2016 年度大学入試センター試験 解説〈物理〉

2016 年度大学入試センター試験 解説〈物理〉
第 1 問 小問集合
問 1 小球1と小球2の初速度の鉛直成分を,それぞれ v1,v2 とする。ともに落下までの時間の半分
で最高点に達し,このとき速度の鉛直成分がゼロとなるから,重力加速度の大きさを g として,
ÔÏÔ
ÔÔ 0 = v 1 - g
ÔÌ
ÔÔ
ÔÔ 0 = v 2 - g
ÔÓ
T1
2
T2
2
より
T1 =
2v1
2v 2
, T2 =
g
g
初速度の大きさが等しければ,鉛直成分については v1 > v2 なので,T1 > T2 である。
(答)
1
…①
問 2 不導体では,正に帯電した棒に近い側に負の,棒から遠い側に正の分極電荷が誘起される。
このため,不導体と棒の間には,引力がはたらく。
+ +
+
+
++
+ +
+
+
+
+
+
+
- (不導体)
導体では静電誘導のため,まず正に帯電した棒に近い導体 B に負電荷が,棒から遠い導体
A に正電荷が誘起される。このため,導体 B と棒の間には,引力がはたらく。次いで,棒を
近づけたまま A と B を離すと,A に正電荷,B に負電荷が残り,さらに棒を遠ざけて A と B
も十分に遠ざけると,A は正に帯電している。
+ +
+
A
B
+
++
(導体)
+ +
+
A
+ +
+
+
+
+
+
+
-
- + -
+ +
B
-
- -
ア:引力,イ:引力,ウ:正に帯電している
(答)
−1−
2
…①
2016 年度センター試験 物理
問 3 原点 x = 0 での変位 y [m] と時刻 t [s] の関係 y (0,t) は,与えられたグラフから周期
T = 2s,振幅 A = 0.2 m の単振動で,
y (0,t) = 0.2 sin c 2 p
t
2
C = 0.2 sin (pt)
とできる。速さが V = 2m/s なので,位置 x [m] にはこの単振動が時間
るから,位置 x [m] における時刻 t [s] での変位 y (x,t) は,
{
x
x
x
[s] だけ遅れて伝わ
2
}
C = 0.2 sin p c t - C
y ( x, t ) = y c 0, t 2
2
x
[s] かかる
2
x
時刻 t [s]
2
O
時刻 t [s]
x [m]
x
(答)
…④
3
問 4 打ち出し直後の床に対する速度を,水平右向きを正として,物体 A で V,物体 B で v とおく。
水平方向には外力が無いので運動量保存則が成立し,はじめ全体が静止していたことより,
mv + MV = 0
とできる。物体 A に対する物体 B の相対速度 vAB は,
V
vAB = v - V
M
v
m
であり,これを V を用いずに v で表すと,
M+m
m
vC =
v
v AB = v - c M
M
(V < 0)
(答)
4
…④
問 5 求める温度を T (T1 < T < T2) とする。水が得た熱量 C1 (T - T1) は,金属球が失った熱量
C2 (T2 - T) に等しいので,
C1 (T - T1) = C2 (T2 - T) より, T =
C1 T1 + C2 T2
C1 + C2
また,この変化は不可逆変化である。
C T + C2 T2
,オ:不可逆変化
エ: 1 1
C1 + C2
(答)
−2−
5
…⑤
2016 年度センター試験 物理
第 2 問 電磁気
A
問 1 C1 の下側極板,C2 の上側極板,C3 の上側極板からなる孤立導体部分の電気量の和は,電源
接続前と変わらずゼロであるから,電気量保存
Q1 + Q2 + Q3 = 0 % Q
3
1 = Q2 + Q
が成り立つ。C2 と C3 が並列に接続され,さらにここに C1 が直列に接続されていることから,
3 つのコンデンサーの合成容量 C は
1
1
1
2
=
+
=
より C = 2µF
C
4µF
3 µF+1µ F
4 µF
である。これより Q1 は,Q1 = (2µF) ¥ (10V) = 2 ¥ 10 - 5 C
+ Q1
+ Q2
C1
- Q1
4µF
C2
+ Q3
合計ゼロ
+ Q1
C3
C = 2µF
