「再エネ&自由化」が引き起こした地殻変動

「再エネ&自由化」
が引き起こした
地殻変動
弁護士
千葉恒久
[email protected]
2016年1月27日
東京/「パワーシフト」院内集会
FIT
2000年4月
再生可能エネルギー法
自由化
エネルギー
(市場)
転換
1998年4月
電力・ガス事業
全面自由化
2016/2/2
2
テーマ1
自由化の鍵を握る
「消費者」
3
家庭向け電力料金
年間消費量3500kWhの標準家庭における平均電力料金
(ct/kWh)
電力税
コージェネ
ほか
再エネ賦
課金
コンセッション
料(自治体)
消費税
託送料
調達・利潤
(BDEW Strompreisanalyse 2015.8)
4
自由化の原動力となる消費者
消費者は簡単には動かな
い
↓
自由化は消費者が「選ぶ」
ことでようやく動き出す
↓
どうやって消費者に選んで
もらうか?
いかに情報を届けるか?
契約先の変更をいかに
容易にするか?
Die Welt Online v. 26.6.2012
2800kWh/年の消費家庭の月額負担額
5
EU域内電力市場指令における
消費者保護規定
付属表Ⅰ
• b) 顧客は、適切な時期に、契約条件の変更及び解約権について説明を
受ける。
• c) 顧客は、最新の価格と料金メニュー、電力サービスを受けるための標
準的な条件及びその適用に関する情報を与えられる。
• d) ・・・一般的な契約条件は公正かつ透明でなければならない。それは
明瞭かつ理解できるよう表記されなければならず、・・・
• e) 顧客は、供給先を手数料なくして変更できる。
• f) 顧客は、透明、簡明かつ廉価な苦情処理手続を利用できる。・・・
• h) 顧客は、消費データを利用でき、任意の登録供給者に対し、明示的
な同意によって手数料なくして、自己の計測値へのアクセスを許すことが
できる。・・・
• i) 顧客は、自分の電力消費をコントロールできるよう、十分な頻度で適
切な形式によって実際の電力消費量と電力料金についての情報を受け
とる。
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ドイツのエネルギー事業法における
電力料金メニュー・請求書についての法規制
① 料金メニューの提供義務(40条)
「販売事業者は、技術的、経済的に可能な限り、省エネ
又は消費コントロールに資する料金メニューを提供しなけ
ればならない。とりわけ、電力負荷量に応じた又は時間帯
別の料金メニューによる。」
② 請求書における明示義務(40条、42条)
前年比消費量
同類の消費者の平均との比較グラフ
発電源構成グラフ ・ 国平均との比較
環境負荷(CO2排出量、放射性廃棄物量)
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ようやく増えた他業者への契約先変更
(一般家庭の契約変更者数)
引越時の変更
引越時を除く変更
(供給業者の破産による変更)
合計数
(連邦ネットワーク庁 Monitoringbericht 2015)
8
増えるスポット市場での取引量
(TWh)
300
当日
250
200
150
前日
100
50
再エネ
(固定)
0
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
EPEX(EEX)の前日・当日市場での電力取引量の推移
(連邦ネットワーク庁 Monitoringbericht 2014 のデータから作成)
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テーマ2
再エネの発展を
支える取引市場
10
再生可能エネルギーによる発電量
(TWh)
30%
200
27.4
180
30.0
廃棄物
関連
25.2
23.7
160
25.0
太陽光
20.4
140
バイオ
マス
20.0
16.3
120
14.2
100
17.0
15.1
洋上
風力
15.0
11.6
80
9.3
60
40
5.2
4.3 4.7 4.8 4.1 4.5
3.8
3.4 3.1 3.6
6.2 6.6
10.2
10.0
7.7 7.6
5.0
陸上
風力
20
水力
0
0.0
1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015
電力引取法
再生可能エネルギー法
再エネ発電量と総発電量に占める割合 (AG Energiebilanzen e.V.)
2015年は速報値
原子力・化石燃料から再エネへ
(TWh)
200
180
褐炭
160
140
石炭
120
100
原子
力
80
60
天然ガ
ス
40
20
0
1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015
再エネ発電量と原子力・化石燃料発電量 (AG Energiebilanzen e.V.)
