人民元市場の動向と展望

Connecting Markets East & West
資料3
人民元市場の動向と展望
野村證券
野村資本市場研究所
STRICTLY PRIVATE AND CONFIDENTIAL
2016年2月2日
© Nomura
人民元オフショア市場での弊社の取引動向
取引種類別取引高
(百万ドル)
Spot: 直物取引
Outright: 先物取引
Swap: 直物取引と先物取引の売買の取引
Options: 売買の権利の取引
(出所)野村
(百万ドル)
2013 Q1-Q4
2014 Q1
2015 Q3
オフショア人民元高に対するストラクチャー商品に需要が高まる
中国人民銀行が公表中心レートを低め誘導し一日の許容変動幅を
上下1%から2%に拡大
中国人民銀行が公表中心レートを大幅切り下げ
1
人民元オフショア市場での弊社の取引動向
取引種類別件数
(件)
Spot: 直物取引
Outright: 先物取引
Swap: 直物取引と先物取引の売買の取引
Options: 売買の権利の取引
(出所)野村
(件)
2013 Q1-Q4
2014 Q1
2015 Q3
オフショア人民元高に対するストラクチャー商品に需要が高まる
中国人民銀行が公表中心レートを低め誘導し一日の許容変動幅を
上下1%から2%に拡大
中国人民銀行が公表中心レートを大幅切り下げ
2
人民元オンショア市場での弊社の取引動向
取引種類別取引高
(百万ドル)
(百万ドル)
Spot: 直物取引
Outright: 先物取引
Swap: 直物取引と先物取引の売買の取引
Options: 売買の権利の取引
(出所)野村
3
人民元オンショア市場での弊社の取引動向
取引種類別件数
(件)
(件)
Spot: 直物取引
Outright: 先物取引
Swap: 直物取引と先物取引の売買の取引
Options: 売買の権利の取引
(出所)野村
4
オンショア人民元対ドルレートと人民元バスケット指数
注: 人民元バスケット指数はCFETS発表の構成比に基づき野村で作成。
出所) CFETS、ブルームバーグ、野村
5
2015年 オフショア人民元債 発行市場レビュー

2015 年のオフショア人民元債の発行規模は、中国経済の減速、オフショア市場の流動性の低さ、マーケット全般のボラティリティの高さを受け、
前年比半分以下となった。
オフショア人民元債(日本を除くアジア) 発行規模
2015年のオフショア人民元債の発行は、経済の減速や需要の低下により減少した。更に、人民元及び中国市場のボラティリティの高さは発行体及び投資家の行動に影響を与えた。
(US$bn)
40
35
4.0
30
9.1
25
22.5
20
5.6
0.9
3.5
0
4
16.6
15.3
3.0
8.1
5
5
19.7
15
10
(US$bn)
6
37.4
11.7
5.8
0.7
0.8
3.1
1.2
2010
18.8
4.4
5.5
5.6
3.6
3.1
2011
2012
国、政府機関等
金融
Sovereign
FIG
3
3.4
2.4
2.0
0.2
3.0
2
10.6
1
1.4
0
1.2
1.8
1.4
0.8
1.2
1.0
0.9
0.6
0.6
0.3
5.5
3.7
2013
IG投資適格
Corp
事業会社
2014
低格付
HY
Corp
2015
Dec-14
Mar-15
国、政府機関等
Sovereign
Jun-15
金融
FIG
事業会社
Sep-15
Dec-15
IG投資適格
Corp
HY
Corp
低格付
事業会社
事業会社
2015年 発行内訳(日本を除くアジア)
発行体別
年限別
格付別
国別
中国の金融が発行の中心
3年が最も一般的な年限
投資適格の発行体が中心
中国発行体の割合が高い
FIG
金融
1%
4%
3%
9%
Industrials
製造業
不動産
Real
Estate
7%
消費
Consumer
6%
Oil
& Gas
石油・ガス
70%
テレコム・メディ
TMT
ア・テクノロジー
Natural
資源
Resources
電力・公益
Power
& Utilities
Note: Dealogic, Bloomberg as of Dec 31, 2015.
10 yr >10 yr
1%
7-10 yr 9%
1%
7 yr
2%
5 yr
20%
AAA
3%
<3 yr
21%
AA
15%
9%
China
2%
Europe
16%
38%
Unrated
48%
Rest of APAC
Korea
A
22%
3-5 yr
2%
US
14%
HK/Macau
3 yr
44%
B
1%
BBB
11%
21%
Others
6
オフショア人民元債市場

人民元国際化は中国の資本取引自由化を進め、オフショア人民元センターを増やし、人民元の流動性向上をもたらしている。
オンショア及びオフショア人民元の対ドル為替レート
オフショア及びオンショア人民元の金利推移
為替リスクはオフショア人民元債の発行によってヘッジできる。オフショア人民元債は比較的競争力の
ある調達手段である。
中国経済の減速見通しを受けて人民元の対ドルレートは上昇トレンドが反転した。足許では、オンショ
アの対ドル為替レートはオフショア比で割高に推移している。
(%)
7.0
4.0
6.7
6.0
3.0
6.6
2.0
5.0
4.0
3.0
2.0
0.0
Jan-14
6.3
0.0
6.2
-1.0
6.1
-3.0
Apr-14
Jul-14
Oct-14
Spread
Jan-15
Apr-15
CNH 3M HIBOR
Jul-15
Oct-15
-4.0
Jan-16
Index level
120%
114.8%
115%
114.0%
110%
105%
100%
95%
Oct-14
Jan-15
5.8
5.7
Jan-14
Apr-14
Jul-14
Oct-14
Jan-15
Apr-15
Jul-15
Oct-15
Jan-16
USDCNH
オフショア人民元 スワップ・レート
125%
Jul-14
5.9
USDCNY
オフショア人民元建債のパフォーマンスは、投資家需要の強さを背景に、為替のボラティリティの高さに
も関わらす、堅調に推移している。
Apr-14
USDCNY
4Q2016 Median
Forecast: 6.86
6
CNY 3M SHIBOR
流通市場におけるパフォーマンス1
90%
Jan-14
6.4
1.0
-2.0
1.0
6.5
Apr-15
Jul-15
BOC Offshore Renminbi Bond Total Return (RMB)
BOC Offshore Renminbi Bond Total Return (USD)
Source: Bloomberg as of Dec 31, 2015
1.
US$ based total return calculated based on US$/RMB FX rate.
1
Oct-15
スワップ市場の回復は、裁定調達を行うオフショアの発行体に対して望ましい状況を提供している。
(%)
5.00
4.50
4.00
3.50
3.00
2.50
2.00
1.50
1.00
0.50
0.00
Jan-14
Apr-14
Jul-14
Oct-14
Jan-15
Apr-15
Jul-15
Oct-15
Jan-16
Jan-16
CNH CCS 5Y
CNH CCS 3Y
1
7
人民元債の発行体・発行市場の区分

