中国の人民元改革 - 野村アセットマネジメント

Vol.213
2016
2
中国の人民元改革
○人民元相場が対米ドルで下落基調にある。これが金融市場で注目されるようになっ
たきっかけは、昨年8月に中国当局が人民元の基準値の算出方法を変更したことだ。
○人民元の基準値算出方法の変更の目的は、人民元の基準レートを市場の実勢に
近づけることにあった。足元の人民元相場の対米ドルでの下落は、こうした人民元
の改革が背景にある。
○人民元改革の流れが今後も続くことを考慮すれば、人民元相場の変動が大きくなる
という流れは、今後も変わらないだろう。しかし、当局は潤沢な外貨準備を保有して
おり、過度な人民元安やその期待に基づいた資本流出を抑止する手段も持ち合わ
せている。
○足元の金融市場の動揺は、人民元を基軸通貨とする上で避けて通れない道だ。
図1 主要通貨の国際為替市場における取引高シェア(2013年)
(%)
50
40
30
20
10
0
米ドル
ユーロ
円
英ポンド
人民元
(出所) 国際決済銀行(BIS)データより野村アセットマネジメント作成
当資料は情報の提供を目的としており、当資料による何らかの行動を勧誘するものではありません。当資料は信頼できると思われる情報に基づいて
作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。ここに示された意見などは、当資料作成日現在の当社調査部の
見解であり、事前の連絡無しに変更される事もあります。投資に関する決定は、お客様御自身の判断でなさるようにお願いいたします。
投資環境レポート
1
Vol.213 2016.2
投資の視点
中国の人民元改革
場における人民元相場を、当局が毎営業日に設定する基
準値から一定の範囲内での変動しか認めない方針で管
理している。しかし、資本移動の自由化を進め、人民元の
基軸通貨化を目指す当局は、人民元レートを市場の実勢
に委ねる方向で人民元改革を進めてきた。昨年8月の当
局の決定は、こうした人民元改革の流れの中で行われた
ものだ。一方、2014年以降、「投資から消費へ」といった構
造改革の流れの中で家計の消費を支援することや、人民
元を国際通貨基金(IMF)のSDR(特別引出権)に組み入
れることを目指すうえで人民元の国際社会からの信認を
高めたいとの思惑から、当局は人民元相場を市場の実勢
より割高な水準に誘導してきた。そのため、当局が人民元
相場を市場実勢に委ねるということは、当局が人民元の
下落を容認することを意味していた。昨年8月以降の人民
元相場の対米ドルでの下落は、こうした人民元の改革が
背景にあった。
●人民元安に動揺する金融市場
人民元相場が対米ドルで下落基調にある。これが金融
市場で注目されるようになったきっかけは、昨年8月に中
国当局が人民元の基準値の算出方法を変更したことだ。
基準値が3営業日連続で切り下げられたことで、当局が通
貨安誘導を始めたとの観測が台頭し、金融市場に動揺が
走った。その後、市場心理は一旦小康状態を取り戻したも
のの、昨年末以降当局が再び人民元の基準値を切り下
げ始めたことで、こうした懸念が再燃し、原油価格低迷に
よる不透明感がくすぶっていたことも相まって、金融市場
は世界的に不安定な動きを示した。
また、金融市場が中国に対し懸念しているのは人民元
の動向だけではなく、2014年以降続く中国の資本流出の
動向だ。実際、中国の資本(誤差脱漏を含む)は2014年
4-6月期以降流出を続け、資本流出に伴う当局の人民元
買い介入もあり、外貨準備はピーク時から昨年12月末に
かけて約17%減少している(図2参照)。
●人民元相場の変動は続く見通し
こうした人民元改革の流れが今後も続くことを考慮すれ
ば、人民元相場の変動が大きくなるという流れは、今後も
変わらないだろう。さらに、当局は昨年12月に新たな通貨
バスケットを公表した。今後、当局はこのバスケットに対し
て人民元の安定を維持することを目指す可能性がある
(図3参照)。これまでも当局は、人民元相場の決定に通貨
