3.今後の道路トンネル点検のあり方について 2-3-1

第2編 道路分科会
3. 今後の道路トンネル点検のあり方について
資料№15-1 維持管理研究委員会報告書
3.今後の道路トンネル点検のあり方について
3.1
道路トンネル点検の現状と課題
3.1.1
はじめに
平成 24 年 12 月 2 日,中央自動車道笹子トンネル天井板落下事故が発生し,この事
故を契機に,社会資本の維持管理・更新の重要性が再認識されている。
このような事故を二度と起こさないよう,国土交通省では,平成 25 年を「社会資
本メンテナンス元年」と位置付けて以降,以下の取組を進めており,
「道路トンネル維
持管理」の進め方や基準は転換期を迎えている。
表 3.1.1
年
笹子トンネル事故以降の道路トンネル維持管理に関する動向
月
記
事
H24.12.2
中央自動車道笹子トンネル天井板落下事故発生
H24.12.3
トンネル天井板の緊急点検の実施指示
H24.12.7
トンネル内の道路附属物等の一斉点検の実施指示
H24.12.27
トンネル内の道路付属物等の一斉点検結果の公表
H25.1
国土交通大臣を議長とする「社会資本の老朽化対策会議」を設置
H25.2
総点検実施要領(案)の策定
H25.11
インフラ長寿命化基本計画の策定
H26.4
道路の老朽化対策の本格実施に関する提言
道路ストックの総点検
・メンテナンスサイクルを確定(道路管理者の義務の明確化)
・メンテナンスサイクルを回す仕組みを構築
H26.5
インフラ長寿命化計画(行動計画)の策定
対象:国交省が制度等を所管する全ての施設
期間:平成 26 年~32 年度(2014~2020 年度)
H26.6
道路トンネル定期点検要領[直轄版]の策定
道路トンネル定期点検要領[自治体版]の策定
H26.7
道路法施行規則の一部改正(施行:平成26年 7 月1日)
【具体的な内容】
・ 橋梁・トンネル等は , 国が定める統一的な 基 準により,5年に 1
回の頻度で,近接目視により点検を行うことを基本とすること
・ 点検,診断の結果等について,記録・保存すること
・ 統一的な尺度で健全性の診断結果を分類すること
次世代社会インフラ用ロボット(トンネル維持管理)
「現場検証対象技術」が決定(7/3)
2-3-1
第2編 道路分科会
3. 今後の道路トンネル点検のあり方について
資料№15-1 維持管理研究委員会報告書
従来,国土交通省では,平成 14 年度に策定された「道路トンネル定期点検要領(案)」
に準じて,2~5年間隔で定期点検を実施し,維持補修工事を実施していた。
一方,地方自治体では,国土交通省のマニュアルに準ずる自治体,点検マニュアル
を独自に作成し,維持管理費用の低減を図っている自治体,維持管理を行うための人員
不足,予算不足,技術不足により,適切なトンネル点検を実施していない自治体など,
管理者によってトンネルの維持管理水準にばらつきがある状況であった。
笹子トンネル事故後,道路法改正,点検要領の改訂により,全道路管理者に,以下
の事項が規定され,道路管理者の義務が明確化された。
①近接目視により,五年に一回の頻度でトンネル点検を実施すること。
②トンネルの健全性の診断結果は,「健全」「予防保全段階」「早期措置段階」「緊急
措置段階」の四段階に区分すること。
③トンネル点検の内容を記録し,保存すること。
こうしてメンテナンスサイクルが確定されれば,道路管理者によらず,均一な水準
でトンネル点検が実施されるはずである。しかしながら,トンネルの維持管理において
は,環境や構造条件などにより,留意点が異なるため,さまざまな課題が存在しており,
現在のトンネル点検で全ての第三者被害を未然に防げるとは言い難い。例を挙げると,
(点検要領改訂後も)点検対象は主に覆工表面の変状に着目されており,トンネルの(突
発的)崩落の要因となり得る背面空洞の点検は標準的に実施されていない。
また,新要領による点検義務を守るには,継続的に安定した予算確保が必須であり,
これまでの予算体系を見直す必要がある。
本 WG では以上を踏まえて,トンネル維持管理の現状と課題を整理し,これまでの
トンネル点検方法で本当によいのか?トンネルの維持管理を行ううえでどのようなこ
とが必要なのか?維持管理予算の抜本的な考え方について提言する。
3.1.2
対象範囲および活動方針
本WGの対象範囲および活動方針を以下に示す。
(1)
対象範囲
・道路分科会であるため,道路トンネルを対象とする。
・道路トンネルの中でも,山岳トンネル(矢板工法,NATM)を対象として考える。
(2)
活動方針
・道路トンネル維持管理の現状と課題について整理する。
・トンネルの変状原因と発生形態を整理する。
・背面空洞の調査方法,充填対策について紹介する。
・点検における新技術について紹介する。
2-3-2
第2編 道路分科会
3. 今後の道路トンネル点検のあり方について
資料№15-1 維持管理研究委員会報告書
3.1.3
(1)
道路トンネルの維持管理の現状と方向性
道路トンネルのストック状況
現在,日本全国のトンネル数は約 1 万本で,建設後 50 年以上の道路トンネルは,
2012 年の時点では 18%であるが,2022 年には 31%,2032 年には 47%へと増加する。
全トンネルのうち,高度経済成長期に建設されたものの数は,全体の約 25%を占め
ており,今後 20 年間で,建設後 50 年以上のトンネル数は急速に増加し,老朽化とと
もに補修・補強対策を必要とする道路トンネルが今後さらに増加することが予想され
る。
図 3.1.1
(2)
道路トンネルのストック量
1)
道路トンネルの維持管理の現状
上述のように,高度成長期に大量に建設された土木構造物の多くが,その寿命を迎
え,これまでのような社会資本整備(ストック)の時代から,維持管理・更新の時代
へと変化していく中,社会資本の適切な維持管理が求められている。こうした社会情
勢を受け,道路を資産(アセット)とみなすことで,その効率的な管理・運用を目指
したアセットマネジメントという概念が着目され,導入が進められている。
図 3.1.2
道路アセットマネジメントによる維持管理の流れ
2-3-3
2)
第2編 道路分科会
3. 今後の道路トンネル点検のあり方について
資料№15-1 維持管理研究委員会報告書
道路アセットマネジメントにおいて,橋梁マネジメントシステム(BMS),舗装マネ
ジメントシステム(PMS)は開発・研究が進み,導入が進められているが,トンネルマ
ネジメントシステム(TMS)は,開発が遅れ,後発的分野である。
トンネルアセットマネジメントの開発が遅れた原因は,トンネル構造物が持つ特殊
性が原因であり,以下にトンネル構造物の特殊性を示す。
①トンネルの主部材は覆工コンクリートではなく周辺地山で,周辺地山は不均質で
不確実性が大きく,完成後は周辺地山を直接モニターできない。
②劣化・損傷の原因は,構造物の老朽化以外に,地山の地質変化などの影響も受け
ることから,変状原因が複雑である。
③トンネルは,閉鎖空間であるため更新(作り替え)や大規模修繕が困難である。
こうした構造の特殊性のため,トンネル維持管理は従来「悪くなったら補修する」
対症療法型方式であったが,インフラ長寿命化計画が策定され,
「計画的に手を入れて
長持ちさせる」予防保全型方式へと転換を図っている最中である。
(3)
道路トンネルの維持管理の方向性
国土交通省は,平成 26 年 4 月 14 日「道路の老朽化対策の本格実施に関する提言」
で,維持管理の目指すべき方向性と具体的な取組みして以下の2つを掲げている。
① メンテナンスサイクルを確定(道路管理者の義務の明確化)
・国民が安心して使い続けられるよう,道路管理者がすべきこと(ルール・基準)
を明確化するため,道路法に基づく点検や診断の基準を規定。
② メンテナンスサイクルを回す仕組みを構築
・予算,体制,技術を組み合わせ,各道路管理者におけるメンテナンスサイクル
を持続的に回す仕組みを構築。
また,平成 26 年 5 月には「国土交通省インフラ長寿命化計画(行動計画)」が策定
され,平成 26 年 6 月に「トンネル定期点検要領」が策定された。今後は平成 27 年度
までに,トンネルについて個別施設計画を策定する予定である。
3.1.4
道路トンネル点検方法の現状と課題
(1)
道路トンネル定期点検要領の改訂内容
道路法施工規則の一部を改正する省令(平成 26 年国土交通省令第 39 号)及びトン
ネル等の健全性の診断結果の分類に関する告示(平成 26 年国土交通省令告示第 426
号)が平成 26 年 3 月 31 日に公布され,同年 7 月 1 日より施行された。
これにより,トンネルの点検は近接目視により 5 年に 1 回の頻度を基本とし,その
健全性は 4 段階に区分することになり,新しい規定に基づいた「道路トンネル定期点
検要領」(以下新要領と記す)が平成 26 年 6 月に策定された。新要領は,直轄管理の
トンネルに適用されるもの(直轄版)と地方公共団体への技術的助言として,最小限
の方法,記録項目を記したもの(自治体版)の2種類に区分される。平成 14 年に策
定された「道路トンネル定期点検要領(案)」(以下旧要領と記す)との相違点を次頁
以降に示す。
2-3-4
第2編 道路分科会
3. 今後の道路トンネル点検のあり方について
資料№15-1 維持管理研究委員会報告書
表 3.1.2(1)
項 目
道路トンネル定期点検要領(案)
平成14年4月
トンネル定期点検要領比較表(1/2)
道路トンネル定期点検要領(直轄版)
平成26年6月
道路トンネル定期点検要領(自治体版)
平成26年6月
山岳工法で建設された道路トンネルを対象 道路トンネルのうち,国土交通省及び内閣 道路トンネルの定期点検に適用する。
府沖縄総合事務局が管理する道路トンネル 道路トンネル点検について,最小限の方
にした定期点検に適用する。
法,記録項目を具体的に記したもの。
の定期点検に適用する.
