沖縄県糸満市 市の概要(平成23年3月末日現在) ●面積:46.63平方㎞² ●人口:58,799人 ●世帯数:22,419世帯 ●一般会計予算:約195億円 ●都市形態について 那覇市から南へ12㎞に位置しており、海岸線は摩文仁の丘へとつなぎ、北は豊見城市、東 を八重瀬町に接し、西と南はそれぞれ東シナ海と太平洋に面している。市域には、琉球三山時 代の一つである南山城跡や国指定の具志川城跡など、全域に遺跡が分布している。 太平洋戦争における沖縄戦では、本島の最南端に位置するこの地域に多くの住民が追われ、 戦禍の犠牲となった。この戦争により人口が激減したため、終戦の翌年(昭和21年)に真壁 村、摩文仁村、喜屋武村の3村が合併、昭和36年には、さらに1町3村の合併により、新糸 満市が誕生した。昭和59年には、広大な埋め立て事業を行ない、工業・商業・住宅・公共施 設等の配置により、本島南部の中核都市として新しいまちづくりが 進められた。近年、さらな る埋め立てが進み、今後は住宅地造成など新たな都市基盤の整備が進められている。 1.子育て応援デーについて (1)保育をめぐる状況 糸満市は他の自治体に比べ、出生率は比較的高い状況だが、少子化は進んでいる。また、 世帯数の約7割が核家族になっており、子育て経験を継承できないなどの問題も発生している。 地域外から嫁いでくる女性も多く、子育ての悩みを交流できる場が無く、その受け皿として「子 育て応援デー」の施策が実施されることになった 。 保育待機児は156名(今年度)となり、小規模保育所や認可外保育所の整備も重要にな っている。 認可保育所は13園、認可外保育所は15園あるが、認可外保育所 の保育料負担が大きな 問題になっている。就労できない母親も多く、就労支援も大きな課題である。 (2)子育て応援デーの概要 糸満市の保育所では、入所していない親子に保育所で遊ぶ場と機会を提供し、保護者の子 育て支援を行なっている。 保育所保育指針 では、保育所は保育に支障のない限りにおいて、地域の実情や保育所の体 験等を踏まえ、地域の保護者等に対する子育て支援を積極的に行なうように努めることと記 されており、その指針に基づいて、支援事業が展開されている。 糸満市の公立保育所では、すべての子どもたちの発達が保障されるよう、様々な体験の場 と機会を提供するとともに 、その保護者の子育て支援を積極的に行ない、児童福祉施設とし ての役割を果たしている。 ◆実施日 毎週水曜日 10時∼12時 ◆内容 保育参加、給食体験(実費負担)、子育て相談等 ◆場所 市立保育所すべて(5カ所)で実施している。 ◆定員 概ね2、3組(保育所の状況に応じて) ◆実施に伴い行なう事項 ①登録をする ②子どもの安全管理は保護者が責任をもつ ③活動終了後にアンケートを行なう (3)評価と課題 保護者にとっては、子育ての振り返りとなり「参考になる」などのコメントが多く寄せられ ている。また、子育て相談等から、家庭内の問題などが明らかになり、行政的な対応が機敏に 行なわれるなどの効果をあげている。保護者の就労支援に結び付くこともあり、特に母子家庭 の母親への系統的な就労支援なども合わせて行なわれている。 課題としては、日常的に生活苦を抱える保護者へのサポート体制が、まだ充分ではない。困 難を抱えている家庭が、施策を利用しないケースも増えており、きめ細かな対応が必要になっ ている。 <所感> 保育所、幼稚園に入園していない保護者に対して、保育所ですべての子ども達の発達が保障 されるよう、様々な体験と機会を提供するとともに、子育て支援を行なうことは非常に重要な 施策であり、特に、保護者が自ら子育てを振り返る大切な機会となっている。 杉並では「ふれあい保育」が当事業に該当し、区立保育園で保育園生活を体験する中で、保 育士などのアドバイスを 受けながら、子育てに対する悩みや不安を解消し、子どもの健やかな 成長を支援する制度がある。 杉並では区立44カ所の各保育園で、毎月若干名を受付けているが、毎週開催されるような 頻度ではない。 