バスケットを参照するとはしてきたものの、実質的には対
米ドルでの人民元相場の安定を重視してきた。そのため、
今回の新たな通貨バスケットの導入は人民元の対米ドル
レートが、米ドルや米ドル以外の通貨の変動によって左右
されるようになる可能性を示唆している。仮に米ドルが他
の通貨に対し今後も上昇した場合、当局は人民元の対米
金融市場は、①当局が人民元の基準値を切り下げた背
景が何であるか、②足元の資本流出圧力に対し当局が有
効な手段を講じることができるのか、③大規模な資本流出
が続く中、当局が今後も人民元の不安定な動きを抑止す
ることができるのか、といった疑問に、当局が応えていな
いことに懸念を募らせているのだ。
●人民元安の背景
そもそも、昨年8月に当局が発表した人民元の基準値
の算出方法変更の目的は、人民元の基準値を市場の実
勢に近づけることにあった。当局は2005年以降、国内市
図2
中国の外貨準備と資本流出入
図3 当局が発表した新たな通貨バスケット
(10億米ドル)
200
構成通貨
(10億米ドル)
4,500
150
4,000
100
3,500
50
3,000
0
2,500
-50
2,000
-100
1,500
資本流出入(左軸)
経常収支(左軸)
外貨準備(右軸)
-150
-200
1,000
500
08
09
10
11
12
13
14
15 (年)
構成通貨
%
1 米ドル
26.4
8 英ポンド
2 ユーロ
21.4
9
3 円
14.7
10 タイ・バーツ
3.3
4 香港ドル
6.6
11 カナダ・ドル
2.5
5 豪ドル
6.3
12 スイス・フラン
1.5
13
6
マレーシア・
リンギ
4.7
7
ロシア・
ルーブル
4.4
0
-250
%
シンガポール・
ドル
ニュージーランド・
ドル
3.9
3.8
0.7
(出所) 国際通貨研究所資料より野村アセットマネジメント作成
(注) 資本流出入は国際収支の誤差脱漏項目を含む。
(出所) CEICデータより野村アセットマネジメント作成
当資料は情報の提供を目的としており、当資料による何らかの行動を勧誘するものではありません。当資料は信頼できると思われる情報に基づいて
作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。ここに示された意見などは、当資料作成日現在の当社調査部の
見解であり、事前の連絡無しに変更される事もあります。投資に関する決定は、お客様御自身の判断でなさるようにお願いいたします。
投資環境レポート
2
Vol.213 2016.2
元安期待に基づく資本移動に警戒感を強めており、こうし
た動きに対して今後も断固とした措置をとる公算が高い。
ドルでの下落を容認する可能性が高いということだ。
また、中国からの潜在的な資本流出圧力も当面続く可
能性が高い。足元の中国からの資本流出圧力は、中国の
国内企業が対外借り入れの返済を急いだことや、先行き
の人民元安を見込んだ投機的な取引が背景にある。一時
急増していた中国企業の対外借り入れの残高は既に減
少しつつあるものの、人民元安を見込んだ投機的な人民
元売り圧力は今後も残るだろう。実際、人民元は対米ドル
で2014年末から2016年1月末にかけて約6%下落している
ものの、通貨バスケット対比で見た人民元は概ね横ばい
圏で推移しており、米ドル以外の通貨に対しては依然底
堅く推移している(図4参照)。金融市場は、対通貨バスケ
ットでみた人民元を割高と認識しており、人民元が安くなる
との期待 は、今後 も金融市場 でくすぶり続 ける公算 が
高い。
●人民元改革の先にあるもの
人民元を巡る不透明感は当面金融市場でくすぶり続け
る可能性がある。しかし、足元の人民元相場を巡る金融
市場の動揺は、人民元を国際取引における基軸通貨にす
るためには、避けて通れない道であることも確かだ。
昨年11月、IMFは人民元を今年10月にSDRに組み入れ
ることを発表した。SDRはIMFが加盟国の外貨準備を補完
する目的として創設された国際準備資産だ。人民元の