10 V
10 V
- Q1
- Q2
3µF
- Q3
1µF
(答)
1
…①
V
問 2 極板間の電場の大きさ E は, E = 0 である。
d
また,(a) のコンデンサーの電気容量を C とすると,(b) のコンデンサーの電気容量は erC と
なり,静電エネルギーについて,
1
ÔÏÔ
2
ÔÔ U 0 = 2 CV0
ÔÌ
ÔÔ
ÔÔ U = 1 e r CV0 2
ÔÓ
2
% U = erU0
が成り立つ。
(答)
−3−
2
…②
2016 年度センター試験 物理
B
問 3 電場の場合,図の下向きに力を受けて軌道が変わるようにすればよい。このために必要な電
場の向きは,図の下向き。
電場
v
Q
45°
l
45°
P
v
(答)
3
…③
磁場の場合,時計回りの円運動をするように力がはたらけばよい。このために必要な磁場の
向きは,紙面に垂直で裏から表の向き。
磁場
v
v
Q
45°
P
l
45°
L
v
L
=r
2
中心
(答)
問 4 磁場の場合,
点 P から点 Q までの粒子の軌跡は,
半径が r =
速さ v で,円弧の長さ
1
¥ 2 pr =
4
4
…⑤
L
の円軌道の4分の1になる。
2
2 pL
を運動するのに要する時間 t は,
4
2 pL
t=
4v
(答)
−4−
5
…④
2016 年度センター試験 物理
第 3 問 波動
A
V
問 1 スピーカー A と B の間には,定常波が生じる。波長 l は f であり,音が最も強めあう点
0
の間隔 L は,
1
V
l=
L =
2
2
f0
(答)
1
…②
問 2 観測者はスピーカー A に向かって速さ v で近づくから,このとき A から受けた音の振動数
fA は,
fA =
V+v
f0
V
また,スピーカー B から速さ v で遠ざかるので,このとき B から受けた音の振動数 fB は,
fB =
V-v
f0
V
とできる。これら 2 つの音波による単位時間あたりのうなり回数 Df は,
Df = fA - fB =
(V + v) - (V - v)
2v
f0 =
f
V
V 0
( 別解 ) 定常波が強め合う場所を通過するごとに,観測者が聞く音が大きくなり,うなりが
聞こえる。この時間間隔 DT は,
L
V
DT = v = 2 f v
0
だから,単位時間あたりのうなり回数 Df は,
1
2v
Df = DT = V f0
V+v
2v
f0 ,
f
ア: イ: V
V 0
(答)
−5−
2
…⑦
2016 年度センター試験 物理
B
問 3 薄膜中の光の速さは
c
なので,光が薄膜を往復するのに要する時間 t は,
n
2d
2nd
t = c / n = c
境界面 A と B の反射のうち,A の反射で位相が p 変化することに注意すると,二つの光が
強めあう条件は,真空中波長 l =
c
,正の整数 m を用いて,
f
1
c
2nd = c m - 2 C f ( 光路差 2nd が真空中波長 l の半整数倍 )
これを往復時間 t の条件に直すと,
t =
2nd
1
= cm c
2
C
1
f
位相 p 変化
空気 1
薄膜 n
となる。
A
d
B
1
1
2nd
ウ:
,エ: c m - 2 C f
c
空気 1
位相変化なし
(答)
3
…⑥
問 4 厚さが波長に比べて十分に小さいとき,経路差は無視できるが一方の境界の反射で位相の p
変化があるので,二つの反射光は弱めあう。その後,薄膜を厚くしていき,一度強めあった後
で厚さ d1 のとき再び弱めあったとすると,
2nd1 = l より, d1 =
l
2n
となり,これは波長 l に依存する。単色光が赤色,緑色,青色の場合で比較すると,d1 が最
も小さいのは波長が最も短い青色の場合である。
オ:弱め,カ:強め,キ:青色
(答)
−6−
4
…③
2016 年度センター試験 物理
第 4 問 力学
A A
vA
mg
R
h
v0
O
問 1 点 O を高さの基準として,力学的エネルギー保存則は,
1
1
mv A2 + mg( R + h ) =
mv 02
2
2
これより vA は,
v A = v 02 - 2 g ( R + h)
