為替トピックス - みずほ証券

為替トピックス
2016/2/4
投資情報部
FX ストラテジスト
由井 謙二
視点は再び米国経済に

ドル円相場は2/3、日銀マイナス金利導入前の水準を大幅に下回った。ただ、ドル売り主導
であり、ユーロ円等のクロス円は大きく動いていない。

NY連銀総裁のハト派的な発言や低調な米1月ISM非製造業景気指数を受けて米利上げ観
測が一段と後退したことがドル売り要因となった。金融市場のタイト化も相まって、金融先物
市場では米国の利上げ期待は年内1回あるかないかのところまで低下している。

ただし、米国経済は過去と比べて足腰が強固になっており、みずほ証券投資情報部では、
米国経済は今後持ち直しに向かうとの見方を維持している。

ドル円相場は日銀のマイナス金利導入により、円高リスクは軽減されたとみている。市場の
視点は再び米国経済に移り、景気や金利動向等に左右される展開を想定している。
ドル売り主導でドル
円は一時117円近辺
まで下落
2/3の為替相場では米ドルが対主要通貨で全面安。ドル円相場は1ドル=120円近
辺から先週金曜の日銀マイナス金利導入前(118円台半ば)の水準を大幅に下回
り、一時117.06円まで円高ドル安が進む場面がみられた。ただ、ドルの独歩安であ
るため、ユーロ円や豪ドル円といったいわゆるクロス円は大きく動いていない。
次ページの円に対する主要通貨の騰落率をみると、円に対してブラジルレアルや
NZドル等が上昇し、トルコリラや英ポンド等が下落する等、まちまちな動き。今回の
ドル円相場の下落は、リスクオフの動きから円買いが強まったというよりは、ドル売り
が主導したといえる。インターコンチネンタル取引所(ICE)が算出するドルインデック
ス(DXY)は97.28と昨年11/3以来、3ヵ月ぶりの低水準を付けた。
NY連銀総裁の ハト
派的な発言とISM非
製造業の下振れがド
ル安要因に
米連邦準備理事会(FRB)高官のハト派的な発言がドル売りのきっかけとなった。NY
連銀のダドリー総裁は2/3のマーケット・ニュース・インターナショナルのインタビュー
で「世界経済が悪化し、さらにドル高が進めば、米経済に著しい影響を及ぼす可能
性がある」と、ドル高への懸念を表明。さらに「金融環境は昨年12月の米連邦公開
市場委員会(FOMC)会合時点よりも著しくひっ迫しており、こうした状況が3月まで
続くようなら、金融政策決定を行ううえで考慮する必要がある」と発言した。NY連銀
は毎回のFOMCで投票権を有しており、イエレン議長、フィッシャー副議長とともに
FRBの主要メンバーと目され、その発言は12地区連銀のなかでも重きをおかれる。
この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全
性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随
時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。
1
2016/2/4
為替トピックス
また、1月の米ISM非製造業景気指数が昨年12月の55.8から53.5と、2014年2月
(52.6)以来の低水準となった。市場予想の中央値(55.1)も大きく下回ったことで、
米利上げ期待が一段と後退し、ドル売りに拍車をかけた。
NY原油は急反発。リ
スクセンチメントが悪
化する展開とはなら
ず
他方で、金融市場の波乱要因となっている原油価格は大幅反発。NY原油は前日
比+8%となり、1バレル=32ドル台を回復した。ドルが対ユーロ等で大きく下げ、ドル建
てで取引される原油に割安感から買いが入った。加えて、石油輸出国機構
(OPEC)加盟国と非加盟国を歴訪しているベネズエラのデルピノ石油・鉱業相が
「OPEC加盟国6ヵ国(ベネズエラとイラン、イラク、アルジェリア、ナイジェリア、エクア
ドル)と非加盟国(ロシア、オマーン)は原油価格に関する緊急会合に応じる意向が
ある」と述べたことも買い材料視された。
米国株式市場では、エネルギー関連株を中心に買いが集まり、NYダウは3営業日
ぶりに反発。1月のISM非製造業景気指数は予想比下振れしたものの、投資家のリ
スクセンチメントが悪化する展開とはなっていない。
主要通貨の対円レート騰落率
(2016/2/2→2016/2/3)
主要通貨の対ドルレート騰落率
(2016/2/2→2016/2/3)
2.42
ブラジルレアル
NZドル
ブラジルレアル
2.33
1.99
カナダドル
豪ドル
1.85
南アランド
1.84
メキシコペソ
1.70
スイスフラン
ド
ル
高
1.34
トルコリラ
ド
ル
安
0.5
1.0
2.0
出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成
2.5
▲ 0.06
▲ 0.33
▲ 0.41
英ポンド
米ドル
1.5
▲ 0.05
トルコリラ
1.24
0.0
0.09
0.08
ユーロ
メキシコペソ
1.42
0.23
円
安
南アランド
1.70
英ポンド
円
高
豪ドル
ユーロ
スイスフラン
0.57
カナダドル
1.76
円
0.65
NZドル
3.0
(%)
▲ 2.0
▲ 0.51
▲ 1.73
▲ 1.5
▲ 1.0
▲ 0.5
0.0
0.5
1.0
(%)
出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成
米ドルインデックス(ICE)
(日次:2015/1/2~2016/2/3)
102
100
98
96
94
92
90
15/1
15/3
15/5
15/7
出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成
15/9
15/11
16/1
(年/月)
この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全
性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随
