Neue FahneJournal

No.118
2016.1.25
ノイエ・ファーネジャーナル
Neue FahneJournal
[発行元]株式会社ノイエ・ファーネ
〒101-0043 東京都千代田区神田多町2-7-3
三好ビル
℡.03-5297-1866
http://www.n-fahne.jp
機械・人工知能は雇用形態による
差異を無意味なものにする
― “仕事や働き方”それ自体が真に問われ始めてくる時代 ―
株式会社ノイエ・ファーネ
代表取締役
本間 次郎
(ほんま
じろう)
1954年生まれ。大学在学中より出版・編集業務に携わり、卒業と同時に出版・編集業界にて、主に労働経済関係を
フィールドとし取材・執筆、編集業務に携わる。中小企業経営者向け経営専門誌の編集、人材教育・研修ツール等
の作成および人事・組織コンサルティング業務を経て㈱ノイエ・ファーネを設立。
この間、正規・非正規雇用の問題は、単に条件の差異や優劣によってのみ語られ、“働くことの意味内容”がどこかに
おき去られている。企業の就労現場で重視しなければならないのは、雇用形態の差異ではなく一人ひとりに仕事や働き
方に対する“成熟した意識”が形成されているか否かということだ。正規雇用者であろうがなかろうが就労意識が欠如
した者は、早晩機械・人工知能に取って代わられ余剰化してくることになる。
自らの仕事や
働き方を
批判的に捉える
11. コールセンター案内係
来的に人工知能に“取って代わられる
12. 乗用車・タクシー・バンの運転手
13. 中央官庁職員など上級公務員
14. 調理人(料理人の下で働く人)
ことのない職業選び”などを謳った就
職指導なども行われ始める。また、既
存のビジネスモデルの行方や将来性に
15. ビル管理人
【引用:「ダイヤモンドオンライン」より】
ついての議論も進むことになる。一方
でこの発想は一昔も二昔も前の“これ
最近にわかに機械・人工知能(AI)
の長足の進歩によって“なくなる職業
昨年の東京モーターショーで耳目を
から成長する業界”“衰退する業界”
なる対比が持てはやされた時代を彷彿
や仕事”に関する議論が盛んに行われ
集めた「全自動自動車」も“なくなる
るようになってきた。発端はアメリカ
職業や仕事”に大きく関連している。
しかし、職業選びやビジネスのあり
の大学による2013年の研究報告だが、
機械・人工知能の進歩による雇用状況
様についての基準が“これから成長す
それによれば10年後から20年後に“な
くなる職業や仕事”とは概ね次のよう
の変化は、社会の生産様式やサービス
に大きな変化を生み出すことになるだ
る業界”から“人工知能に駆逐されな
い職業”に変遷するということだけで
にランキングされている。
1. 小売店販売員
ろう。これまで人間が行ってきた仕事
が機械・人工知能にとって代わられる
は、従来の単純な思考フレームに留ま
ることになる。むしろ、今日の人工知
2. 会計士
3. 一般事務員
ということは、当然のことながら単に
労働集約型の雇用を減少させるだけで
能の発展が人間に対して根源的な「仕
事の位置づけ」や「働くことの意味」
4. セールスマン
はなく、従来の仕事のイメージを一変
を問いかけているという捉え方をする
5. 一般秘書
させていくことになる。
必要がある。
6. 飲食カウンター接客係
7. 商店レジ打ち係や切符販売員
8. 箱詰め積み降ろしなどの作業員
もちろん、この種の論議の常として
“なくなる仕事”と“なくならない仕
事”という単純な二者対比的な発想に
乱暴な表現になるのだが今日起こっ
ている人工知能がもたらすことになる
社会全般の変容は、“自らの働きは現
9. 帳簿係などの金融取引記録係全員
10. 大型トラック・ローリー車の運転手
よる論調も増えてくることになる。さ
らには、学生の就職活動においても将
時点においてでさえ、機械とさして変
わらない働き方に終始しているのでは
- 1 -
させるものになっている。
ないか”という批判的な捉え方によっ