SDRへの組み入れは、人民元が米ドル、ユーロ、英ポンド
や円と並ぶ国際通貨として国際社会に認められたという
象徴的な意義を持っている。
一方、人民元の国際取引における取引額は、SDRに組
み入れられている他の通貨に比べ依然として小さい(図1
参照)。また、各国の通貨当局が自国の外貨準備に人民
元を組み入れる動きも限定的だ。人民元が国際取引の中
で主導的な取引通貨となり、名実ともに基軸通貨としての
地位を確立するためには、資本移動の自由化を一層進め、
人民元レートの変動を市場の実勢に委ねることで、金融
市場における人民元の信認を高めることが必要であり、
当局もその重要性を認識している。今後、こうした改革の
成果が実を結び、人民元の国際取引における存在感が
高まれば、それに伴って人民元に対する需要も拡大する
ことが見込まれるだろう。
しかし、資本流出圧力によって、人民元が急落すること
や、それに伴って内外の金融市場が制御不能な混乱に陥
ることを見込むのは早計だ。昨年来の人民元相場の変動
に伴う金融市場の動揺は、人民元の変動や資本流出の
拡大に関して、金融市場と当局の間の意思疎通が働いて
いなかったことが一因だ。しかし、当局は3兆米ドルにのぼ
る潤沢な外貨準備を保有しており、人民元安やその期待
に基づいた資本流出を抑止する手段を持ち合わせている。
実際、当局は過度な人民元安期待を抑制するため、今年
1月8日から12日にかけて、香港市場で大規模な人民元買
い介入を行ったと見られている。これにより、当局の規制
が厳しくないことから、人民元安期待を先に織り込んで下
落していたオフショア人民元(中国本土外で取引される人
民元)相場は、一転急上昇した(図5参照)。当局は、人民
図4
仙波 紘行(経済調査部)
人民元の対通貨バスケット・対米ドルレート
106
オフショア人民元
6.7
104
オンショア人民元
6.6
102
人民元安
(人民元/米ドル)
6.8
人民元高
(2014年12月末=100)
108
図5 オフショア人民元とオンショア人民元
6.5
100
6.4
98
対米ドル
92
14/12
15/03
15/06
15/09
人民元高
対通貨バスケット
94
6.3
人民元安
96
6.2
6.1
15/01
15/12
(年/月)
15/03
15/05
15/07
15/09
15/11
16/01
(年/月)
(注) オフショア人民元は中国本土外で取引される人民元、
オンショア人民元は中国本土で取引される人民元。
(出所) Bloombergデータより野村アセットマネジメント作成
(出所) Bloombergデータより野村アセットマネジメント作成
当資料は情報の提供を目的としており、当資料による何らかの行動を勧誘するものではありません。当資料は信頼できると思われる情報に基づいて
作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。ここに示された意見などは、当資料作成日現在の当社調査部の
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投資環境レポート
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Vol.213 2016.2
為替レート
円
ユーロ
2016年1月末の対米ドルの円相場は1米ドル=
121.1円となり、12月末の120.1円に対して0.9%の
円安となった。上旬に117円台前半まで円高が進
んだ後は概ね117円台後半から118円台前半での
推移となった。その後、一時116円割れとなる局面
もあったものの、月末に円は下落し121円台に至った。
2016年1月末の対米ドルのユーロ相場は、1ユ
ーロ=1.08米ドルとなり、12月末の1.09米ドルに対
して0.2%のユーロ安となった。上旬に1.10米ドル
に接近するまで上昇したユーロは、一時1.08米ド
ルを割り込むまで下落する局面もあったものの、
概ね1.09米ドルを挟んで推移した。なお、対円では、