人民元債は、中国本土から見て発行体が居住者か非居住者か、発行市場がオンショア市場か(香港を含む)かオフショア市場かで区分。

非居住者がオンショアで人民元債を発行する場合(パンダ債)、中国本土当局の認可が必要。

居住者がオフショア市場で人民元債を発行する場合(点心債)も、中国本土当局の認可が必要。

非居住者がオフショア市場で人民元債を発行する場合、中国本土当局の認可は不要(調達資金のオンショア市場への持ち込みには別途認可が
必要)。

なお、オンショア市場で発行・流通する人民元債を外国人投資家が売買しようとする場合、QFII・RQFIIの資格及び運用枠が必要。
人民元債の発行体及び発行市場のマトリックス
発行体
居住者
発
行
市
場
オ
ン
シ
ョ
ア
市
場
オ
フ
シ
ョ
ア
市
場
非居住者
・
・
・
・
・
・
発行体は政府、金融機関、事業会社、外資
発行市場は銀行間市場と取引所市場
銀行間市場での社債発行は登録制に
取引所市場での社債発行も手続きが簡素化
日系金融機関・事業会社の発行実績あり
外国人投資家(非居住者)のオンショア市場での銘柄取得には
QFII・RQFIIが必要
・
・
・
・
・
・
2005年から国際開発金融機関に「パンダ債」(Panda Bond)が解禁
パンダ債は財政部が申請窓口の審査・批准制
2014年から事業会社に登録制でのパンダ債発行が解禁
2015年からソブリンも登録制でのパンダ債発行が可能に
日系金融機関・事業会社の発行実績なし
外国人投資家(非居住者)のオンショア市場での銘柄取得にはQFII・RQFIIが必要
・
・
・
・
・
・
・
中国本土当局の発行認可が必要
香港では2007年の中国開銀債が第一号
2009年から中国政府が香港で人民元債発行
2015年は中国人民銀行がロンドンで起債
2016年以降、中国政府がロンドンで起債計画
日系金融機関の発行実績あり
外国人投資家(非居住者)のオフショア市場での銘柄保有への
制限無し
・
・
・
・
・
・
・
中国本土当局の発行認可は不要
調達資金のオンショア市場への持ち込み時には中国当局の認可必要
2010年、マクドナルドが香港で一号債を発行、「点心債」(Dim Sum Bond)と命名
2012年、HSBCがロンドンで人民元債発行
2014年以降、中資系銀行も欧州で起債開始
2015年はメガ二行が東京で起債
外国人投資家(非居住者)のオフショア市場での銘柄保有への制限無し
(出所)各種資料より野村資本市場研究所作成
8
香港での人民元債の発行

2007年に香港での人民元建て債券発行が解禁。2009年から香港での人民元建て国債(財政部)の発行開始。2010年からは非居住者にも発行体
が拡大、世界銀行やアジア開発銀行も香港で人民元建て債券の発行実績あり。2014年は英国政府がロンドンで人民元建て国債を発行。

中国は「一帯一路」(陸と海のシルクロード開発)アクションプラン(2015年3月)で、周辺国・企業の中国本土での人民元債発行や、中国本土の金
融機関・企業のオフショア人民元債発行(現在は香港市場のみ起債認可、今後他市場にも拡大計画)を支援する方向性も打ち出している。
香港での人民元建て債券の発行
(億元)
2,500
2,000
1,500
1,000
500
0
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
(年)
(注)
2014年は香港特別行政区の発表に基づく(2015年2月26日付中国証券報)。
(出所) 香港SFC、中国銀行間市場交易商協会『中国債券市場発展報告2011』、
各種資料より野村資本市場研究所作成
9
国際資本市場での居住者(日・中)による自国通貨建て起債

2015年6月末時点の居住者による国際債発行残高は、日本の2,407億ドルに対し、中国は790億ドル。

同様に、居住者の自国通貨建て国際債発行残高は、日本の580億ドルに対し、中国は319億ドル。国際債発行残高全体に対する比率では、中国
が40.4%と日本の24.1%を大きく逆転。

自国通貨建て国際債の発行体で見ると、中国は「政府」が127億ドルと自国通貨建て国際債全体の39.8%を占める。逆に日本は「非金融機関」が
261億ドルと発行体で最大(全体の45.0%)。中国については、非金融機関の自国通貨建て国際債発行を増やしていけるかどうかが鍵。
居住者(中国)による自国通貨建て国際債の発行残高
居住者(日本)による自国通貨建て国際債の発行残高
(億ドル)
(億ドル)
300
50%
45%
250
140
45%
40%
120
40%
35%
200
30%
150
35%
100
30%
80
25%
60
20%
25%
20%
100
15%
15%
40
10%
10%
50
5%
0
0%
銀行
その他金融機関
発行残高
(注) 2015年6月末時点。
(出所)BISより野村資本市場研究所作成
非金融機関
割合
政府
20
5%
0
0%
銀行
その他金融機関
発行残高
非金融機関
政府
割合
(注) 2015年6月末時点。
(出所)BISより野村資本市場研究所作成
10
オフショア人民元債の発行実績