雇用形態の差異にすべての問題がある
し、自らのリスク回避のみに終始する
て察知することができる。現状に対す
かのように発想する。こうした仕事や
ことになっている。そして、危機意識
るこの批判的な向きあうことができな
ければ、人工知能によってもたらされ
働き方を度外視した発想が、何時しか
雇用形態の差異による無意味な対立構
の欠如は必然的に「誰(会社)が○○
をしてくれない」という愚痴の温床と
る仕事や働き方についてもイメージす
ることはできない。つまり、自分で思
造を就労現場に生み出すことになって
きた。そして、現実にこの種の対立構
もなる。同時に自らと異なる雇用形態
の存在に対するある種の優越意識とと
考することなく単に“上からの指示で
造は意識上で正規雇用と非正規雇用と
もに排他的な意識をも生み出すことに
の業務遂行が仕事である”という具合
の間にあたかも身分格差があるかのご
なる。
の指示待ちは、現時点でさえ人工知能
とき様相も呈してきている。
今日ではどのような企業組織やビジ
に太刀打ちできないということでもあ
正規・非正規雇用の問題は、単に条
ネスモデルでも未来永劫とも安泰であ
る。
ところで、いまだに一般的には自分
件の差異や優劣によってのみ語られ、
“働くことの意味内容”がどこかにお
き去られている。このため前回の衆議
るなどという保証はない。まして、職
種それ自体が人工知能に駆逐され始め
る中で職場マネジメントは、“メンバー
院総選挙の際にどこやらの政党が「夢
であることに安住する”ことなく、自
は正社員になること!」などというトン
らの行っている仕事や働き方の内容が
チンカンなコピーを流布して憚らない
「はたしていつでもどこでも通用する
という珍事も生み出してきた。
ものであるか」という振り返る視点を
人工知能は
“仕事や働き方”を
問いかけることになる
つまり、自らの行う仕事=ジョブに
の仕事や働き方を重視するのではなく、 対して価値を問うことなく、企業組織
常に持たせていかなければならない。
もちろん、職場マネジメントを担う
“どの企業に勤めているのか”“働く
上でのより良い雇用条件”を重視する
傾向が強いのも事実だ。とりわけ雇用
の構成員=メンバーになることがあた
かも自己目的化し始めている。いうま
でもなく雇用形態による格差は是認さ
管理職が自らこの意識を先取りしなけ
ればならない。雇用形態に関わりなく
企業人を含めた働く者すべてにとって
条件の優劣を企業の良し悪しと同列に
扱う風潮さえ存在している。この間、
れるべきではない。しかし、自らの仕
事や働き方を度外視した単なる雇用形
の武器となるのは、自らの頭で考え、
自らの判断基準で行動し、組織や社会
雇用流動化や外部労働市場の拡大が叫
ばれてはきたが、転職や再就職におい
態の違いが価値基準であるかの意識は、 全体に貢献していくことができるとい
知らず知らずに業務行動や就労姿勢に う能力だけである。この能力が備わっ
てもこの意識から抜け切れずに無為な
転職を繰り返す者が多いのも現状だ。
対するとらえ方を曖昧化し始めること
になる。
ていない者は、雇用形態に関わりなく
駆逐される対象に自らを落とし込めて
いまだにくすぶっているいわゆる
「ブラック企業批判」も実は、この意
識と表裏関係にあるといっても過言で
企業の就労現場で重視しなければな
らないのは、雇用形態の差異ではなく
一人ひとりに仕事や働き方に対する
いることになる。
このように考えると機械・人工知能
の長足の発展は、企業内の人材育成の
はない。何故ならば「ブラック企業批
判」もつまるところは、雇用条件の優
“成熟した意識”が形成されているか
否かということだ。正規雇用者であろ
視点を単なる業務スキル習得中心から
就労意識形成の確立に向けた方向への
劣に収斂されてしまっているからだ。
もちろん各種の労働法令に対して無
うがなかろうが就労意識が欠如した者
は、早晩機械・人工知能に取って代わ
シフトをより強化していくことが重要
になってくる。当然にも個々の現場で
知蒙昧に対処している無自覚な企業や
