生物多様性和歌山戦略(概要)

生物多様性和歌山戦略(概要)
第1章 生物多様性和歌山戦略とは
1 位置づけ
環境基本計画の分野別計画及び生物多様性国家戦略を基本とした和歌山県域版
2 期間
平成28年度から平成32年度までの5カ年
3 対象地域
和歌山県全域
第2章 生物多様性とは
1 生物多様性と3つのレベル
・いろいろな場所にさまざまな生物が生息・生育している状態のこと
生態系の多様性 ・・・さまざまなタイプの生息・生育環境があること
種の多様性
・・・多様な種の生物が生息・生育していること
遺伝子の多様性
・・・同じ種の中でも地理的な変異や個体変異があること
2 生物多様性がもたらす生態系サービス
・私たちの暮らしは、多様な生物のさまざまな働きによる「自然の恵み
(生態系サービス)」に支えられている
供給サービス
・・・食料や水、木材や薬品等の重要な資源を供給する機能
調整サービス
・・・山地災害防止、気候の緩和・調整等環境を制御する機能
文化的サービス
・・・精神的充足や美的な楽しみ、レクレーションの機会等
文化・精神面で私たちの暮らしに豊かさをもたらす機能
基盤サービス
・・・生命の生存基盤で供給・調整・文化的サービスの供給を支える
機能
3 生物多様性の4つの危機
第1の危機
・・・開発や乱獲など人が引き起こす負の影響要因による生物多様性
への影響
第2の危機
・・・自然に対する人間の働きかけが縮小撤退することによる影響
第3の危機
・・・外来種や化学物質等、人間により持ち込まれたものによる影響
第4の危機
・・・地球温暖化等の地球環境の変化による生物多様性への影響
第3章 生物多様性に関する和歌山県の現状
1 概況
・温暖多湿な気候が多様な自然環境をつくり、南方系、北方系の生物が混生
・ナンキセダカコブヤハズカミキリ、ナンキウラナミアカシジミなど地域固有種が多い
(1) 森林
・戦後のスギ・ヒノキの植林により人工林率が60%超
・間伐などの整備が進まないこと、シカによる食害が課題
・竹林の増加なども課題
(2) 里地
・果樹園が山肌に這い上がり、里山エリアにも広がる
・平地の宅地転用により湿地の植物や水生生物が減少
・外来生物対策や管理されなくなった里地の管理が課題
(3) 河川・湖沼
・紀伊山地を源流として、紀の川、有田川、日高川、富田川、日置川、古座川、熊野川の7つの
主要河川により多様な水域環境を育む
・ため池への外来生物の侵入や護岸などの構造改変により生物の個体数は減少
(4) 里海
・沿岸域は650kmに及び大部分がリアス海岸で、北部は瀬戸内海の一部で南部は黒潮の影
響を強く受け、内海の生態系と外海の生態系が発達
・串本町からみなべ町の沿岸域はサンゴ群集が発達
・磯焼け、自然海岸の減少により生物多様性の衰退が課題
第4章 目指すべき取り組み
貴重な生態系は徹底的に保護し、一方生態系サービスと調和のとれた活動を様々な分野で実
施
1 本県に共通した取り組み
(1) 森林
・天然林の公有地化による保護含め11の取り組み
(2) 里地 ・外来生物対策含め4つの取り組み
(3) 河川・湖沼
・「多自然川づくり基本指針」に基づいた工法の積極的採用を含む3つの取り組み
(4) 里海
・藻場の再生のための原因解明と支援を含む3つの取り組み
2 各区域の現況と目指すべき取り組み
紀の川、有田川、日高川、富田川・日置川、古座川、熊野川の6つの区域ごとに森林、里地、
河川・湖沼、里海の現況を分析し森里川海の連環で進めるべき具体的取組を示す
Ⅰ紀の川(対象区域)
・和歌山市、海南市、橋本市、紀の川市、岩出市、紀美野町、かつらぎ町(旧花園村除く)、