適用範囲
より詳細な点検,記録を行う場合は,直轄
版の点検要領を参考にする。
定期点検
初回定期点検
前回
判定
-
A
点検頻度
二回目以降の
定期点検
B
S
頻 度
建設後1~2年以内
定期点検は,5年に1回の頻度で実施することを基本とする.
(供用開始前)
A判定箇所のあったトンネルは2年
に1回程度とする
B判定箇所のあったトンネルは2年
に1回程度を原則とし,調査の結
果,点検間隔が延ばせると判断さ
れた場合は5年に1回程度とする
S判定箇所のあったトンネルは5年
に1回程度とする
なお,トンネルの状態によっては5年より短い間隔で点検することを妨げるものではな
い.
初回の定期点検は,トンネル建設後1年から2年の間に実施するのが望ましい.ここで
いう建設後とは,覆工打設完了後のことを指す.
初回定期点検:
初回定期点検:
トンネル本体工を対象とした近接目視,打 トンネル全延長(本体工+付属物)に対して近接目視により状況を観察するとともに覆
音検査
工表面を全面的に打音検査することを標準とする
二回目以降の定期点検:
初回定期点検で詳細に把握されている変状
を遠望目視点検で照合する。
点検方法 変状の進行箇所や新たな変状が発生した箇
所および,前回点検の結果以降に補修・補
強対策が講じられた箇所に対して近接目視
による変状の把握と打音検査によるうき・
はく離の有無および範囲の確認をおこなう
ものである。
二回目以降の定期点検:
トンネル全延長に対して近接目視を行うとともに必要に応じて打音検査を基本とする
・ 今後,調査技術者が近接目視によって行う評価と同等の評価が行えると判断できる
新技術が開発された場合は,新技術の併用を妨げるものではない
・ 必要に応じて触診や打音検査を含む非破壊検査等を適用する
※二回目以降の定期点検は遠望目視が基本 ・具体的な点検方法について細かく記載
・具体的な点検方法について記載はない
点検箇所
点検箇所
変状の種類
ひびわれ,段差
うき,はく離,はく落
傾き,沈下,変形
打継目の目地切れ,段差
漏水,つらら,側氷
覆 工
豆板やコールドジョイ
ント部のうき,はく離,
はく落
補修材のうき,はく離,
はく落
ひびわれ,段差
うき,はく離,はく落
傾き,沈下
鉄筋の露出
坑 門 豆板やコールドジョイ
ント部のうき,はく離,
はく落
補修材のうき,はく離,
はく落
内装板 変形,破損
変形,破損
天井板 ひびわれ,段差
(コンクリート製) うき,はく離,はく落
漏水,つらら
路面,路肩
漏水,氷盤,沈砂
および
排水施設 ひびわれ,段差,変形
点検対象箇所
【トンネル本体】
覆工,路肩および路面,排水施設,漏水対策工,はく落防止対策工,天井板,内装板,
坑門,坑門(壁面コンクリート)
【附属物】
吸音板,ジェットファン,標識,警報表示版,ケーブル類,照明
※ 附属物が点検箇所に追加された
2-3-5
第2編 道路分科会
3. 今後の道路トンネル点検のあり方について
資料№15-1 維持管理研究委員会報告書
表 3.1.2(2)
道路トンネル定期点検要領(案)
平成14年4月
項 目
点検員は,以下に示すいずれかの実務経験
を有することが望ましい。
(1)大学卒業後,5年以上のトンネルに
関する実務経験を有するもの
(2)短大・高専卒業後,8年以上のトン
ネルに関する実務経験を有するもの
(3)高校卒業後,11 年以上のトンネル
定期点検
に関する実務経験を有するもの
の体制
(4)前項(1)~(3)と同等以上の能力を
有するもの
トンネル定期点検要領比較表(2/2)
道路トンネル定期点検要領(直轄版)
平成26年6月
道路トンネル定期点検要領(自治体版)
平成26年6月
【点検員】
1)大学卒業後,5年以上のトンネルに関す
る実務経験を有するもの
2)短大・高専卒業後,8年以上のトンネル
に関する実務経験を有するもの
3)高校卒業後,11 年以上のトンネルに関
する実務経験を有するもの
4)前項1)~3)と同等以上の能力を有する
と道路トンネルの管理者が認めたもの
【調査技術者】
1)技術士(トンネル)
2)RCCM(トンネル)
【点検員】
トンネルに関する一定の知識及び技能を有
すること
【調査技術者】
トンネル変状に関する必要な知識及び技能
を有すること
当面は以下のいずれかの要件に該当するこ
ととする
・道路トンネルに関する相応の資格または
相当の実務経験を有すること
・道路トンネルの設計,施工,管理に関す
る相当の専門知識を有すること
・道路トンネルの点検に関する相当の技術
と実務経験を有すること
【トンネル本体工】5区分
【トンネル本体工】4区分
※ 調査技術者は定義されていない
【トンネル本体工】3区分
判定
区分
判定の内容
A
変状が著しく歩行者および通行
車両の安全を確保できないと判
断され,応急対策を実施した上
で補修・補強対策の要否を検討
する調査が必要な場合
B
点検結果
判定区分
S
変状があり,応急対策は必要と
しないが補修・補強対策の要否
を検討する調査は必要な場合
区分
定 義
区分
定 義
Ⅰ
利用者に対して影響が及ぶ可能
性がないため,措置を必要とし
ない状態.
Ⅰ
利用者に対して影響が及ぶ可能
性がないため,措置を必要とし
ない状態.
将来的に,利用者に対して影響
Ⅱb が及ぶ可能性があるため,監視
を必要とする状態.
Ⅱ
将来的に,利用者に対して影響
が及ぶ可能性があるため,重点
Ⅱa 的な監視を行い,予防保全の観
点から計画的に対策を必要とす
る状態.
将来的に,利用者に対して影響
が及ぶ可能性があるため,監視
又は予防保全の観点から対策を
必要とする状態.
Ⅲ
早晩,利用者に対して影響が及
ぶ可能性が高いため,早期に対
策を講じる必要がある状態.
Ⅳ
利用者に対して影響が及ぶ可能
性が高いため,緊急に対策を講
じる必要がある状態.
Ⅱ
変状はないか,あっても軽微で
応急対策も調査も必要としない
場合
Ⅲ
早晩,利用者に対して影響が及
ぶ可能性が高いため,早期に対
策を講じる必要がある状態.
Ⅳ
利用者に対して影響が及ぶ可能
性が高いため,緊急に対策を講
じる必要がある状態.
【附属物】
【附属物】
判定
区分
異常判定の内容
判定
区分
異常判定の内容
附属物の取付状態に異常がある
附属物の取付状態に異常がある
×
×
場合
場合
附属物の取付状態に異常がない
附属物の取付状態に異常がない
○
○
か,あっても軽微な場合
か,あっても軽微な場合
変状単位の診断結果から,覆工スパン毎に健全性を診断
覆工スパン毎の健全性の診断結果から,トンネル毎の診断を行う
区分
健全性の
診断
状態
Ⅰ 健全
構造物の機能に支障が生じていない状態.