られ余剰化してくることになる。
実施するOJTを含む育成も単に“与
マネジメントを単に“部下をコントロー
ルすること”と理解している無知な管
理者を容認するわけでは決してない。
今日、どのような職場においても多
えられた業務を無難に熟すことができ
人材育成の質を
再構築していく必要
様な就労形態での働きが一般化してい
る”などという評価基準を繰り返して
いては意味をなさなくなる。
さらにいえば、上司と部下における
従来の“指導と非指導の関係”さえも
る。そして既存の従業員間には、大別
特に職場のマネジメントにおいては
意味をなさなくなってくる。つまり、
すると“正規雇用=メンバー”と“非
雇用形態に関わりなく、仕事への取り
企業組織を発展させるために恒常的な
正規雇用=メンバー以外”という発想
組み姿勢を大きな判断基準としていか
変化を創り出していける人材を形成し
が蔓延している。このため正規雇用者
なければならない。職場を見渡せば正
ていくために“自分を超えていく部下
は自分が“メンバーであることに安住”
規・非正規を問わず就労意識にズレが
をいかに発掘し創り出していくのか”
する傾向が強くなる。
生じている者が存在している。仮に正
という視点が不可欠となる。
一方で非正規雇用者は何はともあれ
規雇用者であったとしても漫然とした
この場合の部下とはまさに雇用形態
“メンバーになりたい”と発想するよ
うになる。つまり、あくまでも自らの
仕事ぶりを繰り返す者は、“会社は順
風であっても一つ判断を誤れば一夜の
の差異に関わりなく職場を構成する全
体の人的資源という意味だ。
仕事や働き方を基準にするのではなく、 うちに凋落する”という危機感が欠如
- 2 -
一人ひとりが
“責任を持って
ことに臨む”
企業組織の発展とは単純に成長率で
要がある。これを維持するためには自
らの行為行動に“責任を持って対処す
る”ということになる。いうまでもな
な事柄を行っているのか」という企業
の社会的責任を果たしていくという概
念だ。
く、企業は自らが行う事業活動におい
て利害関係を有するすべての人に対し
職場マネジメントの実践者であり経
営権の分担行使者である管理職自身が、
ての説明責任がある。つまり、社会に しっかりとこの概念を意識しなければ、
対して事業活動の説明ができなければ、 企業は持続できない。この概念が欠如
測られるものではなく、一人ひとりの
仕事や働き方に対する就労観の形成を
社会から容認が得られない。もちろん
利害関係者の中には自社の従業員も含
してしまえば、部下を統率することも
できなくなる。
鋭く問うことになる。また、表層的な
コミュニケーション能力の有無などで
まれる。
職場マネジメントでは従業員に対し
従って、企業が行うマネジメントの
基本はあくまでも職階や職位を超えて
測られるものでもなく、仕事や働き方
に対する姿勢の確立が伴わなければな
らない。
て常に“正しいこと”を行わせる責任
“会社で発生していることは、全て自
がある。同時に組織に対しても“われ
われは正しいことを行っているのか”
らに関わりがあること”との意識形成
でなければならない。
一言でいえば就労意識の形成を重視
するということになるが、この形成に
ということを常に問い続ける責任感が
なければならない。この時に必要とな
は時間や手間がかかることは必定だ。
なぜならば、これは長く染みついてき
る判断基準とは、「社会に対して有益
た就労観を問い直していく作業を伴う
からでもある。しかし、職場マネジメ
ントにおいてこれを厭い苦痛と感じる
者は、自らの成長や役割を放棄してし
まうことになる。
一般的にモチベーションは個人の問
題に還元されがちだが、個々人のモチ
ベーションは本人の資質だけではなく、
職場マネジメントの資質との相乗効果
―若手・中堅社員対象―
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ッションとしてとらえる姿勢をつかんでもらう。
[お問い合せ先]
