委員提出資料

参考資料
委員提出資料
目
次
○
柏女委員提出資料
・・・P.1
○
駒崎委員提出資料
・・・P.3
第 27 回子ども・子育て会議提出意見
2016.1.26 淑徳大学総合福祉学部 柏女
霊峰
1.みなし保育士の導入に関する省令改正について
児童福祉施設の設備及び運営に関する基準及び家庭的保育事業等の設備及び運営に関す
る基準の一部を改正する省令(案)に対するパプコメが 1 月 11 日に終わったが、これについ
て質問と意見を述べたい。
(1)省令改正に関する疑問
省令改正では 3 つの改正が予定されているが、このうち②と③、つまり、幼稚園教諭及び
小学校教諭等の活用で、基準上必要とされる人数の 3 分の 1 を保育士からこれらの者に代
え、かつ、③11 時間開所を 8 時間勤務で埋める際に必要となる保育士(具体的には、最大 1
人 3 時間×保育士数分の保育士)や研修代替保育士等のすべてを子育て支援員等をもって代
えるとすると、結果的に、保育士資格保持者は、場合によって保育所で必要とされる職員の
半数強程度にしかならない事態も想定されるのではないか。また、保育士のキャリアパスや
キャリアラダーが確立されていない現状では、こうして採用されたいわゆるみなし保育士
がいわゆる担任となったりすることもありうることになるのではないか。また、子育て支援
員等が一定人数を占めることを認めるということは、形を変えた准保育士制度導入に道を
開くことにつながるのではないか。
次に、
「受け皿がひと段落するまでの間」というのは、どのくらいの年数を考えているの
か。さらに、このことが恒常化する可能性はないのか。なお、こうしたみなし職員の待遇に
関して、保育士との公定価格上の差を設けるのか否か、こうした疑問がある。
(2)この改正によってもたらされる懸念
①保育士の専門性に関する懸念
保育士の業務を幼稚園教諭や小学校教諭、子育て支援員等が代行できるということは、保
育士の専門性をどのようにとらえているのか疑問無しとしない。保育士課程学生から言わ
せれば、
「私たちは、借金をして(4 割が貸与奨学生)4 年間、400 万円かけて保育士資格を取
得している。それは、保育所で保育士として勤務したいから。なのに、子育て支援員(地域
保育コース)はそれに比べてわずかな期間とお金で取得でき、それで保育所勤務ができるこ
ととなる。これっていったいどういうこと。保育士はだれでもできるということ?」と嘆く
ことだろう。保育士の専門性と保育士希望者の熱意をなし崩しにする政策と思う。
また、保育士と子育て支援員等の待遇に公定価格上の差を設けないことは、子育て支援員
と保育士の給与を同一に考えることにつながる。こうした事態は、保育士の専門性をないが
しろにするものであり、保育士養成制度そのものを否定する政策といってよい。
保育士は養護と教育が一体となった保育と保育相談支援の知識・技術を用いて保護者支
援を行う専門職であり、その専門職と子育て支援員等が同一労働・同一賃金であるならば、
保育士養成などにお金をかける必要はないのではないか。地域で子育て支援に携わること
1
と子どもの発達を保障するための体系的な保育(養護と教育)を行い、子どもの人権を擁護す
る専門職の働きは明確に異なることを考慮すべきである。さらに、この改正を同じ児童福祉
施設である幼保連携型認定こども園にも適用する予定があるとすれば、幼児期の教育の質、
保育の質の向上そのものの否定にもつながりかねず、新制度導入の目的とも矛盾すること
となる。
②保育士確保に対するアクセルとブレーキ
政府は、保育士不足解消のためさまざまな施策を打ち出している。根本課題は待遇の向上
にあることは言うまでもなく、そこも含めて保育の質の向上にも取り組んでいる。しかし、
その成果を待つことなく、一方で、それを台無しにしかねない政策を同時に進めようとして
いる。保育士希望者の熱意に水をかける行為ともいえる。アクセルとブレーキを同時にかけ
るような政策である。
③実施するのであれば地域と期限の限定を
こうした観点を差し引いても緊急やむを得ざる措置として実施するというのであれば、
少なくとも待機児童の多い地域に限り、かつ、期限を区切って実施すべきである。
2.制度の柔軟な運営の工夫について
地域によっては、3 号認定こどもが 3 歳以上になると、2 号認定こどもになるのではなく
1 号認定こどもになる場合もあると聞く。幼稚園や保育所等の社会資源の整備状況、地域の
特性によって、認定の動きは多様であるようだ。介護保険制度は白地に絵をかくことができ
たが、子ども・子育て支援制度は、すでに半世紀以上も運営されて多様な実態が地域で展開
されている上に成立させる制度である。したがって、混乱なく制度を進めていくためには、
比較的柔軟な制度設計とする必要があるのではないか。
地域の実情をつまびらかにし、たとえば、1 号認定こどもと 2 号認定こどもとを合わせ
た定員設定も可能とするような制度設計などが工夫されることも必要ではないか。地域で
