No.119 2016.2.8 ノイエ・ファーネジャーナル Neue FahneJournal [発行元]株式会社ノイエ・ファーネ 〒101-0046 東京都千代田区神田多町2-7-3 三好ビル2F ℡.03-5297-1866 http://www.n-fahne.jp 採用活動と学生の就職活動は 対等な合意形成であるはずだ ― 新卒採用で問われはじめてくる企業側の「自社分析」 ― 株式会社キーカンパニー 代表取締役 下薗博康(しもぞの ひろやす) 大学卒業の後、採用支援会社に入社。新卒・中途・アルバイト採用のコンサルティング営業に従事する。1994年(有) キャンパスサポートを設立し代表取締役に就任。主に大学・専門学校の学生募集事業・学生マーケティング事業・ フリーペーパーの出版事業に携わる。2005年日本で初めての「新卒紹介事業」に特化した会社の代表取締役に就任。 学生の就職支援、企業の採用支援を通して5年間で約2000名の雇用を創出する。2010年株式会社キーカンパニーを設 立。同社代表取締役、キャリアフラッグ株式会社取締役、「ふるさと就職応援ネットワーク」の事務局を兼務。 学生に対して「自己分析」を要請する企業の側が実は、自らの「自社分析」がしっかりと行われていない場合が多い。また、学生と の面接で企業は自社の良い点は強調するがネガティブ情報は公開しない傾向が強い。一方で学生は企業の本音を聞きたがっている。 採用活動においては企業の行う「自社分析」と学生の行う「自己分析」の双方がかみ合っていなければ意味がない。企業の採用活動 と学生の就職活動のプロセスとは、企業と学生の双方による合意形成づくりとして展開されなければならない。 採用広報の3月解禁が もたらすもの る学生が発生し、採用人数を確保でき ない企業も目立った。恐らく、2017年 禁により選考期間が短くはなったが従 来の採用スケジュールに大きな変更は の新卒採用ではこれが修正されて中小 ないとみるべきだ。 企業も大企業も一斉に採用活動に入り、 大手企業と同時期に採用活動を展開 2017年の新卒採用に向けた企業の採 用選考開始が6月からとなり、採用広 内定出しもほぼ同時期に行われること になる。従来から存在していた企業規 することになる中小企業では、大手と 同様の時期に内定を出すことで、大手 報の解禁も3月1日に変更となった。昨 模による採用活動の時期にズレがなく なってきたわけだ。現実に昨年の12月 から内定を取り損ねた学生を確保する という考えが一般的になっている。こ 更なのだが、学生の就職活動において は指して大きな変化はみることができ ない。アクティブに就職活動に取り組 から大手企業と同様に実質的な採用活 動を展開している中小企業も珍しくは のため、2017年に関しては中小企業に 有利に動いているとみることもできる。 ない。 何故ならば大手企業の採用枠数は所詮 んでいる学生は、昨年の12月頃から既 に戦闘モードに入っている。一方で 2017年の新卒採用では大手企業のエ 年の“後ろ倒し”の不評を受けての変 ントリーシートの提出〆切が4月末頃 数万人であり、当然この枠からこぼれ る学生が圧倒的に多数である。中小企 である。このため3月中に中小企業で も企業説明会を一気に実施して、学生 業は大手企業と同一のスケジュールで 動き、大手の採用枠からこぼれた学生 通り動きが鈍い。このことから学生た ちの就職活動は、3月の広報解禁によっ たちがエントリーシートの作成に集中 の受け皿になるという発想が現実的で もあるわけだ。確かに大企業の採用が て大きく左右されているわけではない ととることができる。 う流れだ。つまり、実質的には2カ月 間で一定の決着を付けてしまおうとす 一段落した後に本格的に採用展開を開 では、企業の採用活動には変化があ るのだろうか。2016年の新卒採用にお る企業が増えているのは確かだ。中小 れば学生の就職意欲が落ちてしまう。 “のんびりとした学生”にとっては、 解禁日の変更などに関わりなく例年の いては中小企業の側に大きな危機感が し始める前の4月中に選考を行うとい 企業も4月までの期間にめぼしい学生 に対して積極的に内定を出し、一定の あった。このため大手企業よりも早く 学生から内定承諾を取っておきたいと 内定を出すという逆転現象が発生した。 