2016/ 為替トピックス 2/2 投資情報部 FX ストラテジスト 由井 謙二 南ア中銀はインフレ見通しの悪化で利上げを実施 昨年後半以降、政治不信やリスク回避の動きから、南アフリカランド(以下ランド)は安値を 更新する展開。ランドの対ドル相場は一時 17.9 ランド台と過去最安値を更新した。対円でも 本邦投資家とみられる損失確定の売り等を巻き込み、一時 1 ランド=6.5 円近辺まで急落す る場面がみられた。 通貨安にともなうインフレ警戒が怠れない状況下、南ア準備銀行(SARB、中銀)は 1 月の金 融政策決定会合で、政策金利を 6.25%から 6.75%に引き上げることを決定した。 SARBは今後も利上げは可能と述べており、インフレ見通しが一段と悪化する場合には追 加利上げが予想される。 SARBの政策スタンスはランドの下支えになるとみられる。しかしながら、景気減速懸念が払 しょくされないなかで、ランドの基調的な弱さは継続しよう。 ランドは政治不信や リスク回避から安値 を更新する展開 昨年12月、ズマ大統領が財政健全化に注力していたネネ財務相を突然更迭。政治 への信認低下から南アフリカランド(以下ランド)の対ドル相場は急落した。その後 も、原油価格が下げ足を速めたことで資源国通貨全般に対する売り圧力が強まった ほか、年明け後は、中国株や人民元の急落からリスク回避が強まったことで、ランド は一時1ドル=17.9ランド台と過去最安値を更新した。対円でも本邦投資家とみられ る損失確定の売り等を巻き込み、一時1ランド=6.5円近辺まで急落する場面がみら れた。 南ア ランドの推移 (1ランド=円) (1ドル=ランド) (日次:2000/1/3~2016/2/1) 20.0 2.0 18.0 4.0 16.0 6.0 14.0 8.0 12.0 10.0 10.0 12.0 8.0 6.0 14.0 対円(左目盛) 対ドル(右逆目盛) 16.0 4.0 18.0 00 01 02 03 04 05 06 07 08 出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成 09 10 11 12 13 14 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 1 ラ ン ド 高 15 16 (年) ラ ン ド 安 2016/2/2 為替トピックス SARBは0.50%の利 上げを実施、票は割 れる結果に 通貨安にともなうインフレ警戒が怠れない状況下、南ア準備銀行(SARB、中銀)は 1/26~28に開催された金融政策決定会合において、政策金利を現行の6.25%から 6.75%に引き上げることを決定した。0.50%の利上げ幅も含め、大方の市場予想通り。 ただ、SARBの票決は6名中3名が0.50%の利上げを支持、2名が0.25%の利上げを支 持、1名は据え置きと票が割れる結果になった。 為替レート、食料品 SARBは声明で、南アフリカの経済成長が鈍化する一方、インフレ見通しが急激に 価格の動向から、イ ンフレ見通しが急激 に悪化したと指摘 悪化したと指摘、今回の利上げ理由を説明した。インフレ見通しの悪化の理由とし ては、主に「為替レート」と「食料品価格」の動向が影響しているとした。 為替レートについては、「11月会合(以下前回)以降、ランドは対ドルで▲13.5%、対 ユーロで▲15.5%、貿易加重平均で▲12.9%と、著しく減価した」とした。そのうえで、 「ランドは過小評価されているとみられるが、当面の間、均衡水準からのかい離は継 続する」と指摘した。さらに、「経常収支の改善は鈍く、商品価格の低迷継続(による 輸出不振)、干ばつによる農産物輸入の増加から、経常収支の赤字はさらに拡大す る可能性がある」とした。そして、「その赤字を返済する資金調達も、新興市場からの 資金流出が続く環境でより困難になっている」とし、海外投資家が南アフリカの株 式・債券市場から資金流出傾向にあることにも言及した。 食料品価格に関しては、 「干ばつの深刻化に加えて、ランド安による輸入価格 上昇が影響している」と指摘。SARBは食料品価格の上昇率を2016年10-12月期 に前年比+11%近くまで達すると予測した。 対内証券投資ネット(株式・債券)と南アランド (億ランド) (1ドル=ランド) (月次:2011/1~2016/1) 300 6 200 8 100 10 0 12 ▲ 100 14 資金流入・ランド高 ▲ 200 16 ▲ 300 18 資金流出・ランド安 ▲ 400 20 11/1 11/7 12/1 12/7 株式(左目盛) 13/1 債券(左目盛) 13/7 14/1 14/7 15/1 15/7 南アランド(対ドル、右逆目盛) 16/1 (年/月) 注:対内証券投資ネット(株式・債券)は2015/12時点 (出所)南アフリカ準備銀行(SARB)、ブルームバーグの データより み ずほ証 券作成 SARBはインフレ見 SARBはインフレ率予想について、消費者物価指数(CPI)の総合が2015年平均の 通しを大幅に引き上 前年比+4.6%に対して16年が同+6.8%、17年が同+7.0%と前回(16年:同+6.0%、17年: げ 同+5.8%)から大幅に引き上げた。また、前回は2016年1-3月期にSARBのインフレ目 標(同+3.0%~+6.0%)の上限を超えるとしたが、今回は2017年までの予測期間を通 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 2 2016/2/2 為替トピックス じて、インフレ目標の上限を超えて推移するとし、2016年10-12月期から2017年1-3 月期には同+7.8%までCPI上昇率が高まるとの見通しを示した。 