2015年6月、スタンダード・チャータード銀行は、『RENMINBI ASCENDING』を公表。同レポートの中で、2007年から2015年(レポート発表直前)まで
のオフショア人民元債の発行本数・発行金額の各累計を市場毎に算出。

発行本数では、ユーロ市場が7,868本と全体の75.8%を占める。オフショア人民元債の受渡し・決済が欧州をユーロ市場を中心に行われている様子
が窺える。他方、発行金額では、香港が8,987億元と全体の49.1%を占める。香港では、中国政府による人民元建て国債が継続的に発行されてい
る。
オフショア人民元債の発行本数・発行金額(2007年~2015年の累計)
ユーロ市場
韓国
フランス
米国
ドイツ
台湾
タイ
スイス
シンガポール
香港
合計
発行本数
発行本数(本)
内訳(%)
7,868
75.81
20
0.19
27
0.26
0.01
1
8
0.08
75
0.72
1
0.01
5
0.05
2
0.02
2,372
22.85
10,379
100.00
発行金額
発行金額(億元) 内訳(%)
8,377.96
45.78
18.68
0.10
84.37
0.46
0.00
0.00
1.81
331.60
490.86
2.68
1.26
0.01
3.08
0.02
7.40
0.04
8,987.05
49.10
18,302.27
100.00
(注) 原データはThomson Reuters。
(出所)スタンダード・チャータード銀行『RENMINBI ASCENDING』June 2015より野村資本市場研究所作成
11
上海・香港相互株式投資制度(滬港通)の始動

2014年4月10日、李克強総理は、アジア・ボアオ・フォーラムでのスピーチの中で、開放を以って改革を促す方針を表明。対外開放の要はサー
ビス業であり、資本市場の対外開放の一環として、上海・香港相互株式投資制度を導入すると言及。

同日、中国証券監督管理委員会と香港証券先物事務監察委員会は、今後、6ヵ月間の準備期間を経て、上海・香港相互株式投資制度のテスト
(滬港通)を行うとした共同公告を発表。通称「上海・香港ストックコネクト」として、2014年11月17日より取引始動。
上海・香港相互株式投資制度(滬港通)のフロー図
上海証券取引所
①上証180指数の構成銘柄
②上証380指数の構成銘柄
③A株・H株同時上場のA株
香港聯合取引所
①ハンセン総合大型株指数構成銘柄
②ハンセン総合中型株指数構成銘柄
③A株・H株同時上場のH株
香港聯合取引所・
証券取引サービス会社
3,000億元
上限130億元/日
滬股通
港股通
2,500億元
上限105億元/日
上海証券取引所・
証券取引サービス会社
香港ブローカー
中国本土ブローカー
投資家
(香港及びグローバル)
中国本土投資家
①機関投資家
②個人投資家(口座
残高50万元以上)
(注) 2014年4月10日、香港証券先物事務監察委員会と共同で公告。
(出所)中国証券監督管理委員会より野村資本市場研究所作成
12
上海・香港ストックコネクトの売買動向-「北熱南冷」の変化ー

コネクトの下では、①上海・香港の両サイドから双方向で、かつ②人民元建てで投資を行い、③個人投資家も現物株を直接購入できることが、既存
のQFII(適格外国機関投資家)制度と異なる最大の特徴。

コネクトの始動直後は、上海株の買い需要に比べて、香港株の買い需要が小さく、「北熱南冷」と呼ばれる現象が続いてきたが、①2015年3月27
日に中国証券監督管理委員会が公布したガイドラインで、中国本土の基金管理会社が新規募集基金でコネクトの取引に参加する場合、QDII(適
格国内機関投資家)資格は不要とされた規制緩和と、②2015年3月31日に中国保険監督管理委員会が公布した保険資金の海外運用の調整に関
する通知で、香港の新興市場(GEM)への投資を解禁した規制緩和によって、中国本土投資家の香港株売買が促されている。
上海・香港ストックコネクト:上海株と香港株の売買金額
上海・香港ストックコネクト:上海株と香港株の一日当り売買金額
(億元)
2,272
2,500
466
60 145
243
819
816
653 734
709
415
282
208 226
71
60
1
2
3
4
2014
5
6
7
8
9
625
310 376
10 11 12
香港株売買金額
(注) 2014年11月17日に始動。2015年12月は31日時点。
(出所) CEICより野村資本市場研究所作成
57
45
45
43
34
40
47
6
8
30
11
12
14
13
12
48
33
20
20
2015
上海株売買金額
50
47
0
11 12
63
60
1,207
1,010
675
89
84
80
1,5511,506
1,375
1,209
999
86
1,963
1,859
1,000
500
98
100
2,000
1,500
114
120
(億元)
14
15
17
6
0
1
2
3
4
5
2014
(年/月)
上海株売買金額(一日当たり)
6
7
8
9
10
11
12
2015
(年/月)
香港株売買金額(一日当たり)
(注) 2014年11月17日に始動。2015年12月は31日時点。
(出所) CEICより野村資本市場研究所作成
13
上海・香港ストックコネクトの投資枠消化率

コネクトの下では、投資枠全体は残高ベース、具体的には、「投資残高=投資枠-約定済の購入金額+約定済の売却金額」で管理される。一日当
たりの投資枠も残高ベースで管理され、具体的には、「一日当たりの投資残高=一日当たりの投資枠-買い注文+売却取引+買い注文の撤回・取
消+(約定価格と買い注文価格間の差額)」と設定される。

