体が牽引役となり 2025 年の世界市場は 300 億ドルを突破- 【調査要綱】 矢野経済研究所では、次の調査要綱にてパワー半導体の世界市場について調査を実施した。 1.調査期間:2015 年 9 月~2016 年 1 月 2.調査対象:パワー半導体メーカ、ウエハーメーカ、システムメーカ等 3.調査方法:当社専門研究員による直接面談、電話・e-mail によるヒアリング、ならびに文献調査併用 <パワー半導体とは> パワー半導体とは主にインバータ/コンバータ回路で使われており、電力のスイッチングや変換、モータ制御等で 必要となる半導体素子である。本調査では、パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor) /IPD(Intelligent Power Device)やダイオード、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、パワーモジュール、バイポ ーラトランジスタ、SiC(シリコンカーバイド)、GaN(ガリウムナイトライド)パワーデバイスを含む。 【調査結果サマリー】 2015 年のパワー半導体世界市場規模は前年比 7.0%減の 148 億 2,000 万ドルの見込 2014 年のパワー半導体世界市場は堅調に拡大し、11.3%増の 159 億 3,000 万ドルであった。2015 年 は中国と欧州市場における産業機器向け需要の低迷、PC や TV などの民生機器用電源の成長鈍化、 新興メーカの参入によるコスト競争などが影響し、同年のパワー半導体世界市場規模は、前年比 7.0 % 減の 148 億 2,000 万ドルとなる見込みである。 ◆ パワー半導体の世界市場は自動車、産業機器向けが市場を牽引し、 2020 年は 231 億ドルに伸張し、2025 年は 339 億 1,000 万ドルに拡大すると予測 2016 年後半より市場は回復基調となり、産業機器向けパワーモジュール、自動車向けダイオード、 MOSFET が市場を牽引する。産業機器は新エネルギー、サーボモータ、UPS(無停電電源装置)向けの パワーモジュールの需要増が期待出来る。自動車については、車両 1 台あたりに搭載されるダイオードと MOSFET の数が増加し、引き続き高い伸びが期待出来る。このため、パワー半導体の世界市場規模は、 2020 年に 231 億ドル、2025 年に 339 億 1,000 万ドルに達すると予測する。 2020 年から本格的に SiC、GaN パワー半導体市場が立ち上がり、 2025 年の世界市場規模は 31 億 3,000 万ドルに達すると予測 SiC はダイオードの採用が中心に進んでいるが、コスト面から SiC トランジスタの搭載は一部用途に限 定されている。GaN トランジスタについては、2016 年より民生機器用電源を中心に市場が立ち上がる見 込みである。このため、これらの次世代パワー半導体の本格的な普及は 2020 年以降になる可能性が高 く、2025 年の次世代パワー半導体の世界市場規模は 31 億 3,000 万ドルになると予測する。 ◆ 資料体裁 資料名:「進展するパワー半導体の最新動向と将来展望 2015-2016」 発刊日:2016 年 1 月 29 日 体 裁:A4 判 157 頁 定 価:130,000 円(税別) 株式会社 矢野経済研究所 所在地:東京都中野区本町2-46-2 代表取締役社長:水越 孝 設 立:1958年3月 年間レポート発刊:約250タイトル URL: http://www.yano.co.jp/ 本件に関するお問合せ先(当社 HP からも承っております http://www.yano.co.jp/) ㈱矢野経済研究所 マーケティング本部 広報チーム TEL:03-5371-6912 E-mail:[email protected] 本資料における著作権やその他本資料にかかる一切の権利は、株式会社矢野経済研究所に帰属します。 本資料内容を転載引用等されるにあたっては、上記広報チーム迄お問合せ下さい。 Copyright © 2016 Yano Research Institute Ltd. 2016 年 2 月 12 日 【 調査結果の概要 】 1. 2015 年の市場概況 2015 年のパワー半導体世界市場規模は、前年比 7.0%減の 148 億 2,000 万ドルの見込みである。 2015 年がマイナス成長となった要因として(1)中国と欧州市場の景気減速による需要低迷、(2) 民生機器用電源の成長鈍化、(3)参入メーカ増によるコスト競争の 3 点が挙げられる。 