Ⅱ 予防保全段階
構造物の機能に支障が生じていないが,予防保全の観点から
措置を講ずることが望ましい状態.
Ⅲ 早期措置段階
構造物の機能に支障が生じる可能性があり,早期に措置を講
ずべき状態.
Ⅳ 緊急措置段階
構造物の機能に支障が生じている,又は生じる可能性が著し
く高く,緊急に措置を講ずべき状態.
道路トンネル定期点検要領の改訂に伴い,点検結果調書は,健全性の診断結果を記
載する欄などが追加された。次頁に新要領の「トンネル変状・異常箇所写真位置図」,
「変状写真台帳」の様式を示す。
2-3-6
第2編 道路分科会
3. 今後の道路トンネル点検のあり方について
資料№15-1 維持管理研究委員会報告書
■点検結果調書 トンネル変状・異常箇所写真位置図
フリガナ
緊急輸送道路
路線名
管理者名
名 称
代替路の有無
所在地
自
点検業者・点検者名
点検年月日
トンネル延長
至
調査業者・調査技術者名
調査年月日
トンネルの分類
緯度
経度
緯度
経度
起点
終点
変状・異常
箇所数合計
トンネル
本体工
材質劣化
Ⅱ
Ⅲ
漏水
Ⅱ
Ⅲ
Ⅳ
外力
Ⅱ
Ⅲ
Ⅳ
L=
m
Ⅳ
附属物の
取付状態
トンネル毎
の健全性
ト
ン
ネ
ル
変
状
・
異
常
箇
所
写
真
位
置
図
注1:本位置図は,見下げた状態で記載すること.
注2:覆工スパン番号は横断方向目地毎(矢板工法の場合は上半アーチ
の横断方向目地毎)に設定すること.
注3:写真番号に付する変状番号は、各覆工スパンの変状に対して新た
に確認された場合は順次追加していくこと.
注4:横断方向目地の変状は前の覆工スパン番号で計上すること.
注5:1枚に収まらない場合は,複数枚に分けて作成すること.
写真番号の記載例
写真-【覆工スパン番号】-【変状番号】
■点検結果調書 変状写真台帳
フリガナ
路線名
点検業者・点検者名
点検年月日
名 称
管理者名
調査業者・調査技術者名
調査年月日
覆工
スパン
番号
写真
番号
写真
番号
変状
番号
対象
箇所
変状
部位
覆工
スパン
番号
変状
番号
対象
箇所
変状
部位
部位
区分
部位
区分
変状区分
変状区分
変状種類
変状種類
点検・調査後
健全性
点検・調査後
健全性
措置後
変状の発生範囲の規模
措置後
変状の発生範囲の規模
前回点検時の状態
前回点検時の状態
調査(方針)
実施状況(実施日)
調査(方針)
実施状況(実施日)
措置(方針)
実施状況(実施日)
措置(方針)
実施状況(実施日)
メモ
メモ
覆工
スパン
番号
写真
番号
写真
番号
変状
番号
対象
箇所
変状
部位
変状
番号
対象
箇所
変状
部位
部位
区分
変状区分
部位
区分
変状区分
変状種類
変状種類
点検・調査後
健全性
覆工
スパン
番号
点検・調査後
健全性
措置後
変状の発生範囲の規模
措置後
変状の発生範囲の規模
前回点検時の状態
前回点検時の状態
調査(方針)
実施状況(実施日)
調査(方針)
実施状況(実施日)
措置(方針)
実施状況(実施日)
措置(方針)
実施状況(実施日)
メモ
メモ
※ たたき落とし、締直しを実施した場合は、実施後の写真を添付すること。
※ 応急対策を実施した場合は、その実施状況が分かる写真を添付すること。
※ 附属物の取付状態に関する異常写真は別途、任意の書式でとりまとめること。
※ 変状の発生範囲の規模とは、対策を行う際に参考となる変状の長さや面積をいう
図 3.1.3
新要領のトンネル点検結果調書
2-3-7
第2編 道路分科会
3. 今後の道路トンネル点検のあり方について
資料№15-1 維持管理研究委員会報告書
(2)
新要領に対する地方公共団体の意見
国土交通省では,新要領策定にあたり,平成 26 年 4 月に「定期点検要領(案)」を
地方公共団体に対して意見照会を行い,主な意見・質問の概要とそれに対する考え方
をまとめてホームページで公表している。トンネル点検に関するものを抜粋して以下
に示す。
表 3.1.3(1) 「定期点検要領」に関する地方公共団体の主な意見・質問と考え方(1/3)
主な意見・質問の概要
○点検頻度を緩和してほしい。
主な意見・質問に対する考え
点検 の質 を確 保す る ために 省令 とし て定 め た
事項であり,守って頂く必要があります。
○5年に1回の頻度はどの程度の期間
まで許容されるのか。
点検 の頻 度に つい て は,厳 密に 前回 の点 検 実
施日か ら5 年後 の当 日 までに 点検 を行 わな け れ
ばならないというものではありませんが,
「5年
に1回 の頻 度で 行う こ と」を 基本 とす るも の で
す。
○遠望目視も認めて頂きたい。
点検 の質 を確 保す る ために 省令 とし て定 め た
事項であり,守って頂く必要があります。
○独自に定めた要領で点検してもよい
か。
今回 の定 期点 検要 領 の内容 を満 足す るも の で
あれば,独自の点検要領を使用できます。
○独自の要領で,診断を行っている場
なお ,構 造物 毎の 健 全性の 診断 は, 4段 階 区
合でも,さらに 健全性の 4 段階分類
分によ る判 定結 果も 記 録して 頂く 必要 があ り ま
(Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ,Ⅳ)判定を行うのか。
すが, 過去 の点 検結 果 につい て見 直す 必要 は あ
また,過去の点検結果についても,4
りません。
段階 区分に見直す必要があるのか。
○最低限の記録項目を満足すれば,独
自の様式でもよいのか。
点検 記録 様式 は, 最 低限の 項目 につ いて 記 録
するも ので すの で, 追 加する 形で 独自 の様 式 も
使用して頂いても構いません。
なお ,今 後, 点検 結 果を国 で収 集す るこ と を
予定し てい ます が, そ の際に は, 点検 要領 に 基
づく点 検記 録様 式に あ る項目 の提 出を お願 い す
ることを予定しております。
その ため ,点 検記 録 様式は ,電 子化 した も の
を後に配布させていただきますので,活用頂き,
記録をお願いいたします。
○近接目視が困難でやむをえない場合
の近接目視と同等の手段とは具体的に
物理 的に 近づ くこ と ができ ない 場合 を除 き 近
接目視で点検をして下さい。
示してほしい。
2-3-8
第2編 道路分科会
3. 今後の道路トンネル点検のあり方について
資料№15-1 維持管理研究委員会報告書
表 3.1.3(2) 「定期点検要領」に関する地方公共団体の主な意見・質問と考え方(2/3)
主な意見・質問の概要
主な意見・質問に対する考え
○健全性の診断に管理者毎ばらつきが
健全 性の 診断 は, 道 路施設 の置 かれ てい る 環
できないよう, 具体的な考えを示され
境を踏 まえ て, 総合 的 に判断 する 必要 があ る た
たい。
め,画 一的 ・定 型的 な 基準化 はな じみ ませ ん 。
一方, 診断 区分 の一 層 の参考 とす るた めに 国 の
○判定基準を数値化できないのか。
事例を提供していきます。
また ,各 地方 整備 局 等にお いて ,地 方公 共 団
体の道 路管 理者 も参 加 できる 研修 など を実 施 し
ていきます。
○点検を実施する者の要件を具体的に
地方 整備 局で は点 検 ・診断 業務 を発 注す る 際
示して欲しい。
の管理 技術 者の 要件 と して技 術士 ,R CC M な
○地方公共団体職員での点検は可能
どを設定しておりますので,参考にして下さい。
か。
定期 点検 は「 点検 を 適切に 行う ため に必 要 な
知識及び技能を有する者」であれば可能です。
○点検業務に関する歩掛の策定をお願
いしたい。
トン ネル ,橋 につ い て,参 考歩 掛を 提示 し ま
す。そ の他 の施 設に つ いては 見積 りに よる 積 算
となりますが,その手順をお示ししていきます。
○定期点検等,費用が多額となると考
防災 ・安 全交 付金 に よる財 政的 支援 を実 施 し
える。財政面での支援もお願いしたい。 ていきます。
点検 を適 正に 実施 し ている 市町 村に 対し て ,
交付金の重点配分等を検討しているところで
す。
○補修費用に対する財政支援はあるの
か。