いう思惑で動いている。要するに採用 この結果、大手が本格的に内定を出し 始めると中小企業からの内定を辞退す に積極的に取り組んでいる企業は、企 業規模に関わりなく採用広報の3月解 - 1 - 始する中小企業も多いが、時期が遅れ 応募してほしい学生の ターゲットを絞り込む 企業の新卒採用においてはいまだに 多くの企業で選考する学生の選択肢を 広げるため、“可能な限り大きな「母 数集まっても意味がない。絞って、絞っ 側とされる側の双方が相手を評価・判 集団」を形成したい”という意識に捉 て、絞りぬいた母集団であれば、絶対 数の問題ではないということだ。 断する上で必要な情報をお互いに交換 われている。しかし、単純に「母集団」 し合うプロセスに他ならない。企業は を肥大化させることが自社の求める人 材の採用に直結するわけではない。む 選考プロセスで得た情報を基に、対象 対して高いハードルを設定する理由は、 学生を自社基準に沿って入社して欲し しろ必要以上の大きな「母集団」形成 は、採用に関わる工数とコストの無駄 まさにこの点にある。つまり、乱暴な につながることも忘れてはならない。 例えば10人を採用するのであれば数千 人単位の「母集団」などの形成は実は 実は大手企業が学生のエントリーに 表現だが自社がターゲットとする学生 以外の学生からのエントリーは迷惑な のである。一方で中小企業がターゲッ トを絞り込む場合にはエントリーのハー 意味がない。極端にいえば自社の採用 ターゲットになる学生が100人程度応 ドルをあげるのではなく、自社がどの 募してくれた方がよほどありがたいも のだ。 て自社に興味を持ってくれる学生を集 ような会社であるのかを明確に広報し めることに注力すべきだ。 企業は何千人を相手にして10人を選 択するよりも、100人に対してあらゆ る機会を用いて丁寧な採用活動を展開 い人材か否かを判断し、結果的に入社 して欲しい学生に対して「内定」を出 すことになる。 一方で学生は、選考プロセスを経て 得たその企業の情報を基に、自ら定め た会社基準に沿って入社に値する会社 か否かを判断することになる。これが 学生にとっての就職活動ということだ。 このようにみてくると採用と就職活動 は片務的なものではなく、あくまでも 採用活動と就職活動は 合意形成のプロセス することができる。このためには100 人のターゲットが企業にロイヤリティー 双方が平等な合意形成にいたるプロセ スであるといっても過言ではない。 つまり、「学生の自己分析が甘い」 とか「志望動機が弱い」とかいう企業 を感じてくれている必要がある。企業 にとっては、冷やかしなどではなく、 企業が採用活動を展開する場合に最 も重要なことは、企業自身が自社のこ 側の意見に対して、学生の側からも 「自社分析が甘い会社だ」であるとか 本当に自社の業務内容に興味を持ち、 自社で働いてみたいと思ってくれる学 とをよく理解して学生に明瞭に伝える ことだ。企業は採用活動において就職 「私を採用したい理由が不明確」といっ た意見も出てきておかしくないのであ 生のエントリーを重要視するものだ。 “とりあえずこの企業をエントリーす 活動中の学生に向かって「志望動機を 明確にしろ」「自己分析をしっかりや る。現に就職指導の現場では学生から、 「あの会社の情報提供が少ない」「もっ る”などという感覚で大量の学生にエ ントリーされても対応に要するコスト が増すだけだ。 れ」などといろいろな要求をする。こ れと同様のことが企業にもいえる。つ まり、企業の側が「自社の分析」をしっ と情報が欲しい」という声や、内定を もらった企業に対して「なぜ内定をも らえたのかが良く分りません」といっ 有名な話だが第一回の南極探検隊の 隊員募集の新聞広告では「求む。極寒 かりとできていないため、学生に対し た声を耳にすることもある。 て明確にPRできていなケースが多い。 採用活動と就職活動のプロセスとは、 の地、報酬も少ない。帰国して得られ るのは賞賛と達成感」というものだっ また、学生との面接で企業は自社の良 い点は強調するがネガティブ情報は公 た。この新聞広告では確かに応募者は 少なかった。しかし、寒いし、報酬も 開しない傾向が強い。学生は企業の本 音を聞きたがっている。