起こっているさまざまな課題の実情を調査し、柔軟な制度設計を進めることを提案したい。
以上
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子ども・子育て会議 御中
2016 年 1 月 26 日
意見書
【自治体に連携園の確保を促してください】
・ 全国小規模保育協議会が経営実態調査を行ったところ、まだ連携施設を確保してい
ないという小規模認可保育所は32%にのぼり、経営上の課題として「3歳児以降
の受け皿としての連携園」をあげた施設は50%にものぼりました。
・ これは、近隣の認可保育所が連携園について十分な認識を持っていないと同時に、
何より自治体が連携園の斡旋などに積極的ではないことが原因です
・ 小規模認可保育所は家庭的保育事業等の設備及び運営に関する基準(平成二十六年
厚生労働省令第六十一号)の6条において、連携園を確保しなければならない、と
されています。
・ 一方で、内閣府は「家庭的保育事業等の設備及び運営に関する基準の運用上の取扱
いについて」
http://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/law/kodomo3houan/pdf/s-katei-t.pdf
という通知において (P4の該当記載)
連携施設については、認可施設に限ることとしたうえで、受け皿対象となる施設に
関するルールについて、地域における必要性に応じ、市町村がルールを定めること
とし、 当該ルールに基づき、各事業者が確保することを基本とした上で、公立施
設を連携 施設として設定することや、当該事業所に連携施設をあっせん・調整す
るなど、 市町村が積極的な関与・役割を果たすことが望ましい。
・
・
・
・
と言っています
にもかかわらず、自治体側はその連携施設確保について積極的ではなく、小規模認
可保育所は連携園をいまだ得られずにいます。
そして連携することができなければ、非連携ということで減算の対象になるのです。
これは運営において大きなダメージとなります
全国小規模保育協議会としては、自治体側が積極的に連携園の確保を行うことを義
務化して頂きたいこと。また連携できなかった場合の減算をやめるように要望をい
たします 。
加えて、受け皿がなかったことにより、特例給付を用いて3歳児を預かり続けた場
合において、0〜1歳児の定員数を1減らして、3歳児の公定価格のみの収入だと
非常に財務的なインパクトが大きくなるので、0〜1歳児の定員数を減らさず、保
育者数も規定保育者数で済む弾力化措置を取れるように制度化してください。
【病児保育の施設型偏重主義をやめてください】
・ 安倍総理は施政方針演説で病児保育の需実を約束し、厚労省の病児保育の強化策を
打ち出しました
・ しかしそれらは、
「施設を造る時の補助」
「施設に看護師を置かなくても良い」等の、
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施設に偏重した政策のままです
病児対応型の病児保育施設においては、医院併設型が 84%を占めます。これは、病
児保育施設は医院の数によってキャップをはめられることを意味しています
小児科医の数だけしか病児保育施設が造れないとしたら、数が増えないのは当たり
前です
一方で、訪問型病児保育は事実上、なんらの政策的支援を受けていません
しかし例えばフローレンスの1日のお預かりの平均は40件近く、これは1団体で
公的病児保育施設の20施設分のニーズに対応していることになります。
定員が 4 人と限定されている施設型よりも、訪問型は対応可能人数が多く、より広
範囲でお預かりが可能となるため、効率的にニーズに対応できると言っていいでし
ょう
東京においては、渋谷区、北区、文京区、足立区、千代田区などが病児保育の利用
者補助(バウチャー)を行っている実績もあります
国は訪問型病児保育を無視し続けるのではなく、施設型に拘泥して成果を出せなか
った10数年を振り返り、訪問型も含めた多角的な病児保育政策を創っていただけ
るよう要望します
【警察と児童相談所で情報共有を義務付けてください】
・
先日、狭山市で3歳の羽月ちゃんが虐待によって命を落としました。
・ <狭山女児死亡>母ら LINE で虐待やりとりか「帰ったらやろうね」 Yahoo!ニュース http://bit.ly/1Oj6MJV
・ 3 歳娘に「正座」強要…元同僚が激白、目にあざも(テレビ朝日系(ANN))
- Yahoo!ニュース http://bit.ly/1Oj73wG
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悲しむべき本件を、再発防止に活かさなくては、彼女の死は全くの無駄になるでし
ょう。
羽月ちゃんの虐待死に至るタイムラインは以下のとおり
・ 2012 年 8 月 誕生
・ 2012 年 12 月 4 ヶ月検診受診せず
・ 2013 年 4 月 (受診がなかったので)家庭訪問