防災 ・安 全交 付金 に よる財 政的 支援 を実 施 し
ていきます。
昨年 の道 路法 改正 に よる修 繕等 の代 行制 度 の
創設など支援策を講じて来たところです。
○鉄道事業者や河川管理者との協議等
鉄道 事業 者と の協 議 に関し ては 各地 方整 備 局
の簡素化,協議支援,協力体制の構築, 毎に設 置さ れた 「鉄 道 委託工 事に 係わ る連 絡 会
JR 委託費用の低減等を要望
議」な どを 通じ て今 後 とも支 援し てい きま す 。
河川管 理者 との 協議 は 道路メ ンテ ナン ス会 議 を
通じて,支援することなどを検討していきます。
○地方公共団体向けの研修会の開催を
お願いしたい。
○点検業者や点検技術者の確保をして
いただきたい。
各地 方整 備局 等に て 地方公 共団 体職 員も 参 加
できる研修を実施する予定です。
道路 メン テナ ンス 会 議を通 じた 一括 発注 , 研
修などにも取り組んでいきます。
2-3-9
第2編 道路分科会
3. 今後の道路トンネル点検のあり方について
資料№15-1 維持管理研究委員会報告書
表 3.1.3(3) 「定期点検要領」に関する地方公共団体の主な意見・質問と考え方(3/3)
主な意見・質問の概要
主な意見・質問に対する考え
○道路ストック総点検と定期点検との
倒壊 ,落 下等 によ る 第三者 被害 を防 止す る 観
関連性はどのようなものか。両方の点
点から ,総 点検 (集 中 点検) は早 期に 完了 し て
検をしないといけないのか。
頂く必 要が ある と考 え ます。 なお ,新 たな 定 期
点検要 領に 基づ いた 点 検を行 えば ,第 三者 被 害
防止の 点検 も含 まれ る ため, 総点 検を 実施 し た
ものとできます。
○措置を講ずるまでの期間,対策工法
について,目安を記載できないか。
例え ば, 健全 度Ⅲ に ついて は次 回の 点検 ま で
に措置 を行 う必 要が あ る状態 です が, 実際 の 措
置を講 ずる 時期 は個 々 の施設 のお かれ た環 境 や
変状の程度に応じて,判断することになります。
なお, 対策 工法 につ い ては事 例の 提供 など の 支
援をしていきます。
地方公共団体にも,道路管理者の義務として国と同じ水準での点検を求める回答と
なっている。また,地方公共団体の三つの課題(予算不足・人不足・技術力不足)に
対しては,国が各都道府県と連携し,
『道路メンテナンス会議』を設置するなどの支援
方策が検討されている。
(3)
トンネル点検の課題
現行のトンネル点検の課題を以下に列記する。
①技術面,安全面の課題
・交通規制等を考慮した現地点検作業時間の短縮と作業性の向上。
・点検技術者の判断差の解消による変状展開図の精度の向上。
・点検員の経験や能力の個人差による人為的判断差の解消。
・経年変化の正確な評価・判定方法の確立。
・降雨などの気象条件に左右される漏水等の適切な評価・判定方法の確立。
・閉鎖空間での高所作業となることから点検作業員の安全性の向上。
②トンネル点検箇所の課題
道路トンネル定期点検要領は,覆工表面の点検に重点が置かれ,突発的崩壊の要
因となる覆工厚・背面空洞調査は,点検対象箇所に当初含まれていない。
打音検査で濁音・異音の以上が発見され,調査の要否が要の判定で初めて調査す
るため,実施されずに見過ごされる可能性がある。
トンネル定期点検要領から抜粋した「定期点検を対象としたメンテナンスサイク
ルの基本的なフロー」を次頁に示す。
2-3-10
第2編 道路分科会
3. 今後の道路トンネル点検のあり方について
資料№15-1 維持管理研究委員会報告書
覆工厚・背面空洞
は調査に該当
図 3.1.4
定期点検を対象としたメンテナンスサイクルの基本的なフロー 3)
※
2-3-11
一部加筆
第2編 道路分科会
3. 今後の道路トンネル点検のあり方について
資料№15-1 維持管理研究委員会報告書
3.2
道路トンネルの変状原因と変状事例
3.2.1
変状現象の分類
トンネルに発生する変状は多様であり,変状内容についてはひび割れや変形,漏水
など,発生する部位については覆工のみならず路盤,坑門,周辺地山などにも現れる。
変状が発生している対象ごとに変状現象を整理・分類すると表 3.2.1 に示すようにな
る。
変状現象は原因ごとに特徴があるのが一般的であり,変状現象を的確に把握するこ
とにより,適切な原因の推定,健全度の判定,対策工の選定が可能になる。
表 3.2.1
トンネルの変状現象の分類
対象
4)
変状現象
ひび割れ
ひび割れ
覆
工
目地切れ
食い違い
コールドジョイントの開口
覆工および補修材の劣化,剥離,剥落
変形,移動,沈下,側壁の転倒
漏水,つらら,側氷,土砂流入,石灰分等の溶出
路面等の隆起,沈下,ひび割れ,緑石の転倒(道路)
軌道狂い(鉄道)
路
盤
排水溝のひび割れ,変形
中央通路のひび割れ,変形(鉄道)
噴泥,沈砂,滞水,氷盤
ひび割れ
坑
門
食い違い
前傾,沈下,移動
地
3.2.2
山
沈下,陥没
滑動
変状原因の区分
トンネルに発生する変状原因について,ここでは既往文献
2) に基づき,以下の
2種
類に大別して整理する。
① 外因:トンネルの覆工が外的な影響を受けて変状するもの(外力,環境)
② 内因:トンネルの覆工材や覆工構造自体に内在する原因で変状するもの(材料,
施工,設計)
上記区分で変状原因を考える場合には,さらに自然的要因と人為的要因に細分して
要因を整理することとし,表 3.2.2 に変状原因の区分けを行った。
2-3-12
第2編 道路分科会
3. 今後の道路トンネル点検のあり方について
資料№15-1 維持管理研究委員会報告書
表 3.2.2
変状原因の区分
自然的要因
人為的要因
地形:偏圧,斜面クリープ,地すべり
外力
地質:塑性圧,緩み圧,地盤沈下,地耐力不足
近接施工
地下水:水圧,凍上圧
列車振動・空気圧変動
その他:地震,地殻変動
外因
経年:地山風化,中性化,材料劣化
環境
地下水:漏水,凍害(冬季の低温)
煙害,火災
その他:塩害,有害水
材料
内因
施工
覆工材料の不良
覆工コンクリート打込み時の気温,湿度
設計
所定の品質が確保されない施工
外因を考慮しない設計
特にトンネルの変状原因を考える場合,単独の原因で変状が顕著化することは希で
あり,各種の原因が複合して変状が発生する場合が多いことに留意する必要がある。例
えば,
「盤ぶくれ」現象が著しいトンネルの場合,塑性圧が作用するような地山状況(外
因-外力-自然的要因-地質)に加え,インバートが設置されていないこと(内因-人
為的要因-外因を考慮しない設計)が,変状を助長しているものと考えられる。
また一旦変状が発生すると,それが波及して別の原因を誘発し,さらに変状が進行
するといった悪循環に陥る事例も見られる。こうしたトンネルの変状原因の複合的な関
係を図 3.2.1 に示す。
図 3.2.1 において,例えば「荷重の増加」
(近接施工など)によって「トンネル変状」
(覆工の変形,ひび割れ発生)が生じ,ここで漏水が発生すると,冬期の低温下で「覆
工材料の劣化」
(凍害)が促進される。この結果,新たな「トンネル変状」
(覆工材料の
欠落)が生じると共に,欠落箇所での凍害がさらに進行して「覆工材料の劣化」が促進
される,といった悪循環が発生し,変状が進行していくことが考えられる。
図 3.2.1
トンネル変状原因の関係
2-3-13
第2編 道路分科会
3. 今後の道路トンネル点検のあり方について
資料№15-1 維持管理研究委員会報告書
3.2.3
(1)
変状の発生形態
外力
トンネル覆工が外力を受けて変状する場合,外力の作用方向によって覆工の変形や
ひび割れが多種多様の形態をとる。ここでは外力が作用する場合の代表的な覆工の変
状形態を整理して図 3.2.2 に示す。
図 3.2.2
外力に伴うトンネル覆工・路面の代表的な変状形態模式図
2-3-14
第2編 道路分科会
3. 今後の道路トンネル点検のあり方について
資料№15-1 維持管理研究委員会報告書
なお図 3.2.2 に示すトンネル坑内の変状の他に,坑門部では転倒,沈下,およびそ
れに伴うひび割れ発生といった変状が,外力の作用や地盤の支持力不足等によって発
生する。
