国際金融為替マンスリー

国際金融為替マンスリー
FOREIGN EXCHANGE
2016 年 2 月
Global Markets Research
2016 年 1 月 21 日
リサーチアナリスト
1.ドル円市場 ......................................................................................... 6
1-1 人民元ショック、米雇用統計と円安シナリオ ............................................... 6
1-2 本邦勢の対外証券買い越しペースが減速............................................... 11
2.欧州通貨市場 .................................................................................. 13
2-1 ユーロ:中期的な資金フローはユーロ減価要因に転じる .......................... 13
グローバル為替ストラテジー
池田 雄之輔 - NSC
中島 將行 - NSC
小池 基生 - NSC
後藤 祐二朗 - NIplc
ユーロ圏の基礎的収支のトレンドは 2015 年に変化 ...................................... 14
2-2 英ポンド:原油・金融市場の混乱など向かい風が多い .............................. 23
2-3 トルコリラ:物価安定に向けた中央銀行の信認が問われる ...................... 24
3.資源国通貨市場 ............................................................................... 25
3-1 豪ドル:本格的な景気回復が相場の底堅さにつながるか.......................... 25
3-2 NZ ドル:物価・商品動向は当局の想定通りに推移するか ........................ 26
北米経済
雨宮 愛知 エコノミスト - NSI
日本経済
木下 智夫 チーフエコノミスト - NSC
桑原 真樹 シニアエコノミスト - NSC
3-3 カナダドル:BOC はひとまず財政政策待ち .............................................. 27
3-4 ブラジルレアル:財政規律か、成長支援か............................................... 28
3-5 メキシコペソ: 15 年 8 月の「人民元ショック」を振り返る ........................... 30
3-6 南アフリカランド:南アフリカランドはどこに向かうのか? .......................... 31
4.アジア通貨市場 ................................................................................ 39
4-1 アジア通貨見通し改定:人民元・アジア通貨見通しの改定 ....................... 39
4-2 中国元:景気は年前半も軟調が続く見込み ............................................. 43
4-3 韓国ウォン:中央銀行は追加金融緩和に消極的 ..................................... 45
4-4 インドルピー:新興国不安の中で台風の目となるか ................................. 46
4-5 インドネシアルピア:満を持して利下げを実施 .......................................... 48
5.日本経済・金利:相場急変下の日本経済の論点 ................................ 49
6.米国経済・金利:景気後退入りの確率を推定する............................... 54
7.欧州経済・金利: 2016 年も課題は変わらず ...................................... 64
8.英国経済・金利:景気サイクルに対し利上げが遅れる ........................ 66
本レポートはノムラ・インターナショナル plc、ノムラ・セキュリティー
9・10・11.中東欧(ハンガリー・ポーランド・チェコ)経済・金利 ..................68
ズ・インターナショナルからの寄稿を一部に含む。本レポ
主要国の主な日程(2016 年 2 月) ....................................................... 73
20 日午前 9 時、それ以外は同 21 日午前 9 時ま
ート内容は、第 5 章以降は日本時間 2016 年 1 月
での情報に基づく。
Appendix A-1に記載されているアナリスト証明、重要なディスクロージャー及び米国以外のアナリストのステータス
をお読み下さい。
Nomura | 国際金融為替マンスリー
2016 年 1 月 21 日
図表 1: 為替・経済・金利前提一覧
※予告なしに変更する場合があります。
ドル USD/JPY
ユーロ EUR/JPY
ポンド GBP/JPY
豪ドル AUD/JPY
加ドル CAD/JPY
ニュージーランドドル NZD/JPY
南アランド ZAR/JPY
ブラジルレアル BRL/JPY
メキシコペソ MXN/JPY
トルコリラ TRY/JPY
インドルピー INR/JPY
2015.1Q
2015.2Q
2015.3Q
2015.4Q
末値
レンジ
末値
レンジ
末値
レンジ
末値
レンジ
末値
レンジ
末値
レンジ
末値
レンジ
末値
レンジ
末値
レンジ
末値
レンジ
末値
レンジ
120.1
122.5
119.9
120.2
2016.1Q(予) 2016.2Q(予) 2016.3Q(予) 2016.4Q(予)
128.9
136.5
134.0
130.6
178.0
192.5
181.3
177.1
91.4
94.4
84.1
88.6
94.7
98.0
90.0
86.9
89.7
82.9
76.7
82.2
9.90
10.07
8.65
7.76
37.6
39.5
30.4
30.4
7.87
7.78
7.09
6.98
46.2
45.7
39.6
41.2
1.93
1.95
1.83
1.82
2015.1Q
2015.2Q
2015.3Q
4.4
-0.5
1.0
0.6
1.6
1.9
1.3
2.0
122
114∼125
128
124∼131
176
162∼180
81
79∼83
85
79∼87
76
74∼78
7.3
6.8∼7.5
30
28∼31
7.1
6.2∼7.3
41
38∼42
1.83
1.68∼1.87
125
119∼131
125
119∼131
176
167∼185
80
76∼84
86
82∼91
78
74∼81
7.1
6.8∼7.5
31
29∼32
7.3
6.9∼7.7
42
40∼44
1.86
1.77∼1.95
128
122∼134
128
122∼134
180
171∼190
82
78∼86
88
83∼92
79
75∼83
7.0
6.7∼7.4
31
29∼32
7.4
7.1∼7.8
43
41∼46
1.90
1.81∼2.00
130
124∼137
130
124∼137
191
182∼201
85
80∼89
88
84∼93
81
77∼85
6.8
6.5∼7.2
31
29∼33
7.5
7.2∼7.9
45
43∼47
1.93
1.84∼2.03
(出所)野村
(
経済・金利前提
[日本] 実質経済成長率(前期比年率) (%)
2015.4Q(予) 2016.1Q(予) 2016.2Q(予) 2016.3Q(予) 2016.4Q(予)
消費者物価コア(前年比)
(%)
2.1
0.1
-0.1
-0.1
0.5
0.4
0.8
1.2
無担コール・オーバーナイト
(%)
0.07
0.07
0.07
0.07
0.07
0.07
0.07
0.07
10年債ベンチマーク金利
(%)
0.40
0.46
0.35
0.35
0.50
0.65
0.70
0.80
[米国] 実質経済成長率(前期比年率) (%)
0.6
3.9
2.0
0.7
2.0
2.2
2.1
2.0
消費者物価コア(前年比)
(%)
1.7
1.8
1.8
2.0
2.1
1.9
2.0
1.9
フェデラルファンドレート
(%)
0-0.25
0-0.25
0-0.25
0.25-0.50
0.25-0.50
0.50-0.75
0.50-0.75
0.75-1.00
10年財務省証券
(%)
1.94
2.35
2.04
2.20
2.30
2.45
2.20
2.50
[ユーロ] 実質経済成長率(前期比)
(%)
0.5
0.4
0.3
0.3
0.3
0.4
0.4
0.4
消費者物価(前年比)
(%)
-0.3
0.2
0.1
0.2
0.8
0.5
0.8
1.1
メインリファイナンス金利
(%)
0.05
0.05
0.05
0.05
0.05
0.05
0.05
0.05
独10年連邦債
(%)
0.20
0.78
0.59
0.60
0.65
0.75
0.85
0.90
(%)
0.4
0.7
0.5
0.6
0.6
0.6
0.7
0.6
消費者物価(前年比)
(%)
0.1
0.0
0.0
0.1
0.6
1.1
1.3
2.0
オフィシャル・バンク・レート
(%)
0.50
0.50
0.50
0.50
0.50
0.75
1.00
1.25
10年国債
(%)
1.58
2.02
1.76
2.10
2.30
2.40
2.45
2.50
(%)
2.1
1.9
2.5
2.6
2.4
2.7
2.3
2.4
消費者物価(前年比)
(%)
1.3
1.5
1.5
1.7
1.9
1.9
2.2
2.2
オフィシャル・キャッシュ・レート
(%)
2.25
2.00
2.00
2.00
1.75
1.75
1.75
1.75
10年国債
(%)
2.32
3.01
2.61
2.80
2.90
3.00
3.10
3.20
実質経済成長率(前年比)
(%)
2.6
2.5
2.4
2.0
2.2
2.2
2.4
2.6
消費者物価(前年比)
(%)
0.3
0.4
0.4
0.4
1.2
1.2
1.6
1.5
オフィシャル・キャッシュ・レート
(%)
3.50
3.25
2.75
2.50
2.50
2.50
2.50
2.50
10年国債
(%)
3.23
3.63
3.28
3.20
3.30
3.40
3.60
3.70
[英国] 実質経済成長率(前期比)
[豪州] 実質経済成長率(前年比)
[NZ]
出所: 野村
2
Nomura | 国際金融為替マンスリー
2016 年 1 月 21 日
図表 2: 各通貨メインシナリオ/リスク要因等
メ イ ン シ ナ リ オ コ メ ン ト
ドル円
本邦投資家による積極的な対外投資や日米金利差拡大などを背景に、中期的な円安トレンドを予想。
リ ス ク 要 因 等
欧州債務問題や地政学リスクの台頭、米利上げペースの後退
ユーロ
米欧金融政策の逆行性などによりユーロは下落基調を辿る。
証券フローの増加、景気持ち直しに伴う緩和期待の後退。
ポンド
BOEに対する利上げ開始期待、EU離脱を巡る世論を背景に、当面は上下に振れやすい。
住宅価格の大幅下落、欧州景気の落ち込み、EU離脱リスク。
豪ドル
米ドル高・商品安、RBAの通貨安誘導を背景に緩やかな下落が続く。
中国景気の急減速、大幅な追加利下げ
加ドル
原油安・米カナダ金利差拡大により、基調的に減価。
米国景気失速、原油価格急騰/急落。
NZドル
米ドル高やRBNZの通貨安誘導を背景に軟調な展開が続く。
乳製品価格の急上昇、当局の為替介入
南ア
ランド
利上げ期待が下支えとなるも経常赤字のファイナンス懸念が重石。
プラチナ価格の大幅上昇、中銀の大幅利上げ。
ブラジル
レアル
資源価格低迷、経済悪化、不安定な政治情勢を受け、基調的なレアル安が続く。
資源価格の動向、インフレ・財政懸念、政治を巡る不透明感。
メキシコ
原油安、米ドル高により、目先は不安定化も、構造改革や米景気拡大の波及により中長期的にはペソ高に。 原油価格低迷の長期化、米金融政策動向、地域経済の安定性
ペソ
トルコ
リラ
政情不安や米利上げに伴う資金流出懸念により、リラは減価基調を辿る。
インド
経常赤字縮小とインフレ鎮静化に加え、政権交代による構造改革への期待がルピーを支える展開。
ルピー
(出所)野村
政治リスクの大幅な後退、欧州経済の持ち直しが波及。
原油価格の高騰、天候不順による不作、改革の遅れ。
メ イ ン シ ナ リ オ コ メ ン ト
[日本]
1)15年7-9月期の成長率は前期比年率+1.0%に上方修正された。景気は10-12月期以降も緩やかな回復
軌道を辿ると予想している。
2)コアCPI上昇率は16年度に前年度比+0.9%と予想するが、月次ベースでも日銀が掲げる2%目標に届か
ないと見込む。
3)日本銀行は16年4月に株式ETFの買い入れ額増額を柱に追加緩和後、16年10月には国債買い入れ額の
減額を開始すると見込む。
[米国]
リ ス ク 要 因 等
1) 欧州景気の減速。
2) 中国景気の失速と米国景気の低迷。
3) 急激な円高・株安などの金融市場の急変動。
4) 新興国での政治的不安定化。
1) 輸出の減速、在庫調整、設備投資の減少は経済成長率を抑制する。
1) 中国などアジア景気の減速。
2) インフレの先行きが不透明であること及び均衡金利の低下は、緩やかな利上げを示唆している。
2) 急激なドル高による景気減速、ディスインフレ。
3) 労働市場は改善しているものの、ドル高がコアインフレ率の上昇ペースを抑制する。
3) 原油安の長期化による鉱業関連設備投資の減少。
4)住宅ローンの貸出基準は厳しいものの、世帯形成の加速が住宅市場の追い風になる。
4) 急激な株安など、金融市場の混乱。
5) 雇用及び賃金の伸びに合わせて個人消費は緩やかに伸びていくと予想。
[ユーロ]
1) 金融緩和や原油安の影響で景気は上向くものの、その改善ペースは緩やかなものにとどまる。
1) ギリシャのユーロ離脱に伴う欧州金融市場の混乱。
2) インフレ率は16年末まで1%未満で推移する見込み。
2) 英米景気の失速。
3) ECBは早くて16年4-6月期に追加緩和を実施すると予想。
3) 景気刺激のための拡張的な財政政策の実施。
4) 南欧政治の不透明感が続く可能性。
[英国]
1) 海外景気の失速。
1) 住宅市況が徐々に持ち直しを見せることで、英国景気の改善ペースは加速していくと予想される。
2) 住宅市況の大幅悪化。
2) インフレ率は伸び悩み、15年年末時点でもBOEのターゲットである2%を下回る。
3) 賃金上昇の大幅鈍化。
3) 余剰生産能力が徐々に縮小し、2016年5月に利上げが開始される見込み。
4) 英国のEU離脱。
[豪州]
1) 中国固定資本形成の下振れ/上振れ。
1) 鉱業部門の設備投資は減少する一方、資源輸出の本格化待ち。
2) 追加利下げ
2) 景気下支えのために、通貨安誘導政策・低金利政策を維持。
3) 企業マインド低迷に伴う設備投資復調の後ずれ。
3) 失業率は高止まる一方、インフレ率は目標レンジ内で抑制される公算。
4) LNG生産・輸出開始の遅れ。
[NZ]
1) 乳製品市況の大幅悪化を受け、景気モメンタムが大幅に低下。
1) 乳製品価格の再下落。
2) 雇用拡大ペースを上回る移民流入が継続。
2) 地震などの 自然災害による経済活動の停滞。
3) 労働需給の悪化などを背景に、低インフレが長期化。
3) NZドル高による輸出・インフレ抑制。
4) RBNZは16年末まで政策金利を据え置く公算。
4) 住宅価格の急落。
出所: 野村
3
1900
1800
1700
1600
1500
1400
1300
1200
1100
1000
900
800
600
68.0
66.0
(年/月)
(1973年=100)
名目実効ドルレート(左軸)
96.0
94.0
86.0
84.0
78.0
76.0
(年/月)
(米ドル/ポンド)
対ドルレート(左軸)
2.2
1.3
07/01
07/04
07/07
07/10
08/01
08/04
08/07
08/10
09/01
09/04
09/07
09/10
10/01
10/04
10/07
10/10
11/01
11/04
11/07
11/10
12/01
12/04
12/07
12/10
13/01
13/04
13/07
13/10
14/01
14/04
14/07
14/10
15/01
15/04
15/07
15/10
16/01
07/01
07/04
07/07
07/10
08/01
08/04
08/07
08/10
09/01
09/04
09/07
09/10
10/01
10/04
10/07
10/10
11/01
11/04
11/07
11/10
12/01
12/04
12/07
12/10
13/01
13/04
13/07
13/10
14/01
14/04
14/07
14/10
15/01
15/04
15/07
15/10
16/01
700
TOPIX(左軸)
07/01
07/04
07/07
07/10
08/01
08/04
08/07
08/10
09/01
09/04
09/07
09/10
10/01
10/04
10/07
10/10
11/01
11/04
11/07
11/10
12/01
12/04
12/07
12/10
13/01
13/04
13/07
13/10
14/01
14/04
14/07
14/10
15/01
15/04
15/07
15/10
16/01
07/01
07/04
07/07
07/10
08/01
08/04
08/07
08/10
09/01
09/04
09/07
09/10
10/01
10/04
10/07
10/10
11/01
11/04
11/07
11/10
12/01
12/04
12/07
12/10
13/01
13/04
13/07
13/10
14/01
14/04
14/07
14/10
15/01
15/04
15/07
15/10
16/01
(1968年1月4日=100)
(1941-43年=10)
2300
2200
2100
2000
1900
1800
1700
1600
1500
1400
1300
1200
1100
1000
900
800
700
600
500
400
(円/米ドル)
対円レート(右軸)
130
92.0
125
90.0
120
88.0
115
95
74.0
90
72.0
70.0
85
80
75
(円/ポンド)
280
2.1
260
2.0
240
1.9
220
(年/月)
100
2.0
1.9
1.8
1.7
1.6
1.5
1.4
1.3
1.2
1.1
1.0
0.9
0.8
0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0.0
1.00
対円レート(右軸)
1.15
1.8
200
1.7
180
1.6
160
0.75
70
1.5
140
0.70
65
0.65
60
1.4
120
0.60
07/01
07/04
07/07
07/10
08/01
08/04
08/07
08/10
09/01
09/04
09/07
09/10
10/01
10/04
10/07
10/10
11/01
11/04
11/07
11/10
12/01
12/04
12/07
12/10
13/01
13/04
13/07
13/10
14/01
14/04
14/07
14/10
15/01
15/04
15/07
15/10
16/01
07/01
07/04
07/07
07/10
08/01
08/04
08/07
08/10
09/01
09/04
09/07
09/10
10/01
10/04
10/07
10/10
11/01
11/04
11/07
11/10
12/01
12/04
12/07
12/10
13/01
13/04
13/07
13/10
14/01
14/04
14/07
14/10
15/01
15/04
15/07
15/10
16/01
Nomura | 国際金融為替マンスリー
2016 年 1 月 21 日
株価・長期金利・為替相場の推移
図表 3: 株価・長期金利・為替相場の推移(1)
株価
(%)
日本の10年債利回り(左軸)
長期金利
S&P500種(右軸)
米ド ル
(米ドル/ユーロ)
1.65
ポンド
(米ドル/豪ドル)
対ドルレート(左軸)
対ドルレート(左軸)
(%)
米国の10年債利回り(右軸)
6.0
5.6
5.2
4.8
4.4
4.0
3.6
3.2
2.8
2.4
2.0
1.6
1.2
(年/月)
0.8
0.4
ユーロ
(円/ユーロ)
対円レート(右軸)
1.60
180
1.55
171
1.50
162
1.45
153
110
1.40
144
82.0
105
1.35
80.0
100
1.30
135
1.25
126
1.20
1.15
117
1.10
108
1.05
(年/月)
99
90
豪ド ル
(円/豪ドル)
対円レート(右軸)
1.10
110
105
1.05
100
1.00
95
0.95
90
0.90
85
0.85
80
0.80
75
0.55
(年/月)
55
50
出所: ブルームバーグ、野村
4
1.1
1.2
1.3
1.4
1.5
1.6
1.7
1.8
1.9
2.0
2.1
2.2
2.3
2.4
2.5
2.6
2.7
2.8
2.9
3.0
3.1
3.2
3.3
(逆目盛、
ブラジルレアル/米ドル)
0.70
0.50
0.45
(逆目盛、
トルコリラ/米ドル)
対ドルレート(左軸)
対ドルレート(左軸)
07/01
07/04
07/07
07/10
08/01
08/04
08/07
08/10
09/01
09/04
09/07
09/10
10/01
10/04
10/07
10/10
11/01
11/04
11/07
11/10
12/01
12/04
12/07
12/10
13/01
13/04
13/07
13/10
14/01
14/04
14/07
14/10
15/01
15/04
15/07
15/10
16/01
07/01
07/04
07/07
07/10
08/01
08/04
08/07
08/10
09/01
09/04
09/07
09/10
10/01
10/04
10/07
10/10
11/01
11/04
11/07
11/10
12/01
12/04
12/07
12/10
13/01
13/04
13/07
13/10
14/01
14/04
14/07
14/10
15/01
15/04
15/07
15/10
16/01
対ドルレート(左軸)
1.4
1.6
1.8
3.0
3.2
3.4
3.6
3.8
