JCR News Release

15-I-0068
2016 年 1 月 29 日
株式会社日本格付研究所(JCR)は、以下のとおり信用格付の結果を公表します。
アンデス開発公社
【据置】
長期発行体格付
格付の見通し
債券格付
(証券コード:−)
AA
安定的
AA
■格付事由
(1) アンデス開発公社(CAF)は、アンデス諸国の経済社会開発と経済統合の促進を目的に、ボリビア、コロ
ンビア、エクアドル、ペルーおよびベネズエラにより 1968 年に設立された国際開発銀行。株主はその後、
他の中南米諸国やスペイン・ポルトガルを含めた計 19 ヵ国とアンデス地域の 13 民間金融機関に拡大し、
事業対象地域も中南米全体にわたっている。当公社の格付は、①長期資金の安定的な提供者としての加盟
国にとっての戦略的重要性②加盟国の強固な支援姿勢③優先債権者の地位④健全な財務内容と潤沢な流動
性―を反映している。一方、格付は、相対的に高い主要加盟国の政治・経済リスクに制約されている。格
付の見通しは安定的である。中南米経済は、中国経済の減速、一次産品価格の下落および米国の金融政策
の変更といった外的ストレスを受けている。また、主要加盟国の一部に、引き続き高い政治・経済リスク
を抱える国が残る。15 年第 4 四半期以降、これらの国に変革の兆しが見られるものの、外部環境は厳し
く、経済状況の好転には依然として時間を要するとみられる。こうした状況の下、加盟国は当公社の授権
資本と払込資本の増強を相次いで承認するなど、引き続き強固な支援姿勢を示している。加えて、当公社
も加盟国の拡大による貸付先の分散化に加え、資金調達先の多様化や潤沢な流動性の維持など保守的な財
務戦略を堅持し、ストレスに対する耐性を高める努力を継続している。
(2) 当公社は、加盟国により署名・批准された設立協定により設立された国際機関であり、同協定により規
制・保護されている。事業目的は「加盟国の公的・民間セクターへの金融サービスの提供を通じて、加盟
国の持続的な開発と地域統合を促進する」と規定される。具体的には、交通・エネルギー・上下水道とい
ったインフラ建設や、社会開発、貿易金融支援などを目的に、出融資や保証を行っている。当公社は、ア
ンデス地域の加盟国にとり、数ある国際開発銀行の中でも最大の資金供与者となっているほか、加盟国が
経済的に困難な状態に陥った際にも、支援を継続させてきた実績を有する。また、当公社は、設立協定に
基づき、加盟国の課しうる資産に関する制限の免除など「優先債権者」としての地位を担保する様々な優
遇措置を享受している。これらを背景に、出融資対象国の中には経済的に困難な状態に陥った国もあるが、
当公社の公的部門向け融資の元利払いにはこれまで 180 日以上の遅延が発生したことは一度も無い。
(3) 当公社の株主は、10 の正規加盟国、9 の協賛加盟国および 13 の域内民間金融機関から構成される。株式
は、正規加盟国が保有する A 株、正規加盟国と金融機関が保有する B 株、協賛加盟国が保有する C 株の
3 種類に分かれ、種類に応じそれぞれ任命できる理事の人数が異なるが、出融資自体は正規加盟国・協賛
加盟国のどちらにも行える。当公社は 05 年に、協賛加盟国が A 株を購入し正規加盟国となれるよう設立
協定を改訂。09 年にブラジルとウルグアイ、10 年にパナマ、11 年にアルゼンチンとパラグアイが正規加
盟国となったほか、トリニダード・トバゴも 12 年から正規加盟国になるための手続きを進めている。14
年には、バルバドスが協賛加盟国となることに合意し、15 年に資本の払込を開始した。当公社は設立以
来、継続的に増資を実施してきている。08 年には、授権資本の倍増(50→100 億ドル)を決定。払込資本
も、08 年に 15 億ドル、リーマンショック後の 09 年に 25 億ドル、欧州債務危機が深刻化した 11 年には
20 億ドルと、増資が相次いだ。15 年には、3 月に授権資本を 100 億ドルから 150 億ドルに、11 月には払
込資本を 17 年から 23 年にかけて 45 億ドル増資することを決定した。過去の増資の払い込みも順調に進
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んでいる。一連の増資を通じ、従来アンデス 5 ヵ国に集中していた株主構成の分散が進みつつあり、15
年 9 月末の払込資本ベースに占めるアンデス 5 ヵ国の割合は 65%と、08 年末の 84%から大きく低下して
いる。
(4) 当公社の総資産および融資残高は、15 年 9 月末時点で、それぞれ 315 億ドル、193 億ドルに上る。融資残
