投資情報部 2016 年 1 月 18 日(月) Spot Report(株式) スポット・レポート 日本株担当 No.126 横山 敦史 / 溝渕 彩乃 / 石田 卓也 日本株式:波乱が続く株式市場の底打ちの条件 本日 1 月 18 日、日経平均は前日比▲191 円の 16,955 円で取引を終え、昨年 9 月 29 日以来、約 3 ヵ月半ぶりに終値で 17,000 円割れとなった。 新年早々、中国人民元の切り下げと中国株の急落、そしてサウジアラビアとイラン との国交断絶に始まった中東情勢の緊迫化や北朝鮮による核実験など地政学的 リスク、そして原油価格の急落など、相次ぐ海外発のリスクオフ要因から日本株市 場も想定以上の株価下落を余儀なくされている。 目先的な日本株市場の底打ちの条件は、①人民元と中国株の下げ止まり、②原 油価格の下押し圧力の後退であろうが、本質的には③世界経済の減速懸念の払 拭であろう。なかでも③については、中国もさることながら世界的な製造業サイク ルの底打ち確認が必要とみられる。 17,000 円を下回った際の日経平均の下値目途としては、16,820 円処、16,580 円 処、16,070 円処があげられる。もっとも、日本株市場はバリュエーション面、テクニ カル面からみても、既にオーバーシュート、売られ過ぎの水準に到達したとみられ る。そして、当面の底打ちのタイミングとしては、日米欧の金融政策が論じられる 1 月下旬から中国春節の 2 月 8 日にかけての時間帯に注目する。 主要市場は波乱の幕開 け 日経平均は昨年 12 月 1 日に戻り高値 20,012 円を付けたあと軟調な展開が続き、 本日 1 月 18 日の 16,955 円まで僅か 1 ヵ月半で▲15.3%の下落率となった。また、2016 年に入ってもリスク要因が相次いで顕在化し、大発会からの 10 営業日で▲2,078 円と 先物主導で下げ足を速めている。 世界市場が動揺した背景 の整理 今回の世界市場動揺の直接的な要因としては、①中国人民元の切り下げと中国 株の急落、②サウジアラビアとイランの国交断絶による中東情勢の緊迫化、③北朝鮮 の核実験による地政学的リスクの浮上、などが挙げられる。なかでも、③については 一過性の要因と考えられるが、②の中東情勢については従来からの対立であり、混 迷の長期化は避けられそうにない。したがって、目先的な日本株市場の底打ちの条 件は、中国当局による為替介入や、大株主による株式売却、IPO による需給悪化懸 念などに対する政策対応をきっかけとした人民元と中国株の下げ止まりであろう。また、 WTI 原油先物価格で一時 30 ドルを割り込んだことによる底打ち感の浮上、もしくはリ スクオフムードを一蹴するような、先進国の大規模な追加緩和策などの政策サプライ ズかもしれない。 1/4 本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。 2016 年 1 月 18 日(月) Spot Report 投資情報部 本質 的な株 価上昇の条 件は世界経済の減速懸 念の後退 一方、グローバルな視点で弱気な相場の本質に目を向けると、欧州株は昨年 4 月 に、米国株も昨年 5 月にピークアウトしており、景気モメンタムそして企業収益の動向 に即した動きと捉えることができよう。中国をはじめとして新興国の景気減速が顕在化 するなか、昨年 12 年 16 日に FOMC(米連邦公開市場委員会)が 9 年半ぶりに利上 げを決定。さらに足元の中国人民元の切り下げや中国株の急落が世界経済に対する 不安につながっている。こうした景気減速懸念に加え、原油生産国の過剰供給状態 が継続していることが原油価格の下押し圧力となり、エネルギーセクターの業績悪化 懸念、産油国の財政リスクなど負の連鎖を想起させている可能性がある。 日本株市場のみならず、世界市場が再び本格的な上昇トレンドに回帰するために は、こうした世界経済の減速懸念の後退が必須条件であり、そのためには世界全体 の製造業サイクルの底打ち確認が必要だろう。なかでも先進国の製造業部門の回復 力がカギを握るのではないだろうか。 日本株市場は既に売られ 過ぎの水準 日経平均が終値ベースで 17,000 円を下回った際のチャート上の下値目途としては、 16,820 円処、16,580 円処、16,070 円処が計算値としてあげられる。もっとも、日本株市 場は株価バリュエーション面からみて従来から割高感はない。