ワクチンで防ごう、おたふくかぜとおたふくかぜ難聴

2016 年 1 月発行
第 48 号
吉祥院こども診療所
で防ごう、
と
2015 年から、おたふくかぜ患者さんが増え続けています。
おたふくかぜワクチンがいまだ定期接種ではない日本では、ほぼ 4 年おきにおたふくかぜが
流行します。予測していた通り、2015 年夏ごろよりおたふくかぜ患者数はじわじわ増加、
2016 年はいよいよ流行のピークを迎えると予想されます。
おたふくかぜワクチンが未接種のかたは(成人も含め)、急いでワクチンを受けておきましょう。
おたふくかぜ何が怖いの?
おたふくかぜ(英語名:ムンプス)流行時に、小児科医が心配し恐れているのは、
腫れ上がったまんまるの顔ではありません。お熱でもありません。
実は一番恐れていることは、目に見える症状が落ち着いてから現れることが多いです。
おたふくかぜに罹ったあとの後遺症で、何よりも怖いのは、難聴です。
一般にムンプス難聴と呼ばれます。聴神経自体がダメージを負ってしまうことにより、高度な
難聴となります。補聴器の効果は期待できません。片方の耳だけに難聴が生じることが多い
ですが、両耳に高度難聴症状が出ることもまれにあります。
発症頻度は報告文献によって、200 人に 1 人とか 500 人に 1 人とか多少のばらつきは
あるものの、かなりの頻度でおきていることは確かです。罹りやすい年齢は 4~5 歳の幼児です。
(表 1 参照)<裏面につづく>
そしてまたムンプス難聴が発見されるのは 11 月から 12 月が最多です。
なぜだかわかりますか?
就学前健診の月だからです。片耳の難聴症状を幼いこども自身が訴えることはあまり
ありません。
そのため就学前健診の時、耳鼻科健診を受け、初めて気付かれることが多いのです。
保護者からすると、「なにも症状がないし、こども本人にも聞こえが悪いという自覚が
ない」のに、突然「一側性高度感音性難聴」と診断され、かつ治らないことを告げられ、
絶望の淵に立たされる…
こどもが難聴と診断された後になって初めて、医師から、ムンプス難聴は
ワクチンで予防できる唯一の難聴疾患であったことを教えられる。多くの親は、
こどもにワクチンを受けさせてあげられなかった後悔と自責の念で苦しむ…..
引用文献 ムンプス難聴と聴覚補償(IASR Vol.34 p.228-230; 2013 年 8 月号)
これが、おたふくかぜという病気・おたふくかぜ難聴の実態です。ムンプス難聴の特徴を表 2 に
示しています。
あまり嬉しい予言ではありませんが、このままのペースでいくと、日本国内で
2016 年 11 月 12 月にムンプス難聴の子がたくさん発見されることは避けられないでしょう。
表1
難聴を発症する子を一人でも減らすために、
現在こども診療所では、おたふくかぜワクチン接種
の呼びかけを、幼児から小学生をお持ちのご家庭に
対し、重点的に行っています。
幸いワクチン不足も 2016 年 1 月時点では解消さ
れております。
おたふくかぜワクチン接種を急ぎましょう。
こどもを守るために。
親として後悔しないために。