時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。
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2016/2/4
為替トピックス
通貨先物市場では、
円買いの動き。日銀
緩和を受けて変化が
みられるか注目
今後のドル円相場をみるうえで、まず足元のポジション動向を押さえておきたい。
下図はシカゴマーカンタイル取引所(CME)の国際通貨先物市場(IMM)に上場さ
れている円の非商業用(投機筋)ポジションである。アベノミクス相場以降は、日米
金融政策の方向性の違い等に着目した円売り(ドル買い)ポジションが構築されてき
た。しかし、2015年12月以降、円売りポジションは急速に縮小。年明け以降は、円の
ネットポジションは2012年以来の円買いに転じている。リスクオフ相場が続くなかで、
短期的にせよ円高に進むとの見方が増えてきていることの表れだろう。
今後は、日銀のマイナス金利政策の導入により、こうした投資家の円買いの動きに
変化がみられるのか注目される。黒田日銀総裁は2/3のきさらぎ会で、欧州の例(欧
州中央銀行▲0.3%、スイス▲0.75%、スウェーデン▲1.1%)を引き合いに出し、日銀
は必要な場合、さらに金利の引き下げを行うとの意向を改めて示した。円のネットロ
ングポジションはすでに約4年ぶりの水準まで積み上がっていることもふまえると、こ
こからさらに円買いを積み上げる動きは限られるのではないかと考えている。
円のネットポジション
(万枚)
(週次:2011/1/4~2016/1/26)
10
円買い
5
0
▲5
▲ 10
円売り
▲ 15
11/1
11/7
12/1
12/7
13/1
13/7
14/1
14/7
出所:米商品先物取引委員会(CFTC)、ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成
米国景気の落ち込み
にともない、米利上
げ観測は後退
15/1
15/7
16/1
(年/月)
ただし、足元減速傾向がみられる米国経済が持ち直し、FRBの利上げ観測が高ま
るまでは、ドル円の上値の重い状況が続くとみている。
米国の昨年10-12月期の実質GDP成長率は前期比年率+0.7%と、7-9月期の同
+2.0%から減速した。また、1月のISM製造業景気指数は48.2と、4ヵ月連続で生産活
動の拡大・縮小の境目とされる50を下回ったうえ、同月のISM非製造業景気指数が
急減速したことも米国経済に対する懸念を生じさせている。
クレジットスプレッドの拡大や株式相場のボラテリティの高まり等、金融市場のタイト
化も相まって、市場の米利上げ期待が後退。金融先物市場では、年内のFRBの利
上げを2015年末時点では2回程度と見込んでいたが、足元では1回あるかないかの
この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全
性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随
時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。
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2016/2/4
為替トピックス
ところまで後退している。
米国の政策金利見通し
(%)
(2015/12~2016/12)
1.625
FOMC参加者による政策金利見通し
(中央値、2015年12月会合)
金融先物市場の数値(2015年末)
1.375
1.125
金融先物市場の数値(2016/2/3)
0.875
1.375%(4回利上げライン)
0.625
1.125%(3回利上げライン)
0.375
0.875%(2回利上げライン)
0.625%(1回利上げライン)
0.125
15/12
16/3
16/6
16/9
16/12
(限月:年/月)
(注)利上げラインは1回につき政策金利を0.25%の引き上げした場合を想定
出所:ブルームバーグ、FRBのデータよりみずほ証券作成
日米の 金利差が 縮
小していることもドル
円相場の重しに
米利上げ期待の後退から昨年12月に1%近くまで上昇した米国の2年国債利回りは
0.7%台前半に低下した。日銀の追加緩和で本邦の2年国債利回りはマイナス幅を
拡大させているが、米金利が低下している局面では金利差拡大観測を背景としたド
ル買い円売りの動きは限定的となっている。
米国と日本の2年国債利回り差
(%)
(日次2015/4/1~2016/2/3)
1.2
1.1
2年国債利回り差(米国-日本)
1.0
0.9
0.8
0.7
0.6
0.5
0.4
15/4
15/5
15/6
15/7
15/8
出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成
15/9
15/10
15/11
15/12
16/1
16/2
(年/月)
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2016/2/4
為替トピックス
米国経済の堅調さに
変化はないと予想
一部で米国経済への懸念も浮上しているものの、みずほ証券投資情報部では、米
国経済は今後持ち直しに向かうとの見方を維持している。
1月のISM非製造業景気指数は低下したものの、悪天候や年明け後の金融市場の
不安定化が影響した面もあろう。労働市場の堅調さは維持されているうえ、ガソリン
価格の下落という追い風もあり、GDPの約7割を占める個人消費を取り巻く環境が良
好であることには変わりがない。また、家計のバランスシートは大幅に改善が進んで
おり、米国経済の足腰は過去と比較して強固になっている。製造業セクターには海
外経済の低迷やドル高といった外部環境の逆風が強まっているものの、個人消費
をはじめとする国内需要の堅調さを支えに、今後も米国経済は基調として+2%程度
とされる潜在成長率をやや上回るペースでの成長が続いていくと考えている。
米国住宅ローン延滞率と家計純資産