また,近接施工に伴う既設トンネルへの影響は,図 3.2.3 に示すような現象が考え
られる。
図 3.2.3
近接施工に伴うトンネルへの影響
2-3-15
5)
第2編 道路分科会
3. 今後の道路トンネル点検のあり方について
資料№15-1 維持管理研究委員会報告書
(2)
材料,施工
覆工表面に見られる変状現象から,主に材料や施工に起因すると考えられる主な変
状原因を表 3.2.3,および表 3.2.4 に示す。
表 3.2.3
外力以外の覆工の主な変状と原因(1)
2-3-16
第2編 道路分科会
3. 今後の道路トンネル点検のあり方について
資料№15-1 維持管理研究委員会報告書
表 3.2.4
外力以外の覆工の主な変状と原因(2)
2-3-17
第2編 道路分科会
3. 今後の道路トンネル点検のあり方について
資料№15-1 維持管理研究委員会報告書
3.2.4
変状事例
表 3.2.2 に示した変状原因を細分化し表 3.2.5 に整理した。また同表に示す変状原
因毎の代表事例の写真
6)
を表 3.2.6~表 3.2.18 に示す。
表 3.2.5
変状原因の区分
(変状原因は文献
注1)トンネル上方の地山が突発的に崩落する現象も含む
2-3-18
7)
を加筆修正)
第2編 道路分科会
3. 今後の道路トンネル点検のあり方について
資料№15-1 維持管理研究委員会報告書
表 3.2.6
覆工の変状例(1)(主に外力に起因)
2-3-19
第2編 道路分科会
3. 今後の道路トンネル点検のあり方について
資料№15-1 維持管理研究委員会報告書
表 3.2.7
覆工の変状例(2)(主に外力に起因)
2-3-20
第2編 道路分科会
3. 今後の道路トンネル点検のあり方について
資料№15-1 維持管理研究委員会報告書
表 3.2.8
覆工の変状例(3)(主に外力に起因)
2-3-21
第2編 道路分科会
3. 今後の道路トンネル点検のあり方について
資料№15-1 維持管理研究委員会報告書
表 3.2.9
覆工の変状例(4)(主に外力に起因)
2-3-22
第2編 道路分科会
3. 今後の道路トンネル点検のあり方について
資料№15-1 維持管理研究委員会報告書
表 3.2.10
覆工の変状例(5)(主に環境他に起因)
2-3-23
第2編 道路分科会
3. 今後の道路トンネル点検のあり方について
資料№15-1 維持管理研究委員会報告書
表 3.2.11
覆工の変状例(6)(主に環境他に起因)
2-3-24
第2編 道路分科会
3. 今後の道路トンネル点検のあり方について
資料№15-1 維持管理研究委員会報告書
表 3.2.12
覆工の変状例(7)(主に材料・施工に起因)
2-3-25
第2編 道路分科会
3. 今後の道路トンネル点検のあり方について
資料№15-1 維持管理研究委員会報告書
表 3.2.13
覆工の変状例(8)(主に材料・施工に起因)
2-3-26
第2編 道路分科会
3. 今後の道路トンネル点検のあり方について
資料№15-1 維持管理研究委員会報告書
表 3.2.14
覆工の変状例(9)(主に材料・施工に起因)
2-3-27
第2編 道路分科会
3. 今後の道路トンネル点検のあり方について
資料№15-1 維持管理研究委員会報告書
表 3.2.15
覆工の変状例(10)(主に材料・施工に起因)
2-3-28
第2編 道路分科会
3. 今後の道路トンネル点検のあり方について
資料№15-1 維持管理研究委員会報告書
表 3.2.16
覆工の変状例(11)(主に設計に起因)
2-3-29
第2編 道路分科会
3. 今後の道路トンネル点検のあり方について
資料№15-1 維持管理研究委員会報告書
表 3.2.17
覆工の変状例(12)(補修材料の劣化)
2-3-30
第2編 道路分科会
3. 今後の道路トンネル点検のあり方について
資料№15-1 維持管理研究委員会報告書
表 3.2.18
覆工の変状例(13)(補修材料の劣化)
2-3-31
第2編 道路分科会
3. 今後の道路トンネル点検のあり方について
資料№15-1 維持管理研究委員会報告書
3.3
背面空洞の調査方法と充填対策
3.3.1
背面空洞対策に関する技術基準
道路トンネルの背面空洞の調査及び充填対策に関する技術基準は,現在,以下のも
のが定められている。
「トンネル補修工法に関する手引き(案)」
「矢板工法トンネルの背面空洞注入工
(1)
平成 19 年 3 月
中国地方整備局
設計・施工要領」平成 18 年 10 月
NEXCO
「トンネル補修工法に関する手引き(案)」の概要
中国地方整備局管内の道路トンネルの維持管理,特に,覆工背面空洞に起因する突
発性の崩壊に対する調査及び,その評価,対策工設計,対策工の施工を安全かつ合理
的に実施することを目的に現場での対応に即した手引書(案)として作成されたもの
である。
(2)
「矢板工法トンネルの背面空洞注入工
設計・施工要領」の概要
東日本高速道路株式会社,中日本高速道路及び西日本高速道路株式会社が管理する
トンネルのうち,矢板工法により建設されたトンネルの耐久性の回復もしくは向上を
目的として実施される,背面空洞注入工の調査・設計・施工に関する一般的事項およ
び特に配慮すべき事項について示したものである。
3.3.2
背面空洞の調査方法
背面空洞および覆工巻厚の調査方法は,局所破壊検査と非破壊検査に大別される。
局所破壊検査とは簡易ボーリングにより覆工コンクリートの一部を削孔し,採取し
たコアによる物性や劣化状況を調査するとともに削孔時のボーリング孔を利用して覆
工コンクリートや背面空洞の有無,背面地山の状況を観察・把握する調査方法である。
非破壊検査に使用されている手法として実用化されているのは電磁波法(地中レー
ダ)による覆工巻厚,空洞の有無や大きさの調査である。
(1)
「トンネル補修工法に関する手引き(案)」の調査方法
調査は,設計~施工の各段階に応じて実施するものとし,各段階における調査の目
的と調査項目を以下のとりまとめている。
第1段階~第3段階の位置づけは下記のとおりである。
・ 第1段階:対策の要否判定および調査・検討段階
・ 第2段階:対策工の詳細設計段階
・ 第3段階:対策工の施工段階
2-3-32
第2編 道路分科会
3. 今後の道路トンネル点検のあり方について
資料№15-1 維持管理研究委員会報告書
表 3.3.1
a)
各段階における調査内容(案) 8)
第 1 段階における調査
点検における調査結果を踏まえ,覆工巻厚の確認(巻厚不足箇所の抽出と巻厚の概
略把握)と背面空洞の有無の把握を目的とし,地中レーダー探査を主体とする。
①地中レーダー探査
地中レーダー探査は,矢板工法ではずべてのトンネルを対象とし,NATMでは
定
期点検により,A,B判定となったトンネルを対象とする。
地中レーダー探査の測線は,トンネル縦断方向に3測線(天端に1測線,両肩部に
2測線を標準とする。測線数は,矢板工法,NATM工法の区別および覆工ひび割れ
の分布状況から決定する。
図 3.3.1 地中レーダー探査の実施測線の例
8)
2-3-33
図 3.3.2 地中レーダー探査実施状況
8)
第2編 道路分科会
3. 今後の道路トンネル点検のあり方について
資料№15-1 維持管理研究委員会報告書
②簡易ボーリング調査
地中レーダー探査のキャリブレーションのため,簡易ボーリング調査を実施する
ことを基本とする。調査は地中レーダー探査に基づき,空洞が大きいと予想される
位置とし,1測線 100mあたりに,1箇所程度の実施を目安とする。
簡易ボーリング機を用いたボーリングを標準とし,ボーリング深さは覆工コンク
リート背面までとする。
第1段階における簡易ボーリング調査は,φ32mm程度を標準とする。ただし,
ジャンカ,濁音等により覆工の劣化が著しいと判断され,材料試験を実施する場合
には,コアボーリング(φ100mm)を採用するのが望ましい。
図 3.3.3 簡易ボーリング機の例
8)
図 3.3.4 簡易ボーリング調査の施工状況
8)
(道路トンネル維持管理便覧より)
b)
第2段階における調査
空洞規模の把握,覆工背面空洞充填対策の設計を目的として,簡易ボーリング調査
を主体とする。
第1段階の調査結果を踏まえて,1スパンに3箇所を目安とする。ただし,空洞深
さ 20cm 以上の空洞が確認された場合には,近傍に簡易ボーリングを追加し,空洞の分