2015年は速報値
石油
「再エネ率」は最大83.2%に達している
需要量
太陽光
風力
水力
バイオマス
2015年8月23日午後1時、国内需要の83.2%を再エネ電力がまかなった。
2016/2/2
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再エネの優先性~系統接続のルール
再エネ特措法
• 「次に掲げる場合を除き接
続を拒んではならない」(法
5条)
電気の円滑な供給に支障が生じ
るおそれがある
省令で定める正当な理由がある
• 規則が定める正当事由(6
条)
ドイツ再エネ法(EEG)
• 「送配電事業者は、再エネ
発電施設を、遅滞なく、優
先して、電圧が適合しかつ
施設立地点からの空間距
離が最短となるポイントで、
送配電網に接続しなけれ
ばならない」
供給が需要を上回る
系統の熱容量を超過する
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ドイツ再エネ法における接続のルール
• 以下の理由では接続を拒否できない
×「既存の化石燃料・原子力で送電容量がいっぱいです」
(化石燃料・原子力電源は送電可能容量の考慮対象とはならない)
×「既存の再エネで時間帯によっては送電容量がいっぱいです」
(出力抑制による対応が可能である限りそれで対応しなければならない。)
×「送配電網の熱容量が小さく出力抑制でも対応しきれません」
(送配電網を拡充しなければならない。それまでの猶予のみ。)
⇒ 接続をめぐる問題は接続ポイントの選択、接続の時期、費用
負担の問題に吸収される。
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2014年8月の発電状況
←
(上か
ら)
太陽光
風力
その他
の大型
電源
輸出入
(Fraunhofer ISE 発電データ報告2014)
再エネ発電量の増減に応じて、国境を超えて電力が行き来することで変動に対応し
ている。
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テーマ3
F I T + 自由化
17
2014年12月の発電状況
太陽光
風力
揚水
ガス
石炭
褐炭
原子力
バイオ
水力
2016/2/2
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(Fraunhofer ISE 発電データ報告2014)
再エネの増加によって下がる火力発電施設の稼働率
(数値は稼働可能な施設のうち何パーセントが実際に稼働したかを示している)
原子力
97.9%
褐炭
90.55%
石炭
57.1%
ガス
15.3%
天然ガスと石炭火力の稼働率は近年大きく下落している。
19
(Fraunhofer ISE 発電データ報告2014)
下がり続ける卸市場での電力取引価格
EEXにおける先物(1年後)電力の取引価格
ベースロード
ピークロード
ベースロード中央値
Agora “Die Energiewende im Stromsektor: Stand der Dinge 2015)
2016/2/2
20
E.On社の株価の推移
全面
自由化
1998.4
送電事業の
売却を受諾
2008.11
福島原発
事故
2011.3
E.On誕生
(合併許可)
2000.5
会社分割
計画発表
2014.11
ガス再大手
との合併
2003
1998
2000
2002
2004
2006
2008
2010
2012
2014
2016
21
下がり続ける4大企業の市場占有率
(%)
総発電量に占める4大エネルギー
企業の割合
100
電力事業の総売上高に占める
4大エネルギー企業の割合
(%)
100
86.8
80
80
80
68
58
60
87.7
75.6
70.2 68.5
60.6
60
57.6
50.1
47.8
40
40
20
20
0
0
2009
2010
2011
2012
2013
(Hmonopolkomisson “Energie 2015”)
2016/2/2
46.4
(H.-J. Bontrup et al “Die Zukunft der
großen Energieversorger)
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「エネルギー自治」を取り戻す自治体
2005年以降、約120の自治体が自前のエネルギー企業を設立した。
200以上の自治体がエネルギー供給網を取り戻した(2014年6月時点-VKU)
2016/2/2
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再エネ100%化をめざ
す自治体
面積にして国土の
約半数の自治体
が再エネ100%化
など大胆なエネル
ギー供給構造の変
革を自ら実現しよ
うとしている
大手エネルギー企業は生き残れるか?
【2014年11月】
• 再エネ発電、小売、送配
電を事業の柱にする
• 風車と太陽光事業に
2015年は43億ユーロ
(≒6000億円)の投資を
おこなう
• 原子力と石炭・ガス発電
事業を切り出す
【2015年12月】
• 子会社を設立し、再エ
ネ発電、小売、送配電
を子会社へ移行。従
業員6万人のうち4万
人も子会社へ以降。
• 旧会社は原子力と石
炭・ガス発電に専念
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買取価格制度の軌道修正
~マーケットプレミアム制度への移行
2012年1月
市場価格連動型のマーケットプレミアム制度を導入
オプションとして導入。固定価格買取への復帰も認める
バイオガス(750kW超)は2016年以降固定価格買取を廃止
マネージメント
プレミアム
マーケット
プレミアム
固定価格
2016/2/2
取引市場
取引価格
平均値
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マーケットプレミアム制度の浸透
再エネ法対象施設の買取態様
固定価格買取
直接販売
2014年8月~
新規施設に対するマーケットプレミアム制度の義務的な適用
2015年末まで 500kW超のすべての新規施設
2016年1月以降 100kW超のすべての新規施設
2016/2/2
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FIT電力の市場統合策
マーケットプレミアム制度のねらい
• ネガティブ取引価格の抑制
電力市場
(再エネ法賦課金の削減)
• 発電事業者が発電予測とズ
レに自ら責任を持つ
ポスト再エネ法
(予測の精緻化/変動対応)
• 需給・取引価格の変動に応じ
た発電
マーケットプレミアム
(発電事業者自身が
売却)
(バイオマス/太陽光・風力)
• ポスト再エネ法時代の再エネ
発電事業への移行
2016/2/2
固定価格買取
(送配電事業者によ
る買取り)
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