米ISM景況感指数
(%)
(%)
(月次:2007/1~2016/1)
65
(兆ドル)
(四半期:2005/3~2015/9)
11
95
家計純資産(右目盛)
住宅ローン延滞率(左目盛)
10
60
55
50
45
40
製造業(1月:48.2)
35
非製造業(1月:53.5)
30
07
08
09
10
11
12
13
14
(注)50が生産活動の拡大・縮小の分岐点とされる水準
出所:全米供給管理協会(ISM)、ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成
短期的には2/3の安
値を維持できるかに
注目
15
16
(年)
90
9
85
8
80
7
75
6
70
5
65
4
60
3
55
2
50
1
45
0
40
05
06
07
08
09
10
11
出所:米FRB、ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成
12
13
14
15
(年)
テクニカル的にはドル円相場は日銀会合後の短期的な上昇がいったん終了したと
みられる。一方で、1/20の安値(115.97円)の水準を下回っておらず、方向感として
はニュートラルから若干上向きといった形。今週末の米1月雇用統計等で2/3の安
値(117.06円)を下回らずに推移すれば、再び120円方向にじり高となる可能性が高
いとみる。一方で、安値を下回る場合は1/20の安値や心理的節目の115.00円トライ
の動意が強まる可能性がある。
週足でみると、ドル円は2012年終盤の1ドル=78円近辺を起点に週足雲に沿うように
してきれいな上昇トレンドを描いてきたが、今年に入って、この週足雲上限を明確に
割り込んだうえ、2012年以降の安値を結んだトレンドラインも割り込んだ。2012年終
盤以降、3年強にわたる右肩上がりのトレンドはいったん終了し、ドル円相場は2014
年後半頃からの横ばい相場に移行している可能性が高いとみている。市場のリスク
この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
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2016/2/4
為替トピックス
センチメントの動向によって上下に大きく振れる場面があるものの、基本的には115
円~125円のコアレンジでのボックス相場の継続を想定している。
ドル円 一目均衡表
(1ドル=円)
ドル円 一目均衡表
(1ドル=円)
(日次:2015/4/2~2016/2/3)
(1ドル=円)
130
126
(1ドル=円)
130
125
125
125
125
124
124
120
120
123
115
115
110
110
105
105
100
100
95
95
90
90
85
85
126
123
122
122
121
121
(週次:2012/1/6~2016/2/3)
120
120
119
119
118
118
117
117
80
80
116
116
75
75
115
115
2016/3/9
(年/月/日)
2015/4/14
2015/6/18
2015/8/24
2015/10/28
2016/1/4
出所:各種資料よりみずほ証券作成
視点は 再び 米国経
済へ
70
2012/1/13 2012/8/10
2013/3/1
出所:各種資料よりみずほ証券作成
70
2013/9/27 2014/4/18 2014/11/14 2015/6/5 2015/12/31 2016/7/27
(年/月/日)
目先的には、今週末の米1月雇用統計で堅調な雇用増加ペースを維持できるかど
うか、インフレとの関連では賃金の動きにも注目されよう。また、来週2/10~11には
イエレンFRB議長の議会証言が予定されており、FEBの金融政策スタンスの見極め
も続くとみられる。
ドル円相場は日銀のマイナス金利導入により、円高リスクは軽減されたとみている。
市場の視点は再び米国経済に移り、景気やFRBの金融政策見通しを映した金利動
向等に左右される展開を想定している。
この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全
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2016/2/4
為替トピックス
金融商品取引法に係る重要事項
当社取り扱いの商品等(外貨建商品等も含む)にご投資いただく際には、各商品等に所定の手
数料(投資信託の場合は銘柄ごとに設定された販売手数料および信託報酬等の諸費用等)を
ご負担いただきます。債券を当社との相対取引によりご購入いただく場合は、購入対価のみを
お支払いいただきます。
各商品等には価格の変動や発行者の信用状況等の悪化等により損失を生じるおそれがあり
ます。
なお、債券の利金・償還金の支払いについて、発行者の信用状況等によっては、支払いの遅
滞・不履行が生じるおそれがあります。
外貨建商品等の売買等にあたり、円貨と外貨を交換する際には、外国為替市場の動向をふま
えて当社が決定した為替レートによるものとします。また、売却時等の為替相場の状況によっ
ては為替差損が生じ、損失を被るおそれがあります。
商品ごとに手数料等およびリスクは異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面や目
論見書またはお客さま向け資料等をよくお読みください。
商 号 等 : みずほ証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 94 号
加入協会 : 日本証券業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、
一般社団法人第二種金融商品取引業協会
広告審査番号 : MG5690-160204-15
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