高の内訳をみると、06 年末に 92%を占めていたアンデス 5 ヵ国向けが 61%まで減少。依然として集中度
は高いものの、加盟国の拡大を反映し、アンデス域外への分散が進みつつある。また、経済状況の厳しい
ベネズエラに対する融資残高のシェアも、06 年末の 21%から 15 年 9 月末には 15%まで低下した。当公
社は、中南米の有力金融機関向けを中心に、民間部門向け融資も行っている。融資残高に占める民間向け
の比率は 20%前後を目標としており、15 年 9 月末時点では 18%となった。資産の質は、極めて良好な水
準に維持されている。公的部門向け融資に関しては 180 日以上の元利支払い遅延が発生したことがこれま
で一度もなく、また、民間部門向け融資においても 15 年 9 月末時点で不良債権(90 日以上の延滞債権)
は存在しない。
(5) 当公社は、設立協定を含む規則に基づき、保守的な財務運営を行っている。出融資・保証残高の上限を株
主資本の 4 倍以下に制限(実際には 15 年 9 月末時点で 2.1 倍)
。債務残高も株主資本の 3.5 倍以下に制限
している(同 2.2 倍)
。出資・保証残高はそれぞれ株主資本の 10%・20%を上限とし(同 3.4%・2.2%)
、
それらは全て遵守されている。流動性については、14 年 9 月に内部規制を厳格化し、少なくとも向こう
12 ヵ月の必要純資金額(融資回収予定額と資本払込予定額の合計から、債務支払予定額と貸出実行予定
額の合計を差し引いたもの)を維持するとしており、実際には 15 年 9 月末時点でその 2 倍以上の流動性
を有している。仮に特定の借入国の返済が滞ったとしても、当公社は当該国向けの貸出実行の中断が可能
であることに加えて、2 年を超える必要純資金額に相当する潤沢な流動性を有するなど、相応の耐性を維
持している。当公社は近年、資金調達先の多様化を進めており、発行済み債券の通貨別構成も 13 通貨に
及んでいる。米ドル以外の通貨や固定金利ベースで発行した債券並びに固定金利での貸出は、米ドル建変
動金利ベースにスワップし管理している。
(6) 当公社は、他の国際開発銀行と同様に収益の拡大を優先してはいないものの、継続的に黒字を計上し、内
部の収益目標(米ドル建 6 ヵ月 LIBOR)も今日まで長期にわたり達成し続けている。15/12 期第 3 四半期
累計の当期損益も黒字を計上した。同期間の ROE は 1.6%と、前年よりは低下したものの、当公社が目標
と設定している米ドル建 6 ヵ月 LIBOR を上回っている。米ドル建市場金利の上昇は当公社の調達金利も
引き上げることとなる。しかしながら、当公社は、融資金利を市場金利に連動させている上、調達費用の
かからない自己資本が総資産の 30%を占めるため、秩序だった米ドル建金利の上昇は、収益にポジティ
ブに寄与するものとみられる。
(担当)仲川 聡・幾島
■格付対象
発行体:アンデス開発公社(Corporación Andina de Fomento)
【据置】
対象
長期発行体格付
対象
ユーロ円債
2018 年 12 月 18 日満期トルコ・リ
ラ建債券
2018 年 12 月 18 日満期南アフリ
カ・ランド建債券
格付
見通し
AA
安定的
発行額(百万)
発行日
JPY10,000 2009 年 2 月 19 日
償還期日
利率
格付
2019 年 2 月 19 日
4.30%
AA
TRY157 2014 年 12 月 19 日 2018 年 12 月 18 日
7.35%
AA
ZAR253 2014 年 12 月 19 日 2018 年 12 月 18 日
6.50%
AA
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真
格付提供方針に基づくその他開示事項
1. 信用格付を付与した年月日:2016 年 1 月 27 日
2. 信用格付の付与について代表して責任を有する者:藤本
主任格付アナリスト:仲川 聡
幸一
3. 評価の前提・等級基準:
評価の前提および等級基準は、JCR のホームページ(http://www.jcr.co.jp)の「格付方針等」に「信用格付の種類
と記号の定義」
(2014 年 1 月 6 日)として掲載している。
4. 信用格付の付与にかかる方法の概要:
本件信用格付の付与にかかる方法の概要は、JCR のホームページ(http://www.jcr.co.jp)の「格付方針等」に、
「国際開発金融機関の信用格付方法」
(2013 年 3 月 29 日)として掲載している。
