為替トピックス 2016/2/9 投資情報部 FX ストラテジスト 鈴木 健吾 金岡 直一 由井 謙二 ドル円相場の115円割れと当面の見通しについて 2/9の為替市場でドル円相場は115円台を割り込み、2014年11月以来の1ドル=114円台ま で円高ドル安が進んだ。 米利上げ先送り観測の広がりにともないドルの上値が重くなるなか、2/8には南欧諸国や米 エネルギー関連企業の債務問題に絡んだ思惑が金融株主導で欧米主要株の下げにつな がり、リスク回避の動きが強まった。 ドル円は心理的な節目であった115円を明確に下抜けし、テクニカル的には106円~110円 程度まで下落する可能性を示唆している。一方で、このような円高が進めば、本邦企業業 績に多大な悪影響を及ぼすだけでなく、輸入物価を通じたデフレ圧力等も想定され、政府・ 日銀はこれを容認できないのではないか。 悲観論が加速するなか、今回の円高ドル安は経済ファンダメンタルズを無視した形で進行 している部分が大きい。目先、イエレンFRB議長の議会証言を控えているうえ、危機対応と して日米欧金融当局による協調姿勢等が示されることにより、徐々に市場は冷静さを取り 戻す展開となるのではないか。 リスク回避の動きが 続く なか、ドル 円は 2/9に115円台を割り 込む 日銀は1/29にサプライズとなるマイナス金利を導入し、ドル円相場は一時121.70円 まで上昇した。しかし、その後は米経済指標の悪化や米連邦準備理事会(FRB)高 官によるハト派的な発言を受け、米国の早期利上げ期待の後退を織り込みつつ、ド ル円はドル売り主導で下落基調を強めた。そして、2/9の東京時間帯における為替 市場では、リスク回避の円買いが優勢となり、ドル円は心理的な節目であった115円 台を割り込み、一時114.21円と2014/11/10以来の円高・ドル安水準を付けた。 ドル円が急落した背景には、2/8の欧州市場からニューヨーク(NY)市場にかけて株 式市場を中心にリスク回避の動きが強まったことがある。欧州市場では、独大手銀 行の利払い資金を巡る不安や、ポルトガル、ギリシャといった南欧債務国の財政再 建を巡る不透明感を背景に主要株価指数が下落。NY市場では米大手シェールガ ス企業の経営不安を巡る思惑からエネルギー関連企業の不良債権問題に対する 懸念が広がり、金融株主導で主要株価指数の下落基調が強まった。 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 1 2016/2/9 為替トピックス 2/9の東京市場では欧米金融市場でのリスク回避の流れを引き継いで株価の下落 と金利の低下が進行。日経平均株価は一時前日比▲978円(同▲5.8%)と大幅反落 となり、16000円に接近。円債市場では新発10年国債利回りが史上初めてマイナス 水準に突入、一時▲0.035%へと低下する等、リスク回避の動きの強まりが円相場を 押し上げる形となった。ドル円相場は東京市場の午前中に麻生財務相等から円高 けん制とも取れる発言が聞かれたにもかかわらず、一時114.21円と約1年3ヵ月ぶり の安値を付けた。 (2015/12/31=100) 106 主要通貨の対ドルレート推移 (日次:2015/12/31~2016/2/9) 104 円 102 ユーロ 100 スイスフラン 豪ドル 98 メキシコペソ 96 94 92 ドル安 ↑ ↓ ドル高 90 15/12/31 16/1/8 16/1/16 16/1/24 (注)2016/2/9はデータ取得時点 出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成 16/2/1 16/2/9 (年/月/日) テ ク ニ カ ル 的 に は テクニカル的にドル円は、1/20に付けた115.97円の安値に続き心理的節目とされる 106円~110円程度ま 1ドル=115円も明確に下回った。次の下値のめどとしては同じく心理的節目である で下落する可能性も 110円が意識されることとなろう。加えて、2014年10月頃から描いている三尊(ヘッ ド・アンド・ショルダーズ)のネックライン(サポート水準)を割り込む形となった。教科 書的には、ネックラインを割り込んだ場合、ネックラインからの高値までの上昇幅と同 値幅程度下押した水準が下値のターゲットとなる。ネックラインを116円程度におき、 直近高値(昨年6月の125.86円)からネックラインまでの幅(約10円程度)を下に向け ると106円程度となり、日銀「短観」(12月調査)の2015年度下期想定為替レート(ド ル円:118.00円)からみて、1割以上の円高が進行することになる。当社試算では 10%の円高で企業の経常利益は6%程度下押しされることになる。加えて、昨年2~3 月のドル円相場が116円~122円で推移していたことをふまえれば、円高が輸入物 価の下落を通じてデフレ圧力となることで、日銀の物価安定目標(前年比+2%)の達 成がさらに遠のくことにもなりかねず、そうなればこれまでの日銀による金融緩和効 果が帳消しとなり、アベノミクスへの期待が後退する事態を招きかねない。 