香港サイドからの上海株への投資枠は3,000億元を上限とし、一日当たりの投資枠では130億元に設定。上海サイドからの香港株への投資枠は
2,500億元を上限とし、一日当たりでは105億元に設定。
上海・香港ストックコネクト:香港株の投資枠消化率
上海・香港ストックコネクト:上海株の投資枠消化率
(億元)
(億元)
3,500
70%
3,000
60%
2,500
3,000
50%
45%
2,500
40%
50%
35%
2,000
2,000
30%
40%
1,500
1,500
25%
30%
20%
1,000
1,000
20%
500
10%
0
14/11 14/12 15/1 15/2 15/3 15/4 15/5 15/6 15/7 15/8 15/9 15/10 15/11 15/12
0%
15%
10%
500
5%
0
14/11 14/12 15/1 15/2 15/3 15/4 15/5 15/6 15/7 15/8 15/9 15/10 15/11 15/12
(年/月)
(年/月)
上海株投資枠
上海株投資枠消化率
(注) 2014年11月17日に始動。2015年12月は31日時点。
(出所) CEICより野村資本市場研究所作成
0%
香港株投資枠
香港株投資枠消化率
(注) 2014年11月17日に始動。2015年12月は31日時点。
(出所) CEICより野村資本市場研究所作成
14
外国人投資家による対中証券投資における課税リスクの顕在化

上海・香港ストックコネクト開始の前営業日の2014年11月14日、財政部、国家税務総局、証監会は共同で通知を公布し(2014年10月31日付81号
通知)、香港サイドからの上海A株の売買を通じて取得したキャピタルゲインには、企業所得税または個人所得税が一時的に免除されるとした。

QFII及びRQFIIに対する課税政策についても、2014年11月14日、財政部、国家税務総局、証監会が共同で通知を公布し(2014年10月31日付79
号通知)し、2014年11月17日以前に取得したキャピタルゲインには、規定どおり、企業所得税が課されるとした。

キャピタルゲインに対する遡及課税やコネクトの下での「一時的免除」ともに、外国人投資家からは対中証券投資のリスクとして懸念されている。
上海・香港ストックコネクト、QFII・RQFIIに対する課税政策
対内証券投資
投資家
個人、
法人
「滬股通」及びQFII・
RQFIIによる海外からの
QFII、
A株(上海株)投資
RQFII
対外証券投資
投資家
中国本土での課税内容
キャピタルゲイン
配当課税
課税
一時的に免除
源泉所得税は本
2014年11月17日より所 則10%(租税条
約に基づく軽減
得税を一時的に免
除、但し2014年11月17 税率適用の場合
日以前については課 は減免が可能)
税対象
中国本土での課税内容
キャピタルゲイン
配当課税
課税
個人
2014年11月17日から
2017年11月16日までの
個人所得税20%
3年間、個人所得税を
一時的に免除
法人
企業所得税25%
「港股通」による中国
本土からの香港株投資
企業所得税25%
(適格なH株を
除く)
中国本土
営業税
一時的
に免除
免除
中国本土
営業税
一時的
に免除
現行規定
に従って
納付
1. 中国本土での課税内容は財政部の2014年10月31日付79号通知及び同81号通知に基づく。
2. KPMGのチャイナタックスアラート(第29回、2014年11月)の内容も参照。
(出所) 中国財政部、CIC、各種資料より野村資本市場研究所作成
各市場
印紙税
売手がA株を
売却する場
合、取引金
額0.1%の中
国印紙税を
納付
各市場
印紙税
売買双方と
もに取引額
の0.1%相当
の香港印紙
税を納付
(注)
15
独中金融協力と中国欧州国際取引所(CEINEX)の創設


フランクフルト・人民元
オフショア市場の創設、
独中財政金融対話の始動








「中国欧州国際取引所」
(CEINEX)の創設、
人民元建て証券の海外上場



金利・為替商品の
相互取引の推進
2014年3月28日、習近平国家主席のドイツ訪問時に、独中間の金融協力に合意。
同年3月28日、ドイツ連邦銀行と中国人民銀行が、フランクフルトでの人民元決済制度構築の協力覚書に調
印。
同年5月9日、中国銀行フランクフルト支店、10億元を増資。
同年5月12日、中国農業銀行が人民元建て債券(ライン債、Rhein Bond)12億元を発行。
同年6月18日、中国人民銀行、中国銀行フランクフルト支店を人民元クリアリング銀行に指定。
同年7月の独メルケル首相訪中時に、RQFII運用枠800億元をフランクフルトに設定。
同年10月8日、中国本土でドイツ銀行がユーロ・人民元の直接交換取引を初めて実行。
同年10月10日、李克強総理のドイツ訪問時に独中ハイレベル財政金融対話の開催に合意。
2015年3月17日に第1回対話をベルリンで開催、下記の合弁取引所の創設に合意。
2015年10月29日、独メルケル首相の訪中時に、上海証券取引所(40%)、中国金融先物取引所(20%)、ドイ
ツ取引所(40%)が計2億元を共同出資し、「中国欧州国際取引所」(China Europe International Exchange
AG、略称CEINEX)を設立、同年11月18日より運営と発表。
2015年11月18日の開業時に、RQFIIを使った上証50ETF(中国銀行とコメルツバンクが組成)とマネー・マー
ケットETF(中国建設銀行とコメルツバンクが組成)、中国銀行アブダビ支店の発行した人民元建て金融債が
新規上場。既存の人民元建て商品も順次CEINEXに移管。
同年12月17日までに199本が上場、売買総額は2.66億元、うち2.62億元がETF。CEINEXは、今後、A株を裏
付けにした預託証券、国内の優良企業や中国で業務量が多いドイツの先進製造業の人民元建て株式(D株)
発行を検討・推進する方針。(2015年12月28日付金融時報)。
他に、2015年10月29日、中国外貨取引センター(CFETS)とドイツ取引所が合弁会社設立に関する覚書を締
結。合弁会社はドイツで設立し、それぞれ50%を出資する計画。合弁会社では、①ドイツ取引所の上場商品
の中国銀行間市場での取引、②中国銀行間市場の取引商品のドイツ取引所での上場、③人民元建て金利・
為替商品の海外発行を実現することが目標。
16
人民元建て貿易決済の拡大
人民元建て貿易決済金額(累計)と規制緩和
2011年10月 対内直接投資解禁
■ 正式ルール公布
2011年8月 全国を決済対象地域に
■ 人民元建て貿易決済:全国に拡大
(単位:億元)
2011年1月 対外直接投資解禁
■ 対象地域の事業会社による
人民元建て対外直接投資を容認
300,000
2010年12月 パイロット企業拡大
■ 対象企業:67,724社
250,000
239,399
221,699
2010年6月 人民元建て貿易決済拡大
■ 対象地域:
200,000
200,810
●国内:20の省・直轄市・自治区
183,645
●海外:全ての国・地域
■
■
167,099
対象企業:365社
対象取引:貨物・サービス貿易、一般貿易
149,799
150,000
134,299
2009年7月 人民元建て貿易決済テスト開
始
■ 対象地域:
100,000
50,000
118,099
101,599
86,899
●国内:上海、広州、深圳、東莞、珠海
75,799
●海外:香港、マカオ、ASEAN
65,299
■ 対象企業:365社
55,299
■ 対象取引:貨物貿易のみ
46,408
38,418
31,703
25,899
20,509
14,675
8,703
36 219 7061,971 5,099
0
2009 2010 2010 2010 2010 2011 2011 2011 2011 2012 2012 2012 2012 2013 2013 2013 2013 2014 2014 2014 2014 2015 2015 2015 2015
Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4
(出所)中国人民銀行、各種資料より野村資本市場研究所作成
17
人民元建て貿易金額