2014 年における中国市場向けパワー半導体の出荷は好調であったが、2015 年は需要低迷が続 いた。2014 年にメーカ側は白物家電用 IPM(Intelligent Power Module、以下 IPM)の生産数量を引 き上げており、2015 年前半は在庫調整の状況であった。汎用インバータ向け IPM、IGBT モジュ ールについてはコスト競争に入っており、低価格の中国ローカルメーカの製品が増加している。 一方、欧州市場についても景気後退の影響を受けて工場などの設備投資が停滞しており、産業 機器向け IGBT モジュールの需要が不調である。 民生機器については PC や FPD(フラットパネルディスプレイ)用電源向け MOSFET の受注が 2015 年に入ってから落ち込み、2015 年上期(2015 年 1~6 月)は低調に推移した。このため、民 生機器向け電源の生産拠点が集中するアジア向けのダイオード、MOSFET の出荷金額が落ち込み、 前年比でマイナスとなっている。2015 年下期からは在庫調整が一段落し、2016 年製品モデルへ の受注が入り始めていることから、市場は緩やかな回復基調となっている。 また、中国の新興パワー半導体メーカが増加している。ダイオードだけでなく MOSFET もコス トダウン競争が進んでいる。PC やタブレット、FPD では性能よりもコスト重視のセットメーカ が増えており、中国メーカの MOSFET の数量が伸びている。IGBT についても、モジュール品を 量産する中国メーカが製品を投入しており、低価格汎用インバータでは中国メーカの IGBT モジ ュールの採用が進んでいる。このため、日米欧の主要パワー半導体メーカでは、低オン抵抗、低 損失が求められる分野に注力し、数量拡大を狙っている。 2. 注目すべき動向 2-1. サーボモータ、UPS 向けパワー半導体が好調 産業分野の中でもサーボモータ、UPS(無停電電源装置)向けは好調であった。精密な位置決め が可能なサーボモータは、産業用ロボット、NC 工作機械、半導体製造装置などで使われている。 2015 年は自動車とスマートフォンの出荷が好調であったことから、産業用ロボットや NC 工作機 械の需要が伸び、サーボモータ用 IPM の数量拡大に繋がっている。UPS については北米のデータ センター向けの需要が安定しており、耐圧 1200V の IGBT モジュールが増加している。世界的に ビッグデータの活用、IoT(Internet of Things)が進展する状況にあり、これに伴い、データセンタ ーの整備が進むものと推測される。 このため、大容量 UPS の需要も拡大基調にあり、UPS 向け IGBT モジュールの数量増が今後も期待出来る。 2-2. 電装品の増加に伴い、自動車向けも堅調 自動車向けパワー半導体も堅調に推移している。電装品の増加に伴い車両一台あたりの ECU (Electronic Control Unit)の数は増加傾向で、ECU に実装されるダイオードや MOSFET の需要が 伸びている。低燃費に直結するアイドルストップシステム(ISS)や電動パワーステアリング(EPS) 市場の伸びは一段落しており、今後は HV(ハイブリッド車)/EV(電気自動車)市場の拡大、LED ライトの普及、ISO26262(自動車用機能安全規格)への対応、ADAS(先進運転支援システム) 向けセンサ(レーダやカメラ)の数量拡大が自動車向けパワー半導体の新しい牽引役となる。 Copyright © 2016 Yano Research Institute Ltd. 2016 年 2 月 12 日 図表 1. パワー半導体の世界市場規模推移と予測 (億 US ドル) (単位:億 US ドル) 2014 年実績 Si SiC/GaN パワー半導体世界市場規模(合計) 2015 年見込 2020 年予測 2025 年予測 157.9 146.5 216.5 307.8 1.4 1.7 14.5 31.3 159.3 148.2 231.0 339.1 矢野経済研究所推計 注 1. メーカ出荷金額ベース 注 2. 2015 年は見込値、2020 年、2025 年は予測値 注 3. Si は Si(シリコン)によるパワー半導体 注 4. SiC/GaN は SiC(シリコンカーバイド)、もしくは GaN(ガリウムナイトライド)によるパワー半導体 Copyright © 2016 Yano Research Institute Ltd. 2016 年 2 月 12 日 3. 