東海大学総合医学研究所 多分野連携で先端研究を推進 研究を支える 吉田一也・東海大学副学長 (研究担当) 東海大学では、“より強い研究の峰形成”というコンセプトの下、知識を融合させた東海大学らしい研究 を進めています。医学部は診療もあるので研究時間が足りないと聞いております。研究時間の確保は大学の 研究力を維持するには重要です。そこで、これから本学の研究体制を再点検していきたいと考えています。 本学は研究が中心にある大学であるべきだと考えております。総医研には、力を結集してユニークでかつ 先進的な研究を続けて欲しいと期待しています。 東海大学ならではの最先端研究を 瀧澤俊也・東海大学総合医学研究所・所長 総医研では、東海大学の医科学先端研究の中核拠点となるよう、ゲノム/再生医療/創薬の3つの大きな 部門を設け、基礎研究と臨床応用が一体となるトランスレーショナルリサーチを推進し、社会に貢献するこ とを基本に考えております。そのため、医学系、生命科学系、理工学系、人文社会系も含めた学内の各学部 との連携、さらには学外の研究所との連携も含めて“医科学研究”の活性化を図り、医学部との連携を通じ て、若手医師の研究を活性化し、人材の育成にも努めていきたいと思います。 今年度から、総医研の中期目標のコアプロジェクトとしてスタートした『ポドサイト傷害モデルを用いた 糸球体硬化症の病態解明』を担当する松阪泰二准教授に話を聞きます。 腎臓病悪化ひきおこす? たこ足細胞 (ポドサイト) に注目 腎臓は、体内の環境を一定に保つのに大 きな役割を果たしています。糖尿病や腎炎 などで、その機能が失われると人工透析や 腎移植が必要となります。そのような方が 国内には煕万人以上いて、毎年1万人ずつ 増加しています。医療経済上でも重要な問 題です。腎臓の働きが正常の半分以下に低 下している人は、全人口の瀾%以上いると 言われています。腎不全になるのはこれら の一部ですが、腎機能が低下すると心臓病 松 阪 泰 二 ・ 東 海 大 学 総 合 医 学 研 究 所 ・ 准 教 授 ります。このろ過の バリアとして重要な のがポドサイトで す。この細胞が壊れ ると尿中にタンパク 質が漏れます。タン パク質の中に腎臓を 傷める物質があるの で、これが長く続く と腎不全になりま す。これの存在量は 腎臓細胞全体の1% 程度です。 私たちは、 ポドサイトが壊れて からどのようにして ポドサイトの電子顕微鏡写真 腎不全になるかをマ や脳卒中にかかる危険が高くなります。 ウスの実験で再現しました。 私たちは、ポドサイトに注目し、研究を 進めています。腎臓の役割の1つに血液の ポドサイトは、増殖や再生をしません。 そこでポドサイトを保護したり、再生する 液体成分をろ過して尿を産出する機能があ ための薬剤の研究にも力をいれています。 第3種郵便物認可 (週 刊) 2015年(平成烽年)11月20日(金曜日) 第3560号 (52) 近年、ビッグデータなど大量の情報を分析する方法が、研究だけでなく実社会にも浸透し始めています。 生命科学、医学分野でも、大量の情報をいかに読み解くか、その活用法が様々な視点から模索されています。 バイオインフォマティクス(生命情報学)に取り組む今西規教授に話を聞きます。 コンピュータ解析で病気リスクを発見 私は、ゲノムから転写されてくるRNA 分子の情報解析を通して、ヒトの遺伝子デ ータベースを作っています。ゲノム中の突 然変異は様々な疾患の原因になります。世 界中で発表される論文から関連する情報を 集め、突然変異があるとどんな病気につな がるかを調べています。この疾患関連遺伝 子のデータベースは、国内の遺伝子検査・ 解析サービス大手でも活用されています。 また、高速に塩基配列を決定できる次世代 シーケンサ(NGS)を使って個人のゲノ ムを決めたり、感染症のDNA診断技術の 開発を目指しています。どんな菌に感染し 今 西 規 ・ 東 海 大 学 総 合 医 学 研 究 所 ・ 教 授 研 究 戦 略 ているのか、血液を使ってごく短時間に特 定できる検査システムの開発を行っていま す。 正確に予測できる疾患はごく一部です。 その人が一番どの病気に気を付ければいい か、5年以内に発症しそうな病気は何かな ど、患者さんに役に立つレベルまで技術を 高めていきたいですね。 ガンなどの悪性腫瘍になる人は日本でも年々増加しています。様々な薬や治療法が開発されています。 悪性腫瘍に対するユニークな研究を行っている幸谷愛准教授に話を聞きます。 RNAを利用した治療/診断法の開発目指す 私は、3つの柱を中心に研究を進めてい ます。 1つ目は、タンパク質を作らないゲノム から転写されるRNAをガン、白血病など の診断に役立てることができないかを検討 しています。2つ目は、RNAを用いてガ ン細胞の働きを制御する(ガン化を正常細 胞化する)研究です。既に白血病でレチノ イン酸を用いた細胞運命を変える治療法が あります。3つ目は、ガン組織(の微小環 境)を再現するプロジェクトです。工学部 の先生と協働で3次元+時間の4次元解析 を行っています。 その他、RNAを用いて東アジアに多い 幸 谷 愛 ・ 東 海 大 学 総 合 医 学 研 究 所 ・ 准 教 授 研 究 戦 略 EBウイルス感染リンパ種の診断をできな いか検討しています。EBウイルスは、ガ ンとの関連が知られており、診断が遅れる と治療が困難になります。このように、新 たな観点、新たな技術、新たな連携を通し て、基礎研究から臨床応用までつなげる画 期的な悪性腫瘍の治療法を模索していま す。 ※吉田副学長、滝澤所長と、松阪准教授、今西教授、幸谷准教授による座談会は、『科学新聞』 淹 濤 涅 涵年瀲月烽日号に掲載。
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