九度山町、高野町
Ⅱ有田川(対象区域)
・かつらぎ町(旧花園村)、有田市、湯浅町、広川町、有田川町
Ⅲ日高川(対象区域)
・御坊市、田辺市(旧龍神村)、美浜町、日高町、由良町、印南町、みなべ町、日高川町
Ⅳ富田川・日置川(対象区域)
・田辺市(旧龍神村、旧本宮町除く)、白浜町、上富田町、すさみ町
Ⅴ古座川(対象区域)
・古座川町、串本町
Ⅵ熊野川(対象区域)
・田辺市(旧本宮町)、新宮市、那智勝浦町、太地町、北山村
第5章 自然と共生する和歌山県づくりのために
強いリーダーシップを発揮することで本県の生物多様性を維持
1 生物多様性の保全のための基本的考え方
・森林や水田、畑地、ため池などが持つ災害対応力の活用・強化を図りつつ、併せて健全な生態
系を維持し、自然との共生社会の実現を目指すなど
2 生物多様性と地域振興
・生態系の「保全」と「活用」を二項対立的に捉えるのではなく、両者のバランスの上で生物多様
性を維持し、自然環境や生物多様性を活かした特色ある地域づくりを進めるなど
3 各主体による生物多様性向上のための期待される役割
・県はもとより、県民、民間団体、事業者、教育・研究機関などが、それぞれの役割を着実に果た
すとともに各主体が連携・協働
(1) 県
・各種施策の推進と連携・協働させていくネットワークの構築など
(2) 市町村
・地域独自の施策検討及び計画的推進など
(3) 教育・研究機関
・調査研究や技術開発、各主体への助言や協力及び人材育成など
(4) 事業者
・生物多様性の保全に配慮した事業活動への取組など
(5) 民間団体
・県民参加型の取組を進め、中核主体としての活動など
(6) 県民
・生物多様性に対する理解と行動など
(7) 各主体間の連携
・各主体間の情報共有や人的ネットワークの構築など
4 県民の理解を深め行動を促す
(1) 教育対策
・子どもたちに環境の保護・保全活動、生物調査体験を実施など
(2) 普及対策
・観察会や講演会を開催するなどして地域の環境の価値と魅力を
みんなで再確認し、行動へのモチベーションを高める
5 生物多様性の保全に向けての仕組みづくり
(1) 県生物多様性調整会議
・県関係部局で構成する調整会議を設置し、情報共有と横断的な連携・協力を図りながら施策を
推進
(2) (○○区域)森里川海連絡会議
・区域ごとに県民、NPO、事業者、自治体等様々な関係者が情報交換や連携・協力する連絡会議
を設置
6 基本戦略
天然林の適切な保護や里地里山の保全と活用など7つの基本戦略を設定
①天然林等の保全
天然林は生物多様性の観点から非常に重要な存在であり、破壊されることのないよう適正
な保護に努める。
②人工林への対応
人工林はCO2吸収源としても重要であり、間伐等適切な管理に努める。
③里地・里山の保全
里地・里山は人の関わりが薄れ維持が困難になりつつある。維持の担い手の地域住民が
暮らし続けられるよう「保全」と「活用」のバランスを考慮する。
④外来生物への対応
国外や国内の他の地域から持ち込まれた外来種による生態系への影響を防止する対策を
とる。
⑤野生鳥獣の適正管理
野生鳥獣(特にニホンジカ)の増大は、生態系及び農林業に大きな悪影響を及ぼしており、
野生鳥獣の適正な管理に努める。
⑥生物多様性の保全に係る意識の醸成
生物多様性の重要性への県民の理解を広めるため、様々な手法を通じて教育・啓発を行う
とともに、生態系保全活動の活発化に努める。
⑦森里川海の連環をはぐくむ多様な主体の連携
県内の各区域ごとに生態系を考える機会を設け、各主体の連携を深めるとともに、区域全
体での情報発信に取り組む。