4.0
28
4.2
24
(年/月)
4.4
07/01
07/04
07/07
07/10
08/01
08/04
08/07
08/10
09/01
09/04
09/07
09/10
10/01
10/04
10/07
10/10
11/01
11/04
11/07
11/10
12/01
12/04
12/07
12/10
13/01
13/04
13/07
13/10
14/01
14/04
14/07
14/10
15/01
15/04
15/07
15/10
16/01
07/01
07/04
07/07
07/10
08/01
08/04
08/07
08/10
09/01
09/04
09/07
09/10
10/01
10/04
10/07
10/10
11/01
11/04
11/07
11/10
12/01
12/04
12/07
12/10
13/01
13/04
13/07
13/10
14/01
14/04
14/07
14/10
15/01
15/04
15/07
15/10
16/01
(米ドル/NZドル)
(円/NZドル)
0.90
103
0.85
96
0.80
89
0.75
82
75
0.65
68
0.60
61
0.55
54
(年/月)
47
40
(円/トルコリラ)
104
96
88
80
72
64
56
48
(年/月)
40
32
(円/ブラジルレアル)
対円レート(右軸)
72
2.0
64
2.2
60
2.4
56
2.6
52
2.8
48
36
20
6.0
6.5
7.0
7.5
8.0
8.5
9.0
9.5
10.0
10.5
11.0
11.5
12.0
12.5
13.0
13.5
14.0
14.5
15.0
15.5
16.0
16.5
17.0
17.5
9.0
21.0
07/01
07/04
07/07
07/10
08/01
08/04
08/07
08/10
09/01
09/04
09/07
09/10
10/01
10/04
10/07
10/10
11/01
11/04
11/07
11/10
12/01
12/04
12/07
12/10
13/01
13/04
13/07
13/10
14/01
14/04
14/07
14/10
15/01
15/04
15/07
15/10
16/01
07/01
07/04
07/07
07/10
08/01
08/04
08/07
08/10
09/01
09/04
09/07
09/10
10/01
10/04
10/07
10/10
11/01
11/04
11/07
11/10
12/01
12/04
12/07
12/10
13/01
13/04
13/07
13/10
14/01
14/04
14/07
14/10
15/01
15/04
15/07
15/10
16/01
Nomura | 国際金融為替マンスリー
2016 年 1 月 21 日
図表 4: 株価・長期金利・為替相場の推移(2)
N Zド ル
(逆目盛、
加ドル/米ドル)
対円レート(右軸)
トルコリラ
(逆目盛、
南アランド/米ドル)
対円レート(右軸)
ブラジルレアル
(逆目盛、
メキシコペソ/米ドル)
対ドルレート(左軸)
加ド ル
1.50
対ドルレート(左軸)
対ドルレート(左軸)
(円/加ドル)
0.90
対円レート(右軸)
130
0.95
1.00
122
1.05
114
1.10
1.15
106
1.20
98
1.25
90
1.30
82
1.35
1.40
74
1.45
(年/月)
66
(年/月)
対円レート(右軸)
68
11.0
44
19.0
(年/月)
58
南アランド
(円/南ア・ランド)
対円レート(右軸)
20.0
19.0
18.0
17.0
16.0
15.0
14.0
13.0
12.0
11.0
10.0
9.0
8.0
7.0
6.0
メキシコペソ
(円/メキシコペソ)
12.0
11.0
13.0
10.0
15.0
9.0
40
8.0
17.0
32
7.0
6.0
5.0
出所: ブルームバーグ、野村
5
Nomura | 国際金融為替マンスリー
2016 年 1 月 21 日
1. ドル円市場
1-1 人民元ショック、米雇用統計と円安シナリオ
中国人民元に何が起きているのか。「元安の加速傾向」は、1ドル=6.40 元
前後という8月の「人民元ショック」の水準を超えて元安が進んだ昨年 12 月
2016 年は、年初から人民元が
急落してスタート
から、一部の市場参加者が話題にし始めていた。しかし、誰の目にも明らかな
急激な元安が進行したのは1月4日からである。その日、オンショア人民元
(CNY)の基準値(fixing)が年末よりも 0.15%元安方向に設定され、しかも
元安がオフショア市場(CNH)で加速しても当局の牽制姿勢が見られなかった
ことから、「人民銀行が競争的通貨切り下げに動き出した」との警戒感を招い
た。元の対ドル急落は、5日こそ見られなかったものの、6・7日に繰り返さ
れ、世界的なリスクオフの震源地となった。
最大の問題はおそらく、市場が当局の意図を図りかねている、という点だろ
う。すなわち年初来、人民元の基準値の設定と為替介入の方針に「一貫性がな
い」との困惑が広がっており、多数派は「積極的な切り下げに動いている」と
解釈している。たとえば、6 日にはオフショア市場で元買い介入したかと思い
きや、7 日は大幅な元安水準に基準値を設定している。
筆者の見立てでは、人民銀行は昨年 8 月の「元切り下げ」以降、年末までは
「原油価格の変動に一定の比率で元レートを連動させる」という完全な管理相
人民銀は原油価格を重視する方
針から転換したとの仮説
場を貫いてきた(図表 5)。しかし、新年のスタートを機に当局はさまざまな
形で金融市場の自由化に動いた。株式市場においては株式売却規制の撤廃を前
提にサーキットブレーカーを導入したが、失敗している。為替市場においては、
オンショア人民元(CNY)の取引時間を延長するとともに、為替介入を大幅に
縮小する方針に切り替えていた公算が大きい。基準値の設定に際しては、(1)前
日の終値、(2)オフショア市場などに現れる需給、(3)実効レート、(4)原油価格、
を参照していると推察される。ところが、市場では原油価格下落の影響を無視
しているため、「予想外に積極的な元安政策」と解釈された公算が大きい。
図表 5: 人民元と原油の相関関係は、1月に崩れ始めた
(ドル/バレル)
(元/ドル)
70
6.15
65
原油安
元安
北海ブレント(左軸)
60
6.20
6.25
人民元(対ドル、右逆軸)
55
6.30
50
6.35
45
6.40
40
6.45
35
6.50
30
6.55
25
6.60
6/1
7/1
8/1
9/1
10/1
11/1
12/1
1/1
出所: ブルームバーグ、野村
いずれにせよ、当局も「元安が世界的なリスクオフをもたらしている」とい
う現実も受け止めつつ、1 月 12 日にはオフショア市場での大規模な元買い介入
6
Nomura | 国際金融為替マンスリー
2016 年 1 月 21 日
を発動するなどして、市場の元安観測を牽制しに回ってきた。当局がすでに声
明を発表した通り、「輸出促進のための元安政策はとらない」という姿勢に偽
りはない、と筆者は考えている。実効レートで評価した場合、元相場はすでに
7日の時点で、8 月の「元ショック」後に「調整は終了した」と人民銀行が宣
言した時点とほぼ同水準に戻っている。2月第2週には「旧正月」そして同月
末には上海 G20 財務大臣・中銀総裁会合が控えている。当局は人民元の安定を
図るべく、管理相場に後戻りした公算が大きい。
年初からの「第 2 次元ショック」を震源地とし、世界的な株安、金利低下、
および原油安が進行している。このリスクオフ局面は、決定的なファンダメン
世界的な株安にはテクニカルな
色彩も
タルズの悪化がないなかで進捗しているという点で、「第 1 次元ショック」が
引き金を引いた8・9月の展開に酷似している。見逃せないのは、本来中国景
気リスクや原油価格に左右されにくいはずの米ハイテク株がいずれの局面でも
大幅調整している点である。よって、リスクオフの発端は「元切り下げへの警
戒」だったとしても、それが増幅される過程では「何でも売り」になっている
公算が大きい。今回は、決算発表シーズンの本格的な到来を前にしたポジショ
ン圧縮という側面も含んでいよう。中国株、米国株ともに代表的な指数は前回
のボトムまで下落した。元相場の安定を契機に、リスクオフが早期に収束する
可能性もあろう。
一方、為替市場では円高が進行しており、1ドル=117 円を割り込む局面さ
え出てきた。円相場は、米国の利上げ期待との連動性を失い、「リスクオフ=
日銀の「補完措置」が結果的に、
円ロングの誘い水に
円高」という反応を見せるように変貌している。転機となったのは明らかに 12
月 18 日であろう(図表 6)。日銀が「量的・質的緩和の補完措置」を打ち出し
て以降、海外投資家は円ロングを躊躇しなくなった。「補完措置」は、本来は
現行の緩和措置の継続性を強化する政策なのだが、海外投資家は「バズーカ
(大規模緩和)をやりたくない証拠だ」と解釈しているようだ。このため、日
銀による円ロングの抑止効果が弱まってしまった状況である。シカゴ IMM デー
タでも、非商業部門のネットポジションは1月5日時点(スポット:1ドル=
119.06 円)でいよいよロングに転じた。このデータでの円ロングは「アベノミ
クス相場」とされる 2012 年 11 月以降では初めてである。
図表 6: 米国の利上げ織り込みとドル円の相関を崩した「日銀への失望」
1 6年12 月末までの利上げ回数
(ドル円)
130
(%)
5回 ― 1.375
1.250
2017年1月限のFF先物金利(左軸)
4回 ― 1.125
ドル円レート(右軸)
128
12月18日 日銀
「緩和補完措置」
126
1.000
124
3回 ― 0.875
122
0.750
120
2回 ― 0.625
118
0.500
116
1回 ― 0.375
7/1
7/15 7/29 8/12 8/26
9/9
9/23 10/7 10/21 11/4 11/18 12/2 12/16 12/30 1/13
出所: ブルームバーグ、 野村
7
Nomura | 国際金融為替マンスリー
2016 年 1 月 21 日
上述の(1)日銀による緩和補完措置の影響に加え、(2)人民元安、(3)原油安の
3 つの想定外を受け、当社は 2016 年前半のドル円予測値を 3 月末:122 円(従来
126 円)、6 月末:125 円(同 128 円)にそれぞれ引き下げた。
しかし、年内に 1 ドル=130 円に達するとのドル高・円安シナリオに変更は
ない。確かに、原油安価格(年間想定値)が 60 ドル/バレルから 30 ドルに下
がると、エネルギー輸入を通じた円売り需要が約 9 兆円縮小してしまう。これ
は潜在的にドル円水準を 5 円程度押し下げるという、リアルな影響を及ぼす。
それでも、円売り超過の需給バランスそのものは消滅しない。加えて、現在、
投機的な円高の色彩が強い。これらを踏まえると、きっかけ次第で 1 ドル=
120 円方向に急速な円安が進む可能性もある。すでに人民元相場は落ち着いて
おり、暖冬要因の剥落による原油価格の持ち直しや堅調な米国企業決算などが、
反転の材料になりえる。また、1 ドル=115 円を下回る円高を防衛するべく、
日銀が追加緩和に踏み切るとの期待感も徐々に高まり、円高の抑止力となろう。
しかも、米国、中国の経済ファンダメンタルズはなんら悪化していない。1
米雇用統計は絶好調
月8日に発表された米雇用統計(12 月分)は、29.2 万人増と市場予想(20.0
万人)を大幅に上回った(図表 7)。過去2カ月分も大きく上方修正され、1012 月期平均で 28.4 万人増というハイペースである。8・9月には金融市場の
混乱で「採用は一時休止」となっていた企業による反動増の面もあろう。
時間当たり賃金(12 月分)は前月比−0.0%と、市場予想(+0.2%)を下回
った。しかし、好天の影響もあり、建設・運輸・人材派遣サービスといった比
較的低賃金の職種で雇用が強かったこと、ないし、12 月特有の季節調整の乱れ
による影響が疑われる。必ずしも賃金の「弱さ」は基調的ではないように見受
けられる。
一方、1月 15 日に発表された、米小売統計(12 月分)は、非常に弱い結果
だった。自動車・ガソリンを除くコアベースでは、前月比 0.0%と市場予想
(+0.4%)を大幅に下回った。暖冬で客足が伸びる効果が期待されたが、かえ
って衣料品など季節性商品の不振がマイナスに寄与してしまった。しかし、カ
ード会社の集計や、インターネット小売の強さを踏まえると、小売統計の弱さ
には不自然な点もある。ここで悲観的になり過ぎるべきではなかろう。
8
Nomura | 国際金融為替マンスリー
2016 年 1 月 21 日
図表 7: 米国の雇用増ペースは 15 年 10-12 月期に加速
(千人)
450
雇用者数増減(前月比)
400
同3カ月移動平均
350
300
250
200
150
100
50
15/12
15/10
15/8
15/6
15/4
15/2
14/12
14/8
14/10
14/6
14/4
14/2
13/12
13/8
13/10
13/6
13/4
13/2
12/12
12/10
12/8
12/6
12/4
12/2
11/12
0
出所: ブルームバーグ、野村
中国の景気指標では製造業 PMI(Markit 社、12 月分速報)が市場予想(48.9)
中国景気も安定傾向
を下回る 48.2 と、やや失望的だったものの、回復基調が途切れたようには見え
ない。日本では電子部品・デバイスの在庫循環が、調整局面を脱しており、ス
マートフォンを中心とするハイテクサイクルの好転は中国製造業にも及んでい
よう(図表 8)。何よりも、中国共産党は昨年 10 月末の五中全会で 2016∼20
年の5年間の目標平均成長率(実質GDP)を 6.5%と明示しており、景気の
下振れリスクは縮小している。
2016 年のグローバル金融市場は、波乱含みの幕開けとなっている。世界的
株安、金利低下、および原油安の引き金を引いたのは新たな「人民元ショック」
投機主導の円高は、ドル円の押
し目買いチャンス
のように見受けられる。しかし、市場の疑心暗鬼とは裏腹に、中国当局が競争
的な通貨引下げを企図している可能性は低い。欧米株式市場では決算シーズン
の本格化を前にポジション整理の動きが加速し、「リスクオフ」を助長したと
いうテクニカルな要因もあり得る。一方、経済ファンダメンタルズを見れば、
米国の雇用は絶好調、中国景気も安定傾向と、大きな問題は見当たらない。米
国の利上げ継続、および円売り超過の需給構造を根拠とした円安シナリオは揺
らがない(野村円需給インデックスは「円売り超過」が継続)。年初から見ら
れる投機的な円買いは、ドル円、豪ドル円の貴重な押し目買いチャンスを提供
していよう。(池田 雄之輔)
9
Nomura | 国際金融為替マンスリー
2016 年 1 月 21 日
図表 8: 日本のハイテク循環と中国の製造業サイクルは連動
(2010年=100)
(50=中立)
100
53
52
110
51
50
120
49
130
48
47
140
46
日本の電子部品・デバイス在庫率(左逆軸)
150
45
中国製造業PMI(Markit社、右軸)
44
15/12
15/10
15/8
15/6
15/4
15/2
14/12
14/10
14/8
14/6
14/4
14/2
13/12
13/10
13/8
13/6
13/4
13/2
12/12
160
出所: ブルームバーグ、野村
10
Nom
mura | 国際金融為
為替マンスリー
2016 年 1 月 21
2 日
1-2
2 本邦勢の
の対外証券買
買い越しペ
ペースが減速
速
財務
務省が 1 月 1
12 日公表した
た「対外及び
び対内証券投 資売買契約な
などの状況」に
よれ
れば、日本人
人投資家は 12
2 月に外国証
証券(株式+中
中長期債)を
を 8,706 億円買
買い
本
本邦投資家は 12
2 カ月連続で外
外
国 証券を買い越し
し
越した。このう
うち、為替中
中立的なディー
ーリングを行
行うとされる銀行勘定を除
除く
ベー
ースで見ると
と、12 月は 1 兆 749 億円
円の買い越しだ
だった(図表
表 9)。前月(1
兆 6,728 億円の
の買い越し)から買越額は
は縮小したも
ものの、このベースでの買
買い
越しは 12 カ月
しと、
月連続である。内訳を見る
ると、外国株
株は 2,519 億円の買い越
億
前月
月(5,263 億
億円の買い越し)から一段
段と買越額が
が減少した。ま
また、外国債
債も
8,2
230 億円の買
買い越しと、前
前月(1 兆 1,465 億円の買
買い越し)か
から大幅に縮
縮小
した
た。
表 9: 投資家別の対外証券
券投資
図表
出所
所: 日本財務省、 野村
投資家別に見
投
見ると、信託
託勘定(主に年
年金ファンド
ドなど)は 7,,241 億円の買
買い
年金
金勢はリバラン
ンス目的の投資
資
が主
主体の可能性
越しと、前月(3,701 億円の
の買い越し)から拡大し
した。買い越し
しは 6 カ月連
連続
ではあるものの
の、1 兆円台という大台か
からは引き続
続きペースダウ
ウンしている
る。
内訳
訳を見ると、外国株が 2,994 億円の買
買い越し、外
外国債が 4,24
47 億円の買い
い越
しだ
だった。グロ
ローバルに株
株価は概ね横這
這い圏の推移
移だった一方、ドル円は月
月末
にか
かけて円高傾
傾向だった。年金勢はリバ
バランス目的
的に、外国証
証券を引き続き
き購
入したと見られ
れる。
年金積立金管
年
管理運用独立
立行政法人(G
GPIF)のポー
ートフォリオ
オ・シフトが完了
へと向かう一方
方、その他 3 共済を含めた
た公的年金勢
勢は 7 兆円ほど外国証券購
購入
余地
地を残してい
いると試算される。リスク
クオフ相場を
を踏まえると、従来の資産
産よ
りも購入余地は
は拡大してお
おり、ドル円の
の下支え役と
となろう。
生命保険会社
生
社は外国債券
券を 2,649 億円
円の買い越し
しとなり、前月(4,032 億円
億
の買
買い越し)か
から縮小した
た。縮小した背
背景として、 (1)2001 年ぶりとなる
る米
米
米利上げ開始や年末要因などを
を
受 け、対外債券投
投資が減速した
た
可 能性
利上
上げ開始を控
控えて、取引
引を手控えてい
いた可能性、 (2)ベーシ
シススワップ
プ拡
大を受け、対外
外投資を抑制
制した可能性、
、(3)年末 という季節要
要因で取引量
量が
低下
下した可能性
性、などが考
考えられる(図
図表 10)。金
金融市場は米
米利上げを受け入
れて
ており、大き
きな混乱は見
見られていない
い一方、ベー
ーシススワップ拡大の動き
きは
一巡
巡している。商品安・人
人民元相場に端
端を発するグ
グローバルなリスクオフ相
相場
が落
落ち着けば、生保勢は対
対外債券投資を
を拡大する可
可能性が高いだろう。実際
際、
11
Nomura | 国際金融為替マンスリー
2016 年 1 月 21 日
下期運用計画では、各社ともに引き続き、外国債を積み増す方針を明らかにし
ている。生保勢のドル円予想(平均)は 3 月末:124.6 と、現在の水準自体は
魅力的と考えられる。
投資信託による対外証券投資は 985 億円の買い越しと、13 カ月連続の買い
越しではあるものの、前月(4,659 億円の買い越し)から大幅に縮小した。内
私募投信経由の投資が急減速し
た公算
訳を見ると、外国株を 980 億円の買い越し(12 カ月連続)、外国債を 5 億円
の買い越し(4 カ月連続)となった。他方、NRI が集計する投信経由の外国証
券投資は 12 月:361 億円の買い越しだった(11 月:81 億円の売り越し)。
NRI は公募投信経由のフローを集計しており、家計の投信経由による対外証券
投資をより正確に反映していると考えられる。財務省ベースと NRI ベースの差
は私募投信(地銀など機関投資家向け)の動向を映すと考えられ、NRI ベース
での投資額が買い越しに転じたことを踏まえると、12 月分では私募投信経由の
買い越しが失速した模様である。
他方、NRI ベースで買い越しにシフトしたのは、個人投資家は NISA 経由に
よる非課税枠を活用するために、対外証券投資に多少駆け込んだためと見られ
る。個人投資家のリスクセンチメントを測る上では、景気ウォッチャー調査
(2 月 12 日発表、内閣府)が有用である。その中で家計関連動向 DI(先行き)
は 12 月:47.2 と、5 カ月連続で中立水準を下回っている。家計の投信投資が
本格的な力強さを取り戻すには時間が要するだろう。
外国人投資家は 12 月に日本株を 4,649 億円売り越した。売り越しとなるの
は 3 カ月ぶり(前月:5,427 億円買い越し)。FOMC(12 月 16・17 日開催)
FOMC を控えたポジション調整
が、外国勢の日本株売りを誘発
を控えたポジション調整が、海外投資家の日本株売りを促したと考えられる。
実際、12 月 11~20 日にかけて、7,156 億円の売り越しを計上している。他方、
海外勢は短期債を 1 兆 6,936 億円買い越した。短期金利自体はマイナス近傍で
はあるものの、ベーシススワップを活用することで魅力的な金利水準となって
いた。グローバルなリスクオフが引き続き日本株買いを抑制する一方、ベーシ
ススワップ拡大の動き一巡が短期債投資の縮小につながろう。(小池
基生)
図表 10: 生保の外債投資
(10億円)
15年度
外債買い越し
14年度
3月
2月
1月
12月
11月
10月
9月
8月
7月
6月
5月
05年度以降の平均
4月
1200
1000
800
600
400
200
0
-200
-400
-600
-800
-1000
出所: 日本財務省、野村
12
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2016 年 1 月 21 日
2. 欧州通貨市場
2-1 ユーロ:中期的な資金フローはユーロ減価要因に転じる
ユーロの基礎的収支は悪化
2014 年半ば以降のユーロの対ドル相場下落は金融政策のかい離で説明でき
るが、国際的な資金フローもユーロにとってさらなるマイナス材料となってい
る。実際、基礎的収支(経常収支+直接投資+証券投資)は純流入超から中立も
しくは純流出に転じつつある。こうした観点でみると、14 年半ば以降のユーロ
下落は、1) 債券投資を通じたユーロ圏からの資本流出加速、2)15 年 4−6 月期
以降のユーロ圏への対内株式投資の減速、3)ユーロ圏から米国への M&A を通
じた資金流出の 3 点により説明できる。経常収支黒字は拡大しているが、資本
流出の増加がこれを打ち消している。野村では 16 年に債券投資を通じたユー
ロ圏からの資本流出が高水準で推移すると予想する一方、経常収支黒字はさら
に拡大することはないとみている。中期的なユーロの資金フローはここ数年よ
り弱めに推移する可能性が高く、16 年はユーロが下押し圧力を受けるだろう。
債券投資の資金フロー:債券投資を通じた資本流出加速は、資金フロー面で