布状況を確認するものとする。また,削孔箇所は,注入用の削孔に合わせた位置を標
準とする。
図 3.3.5
第2段階における簡易ボーリング調査の実施位置の例
2-3-34
8)
第2編 道路分科会
3. 今後の道路トンネル点検のあり方について
資料№15-1 維持管理研究委員会報告書
例えば,簡易ボーリング調査により,
深さ 20cm 以上の空洞が確 認された場
合には,空洞の分布状況の把握を目的
に追加ボーリングを実施することとす
る。
図 3.3.6
c)
追加簡易ボーリング調査の概念図
8)
第3段階における調査
注入管配置を目的とした注入孔を利用した調査であり,第2段階における空洞充填
量の設計および内面補強工の設置箇所等の照査を目的とする。
その他の背面空洞調査方法として,背面空洞の平面的な広がりが大きいと予測され
た場合には,空洞規模を把握するため,ボーリング孔内にファイバースコープまたは
ボアホールカメラを挿入して,覆工背面の空洞および地質状況を観察することが望ま
しいとされている。
(2)
「矢板工法トンネルの背面空洞注入工
「矢板工法トンネルの背面空洞注入工
設計・施工要領」の調査方法
設計・施工要領」には,参考資料として「ト
ンネル覆工背面の空洞探査法(PVMシステム)マニュアル」が取りまとめられてい
る。
PVM(Percussive-drilled Void Measuring)システムとは,トンネルの覆工コンク
リートと背面の地山を,回転・打撃式の油圧さく岩機を使って高速に削孔し,種々の
計測データをリアルタイムに採取,グラフ化・解析することにより,覆工コンクリー
ト背面の状況を高精度に調査できるシステムである。
図 3.3.7
PVMシステムの概要と機械データの事例
2-3-35
9)
第2編 道路分科会
3. 今後の道路トンネル点検のあり方について
資料№15-1 維持管理研究委員会報告書
図 3.3.8
調査機と施工風景(古河ロックドリル株式会社
カタログより)
覆工背面空洞を調査する既存の手法である「コアボーリング削孔による直接評価」
との比較表は以下のとおりである。
表 3.3.2
調査法の比較表
PVMシステム
調査方法
9)
コアボーリング
回転打撃で削孔し,この時
φ65mm のコアドリルにより
の機械データから覆工及び
削孔し,スケールで空洞高を
空洞を検知する
直接測定する。
調査速度
○
△
調査精度
○
○
機械データの解析・判読に
高所作業車上での作業となる
備
考
はトンネルごとのキャリブ
レーションが必要
従来の調査法と比較して,調査速度が速いため交通規制時間が短縮され,高所作業
がないため作業員の安全性が向上するという長所がある。
2-3-36
第2編 道路分科会
3. 今後の道路トンネル点検のあり方について
資料№15-1 維持管理研究委員会報告書
3.3.3
背面空洞の充填対策
(1)
裏込め注入工の必要性
a)
矢板工法で施工されたトンネルの特徴
現在のトンネル施工法であるNATM工法は,地山と吹付コンクリートが密着し,
覆工コンクリートは吹上げ方式で打設されるため,空洞が残りにくい。
一方,昭和40年代以前(高度成長期)に施工され,現在,維持補修の主な対象とな
っている矢板工法で施工されたトンネルは,施工上鋼製支保工の背面に矢板を配置す
るため,地山と矢板の間に隙間が生じる。また,覆工コンクリートは引抜き方式で打
設され,当時のコンクリート打設方法は万全でなく,天端で巻厚不足となりやすい。
よって,矢板工法で施工されたトンネルは,背面空洞の存在が懸念される。
現在のトンネル施工法
昭和50年代から普及
昔のトンネル施工法
昭和40年代以前(高度成長期)
NATM工法 矢板工法(在来工法)
吹付コンクリート
ロックボルト
矢板
鋼製支保工
覆工コンクリート
図 3.3.9
b)
矢板工法トンネルの特徴
背面空洞に起因するトンネルの変状
背面空洞があっても覆工厚さが十分であれば,覆工に変状となって現れないことも
あるが,一般には覆工コンクリートには次のような変状が懸念される。
図 3.3.10
背面空洞に起因するトンネルの変状
2-3-37
第2編 道路分科会
3. 今後の道路トンネル点検のあり方について
資料№15-1 維持管理研究委員会報告書
背面空洞に起因する突発的崩壊の事例を以下に紹介する。
図 3.3.11
c)
背面空洞に起因する突発的崩壊の事例
裏込め注入工の目的と効果
以上のとおり,覆工背面空洞の存在はトンネル構造に種々の悪影響を及ぼす。した
がって,覆工と地山を密着させ,覆工体に均等な荷重が作用すようにするとともに,
地盤反力を十分期待できるようにすることが肝要である。
裏込め注入工の目的を以下に示す。
①
覆工が外力に対抗するための反力をとれる
ようにする。
②
作用する土圧を分散することにより一様な
荷重を覆工に作用させる。
(点接触の防止,偏土圧の防止)
図 3.3.12 裏込め注入効果
③
空洞を安定化させる。
④
漏水による覆工の劣化を防止する。
⑤
漏水を止め,通行車両の安全を確保する。
このように,裏込め注入工は,覆工コンクリートや地山の劣化を防止するだけでは
なく,車両等の通行の安全性を確保するなど,トンネル構造の品質を向上させる基本
的で有効な対策工である。
d)
対策工(裏込め注入工)の要否判定
「トンネル補修工法に関する手引き(案)」では,背面空洞の分布状況(平面的広が
りがある場合,局所的な分布の場合)に対し,覆工厚さと背面空洞の大きさに応じて
背面空洞対策の要否判定を細分化している。次頁に「トンネル補修工法に関する手引
き(案)」から抜粋した「覆工背面対策の要否判定基準フロー(案)」を示す。
判定基準では 10cm 以下の空洞は対象とされていないが,1cm の隙間でも,ある一
定の広がりで存在すると構造的に地山の反力が期待できなくなるため,ひび割れが進
行したり,経年の劣化が進む可能性がある。
この要否判定は,あくまで目安で,中国地方と地質条件が異なる全トンネルに適用
するのは危険であり,地質条件,構造条件,変状の原因・程度・進行状況等を勘案し,
トンネルごとに個別で慎重な判断が必要である。
2-3-38
第2編 道路分科会
3. 今後の道路トンネル点検のあり方について
資料№15-1 維持管理研究委員会報告書
図 3.3.13
覆工背面対策の要否判定基準フロー(案) 8)
2-3-39
第2編 道路分科会
3. 今後の道路トンネル点検のあり方について
資料№15-1 維持管理研究委員会報告書
(2)
裏込め注入工の注入材
a)
注入材の分類
注入材は,セメント系と非セメント系に大別され,下図のとおり分類される。
エア系
エアモルタル,エアミルク
非ゲル系
非エア系
モルタル,ベントナイトモルタル
セメント系
エア系
可塑性エアモルタル
ゲル系
(可塑性)
非エア系
発泡ウレタン
非セメント系
図 3.3.14
b)
ポリマーセメント
裏込め注入材の分類
「トンネル補修工法に関する手引き(案)」による注入材の選定
「トンネル補修工法に関する手引き(案)」では,裏込め注入材の材料特性と適用
性による選定の目安を次頁の表のとおり示している。
この表は「道路トンネル変状対策工マニュアル(案)」に 40 倍発泡ウレタン系材
料を追加したもので,注入材の選定にあたっては,
「道路トンネル変状対策工マニュ
アル(案)」に準拠し,以下に示す注入箇所への適用性,施工性を考慮する。
①
覆工への影響(覆工巻厚が不足する場合)
②
注入箇所の湧水状況
③
空洞細部への充填性
④
坑内の施工ヤードの状況(片側通行規制で実施されることが多いため,内空
断面の小さなトンネルでは,搬入機材に制約を受ける場合もある)
⑤
坑内の施工ヤードの確保(材料の生コン取りができない場合)
⑥
環境に与える影響(主に坑内排水の水質に与える影響が問題となる場合)
施工実績は,これまで可塑性エアモルタルが多く採用されたが,近年発泡倍率 40
倍の発泡ウレタンが開発・実用化され,簡便な設備で,注入材の逸走が少なく強度
発現が速いことから施工期間の短縮が可能となるため,採用実績が増加している。
2-3-40
第2編 道路分科会
3. 今後の道路トンネル点検のあり方について
資料№15-1 維持管理研究委員会報告書
表 3.3.3
裏込め注入材の材料特性と選定の目安
2-3-41
8)