今後の可能性と将来予測 3-1. 需要分野別パワー半導体 2020 年のパワー半導体世界市場規模は 231 億ドルになると予測する。2014 年から 2020 年まで の年平均成長率(CAGR)は 6.4%になり、2020 年の市場規模は 2014 年の 1.5 倍に拡大するとみ る。2020 年以降も産業と自動車向け需要が市場を牽引し、パワー半導体の 2025 年の世界市場規 模は 339 億 1,000 万ドル、2020 年から 2025 年までの年平均成長率は 8.0%を予測する。 産業分野については、新エネルギー、サーボモータ、UPS、鉄道向けパワー半導体の需要が増 加する。太陽光発電は日本、米国、風力発電は欧州が主な需要の中心となるとみられる。また、 産業用ロボットや NC 工作機械、半導体製造装置も堅調に推移することから、サーボモータ向け IPM が増加する。鉄道は中国市場以外に、東南アジア、インド、南米における投資が見込める。 2020 年以降は東南アジアや中南米でも電力設備などのインフラへの投資が活発化すると推測さ れる。このため、耐圧 3.3kV 以上の IGBT モジュールの出荷数量が伸びると考える。 自動車向けパワー半導体については、EURO VI(欧州の自動車排出ガス規制)に対応するため に車両の電動化が本格化しつつあり、それに伴い車載向け MOSFET、IGBT の出荷数量は拡大す る。新規需要分野では、車載向け LED ライトの普及、ISO26262 にともなう ECU の二重化、ADAS 用センサの採用拡大などが挙げられる。 LED の採用は自動車でも進んでおり、ヘッドライトだけで 2~3 個の MOSFET が搭載される。 現在は高級車が中心であるが、2020 年以降はミドルクラス以下へも LED の採用が進み、車載用 LED 向け MOSFET、ダイオードの需要が伸びるものとみる。 また ISO26262 に対応するためにアクチュエータと ECU の二重化が進展する可能性が高く、モ ータを駆動するパワー半導体の数も 2 倍に増える。ADAS 向けセンサ(レーダ、カメラ)につい ても、バッテリーから降圧するために MOSFET が必要になる。自動運転車の普及が期待されてお り、車両 1 台あたりに搭載されるレーダやカメラの数は増加基調にあり、それに伴い MOSFET の出荷数量も拡大すると考える。 3-2. SiC、GaN パワー半導体 SiC(シリコンカーバイド)、GaN(ガリウムナイトライド)パワー半導体の世界市場規模は、2020 年に 14 億 5,000 万ドル、2025 年に 31 億 3,000 万ドルに達すると予測する。2014 年から 2020 年までの年平均成 長率は 47.6%、2020 年から 2025 年までは 16.6%を予測する。先行して市場が立ち上がっている SiC パ ワー半導体は、6 インチ SiC ウエハーで量産が本格化する 2020 年から SiC トランジスタ、フル SiC モジュ ールの採用が増加する。需要の中心は耐圧 1200V 以上の領域で、すでに搭載が進んでいる鉄道や産 業機器用高周波電源、太陽光発電用 PCS(パワーコンディショナー)向けの数量拡大が見込める。自動 車向けは、オンボードチャージャー(車載用充電器)から採用は始まっており、2020 年までは耐 圧 600V 以下の昇圧コンバータや DC/DC コンバータ向けが中心になる。2020 年以降は主機モー タ用メインインバータへの採用も始まり、自動車向けフル SiC モジュールの需要も増加する。 GaN パワー半導体は、2016 年からサーバや通信基地局、PC 用 AC アダプター、FPD などの電 源回路に GaN トランジスタの採用が始まる。高周波スイッチングによりインダクタなどの受動部 品のサイズダウンに繋がり、電源回路の小型・薄型化を実現できる。また、GaN トランジスタで HV/EV 向けオンボードチャージャーや DC/DC コンバータを検討している自動車メーカや電装機 器メーカもあり、2020 年頃から量産車への採用が進む。さらに、非接触給電システムや自動運転 用レーザースキャナへの応用も研究されており、2020 年以降は自動車分野での搭載用途拡大も期 待される。 Copyright © 2016 Yano Research Institute Ltd.
© Copyright 2024 ExpyDoc