のユーロ安の主因だったと考えられる。15 年に、外国人投資家はユーロ導入以
来初めてユーロ圏債券の売り越しに転じた可能性が高い。対照的に、ユーロ圏
の投資家の対外債券投資は過去最高だった。ユーロ圏債券市場の地合い悪化は
広がりをみせており、各国中央銀行がユーロ建て外貨準備資産の比率を回復さ
せる意欲を弱めよう。ドル資産に対する日本の強い選好もユーロの下支えが限
定的であることを示唆している。ユーロ圏投資家の外債投資モメンタムは利回
り差およびユーロ圏投資家のリスク選好の影響を受けるとみられる。域内の景
気の勢いが底堅いなか(ディスインフレ懸念に対処するための)欧州中央銀行
(ECB)による追加緩和への期待を受けて、外債投資のモメンタムは堅調に推移
しよう。ユーロ圏からの債券投資経由の資本流出は高水準で推移する可能性が
高い。
株式フロー:ユーロ圏の景気状況(拡大)は 16 年、外国株式投資家の買い意欲
を引き付ける可能性が高い。しかし、米国人投資家の外国株ポートフォリオ全
体に占めるユーロ圏株式のシェアは 23%超に回復し、2008 年以来の高水準と
なっている。米国人投資家は既にユーロ圏の株式をオーバーウェイトしている
可能性があり、より長期的な観点から見た景気改善の効果を一部打ち消すだろ
う。ECB の追加緩和期待がユーロ圏への対内株式投資を再び押し上げる可能性
はあるが、投資の動機が ECB の緩和期待によるものである場合、ユーロ圏へ
の外国人投資の為替ヘッジ比率は高くなる公算が大きい。
直接投資と経常収支:直接投資(FDI)のフローも 15 年にユーロ圏から純流出
となった。野村が M&A の資金フローを追跡したところ、ユーロ圏からの資金
流出は続いている。野村のユーロ圏エコノミストはユーロ圏の経常収支黒字が
16∼17 年も持続すると予想しているが、16 年にはユーロ圏の主要輸出先とユ
ーロ圏の予想される成長格差が 2012∼14 年より縮小するとみられ、16 年に黒
字幅がさらに拡大することは見込みにくい。
13
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2016 年 1 月 21 日
図表 11: ユーロ圏の基礎的収支
(10億ユーロ)
経常収支 (A)
直接投資 (B)
証券投資の資金フロー (C = D + E)
株式フロー (D)
域外投資家による域内株式投資
域内投資家にとる域外株式投資
債券投資の資金フロー (E)
域外投資家による域内債券投資
域内投資家による域外債券投資
基礎的収支 (A+B+C)
2008
-131.0
-221.5
257.5
11.7
-80.3
92.0
245.8
344.1
-98.3
-95.0
2009
5.7
-51.9
255.6
43.8
111.4
-67.6
211.8
263.1
-51.4
209.4
2010
27.6
-68.3
90.1
99.9
177.3
-77.4
-9.8
53.7
-63.5
49.4
2011
23.9
-106.0
350.2
200.6
138.5
62.1
149.5
144.5
5.0
268.0
2012
124.3
-21.3
148.1
116.0
164.8
-48.8
32.1
170.3
-138.2
251.1
2013
193.9
69.6
9.6
29.0
194.2
-165.2
-19.3
67.3
-86.6
273.2
2014
240.9
-46.6
-72.8
165.1
291.6
-126.5
-237.9
76.4
-314.3
121.5
2015 (年率)
286.7
-34.0
-192.6
197.9
218.4
-20.5
-390.6
-8.6
-382.0
60.1
出所: ECB、野村
ユーロ圏の基礎的収支のトレンドは 2015 年に変化
中期的な資金フローは中立または純流出に転じている
ユーロの対ドル相場は 15 年を通じて軟調に推移したが、4−6 月期以降、下
落ペースは鈍化している。ECB と米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策のか
い離が 14 年半ば以降のユーロの対ドル相場の主な変動要因だったが、国際的
な資金フローもユーロにとってさらなるマイナス材料となっている。
野村の予想通り、ユーロ圏からの債券投資の資本流出は 14 年半ば以降、高
水準で推移している。ユーロ圏の投資家は外債投資を加速させる一方、外国人
投資家はユーロ圏の債券を売り越している。その結果、15 年にはユーロ圏から
債券投資経由の流出が加速した(図表 12)。経常収支黒字は高水準で、ユーロ
圏への外国株投資は 15 年 1−3 月期に増加し、債券投資経由の流出加速を一部
打ち消した。しかし、基礎的収支のトレンドは 15 年に純流入から中立または
純流出に転じた。基礎的収支の月次変化は変動が激しく、15 年には金融危機以
降の最低水準に悪化し、15 年後半も発表済みの期間は月間純流出額が約 50 億
ユーロに達している。
ユーロ圏の基礎的収支の純流出はユーロへの下押し圧力に
月間の基礎的収支は振れ幅が大きい。しかし、ユーロの対ドル相場は基礎的
収支が改善しているときに下支えされる傾向があり、基礎的収支の悪化はユー
ロの対ドル相場下落につながる傾向がある(図表 13)。この相関は常に強いわ
けではない。直近では、15 年初めにユーロが対ドルで下落を続けたが、この時、
基礎的収支は一時的に改善した。この期間のユーロ下落には、1) 基礎的収支に
補足されない、短期の投資家によるユーロのショートポジション積み上がり、
2)為替に影響を与えないユーロ圏株式への外国人投資の増加(ヘッジ比率の上
昇)、の 2 つの要因があるとみられる。投機的ポジションとヘッジ取引はユーロ
と基礎的収支の相関を再び弱める可能性があるが、こうした中期的な資金フロ
ーの把握は中期的なユーロの見通しに役立とう。
こうした観点から、14 年半ば以降のユーロ下落は、1)債券投資の資本流出の
加速、2)15 年 4−6 月期以降のユーロ圏株式投資への外国投資の減速、3)ユー
ロ圏から米国への M&A の資金フローのシフト、によって説明できよう(図表
13)。経常収支黒字は拡大したが、資本流出の増加が黒字拡大を打ち消した。
積み増しと投機的なユーロのショートポジションの解消が、こうした中期的な
資金フローに加えて、ユーロのボラティリティを高めている。
14
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2016 年 1 月 21 日
図表 12: 2012 年末以降の累積フロー額
(10億ユーロ)
図表 13: 基礎的収支とユーロ相場
10億ユーロ
ECB・QE導入
800
1.6
80
ユーロ圏資金流入
ユーロ圏資金流入
600
60
1.5
40
1.4
20
1.3
0
1.2
400
200
0
-200
経常収支
直接投資
-20
株式フロー
-400
基礎的収支
債券フロー
基礎的収支
-600
2013
1.1
基礎的収支(6カ月後方平均)
2014
-40
2009
2015
出所: ブルームバーグ、野村
ユーロ安
ユーロ(右軸)
2010
2011
1.0
2012
2013
2014
2015
出所: ブルームバーグ、野村
証券投資と直接投資の資金フローが引き続き基礎的収支のカギを握ろう
野村のユーロ圏担当エコノミストは、ユーロ圏の経常収支黒字は高水準で推
移するものの、16 年には拡大が止まると予想している(対名目 GDP 比 2.5%、
15 年の 2.8%から低下、2015 年 12 月 11 日付「欧州スペシャルレポート:
2016 年のユーロ圏経済見通し」参照)。経常収支の変動はいずれにしても緩や
かなとみられ、証券投資と直接投資の資金フローが 16 年の基礎的収支を左右
する主な要因となろう。過去最高水準の債券投資経由の資本流出が持続するか
が特に重要になってくるが、野村では、債券投資経由の資本流出は高水準で推
移し、ユーロは 16 年に下押し圧力を受けるとみている。
債券投資のフロー
外国人投資家は 2015 年にユーロ圏債券の売り越しに転じた
14 年半ば以降に基礎的収支が悪化した最大の原因は、債券投資資金の流出が
加速したことである。外国投資家のユーロ圏債券への投資意欲が減退した一方、
ユーロ圏投資家の外債投資は加速した(図表 14)。
長期債および短期債投資の合計では、外国投資家は 15 年(10 月まで)にユー
ロ発足以来のユーロ圏債券の売り越しに転じている。足元では、外国人投資家
によるユーロ圏債券の売り越しがみられるが、歴史的には極めて珍しい。
対して、ユーロ圏投資家による外債投資は、野村の予想通り加速した。15 年
1∼10 月のユーロ圏の投資家による長期外債投資は 3,390 億ユーロに達し、06
年に記録した前回のピーク(3,010 億ユーロ)を既に上回っている。野村では、
15 年に良好なリスクセンチメントのシナリオの下、ユーロ圏投資家の長期外債
投資は約 3,000 億ユーロに達すると想定していたが、実際のユーロ圏投資家に
よる外債投資の勢いは、野村予想を上回るペースだったようだ。ユーロ圏投資
家は、ECB が量的緩和を導入して以来、新興国債券よりも米ドルおよび他の
G10 通貨建て債券を選好している。
15
Nomura | 国際金融為替マンスリー
2016 年 1 月 21 日
歴史的にも稀な外債人投資家によるユーロ圏債券の売り越しとユーロ圏投資
家による記録的な水準の外債投資が重なって、15 年の債券投資資金の純流出額
は 10 月末までに 3,190 億ユーロと、過去最高水準に達した。
図表 15: 域外投資家による域内債券投資
図表 14: 債券投資流出入額
600
500
(10億ユーロ)
(10億ユーロ)
250
短期債流出額
長期債流出額
資本流入
短期債流入額
400
長期債流入額
300
純流入(合計)
その他
米国
日本
合計
買い越し
200
150
200
100
100
50
0
-100
0
-200
-50
-300
-326
-100
-400
資本流出
-500
1999
2002
2005
2008
2011
2014
出所: ブルームバーグ、野村
-150
2005
2007
2009
2011
2013
2015
出所: ECB、野村
15 年 7−9 月期は新興国によるユーロ圏債券売りが加速
外国人投資家によるユーロ圏債券の売りは 1−3 月期に一旦、減速したが、7
−9 月期に再び加速した(図表 15)。市場ボラティリティが上昇する局面では、
外国人投資家によるユーロ圏債券の買いのペースが鈍化する傾向があるため、
7−9 月期にユーロ圏債券の売り越しが加速したとしても意外ではない。
米国と日本の関連統計を踏まえると、米国と日本の投資家よりも外貨準備管
理当局が積極的にユーロ圏債券を売却したようだ。日本の国際収支統計による
と、本邦投資家は 2015 年にユーロ圏債券を極めて小幅に買い越した(1∼11 月
で 20 億ユーロ)が、外債全体では大幅な買い越しとなった。本邦投資家は 7−9
月期にユーロ圏債券を買い越したが勢いは弱かった。これは、ドル建て債券を
積極的に買い続けたためであろう。米国の統計によれば、米国の投資家は 7−9
月期にユーロ圏債券を売り越した(100 億ユーロ)が、15 年前半は買い越しだっ
た。
日米の投資家によるユーロ圏債券への投資は低調だが、7−9 月期はその他諸
国の売り越しがより急速に加速した。ドイツの国際収支によれば、中国が 7−9
月期にドイツの債券を積極的に売却して大幅な売り越しとなっており(90 億ユ
ーロ)、中国がユーロ圏債券を売却した可能性を示唆している。中国の外貨準備
が急減したことから、中国当局によるユーロ圏債券の大規模な売りと想定する
ことは理に適っている(2016 年 1 月 8 日付「中国:2015 年 12 月末外貨準備高
- 12 月の外貨準備は大幅減少」参照)。国際通貨基金(IMF)が公表する政府保有
外貨準備の通貨構成(COFER)も、外貨準備管理当局が同期間にユーロ建て資産
を売却した可能性を示している。
外国人投資家によるユーロ圏債券投資は引き続き低迷の見込み
外国人投資家によるユーロ圏債券投資は、1)ユーロ圏債券に関するさらなる
悪材料、2)新興国による外貨準備の取り崩し、3)本邦投資家のユーロ建て資産
16
Nomura | 国際金融為替マンスリー
2016 年 1 月 21 日
に対する弱い投資意欲、という 3 つの理由から、16 年も低迷が続くと予想され
る。
1)については、ユーロ圏国債のマイナス利回りが足元でより幅広いユーロ圏
債券に広がっており、外貨準備管理当局は引き続きユーロ圏債券への配分比率
引き上げに二の足を踏む可能性が高い。現在、ユーロ圏の短期証券と利付国債
の 43%がマイナス金利であると推定される(図表 16)。ユーロ圏のイールド
カーブが下方向に 10bp シフトすれば、ユーロ圏の短期証券と利付国債の大半
がマイナス利回りとなろう(図表 17)。ECB が野村の予想どおり追加緩和を
実行した場合、このようなシナリオとなる可能性は否定できない。
ユーロ圏債券の悪材料が増えたことに伴い、各国の中央銀行が保有するマイ
ナス利回りの資産の合計は、14 年 10 月の 1 兆ユーロから 1.8 兆ユーロに増加
した一方、合計外貨準備の 17.4%(14 年 10 月は 10.7%、2014 年 10 月 6 日付
「国際金融為替ウィークリー」所載の「マイナス金利と外貨準備のユーロ離れ」
参照)は、マイナス利回りのユーロ建て資産で保有されている。ユーロ圏資産が
占めるマイナス利回り資産の比率が高まれば、各国中央銀行は引き続き外貨準
備におけるユーロの割合を直ちに戻すことはないだろう。
図表 17: ユーロ圏のイールドカーブ変化によるマイナ
ス利回り債券の推定割合
図表 16: ユーロ圏債券のマイナス利回りの割合
60%
70%
ハイイールド
ローイールド
50%
60%
43%
59.0%
40%
54.9%
50%
50.2%
30%
43.5%
40%
20%
30%
10%
20%
32.3%
26.8%
25.3%
21.1%
10%
出所: ブルームバーグ、野村
16年1月
15年10月
15年7月
15年4月
15年1月
0%
0%
-30 bps
-20 bps
-10 bps
ベースライン
+10 bps
+20 bps
+30 bps
注:全てのユーロ圏債券のイールドカーブがパラレルシフトすると仮
定。2015 年以降の最低割合の実績は 25.3%。
出所: 野村、ブルームバーグ
2)については、新興国通貨が近頃、低迷する背景で、短期的に外貨準備を大
幅に積み増す公算は小さく、よって新興国の中央銀行がポートフォリオの運用
先を多様化するためにユーロを買う可能性は低下する。中国の外貨準備は 15
年 12 月に過去最大の減少を示したが、外貨準備取り崩しの一部は為替予約関
連の可能性が高い。12 月は中国を除く新興国でも中央銀行による外貨準備の取
り崩しが続いた。
3)については、本邦投資家は引き続き強いドル選好を示している。本邦投資
家は日本国債から外債投資へのシフトを継続すると予想されるが、こうしたポ
ートフォリオの移行がユーロの強力な下支え役になる可能性は低い。国内生命
保険会社は 16 年も外債投資を継続するとみられ、FRB の利上げ開始後は、米
国債投資の為替ヘッジが減少する可能性が高い。一方、大手生命保険会社の投
資計画から、ドル/円よりもユーロ/円の上昇余地が限られるとみていることが
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2016 年 1 月 21 日
明らかに窺える。野村の個人投資家調査に基づけば、個人投資家も強いドル選
好を示している。年金基金は主要債券インデックスに基づく運用を行っている
ため、なおユーロ圏債券を購入する必要がある。年金積立金運用管理独立行政
法人(GPIF)の三谷理事長の最近の発言は、最大の年金基金がユーロ圏への配分
をヘッジする可能性を示唆しているが、GPIF が近い将来、米国資産を為替ヘ
ッジすることは考えにくい。
ユーロ圏投資家による外債投資は引き続き記録的な水準となろう
ユーロ圏の投資家の外債投資は、1)他の G10 通貨を下回るユーロの利回り、
2)域内景況感の改善、を背景に、引き続き堅調に推移する公算が大きい。
野村の金利戦略チームは 16 年に 10 年物ドイツ国債利回りが必ずしも低下す
るとは予想していない。現在では品不足問題が解消しているためである。とは
言え、ECB の追加緩和観測を受け、ユーロ圏債券の利回り上昇は引き続き抑え
られるとみられる。こうしたことからユーロと他の主要通貨の 10 年物金利差
は、ユーロ導入以来のワイドな水準にとどまりそうだ(図表 18)。
図表 19: 域内投資家の対外債券投資と季節性
図表 18: 域外債券投資と主要国金利差
(10億ユーロ)
(%)
域内投資家の域外債券投資(長期債、左軸)
40
(前月比 %)
0.25
主要国10年債金利差(右軸)
(10億ユーロ)
10
2.5%
ユーロ(1999年以降の平均、左軸)
野村予想
0.00
2.0%
-0.25
1.5%
-0.50
1.0%
-5
-0.75
0.5%
-10
-1.00
0.0%
-15
-1.25
-0.5%
-20
-1.50
-1.0%
-25
-1.75
-1.5%
5
ユーロ(貿易加重平均、1999年以降の平均、左軸)
20
0
ユーロ圏投資家の対外債券投資(1999年以降の平均、右軸)
0
-20
-40
-60
-80
1999
-2.00
2001
2003
-30
ユーロ圏金利低下
資本流出拡大
2005
出所: ブルームバーグ、野村
2007
2009
2011
2013
2015
ユーロ安
対外投資拡大
-2.0%
Jan
Feb
Mar
Apr
May
Jun
Jul
Aug Sep
Oct
-35
Nov Dec
出所: ブルームバーグ、野村
以前に説明した通り、ホームバイアスはユーロ圏の投資家がポートフォリオ
の投資を外債に分散する際のカギを握っている。金利格差に加え、投資家のリ
スクセンチメントもユーロ圏の投資家のホームバイアスに大きな影響を与える
と考えられる。実際、欧州委員会が公表する景況感指数が改善する局面では、
ユーロ圏の投資家は外債投資を加速する傾向にある。野村のユーロ圏担当エコ
ノミストは、16 年前半に ECB の追加緩和を予想しているものの、緩和の主な
理由は必ずしも景気低迷ではなく、ディスインフレ懸念とみられる。失業率は
緩やかな低下を続けており、実質 GDP 成長率は前年比+1.4∼1.5%前後にとど
まる公算が大きい。ECB の追加緩和と健全な景気の勢いを受けて、ユーロ圏の
投資家は 16 年に堅調なペースで外債購入を続けるとみられる。
ユーロ圏投資家の外債投資は、金融市場のボラティリティが上昇した 15 年 7
−9 月期に減速し、4−6 月期の 910 億ユーロからわずか 350 億ユーロに落ち込
んだ。従来の関係が示唆するように、市場のボラティリティがユーロ圏の投資
家の外債投資意欲に影響した。短期的な外債投資の勢いは引き続き世界の市況
18
Nomura | 国際金融為替マンスリー
2016 年 1 月 21 日
に影響されるとみられ、強いリスク回避の動きとボラティリティ上昇という背
景で、ユーロ圏投資家は域外投資を控える可能性が高い。リスクオフ環境でユ
ーロがアウトパフォームする傾向は、ユーロ・キャリーの巻き戻しに加え、こ
うしたことも一因となっており、基礎収支が改善する傾向がある。
1−3 月期は季節的に債券投資経由のフローが拡大する可能性
短期的に、ユーロ圏の投資家の外債投資は、特に 1 月の季節要因を受けて加
速する可能性がある(図表 19)。過去の例をみると、ユーロ圏の投資家は 1−
3 月期(特に 1 月)に外債投資を加速する傾向がある半面、12 月は資金を引き揚
げる傾向がある。興味深いことに、ユーロの対ドル相場とユーロの貿易加重指
数は債券投資の季節要因を追う傾向がある。
金利差、景況感、金融市場のリスクセンチメントが、ユーロ圏投資家の外債
投資を勢いづかせる主な要因とみられるものの、季節要因が目先のユーロ安を
加速させる可能性がある。
債券投資経由の資金流出は引き続きユーロにとって強い足かせに
ユーロ圏債券の悪材料が増えるなか、16 年の外国人投資家によるユーロ圏債
券投資は引き続き低調となりそうだ。外国人投資家が 16 年に再度、ユーロ圏
債券を売り越すとしても意外ではないが、長期的にみて売り越しとなることは
稀である。ユーロ圏の投資家による目先の外債投資は、市場のボラティリティ
の影響を受けるとみられるが、16 年に再び 3,000 億ユーロ前後に達しても驚き
はない。長期的にみて、ユーロ圏債券市場から大幅な資金流出が続く公算が大
きい。
株式投資のフロー
外国人投資家によるユーロ圏株式投資の 3 つの要因
2013 年 5 月から 15 年 6 月にかけて、外国人投資家は 26 ヶ月連続でユーロ
圏株式を買い越した。それ以前、外国人投資家はおそらく外国株式投資ポート
フォリオにおいてユーロ圏株式をアンダーウエートとしていたため、12 年半ば
から 14 年半ばにかけてユーロ圏株式への配分を引き上げたと考えられる。外
国人投資家によるユーロ圏株式投資は、ユーロ圏の景気の勢いが鈍化した 14
年後半に若干減速したものの、ECB の量的緩和に対する期待から、外国人投資
家がユーロ圏株式を買い増したため、勢いは再び強まった。
外国人投資家によるユーロ圏株式投資は引き続き、1)ユーロ圏の景気循環局
面、2)ユーロ圏外の投資家が保有するグローバル株式ポートフォリオにおける
ユーロ圏への配分比率の正常化(一巡した模様)、3)ECB の金融緩和への期待、
の 3 つの要因から影響を受けるとみられる。
外国人投資家をひきつけるユーロ圏景気の循環的局面
16 年はユーロ圏景気の循環局面が外国人株式投資家の注目を集めそうだ。従
来、ユーロ圏の企業景況感が改善する局面で、外国人投資家はユーロ圏株式投
資を加速する傾向がある(図表 20)。
19
Nomura | 国際金融為替マンスリー
2016 年 1 月 21 日
図表 20: ユーロ圏株式流出入額と景況感
図表 21: 景気循環における域内投資額
(10億ユーロ)
130
120
40
株式
(10億ユーロ)
長期債
センチメント改善
資金流入加速
短期債
35
100
短期資金
120
80
30
60
110
25
100
20
40
20
20
16
15
0
90
-20
10
5
ユーロ圏株式流出入額(左軸)
-60
70
ユーロ圏景況感(右軸)
-80
ユーロ圏株式流出入額(6カ月後方平均、左軸)
-100
1999
8
80
-40
60
2001
2003
2005
2007
2009
2011
2013
0
-5
景気回復期
2015
出所: ブルームバーグ、野村
景気拡大期
景気減速期
-3
景気後退期
出所: ブルームバーグ、野村
長期的にみると、外国人投資家によるユーロ圏株式投資は、ユーロ圏の景気
回復・拡大局面で高水準となる傾向があり、ユーロ圏株式は同局面で堅調に推
移する傾向がある(図表 21)。野村のユーロ圏景気循環分析に基づくと、ユー
ロ圏の景気サイクルは 15 年 12 月末時点で引き続き拡大局面にあり、1 月も同