米ドル高(円安)の影響もあり、1ユーロ=130.7円
から131.2円へ0.4%のユーロ高となった。
中国経済の減速懸念や中東情勢を巡る地政学
リスクの高まりなどを背景に、上旬にリスク回避の
円買いが進んだ。下旬には日米欧の金融政策決
定会合が円相場の主な変動要因となった。21日、
欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁が追加金融緩
和を示唆すると、日本銀行の追加金融緩和観測
が高まり、円はやや下落した。26-27日の米連邦
公開市場委員会(FOMC)は市場予想通り金融政
策の据え置きを決定し、為替市場に対する影響は
限定的だった。そして、29日、日本銀行は、市場予
想に反して、金融機関が保有する日本銀行当座
預金の一部に▲0.1%のマイナス金利を適用する
「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入を
決定し、円は大幅に下落した。
金融市場のリスク許容度の変化や欧米金融政
策に関する観測がユーロの変動要因となった。上
旬の株式市場の混乱などを受けて、リスク回避の
動きが強まると、資金調達通貨となっていたユー
ロが買い戻され、ユーロ高となった。ユーロ圏のイ
ンフレ期待が低下する中で開催された21日のECB
理事会では、金融政策の維持が決定されたもの
の、理事会後の会見で、ドラギ総裁は3月の次回
会合での追加金融緩和決定を示唆した。これを受
け、ユーロは一時1.08米ドルを割り込むまで下落し
た。その後、25日に原油価格が反落すると、ユー
ロは上昇したが、月末の日本銀行による追加金融
緩和を受け、ユーロも対米ドルで下落した。
今後の円相場を見る上で、引き続き日米の金
融政策が重要だ。一部で米国経済の減速懸念も
生じている中、3月に2回目の利上げを決定できる
か注目される。一方、日本銀行のインフレ目標に
対するコミットメントの強さにも、注意しておきたい。
今後のユーロ相場を見る上では、米欧の景気
や金融政策スタンスが重要だ。3月にECBが金融
緩和を強化すると見られる中、米連邦準備制度理
事会(FRB)が金融正常化を進められるかどうかが
注目される。
円
ユーロ
(米ドル/ユーロ)
1.50
対円(左軸)
対米ドル(右軸)
150
124
140
1.30
121
130
1.20
118
120
1.10
2015/4
2015/7
2015/10
110
2015/1
2016/1
(年/月)
(出所) Bloombergデータより野村アセットマネジメント作成
2015/4
2015/7
2015/10
1.40
ユーロ安
115
2015/1
円高
127
ユーロ高
(円/ユーロ)
160
円安
(円/米ドル)
130
1.00
2016/1
(年/月)
(出所) Bloombergデータより野村アセットマネジメント作成
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4
Vol.213 2016.2
豪ドル
ブラジル・レアル
2016年1月末の対米ドルの豪ドル相場は、1豪ド
ル=0.71米ドルとなり、12月末の0.73米ドルに対し
て2.8%の豪ドル安となった。豪ドルは月半ばにか
けて下落基調で推移したものの、その後やや反発
した。なお、対円では、米ドル高(円安)の影響もあ
り、1豪ドル=87.6円から85.8円へ2.0%の豪ドル安
となった。
2016年1月末の対米ドルのレアル相場は、1米ド
ル=4.00レアルとなり、12月末の3.96レアルに対し
て1.0%のレアル安となった。レアルは月間を通じ
て下落基調で推移していたものの、月末に急反発
した。なお、対円では、米ドル高(円安)の影響もあ
り、1レアル=30.4円から30.3円へ0.3%のレアル安
となった。
豪ドル相場は海外市場の動向に大きく左右され
る展開となった。月半ばにかけては、原油相場が
軟調に推移したことや、人民元安が進行したこと
で、金融市場のリスク回避姿勢が高まったことを