人民元建て貿易決済は2009年7月から始動。2009年第4四半期(10~12月)の人民元建て貿易決済金額は35.8億元(同期間の貿易総額の0.08
%相当)。2015年の人民元建て貿易決済金額は7兆2,343億元(同年の貿易総額の29.4%相当)。
人民元建て貿易金額と比率(年次ベース)
(億元)
80,000
35%
70,000
30%
60,000
25%
50,000
20%
40,000
15%
30,000
10%
20,000
5%
10,000
0
0%
2009
2010
2011
人民元建て貿易金額
2012
2013
2014
2015
(年)
人民元建て貿易金額/貿易総額
(出所)中国人民銀行、CEIC より野村資本市場研究所作成
18
人民元建て対外・対内直接投資

2011年1月から人民元建て対外直接投資が始動。2011年の人民元建て対外直接投資金額は202億元。2015年の人民元建て対外直接投資金
額は7,362億元。

2011年10月から人民元建て対内直接投資が始動。2011年の人民元建て対内直接投資金額は907億元。2015年の人民元建て対内直接投資金
額は1兆5,871億元。
人民元建て決済(対内直接投資)
人民元建て対外直接投資
(億元)
(億元)
18,000
8,000
16,000
7,000
14,000
6,000
12,000
5,000
10,000
4,000
8,000
3,000
6,000
2,000
4,000
1,000
2,000
0
2011
2012
2013
2014
2015
0
(年)
2011
2012
2013
2014
2015
(年)
人民元建て対外直接投資
人民元建て対内直接投資
(出所)中国人民銀行、国家外為管理局より野村資本市場研究所作成
(出所)中国人民銀行、国家外為管理局より野村資本市場研究所作成
19
「開放を以って改革を促す」ために外国人投資家の参画は不可欠

2015年11月末時点の中国本土の株式市場時価総額50兆3,636億元のうち、外国人投資家の保有金額は4,601億元(保有比率は0.91%)。

同様に、2015年11月末時点の中国本土の債券発行残高47兆1,964億元のうち、外国人投資家の保有金額は7,626億元(保有比率は1.62%)。
人民元建て適格外国機関投資家(RQFII)の運用枠のグローバル市場への配分が、中国本土向け債券投資を促していると見られる。

MSCIは、2015年まで3年連続、A株の新興国市場指数への組入れを見送ってきている。2015年はその背景として、①運用枠の配分、②流動
性、③所有権の問題を指摘している。
中国本土債券市場における外国人投資家の債券保有動向
中国本土株式市場における外国人投資家の株式保有動向
(億元)
(億元)
9,000
1.7%
9,000
2.0%
8,000
1.6%
8,000
1.9%
7,000
1.8%
7,000
1.5%
6,000
6,000
1.4%
5,000
1.3%
4,000
1.2%
3,000
4,000
3,000
1.1%
2,000
1,000
1.0%
0
0.9%
12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
2013
2014
1.6%
1.5%
2,000
1.4%
1,000
1.3%
0
1.2%
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
2014
2015
2015
(年/月末)
外国人投資家株式保有額
1.7%
5,000
外国人投資家株式保有比率
(出所)中国人民銀行より野村資本市場研究所作成
(年/月末)
外国人投資家債券保有額
外国人投資家債券保有比率
(出所)中国人民銀行より野村資本市場研究所作成
20
パンダ債(非居住者人民元建て債券)の発行も推進

2005年2月、中国人民銀行、財政部、国家発展改革委員会、中国証券監督管理委員会の連名で「国際開発機構の人民元建て債券の発行管理
暫定弁法」を公布。国務院の認可を経て発行。

2005年10月にはアジア開発銀行(ADB)が10億元(約132億円)、国際金融公社(IFC)が11.3億元(約150億円)の10年債を発行した。同時に、非
居住者人民元建て債券は「パンダ債」と命名された(日本の「サムライ債」に相当)。