「子育て応援デー」事業では、保護者の生活状況なども含めて対応がされるため、多面的に 問題を解決する施策にもなっている(福祉プラザ「すこやか館」などの活用も含め)。 今後、杉並区でも個別のケースごとに、子育て問題のみならず、本質的な問題も含めて対応 ができる施策を整備することが重要である。 2.福祉プラザ「すこやか館」について (1)施設概要 平成23年9月、糸満市の子育て支援の拠点となる 「すこやか館」が開所。 すこやか館では、市と NPO が連携をしながら、保護 者が地域の中で安心して子育てができるよう、支援事業 を実施運営している。 (2)各団体の事業内容 ア NPO つどいの広場 事業目的 子育て中の親の育児不安に対応・支援していく中で、子どもの健全な育ちを目指し、子 育て家庭が共に育ち合い、互いに支えるための支援事業や、子育て支援機関と連携を図り、 地域全体で子育ての支援ができる基盤形成に寄与することを目的としている。 事業・活動内容 ●乳幼児期の子育て家庭が気軽に交流できる場 ●お母さん同士の子育て情報交換の場 ●親子の友だちづくりの場 ●遊びのヒントが見つかる場 ●子どもの成長を確かめる場 ●育児不安解消の糸口が見つかる場 ●地域の人々が子育てに関わりながら、子育てを 応援する場 ●支援者も共に学び合いながら、資質向上をサポー トする場 ●連携と協働によるまちづくりを 推進する場 イ 糸満市親子通園 「ぐんぐん」 事業目的 心身の発達に心配のある就学前の児童が、保護者と一緒に通園し、保育を通して、親子 のふれあいと、心身の発達を促し、基本的な生活習慣の自立を育てる。また、必要な相談、 助言、指導により、育児に対する悩みの軽減と親子関係を深める支援も行なう。 療育内容と目標 親子で遊ぶ楽しさ、友だちと遊ぶ楽しさを知らせながら、発達の援助を行ない、保護者 同士のコミュニケーションを 深め育児の情報交換をする中で、不安の解消を図り、子育て の楽しさを共有していく。 <目標> ◎健康で明るい笑顔のあふれる子ども ◎基本的生活習慣を身につけ、主体的に行動できる子ども ◎親、祖父母、保育士など身近な大人に愛される喜びを体験し、豊かな心をはぐくむ。 ウ 子育て応援隊 NPO いっぽ 事業目的 保育士、元教員、元社会教育指導員等 で構成され、子育て困難な状況にありながら、「支 援を求めない」 「求めるすべを知らない」親に対する支援を行なう。子どもが健やかに育っ ていく上でも、保護者への支援は重要であり、NPO と行政が連携し、必要としている人に 必要な支援を提供し、親が地域の中で安心して子育てできるように 活動を行なう。 活動内容 ●関係機関と連携した子育て困難な親の発見、実態把握、支援の実践 ①相談事業 ②見守り(家庭訪問) ③ケースに応じた支援活動(料理講座等) ●親子通園に通う子どもの兄弟児預かり ●子育てママ就労支援事業 ●啓発活動 ①講演会 ②絵本との出会い支援事業 ③広報誌の発行 (3)課題 国の法改正により、財源確保などの問題が発生している。また、国の子ども子育て新システ ムにより、各団体の支援事業も影響を受ける可能性があり、今後の動向を注視する必要がある。 問題解決のために、各分野のネットワーク構築が緊急の課題になっている。虐待などへの対 応をすみやかに行えるよう体制を強化する必要がある。 <所感> 糸満市福祉プラザ「すこやか館」の設置により、行政と NPO が連携を取りながら、子育て 支援事業を展開しやすくなっている。 杉並区でも、相談・啓発事業(子育てサポートセンター)や子ども家庭支援センターなどの 事業もあり、NPO と連携した子育て支援事業を実施運営することが重要である。 糸満市の「すこやか館」のように、行政と NPO が同じ拠点を持ち、日常的に連携できると いう理想的な環境をもつには、一定規模の土地の確保などの課題もあるが、各分野、多様な団 体等が日常的に連携・協力する子育て支援事業のネットワーク整備が必要であると感じる。
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