受け、豪ドルは下落した。しかしその後は、12月の
中国の貿易統計が市場予想を上回ったことや、人
民元安と原油相場の下落基調に一服感が出たこ
とで、豪ドルはやや反発した。
月前半のレアル相場は、原油価格の下落等に
伴う世界的な金融市場の混乱を受け、軟調に推
移した。また、11月の鉱工業生産が大幅に落ち込
んだことで、国内の景気後退が深刻化しているこ
ともレアル相場の重石となった。その後は、ブラジ
ル中央銀行が市場の利上げ期待に反して政策金
利を据え置いたことが嫌気される場面もあったも
のの、原油相場が反発に転じたことを受け、レア
ルは月末に大きく反発した。
今後の豪ドル相場を見る上では、引き続き米国
の金融政策が注目される。金融市場はFRBの利
上げペースに注目しており、豪ドルはこうした思惑
に左右されやすい展開となるだろう。また、金融市
場は原油価格急落が資源国や資源関連企業へ
与える波及効果に警戒感を強めており、原油価格
の動向も豪ドル相場を左右するだろう。さらに、金
融市場では人民元安への警戒感が依然根強い。
人民元安が急速に進めば、金融市場に動揺が広
がり、豪ドル相場に波及する恐れがある。
今後のレアル相場を見る上での注目点はブラ
ジルの財政緊縮の動向だ。足元でブラジルの景
気悪化が深刻化しつつあることから、財政再建が
難航しており、金融市場はその進捗を注視してい
る。また、足元では原油安が一層進行している。
原油価格の低迷がブラジルの国営石油会社の業
績の重石となれば、ブラジルの財政再建の不透明
感が一層高まる可能性があり、原油相場の動向
にも注意を要する。
豪ドル
(米ドル/豪ドル)
1.00
(レアル/米ドル)
2.50
対円(左軸)
0.90
43.5
対米ドル(右軸)
105
0.80
39.5
3.20
95
0.70
35.5
3.55
85
0.60
31.5
3.90
対円(左軸)
115
2015/7
2015/10
0.50
2016/1
(年/月)
27.5
2015/1
(出所) Bloombergデータより野村アセットマネジメント作成
2015/4
2015/7
2015/10
2.85
レアル安
2015/4
豪ドル安
75
2015/1
対米ドル(右軸)
豪ドル高
(円/レアル)
47.5
レアル高
(円/豪ドル)
125
ブラジル・レアル
4.25
2016/1
(年/月)
(出所) Bloombergデータより野村アセットマネジメント作成
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5
Vol.213 2016.2
株式・債券
先進国株式
先進国債券
2016年1月末のTOPIXは、1,432.07ポイントとな
り、12月末から7.4%下落した。経済指標の悪化や
人民元安を受けた中国株式市場の大幅下落に加
え、中東、北朝鮮などでの地政学的リスクが高ま
ったことで投資家のリスク資産を売却する動きが
強まった。原油価格の下落も続き世界経済の先行
きに対する警戒感が高まった。月末には日本銀行
の金融政策決定会合においてマイナス金利導入
が決定されたことで反発したが、月間では下落と
なった。
2016年1月末の日本の10年国債利回りは0.10%
となり、12月末から0.17%低下した。月初は、世界
的な金融市場の混乱や、欧米金利の低下などを
背景に、利回りは低下した。その後は、高値警戒
感も見られ、利回りはレンジ圏で推移した。月末に、
日本銀行が、2%の物価目標達成時期を先送りし、
「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入を
発表すると、利回りは急低下した。
2016年1月末の米国の10年国債利回りは1.92%
となり、12月末から0.35%低下した。原油価格の下
落や世界的な株価下落を背景に、安全資産として
の需要が高まり、利回りは月間を通じて低下基調
で推移した。FRBが月末のFOMC声明で、世界経
済や金融市場混乱への警戒や、緩やかなペース