南アフリ カの消費者物価と政策金利 (%) (月次:2005/1~2017/12) 13 インフレ目標レンジ (前年比+3.0%~6.0%) 消費者物価(CPI) 中銀予測(2015/11) 中銀予測(2016/1) 政策金利 12 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 (年) (注)CPIは2015/12時点、政策金利は2016/1/29時点 出所:ブルームバーグのデータ よりみ ずほ 証券作 成 SARBは成長率見通 しを下方修正 他方で、SARBは「国内の成長率見通しはさらに弱まった」と指摘した。鉱業セクター について「商品価格の低迷と需要の落ち込みから厳しい状況が続いている」とした。 また、昨年7-9月期に回復をみせた製造業についても、「設備稼働率はさらに低下 し、製造業PMIは低い状態が続いている」と指摘し、「見通しは悪化した」との見解を 示した。そのうえで、SARBは成長率見通しについて、2015年の前年比+1.3%程度か ら2016年には同+0.9%に落ち込み、17年に同+1.6%に持ち直すとした。前回は、2016 年は同+1.5%、2017年にかけて同+2.1%まで成長率が高まるとの見通しだった。 南アフリカの製造業PMIと製造業生産高 (月次:2005/1~2016/1) 65 60 (%) (2010年=100) 125 製造業PMI(左目盛) 製造業生産高(右目盛) 南アフリカのGDP成長率(前年比) (年次:2008~2017) 4 120 3 55 115 50 110 45 105 40 100 35 95 ▲1 90 ▲2 実質GDP成長率 中銀予測(2015/11) 中銀予測(2016/1) 2 1 30 05 06 07 08 09 10 11 (注)製造業生産は2015/11時点 出所:ブルームバーグのデータ よりみ ずほ 証券作 成 12 13 14 15 0 16 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 (年) (注)2015年以降はSARB見通し 出所:南アフリカ準備銀行(SARB)、国際通貨基金(IMF)の データよりみ ずほ証券 作成 (年) この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 3 2016/2/2 為替トピックス 政策運営は困難さを 増しているとしつつ も、さらなる利上げに 含みを残す SARBは金融政策について、「景気減速とインフレ見通しの悪化によって、ジレンマ に直面している」と述べた。また、「景気低迷は構造的な性質による面が大きく、金 融政策だけでは解決できない」と述べる等、金融政策の限界にも指摘している。 SARBは今後の金融政策については、「政策金利は上昇したにもかかわらず、インフ レ期待が上昇していることを考慮すれば、実質金利(政策金利からインフレ率を差し 引いた金利)は依然として低い」と述べ、さらなる利上げにも含みを残した。 SARBの利上げやリ スクオンにランドは 反発も、基調的な弱 さは継続か SARBが国内景気に対する配慮を示しつつも、昨年2回の利上げ時(7月と11月にそ れぞれ0.25%の利上げを実施)よりも利上げ幅を拡大して足元のランド安に対応する 姿勢を示したことは市場の信認維持につながるとみられる。ランドも利上げ実施後 には世界的な株高や商品市況の上昇にも支えられて、値を戻す展開となっている。 しかしながら、景気低迷が続くうえ、財務相の交代劇を巡る政治不信や、財政不安 による格下げ懸念がくすぶっている。SARBの政策スタンスはランドの下支えになると みられるが、ランドの基調的な弱さは継続しよう。 南アフリカランドと貴金属相場 (1トロイオンス =ドル) 2,000 (1ドル=ランド) (日次:2009/1/2~2016/2/1) 4.0 1,800 6.0 1,600 8.0 1,400 10.0 1,200 12.0 1,000 14.0 プラチナ現物(左目盛) 金現物(左目盛) ランド(対ドル、右逆目盛) 800 16.0 600 18.0 09 10 11 12 13 出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成 14 ラ ン ド 高 15 16 (年) ラ ン ド 安 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 4 2016/2/2 為替トピックス 金融商品取引法に係る重要事項 当社取り扱いの商品等(外貨建商品等も含む)にご投資いただく際には、各商品等に所定の手 数料(投資信託の場合は銘柄ごとに設定された販売手数料および信託報酬等の諸費用等)を ご負担いただきます。債券を当社との相対取引によりご購入いただく場合は、購入対価のみを お支払いいただきます。 各商品等には価格の変動や発行者の信用状況等の悪化等により損失を生じるおそれがあり ます。 なお、債券の利金・償還金の支払いについて、発行者の信用状況等によっては、支払いの遅 滞・不履行が生じるおそれがあります。 外貨建商品等の売買等にあたり、円貨と外貨を交換する際には、外国為替市場の動向をふま えて当社が決定した為替レートによるものとします。また、売却時等の為替相場の状況によっ ては為替差損が生じ、損失を被るおそれがあります。 商品ごとに手数料等およびリスクは異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面や目 論見書またはお客さま向け資料等をよくお読みください。 商 号 等 : みずほ証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 94 号 加入協会 : 日本証券業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、 一般社団法人第二種金融商品取引業協会 広告審査番号 : MG5690-160202-29 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 5
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