第2編 道路分科会
3. 今後の道路トンネル点検のあり方について
資料№15-1 維持管理研究委員会報告書
c) 「矢板工法トンネルの背面空洞注入工 設計・施工要領」による注入材の選定
「矢板工法トンネルの背面空洞注入工
設計・施工要領」では,下図のとおり注
入材選定フローを示しており,また,可塑状注入材は TYPE1~TYPE6 に分類され,以
下に示す条件を整理した上で,安全性,施工性,経済性の観点から最も合理的な材
料を選定する。
①
充填性,流動性
②
非漏出性
③
水中分離抵抗性
④
非収縮性
⑤
硬化時間(凝結時間)
⑥
強度
⑦
比重
図 3.3.15
表 3.3.4
注入材選定フロー 9)
背面空洞注入用材料比較表
2-3-42
9)
第2編 道路分科会
3. 今後の道路トンネル点検のあり方について
資料№15-1 維持管理研究委員会報告書
3.4
道路トンネル点検における新技術・新工法の紹介
3.4.1
新しいトンネルの点検技術
本節では,
「新型走行型画像計測システム(MIMM-R)」
(株式会社パシフィックコンサ
ルタンツ・三菱電機株式会社・株式会社ウォールナット),「トンネル覆工レーダー探
査装置」(株式会社メンテック),「レーザーリモートセンシングを用いたコンクリート
剥離検知装置」(JR西日本)を新しいトンネルの点検技術として以下に紹介する。
また,国土交通省が次世代社会インフラ用ロボット現場検証対象技術に決定した技
術から,トンネル維持管理に役立つ技術 16 件・10 者を紹介する。
3.4.2
新型走行型画像計測システム
新型走行型画像計測システム(MIMM-R)は,交通規制が不要で,高速走行しなが
らトンネル点検が可能な新技術で,デジタルカメラと 3D レーザースキャナーを搭載
した,前機種の「MIMM」の車体の上に電磁波レーダーを搭載したシステムであり,
以下の機能を備えている。
・トンネルレーザ計測及び変形解析:断面の変形(覆工の変形,段差等)の検出
・トンネル画像計測及び損傷度評価:覆工コンクリート表面の画像撮影と損傷把握
・トンネルレーダ計測及び空洞評価:非接触型レーダによる巻厚,背面空洞の探査
MIMM からの改良点は,走行型非接触レーダーにより,速度 50~70 km/h で走行
しながら,巻厚,背面空洞を探査できる点である。探査可能な深度は巻厚で変化し,
40 cm~80cm 程度であり,覆工が薄く,しかも空洞がある危険箇所を迅速に検出する
ことを目的にしている。
図 3.4.1
MIMM-R 概要図
2-3-43
第2編 道路分科会
3. 今後の道路トンネル点検のあり方について
資料№15-1 維持管理研究委員会報告書
3.4.3
(1)
トンネル覆工レーダー探査装置
トンネル覆工レーダー探査装置の概要
トンネル覆工レーダー探査装置(【NETIS】KT-980444-A)は,トンネル覆工表面か
ら電磁波探査装置を利用して非破壊で覆工厚・覆工内部状況及び覆工背面状況(空洞
有無等)を把握する装置で,従来の「点」情報から,
「線」情報として連続的に覆工厚
及び覆工背面状況(空洞有無等)を把握することができる。
従来,トンネル覆工厚さと覆工背面空洞等はコアボーリングにより覆工に削孔して
目視確認,実測計測する方法で「点」情報として調査されている。非破壊で探査測線
上連続的に探査把握することにより調査速度が速く(1/5 程度)なり,探査測線上を
連続的に覆工厚・覆工内部状況及び覆工背面状況(空洞有無等)を把握できるので,
トンネル健全度評価に有効である。
(2)
トンネル覆工レーダー探査装置の特徴
トンネル覆工レーダー探査装置の特徴を以下に示す。
・設定した測線上のトンネル覆工厚さ及び,その背面空洞及び崩積土状況を連続
して把握できる。
・供用 2 車線道路トンネルでは,片側交互通行規制で探査が可能。
・在来工法及び NATM 工法で施行されたトンネルの覆工厚・背面状況を連続的に
高精度で把握できる。
・覆工内部のジャンか部検出ができる。
・支保工の位置・間隔が把握できる。
・補強鉄筋区間及び鉄筋被り厚が把握できる。
・探査速度は,約 1km/h 程度である。
・適応覆工厚は,アンテナ中心周波数 400MHz で約 80cm程度までである。
・探査結果は,デジタルデーターとして,現地で画像確認できる。
・専用解析ソフトが装備されている。
図 3.4.2 トンネル覆工調査状況 10)
図 3.4.3 調査用アンテナ(中心周波数 500MHz) 10)
2-3-44
第2編 道路分科会
3. 今後の道路トンネル点検のあり方について
資料№15-1 維持管理研究委員会報告書
(3)
成果品例
トンネルの健全度を評価する場合,当初設計巻厚に対しての現状覆工厚の把握が必
要であり,健全度評価の重要な 1 項目である。また,地山の覆工耐荷力分散のため,
覆工背面空洞の有無と空洞深把握も重要な評価項目である。
下記に在来工法で施工されたトンネルにて電磁波レーダー探査(アンテナ中心周波
数 400MHz)を 3 測線(トンネルセンターから 0.4mと左右 1.5m)で探査を実施し,
解析した縦断図例を示す。また削孔結果も併記した。
その他の活用としては,覆工表面に発生している変状発生要因の推測と,補修・補
強設計を検討する際の資料として用いられている。また,削孔して収集されたコンク
リート試料はコンクリート一軸圧縮強度及び中性化試験を実施し,トンネル健全度評
価の 1 項目として用いられている。
2-3-45
第2編 道路分科会
3. 今後の道路トンネル点検のあり方について
資料№15-1 維持管理研究委員会報告書
3.4.4
レーザーリモートセンシングを用いたコンクリート剥離検知装置
(鉄道トンネルの検査方法であるが道路トンネルにも適用可能な新技術)
トンネル覆工コンクリートからの剥離を防止するため,適切な検査・管理手法が求
められるのは,道路トンネルも鉄道トンネルも同様である。そこで,鉄道トンネルの検
査方法ではあるが道路トンネルにも適応可能な新技術として,JR 西日本が開発を進め
ている「レーザーを用いた覆工コンクリート剥離検知装置」の概要及び実験結果を以下
に紹介する。
(1)
レーザーを用いた覆工コンクリート剥離検知装置の概要
レーザーを用いた覆工コンクリート剥離検知装置は,レーザーリモートセンシング
技術を用いて遠隔・非接触でトンネル覆工コンクリートの剥離を検知する手法である。
従来,打音検査法はハンマーでコンクリート表面を打撃し,振動させた状態を「音」
として人間が聴き取り判断している。
レーザーリモートセンシング法はエネルギーを持った加振レーザーによりコンクリ
ート表面を振動させ,その振動波を検出用レーザーで読み取り,トンネル内部の変状を
検知する仕組みであり,ハンマーでたたいた音によって判別する打音検査に比べ,定量
的な評価ができる。
図 3.4.4
レーザーリモートセンシングを用いたコンクリート剥離検知装置の概要 11)
2-3-46
第2編 道路分科会
3. 今後の道路トンネル点検のあり方について
資料№15-1 維持管理研究委員会報告書
(2)
実験結果
レーザー照射で得られた実験結果の一例を図 3.4.6 に示す。この不健全箇所(変状)
は 2×1m 2 程度の浮き箇所である。図 3.4.6 中の“赤丸”,“黄丸”及び“緑丸”は,レ
ーザーでコンクリートを振動させた際の表面振動振幅の大きさを3段階で表している。
“赤丸”は非常に大きい振幅(不健全箇所),“黄丸”は中程度(不健全箇所),および
“緑丸”はほとんど振動しない箇所(健全箇所)である。検知位置が 100mm ずれると
振幅が異なる。コンクリ―ト表面は複雑な形状をしており,ある部分では大きく剥離し
て振幅が大きい一方,隣接箇所は密着部分で振幅が小さいなど,複雑な変状形態である
と思われる。
図 3.4.5
コンクリート剥離検知実験
11)
図 3.4.6
コンクリート剥離検知実験
11)
なお,本技術は実用化に向けて,継続的に開発中である。(2014 年 11 月現在)
3.4.5
次世代社会インフラ用ロボット現場検証対象技術
国土交通省は,平成 26 年 4 月 9 日~5 月 28 日に,維持管理に役立つ技術として,
「現
場検証・評価」の対象とする「ロボット技術・ロボットシステム」を公募し,「次世代