・ 2014 年 2 月 1 歳 6 ヶ月検診を受診せず
・ 2014 年 7 月 (受診がなかったので)家庭訪問
・ 2015 年 6 月29 日夜 近所から警察に通報あり
(警察は児相に通告せず)
・ 2015 年 7 月19 日夜 近所から警察に通報あり
(警察は児相に通告せず)
・ 2015 年 6 月〜7 月 保育所に 16 日だけ通所
・ 2015 年 秋からエスカレート
・ 2015 年末 マンション隣の青果店店主「泣き続ける子どもの声が部屋か
ら聞こえてきた。二時間以上泣いていた」
・ 2015 年 11 月 3 歳児検診を受診せず
・ 2016 年 1 月 虐待死
これを見ると、警察への通報が 2 度もありました。しかし、警察は「外傷がなかっ
たため」
、児童相談所には通告しなかったのです。
ここでもし、
「
(ここまでには 2 度とも)検診に行っていない」という情報と、
「短
期間に 2 度虐待的な状況があった」という情報が、警察と児相の間で共有され、足
し合わされていたら命を救えたかもしれません。
児童虐待防止法( http://bit.ly/230vB56 )の10条では、警察への援助要請につ
いて規定されています。しかし、現場の実態としては、児相と警察の連携は進んで
いません。
こうした文化的な部分に加えて、現在の児童虐待防止法では、警察が積極的に児相
に情報提供をしたり、その逆で児相が警察に情報提供することも規定していないの
と、児相と情報共有し、パトロールなどのルートの中で家庭訪問をしていくことも
定められていないのです。
児童虐待防止法を改正に合わせて、児相と警察の連携を強化させる。情報共有と、
家庭訪問の共同実施をすることを条文に入れていただくことを提案いたします
【虐待通報ダイヤル「189」が7割途中で切られている問題】
・ 先日、福岡県内の、虐待通報ダイヤルである189にかけた人のうち、途中で切っ
てしまった人が 7 割にものぼることが西日本新聞の報道によって分かりました
参照:http://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/210952
・ せっかく虐待通報をし、それが子どもたちの命を救うかもしれないのに、7 割の機
会を失っている状況だということは、愕然とするものです
・ 要因としては、189が有料ダイヤルであるため、長く待たされると料金を気にし
て切ってしまうことが考えられます
・ また、アナウンスの音声が、単に「プルルル」というものなのか、
「こちらは虐待
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・
ダイヤルです。あなたの通報が命を救います。匿名でも通報は可能です。以下の情
報をメモし、お待ちください。子どもの異変に気付いた場所、状況・・・」等の音
声ガイダンスなのかによっても、切る率は変わってくるでしょう
いずれにせよ、国がしっかりと調査をして、途中で失われるコール数を減らしてい
くことが、虐待で失われる命を減らしていくことに繋がるので、至急調査を行って
ください
【ひとり親の児童扶養手当のまとめ払いをやめてください】
(朝日新聞より)
ひとり親の 54%が貧困になっているという現状。それは6人に1人の子どもが貧困
状態に陥っていることの、要因の一つでもあります
・ そしてひとり親を貧困にならしめる要因の一つが、
「児童扶養手当のまとめ払い」
です
・ 上記のグラフは、銚子市で公営住宅退去の日に、娘を殺害したシングルマザーの家
計調査です。キャッシュフローが厳しく、家賃を滞納し、それをまかなうために闇
金から金を借り、その利子が積み上がっていく、という負のスパイラルが見てとれ
るでしょう
・ キャッシュフローが均一ではなく、偏りを生じさせている理由が、児童扶養手当が
4ヶ月に1回のまとめ払いであることです。
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・
一般人であっても、
「給与の 3 分の1は4ヶ月ごとに支払います」と言われたら、
やりくりの難しさから大いに困難な状態になるでしょう。貧困状態にあり、日々の
生活に追われている世帯であれば、なおさらです
これは行動経済学的にも実証されていて、途上国の貧困層向けの開発援助の世界で
は「いかに収入のムラを作らないようにするか」が決定的に重要だと言います(「欠
乏の経済学」より)
・
生活保護が1ヶ月に1回、年金でも2ヶ月に1回にも関わらず、経済状態の厳しい
ひとり親向け児童扶養手当が4ヶ月に1回なのは、全く非合理的であること甚だし
いと思います
・ 児童福祉法改正に合わせ、是非とも毎月支給に切り替えてください
以上
NPO 法人 全国小規模保育協議会 理事長
(財)日本病児保育協会 理事長
認定 NPO 法人フローレンス 代表理事
駒崎弘樹
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