での利上げ見通しを改めて示したことも利回りの
低下要因となった。
2016年1月末のS&P500株価指数は、1,940.24ポ
イントとなり、12月末から5.1%下落した。月前半は、
中国株式市場や原油価格の急落、中東情勢の緊
迫化などを背景に大幅に下落した。月末にかけて
原油価格が反発したことを好感し上昇したが、月
間では下落した。
2016年1月末のDAX指数は、9,798.11ポイントと
なり、12月末から8.8%下落した。月前半は、中国
株式市場や原油価格の急落を背景とする世界的
なリスク回避姿勢の高まりから大幅に下落した。
月後半はECBによる追加金融緩和期待が高まっ
たことや、原油価格が反発したことなどを好感し上
昇したが、月間では下落した。
2016 年 1 月 末 の ド イ ツ の 10 年 国 債 利 回 り は
0.33%となり、12月末から0.30%低下した。上旬は、
世界的な金融市場の混乱や、12月の独インフレ率
が市場予想を下回ったことなどを背景に、利回り
は低下した。その後、利回りはレンジ圏で推移した
が、21日のECB理事会後の会見で、ドラギ総裁が
次回3月の会合において金融政策を再考すると発
言し、追加緩和観測が高まったことから利回りはさ
らに低下した。
株価指数
10年国債利回り
(ポイント)
2,500
(ポイント)
15,000
(%)
1.0
(%)
3.0
2,200
13,000
0.8
2.7
1,900
11,000
0.6
2.4
1,600
9,000
0.4
2.1
7,000
0.2
1,300
1,000
2015/1
TOPIX(左軸)
S&P500(左軸)
DAX(右軸)
2015/4
2015/7
2015/10
5,000
2016/1
(年/月)
0.0
2015/1
(出所) Bloombergデータより野村アセットマネジメント作成
日本(左軸)
ドイツ(左軸)
米国(右軸)
2015/4
2015/7
2015/10
1.8
1.5
2016/1
(年/月)
(出所) Bloombergデータより野村アセットマネジメント作成
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6
Vol.213 2016.2
データ・グラフ集
新興国株式
新興国債券
(ポイント)
1,200
(ポイント)
750
MSCI新興国(米ドルベース)
JPモルガン新興国債券指数
1,000
700
800
650
600
2014/1
2014/7
2015/1
2015/7
600
2014/1
2016/1
(年/月)
2014/7
リート
(ポイント)
300
2015/1
2015/7
2016/1
(年/月)
コモディティ
(ポイント)
S&P先進国リート指数(左軸)
(ポイント)
400
3,000
東証リート指数(右軸)
(米ドル/バレル)
200
ロイター/ジェフリーズCRB商品価格指数(左軸)
WTI原油スポット価格(右軸)
250
2,500
300
150
200
2,000
200
100
150
1,500
100
50
100
2014/1
0
2014/1
1,000
2014/7
2015/1
2015/7
2016/1
(年/月)
0
2014/7
2015/1
2015/7
2016/1
(年/月)
金融市場の動き
<変化率、%>
■株式
日経平均(日本)
TOPIX(日本)
日経ジャスダック平均(日本)
NYダウ工業株(米国)
S&P500(米国)
NASDAQ(米国)
FTSE100種(英国)
DAX(ドイツ)
ハンセン指数(香港)
上海総合(中国)
S&P/BSE SENSEX(インド)
MSCI新興国(米ドルベース)
1ヵ月
-8.0
-7.4
-6.3
-5.5
-5.1
-7.9
-2.5
-8.8
-10.2
-22.6
-4.8
-6.5
3ヵ月
-8.2
-8.1
-3.3
-6.8
-6.7
-8.7
-4.4
-9.7
-13.1
-19.1
-6.7
-12.4
6ヵ月