中国人民銀行は、海外中銀の保有する人民元の中国本土での運用ルートの開拓を念頭に、パンダ債の銘柄の増加も進めている。その為、中国
銀行間市場交易商協会(National Association of Financial Market Institutional Investors、略称NAFMII)を通じた登録・発行方式を推進中。
パンダ債(非居住者人民元建て債券)の発行実績
発行体
国際金融公社(IFC)
アジア開発銀行(ADB)
国際金融公社(IFC)
アジア開発銀行(ADB)
独ダイムラー
独ダイムラー
HSBC(香港)
中国銀行(香港)
招商局集団(香港)
独ダイムラー
スタンダードチャータード銀行(香港)
韓国政府
発行額
11.3億元
10億元
8.7億元
10億元
5億元
30億元
10億元
10億元
5億元
15億元
10億元
30億元
カナダ・ブリティッシュコロンビア州政府 30億元
発行時期
2005年10月
2005年10月
2006年11月
2009年12月
2014年3月
2015年4月
2015年9月
2015年9月
2015年11月
2015年11月
2015年12月
期間
10年
10年
7年
10年
1年
1年
3年
3年
1年
1年
n/a
金利
3.40%
3.34%
3.20%
4.20%
5.20%
4.80%
3.50%
3.50%
3.03%
3.60%
3.50%
2015年12月
3年
3.00%
2016年1月
3年
2.95%
主幹事
中国国際金融、中信証券
中銀国際証券
中国国際金融、中信証券
中国国際金融
中国銀行
中国銀行
中信証券
中国銀行
中信証券、招商銀行
中国銀行
中国銀行
認可(または登録)機関
中国政府(中国財政部)
中国政府(中国財政部)
中国政府(中国財政部)
中国政府(中国財政部)
中国銀行間市場交易商協会
中国銀行間市場交易商協会
n/a
n/a
中国銀行間市場交易商協会
中国銀行間市場交易商協会
n/a
交通銀行、シティバンク(中国)、
高盛高華証券(ゴールドマン・
中国銀行間市場交易商協会
サックス系)、HSBC(中国)、スタ
ンダードチャータード銀行(中国)
中国銀行、HSBC(中国)
中国銀行間市場交易商協会
(出所)中国財政部、中国人民銀行、中国銀行間市場交易商協会、Wind資訊、各種資料より野村資本市場研究所作成
21
人民元債(日系発行体)の発行実績

オンショア市場、オフショア市場ともに、日系金融機関・事業会社による人民元債の発行実績あり。

2015年は、中国本土から見て、非居住者としての邦銀2行が東京市場で起債。うち、みずほ銀行はJPXのプロボンド市場に上場。
日系金融機関・事業会社の人民元債発行実績
市場
オ
ン
シ
ョ
ア
市
場
オ
フ
シ
ョ
ア
市
場
発行体
発行者
三菱東京日聨銀行(中国)有限公司
居住者
瑞穂実業銀行(中国)有限公司
(銀行)
三井住友銀行(中国)有限公司
三菱商事(中国)有限公司
居住者
三菱商事(中国)有限公司
(事業会社)
豊田通商(上海)有限公司
三菱商事(中国)有限公司
豊田汽車金融(中国)有限公司
豊田汽車金融(中国)有限公司(ABS)(A)
豊田汽車金融(中国)有限公司(ABS)(B)
居住者
(自動車金融会社) 豊田汽車金融(中国)有限公司(ABS)(C)
東風日産汽車金融有限公司(ABS)(A)
東風日産汽車金融有限公司(ABS)(C)
居住者
三菱東京日聨銀行(中国)有限公司
(香港市場)
非居住者
(香港市場)
非居住者
(東京市場)
親会社(海外)
発行日
三菱東京UFJ銀行
みずほ銀行
三井住友銀行
三菱商事
三菱商事
豊田通商
三菱商事
トヨタ自動車
トヨタ自動車
トヨタ自動車
トヨタ自動車
日産自動車
日産自動車
2010年5月20日
2012年4月24日
2014年4月29日
2012年1月12日
2013年3月15日
2014年1月22日
2015年1月21日
2013年10月18日
2014年5月23日
2014年5月23日
2014年5月23日
2014年6月6日
2014年6月6日
三菱東京UFJ銀行
2014年5月26日
償還日
2012年5月21日
2016年4月24日
2016年5月5日
2013年1月13日
2014年3月18日
2016年1月22日
2016年1月23日
2016年10月22日
2015年9月11日
2015年10月11日
2015年12月11日
2016年4月26日
2017年3月26日
n.a.
発行金利
期間 発行金額
(年)
(億元)
(%)
10
2.43
2
2
10
4.55
2
10
5.80
1
5
6.73
4.47
1
5
2
0.6
3.68
3.0
5.30
1
3
13
5.60
5.20
1.3
7
0.4
1.4
8.20
1.5
0.6 n.a.
7.2
5.00
1.9
2.8
0.8 n.a.
3
10.0
オリックス
-
2011年3月15日
2014年3月24日
3
4
三菱UFJリース
東京センチュリーリース
銀泰百貨
-
-
-
三井住友ファイナンス&リース
-
韓国輸出入銀行
-
2011年3月31日
2011年4月20日
2011年7月9日
2011年9月1日
2011年9月1日
2011年11月1日
2013年4月8日
2014年4月28日
2014年7月19日
2013年9月8日
2014年9月8日
2012年11月1日
2
3
3
2
3
1
2
2
16
2
3
2
Lafarge Shui On Cement
-
2011年11月9日
2014年11月14日
3
15
オリックス
-
2011年11月22日
2014年11月29日
3
5
三井物産
三菱UFJリース
日立キャピタル
三菱東京UFJ銀行
みずほ銀行
-
-
-
-
-
2012年2月23日
2012年2月24日
2012年3月15日
2015年6月24日
2015年7月9日
2017年3月1日
2015年3月2日
2015年3月22日
n.a.
n.a.
5
3
3
2
2
5
3
5
3.5
2.5
(注) 主幹事実績のみの発行体も計上。
(出所)Wind資訊、各種資料より野村資本市場研究所作成
3.05
2.00
主幹事
中国銀行
中国国家開発銀行、交通銀行、中信証券
中国銀行
中国銀行
中国銀行
華泰聨合証券
中国銀行
中信証券、中国工商銀行
中国国際金融 (CICC)
中国国際金融 (CICC)
中国国際金融 (CICC)
国泰君安証券
国泰君安証券
中国銀行、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、
モルガン・スタンレー
ANZ、みずほ証券、スタンダードチャータード銀行、
BNPパリバ、寶盛證券
モルガン・スタンレー
みずほ証券、UBS
野村證券、Citi 、ICBC Asia
1.65
2.70
4.65
2.50
ゴールドマン・サックス
3.00
2.10 野村證券
Citi、HSBC、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、
9.00
スタンダードチャータード銀行
スタンダードチャータード銀行、BNPパリバ、ANZ、クレ
4.00 ディ・アグリコル、大和証券キャピタル・マーケッツ、み
ずほ証券
4.25 HSBC
3.60 Citi、BNPパリバ、モルガン・スタンレー
3.75 HSBC
3.64 三菱UFJモルガン・スタンレー証券
3.82 みずほ証券
22
通貨の国際化と中国人民元のステージ(2015年12月)