局面にとどまる可能性が高い。
ポートフォリオにおけるユーロ圏株式への配分比率の正常化は一巡した模様
一方、最近のユーロ圏株式市場への投資資金の勢いは、ユーロ圏の景気指標
が示唆するよりも弱い。7−9 月期の世界的なリスクセンチメント悪化によって、
ユーロ圏への対内株式投資の資金流入が低迷した可能性があるが、外国株式全
体におけるユーロ圏株式への配分比率の正常化一巡も、15 年の外国からユーロ
圏への株式投資が 14 年比で鈍化した理由であろう(図表 22)。
ユーロ圏危機時には、米国投資家の外国株式投資におけるユーロ圏株式への
配分は過去最低水準まで低下した。12 年半ばにユーロ圏危機は深刻な局面を脱
したため、米国投資家はユーロ圏株式への配分を正常化し、その結果、域外か
らユーロ圏へ持続的に株式投資資金が流入した。一方、米国の対米証券投資に
よれば、米国投資家の外国株式ポートフォリオに占めるユーロ圏株式の比率は
23%超に回復した(08 年以降の最高)。米国の投資家は既にユーロ圏株式をオー
バーウェイトしている可能性があり、外国からユーロ圏へ流入する株式投資資
金は 13∼14 年の水準を下回る可能性がある。
為替ヘッジ比率はやや高水準
2015 年 1−3 月期と同様、ECB の追加緩和期待によってユーロ圏への対内株
式投資が再び加速する可能性がある(図表 23)。一方、ECB の緩和期待を睨
んだ外国人投資家によるユーロ圏株式投資の為替ヘッジ比率は、15 年 1−3 月
期と同様に高水準となる公算が大きく、為替市場にとっての重要性は低下して
いる。
ユーロ圏への対内株式投資を後押ししているのは、比較的底堅い景気である
とみられるが、外国人投資家が保有するグローバル株式ポートフォリオにおけ
るユーロ圏の配分比率は既に正常化しており、ユーロ圏への投資資金流入ペー
スは 13∼14 年を下回る可能性が高いことが窺える。ECB による追加緩和の可
20
Nomura | 国際金融為替マンスリー
2016 年 1 月 21 日
能性が高いことから、外国人投資家によるユーロ圏株式投資の為替ヘッジ比率
も高水準となる模様である。
図表 23: 米投資家によるユーロ圏株式投資
図表 22: 米投資家のユーロ圏株式投資動向
10億ドル
%
35
ウェイト
8
ベンチーマーク
33
7
31
6
29
5
為替ヘッジあり
為替ヘッジなし
合計
4
27
3
25
2
23
1
21
0
2015
2014
2013
2012
2011
2010
2009
2008
2007
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
-3
1998
15
1997
-2
1996
17
1995
-1
1994
19
出所: ブルームバーグ、野村
'13/03 '13/07 '13/11 '14/03 '14/07 '14/11 '15/03 '15/07 '15/11
出所: ブルームバーグ、野村
直接投資と経常収支のフロー
M&A 追跡モデルは足元でユーロ圏からの直接投資経由の資金流出を示唆
2015 年は直接投資を通じたユーロ圏からの純流出額が過去最高となった。
14 年はユーロ圏への対内直接投資による流入とユーロ圏から対外直接投資によ
る流出が(13 年の 5,840 億ユーロと 6,540 億ユーロから)それぞれわずか 1,410
億ユーロと 950 億ユーロに減速したが、15 年は直接投資フローが回復した。
15 年 1∼10 月のユーロ圏企業による対外直接投資のフローは 4,400 億ユーロ
に達した一方、外国企業によるユーロ圏への対内直接投資フローも同期間に
3,880 億ユーロに回復した。正味の直接投資は 510 億ユーロの流出超となり、
14 年の 470 億ユーロの流出超から若干加速した。
野村の M&A フロー追跡モデルによれば、ユーロ圏からの資金流出はさらに
加速している(図表 24)。ユーロ圏からの資金流出は、SAB ミラーとアンハ
イザー・ブッシュ・インベブ(ABI)の案件で過大計上されている可能性があるが、
直接投資経由の資金流出は当面、続く可能性が高い。
経常収支は黒字を維持するも、さらなる改善の可能性は低い
前述のとおり、野村のユーロ圏エコノミストチームは、16∼17 年もユーロ
圏の経常収支は黒字を維持するが、16 年は黒字拡大にブレーキがかかると予想
している。ユーロ圏の 16 年の経済成長は、エネルギー価格下落、ECB の金融
緩和、ユーロ圏の財政緊縮の緩和を背景とする内需がけん引すると野村ではみ
ている。一方、現在ではユーロ圏全体の財輸出の 50%以上を占める新興国経済
の低迷によって、16 年の純輸出の成長寄与度はマイナスになる可能性がある。
16 年のユーロ圏の主要輸出先とユーロ圏の予想される成長格差は 12∼14 年比
で縮小する可能性が高く、16 年の対外収支の回復は緩やかになることを示して)
いる(図表 25)。
21
Nomura | 国際金融為替マンスリー
2016 年 1 月 21 日
フローの観点からは、ユーロ圏の経常収支黒字の緩やかな拡大がこれまでユ
ーロを下支えしてきた。しかし、16 年に経常収支黒字がさらに大幅に改善する
可能性は低いと考えられる。
(後藤 祐二朗、David Fritz)
図表 25: 経常収支と実質 GDP 成長率差
図表 24: ユーロ圏の M&A フロー
200
(10億ドル)
(%)
(10億ユーロ)
M&Aフロー額(6カ月合計)
150
経常収支(前年差、左軸)
60
M&Aフロー額(現金、6カ月合計)
3.0
実質GDP成長率差 (輸出相手国 - ユーロ圏, 右軸)
50
2.5
野村予想
100
40
2.0
30
1.5
20
1.0
10
0.5
0
0.0
50
0
-50
-100
ユーロ圏からの流出額
-10
-150
-0.5
-20
'04
'05
'06
'07
出所: 野村、Dealogic
'08
'09
'10
'11
'12
'13
'14
'15
-1.0
2009
2011
2013
2015
出所: 野村、Macrobond
22
Nomura | 国際金融為替マンスリー
2016 年 1 月 21 日
2-2 英ポンド:原油・金融市場の混乱など向かい風が多い
ポンド安が加速
英ポンドは昨年末から軟調な展開となっていたが、年明け以降、下落基調に
拍車が掛かっている。外部環境では、人民元に端を発する金融市場の混乱なら
びに原油安がポンド相場を押し下げている。英国では GDP に占める金融セク
ターの割合が大きいため、金融環境の不透明感は景気下押し懸念を高めやすい。
加えて、原油安は、オイルマネーの流入減懸念につながっていよう(図表 26)。
BOE に対する利上げ開始期待
が一向に高まらず
他方、ポンド安に歯止めがかからない固有の材料では、イングランド銀行
(BOE)に対する利上げ開始期待の後退が挙げられる。主因は、物価動向が一
向に上向かないことである。とりわけ、基調的な物価上昇圧力を生み出す上で
注目されている賃金上昇率が軟化している。背景として、(1)労働時間の短
縮化、(2)賃金水準が相対的に低い未熟練雇用の拡大、(3)低インフレを受
けた企業による賃上げ意欲の低さ、などが挙げられている。失業率は 5.2%と、
BOE が自然失業率と想定する水準付近へと低下している。しかし、賃金上昇が
基調的に加速しないことを踏まえると、自然失業率が BOE 想定よりも一段と
低い可能性もある(図表 27)。
市場エコノミストの利上げ開始期
待も年末へと後退
物価・賃金動向の低迷を受け、BOE からは引き続き、一部のタカ派委員を除
き、早期利上げ開始を急ぐ姿勢は窺えない。『金融政策委員会議事録』(1 月
14 日開催分)は、「物価復調ペースはこれまでの想定よりも、幾分緩やかにな
るだろう」と指摘。BOE は『インフレーション・レポート』(2 月公表予定)
で、物価見通しを下方修正する可能性を示唆した。また、PMI などの下振れを
受け、BOE は景気見通しも引き下げる可能性がある。一連の経済環境の変化・
BOE の金融政策スタンスを背景に、当社を含めた市場エコノミストは、BOE
の利上げ開始予想を年前半から年末へと後ずらしする動きを強めている。
EU 離脱を巡る国民投票に対す
る不透明感もポンド敬遠材料
加えて、EU 離脱を巡る国民投票に対する不透明感も、ポンドを敬遠させる
材料となっている。国内世論は残留・離脱の間で二分されており、まったく予
断を許さない。国民投票は早ければ今年 9 月頃に実施されると、金融市場では
考えられているが、BOE は政治的配慮から国民投票に先駆けての利上げを回避
する可能性が高まっている。
金融市場・原油市況が落ち着き
までは、ポンド安圧力が働きや
すい
総じて、(1)金融市場の混乱、(2)原油安、に加え、(3)BOE に対する
利上げ開始期待の後退、(4)EU 離脱を巡る国民投票の不透明感、とポンド安
材料が多い。少なくとも原油・金融市場が落ち着きを取り戻し始めるまで、ポ
ンド安圧力が働きやすいだろう。(小池 基生)
図表 26: 原油市況とポンド相場
図表 27: 失業率と賃金上昇率
GBP/USD
米ドル/バレル
ポンド(左軸)
1.80
200
前年同月比 %
% 軸反転
6.0
3.0
原油価格(ブレント、右軸)
週平均賃金(除くボーナス、左軸)
180
1.75
160
週平均賃金(3カ月後方平均、左軸)
5.0
1.70
4.0
失業率(右軸)
140
1.65
4.0
5.0
3.0
6.0
2.0
7.0
1.0
8.0
120
1.60
100
80
1.55
60
1.50
40
1.45
20
1.40
0
'10
'11
'12
出所: ブルームバーグ、野村
'13
'14
'15
'16
0.0
9.0
'05
'06
'07
'08
'09
'10
'11
'12
'13
'14
'15
出所: 野村
23
Nomura | 国際金融為替マンスリー
2016 年 1 月 21 日
2-3 トルコリラ:物価安定に向けた中央銀行の信認が問われる
トルコリラは 8 月中旬から下落が加速、9 月には節目となる 1 ドル=3.0 リ
ラを超えて減価した。11 月 1 日の再選挙で与党・公正発展党(AKP)が過半数
トルコリラは 11 月 1 日の再選
挙後に反発したが、その後は減
価傾向が継続
の議席を奪還した後は 2.7 リラ台後半まで持ち直す局面もあったが、その後は
減価傾向が継続しており、1 月 20 日時点では対ドル 3.04 近辺で推移している。
資源純輸入国のトルコにとって、原油価格の続落は経常赤字縮小などマクロ
環境の改善要因である。しかし、世界的なリスクオフは新興国の金融資産全体
国内外の要因がトルコリラ相場
の重石に
を押し下げている。また、同国固有の脆弱性も意識されていよう。最大の懸念
は、国際収支の資金繰りの質の問題である。トルコは経常赤字の穴埋めに際し
短期対外債務に過度に依存しており、米利上げに伴うドル流動性逼迫の影響を
受けやすい。また、ロシアとの対立の激化や、1 月 12 日にイスタンブールで起
こったテロなど地政学リスクも懸念される。さらに、1 月のトルコ中央銀行
(TCMB)の金融政策は「政治干渉への懸念」を再び意識させるものとなった。
TCMB は 1 月 19 日、市場予想通り各種政策金利を全て据え置く一方、声明
文では昨年 12 月にあった「次回会合で金融政策の簡素化(simplification)のス
トルコ中央銀行は金融政策の簡
素化を見送り
テップを開始する」との文言を削除した。現在のコリドー制から単一の政策金
利への枠組みへと移行が進めば、主要政策金利であるレポレート(7.50%)と
上限金利である翌日物貸出金利(10.75%)との乖離が後者に鞘寄せする形で
縮小すると見られることから、金融引き締め効果が期待されてきた(図表 28)。
なぜ TCMB が簡素化を進める意向を後退させたかは明らかではない。バチュ
シュ総裁の任期が今年 4 月に終了するため、今は労力のかかる金融政策の枠組
金融政策への政治介入への懸念
が再び強まっている
み見直しに動きづらい事情はあろう。しかし、景気浮揚を志向する政権からの
圧力がかかった可能性は否定できない。インフレ加速の懸念が根強い中での政
策対応見送りは TCMB への信頼感をさらに低下させるものである。15 年以降、
大幅に進行したリラ安に加え、AKP が 11 月の選挙で公約、今年 1 月に実施さ
れた 30%もの最低賃金の引き上げも、インフレ加速要因となる(図表 29)。
中銀のインフレ抑制姿勢の後退は、明確な通貨安要因である。国際収支の脆
リラの減価は続く公算が大きい
弱性なども懸念されるため、リラの減価は続く公算が大きい。(中島 將行)
図表 29: 最低賃金の推移
図表 28: トルコの政策金利の推移
(%)
14
(トルコリラ/月)
1400
銀行間翌日物金利(市場金利)
13
1200
12
名目最低賃金(左軸)
名目伸び率(右軸)
実質伸び率(右軸)
(前年比%)
35
11
30
25
1000
10
20
9
8
800
15
600
10
7
6
5
5
400
4
0
3
翌日物貸出金利(上限政策金利)
1週間物レポレート(主要政策金利)
翌日物借入金利(下限政策金利)
2
1
200
0
0
'11
'12
'13
'14
出所: トルコ中央銀行、ブルームバーグ、野村
'15
-5
'16
-10
'04 '05 '06 '07 '08 '09 '10 '11 '12 '13 '14 '15 '16
出所: HURRIYET、ZAMAN、ブルームバーグ、野村
24
Nomura | 国際金融為替マンスリー
2016 年 1 月 21 日
3. 資源国通貨市場
3-1 豪ドル:本格的な景気回復が相場の底堅さにつながるか
2015 年の豪ドル相場は、対米ドルで-9.9%の下落を記録した。豪ドル固有の
2015 年の豪ドル相場は対米ドル
で 2 ケタ近い下落を記録
要因を見ると、鉄鉱石価格が-35%程度落ち込むなど商品市況が弱かったこと
に加え、豪州準備銀行(RBA)は景気下支えを目的に、年前半に累計 50bp の
利下げを実施した。他方、外部要因では、米利上げ開始期待を背景とした米ド
ル高地合いが豪ドルを押し下げた。
2016 年の相場展開を考える上で、これらの要因は引き続き重要なカギを握
(1)商品市況の低迷が続く公算
る。第 1 に、商品価格の下落ペースは落ち着きつつも、反発は見込み難い(図
表 30)。豪州最大の輸出品目である鉄鉱石市況では、メジャーが供給拡大路線
を堅持している上、生産コストの更なる低下に努めている。他方、最大需要地
である中国では、鉄鉱石消費量(国内生産+輸入)が頭打ちとなっている。供
給過剰な状態の解消目途は立っておらず、中長期的な持ち直しは見込みがたい。
第 2 に、豪実体経済は年前半にかけて、トレンドを下回る成長を余儀なくさ
れよう(図表 31)。(1)家計消費の底堅さ、(2)住宅投資の力強い加速、
(2)本格的な景気回復は年後半
以降に
が見られるものの、鉱業部門における設備投資の急減が景気の足枷となってい
る。LNG 生産・輸出は徐々にスタートアップしているものの、本格的な景気回
復を牽引するのは年後半となろう。他方、景気が幾分力強さを欠いていること
に加え、原油安などを受け、ディスインフレ・リスクが燻っている。RBA は利
下げの可能性を排除しておらず、利下げ期待の後退には時間を要しよう。
第 3 に、米ドルは利上げサイクルを背景に基調的に強含むと考えられる。
FOMC メンバーは 14 年 12 月時点で年 4 回の利上げを想定している一方、金利
(3)利上げサイクルを背景に米ド
ルは基調的に強い
市場は年 2 回弱の利上げしか織り込んでいない。米景気モメンタムの堅調さを
踏まえると、追加利上げ期待が後退するよりも一段と織り込まれる可能性の方
が高いだろう。また、中国経済にも注意を要する。当局は経済構造の転換を図
る中で、金融市場に動揺をたびたびもたらしている。豪ドルを基調的に押し下
げる要因でこそないものの、年初の人民元相場などのように豪ドル安材料とな
るリスクは相応に高い。
総じて、豪ドルは年前半にかけて、対米ドルで緩やかに下落していく可能性
が高いだろう。豪ドルが底堅さを取り戻すには、(1)LNG 輸出開始を中心と
底堅さを取り戻すには国内景気
の持ち直し、中国経済の安定感
が重要
する国内景気の本格的な回復、(2)中国経済の安定感、が焦点となろう。上
述の議論を踏まえ、豪ドルに対する下落圧力は年後半にかけて、後退していく
と想定する。(小池 基生)
図表 30: 商品市況と豪ドル相場
豪ドル/米ドル
1.2
豪ドル(左軸)
1.1
RBAコモディティ価格(右軸)
1.0
図表 31: 実質 GDP 成長率
米ドル
0.9
0.8
0.7
0.6
0.5
0.4
'00 '01 '02 '03 '04 '05 '06 '07 '08 '09 '10 '11 '12 '13 '14 '15 '16
出所: 豪州準備銀行、ブルームバーグ、野村
前年同期比 %
150
140
130
120
110
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
GDP成長率
7
GDP成長率(除く資源輸出)
6
GDP成長率(長期平均)
5
4
3
2
1
0
'00 '01 '02 '03 '04 '05 '06 '07 '08 '09 '10 '11 '12 '13 '14 '15
出所: 豪州統計局、野村
25
Nomura | 国際金融為替マンスリー
2016 年 1 月 21 日
3-2 NZ ドル:物価・商品動向は当局の想定通りに推移するか
2015 年のニュージーランド(NZ)ドル相場は、対米ドルで-11.2%の下落を
記録。主要先進国通貨の中では、産油国(カナダ・ノルウェー)に次ぐ下落率
2015 年の NZ ドル相場は対米ド
ルで 10%超の落ち込み
だった。固有の要因を見ると、NZ 準備銀行(RBNZ)が景気下支え及び低イン
フレを背景に、累計 100bp の利下げを実施したことに加え、乳製品をはじめと
する商品市況が軟調だった。他方、外部要因では、米利上げ開始期待を背景と
した米ドル高地合いが NZ ドルの弱さにつながった。
2016 年の相場展開を考える上で、上述の要因は引き続き重要なカギを握る。
第 1 に、物価の持ち直しには時間が掛かろう。原油価格は一段と下落した上、
(1)低インフレ環境は大きく変わ
らず
低迷する公算が大きい。加えて、グローバルなディスインフレ傾向を受け、輸
入物価は弱い推移が続きやすい。ただし、これまでの NZ ドル安が輸入物価下
落を幾分相殺しよう。他方、移民の流入ペースが雇用拡大ペースを上回ってお
り、失業率は上昇している。労働需給の悪化を受け、賃金上昇圧力の高まりも
見込み難い。総じて、RBNZ の物価見通しには下振れリスクがある(図表 32)。
他方、第 2 に 2016 年の乳製品市況は停滞するものの、幾分底堅さを取り戻
す公算が大きい(図表 33)。昨年度は好天などを背景に、ニュージーランドや
(2)乳製品市況も低空飛行が続
く公算
欧米の生乳生産が拡大した。他方、今年度はエルニーニョ現象の影響などを背
景に、ニュージーランドの生乳生産の減少が見込まれており、需給バランスの
多少の改善が相場を下支えよう。ただし、大幅な市況反発は期待しがたい。最
大需要地である中国の輸入は力強さを欠いているうえ、ロシアは引き続き、欧
米に対する輸入禁止措置を課している。他方、欧州では中期的な需要拡大観測
を背景に、生産調整に消極的である。
第 3 に、FRB の利上げサイクル入りを受け、米ドル相場は基調的に強含むと
考えられる。FOMC メンバーの金利見通しは 14 年 12 月時点で年 4 回の利上げ
(3)利上げサイクルを受け、米ド
ルは基調的に強い
を示唆している。他方、金利先物市場は年 2 回弱の利上げしか織り込んでいな
い。米実体経済の堅調さを踏まえると、追加利上げ期待が後退するよりも一段
と織り込まれる可能性の方が高いだろう。加えて、中国経済動向にも注意を要
する。当局は経済構造の転換を図る中で、金融市場をたびたび動揺させてしま
っている。消費を主体とする経済構造は本来であれば NZ 経済にとって長期的
に追い風となるが、短期的には金融市場の不安定化を通じて向かい風となる。
総じて、NZ ドルは対米ドルで緩やかな下落が続きやすいだろう。NZ ドルが
底堅さを取り戻すには、(1)RBNZ が想定するような物価上昇圧力の持ち直
年末にかけて、底堅さを取り戻
せるか
し、(2)乳製品市況の安定化、が必要となろう。以上の議論を踏まえ、NZ ド
ルは年末にかけて、底堅さを再び見せ始めると期待できる。(小池 基生)
図表 32: インフレ率と物価見通し
図表 33: 商品市況と NZ ドル相場
15年12月時点
インフレ率(実績値)
インフレ目標(中央値)
15年9月時点
前年同期比 %
6.0
USD
NZD/USD
1.0
NZドル(左軸)
0.9
ANZ商品価格指数(米ドル建て、右軸)
250
5.0
RBNZ想定
0.8
4.0
3.0
0.7
200
0.6
150
2.0
0.5
1.0
0.4
100
50
0.3
0.0
'08
'09
'10
'11
'12
'13
出所: NZ 統計局、NZ 準備銀行、野村
'14
'15
'16
'17
'18
300
'00 '01 '02 '03 '04 '05 '06 '07 '08 '09 '10 '11 '12 '13 '14 '15
出所: ANZ、ブルームバーグ、野村
26
Nomura | 国際金融為替マンスリー
2016 年 1 月 21 日
3-3 カナダドル:BOC はひとまず財政政策待ち
カナダドル安の勢いは止まらず、2003 年 4 月以来となる 1 米ドル=1.46 カ
ナダドルをつけた。人民元相場に伴う金融市場の混乱に加え、原油安がカナダ
ドル安に拍車を掛けている(図表 34)。カナダは産油国の中でも高コストなた
め、原油価格(WTI)が 30 米ドル/バレル割れまで下落する中で、カナダ銀行
(BOC)に対する利下げ期待の高まりもカナダドル安を促した(図表 35)。
予想が二分される中、BOC は金
利据え置きを決定
BOC は定例委員会(1 月 20 日開催)で、政策金利の据え置き(0.50%)を
決定した。市場エコノミスト・金利先物市場の間では 25bp の利下げか金利据
え置きかで見方が二分されており、政策決定後、カナダドル高材料となった。
トルドー首相(2015 年 11 月就任)は来年度予算で、景気テコ入れを目的とし
た財政政策打ち出す方針を示している。BOC はひとまず財政出動による景気浮
揚効果を見極めるべく様子見となっている。ポロズ総裁は「景気回復がどの程
度のペースで進展するかは財政政策次第である」と指摘しており、当面は財政
政策頼みという感が強い。
財政政策が期待外れに終われ
ば、追加緩和の可能性
財政出動が景気下支えに力不足であれば、BOC は追加緩和を打ち出す可能性
が高いだろう。実際、『金融政策報告書』(1 月 20 日公表)における成長率見
通しは 2016 年:前年比+1.4%と、前回(10 月時点、同+2.0%)から大幅に引
き下げられた。声明文は「原油を始めとする商品市況のさらなる落ち込みがカ
ナダ経済の障害となっている」とし、下方修正の主因に挙げた。加えて、米製
造業における予想以上の落ち込みを受け、カナダの対米輸出は伸び悩んでいる。