5. 格付関係者:
(発行体・債務者等)
アンデス開発公社(Corporació
n Andina de Fomento)
6. 本件信用格付の前提・意義・限界:
本件信用格付は、格付対象となる債務について約定通り履行される確実性の程度を等級をもって示すものである。
本件信用格付は、債務履行の確実性の程度に関しての JCR の現時点での総合的な意見の表明であり、当該確実性
の程度を完全に表示しているものではない。また、本件信用格付は、デフォルト率や損失の程度を予想するもので
はない。本件信用格付の評価の対象には、価格変動リスクや市場流動性リスクなど、債務履行の確実性の程度以外
の事項は含まれない。
本件信用格付は、格付対象の発行体の業績、規制などを含む業界環境などの変化に伴い見直され、変動する。ま
た、本件信用格付の付与にあたり利用した情報は、JCR が格付対象の発行体および正確で信頼すべき情報源から入
手したものであるが、当該情報には、人為的、機械的またはその他の理由により誤りが存在する可能性がある。
7. 本件信用格付に利用した主要な情報の概要および提供者:
・ 格付関係者が提供した監査済財務諸表
・ 格付関係者が提供した業績、経営方針などに関する資料および説明
8. 利用した主要な情報の品質を確保するために講じられた措置の概要:
JCR は、信用格付の審査の基礎をなす情報の品質確保についての方針を定めている。本件信用格付においては、
独立監査人による監査、発行体もしくは中立的な機関による対外公表、または担当格付アナリストによる検証など、
当該方針が求める要件を満たした情報を、審査の基礎をなす情報として利用した。
9. JCR に対して直近 1 年以内に講じられた監督上の措置:なし
■留意事項
本文書に記載された情報は、JCR が、発行体および正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、また
はその他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、JCR は、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、
的確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、JCR は、当該情報の誤り、遺漏、また
は当該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。JCR は、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、
金銭的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因
のいかんを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。また、JCR の格付は意見の表明であ
って、事実の表明ではなく、信用リスクの判断や個別の債券、コマーシャルペーパー等の購入、売却、保有の意思決定に関して何らの推奨をするも
のでもありません。JCR の格付は、情報の変更、情報の不足その他の事由により変更、中断、または撤回されることがあります。格付は原則として
発行体より手数料をいただいて行っております。JCR の格付データを含め、本文書に係る一切の権利は、JCR が保有しています。JCR の格付データ
を含め、本文書の一部または全部を問わず、JCR に無断で複製、翻案、改変等をすることは禁じられています。
■NRSRO 登録状況
JCR は、米国証券取引委員会の定める NRSRO(Nationally Recognized Statistical Rating Organization)の 5 つの信用格付クラスのうち、以下の 4 クラ
スに登録しています。(1)金融機関、ブローカー・ディーラー、(2)保険会社、(3)一般事業法人、(4)政府・地方自治体。米国証券取引委員会規則 17g7(a)項に基づく開示の対象となる場合、当該開示は JCR のホームページの“Rating Information”(http://www.jcr.co.jp/english/top_cont/rat_info01.php)
に掲載されるニュースリリースに添付しています。
■本件に関するお問い合わせ先
情報サービス部
TEL:03-3544-7013 FAX:03-3544-7026
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