例えば離職率 株式会社キーカンパニー主催のセミナー案内 少ないが得られるであろう「賞賛と達 成感」に共感した人たちだけが応募し について企業の側が積極的に「昨年の ■2月17日(水)16:00~18:00 離職者数は○○人。退職理由の主なも 「ターゲット学生の内定承諾率を5% 引き上げるコミュニケーション戦略」 てきた。この結果、最初から南極探検 のは〇〇」などと明確に開示する方が という価値を共有できている人びとで 学生は安心する。 企業と学生の双方による合意形成づく りなのである。 ■2月22日(月) 13:30~15:30 あることを前提に選考することができ、 採用活動においては企業の行う「自 初期の隊員募集という目的は十分に達 社分析」と学生の行う「自己分析」の 成することとなった。 双方がかみ合っていなければならない。 この例は、採用したい人材には明確 な“ターゲットの設定”が必要である 同時に企業は自社で活躍する人材要件 ということを示している。本来の「母 集団形成」とはこの例のように仕事や としての「優秀人材」を追い求めてい 働きに共感してもらえる人材にターゲッ トを絞り込むということに尽きるので 人材に巡り合うことはできない。 はないか。理想は10人の採用で10人の な人材を欲しているのかを明確に学生 エントリーということだ。これに限り に示さなければならない。一方で学生 なく近づけるためにターゲットを設定 は自分がどのような学生で何ができる 「中小企業が2017卒採用を成功させ るための戦略公開」 参加費:両セミナーとも無料 会 場:キーカンパニーセミナールーム 申 込:http://www.n-fahne.jp/seminor_order.html を明確にする必要がある。単に一般論 ると何時まで経っても自社で活躍する 企業は自社が何者であり、どのよう 株式会社キーカンパニー 〒102-0072 東京都千代田区飯田橋1-5-9 精文館ビル7階 TEL:03-6261-4375 FAX:03-6261-4376 http://www.keycompany.jp し、採用広報がなされる必要がある。 自社の採用基準に合致しない学生が多 人間であるのかをアピールできなけれ ばならない。採用選考とは、採用する - 2 - ―若手・中堅社員対象― 「働きの意識」を再確立するワークショップ 企業内にて毎回2~3テーマにそって講師(ファシリテーター)が辻説法方式により参加者相互の討議を通し、 若手・中堅社員層に“これまで通りでは通用しない!”という意識、仕事をミッションとしてとらえる姿勢を つかんでもらう。 [お問合せ先] 株式会社ノイエ・ファーネ TEL. 03-5297-1866 [email protected] [若手・中堅社員向け研修テーマ] ◎時間管理と自己管理で業務効率 会社の年次目標→部門目標→職場目標→個人目標の流れで落とし込まれた個人目標を達成するために不可欠な業 務改善意識の醸成。 ◎会議の生産性を高めるファシリテーション 会議をすることがあたかも「仕事」であるかのような錯覚を戒め、会議の「効率的会議運営」を習得。 ◎PDCAマネジメントサイクルを回す PDCAをお題目にせず、チェック機能を不完全にさせないサイクルの回し方。 ◎社員力アップ…段取り上手への道 目標を立てても達成に向けた段取り(業務遂行にかかわる関係者へのマネジメント、リスク管理、優先順位)を 通した業務改善の手法。 ◎同期・同僚・他部署・上司を巻き込む交渉と折衝力 職場での人間関係を巧みに読み取り、部門効率を高めるため、微妙にオーバーラップする業務を周りを巻き込み 部門効率を高める。 ◎自己SWOT分析からはじめるキャリアデザイン SWOT分析(強み、弱み、機会、脅威)を用いて「5~10年後のありたい姿・ありたくない姿」を描き、これ からのキャリア形成の課題を自己認知。 『 Act 』(アクト) 社内での新入社員、若手社員研修用テキストとして ご好評を頂いています。是非ご活用ください。 これまでの働き方、仕事の仕方、ものの見方を検証し 「仕事の進め方」の指針となる社員育成のための 冊子シリーズ『 Act 』(アクト)。 ■「vol.1」「vol.2」「vol.3」発売中 vol. 1 『常に忘れてはならない仕事の進め方』 vol. 2 『反復して身につける会社での仕事常識』 vol. 3 『“学びの姿勢”を貪欲に貫く』 [お申込先]⇒http://www.n-fahne.jp/booklet.html 社内研修・コンサルティングのご提案 「最近、"困った人"を何とかしたい…」との相談事が多くなってきています。 そこで、個別ヒアリングを基にして、自社の"困った人"の矯正に向け、教育 指導などの面で企業が施す必要がある課題を見極め、さらには"困った人"へ の具体的な対処計画の策定などのご支援をします。 [連絡先]ノイエ・ファーネ/本間 - 3 - 日本の雇用システムは労働法令の改正を含めて大きな転換点を迎えています。この雇用システムの転換は、企業におい てリスク管理視点からの労務管理の重要性が増してきます。また、人事マネジメントの在り方に大きな影響を及ぼして くることは必定です。そこで、企業において人事・労務を担当する方々はもとより、現場でマネジメントに携わってい る方々や広くヒューマンビジネスに携わる人びとによる不定期な集いを通して、忌憚のない本音の討議や意見交換を行 う“場”=サロンとして、“ミニ・フォーラム”を再開し今後の人事マネジメントの帰趨を考えて行きたいと思います。 人事マネジメント課題は現場において採用(入口)から出口(雇用調整)までのあらゆる過程で発生するものです。このた め相互の経験や実例を踏まえたうえで広角的な課題の見極めや課題解決に向けた道筋の模索が有益になると考えます。 “ミニ・フォーラム”は各回とも問題提起に基づいて参加者相互が討議や意見交換の中で見地を高めあい、職場におけ るマネジメントの新たな方向性や労務管理の視点を探求していく端緒になると考えています。 第17回 ミニ・フォーラム “人手不足”が流布する中で、 中途採用の実情を読み解く 新卒採用現場では「売り手市場」と喧伝されている。また、中途採用でも“人手不足”の影響からか一見すると転職 市場が“活性化”しているかのように思われている。実際に転職を斡旋するサイトでは、転職希望者に対して「お薦 めの人気職種が多数」であるとか「未経験からチャレンジできる、そんな”希少な求人”をご紹介」などの転職を促 す訴求が行われている。一方で求人企業に対しては選考のための母集団形成の実績を誇る案内で溢れている。はたし て、本当の意味で企業が求める転職希望者はいわゆる市場に存在しているのか…。現実の中途採用の実情はどのよう になっているのか…。さらに、“優良人材”を欲する企業と転職希望者との間に横たわる課題・問題点は何か…。 第17回ミニ・フォーラムでは、人材紹介事業を第一線で携わっている率直な問題提起を受けて、企業が中途採用あたっ て把握すべき課題や転職希望者の実像について意見交換をしたいと考えています。 ◎問題提起: 「人材紹介の現場から透視する中途採用の現状」 株式会社キーカンパニー 人材紹介事業部 部長 大町 闘(おおまち たかし) プロフィール ■最近の転職者の特性から見えてくること 人材関連企業にて営業・人材コンサルを経てアウトソーシ ■企業が求める人材は“外部労働市場”に存在しているのか? ング事業の立ち上げ、経営を行い年間1,000人超の面接・ 採用を行う。現在は、ミドルクラス以上のキャリアの人材 紹介を専業とする。 ■企業が求める人材要件の変遷から見えてくる現実と ミスマッチ [日 時] [参加費] [会 場] 3月10日(木) 2,000円 17:30~20:00(受付開始17:20~) ※当日会場で承ります。 ちよだプラットフォームスクウェア (本館B1 ミーティングルーム002) 〒101-0054 東京都千代田区神田錦町3‐21 竹橋駅(東西線) 3b KKRホテル東京玄関前出口より徒歩2分 神保町駅(三田線・新宿線・半蔵門線) A9出口より徒歩7分 [申込欄] 申込欄にご記入の上、FAXでお申込み下さい。ホームページからもお申込みできます。 会 社 名 参加者名(ふりがな) 住 所 TEL. FAX. MAIL. [ご要望] [主催/お問合せ先]㈱ノイエ・ファーネ 〒101-0046 東京都千代田区神田多町2-7-3 ℡03-5297-1866 FAX.03-5297-1880 http://www.n-fahne.jp - 4 -
© Copyright 2024 ExpyDoc