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 2 2016/2/9 為替トピックス ドル円相場の4本値レート (1ドル=円) 130 (日足:2014/7/1~2016/2/9) 2015/6/5 125.86円 125 120 115 2014/12/16 115.57円 2015/8/24 116.15円 2015/1/16 115.85円 2016/1/20 115.97円 2016/2/9 114.21円 110 105 100 14/7 14/10 15/1 15/4 15/7 15/10 (注)2016/2/9はデータ取得時点 出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成 経済ファンダメンタル ズを無視し、需給主 導の部分が大きいか 16/1 (年/月) ただ、足元の円高・ドル安進行は日本や米国の経済ファンダメンタルズを無視した 形で進行している部分が大きい。たしかに、年明け以降、1月の米主要指標はISM 製造業、非製造業景況指数をはじめ、企業景況感を中心に低調な内容となった が、米1月雇用統計は失業率が4.9%と2008年2月以来の低水準となる等、労働市場 の持続的な改善基調を示した。これを受け、アトランタ連銀が公表している1-3月期 の米実質GDP成長率予想は2/1時点の前期比年率+1.2%から同+2.2%へと大幅上方 修正され、昨年10-12月期(同+0.7%)から成長加速が見込まれる状況となっている。 また、日銀のマイナス金利導入といった果敢な行動も現状ではほとんど無視された 状態。問題の震源が日本ではないとはいえ、当局がこれを無視することはできず、 適正な行動を起こしていることは非常に重要であろう。リスクへの過度な恐怖が金融 政策等を無視した動きを誘発しているが、マイナス金利が徐々に実体経済に効い てくると思われるうえ、市場が落ち着けば反転の大きな後押しとなろう。 目先、2/10~11の議会証言でイエレンFRB議長が足元の金融市場の混乱に配慮 する形で次回3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ見送りを示唆する 一方、米景気の回復基調については楽観的な見方を示してくれば、ひとまず米経 済ファンダメンタルズを巡る不安は後退するとみられる。春先以降も欧州中央銀行 (ECB)や日銀が追加緩和に動く意向を示すことで日米欧金融当局による協調姿勢 が確認される方向となれば、ドル円相場も次第に金融政策の方向性の違いや内外 金利差に基づいた水準に回帰するとみられる。 今回のリスクオフの加速でドル円相場はわれわれがこれまで提示した115円~126 円の想定レンジを下回る結果となった。今回の動きはファンダメンタルズではなく需 給主導な面が大きいとみているが、足元の状況をふまえ、早急に新たな想定レンジ を策定し提示する所存である。 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 3 2016/2/9 為替トピックス 金融商品取引法に係る重要事項 当社取り扱いの商品等(外貨建商品等も含む)にご投資いただく際には、各商品等に所定の手 数料(投資信託の場合は銘柄ごとに設定された販売手数料および信託報酬等の諸費用等)を ご負担いただきます。債券を当社との相対取引によりご購入いただく場合は、購入対価のみを お支払いいただきます。 各商品等には価格の変動や発行者の信用状況等の悪化等により損失を生じるおそれがあり ます。 なお、債券の利金・償還金の支払いについて、発行者の信用状況等によっては、支払いの遅 滞・不履行が生じるおそれがあります。 外貨建商品等の売買等にあたり、円貨と外貨を交換する際には、外国為替市場の動向をふま えて当社が決定した為替レートによるものとします。また、売却時等の為替相場の状況によっ ては為替差損が生じ、損失を被るおそれがあります。 商品ごとに手数料等およびリスクは異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面や目 論見書またはお客さま向け資料等をよくお読みください。 商 号 等 : みずほ証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 94 号 加入協会 : 日本証券業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、 一般社団法人第二種金融商品取引業協会 広告審査番号 : MG5690-160209-22 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 4
© Copyright 2024 ExpyDoc