でしか発揮されるものではない。この
ためモチベーションは常に“組織とし
株式会社ノイエ・ファーネ
℡.03-5297-1866 [email protected]
てのモチベーション”として捉える必
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日本の雇用システムは労働法令の改正を含めて大きな転換点を迎えています。この雇用システムの転換は、企業に
おいてリスク管理視点からの労務管理の重要性が増してきます。また、人事マネジメントの在り方に大きな影響を
及ぼしてくることは必定です。そこで、企業において人事・労務を担当する方々はもとより、現場でマネジメント
に携わっている方々や広くヒューマンビジネスに携わる人びとによる不定期な集いを通して、忌憚のない本音の討
議や意見交換を行う“場”=サロンとして、“ミニ・フォーラム”を再開し今後の人事マネジメントの帰趨を考え
て行きたいと思います。
人事マネジメント課題は現場において採用(入口)から出口(雇用調整)までのあらゆる過程で発生するものです。こ
のため相互の経験や実例を踏まえたうえで広角的な課題の見極めや課題解決に向けた道筋の模索が有益になると考
えます。“ミニ・フォーラム”は各回とも問題提起に基づいて参加者相互が討議や意見交換の中で見地を高めあい、
職場におけるマネジメントの新たな方向性や労務管理の視点を探求していく端緒になると考えています。
第16回
ミニ・フォーラム
多様化した雇用形態による
企業の人事・労務課題を直視する
最近、過重労働にともなう過労死やハラスメントに関連した訴訟や和解のニュースも頻繁に報道されるようになっ
てきました。本来であれば雇用に関する問題は、職場の労使間での健全で常識的対応で処理されるべきものです。と
ころが、企業と従業員の双方に無理解や身勝手な振る舞いが存在するならば、事態が思わぬ方向に向かってしまうこ
ともあるものです。特に労働組合の組織率低下により労働組合の役割や機能を知らない企業や従業員が増加してきま
した。このため、企業は過度に組合や個人加盟のユニオンを恐れる傾向もあります。一方で自らの就労姿勢を顧みる
ことなく“ユニオンに駆け込みさえすれば何とかなる”と誤解する者の存在や風潮も目立ってきました。
そこで、今回のミニ・フォーラムでは現役のユニオン関係者を招き、率直な意見交換を通して、今日多様化する雇
用形態によって顕在化してきた企業と働く者の双方が負うべき解決課題などについて考えてみたいと思います。
◎問題提起: 労働組合(ユニオン)の立場から見た
雇用トラブル発生の要因
連帯ユニオン
元支部執行委員長
中塚 大介
■最近の雇用トラブルの特長から見えてくる現場状況
■ユニオンが困ってしまう企業の稚拙な対応と過度な警戒心
■ユニオンも対応に苦慮する従業員からのトンチンカンな
プロフィール
1966年3月7日生まれ。1993年、全日本建設運輸連帯労働組合に加
入。トラック職場で組合結成。以降、支部執行委員等を経て、20
06年から2015年10月まで支部執行委員長。2002年~2013年まで専
従役員として建設やセメント生コンのトラック運転手の職場での
組織化や労働相談を担当。
労働相談の存在
[日 時]
[参加費]
[会 場]
1月28日(木)
2,000円
17:30~20:00(受付開始17:20~)
※当日会場で承ります。
ちよだプラットフォームスクウェア
(本館B1 ミーティングルーム002)
〒101-0054 東京都千代田区神田錦町3‐21
竹橋駅(東西線) 3b KKRホテル東京玄関前出口より徒歩2分
神保町駅(三田線・新宿線・半蔵門線) A9出口より徒歩7分
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申込欄にご記入の上、FAXでお申込み下さい。ホームページからもお申込みできます。
会 社 名
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