超過供給の解消は現時点で 2017 年末と見込まれており、自律的な景気回復に
は引き続き時間を要する。
非伝統的な金融緩和が導入され
る可能性も
追加緩和に際して、政策金利はすでに 0.50%と伝統的な意味での緩和余地が
乏しくなっており、非伝統的な金融政策が導入される可能性もある。ポロズ総
裁はすでに、更なる緩和策として、(1)-0.5%程度のマイナス金利化、(2)
大規模な資産買入(いわゆる量的緩和)、(3)特定セクターの融資のための
資金調達、(4)フォワード・ガイダンス、に言及している。
カナダドル安の一巡には時間を
要する
BOC は当面政策金利を据え置く可能性が高く、原油安・BOC に対する利下
げ期待の高まりを背景にカナダドル安が急速に進んだため、カナダドルは短期
的にスピード調整する可能性がある。もっとも、財政政策の規模次第では、
BOC は追加緩和に踏み切らざるを得ないリスクも依然として高い。総じて、カ
ナダドル安トレンドが一巡するには時間を要しよう。(小池 基生)
図表 35: 米加 2 年債金利差とカナダドル相場
図表 34: 原油価格(ユーロ建て)とカナダドル相場
EUR/バレル
USD/CAD
90
1.00
WTI(ユーロ建て、左軸)
70
60
1.37
1.15
1.33
50
40
20
'14/01
1.29
-0.40
カナダドル(左軸)
-0.20
米カナダ2年債金利差(右軸、逆軸)
0.00
1.25
1.25
30
-0.60
1.41
1.10
1.20
カナダ - 米国 %
-0.80
米カナダ金利差縮小
カナダドル安
1.45
1.05
カナダドル(右軸)
80
米ドル/カナダドル
1.49
1.30
1.17
1.35
1.13
1.40
原油安
カナダドル安
出所: ブルームバーグ、野村
0.20
0.40
1.09
0.60
1.05
1.45
1.50
'14/07
1.21
'15/01
'15/07
'16/01
0.80
1.01
0.97
'13/01
1.00
'13/07
'14/01
'14/07
'15/01
'15/07
'16/01
出所:ブルームバーグ 野村
27
Nomura | 国際金融為替マンスリー
2016 年 1 月 21 日
3-4 ブラジルレアル:財政規律か、成長支援か
ブラジルレアルは対ドルで長期の減価トレンドを脱していない。大手格付会
ブラジルレアルは 11 月下旬以
降、再び減価に転じる
社 S&P が 9 月 9 日に国債を投機的水準に引き下げた後には下落が加速、9 月
24 日には 1 ドル=4.2478 レアルまで下落した。その後は 3.69 までいったん持
ち直したが、11 月下旬以降は再び減価に転じ、1 月 20 日時点では 4.09 と再び
1 ドル=4 レアルを割り込んだ水準にある。
年明け後のレアルの対ドルの下落率は約 3.2%と南アランド(約 7.7%)やロ
シアルーブル(約 9.5%)と比較して小幅だが、取り巻く外部環境は他資源国
商品市況の低迷、中国に端を発
するリスクオフが重石に
同様に厳しい。原油をはじめ商品市況が続落、中国に端を発する世界的なリス
クオフが広がっている。1 月 13 日に発表された中国の通関統計(12 月分)で
鉄鉱石などの輸入が過去最高に達したことは、ブラジルにとって好材料として
挙げられる(図表 36)ものの、指標発表直後のレアルの反発は長くは続かなか
った。
国内要因では引き続き、(1)ルセフ大統領の弾劾の動き、(2)財政見通しの悪
化、 (3)インフレ抑制に向けた不確実性の高まり、に留意を要する。
(1)の大統領弾劾について、早ければ 2∼3 月にも下院投票が実施される可能
大統領弾劾、財政、インフレ動
向に留意を要する
大統領弾劾投票は 2∼3 月か
性がある。上下院で連立与党がそれぞれ約 3 分の 2 を占める状況を踏まえれば、
弾劾が実現する可能性は低い。しかし、窮地に立たされたルセフ大統領が、支
持率浮上のためバラマキ的な支出拡大に傾く恐れが市場では懸念されている。
(2)の財政見通しについて、昨年末から年明けに市場の懸念はより強まってい
る。昨年 12 月 18 日には財政規律を重視するレビ氏が財務相を辞任、後任にバ
ルボーザ企画・予算管理相が横滑りで就任した。バルボーザ氏はこれまで財政
健全化の基本路線には賛同しつつも、景気刺激も必要、との立場をとってきた。
今年 1 月に報道されている政策の方向性も、成長支援の色彩が強い。1 月 13
日には現地紙で、当局が政府系金融機関に対し、景気支援のための低金利の融
資を継続するよう要請していると報道された。ブラジルでは企業向け貸し出し
の平均金利が年率 30%を超えているため、容易に借入ができない状況にある
(図表 37)。そのため、長期・低利の公的融資(基準金利は TJLP と呼ばれ現
在 7.50%)が拡大、事実上の逆ザヤとなっているため、財政悪化にもつながっ
ている。
図表 36: 中国の鉄鉱石輸入量(月次)
(100万トン)
100
図表 37: ブラジルの主要金利の動向
(%)
70
平均貸出金利・家計
平均貸出金利・非金融法人
ブラジル中央銀行 政策金利(Selic)
ブラジル開発銀行 長期金利目標(TJLP)
90
60
80
70
50
60
40
50
30
40
30
20
20
10
10
0
'99 '00 '01 '02 '03 '04 '05 '06 '07 '08 '09 '10 '11 '12 '13 '14 '15
出所: 中華人民共和国税関総局、ブルームバーグ、野村
0
'12
'13
'14
'15
'16
出所: ブラジル中央銀行、ブルームバーグ、野村
28
Nomura | 国際金融為替マンスリー
2016 年 1 月 21 日
ブラジル政府は外貨建て債務 770 億ドル(内、米ドル建ては約 570 億ドル。
ブルームバーグの機能を用いて 1 月 18 日に集計)を抱える一方、外貨準備は
対外債務との比較で見た外貨準
備の規模には一定の安心感
それを大きく上回る 3,680 億ドル(ブラジル中央銀行発表値。1 月 14 日時点)
を保有しており、対外債務デフォルトの可能性は低い。巨額債務を抱える国営
石油会社ペトロブラスの外貨建て債務約 1,025 億ドル(内、米ドル建ては約
950 億ドル。2015 年 9 月末時点の会社発表値)や、外貨準備の約 3 分の 1 にあ
たる 1,081 億ドル(2016 年 1 月 20 日時点残高。ブラジル中央銀行の発表を元
に野村で集計)をレアル買い支えのために通貨スワップの形で投入しているこ
とを考慮しても潤沢な規模であろう。
しかし、政府の国内債務の増加は著しい。2015 年 11 月時点で財政赤字が対
GDP 比 9.3%(12 か月累計値)、政府総債務残高対 GDP 比 65%と 2014 年以
財政に対する信用の喪失は、マ
クロ環境の急激な悪化につなが
りかねない
降、大幅に悪化している(図表 38)。このまま財政悪化に歯止めがかからなけ
れば、市場ではブラジルの財政の持続性がより強く意識されることとなろう。
財政に対する信用の喪失は、インフレ・通貨安の急加速に繋がりかねない。
(3)のインフレ抑制について、ブラジル中央銀行(BCB)は 1 月 20 日、利上
げを見込む市場予想に反し、政策金利を 14.25%で据え置いた。短期金利市場
中央銀行に対する政治の介入が
懸念される状況に
では、年明け後に BCB が景気に配慮する姿勢を示したことを受け徐々に織り
込みが縮小していたとはいえ、25bps の利上げが予想されていた(図表 39)。
声明文では「マクロ経済環境とインフレ見通し、現時点におけるリスクバラ
ンス、そして国内情勢および主に海外情勢の不確実性の増大を勘案し、金融政
策決定理事会は 14.25%で政策金利を据え置く」としている(下線部が前回か
ら追加された文言)。これまで景気後退が厳しくなるなかでもインフレ抑制姿
勢を堅持してきた BCB の「変節」と市場に取られかねないハト派的な文言変
更である。「いっそうの景気後退を抑えたい政府による中銀への介入」との市
場の観測を強めるものとなろう。
政治情勢、インフレ見通し、財政見通しは相互に影響しあいながら悪化傾向
を辿り、政策に対する信頼感は大きく低下している。レアルが再び安定を取り
戻すには、政府が財政規律やインフレ抑制を最優先する姿勢を再び強く打ち出
政府が財政規律やインフレ抑制
を最優先する姿勢を再び強く打
ち出す必要
す必要があろう。(中島 將行)
図表 38: ブラジルの財政状況
(対GDP比%)
図表 39: 短期金利市場における利上げの織り込み
(対GDP比%)
対外債務(左軸)
70
10
対内債務(左軸)
75
2015年12月30日時点
9
名目財政赤字(右軸)
60
(bps)
2016年1月18日時点
8
50
7
2016年1月20日時点(会合直前)
50
6
40
5
30
4
25
3
20
2
0
10
1
0
1月
3月
0
'06
'07
'08
'09
'10
'11
'12
出所: ブラジル中央銀行、ブルームバーグ、野村
'13
'14
'15
4月
6月
7月
16年
(金融政策決定委員会(Copom)の実施月)
出所: ブルームバーグ、野村
29
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2016 年 1 月 21 日
3-5 メキシコペソ: 15 年 8 月の「人民元ショック」を振り返る
メキシコペソは 15 年末の 1 ドル=17.20 ペソから年明け後の 1 月 8 日には
17.93 と 4.1%程度まで対ドルでの減価が加速した。昨年 12 月 14 日につけた
メキシコペソは 1 月に史上最安
値を更新
17.46 の史上最安値(当時)を割り込み、18 の大台を超えて減価している。
ペソの減価の加速は、(1)中国元の対ドル基準値の下落、(2)原油安、(3)米国
の株式市場を始めとする世界的な株安、が背景にある。昨年 8 月の「人民元シ
2015 年 8 月の「人民元ショッ
ク」を振り返る
ョック」の時と状況は似ており、当時を振り返ることは有益であろう(図表
40)。
2015 年 8 月 11 日に中国人民銀行は突如、中国元の対ドル基準値を前日比
1.8%元安に設定、12、13 日にも引き下げ、対ドルでの減価率は 3 日で 4.6%
に達した。14 日には基準値を元高方向に設定したことで、早くも元安には一服
感が見られたが、株安・原油安には歯止めがかからなかった。ようやく相場が
反転したきっかけは 8 月 25 日の東京時間夜に発表された中国人民銀行による
追加緩和(預金準備率、政策金利の引き下げ)である。世界的な株式市場の底
入れに繋がったほか、原油価格のショート(売り持ち)の巻き戻しが誘発され
た一因ともなった。メキシコペソなどの資源国通貨も買い戻された。
今回の局面でも、人民銀行がオフショア人民元の大規模な買い介入を行って
いると報道(1 月 12 日)されるなど、一方的な元安の動きは一服した可能性は
中国の金融・財政政策、原油価
格の動きがペソにとって重要
ある。しかし、2015 年 8 月当時の相場の教訓としては、それだけではリスク
センチメントの改善には不十分であり、景気下支えのための具体的な施策を中
国当局が打ち出してくるかが重要であろう。一方、シカゴ IMM ポジションでは
原油のショート(売り持ち)が大幅に拡大している(図表 41)。市場全体でも
売り持ちが膨らんでいる可能性があり、米国における石油在庫減などのきっか
けで原油価格が反転上昇する可能性はあろう。
中国経済不安・原油安・株安と年初からリスクオフの動きが市場全体で広が
っており、ペソにとって明確なマイナス要因となっている。一方、中国当局の
中国の政策発動や、原油価格反
発などのきっかけ次第では、ペ
ソ持ち直しも
政策発動や原油価格の反発などの好材料があれば、ペソは対ドル 17.0 前後まで
持ち直すと見られる。(中島 將行)
図表 40: 15 年 8 月の「人民元ショック」
図表 41: 原油のシカゴ IMM ポジション
(建玉枚数)
(2015年8月10日の終値を基準とした騰落率%)
10
人民元(対ドル基準値)
8
原油(WTI先物)
6
米国株式市場(S&P500)
4
メキシコペソ(対ドル)
2
600,000
非商業ポジション ロング
500,000
非商業ポジション ショート
400,000
非商業ポジション ネット
0
300,000
-2
-4
200,000
-6
100,000
-8
-10
-12
-14
基準値の
引き下げが一服
(8月14日)
中国人民銀行が預金準備率お
よび政策金利を引き下げ
(8月25日)
(月/日)
-16
10111213141718192021242526272831 1 2 7 8 9 1011141516
15年8月
出所: ブルームバーグ、野村
15年9月
0
-100,000
-200,000
'00
'02
'04
'06
'08
'10
'12
'14
'16
出所: ブルームバーグ、野村
30
Nomura | 国際金融為替マンスリー
2016 年 1 月 21 日
3-6 南アフリカランド:南アフリカランドはどこに向かうのか?
16 年末予測値を対ドル 16.0 から 19.0 に下方修正
2015 年 12 月にネネ財務相の突然の解任という政治的ショックから南アフリ
カランドは大幅に減価、年明け後も弱い地合いが続いている。16 年末の予想水
準について精査する必要が生じている。本稿では様々な尺度を用いるが、とり
わけ南アの国内固有リスクを捉えるリスクモデルを中心に分析を行う。16 年末
のランドの対ドル予想値を 1 ドル=16.0 ランドから 19.0 ランドに修正する。
為替予想は常に容易ではないが、その通貨が名目ベースで最安値を更新し、
リスクプレミアムの急騰が続くとみられる場合、その予想は一層困難となる。
とは言え、この課題に取り組みたい。
野村の新興国チームが 2016 年のリスク見通しをまとめた 15 年 12 月のクリ
スマス直前、ランドは対ドル 15.14 であり、我々は 15 年末を 15.0、16 年末及
び 17 年末は 16.0 と予想した。我々の予想は、国債格下げのテーマがさらに注
目されるなどランドの減価基調が続くことを考慮したものだったが、同時に、
ほとんどの材料は織り込み済みとの見方を踏まえたものであった。同様に、イ
ンフレ見通しの信認が大きく揺らぐことも想定していなかった。大幅なランド
安が進んでいたものの、極めて低いパススルー率(インフレ波及度合い)によ
り、物価見通しの大幅な悪化にはつながらないと見ていたためである。
しかし、ランドには常に減価圧力がかかっていることは確信を持って言える。
ランドの実勢水準は年初早々に年間見通しを抜け、1 月第 1 週に 1 ドル=16.0
に達した。よって年末予想を見直す必要が生じている。
手始めに、16 年のランド相場を左右する主な要因のいくつかを挙げたい。こ
れらは極めて予測が困難で、世界的な流動性の動向に左右される要因である。

対外投資枠を利用した国内個人投資家による緩やかな資本流出。国内機
関投資家の場合と同様の性質を持つ。急激な景気後退や金利上昇には至
っていないことを踏まえれば、秩序だった形での資本流出であり、パニ
ック的な売りには至っていない。

米国の利上げ、並びに(15 年及びそれ以前の投資パフォーマンスの低迷、
ハイイールド市場の不調などを背景として)新興国への資金フローが低迷
する中、外国投資家による対内投資が激減するリスク。同時に、資産ク
ラス、新興国間での競争(一部の投資家はブラジルの金融資産の底値買
いを 16 年のテーマとして据えている)も影響しよう。また、米国の利上
げと、南アフリカの投機的水準への格下げ懸念が続く中、外国人投資家
による緩慢かつ秩序だった資金の引き揚げが予想される。

南アフリカ準備銀行(SARB:中央銀行)が、干ばつやコアインフレ率上
昇を背景に利上げを進めるとみられることも、どちらかといえばランド
を支える要因となろう。また、16 年のいずれかの時点である程度のホッ
トマネーを呼び込む可能性もある。

経常収支赤字は 16 年を通じて拡大し、15 年 7-9 月の対 GDP 比 4.1%か
ら 16 年末には同 5.0%に達しよう。直接投資は、国内民間部門投資家に
よるオフショア投資(とりわけアフリカ他地域)を受け、純流出となろう。
これらの要因を総合すると、ランドが継続的に(しかし、秩序だった形で)
減価することが示唆される。問題はどの水準まで減価するかであろう。
31
Nomura | 国際金融為替マンスリー
2016 年 1 月 21 日
購買力平価に基づく分析
図表 42 は、国内の物価上昇率が国外のインフレを上回るなか、ランドの名
目実効為替レート(NEER、貿易財、貿易相手国の名目値で加重)が過去 11 年間
で減価を続けてきたことを示している。購買力平価(PPP)ベースでのトレンド
からのかい離は、長期的(5 年前後)かつ大幅(1 標準偏差以上)である。なお、こ
の PPP は絶対値ではなく相対値である(絶対値の PPP は本分析に適さない)。
図表 42 は、PPP ベースの推定値からのランド NEER のかい離が 2008 年当
時に匹敵する水準に達していることを示している。ただし図表 43 は、ランド
の NEER が再び(リスク選好を考慮した)PPP モデルの予想範囲に収れんするこ
とを示している(16 年 12 月以降)。これは、ランド相場の予想がフォワードル
ッキングな要素を持つこと、現状の水準のかい離は、PPP モデルの予想値がキ
ャッチアップしてくる形で縮小することを意味する。
こうした見方は、市場が政治絡みのリスクプレミアムの急上昇をこなすとい
う想定も整合的と言えよう。
相対 PPP に基づくと、ランドの対ドル相場は 12.26 となり、15 年末、14 年
時点における野村の長期予想(16 年末で 12.87)との差はそれほどない。
図表 42: PPP モデルの予想値とランド NEER の推移
図表 43: PPP モデルの予想(2017 年末まで)
(全期間の平均を100とする指数)
(全期間の平均を100とする指数)
140
購買力平価(PPP)ベース
130
名目実効為替レート(NEER)
100
95
購買力平価(PPP)ベース
名目実効為替レート(NEER)
90
120
85
110
80
100
75
90
70
65
80
60
70
60
05年1月 06年11月 08年9月 10年7月 12年5月 14年3月
注: 点線は上下 1 標準偏差。出所: 野村
55
50
15年1月 15年7月 16年1月 16年7月 17年1月 17年7月
注: 点線は上下 1 標準偏差。出所: 野村
しかし、ランドのトレンドと上述の変動要因を踏まえると、長期的な価値評
価のギャップが解消しない理由について、ここから手掛かりはほとんど得られ
ず、実際のランド相場がどこに向かうかを考えるに役立たない。
固有リスクプレミアム (IRP)
これに代わる手法として、野村がハンガリーフォリントの予想の際に用いた
アプローチを紹介する。
南アフリカなど新興国について、その国固有のリスクプレミアムを指数化し、
次に、同等の新興国(ここでは、ポーランド、トルコ、メキシコ、ロシア、イン
ドネシア、ブラジル、インド)の GDP で加重する。このバスケットを CDS(ク
レジットデフォルトスワップ)の標準化値、外貨建債務の対米スプレッド(利回
り差)、NEER、ベーシスに適用し、それぞれの資産クラスのパフォーマンスの
うち、どの程度が新興国グループと同期しており、どの程度がそうでないかを
見極め、後者を固有の要因と定義する。さらにこれを合算し、標準化すること
32
Nomura | 国際金融為替マンスリー
2016 年 1 月 21 日
で、固有リスクプレミアム全体を指数化する。指数の上昇は固有の要因の改善
を意味する(市場が当該国に対するリスク選好姿勢を高める)一方、低下の場合
は、固有要因の悪化(当該国に対するリスク回避姿勢の強まり、リスクプレミア
ム上昇)を意味する。
図表 44 は、南アフリカの固有リスクプレミアム指数(IRP)を示したものであ
る。主なポイントとして、(1) 2008 年は国際収支の悪化で、同指数のマイナス
幅が急拡大(リスクプレミアムが上昇)し、市場の経常収支懸念を受けて南アフ
リカから資本が流出した、(2) 2012 年末にも、マリカナ・プラチナ鉱山におけ
る大規模労働争議の前後に同様の悪化が見られた、(3) 14 年初めにも指数が低
下したが、資本流出を受けて金利が上昇し、一部の新興国に波及した、(4)15
年前半は指数が大幅に上昇したが、実際はブラジルの異例の変動が原因だった。
つまり、絶対的ではなく相対的な性質を持つことが IRP の限界である、(5) 15
年 12 月初めのネネ財務相更迭を受けてリスク地合いは急激に悪化し、指数は2.0 と、08 年(-1.7)を上回る悪化を示し、現在も回復していない(-1.4)。
図表 45 は、基調的な PPP ベースの推移とランドのかい離を説明するため、
単純回帰分析を行った結果を示している。それぞれのモデルは、IRP、NEER、
PPP が異なる仕様をもつ。ブラジルの問題は確かに結果にいくらか影響を及ぼ
したが、全体的なサンプル規模を踏まえると、この分析は引き続きかなり有効
と考えられる。
図表 44: 南アフリカ の固有リスクプレミアム 指数
(IRP)
(指数)
Index
1.5
図表 45: 固有リスクプレミアム 指数(IRP)モデルの回帰
分析と NEER
(指数)
120
Risk
リスク
loving
選好
1
110
0.5
100
0
90
-0.5
-1
80
リスク
Risk
hating
回避
-1.5
70
近似1
近似2
近似3
-2
-2.5
Jan-08
08年1月
南アフリカのリスクプレミアム
S
Africa's relative risk premia vs peers
(同等国との相対比)
Jan-10
10年1月
出所: ブルームバーグ、野村
Jan-12
12年1月
Jan-14
14年1月
Jan-16
16年1月
60
NEER
50
08年1月 09年5月 10年9月 12年1月 13年5月 14年9月
出所: 野村
リスクベースのアプローチに基づくと、12 月のランド NEER は 3 つのモデ
ルの平均と比較して 4.5%程度過大評価されていたことがうかがえる。つまり、
ランドは 15 年末時点で適正価値水準から著しくかい離していたわけではない。
16 年末についてはいくつかのシナリオを用意する。IRP 一定の場合を基本シ
ナリオとし、IRP が再び最悪期まで悪化する場合(シナリオ 2)、15 年 12 月の水
準にとどまる場合(シナリオ 3)、改善する場合(シナリオ 4、5)を考える。
IRP の問題点は、新興国市場が連動するケースが多く、固有のショックが同
様の新興国に波及しうるため、幅広いリスクプレミアムの尺度を維持すること
が
難しいことにある。よってすべてのシナリオを考察することに意味があ
33
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2016 年 1 月 21 日
ろう。次に(他のクロス為替レートは一定と想定し)ランドの対ドル相場を推定
する。