Takatoshi Ito(2011), “The Internationalization of the RMB” The Council on Foreign Relationsでは、通貨の国際化の定義から見た中国人
民元を各機能・取引種類別に評価。その後の進捗状況を加えると、以下の通りとなる。
通貨の国際化と中国人民元のステージ(2015年12月)
機能
計算単位
支払単位
価値保蔵
手段
民間取引
貿易上の
インボイス
中国政府は中国企業に対し
て推奨中
金融商品
中国政府は容認(人民元建
て金取引市場が始動済、原
油先物等コモディティでの人
民元建て建値も検討中)
表示通貨 国際的な取引単位
契約通貨 としての機能
決済通貨
取引通貨
媒介通貨
資産通貨
公的取引
金またはある外国
通貨に対して固定
基準通貨 相場制(ペッグ)をと
る場合の当該金や
外国通貨の機能
中国政府は容認(2009年か
貿易上の支払、 らテスト、2011年から中国本
決済
土全体に拡大、2014年から
人民元建てCMが解禁)
国際的取引の支払
通貨当局による為
介入通貨
手段とのしての機
中国政府は容認(2011年か 決済通貨 替コントロールの手
能
段としての機能
ら人民元建て対外直接投
決済、金融取引 資・対内直接投資を解禁、
2015年から人民元国際決
済システム(CIPS)が稼働)
クロスボーダー
可能、但し限定的
預金
民間部門による国
段階的に開放(2011年から
公的当局による国
際的な価値の保蔵
RQFII(人民元建て適格外国 準備通貨 際的な価値の保蔵
クロスボーダー
手段としての機能
機関投資家)制度を、2014
手段としての機能
証券投資
年からは上海・香港ストック
コネクトを解禁)
固定相場制
無し
他通貨への
バスケット
有り
SDRの構成通貨
国際的な政府債
政府による
金融取引
中銀スワップ
IMF理事会で人民元の採用
を決定(2015年11月30日)
中国政府は容認(英国が人
民元建て国債を発行済)
限定的
増加中(33ヵ国・地域)
第三国での
通貨介入
有り(報道ベース、公式発表
は無し)
他国の外貨準備
段階的に増加中(新興国中
心、先進国ではノルウェー・
英国)
(出所)Takatoshi Ito, “The Internationalization of the RMB” Council on Foreign Relations(2011)、各種資料より野村資本市場研究所作成
23
世界の公的外貨建て資産の通貨別金額・構成

IMFは、2015年4月から5月にかけて、各国政府・中央銀行が保有する外貨準備以外の外貨建て資産も含めた調査を実施(Survey on The
Holdings of Currencies in Official Foreign Currency Assets)。調査対象年は2013年末と2014年末で、対象国・地域は130の公的当局。

人民元を保有する公的当局は、2013年末の27から2014年末には38に増加。

また、公的当局が保有する人民元は、2013年末の454億ドル(公的外貨建て資産全体の0.57%)から、2014年末には746億ドル(同0.95%)に増
加。
世界の公的外貨建て資産の通貨別金額・構成
2013年末
2014年末
金額(百万ドル) 構成比(%) 金額(百万ドル) 構成比(%)
公的外貨建て資産
7,897,817.42
100.00
7,832,731.17
100.00
外貨準備
6,779,830.42
85.84
6,738,534.06
86.03
SDR バスケット構成通貨
6,276,718.91
79.47
6,214,838.24
79.34
米ドル
4,158,921.34
52.66
4,290,575.54
54.78
ユーロ
1,603,466.98
20.30
1,417,328.09
18.09
英ポンド
287,966.45
3.65
274,564.80
3.51
日本円
226,364.14
2.87
232,369.81
2.97
その他通貨
503,111.51
6.37
523,695.81
6.69
豪ドル
151,026.62
1.91
142,451.37
1.82
カナダドル
133,863.09
1.69
133,869.60
1.71
人民元
45,358.87
0.57
74,611.87
0.95
スイスフラン
16,077.82
0.20
15,365.62
0.20
NZドル
16,805.46
0.21
15,213.97
0.19
スウェーデンクローナ
13,819.59
0.17
13,224.57
0.17
ノルウェークローネ
13,956.93
0.18
12,050.16
0.15
シンガポールドル
4,388.19
0.06
3,912.38
0.05
ブラジルレアル
3,416.08
0.04
3,335.65
0.04
南アフリカランド
2,687.69
0.03
3,140.54
0.04
インドルピー
459.23
0.01
1,000.11
0.01
ロシアルーブル
360.81
0.00
355.97
0.00
その他外貨
100,891.13
1.28
105,164.00
1.34
その他資産
1,117,987.00
14.16
1,094,197.11
13.97
金
720,135.84
9.12
727,181.42
9.28
SDR
261,099.94
3.31
254,117.58
3.24
IMF リザーブポジション
136,751.22
1.73
112,898.11
1.44
(注) 1.外貨準備および公的に保有される外貨建て資産を通貨別に集計し、シェアを示したデータ。
2.1ヵ国は一部データの提供。
(出所)IMFより野村資本市場研究所作成
24
人民元の利用を一層拡大させる規制緩和