-14.9
-13.7
-11.2
-6.9
-7.8
-10.0
-9.1
-13.4
-20.1
-25.3
-11.5
-17.7
<変化率、%>
1年
-0.9
1.2
5.3
-4.1
-2.7
-0.5
-9.9
-8.4
-19.7
-14.7
-14.8
-22.8
■為替
円/米ドル
円/ユーロ
米ドル/ユーロ
円/英ポンド
円/豪ドル
円/カナダ・ドル
円/ブラジル・レアル
円/トルコ・リラ
円/南アフリカ・ランド
1ヵ月
0.9
0.4
-0.2
-2.6
-2.0
-0.2
-0.3
-0.6
-2.0
3ヵ月
0.4
-1.2
-1.6
-7.3
-0.3
-6.1
-3.2
-0.9
-12.7
6ヵ月
-2.2
-3.6
-1.4
-10.8
-5.2
-8.4
-16.4
-8.3
-22.0
1年
3.1
-1.1
-4.0
-2.5
-5.9
-6.0
-30.9
-14.8
-24.5
(注) マイナスは円高方向に動いたことを示す
(米ドル/ユーロの場合は米ドル高)
<変化率、%>
■債券
米国ハイイールド債券指数
JPモルガン新興国債券指数
<変化率、%>
■商品・リート
1ヵ月 3ヵ月 6ヵ月 1年
ロイター/ジェフリーズCRB商品価格指数
-5.3 -14.8 -17.7 -23.8
WTI原油スポット価格
-9.2 -27.8 -28.7 -30.3
東証リート指数
1.9
3.0
0.8 -5.6
S&P先進国リート指数
-3.3 -4.4 -3.7 -10.7
1ヵ月
-1.6
-0.2
3ヵ月
-6.2
-1.8
6ヵ月
-7.8
-1.1
1年
-6.6
0.7
<%>
■債券利回り
日本10年国債
米国10年国債
ドイツ10年国債
12月末 1月末 前月差
0.27
0.10 -0.17
2.27
1.92 -0.35
0.63
0.33 -0.30
記載されている市場データは野村アセットマネジメントのホームページでご覧になれます(一部掲載されていない場合があります)。
(注) 変化率は2016年1月末を基準として算出している。
(出所) Bloombergデータより野村アセットマネジメント作成
当資料は情報の提供を目的としており、当資料による何らかの行動を勧誘するものではありません。当資料は信頼できると思われる情報に基づいて
作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。ここに示された意見などは、当資料作成日現在の当社調査部の
見解であり、事前の連絡無しに変更される事もあります。投資に関する決定は、お客様御自身の判断でなさるようにお願いいたします。
投資環境レポート
7
Vol.213 2016.2
経済カレンダー
SUN
2/
14
MON
15
(日)10-12月期GDP(1次
速報値)
(中)1月貿易収支
21
2016年2月14日~2016年3月12日
22
TUE
WED
16
THU
17
(独)2月ZEW景況感指数
18
(日)12月機械受注
(米)1月住宅着工件数
(米)1月生産者物価指数
(米)1月鉱工業生産指数
23
24
29
(日)1月鉱工業生産指数
(日)1月新設住宅着工戸
数
(ユーロ圏)2月消費者物
価指数
6
7
3/
1
8
27
(日)1月消費者物価指数
(米)10-12月期GDP(改定
値)
(米)1月個人消費支出
3
9
(日)10-12月期GDP(2次
速報値)
(日)1月経常収支
(日)2月景気ウォッチャー
調査
(独)1月鉱工業生産指数
(中)2月貿易収支
20
(米)1月消費者物価指数
26
(米)1月耐久財受注
2
(日)1月失業率
(米)2月ADP雇用統計
(日)1月有効求人倍率
(豪)10-12月期GDP
(日)1月家計調査
(ブラジル)金融政策発表
(米)2月ISM製造業景況感
指数
(ユーロ圏)1月失業率
(豪)金融政策発表
(中)2月製造業PMI(購買
担当者景気指数)
(南ア)10-12月期GDP
(ブラジル)2月貿易収支
SAT
19
(日)1月貿易収支