図表 46: 固有リスクプレミアムに基づく 2016 年末のランドの適正価値水準と対ドル相場のシナリオ分析
近似値
59.24
変化
-4.5
対ドル相場
15.56
75.00
49.92
-19.5
19.33
75.00
37.93
-38.9
25.44
-1.06
75.00
55.58
-10.4
17.36
0.00
75.00
75.33
21.5
12.81
-0.50
75.00
65.98
6.4
14.63
IRP
PPP
NEER
-1.06
78.73
62.03
基本シ ナリオ
シ ナリオ 2
-1.36
-2.00
シ ナリオ 3
シ ナリオ 4
シ ナリオ 5
15年 12月
16年 12月
注: ランドの対ドル相場は、NEER に含まれる他の通貨の為替レートが一定として推定。出所: 野村
基本シナリオに基づく水準は 1 ドル=19.33 となる一方、PPP が予想通り変
化し、IRP が 15 年末の水準で一定となる場合(シナリオ 3)は 17.36 となる。
IRP が中立(ゼロ)に戻る場合(シナリオ 4)は 12.81 となり、基調的な PPP に基
づく適正価値水準にかなり近づく(これらのモデルが PPP に基づく価値評価の
かい離を説明するものであることを考慮すれば、これは予想通りの結果である)。
南アフリカのリスクがやや改善するシナリオ(シナリオ 5)では、対ドル相場は
14.63 となる。
これらは 1 つの尺度に基づく大まかな推定であるが、両サイドからみること
は意味があろう。
金利差と CDS を用いたアプローチ:リスクフォーカス
次に、IRP よりも簡略なアプローチとして、南アフリカのリスクをクレジッ
トデフォルトスワップ(CDS)及び金利(並びに対米金利差)を通じてより直接的
に捉える。2 つのモデルを用意する。1 つは各変数の絶対水準を用いるもの(図
表 7 の近似 1)、もう 1 つは短期及び長期の対米金利差と CDS を用いる手法で
ある(近似 2)。
いずれのモデルも自己回帰モデルではなく、金利差を用いたモデルでは情報
の欠落が多すぎると考えられ、絶対値を用いた近似 1 のみを採用する。ここで
もいくつかのシナリオを用いて、NEER を推定し、そこからランドの対ドル相
場を導出した。
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2016 年 1 月 21 日
図表 47: 金利差と CDS を用いたアプローチ
図表 48: モデル推定結果
10年物南ア国債利回り(左軸)
10年物米国債利回り(左軸)
南ア:レポレート(左軸)
500
米国FF金利(左軸)
南ア:CDS(bp, 右軸)
450
ランドNEER(指数, 右軸)
(%)
14
12
400
10
8
6
4
2
07年1月
09年1月
11年1月
13年1月
15年1月
近似1
近似2
125
115
300
105
250
95
200
85
150
75
100
65
0
NEER
135
350
50
0
05年1月
(指数)
145
55
05年1月
07年1月
09年1月
11年1月
13年1月
15年1月
出所: 野村
出所: ブルームバーグ、野村
このモデルは、金利パリティ(短期金利)とリスクプレミアム(長期金利と
CDS)の双方の要因を捉えており、足元の環境では有用と考えられる。シナリ
オ分析によって、ランドの対ドル相場をより細かく想定した。第 1 に、実際に
は為替レートが 12 月末にかけての金利の変化につながり、モデルが 3.9%の過
小評価を示していると考えられる。
基本シナリオでは、前述の PPP の変化を想定し、南ア 10 年物国債利回りが
10.5%に、格下げ懸念の中、CDS が 350bp に上昇すると想定、また 10 年物米
国債利回りと FF 金利の野村予想、SARB が 8.00%に利上げするとの前提を用
いる。このシナリオで NEER は 16 年末に 1 ドル=17.41 になり、15 年末に比
べ 12%下落する。
シナリオ 2 は、米国の利上げサイクルがより緩やかになり、南ア 10 年物国
債利回りの上昇も小幅となることを想定し、ここから導出されるランドの対ド
ル相場は 1 ドル=16.48 である。シナリオ 3 は SARB の利上げがより小幅にな
るケース、シナリオ 4 は南アフリカのリスクプレミアムが低下するシナリオで、
対ドル相場は前者が 16.90、後者が 14.39 になる。
図表 49: 金利パリティ(短期金利)とリスクプレミアム(長期金利と CDS)によるランドの適正価値(16 年末)
10 年物南ア 10 年物米
南ア ・
国債利回り 国債利回り レポレー ト
78.73
9.80
2.27
6.25
PPP
15 年 12月
米国 FF 南ア ・ CDS ラ ンド・
スプ レッド NEER
金利
0.25
335.84
62.03
近似値
64.5
変化
3.9
対ドル
相場
15.56
16 年 12月
基本シ ナリオ
シ ナリオ 2
シ ナリオ 3
75.00
10.50
2.50
8.00
1.00
350.00
55.4
-11.9
17.41
75.00
10.00
3.00
8.00
0.75
350.00
58.6
-5.9
16.48
75.00
10.50
2.50
7.00
0.75
350.00
57.1
-8.6
16.90
シ ナリオ 4
75.00
9.50
2.50
7.50
1.00
225.00
67.1
7.5
14.39
出所: 野村
こうしたモデルはサンプル外の要因によって予測誤差を生じやすいが、モデ
ル 1 の仕様では統計的有意であり、正しいサインを示すことから、未踏領域に
踏み出しつつあるランドの予想では有効と考えられる。
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2016 年 1 月 21 日
その他の検討材料
年初来、中国は明らかにランド相場の動向を左右する主な要因であり、中国
発の動揺が新興国の資産クラス全般、成長率、金属価格に波及していることへ
の懸念を踏まえても、とりわけ重要である。ただし、ランドの対ドル相場に及
ぼし得る具体的な影響については不透明である。
第 1 に、中国と南アフリカの貿易関係は極めて把握しにくい。南アフリカの
統計及び国際通貨基金(IMF)の南アフリカについての統計をみると、15 年 1∼8
月の南アフリカの対中貿易収支(南アフリカの対中輸出と、南アの中国からの輸
入の差)は赤字である。しかし、IMF の中国に関する統計を見ると、南アの対中
貿易赤字はそれよりもかなり小幅である。一方、中国の月次貿易統計を見ると、
同期間の南アの対中貿易は小幅ながら黒字となっている(つまり、南アフリカの
対中輸出は、中国からの輸入を上回る)。
南アフリカの統計を信頼し、貿易収支が赤字だとすれば、最近の人民元安は
南アフリカの消費者にとってはプラス、南アフリカの鉄鉱石、鉄鋼、その他商
品の輸出業者にとってはマイナスとなる。しかし、ランドの対ドル相場に対す
るインプリケーションという点では、この赤字はランド売りにつながるもので
はない。
ここで問題となるのは、市場が南アフリカについてどのような見方を取って
いるかであろう。南アフリカの中国からの輸入は無視し、商品の純輸出国とい
う側面だけを捉えている場合、中国の成長減速(ランドの対元相場に影響)、及
び交易条件(同様)、そして金属価格下落を踏まえ、市場はランド安が進む環境
にあるとみなすだろう。
図表 50: 南アフリカの対中貿易は不整合
図表 51: 交易条件
(100 万ドル / 月、 15 年 1 ∼ 8 月 )
南ア フ リカ
(IMF)
中国
(IMF)
中国月次
貿易統計
140
南ア フ リカから 中国への輸出
666.2
1274.0
2140.5
130
南ア フ リカの中国から の輸入
1428.1
1320.9
1320.9
120
南ア フ リカの対中貿易収支
-761.9
-47.0
819.6
110
(指数)
(指数)
41.0
36.0
31.0
出所: 国際通貨基金、南アフリカ統計局、中国国家統計局、野村
100
26.0
90
21.0
80
16.0
70
NEER(左軸)
60
交易条件(右軸)
50
05年1月 06年11月 08年9月 10年7月 12年5月 14年3月
11.0
6.0
出所: ブルームバーグ、南アフリカ準備銀行、野村
しかし、実際には 15 年半ば以降、南アフリカの交易条件は横ばいで推移し、
16 年初めの数営業日では若干改善している。南アフリカは原油の純輸入国であ
る一方、世界有数の金属資源の輸出国である。原油価格は 15 年 6 月初め以降
55%下落し、16 年初めから 12%下落した。これに対して、金属価格は 15 年 6
月初め以降 12%の下落にとどまり、16 年初め以降は 1%上昇している。さらに
南アフリカに限定すると、鉄鉱石は 6 月初め以降で 25%の下落、年初来では
2%の下落にとどまっている。よって、さしあたり、交易条件の悪化がランド
安の主要な要因とは言えないだろう。
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Nomura | 国際金融為替マンスリー
2016 年 1 月 21 日
言うまでもなく、原油価格が底入れまたは反発し、中国の成長懸念が金属価
格の一段安を誘発すれば、話は変わって来る(輸入に頼っている原油価格が上
昇、輸出品目である金属価格が下落すれば、南アフリカの交易条件は悪化す
る)。しかしまだ現実はそうなっていない。従って、南アフリカの交易条件が
安定に向かう可能性を否定するものはなく、現時点では商品市況の下落が先行
きも対ドルでランド安が進む要因とみなす理由にはならない。
テクニカル分析も同様にランド相場の分析に有効ではない。NEER を例にと
ると、1998∼2001/02 年、2006∼08 年の危機時には、危機前のピークからほ
ぼ 50%下落している。しかし、11 年の水準をピークとすると、15 年末の水準
も同程度の下落幅である。したがって、南アフリカの格付けが投機的水準に近
づく中、更なる悪材料が生じるとの見方をとっても、この点では強いシグナル
はみられない。ランドの対ドル相場についても同様のことが当てはまる。
本稿では、PPP のシフトをモデルに取り入れることで実質ベースでの推移を
考慮したが、野村がかつて構築した価値評価モデル(フロー均衡為替レート
(FEER)、ストック均衡為替レート(SEER))は用いなかった。これらのモデルは、
スポットレートの変動に基づくとランドが 15 年 9 月末時点から約 20%過小評
価されていることを示唆するが、経常収支赤字の改善が見られないことからす
ると、同モデルを 15 年末に当てはめる場合、ランドは引き続き過大評価され
ていることになろう。
ランドの実質実効為替レート(REER)のみに注目し、2001 年につけた実質ベ
ースでの底値に戻ると想定する場合、ランドの REER はさらに 8.4%の減価余
地がある。他の条件がすべて一定の場合、これは対ドルで 17.34 ランドに相当
する。
まとめ:16 年末の予想
上記の分析、ならびにランドの NEER または REER に関する他の考察は、
その他通貨の対ドル相場が先行きも一定であることを前提としている。これは
非現実的だが、モデル予想においては必要である。実際には、新興国通貨は 16
年に全般的に対ドルでアンダーパフォームするとみられる。ただしランドは同
国固有の要因から同等の新興国通貨をアンダーパフォームする可能性が高く、
NEER モデルに基づく対ドル相場予想には、ランド安方向へのバイアスがある。
2016 年末のランド相場の見通しは、上位のモデルを用いてもなお不確実性
が伴い、上述のような固有の悪化要因がカギを握っている。とは言え、シナリ
オ分析の結果とリスク要因は、予想の手掛かりとなろう。
本稿で用いた 2 つのモデルの予想値を平均すると 2016 年末のランド相場は
対ドル 18.37 となる。
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Nomura | 国際金融為替マンスリー
2016 年 1 月 21 日
図表 52: モデルによる対ドル・ランド相場の予想レンジ
(ランド)
26
24
22
20
18
16
14
15年12月
16年2月
16年4月
16年6月
16年8月
16年10月
16年12月
12
出所: 野村
ただし、ランド NEER バスケット内の主要 10 通貨及び新興国通貨がいくら
か変動することを勘案し、2 つのモデルが示唆する NEER の平均調整幅 15.7%
に加重すると、16 年末のランド相場(対ドル)は 22%前後の調整幅となり、
ほぼ 1 ドル=19.0 になる。
これは大幅な調整に見えるが、15 年の減価幅の 35%に比べれば妥当であろ
う。15 年 12 月末から予測値との乖離は 22.1%、直近水準(1 月 8 日時点)から
は 18.8%にとどまる。国債格下げリスクに直面し、経常収支赤字拡大と資本逃
避のリスク、中国懸念、米国利上げが迫る国としては、現実的な想定であろう。
ランドは過去最低水準を更新中である。よって今回用いた分析の手法には解
釈の余地があり、調整の必要や誤差を伴うことを認識している。ただし、こう
した手法により、国内外の要因を踏まえて 16 年末の水準を予想しやすくなる。
2016 年末のランド相場は対ドル 19.0 まで減価しよう。仮に国内外の情勢が好
転しなければ、2017 年末には対ドル 20.0 に達しよう(図表 53)。
SARB の利上げペースが速まる場合、政治環境の好転、成長政策面での進展、
国債格下げを回避する有効な政策転換などが浮上すれば、予想値の上方修正を
検討する。また、格下げが早まる場合、政治混迷が深まる場合、交易条件が悪
化する場合、中国経済が急激な減速に至る場合、米国の利上げが(野村予想であ
る 16 年の年 2 回よりも)早まる場合も、下方修正の検討が必要となろう。
図表 53: 南アフリカランド相場の見通し
<対ドル>
1Q
①従来予測
②2015年12月改定
③2016年1月改定
14.25
16.00
16.75
2016年
2Q
3Q
13.75
16.00
17.50
13.25
16.00
18.25
4Q
12.75
16.00
19.00
2017年
4Q
13.00
16.00
20.00
<対円>
1Q
①従来予測
②2015年12月改定
③2016年1月改定
(ドル円前提)
8.56
7.63
7.28
122
2016年
2Q
3Q
9.09
7.81
7.14
125
9.66
8.00
7.01
128
4Q
10.20
8.13
6.84
130
2017年
4Q
10.38
8.44
6.75
135
出所: 野村
38
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2016 年 1 月 21 日
4. アジア通貨市場
4-1 アジア通貨見通し改定:人民元・アジア通貨見通しの改定
CNY は 2016 年第2四半期にも対ドル 6.90 へ
アジア通貨の見通し改定
野村では昨年末に、2016 年のアジア通貨のテーマとして、1) 中国景気の下
振れリスクと人民元の下落、2) 米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げ開始
と、主要 3 通貨内での米ドル上昇、3) アジアの金融政策緩和、4) 政治動向、を
挙げたが、これらのテーマは引き続き、アジア通貨が全般的に米ドルに対して
弱含むとの野村の見方を支えている(詳細は、2015 年 12 月 18 日付 (英語版 12
月 7 日発行)「アジアスペシャルレポート: 2016 年のアジア経済・為替見通し
- より厳しい荒波が待ち受ける」所載の「2016 年のアジア為替見通し」を参照)。
ただし、上記レポート発行以降の中国人民元の変動は大幅であり、向こう 3
∼6 ヶ月で人民元の対ドル相場は適正価値(現時点では 1 ドル=6.90 元と判断)
に向かう可能性がある。そうした意味で、16 年 6 月末までに元のスポット相場
が 1 ドル=6.90 元に向かうとの予想修正を行う(改定前は 1 ドル=6.64 元)と
ともに、中国の動向に影響を受けやすい通貨(韓国ウォン、台湾ドル、シンガポ
ールドル、マレーシアリンギ)のより大幅な下落を織り込む形で、向こう 2 四半
期の見通しを調整する。
人民元の下げ足が加速
今回の見通し改定において、野村では、16 年前半の人民元の下げ足が加速す
ると想定しており、6 月末までに 1 ドル=6.90 元、9 月末までに同 6.95 元に達
すると予想している。 最近の人民元の急ピッチな下落は、債務削減とヘッジに
関して企業部門の対外債務に対する政策当局の安心感が増しており、引き続き、
市場ベースの為替相場形成に進むことを望んでいるとの、野村の従来からの見
方を裏付けている。全般的なドル高を背景に、中国人民銀(PBOC:中央銀行)
が人民元の対ドル相場よりも元の貿易加重平均指数を重視する姿勢を強調して
いることも、更なる対ドル元安容認姿勢を高める可能性が示唆される。なお、
野村の人民元為替評価モデルによれば、元は貿易加重平均ベースで 6.1%過大
評価されている。さらに、ここ数営業日は、元の対ドル中心レートが予想以上
に (元安方向に) 引き下げられており(1 月 4 日の中心レートとモデルの誤差が
+94pips、6 日は+104pips と大幅にかい離した)、野村が適正価値と判断する 1
ドル=6.90 元への調整を PBOC が比較的速やかに容認する可能性があるとの
我々の見方を裏付けている。とは言え、金融市場の地合いが悪化し、広がりを
見せていることを踏まえると、元安は急速かつ一方的な動きとはならないと考
えられる。
全体として、野村では引き続き、16 年の中国の国際収支全般を取り巻く状況
は厳しいとみている。その主な要因として、民間部門の対外投資拡大の可能性
(中国の対外資産負債状況と外貨準備高のギャップは、15 年 6 月末時点で 2.2
兆ドルに達している)、サービス収支赤字の拡大が挙げられる。同時に、人民元
安及び腐敗撲滅運動の影響も手伝って、国内預金(15 年 10 月末時点で 17.5 兆
ドル)が外貨に転換され、国外に流出する可能性がある。同時に、企業部門がド
39
Nomura | 国際金融為替マンスリー
2016 年 1 月 21 日
ルを抱え込んでいるため、貿易収支/経常収支黒字がどの程度(流出を相殺する
資金として)流入する可能性については懐疑的である。
アジア通貨に対する中国の影響
人民元の下げ足加速は、中国の動向に影響を受けやすい通貨(韓国ウォン、台
湾ドル、シンガポールドル、マレーシアリンギ)を中心に、アジア通貨の重石と
なろう。これらの通貨は、経済、金融を通じて中国との関係が強い。韓国の政
策当局は 4 月の議会選挙を前に景気重視姿勢を取っており(野村では 16 年 6 月
までに計 0.50%ポイントの利下げを予想)、対外投資(資本流出)促進策(国民年金
公団による為替ヘッジ比率の低下が報じられる)、造船受注のキャンセルリスク
(為替ヘッジのキャンセルにつながる)を踏まえ、野村では、アジア通貨内では
韓国ウォンが主にアンダーパフォームすると予想しており、対ドルでは 16 年 6
月末までに 1 ドル=1,250 ウォンに達しよう。
同時に、台湾ドルについても 6 月末の予想を 1 ドル=34.3 台湾ドルへ修正す
る。台湾中央銀行(CBC)は 15 年 9 月末、12 月末に 2 四半期連続で利下げを実
施したが、野村のエコノミストは引き続き、さらなる景気支援のため追加利下
げの可能性があるとみている。1 月 16 日の総統選挙を前に、中国はいわゆる
「92 年合意」(中台間で「一つの中国」原則に関して口頭で成立したとされる
合意の通称)を盾に揺さぶりをかけており、台湾ドルが対米ドルで弱含む可能性
があろう。
香港については、16 年中の米ドルペッグ制の変更は予想されないが、中国本
土への経済依存度と香港ドルの過大評価(約 10%割高)、米国が利上げを開始す
るなか香港不動産市場にリスクがある点を踏まえると、香港ドルが対米ドルで
下落基調となる可能性があろう。
北東アジアを別にすると、シンガポールドルとマレーシアリンギは、人民元
安及び中国景気減速の影響を最も被りやすい通貨といえる。よって野村では、
両通貨の(対ドル相場)見通しをいずれも安値方向に修正した。ただし、国内景
気と全般的な米ドル高に対する感応度でみると、シンガポールドルはマレーシ
アリンギをアンダーパフォームしよう。マレーシア国債の外国人保有比率の高
さや国内政治リスクに対する懸念は後退しつつある(政府系投資会社ワン・マレ
ーシア・デベロップメント(1MDB)の不良債権処理は順調に進捗)。野村では、
16 年 6 月末時点の両通貨相場を 1 米ドル=1.50 シンガポールドル、4.4 マレー
シアリンギと予想しており、シンガポールドルがマレーシアリンギを 3.6%ア
ンダーパフォームするとみている(直近のスポット相場に基づく)。商品価格の
さらなる下落が野村の予想に対する主なリスクである。
インドルピー とフィリピンペソがアジア通貨内ではアウトパフォームするとの
見方は変わらず
インドルピーとフィリピンペソも 16 年を通じて対米ドルでやや下落すると
予想しているが、両通貨はアジアの他の通貨をアウトパフォームしよう。16 年
末の予想は、インドルピーが 1 ドル=67.3 ルピー、フィリピンペソが 1 ドル=
47.7 ペソである。インドについては、目先の逆風が予想されるものの、一時的
と考えられ(インド南部の大都市チェンナイで大規模洪水が発生し、内需と生産
に影響)、野村のエコノミストは、16 年の成長が加速するとの見方を維持して
40
Nomura | 国際金融為替マンスリー
2016 年 1 月 21 日
いる(実質 GDP 成長率は、14/15 年度(14 年 4 月∼15 年 3 月)の前年比+7.3%か
ら 15/16 年度には同+7.6%への加速を見込む)。国内要因に加えて、インドの
国際収支は堅調を維持するとみられ(15/16 年度の国際収支は約 250 億ドルの黒
字になると予想)、外貨準備も高水準であることから全般的な米ドル上昇による
リスクを緩和するとみている。
フィリピンについては、5 月 9 日の統一選挙の前後にややリスクがあること
は認識しているが、国内景気は堅調であり、財政支援は拡大基調にあり、在外
就労者からの送金も底堅く推移するとみられ、これらがフィリピンペソのアウ
トパフォームを支えよう。
タイバーツ は出遅れ、インドネシアルピアはフォワード水準と比較して堅調な
推移となろう。
スポットベースでは、アジア通貨内で主にアンダーパフォームするのはタイ
バーツとの見方は変わらないだろう。野村のエコノミストは、成長低迷が続き、
ディスインフレが解消せず、利下げを通じた金融緩和が実施され、政治的不透
明感が続くと予想している。16 年末には 1 米ドル=38.0 バーツに下落すると
予想している。
インドネシアについては、15 年にインドネシアルピアの下落とアンダーパフ
ォームの原因となった構造的な懸念が 16 年にはやや改善すると予想される。
インドネシアルピアは、小幅ながらも国内環境の改善が続く恩恵を受けよう。