むしろ足元の株価下落 により TOPIX12 ヵ月先予想 PER(IBES 予想)は 12.62 倍まで低下するなど、米国株と の相対比較において割安感も強まっている(図表 1、2)。さらに、テクニカル面に着目 すると、1 月 18 日現在、東証一部 25 日騰落レシオは 50%台と既に売られ過ぎの水準 (一般的に 70%以下で売られ過ぎを表す)に到達しているほか、日経平均の 26 週移 動平均とのかい離率は▲10.2%と大幅なマイナス乖離状態にある(図表 3)。アジア圏 という括りのなかで、中国発の市場の混乱から先物主導のポジション調整、もしくはヘ ッジ売りが嵩んでいる感は否めないだけに、きっかけ次第では、いつリバウンド局面入 りとなっても不思議ではないだろう。 図表1. TOPIX 予想 EPS を基にした日経平均予想 PER の試算と日経平均の推移 30,000 (円) EPS×18 25,000 ×16 ×14 20,000 ×12 15,000 日経平均 10,000 5,000 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 (年) 注:TOPIX の 12 ヵ月先予想 EPS を基に、NT 倍率を用いて PER ごと(12~18 倍)の日経平均(週足)の水準を試 算。(図の点線部分。予想は IBES) 出所: Datastream よりSMBC日興証券作成 2/4 本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。 2016 年 1 月 18 日(月) Spot Report 投資情報部 図表2. 日米主要株価指数の予想 PER の推移 図表3. 日経平均と主なテクニカル指標 18 (倍) 200 17 S&P500予想PER (%) 日経平均(右第2軸) 東証一部25日 騰落レシオ(左軸) (%) (円) 30 22,000 25 20,000 16 160 20 18,000 15 140 15 16,000 120 10 14,000 100 5 12,000 0 10,000 -5 8,000 14 180 13 12 80 TOPIX予想PER 60 40 13/1 11 13/1 13/5 13/9 14/1 14/5 v 日経平均26週移動平均乖離率(右第1軸) 6,000 16/1 (年/月) -10 13/7 14/1 14/7 15/1 15/7 14/9 15/1 15/5 15/9 16/1 (年/月) 注:予想は IBES12 ヵ月先予想ベース。直近値は TOPIX が 1 月 18 日終値、 注:丸点線は東証一部 25 日騰落レシオが 80%未満かつ日経平均 26 週 S&P500 が 1 月 15 日終値 移動平均乖離率がマイナスの期間を示す 出所: Datastream よりSMBC日興証券作成 出所: QUICK よりSMBC日興証券作成 年前 半での 時間分散投 資に妙味あり なお、円安一巡による為替メリットの剥落や世界経済の減速懸念等から、17/3 期な ど業績の先行きに対して会社側から保守的な見通しが相次ぐ可能性が高く、2016 年 前半は上値の重い展開が予想される。しかしながら、年後半以降は先進国主導の世 界経済拡大シナリオ、そして企業収益の伸びに見合った世界的な株価上昇を見込ん でおり、投資スタンスとしては年前半での時間分散による押し目買いが望ましいであ ろう。春先にかけては好業績の内需関連株、夏場にかけては割安な国際優良株に注 目したい。 1月下旬から2月上旬の 時間帯に期待 スケジュール面では、1 月 21 日の ECB(欧州中央銀行)理事会、1 月 26~27 日の FOMC、1 月 28~29 日の日銀金融政策決定会合などに加え、中国の消費に対する 思惑が高まりやすい 2 月 8 日の中国春節に注目。まずは 1 月下旬から 2 月上旬にか けての時間帯を、当面の相場の転機として期待したい。 以上 3/4 本レポートについての注意事項は巻末をご覧ください。 2016 年 1 月 18 日(月) Spot Report 投資情報部 本資料について 【免責事項】 本資料は証券その他の投資対象の売買の勧誘ではなく、SMBC日興証券株式会社(以下「弊社」といいます)が投資情報の提供を目 的に作成したものです。本資料は、弊社が信頼できると判断した情報源から入手した情報に基づいて作成していますが、これらの情報 が完全、正確であるとの保証はいたしかねます。情報が不完全または要約されている場合もあります。本資料に記載する価格、数値等 は、過去の実績値、概算値あるいは将来の予測値であり、実際とは異なる場合があります。