(米)1月景気先行指数
(中)1月消費者物価指数
(中)1月生産者物価指数
25
(米)12月S&Pケース・シラ (米)1月新築住宅販売件
ー住宅価格指数
数
(米)2月コンファレンスボー
ド消費者信頼感指数
(米)1月中古住宅販売件数
(独)2月Ifo景況感指数
(トルコ)金融政策発表
(ブラジル)1月経常収支
(メキシコ)10-12月期GDP
28
FRI
4
5
(米)2月ISM非製造業景況 (米)1月貿易収支
感指数
(米)2月雇用統計
(米)1月製造業受注
(ブラジル)10-12月期GDP
10
11
12
(日)2月マネーストック
(日)2月国内企業物価指
(ブラジル)2月消費者物価
数
指数(IPCA)
(ユーロ圏)金融政策発表
(中)2月消費者物価指数
(中)2月生産者物価指数
(中)2月マネーサプライ
(3/10~15)
(出所) Bloombergデータより野村アセットマネジメント作成
※経済カレンダーは作成時点で利用可能な最新の情報を用いておりますが、経済指標等の発表日は変更される可能性があります。
日本・米国・欧州経済指標
<年間>
2013年 2014年 2015年
日
本
米
国
欧
州
日銀短観(大企業製造業)(ポイント)
実質GDP成長率(前期比年率、%)
消費者物価指数(前年同月比、%)
完全失業率(%)
実質GDP成長率(前期比年率、%)
消費者物価指数(前年同月比、%)
失業率(%)
実質GDP成長率(前期比、%)
消費者物価指数(前年同月比、%)
失業率(%)
16
1.4
0.4
3.7
1.5
1.5
6.7
-0.3
1.4
11.9
12
0.0
2.7
3.4
2.4
1.6
5.6
0.9
0.4
11.4
12
-
0.8
3.3
2.4
0.1
5.0
-
0.0
10.4
<月次>
2月
3月
4月
5月
6月
2015年
7月
-
-
2.2
3.5
-
0.0
5.5
-
-0.3
11.2
12
4.4
2.3
3.4
0.6
-0.1
5.5
0.5
-0.1
11.2
-
-
0.6
3.3
-
-0.2
5.4
-
0.0
11.1
-
-
0.5
3.3
-
0.0
5.5
-
0.3
11.0
15
-0.5
0.4
3.4
3.9
0.1
5.3
0.4
0.2
11.0
-
-
0.2
3.3
-
0.2
5.3
-
0.2
10.8
8月
9月
10月
11月
2016年
12月 1月
-
-
0.2
3.4
-
0.2
5.1
-
0.1
10.8
12
1.0
0.0
3.4
2.0
0.0
5.1
0.3
-0.1
10.6
-
-
0.3
3.1
-
0.2
5.0
-
0.1
10.6
-
-
0.3
3.3
-
0.5
5.0
-
0.1
10.5
12
-
0.2
3.3
0.7
0.7
5.0
-
0.2
10.4
-
-
-
-
-
-
-
-
0.4
-
(注) 欧州はユーロ圏。年間の値について、消費者物価指数は平均値、日銀短観、失業率は期末値。月次の値について、日銀短観、GDPは四半期。
(出所) 日本銀行等、当局データより野村アセットマネジメント作成
※投資環境レポートでは作成時点で利用可能な最新の経済指標を用いておりますが、経済指標等は発表後に訂正や改定が行われることがあります。
商 号:野村アセットマネジメント株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第373号
加入協会:一般社団法人投資信託協会/一般社団法人日本投資顧問業協会
www.nomura-am.co.jp/
当資料は情報の提供を目的としており、当資料による何らかの行動を勧誘するものではありません。当資料は信頼できると思われる情報に基づいて
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投資環境レポート
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Vol.213 2016.2