具体的には、内需の回復、公共投資の加速、政治環境の改善が挙げられる。16
年末時点の予想は 1 米ドル=14,650 ルピアで、ノンデリバラブルフォワード
(NDF)相場が織り込んでいる 15,219 ルピアを上回ろう。ただし、16 年も対内
債券投資が経常収支赤字を補てんする重要な手段になるとみられることから、
インドネシアが抱える双子の赤字(財政赤字と経常収支赤字)、国内債の外国人
保有比率の高さについては引き続き懸念が残る。
(Craig Chan)
41
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2016 年 1 月 21 日
図表 54: アジア通貨見通し一覧
アジ ア 通貨の予想為替レー ト (改定後 )
16年 1月 6日
中国元 ( オン シ ョア )
6.5369
( 変化率%)
フォワード
トータルリターン (%)
中国元 ( オフ シ ョア )
( 変化率%)
フォワード
トータルリターン (%)
香港ド ル
6.6660
7.7513
( 変化率%)
フォワード
トータルリターン (%)
イン ド ルピ ー
66.62
( 変化率%)
フォワード
トータルリターン (%)
イン ド ネシ ア ルピ ア
( 変化率%)
フォワード
トータルリターン (%)
13,881
マレー シ ア リン ギ
4.3560
( 変化率%)
フォワード
トータルリターン (%)
フィリピ ン ペソ
46.98
( 変化率%)
フォワード
トータルリターン (%)
シ ン ガポー ルド ル
( 変化率%)
1.4302
フォワード
トータルリターン (%)
韓国ウォ ン
1,194.8
( 変化率%)
フォワード
トータルリターン (%)
台湾ド ル
33.24
( 変化率%)
フォワード
トータルリターン (%)
タイバー ツ
36.24
( 変化率%)
フォワード
トータルリターン (%)
アジ ア 通貨の予想為替レー ト (従来予想 )
16年 12月 4日
中国元 ( オン シ ョア )
中国元 ( オフ シ ョア )
香港ド ル
イン ド ルピ ー
イン ド ネシ ア ルピ ア
マレー シ ア リン ギ
フィリピ ン ペソ
シ ン ガポー ルド ル
韓国ウォ ン
台湾ド ル
タイバー ツ
6.3917
6.4312
7.7503
66.88
13,838
4.2265
47.09
1.3979
1,157.3
32.72
35.78
16Q1
16Q2
16Q3
( 変化率は前年同期比 %)
6.70 ↑
6.90 ↑
6.95 ↑
2.5
3.0
0.7
6.70
6.79
6.84
0.1
-1.6
-1.6
6.80 ↑
6.95 ↑
6.95 ↑
2.0
2.2
0.0
6.74
6.80
6.84
-0.9
-2.2
-1.5
7.78 ↑
7.80 7.81 0.4
0.3
0.1
7.75
7.74
7.74
-0.4
-0.7
-0.9
66.8 ↓
67.2 67.3 0.3
0.6
0.1
67.4
68.5
69.5
0.9
1.9
3.3
14,150 ↓
14,450 14,650 1.9
2.1
1.4
14,210
14,554
14,878
0.4
0.7
1.6
4.37 ↑
4.41 ↑
4.44 ↑
0.3
0.9
0.7
4.37
4.39
4.41
0.1
-0.5
-0.8
47.3 47.6 48.0 ↑
0.7
0.6
0.8
47.3
47.6
47.8
0.1
0.0
-0.3
1.46 ↑
1.50 ↑
1.50 ↑
2.1
2.7
0.0
1.43
1.44
1.44
-1.8
-4.2
-4.0
1,220 ↑
1,250 ↑
1,250 ↑
2.1
2.5
0.0
1,197
1,198
1,199
-1.9
-4.1
-4.1
33.7 ↑
34.3 ↑
34.3 ↑
1.4
1.8
0.0
33.5
33.5
33.5
-0.6
-2.4
-2.5
36.6 37.5 ↑
37.8 ↑
1.0
2.5
0.8
36.5
36.6
36.7
-0.4
-2.4
-2.8
16年末
17年末
( 変化率は前年比 %)
6.90 ↑
6.89 ↑
-0.7
-0.1
6.89
7.08
-0.1
2.8
6.90 ↑
6.89 ↑
-0.7
-0.1
6.89
7.04
-0.2
2.2
7.80 ↓
7.80 ↓
-0.1
0.0
7.74
7.73
-0.8
-0.9
67.3 ↓
65.0 0.0
-3.4
70.5
74.3
4.8
14.3
14,650 ↓
14,550 ↓
0.0
-0.7
15,219
16,621
3.9
14.2
4.42 ↑
4.32 ↑
-0.5
-2.3
4.43
4.50
0.1
4.2
47.7 ↓
46.6 ↓
-0.6
-2.3
48.0
48.7
0.7
4.5
1.49 ↓
1.46 -0.7
-2.0
1.44
1.45
-3.3
-0.6
1,240 ↓
1,200 ↓
-0.8
-3.2
1,199
1,192
-3.3
-0.7
34.0 ↓
33.4 ↑
-0.9
-1.8
33.4
33.3
-1.6
-0.2
38.0 38.1 ↑
0.5
0.3
36.9
37.3
-2.9
-2.0
16Q1
6.54
6.56
7.77
66.9
14,200
4.23
47.3
1.45
1,200
33.6
36.6
16年末
6.80
6.80
7.82
67.4
14,850
4.40
48.1
1.50
1,250
34.2
38.0
16Q2
6.64
6.65
7.80
67.2
14,450
4.31
47.6
1.47
1,230
33.9
37.1
16Q3
6.72
6.73
7.81
67.3
14,650
4.36
47.9
1.49
1,245
34.1
37.6
17年末
6.79
6.79
7.81
65.0
14,600
4.28
46.8
1.46
1,210
33.3
38.0
出所: 野村
42
Nomura | 国際金融為替マンスリー
2016 年 1 月 21 日
4-2 中国元:景気は年前半も軟調が続く見込み
国内景気はまだ減速方向にある。15 年 10-12 月期の GDP 成長率は前年同期
比+6.8%と 7-9 月期の+6.9%を下回った。主要項目の寄与度について、消費が
15 年 10-12 月期の GDP 成長率
は+6.8%増と鈍化傾向が続き、
国内投資と外需が共に不調
+6.1ppt(7-9 月期+3.8ppt)、総資本形成が+1.1ppt(同+3.8ppt)、純輸出が−
0.5ppt(同−0.8ppt)と、自動車補助金対策で消費が加速した一方、投資が更
に減速、外需も引き続き成長率にマイナスに寄与している。経済の実態を見る
と、成長率に大きく影響する国内の建設活動は 10-12 月期においても低迷して
いる。建設業電力消費量、鉄鋼の国内見かけ消費量、セメント生産量といった
関連指標はまだ一けた台のマイナスの伸びで底這いしている(図表 55)。
2014 年後半以降の中国景気鈍化の加速は国内建設需要の急激な調整に起因
するが、それがまだ底入れしていない。固定資産投資の中身を見ると、最も調
公共投資は相対的に堅調だった
ものの、投資需要全体を押し上
げるには力不足
整が激しかった建設・不動産の投資は足元すでに前年比ゼロ近傍まで落ち込ん
でおり、素材産業が低迷したことから、製造業も 12 月に 5.1%まで投資が減速
している。インフラ投資は二けた台の伸びが維持されているものの、傾向とし
て 15 年 4-6 月期以降伸び悩む状態にある(図表 56)。
市場では指標発表後に中国政府によるインフラ投資強化への期待を織り込む
動きが見られたが、筆者はインフラ投資のアップサイドリスクは限定的と考え
政府は 14 年後半から過度に膨
らんだ地方政府債務を抑制する
姿勢に転じている
る。中央政府は 2014 年 10 月以降、地方政府の無責任な債務膨張を抑制するス
タンスに転じており、地方政府の予算外の債務を原則禁止することと共に、新
規の債務増加に厳しい上限管理を敷いた。2015 年は地方政府の債務を増やさ
ずに PPP の形でインフラ投資に民間資金を受け入れることや、政策銀行経由
で中央政府の債務拡張を通じて景気底入れを図ろうとした。
共産党トップは 15 年末頃から「供給側改革」を提唱し、より効率的なサプ
ライサイドの資源配置に向けた改革を進める方針を掲げている。過度な地方政
府債務の膨張による非効率な投資を抑制というスタンスが継続される可能性が
高い。2016 年の財政赤字の GDP 比が 2015 年の 2.3%から 3%程度に引き上げ
られるとの観測が出ているが、財政赤字比率が小幅な上昇にとどまることも、
政府の姿勢を反映している。この観点から、現状前年比 8%程度の財政収入と
節度ある債務増加で 18%に近い 2015 年のインフラ投資の伸び率を更に押し上
げることは容易ではない。
図表 55: 建設活動関連指標はマイナスの伸び
(前年比、%)
40
図表 56: 固定資産投資は全般的に鈍化傾向
セメント生産量
(前年同月比、%)
鉄鋼の国内見かけ消費量
建設業電力消費量
50
30
インフラ
製造業
建設・不動産
その他三次産業
40
20
30
10
20
0
10
-10
0
-20
-10
11年
12年
13年
14年
出所: 中国国家統計局、CEIC データベース、野村
15年
10年
11年
12年
13年
14年
15年
出所: 中国国家統計局、CEIC データベース、野村
43
Nomura | 国際金融為替マンスリー
2016 年 1 月 21 日
不動産投資の先行指標からは僅
かながら底入れのサインが見え
始めている
一方で、筆者は不動産投資が 16 年中にいったん底入れする可能性があると
考えている。勿論、毎年の住宅着工量は都市部の新規需要増加と比べて既に低
水準とは言えないことから、住宅建設量は今後伸び悩むだろう。しかし、15 年
初来好調な住宅販売を背景に Tier1 及び一部の Tier2 都市の住宅在庫消化指標
が改善しており、開発業者も 15 年後半に再び土地を取得し始めた模様である。
12 月分の政府統計では、土地取得の伸びに底打ち感が見られ、商品不動産(主
に住宅)の新規着工も前年比でマイナス幅が縮小している(図表 57)。
ただし、年前半は「慣性的な」不
動産開発投資の減速はまだ続く
可能性が高い
楽観的なシナリオであれば、不動産投資の底入れは 16 年中ごろと期待でき
るが、年前半はまだ「慣性的な」投資調整が続く可能性がある。不動産投資の
サイクルとして、住宅価格上昇→開発業者の土地取得の加速→新規着工の持ち
直し→投資伸びの改善という順序を辿る。注意すべき所は新規着工の持ち直し
から投資全体の改善までタイムラグが存在することである。投資は建設中工事
量の伸びと連動するものであるが、特に今回の深い調整局面において、新規着
工の改善は初期においてすぐに建設中工事量全体の加速につながりにくい可能
性が高く、しばらく「慣性的な」投資減速が続く可能性がある。ちなみに、筆
者の試算では仮に不動産新規着工は 16 年初に 0 近傍まで回復し、その後も 0
成長が維持されるなら、建設中工事量は 5-6 月頃に底入れし、年後半に緩やか
な戻り、つまり最悪期からの脱却が期待できる(図表 58)。
図表 57: 土地市場の取引と不動産の新規着工が回復
(前年比、%)
80
土地取得面積(3か月移動平均)
商品不動産新規着工
60
図表 58: 不動産建設需要は年前半にまだ弱いだろう
(前年同月比、%)
50
(前年同月比、3ヵ月移動平均%)
100
40都市新着工過去18ヵ月累積
40都市新規着工(右軸)
40
80
予
40
30
60
20
20
40
0
10
20
-20
0
0
-40
-10
-60
-20
11年
12年
13年
14年
出所: 中国国家統計局、CEIC データベース、野村
15年
-20
-40
10年
11年
12年
13年
14年
15年
16年
注:過去 18 ヵ月の新規着工の累積で建設中工事量を代替
出所: 中国国家統計局、CEIC データベース、野村
国内の生産は、年前半はまだ在庫調整圧力を受けると想定される。在庫循環
から見ると、中国は 14 年 11 月から在庫圧縮局面入りしたものの、15 年後半
生産サイドは当面調整圧力が残
る
は出荷があまりにも低迷しており、在庫が調整されないまま高止まりの状態に
ある。16 年は少なくとも前半において国内の総需要は弱含む環境にあることか
ら、在庫調整局面脱却には少なくとも更に 2 四半期かかる可能性が高い。それ
までは生産調整の加速による中国需要の下振れリスクにも注意する必要はある
(中島 將行)
44
Nomura | 国際金融為替マンスリー
2016 年 1 月 21 日
4-3 韓国ウォン:中央銀行は追加金融緩和に消極的
韓国ウォンは対ドルで 16 年初に一段と通貨安に動き、1 ドル=1214 ウォンと
1 月上旬のリスクオフで対ドル、
対円ともウォン安が進んだが、対
円での上昇方向を引き続き見込
む
いう安値にある(1 月 20 日現在)。背景には、年初に元安及び株安という中国
金融市場の変調に加えて、米国の小売り統計が下振れしたことから、リスクオ
フが広まったことが挙げられる。対円でも、100 ウォン=9.5∼9.6 円とウォン
安が進み、リスクオフによる円高が足元優勢になっている。しかし、リスクオ
フの一巡と円売り需要を理由に今後円安方向に転じる可能性が高く、ウォンは
対円で緩やかな上昇軌道に戻ると想定される。
国内景気はまだそれなりに堅調
国内経済は概ね安定している。12 月の経済指標は輸出金額が前年比−13.8%
(市場コンセンサスは−11.7%)、鉱工業生産が前月比−2.1%(同−0.7%)と
冴えない結果となったものの、12 月分の PMI は 50.7 と 15 年 3 月以降初めて
50 を上回り、新規受注及び新規輸出受注も小幅な上昇が見られた(図表 59)。
また、12 月分の失業率は 3.4%と安定し、消費者物価指数も前月比で 0.2%上昇
したように、国内の消費はそれなりに堅調だった模様である(図表 60)。
韓国銀行は 1 月の金融通貨委員会で政策金利を 1.5%に据え置いた。背景と
韓国銀行は利下げを見送り、家
計債務増加と資本流出の加速を
懸念
して、第一に同行は国内景気に対してより楽観的である。2016 年の成長率予
測を+3.2%から+3.0%に引き下げたものの、野村香港想定の+2.5%より強気で
ある。第二に政府は低金利による家計部門負債の更なる膨張と資本流出への懸
念が強い。中国景気が弱い水準で安定化し、米国の緩やかな利上げという前提
であれば、中央銀行も利下げを回避するスタンスを取る可能性が高い。
ただし、景気回復のエンジンに陰りが見え始めている。MERS による一時的
一方で景気回復を継続させる材
料が乏しく、実体経済にはぜい
弱さが残る
ショックからの回復と財政支出強化の効果が 15 年後半の景気持ち直しに大き
く寄与した。しかし、財政支出が 1∼9 月において異例の前倒し実行となった
反動で、10-12 月期に前年同期比−9.4%まで鈍化するという緊縮効果が短期的
に想定される。2016 年において、景気への財政支出の寄与度が低下すると思
われる。また、輸出に関して、中国減速の影響が今後も続くと想定される。
更なる人民元安といったん安定
化した中国需要の再減速のリス
クに注意
韓国ウォン対円上昇シナリオの主なリスクは、①市場の予想を上回る米国の
利上げペース、②今後も起こり得る一時的な元安加速、③中国側の過剰生産能
力削減政策から生じる需要調整の加速、にある。これら要因による対円での緩
やかなウォン高シナリオが崩れるリスクに注意する必要はある。(池田雄之輔)
図表 59: 韓国製造業 PMI は内需受注の堅調さを示唆
図表 60: 韓国の失業率とインフレ率
(50超=景気拡大)
韓国製造業PMI
56
新規受注
新規輸出受注
54
(%)
5.0
(50超=景気拡大)
(前年比、%)
3.0
失業率(左軸)
コアCPI上昇率(右軸)
4.5
2.5
52
4.0
50
2.0
48
3.5
46
1.5
3.0
44
2.5
出所: ブルームバーグ、野村
15/10
15/7
15/4
15/1
14/7
14/10
14/4
14/1
13/10
13/7
13/4
13/1
12/7
1.0
12/10
15/10
15/7
15/4
15/1
14/10
14/7
14/4
14/1
13/10
13/7
13/4
13/1
42
出所: ブルームバーグ、野村
45
Nomura | 国際金融為替マンスリー
2016 年 1 月 21 日
4-4 インドルピー:新興国不安の中で台風の目となるか
インドルピーは 12 月 16 日の米利上げ開始決定後、1 ドル=67 前半から 66
前半まで反発した。しかし、今年 1 月には反落、68.0 近辺まで減価している。
資源純輸入国のインドにとって、年明け後の商品市況の下落は本来、通貨高
要因である(図表 61)。しかし、中国に端を発した世界的なリスクオフから、
インドルピーは年明け後、大き
く減価
世界的なリスクセンチの悪化に
インドルピーは敏感に反応
株式指数である SENSEX が大幅に下落、ルピーの弱含みにつながっている。
それでも、年明け後に世界的に金融資産が下落するなかで、インドの調整は
比較的小幅である。同国が新興国の中で優位な立ち位置にあるとの見方には変
インドは新興国の中で相対的に
優位な立ち位置にある
わりが無い。(1)原油安によるマクロ環境の改善、(2)緩和的な金融政策、が成
長の追い風となろう。 (3)中国との直接的な貿易関係も低い(図表 62)。また、
(4)13 年 9 月のラジャン氏のインド準備銀行(RBI)総裁就任以降、同国は外貨
準備を大きく積み増し、米利上げに対する耐性も高い(図表 63)。(5)14 年 6
月に首相に就任したモディ氏による構造改革は上院に阻まれ、歩みは遅いもの
の直接投資規制の緩和など着実に成果を挙げつつある(図表 64)。
ただし、16 年にはいくつかのリスク要因が存在する。まず、公務員給与の見
直しによるインフレ・財政見通しの悪化が挙げられる。第 7 次賃金委員会では、
公務員給与及び年金支給額の 23.5%もの引き上げ(一回限り)や、基本給の毎
公務員給与の見直しにより、一
時的にインフレが押し上げられ
ると見られる
年 3.0%(インフレ調整後)の引き上げが勧告されている(実施は 16 年 4 月)。
野村では設備稼働率の低さから、物価押し上げ効果は一時的に留まると見てい
るが、幅広い物品に波及する可能性には留意が必要となろう(図表 65)。
また、今年 9 月に任期満了を迎えるラジャン総裁の去就も焦点となろう。国
今年 9 月に任期満了を迎える
際的に評価の高い同氏が RBI を去れば、金融政策の信頼の低下は避けられまい。 ラジャン総裁の去就も焦点
インフレ率は足元で落ち着いているが、もし原油価格の反発や、モンスーン期
の降雨量低迷による農産物価格の上昇があれば、容易に悪化しうる。
上述のリスク要因はあるものの、商品市況の低迷、中国経済減速という状況
下で、インドが新興国の中で最も優位な立ち位置にある点は変わりがない。ル
ルピーの他新興国と比較した
堅調さは維持される公算
ピーの他新興国と比較した堅調さは維持される公算が大きい。(中島 將行)
図表 61: 新興国の一次産品(食品を除く)の純輸出
(対GDP比%)
サウジアラビア
カザフスタン
ベネズエラ
ロシア
ナイジェリア
チリ
ペルー
コロンビア
南アフリカ
マレーシア
インドネシア
メキシコ
ブラジル
アルゼンチン
ポーランド
ギリシャ
ベトナム
トルコ
中国
ウクライナ
ハンガリー
インド
タイ
韓国
図表 62: アジア新興国の貿易総額に占める中国の比率
各国の貿易に占め る中国の比率 (2014 年 )
香港ドル
52.2%
韓国ウォン
34.3%
フィリピンペソ
25.2%
タイバーツ
22.3%
マレーシアリンギ
22.2%
台湾ドル
22.1%
インドネシアルピア
18.6%
インドルピー
16.4%
シンガポールドル
16.4%
出所: 各国統計、野村
-20
-10
0
10
20
30
40
50
注:一次産品(食品を除く)は UNCTAD の定義に基づき抽出。貿易
データは国際連合、名目 GDP は IMF の World Economic Outlook。
出所: UNCTAD、国際連合、ブルームバーグ、野村
46
Nomura | 国際金融為替マンスリー
2016 年 1 月 21 日
図表 63: 外貨準備と RBI による為替介入額の推移
(10億ドル)
370
RBIによるドル買い越し額(右軸)
外貨準備高(左軸)
図表 64: 賃金委員会の勧告と消費者物価の上昇率
(10億ドル)
15
360
12
350
9
340
6
330
3
320
0
310
-3
300
-6
290
-9
280
-12
270
-15
'12
'13
'14
'15
出所: インド準備銀行、ブルームバーグ、野村
(前年同期比%)
30.0
CPI:住宅
第5次
賃金委員会
CPI上昇率
第6次
賃金委員会
第7次
賃金委員会
25.0
20.0
15.0
10.0
5.0
(年)
0.0
1996
2000
2004
2008
2012
2016
出所: インド準備銀行、インド中央統計局、CEIC、野村
図表 65: 2016 年のインドで注目される構造改革 (括弧内は野村インディアが予測する達成確率)
・物品・サービス税(GST) (16 年中の導入確率: 65%): 財・サービス税(GST)の導入は、現在はバラバラに運用さ
れている多数の間接税を一本化し、税制を簡素化することを意味する。GST 導入のためには連邦議会で憲法修正
法案が可決され(3 分の 2 の賛成が必要)、州議会の半数がこれを批准し、歳入中立な税率が設定される必要がある
(この税率は 18%未満と予想される)。
・インド準備銀行(RBI)法の改正(確率 70%): RBI は現状、総裁が単独で金融政策の意思決定を行う枠組みとなって
いるが、金融政策委員会(MPC)を設立し、投票制での決定を行う枠組みへの移行が模索されている。16 年後半
の発足の可能性がある。
・国有資産売却(確率 85%): 政府は、赤字を計上している政府系企業の持ち分売却を急ぐとみられる。利益を出し
ている政府系企業に対する民営化案件を選別する手順を明確化することも鍵となろう。
・破産法(確率 60%): 法案には、破産を監督し破産宣告権限を持つ機関の設立や、財務上の問題の早期把握、破産
データベースと速やかな処理(180 日以内)システムの整備、破産処理解決のための手順(債権者の 75%以上が清算
計画を支持する必要)の確立などを盛り込んでいる。法案の成立は、債権者が迅速に債権を回収し、投資家と危機
に陥った企業の撤退がより容易になるように支援する。
・インフラ投資の推進(確率 60%): 独立的な鉄道監督機関の設立が予想され、鉄道駅の再開発が主な重点になろ
う。道路については、プロジェクトの設計・調達・建設を一括して請け負う EPC 方式と、完成後も一定期間、投
資企業が運営を請け負って投下資本を回収し、その後相手国に引き渡す BOT 方式の折衷モデル(Hybrid annuity