かかる価格、数値等は予告なしに変更する ことがありますので、予めご了承くださいますようお願いいたします。本資料は将来の結果をお約束するものでもありませんし、本資料に ある情報をいかなる目的で使用される場合におきましても、お客様の判断と責任において使用されるものであり、本資料にある情報の 使用による結果について、弊社及び弊社の関連会社が責任を負うものではありません。本資料は、本資料を受領される特定のお客様 の財務状況、ニーズ又は投資目的を考慮して作成されているものではありません。本資料はお客様に対して税金・法律・投資上のアド バイスを提供する目的で作成されたものではありません。投資に関する最終決定は、契約締結前交付書面、上場有価証券等書面、目 論見書、お客様向け資料等をよくお読みになり、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。 本資料は、弊社又は弊社の関連会社から配布しています。本資料に含まれる情報は、提供されましたお客様限りでご使用ください。本 資料は弊社の著作物です。本資料のいかなる部分についても電子的または機械的な方法を問わず、いかなる目的であれ、無断で複製 または転送等を行わないようにお願いいたします。本資料に関するお問い合わせは、弊社の営業担当者までお願いいたします。 本資料に記載された会社名、商品名またはサービス名等は、弊社または各社の商標または登録商標です。 【金融商品取引法第 37 条(広告等の規制)にかかる留意事項 】 手数料等について 弊社がご案内する商品等へのご投資には、各商品等に所定の手数料等をご負担いただく場合があります。例えば、店舗における国内 の金融商品取引所に上場する株式等(売買単位未満株式を除く。)の場合は約定代金に対して最大 1.242%(ただし、最低手数料 5,400 円)の委託手数料をお支払いいただきます。投資信託の場合は銘柄ごとに設定された各種手数料等(直接的費用として、最大 4.32%の 申込手数料、最大 4.5%の換金手数料又は信託財産留保額、間接的費用として、最大年率 5.61%の信託報酬(又は運用管理費用)及 びその他の費用等)をお支払いいただきます。債券、株式等を募集、売出し等又は相対取引により購入する場合は、購入対価のみをお 支払いいただきます(債券の場合、購入対価に別途、経過利息をお支払いいただく場合があります。)。また、外貨建ての商品の場合、 円貨と外貨を交換、又は異なる外貨間での交換をする際には外国為替市場の動向に応じて弊社が決定した為替レートによるものとしま す。上記手数料等のうち、消費税が課せられるものについては、消費税分を含む料率又は金額を記載しております。 リスク等について 各商品等には株式相場、金利水準、為替相場、不動産相場、商品相場等の価格の変動等及び有価証券の発行者等の信用状況(財 務・経営状況を含む。)の悪化等それらに関する外部評価の変化等を直接の原因として損失が生ずるおそれ(元本欠損リスク)、又は元 本を超過する損失を生ずるおそれ(元本超過損リスク)があります。 なお、信用取引又はデリバティブ取引等(以下「デリバティブ取引等」といいます。)を行う場合は、デリバティブ取引等の額が当該デリバ ティブ取引等についてお客様の差入れた委託保証金又は証拠金の額(以下「委託保証金等の額」といいます。)を上回る場合があると共 に、対象となる有価証券の価格又は指標等の変動により損失の額がお客様の差入れた委託保証金等の額を上回るおそれ(元本超過 損リスク)があります。 また、店頭デリバティブ取引については、弊社が表示する金融商品の売付けの価格と買付けの価格に差がある場合があります。 上記の手数料等及びリスク等は商品毎に異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面や目論見書又はお客様向け資料等をよ くお読みください。なお、目論見書等のお問い合わせは弊社各部店までお願いいたします。 商 号 等 SMBC日興証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 2251 号 加入協会 日本証券業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、一般社団法人第二種金融商 品取引業協会 (2015/04/09 版) 4/4
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