具体的な規制緩和項目等
• 先物為替取引の実需原則撤廃、元転規制の撤廃
• 為替政策・為替レートの透明性・公開性・予見可能性の向上
東京市場:
• 人民元クリアリング銀行の設定
• CIPS(人民元国際決済システム)への直接参加行への邦銀登録
• RQFII運用枠の配分
• 国内投資家への対応
中国本土:
• 事業会社の外債枠規制の撤廃
• 外資の社債発行規制の緩和
• 上海国際板の創設
• ネガティブリスト方式の採用と対内証券投資規制の緩和
• 外資の証券会社・運用会社設立の規制緩和
• QDII運用枠の拡大、QDII2の創設
25
(参考) 中国による二国間金融協力の展開
人民元
クリアリング銀行
香港
○
台湾
○
韓国
○
東京
-
アジア シンガポール
○
タイ
○
マレーシア
○
豪州
○
ニュージーランド
-
旧ソ連 ロシア
-
カタール
○
アラブ首長国連邦
-
英国
○
フランス
○
ルクセンブルク
○
ドイツ
○
スイス
○
中東
欧州
中東欧 ハンガリー
北米
○
カナダ
○
チリ
○
アルゼンチン
○
南アフリカ
○
ザンビア
○
南米
アフリカ
人民元建て
通貨スワップ協定
直接交換取引
締結年月
指定年月
開始年月
指定銀行
金額(億元)
2009年1月
2009年7月
○
実施済
同左
中国銀行
4,000
2013年1月
○
2013年2月
中国銀行
2008年12月
2014年7月
○
○
2014年12月
交通銀行
3,600
2002年3月(失効中)
○
○
2012年6月
30億ドル相当元
(CMI)
2013年2月
2010年7月
○
○
2014年10月
中国工商銀行
3,000
2014年12月(更新)
2015年1月
○
中国工商銀行
700
2015年1月
2009年2月
○
○
2010年8月
中国銀行
1,800
2014年11月
2012年3月
○
○
2013年4月
2,000
中国銀行
2011年4月
○
○
2014年3月
250
2014年10月
○
○
2010年11月
1,500
2014年11月
2014年11月
○
中国工商銀行
350
2015年12月
○
350
2015年10月(更新)
2014年6月
○
○
2013年10月
中国建設銀行
3,500
2014年9月
中国銀行
○
2013年10月
2014年9月
○
2014年9月
3,500
中国工商銀行 (ECB)
2014年6月
中国銀行
2015年11月
2014年7月
○
中国建設銀行
1,500
2015年6月
2013年9月
○
中国銀行
100
2014年11月
2014年11月
○
中国工商銀行
2,000
2015年5月
2015年5月
○
中国建設銀行
220
2015年9月
2009年4月
○
中国工商銀行
700
2015年7月
2015年4月
○
中国銀行
300
2015年9月
中国銀行
-
人民元建て適格外国
機関投資家(RQFII)
人民元建て債券
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
-
-
-
開始年月
第一号発行体
2007年6月
国家開発銀行
2013年3月
中国信託商業銀行(台湾)
2014年10月
中国工商銀行
2015年6月
三菱東京UFJ銀行
2013年5月
HSBC
2014年4月
中国銀行
2012年4月
HSBC
2014年7月
中国銀行
2014年5月
中国銀行
2014年5月
中国農業銀行
-
-
-
海外財政当局・中央銀行による
適格外国機関投資家(QFII)等
取得年月
割当年月
機関名称
金額(億元)
金額(億ドル)
2010年10月
点心債
2011年12月
○
○
HKMA
2,700
15
Dim Sum Bond
宝島債
2013年1月
(合意有)
1,000
Formosa Bond
名称、言及なし
2014年7月
2011年12月
○
○
韓国銀行
6
800→1,200
2012年3月
名称、言及なし
(合意有、
MOF
103(650億元)
未実現)
獅城債
2013年10月
2011年10月
○
○
MAS
1
Lion City Bond
500→1,000
2011年12月
タイ
○
3
中央銀行
2015年11月
マレーシア 2009年5月
○
○
500
15
中央銀行
2014年11月
大洋債
○
Oseania Bond
500
2012年9月
2014年11月
カタール
○
○
投資庁
10
300
2015年12月
○
500
ユーロ人民元債
2013年10月
○
Euro RMB Bond
800
凱旋債
2014年6月
○
Arc de Triomphe Bond
800
シェンゲン債
2015年4月
○
Schengen bond
500
ライン債
2014年7月
○
800
Rhein Bond
2015年1月
○
500
2015年6月
○
500
2014年11月
○
500
2015年5月
○
500
愛称
(注) 1.金額は最新時点の金額を採用。赤い網掛けは2013年6月以降の動き。なお、マカオにも人民元クリアング銀行が設置済(2012年9月)。
2.人民元とシンガポール・ドルとの直接交換取引は2013年10月に合意し、2014年10月に取引開始。シンガポール向けRQFIIは、2015年11月に500億元から1,000億元に増枠。
3.人民元と韓国ウォンとの直接交換取引は2014年7月に合意し、同年12月に取引開始。韓国向けRQFIIは、2015年10月に800億元から1,200億元に増枠。
(出所)中国人民銀行、中国証券監督管理委員会、各種資料より野村資本市場研究所作成
26
(参考) オフショア人民元債発行一覧①
Source: Dealogic, IFR Markets, Bloomberg as of Dec 31, 2015.
27
(参考) オフショア人民元債発行一覧②
Source: Dealogic, IFR Markets, Bloomberg as of Dec 31, 2015.
28
(参考) オフショア人民元債発行一覧③
Source: Dealogic, IFR Markets, Bloomberg as of Dec 31, 2015.
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