社会インフラ用ロボット現場検証委員会トンネル維持管理部会」において基本要件の確
認等を行い,「現場検証対象技術として決定」した。その対象技術を以下に紹介する。
2-3-47
第2編 道路分科会
3. 今後の道路トンネル点検のあり方について
次世代社会インフラ用ロボット
トンネル維持管理
現場検証対象技術一覧
12)
資料№15-1 維持管理研究委員会報告書
2-3-48
第2編 道路分科会
3. 今後の道路トンネル点検のあり方について
資料№15-1 維持管理研究委員会報告書
技術概要(No.1) 12)
2-3-49
第2編 道路分科会
3. 今後の道路トンネル点検のあり方について
資料№15-1 維持管理研究委員会報告書
技術概要(No.2) 12)
2-3-50
第2編 道路分科会
3. 今後の道路トンネル点検のあり方について
資料№15-1 維持管理研究委員会報告書
技術概要(No.3) 12)
2-3-51
第2編 道路分科会
3. 今後の道路トンネル点検のあり方について
資料№15-1 維持管理研究委員会報告書
技術概要(No.4) 12)
2-3-52
第2編 道路分科会
3. 今後の道路トンネル点検のあり方について
資料№15-1 維持管理研究委員会報告書
技術概要(No.5) 12)
2-3-53
第2編 道路分科会
3. 今後の道路トンネル点検のあり方について
資料№15-1 維持管理研究委員会報告書
技術概要(No.6) 12)
2-3-54
第2編 道路分科会
3. 今後の道路トンネル点検のあり方について
資料№15-1 維持管理研究委員会報告書
技術概要(No.7) 12)
2-3-55
第2編 道路分科会
3. 今後の道路トンネル点検のあり方について
資料№15-1 維持管理研究委員会報告書
技術概要(No.8) 12)
2-3-56
第2編 道路分科会
3. 今後の道路トンネル点検のあり方について
資料№15-1 維持管理研究委員会報告書
技術概要(No.9) 12)
2-3-57
第2編 道路分科会
3. 今後の道路トンネル点検のあり方について
資料№15-1 維持管理研究委員会報告書
技術概要(No.10) 12)
2-3-58
第2編 道路分科会
3. 今後の道路トンネル点検のあり方について
資料№15-1 維持管理研究委員会報告書
3.5
まとめと今後の課題
笹子トンネル事故後,道路法改正,点検要領の改訂により,全道路管理者に 5 年に
1 回近接目視によるトンネル点検の義務が明確化された。これによって道路管理者に
よらず,均一な水準でトンネル点検が実施されることになり,道路トンネル維持管理
の方向性は示された。
しかしながら,新要領による点検義務を守るには,継続的に安定した予算の確保が
必須であり,これまでの予算体系を抜本的に見直す必要がある。
また,予算不足・人不足・技術力不足の課題を抱える市町村への支援や,点検要領
改訂後も点検対象は主に覆工表面の変状に着目されており,トンネルの(突発的)崩落
の要因となり得る背面空洞の点検は標準的には実施されな等の課題がある。高度成長
期(昭和 40 年代)に施工されたトンネルは,覆工背面に空洞が生じやすい矢板工法
で施工され,背面空洞には突発的崩壊の危険が潜んでおり,可能性があるのは,全国
のトンネルの40%その数およそ4,000箇所となる。
以上を踏まえて,これまでのトンネル点検予算の計上の仕方には抜本的な見直しが
必要であり,特に矢板工法で施工されたトンネルは,早急に背面空洞の調査を実施し
て空洞を把握し,充填する必要があると考え,以下のことを提言する。
【提言①】トンネル点検予算体系の抜本的な見直し
これまでは,予算がつけば点検を実施し,予算がつかないと点検をやっていないの
が実情であった。今後新点検要領に準じて,5 年に 1 回近接目視でトンネル点検を実
施していくには,毎年予算が変動しては困り,トンネルの数に見合った予算を固定す
るべきである。
【提言②】矢板工法のトンネルは点検時に背面空洞調査を必須とする。
「トンネル補修工法に関する手引き(案)
平成 19 年 3 月
(中国地方整備局)」では,
覆工巻厚の確認と背面空洞の有無の把握を目的とした地中レーダー探査を矢板工法で
は全てのトンネルで実施する規定で,地中レーダー探査の測線は,トンネル縦断方向
に3測線(天端に1測線,両肩部に2測線)を標準としている。
全国の道路トンネル点検において,この基準を適用することを提案する。
問題となるのは矢板工法であるが,NATM工法のトンネルにも背面空洞が存在す
る場合があり,近接目視,打音検査で変状が確認されれば,背面空洞調査を実施する
べきである。
施工記録等から判断して活断層や破砕帯など地質が悪い箇所は,部分的でも優先し
て背面空洞調査,裏込注入するべきである。
また,背面空洞調査には通常の点検よりも費用がかかるため,背面空洞調査が必要
なトンネルは,調査費用を当初から見込んだ予算を確保し,業務発注することを提案
する。
2-3-59
第2編 道路分科会
3. 今後の道路トンネル点検のあり方について
資料№15-1 維持管理研究委員会報告書
【提言③】背面空洞調査と充填対策の指針整備
NEXCO 管理のトンネルには「矢板工法トンネルの背面空洞注入工 設計・施工要領」
が策定されているが,全道路トンネルを対象とし,最新の技術動向を反映した背面空
洞調査と充填対策の指針整備を提案する。また,制定後かなりの時間を経たトンネル
維持管理に関する指針等は,新たな技術や知見を反映して改訂すべきと考える。
【提言④】交通規制とコスト低減に帰する背面空洞調査・裏込注入の新技術活用
トンネルは閉鎖的な空間であるため,調査・補修工事では交通規制が発生し,社会
的影響が大きい。調査では,交通規制なしで背面空洞が調査可能な新技術や,調査速
度が速く,規制時間を短縮可能な新技術が開発され,裏込注入では,設備が小型化し,
硬化時間を短縮した新技術が開発されており,活用できる可能性がある。
なお,本報告書で紹介した国土交通省の次世代社会インフラ用ロボット「現場検証
対象技術」は,報告書作成時点では検証実験中で,有効性,信頼性が確認できている
わけではないので,今後の検証結果報告を参考にして,活用の可否を判断する必要が
ある。
【提言⑤】背面空洞に潜む危険を共通認識する(発注者,受注者)
トンネル点検で背面空洞を見過ごさないため,背面空洞に潜む危険性を発注者,受
注者とも認識しておくことが必要である。
参考文献
1)
国土交通省:第4回
国道(国管理)の維持管理等に関する検討会,配布資料6,
道路構造物の修繕及び更新について,2013.1.
2)
国土交通省:平成 14 年度道路政策のポイント,2002
3)
国土交通省:道路トンネル定期点検要領,2014.6.
4)
土木学会:山岳トンネル覆工の現状と対策,一部加筆修正,p63,2002.9.
5)
鉄道総合技術研究所:既設トンネル近接施工対策マニュアル,pp6-7,1995.1.
6) 土木学会:山岳トンネル覆工の現状と対策,pp72-84,2002.9.
7)
鉄道総合技術研究所:トンネル保守マニュアル(案),pp87-88,2000.5.
8)
国土交通省 中国地方整備局:トンネル補修工法に関する手引き(案),2007.3.
9)
NEXCO:矢板工法トンネルの背面空洞注入工 設計・施工要領,2006.10.
10) 国土交通省「NETIS
新技術情報提供システム」:
<http://www.netis.mlit.go.jp/NetisRev/Search/NtDetail1.asp?REG_NO=KT-980444
&TabType=&nt>,2014.8.28.アクセス
11) JR 西日本:技術の泉 Vol.28,Invitation To Railway Technology(技術開発件名の
紹介),レーザーリモートセンシング装置を用いたコンクリート剥離検知試験,
<http://www.westjr.co.jp/company/action/technology/technical/pdf/28_4.pdf>,
2014.8.28 アクセス
12) 国土交通省
報道発表資料:平成 26 年 7 月 3 日 総合政策局 公共事業企画調整課,
<http://www.mlit.go.jp/common/001046751.pdf>,2014.8.28.アクセス
2-3-60