(答)
1
…⑥
問 2 最小の速さで面から離れずに点 A を通過する場合,小物体が点 A で面から受ける垂直抗力
の大きさはゼロであり,この場合の点 A 通過直前における小物体の運動方程式 ( 中心方向成
分 ) は,
v2
m A = mg \ v A = gR
R
(答)
−7−
2
…②
2016 年度センター試験 物理
B
問 3 台と小物体とが滑ることなく運動すれば,両者を一体とみなした上で,力学的エネルギー保
存則
1
1
kd 2 =
( M + m) v2
2 1
2
が成り立つ。これより,
M+m
v
d1 =
k (答)
3
…⑤
問 4 水平右向きを正とする。ばねの縮みが d で小物体と台との間が滑り出していないとき,台の
加速度を a とすると運動方程式
(M + m) a = - kd より, a = -
kd
M+m
( a < 0 は,加速度が左向きであることを示す )
したがって,加速度の大きさはMaM =
kd
M+m
m
M
kd
台上で小物体を見ると,水平方向には左向きの静止摩擦力 R と右向きの慣性力 m ( - a) が
はたらく。d = d2 のとき,摩擦力は最大摩擦力 Rmax = mmg となり,慣性力とつり合うから,
kd 2
m M + m = mmg
M+m
mg
k
\ d2 =
m ( - a)
Rmax
M+m
kd
ア:
,イ:
mg
M
+
m
k
(答)
−8−
4
…⑨
2016 年度センター試験 物理
第 5 問 熱力学
問 1 大気と容器内気体の温度は等しく,これを T とする。気体定数を R とおいて,状態方程式は,
容器 A:pAVA = nART
容器 B:pBVB = nBRT これより
pA
n V
= A B
p
n B V B
A
(答)
1
…③
問 2 コックを開けて十分に時間がたったとき,容器 A と B を合わせた全体の状態方程式は,物
質量の和が変わらないので,
p (VA + VB) = (nA + nB) RT
とできる。問1の状態方程式を利用して,
p (VA + VB) = pAVA + pBVB
p V + p B VB
\ p= A A
VA + VB
(答)
2
…③
問 3 理想気体の内部エネルギーは,物質量と温度で決まる。
( 単原子分子理想気体であれば,物質量 n,絶対温度 T を用いて
3
nRT )
2
本問ではコックを開ける前後で気体の温度は変化しておらず,物質量の合計も変わらないの
で,内部エネルギーも変化しない。
U0 - U1 = 0
(答)
−9−
3
…⑤
2016 年度センター試験 物理
第 6 問 原子
問 1 光電効果は,金属中の自由電子が光子を吸収してエネルギーを得て飛び出す現象であり,光
の粒子性によって説明される。光子を吸収する際に電子が得るエネルギーは,E = hn であり,
金属の仕事関数を W とすると,飛び出した電子 ( 光電子 ) の最大運動エネルギー Kmax は,
Kmax = E - W
である。
ア:粒子性,イ:hn,ウ:E
-W
(答)
1
…⑥
問 2 金属を出たときに運動エネルギーが最大の光電子が,電極 b から a まで達せず引き返すとき
の電位が V = - V0 であり,この光電子が電極間でなされた仕事 - eV0 と光電子の運動エネル
ギーの関係を考えればよい。求める速さを v0 とすると,
2 eV0
1
mv 02 - eV0 = 0 なので, v 0 =
m
2
(答)
2
…⑧
問 3 光電流 I がゼロとなる電位 - V0 は光電子の最大運動エネルギー Kmax で決まり,さらにこれ
は入射する光子のエネルギー E = hn で決まる。交換後も V0 ( 阻止電圧と呼ばれる ) が変わら
ないことから,光の振動数 n は交換前と等しい。
光電流 I の飽和値 I0 は単位時間あたりに電極 b から a に達する光電子の数に比例し,さら
にこれは単位時間あたり入射する光子の数で決まる。I0 が減少したことから,単位時間あたり
に電極 b に入射する光子の数は,交換前より少ないとわかる。
エ : 交換前と等しい,オ : 交換前より少ない
(答)
− 10 −
3
…④