model)の採用により、進捗ペースを現在の 1 日 18 キロメートルから 30 キロメートルに加速することが重点とな
ろう。都市開発では、20 のスマートシティ建設のための基礎工事(未整地の区画または再開発)が開始されよう。ま
た、インド亜大陸東西両岸の港湾施設を開発する Sagar Mala プロジェクトや内陸水上交通インフラプロジェクト
も 16 年は更なる進捗が見込まれる。野村では、国家インフラ投資ファンド(2,000 億ルピー)が 16 年に財務上の問
題に直面したプロジェクトを買い取ると予想している。
・銀行改革 (確率 80%): 少額預金金利の自由化、IDBI 銀行の民営化、社債市場でのレポ(貸借)取引が実現する可能
性がある。
・労働市場改革 (確率 70%): 児童労働法の改正 (これまで 18 業種を除き認められていた 14 歳未満の児童労働を(一
部の家庭内労働を除き)禁止する)、工場法(従業員 40 人未満の工場について 14 の労働法の対象外とし、閉鎖しや
すくする)、退職積立金の規模を増大する。
出所: 野村インディア
47
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2016 年 1 月 21 日
4-5 インドネシアルピア:満を持して利下げを実施
インドネシアルピアは昨年 8 月の中国人民元の基準値の引き下げ後には、9
月下旬までに対ドル 13,600 から 14,828 まで 8%超下落、アジア通貨の中でも
インドネシアルピアは年明け後、
対ドルで下落しているものの堅調
さは維持
最も下落の大きい通貨の一つとなった。しかし、今年 1 月以降、人民元基準値
が再び大幅に引き下げられたが、ルピアの対ドルの下落率は約 4%に留まり、
他のアジア通貨と比較して堅調な展開となっている。
年初からのルピアの安定した推移の背景は、インフレ率の大幅な低下などマ
マクロ環境・政治情勢が改善
クロ環境に改善が見られることが最大の要因であろう(図表 66)。また、遅れ
が目立っていたインフラ投資が復調、ジョコウィドド政権が議会でのねじれを
解消し、経済改革が進むとの期待が再び高まっていることも追い風である。
インドネシア銀行(BI)は 1 月 14 日、インフレ率低下や為替市場安定を理
由として、政策金利を 0.25%引き下げ 7.25%とした。声明文では「国内外の経
インドネシア銀行は政策金利を
0.25%引き下げ 7.25%に
済情勢を慎重に見極めたうえで、さらなる緩和を実施する」と明確に追加利下
げを示唆している。景気判断もハト派的な色彩が強く、野村では 3 月までに
25bps の追加利下げを予想する。利下げは内外金利差の縮小に繋がるものの、
景気持ち直しへの期待を背景に海外からの資金流入の回復が見込まれる点を考
慮すれば、ルピアの他アジア通貨と比較した堅調さは維持される公算が大きい。
金融政策で大きな転換点を迎えたインドネシアだが、同日、世界的な注目を
集めたのは首都ジャカルタで発生したテロ事件である。同国は世界最大となる
2 億人超のイスラム教信者を抱える。イスラム過激派「イスラム国(IS)」に
ジャカルタのテロ事件のルピア
や株式市場への影響は限定的に
留まる見込み
同調し、シリアに渡航、軍事訓練を受けた潜在的なテロ予備軍が数百人単位で
いるとの報道もあり、こうしたテロが繰り返されるリスクはあろう。ただし、
ルピアや株式市場への影響は軽微に留まる公算が大きい。同国の外貨獲得手段
は商品輸出がメインであり、旅行収入のウェートは対 GDP 比 1.2%(2014 年
実績)に過ぎない(図表 67)。
インドネシアの経常収支と財政収支の「双子の赤字」や、対外債務の大きさ
を考慮すれば、ルピアの長期的な対ドルでの減価傾向は続く公算が大きい。し
かし、成長期待の回復は株式市場への資金流入を促し、ルピア安圧力を緩和す
ると見られる。ジャカルタのテロの影響は限定的に留まろう。(中島
図表 66: インフレ率の推移
(前年同月比%)
20
ルピアの対ドルでの減価傾向は
続くも、景気回復に伴う資金流
入回復がルピア安圧力を緩和
將行)
図表 67: 旅行収入と経常収支の比較
管理価格(ガソリン、公共運賃、電気料金など)
変動の大きい項目(食料品など)
CPI(ヘッドライン)
18
(対GDP比%)
2
1
16
0
14
-1
12
10
-2
8
-3
6
旅行収入
4
-4
2
経常収支
-5
0
1
4
7 10 1
'12
4
7 10 1
'13
4
7 10 1
4
'14
出所: インドネシア中央統計局、ブルームバーグ、野村
7
'15
12
ⅰⅱⅲⅳⅰⅱⅲⅳⅰⅱⅲⅳⅰⅱⅲⅳⅰⅱⅲⅳⅰⅱⅲ
'10
'11
'12
'13
'14
'15
出所: インドネシア中央統計局、ブルームバーグ、野村
48
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2016 年 1 月 21 日
5. 日本経済・金利:相場急変下の日本経済
の論点
2016 年の金融市場は、年明けから波乱の幕開けとなった。アジア市場から
始まったリスク回避の動きは、目を見張るものがあった。年明け後の波乱は、
主に中国人民元の切り下げが発端ではあったが、大きな背景として昨年末の米
国金利引き上げ開始があることは論をまたない。注目を集めた中国の 12 月分
鉱工業生産、10-12 月期 GDP は市場予想をやや下回る程度となっており、現在
のところ、年初来の世界的なリスク回避傾向を正当化するほどに世界景気が急
減速しているとの証拠は得られない。ただ、今後中国の景気指標等が不安定な
動きを示せば、リスク回避の動きが喚起される可能性も否定できない。
為替レート、原油価格、株価変動の景気に対するインパクト
昨年 12 月時点の野村の経済見通しでは、2016 年末の為替レートを 1 ドル=
130 円と想定していた。内閣府の経済モデルによれば、ドル円レートの 10%下
落(ドル安円高)は、日本の GDP をベースケースと比較して 1 年目に 0.1%、
2 年目に 0.4%程度減少させる(図表 68)。仮に為替レートが 1 ドル=120 円
で推移することになった場合、2016 年の日本の GDP 成長率もやはり 0.1%程
度押し下げられることになろう。
図表 68: ドル円レート 10%下落(ドル安円高)が実質 GDP に与える影響
実質GDP
個人消費
設備投資
住宅投資
輸出
輸入
(%)
(%)
(%)
(%)
(%)
(%)
1年目
-0.08
0.03
-0.03
-0.13
-0.43
0.22
2年目
-0.44
-0.09
-0.41
-0.43
-2.24
0.26
3年目
-0.41
-0.16
-0.50
-0.63
-2.31
-0.05
出所:内閣府短期日本経済マクロ計量モデル 2015 年版より野村作成
株価の下落そのものが景気に与える影響も気になるところだ。我々の試算で
は、10%の株価下落は個人消費を 0.12%押し下げる(野村 Global Research 13
年 3 月 1 日付、アベノミクス・ハンドブック)。昨年後半以降、株価が 2 割下
落したとすると、個人消費に対する押し下げ効果は 0.2%、GDP に対する影響
は 0.1%ほどとなろう。
図表 69: 原油価格の 20%下落が実質 GDP に与える影響
実質GDP
個人消費
設備投資
住宅投資
輸出
輸入
(%)
(%)
(%)
(%)
(%)
(%)
1年目
0.12
0.17
0.09
0.11
0.01
0.18
2年目
0.16
0.25
0.12
0.39
0.07
0.81
3年目
0.23
0.32
0.04
0.57
0.07
0.95
注:標準ケースの原油価格を、1 年目 80.14 ドル/バレル、2 年目 109.57 ドル/バレル、3 年目
114.09 ドル/バレルとし、原油価格が標準ケースに比べ 20%下落したときの影響を掲載した。
出所:内閣府短期日本経済マクロ計量モデル 2015 年版より野村作成
一方で、原油価格について我々は、2016 年末に向けて 1 バレル=60 ドル近
くまで上昇すると想定していた。内閣府のモデルによれば、20%の原油価格下
落は日本の GDP を 0.1%押し上げる効果を持つ(図表 69)。仮に原油価格が
1 バレル=30 ドルで推移するとした場合、年末の原油価格が想定を 50%程度
下回ることになる。ここまで価格が異なる場合、弾性値を用いた影響試算は過
49
Nomura | 国際金融為替マンスリー
2016 年 1 月 21 日
大評価になる可能性があるものの、それでも日本の GDP 成長率は 0.1∼0.2%
押し上げられることになるのではないか。
以上のような試算によれば、円高と株価の下落は日本の GDP 見通しに対し
てマイナス、原油価格の下落はプラスであり、差し引きでどちらが大きくなる
かは難しい判断である。確かに、14 年末以降の原油価格下落が日本の景気を大
きく押し上げたわけではなく、プラス効果が本当に出るかには疑問の余地が残
ろう。一方で、円高による景気への悪影響は、主に輸出の減少を通じたもので
あるが、為替レートが変動しても現地販売価格を変えない最近の製造業の価格
設定行動を考えると、モデル計算ほどに悪影響が大きくなるかはわからない。
また、14 年後半以降の株価上昇による個人消費押し上げ効果が明確には見られ
なかったことを考量すると、逆に株価下落で個人消費が悪化するかは疑わしい。
むしろ消費者態度指数は、15 年 12 月にかけて改善傾向を見せている。
中国や米国の景気そのものが失速する場合には、日本の成長率に対する影響
も大きくなると見込まれる。ただし、中国や米国の景気そのものが失速しても、
為替レート、株価、原油価格の変動の影響を考えるのであれば、プラスとマイ
ナスの効果が打ち消しあう結果、GDP 成長率への影響は大きくないと判断でき
る。
金融政策に対する影響
日本銀行が追加金融緩和に踏み切るという期待も高まっている。日本銀行が
重視しているのは「物価の基調」であり、それは「需給ギャップ」と「予想物
価上昇率」であると、再三強調されている。
まずは「予想物価上昇率」についてであるが、円高と原油安は、双方ともに
先行きのインフレ見通しを低めるものである。ドル円 1 ドル=120 円、原油価
格 1 バレル当たり 40 ドルで一定との仮定の下では、16 年後半からインフレ率
は徐々に持ち直す形となるが(図表 70)、1 ドル=110 円の場合には、原油価
格が 40 ドルに上昇したとしても、17 年 1-3 月期までコアインフレ率のマイナ
スが続くという結果になった(図表 71)。
各種アンケート調査でも、やや弱めの動きが目立つ。内閣府の消費動向調査
によれば、家計の 1 年後の予想インフレ率はこのところ明確に低下してきてい
る。日本銀行が企業に対して行っているアンケート調査でも、予想インフレ率
はじりじりと低下してきている。言葉通りに捉えれば、「予想物価上昇率」に
は弱めの動きが目立つ。
日本銀行は、原油価格の下落によるインフレ下押しの影響は「物価の基調」
の変化を示唆するものではないとの論陣を張っている。確かに、消費者物価か
ら食料(酒類除く)とエネルギーを除いたコアコアインフレ率や、生鮮食品と
エネルギーを除く新たなインフレ指標は、順調に上昇している。それでも、マ
イナスのコアインフレ率が長期間続く展開をどの程度放置できるかについては
疑問の余地も残ろう。
50
Nomura | 国際金融為替マンスリー
2016 年 1 月 21 日
図表 70: 1 ドル=120 円の場合のコア CPI インフレ率
図表 71: 1 ドル=110 円の場合のコア CPI インフレ率
(前年比, %)
1.5
(前年比, %)
1.5
1.0
1.0
シミュレーション
シミュレーション
0.5
0.5
0.0
0.0
原油価格40ドル
原油価格40ドル
原油価格30ドル
-0.5
原油価格30ドル
-0.5
原油価格20ドル
原油価格20ドル
(年/四半期)
-1.0
Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1
2013
2014
2015
2016
2017
(年/四半期)
-1.0
Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1
2013
2014
2015
2016
2017
出所: 1. 消費増税の影響を除くベース。2. 原油価格(北海ブレン
ト)は、16 年 1 月以降それぞれの水準(1 バレル当たり)で横ば
い。3. ドル円は 16 年 1 月以降 1 ドル=120 円で横ばい。4. 本シ
ミュレーションでは簡単の為、原油価格の下落による実質賃金の
改善等を通じた需要の押し上げが、需給ギャップの改善を通じて、
物価全体を押し上げる効果は考慮していない点に注意。
出所: 1. 消費増税の影響を除くベース。2. 原油価格(北海ブレン
ト)は、16 年 1 月以降それぞれの水準(1 バレル当たり)で横ば
い。3. ドル円は 16 年 1 月以降 1 ドル=110 円で横ばい。4. 本シ
ミュレーションでは簡単の為、原油価格の下落による実質賃金の
改善等を通じた需要の押し上げが、需給ギャップの改善を通じて、
物価全体を押し上げる効果は考慮していない点に注意。
出所: 総務省、野村
出所: 総務省、 野村
「需給ギャップ」については、既に述べたように、為替レート、株価、原油
価格の変動の影響のみであれば、先行きの景気に対する見方を大きく修正する
必要はない。代表的な景気指標である鉱工業生産を見ても、直近の製造工業生
産予測調査の結果をそのまま用いれば、15 年 10-12 月期に前期比+1.3%となっ
た後、1 月は 10-12 月平均比+6.3%と大きく増加する計算となる(野村 Global
Research 15 年 12 月 28 日付、日本:2015 年 11 月鉱工業生産指数)。実際の
鉱工業生産は予測調査を下回る傾向が強いものの、16 年年初に向けて日本の景
気に不安がある状況ではない。
ただし、為替レートの「変動」ではなく「水準」については問題となりうる。
アベノミクスの下で、日本の実体景気に最も直接的なインパクトを持った政策
が金融政策であり、大幅な円安であろう。円安により企業収益が押し上げられ
ただけではなく、日本国内でモノを生産することが採算に合うようになり、製
造業の国内設備投資の伸びは海外での設備投資の伸びを上回るようになった
(図表 72)。我々の簡単な試算では、製造業全体でみた場合、国内生産と国外
生産の利益率が同じになる為替レートの水準は 1 ドル=103 円であるが、業種
によってばらつきがあり、1 ドル=120 円を大きく割ると国内生産のメリット
が薄れ始め、需給ギャップ改善の見通しにも不安が生じるのではないだろうか
(図表 73)。
51
Nomura | 国際金融為替マンスリー
2016 年 1 月 21 日
図表 72: 製造業の国内投資と海外投資
図表 73: 内外拠点の利益率が等しくなる為替レートの
試算
(前年比%)
80
製造業の国内設備投資
円実効レート
参考:ドル円レート
2010年=100
円
電気機械
96.3
94.0
一般機械
96.8
91.2
輸送機械
92.8
97.0
製造業
88.5
102.6
非鉄金属
87.8
104.8
鉄鋼
84.1
109.1
化学
81.6
111.4
木材紙パ
80.5
119.3
食料品
72.1
126.2
製造業の海外現地法人設備投資
60
40
20
0
-20
-40
注: 国内設備投資は円ベース、海外現地法人設備投資はドルベ
ース。
注: 内外拠点の利益率格差を為替レートで回帰し、利益率格差が
ゼロとなるような為替レートを計算した。円実効レートで回帰した
場合と、ドル円レートで回帰した場合の双方を示した。円実効レー
トは、値が大きいほど円高を意味する。
出所: 財務省、経済産業省より野村作成
出所: 経済産業省、財務省、日本銀行より野村作成
(年)
-60
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
結局、円高が過度に進行した場合、コアインフレ率がマイナスとなる期間が
長引くことに加え、アベノミクスの大きな成果である製造業による国内生産拡
充の前提が覆されることにもなりかねない。日銀としてどこまでが許容範囲と
判断されるかは不明であるが、1 ドル=115 円を大きく割って 110 円へ近づく
ような場合には、1 月末の金融政策決定会合における追加金融緩和の可能性が
高まると言えよう。
仮に追加金融緩和があるとした場合、日本銀行にはどのような選択肢がある
だろうか。とりうるオプションを予断なく列挙するとすれば、(1) 長期国債買
い増し、(2) 株式 ETF 買い増し、(3) J-REIT 買い増し、(4) 地方債購入、(5) 社
債購入、(6) 超過準備に対する付利の引き下げ、などが考え得る。
超過準備に対する付利の引き下げについては、現行の量的・質的金融緩和政
策の継続を困難にする側面があること、したがって昨年末に導入された現行政
策の継続性を高めるための「補完措置」と矛盾すること、加えて黒田総裁自身
が明確に否定していることなどから、現時点では最も可能性が低いと考えられ
る。
長期国債の買入余地が狭まっている可能性がある以上、その他の資産買入措
置については、何が入ってもおかしくはない。市場規模が大きく、日銀保有割
合が現時点で比較的低いのは株式 ETF であり(株式市場全体を市場規模とみな
した場合)、市場の価格形成を歪めないという観点からは最も蓋然性が高い。
ただし、過度な円高への対応なのだとすれば、株式 ETF だけというよりも、
様々な資産を購入することでマネタリーベースの増額目標を積み増す方が筋は
通っているだろう。仮に追加緩和があるとすれば、株式 ETF を中心に他の資産
の増額/購入開始が検討されるのではないだろうか。
(経済調査部・日本経済調査グループ)
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2016 年 1 月 21 日
図表 74: 主要な金融資産の残高と日銀保有分:15 年 9 月末
残高
日銀保有分
(兆円)
(兆円)
割合(%)
国債・財融債
898.5
268.3
29.9
株式
527.8
6.2
1.2
地方債
74.5
0.0
0.0
事業債
71.1
3.2
4.5
0.26
2.5
J-REIT
10.3
注: 日銀保有の株式は、株式 ETF の残高とした。
出所: 日本銀行、不動産証券化協会より野村作成
53
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2016 年 1 月 21 日
6. 米国経済・金利:景気後退入りの確率を
推定する
「長い年数を経ているからといって、景気拡大が終わるわけではない」(ジャネ
ット・イエレン連邦準備制度理事会(FRB)議長、2015 年 12 月 18 日の発言)
はじめに
米国が世界金融危機後の深刻な景気後退を脱したのは 2009 年 6 月だった。
足元の景気拡大は 78 ヶ月続いている。既に、史上 4 番目に長い景気拡大期と
なっており、3 月まで続けば史上 3 番目となる。
失業率が 5 年以上にわたり着実に低下した後、連邦公開市場委員会(FOMC)
は利上げを開始した。FOMC は失業率がさらに大幅 3 に低下することがないと
ころまで経済成長を減速させる意向である。言い換えると、 FOMC は「完全
雇用」もしくはこれに近い状態で、経済を「ソフトランディング」させようと
している。
このところ、世界経済見通しへの懸念があるなか、金融環境が急激に引き締
まっている。さらに、米国景気も 15 年末にかけて勢いが弱まり、15 年 10−12
月期実質 GDP 成長率に関する野村のモデル推計値は足元で前期比年率+1%を
割り込んでいる。そうした点を踏まえると、次の景気後退入りはいつかという
質問が出るのは当然のことである。本レポートではこれをテーマにする。
主な結論は以下の通り。

景気拡大の期間は、趨勢的には長期化しており、石油危機による「高イン
フレ」終息以降はとりわけそうした傾向がみられる。足元の景気拡大は、
1980 年代初頭以降の米国経済のパフォーマンスと比べ、特段変わったと
ころはない。

拡大期間が長くなっても、それ自体で景気後退入りの確率が上昇すること
はない。

通常の経済指標からは、景気後退入りの可能性が取り立てて高いようには
みえない。最近の金融環境のタイト化(引き締まり)は下振れリスクを強め
るものだが、現時点で、景気後退入りの可能性が高まるほどはそうしたリ
スクは集積していないようだ。イールドカーブ(利回り曲線)の形状も景気
後退入りは示唆していない。

米国経済の現状について特筆すべき点の 1 つは、経済の鉱工業部門とサー
ビス部門のパフォーマンスのかい離である。しかし、全米供給管理協会
(ISM)製造業調査などの鉱工業に関する尺度は、景気後退の先行指標とし
ての信頼性が低い。

ただし、米国経済における次の 2 つの構造的変化は景気後退の確率を高め
ている。

潜在成長率の低下:経済が、従来の想定よりも景気後退に近い水
準で推移していることを意味する。

実質均衡金利の長期的な低下:景気下振れショックを総裁する金
融政策の能力を抑制する。

低い潜在成長率と実質均衡金利の長期的な低下は景気後退入りの確率を高
めるものの、経済には、景気の底堅い動きを支える要因があることもまた
54
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2016 年 1 月 21 日
重要である。消費の基調は依然として堅調である。住宅に対する潜在需要
の大幅な積み上がりは、しばらくの間、トレンドを上回る住宅建設の伸び
を支えよう。銀行セクターは十分な資本を備え、近年の貸出の伸びは相対
的に緩やかである。前回景気後退時のように金融システムが下向きのショ
ックを増幅することは考えにくい。
循環的要因の動向
マクロ経済の変動をもたらすのは、経済に打撃をもたらすショックと、その
ショックを緩衝または増幅するメカニズムである。景気後退は、経済を通じて
増幅された強いショックに反応する形で生じる。背景には、何らかの形でショ
ックが増幅される場合、通常のショック緩衝メカニズムが十分働かない場合の
両方があろう。
重要な点として、経済は安定の度合いを増している。景気拡大期間は長期化
し、とりわけボルカー元 FRB 議長がマネーサプライ管理を通じた高金利によ
りインフレ抑制に取り組んで以降のディスインフレの期間はその傾向が顕著で
ある。1982 年以降の景気拡大期は 4 度あるが、そのうち 2 度は歴史上最も長
期にわたる拡大期間だった(1991∼2001 年までの拡大期は最長で 120 ヶ月持続
した)。
最も重要な変化は、在庫が以前ほど景気循環を増幅する要因ではなくなった
ことである。1984 年以前、民間在庫は景気後退期の実質 GDP 成長率に対して
大幅なマイナス寄与をもたらしていた。しかし、1985 年以降、景気後退にお
ける在庫循環の役割は小さくなり、成長率に対する民間在庫のマイナス寄与は
平均してほぼ半分となった(図表 75)。
これは、様々な形で経済の構造変化を反映している。第 1 に、在庫管理手法
や物流の発展により、企業はより少ない在庫で活動できるようになった。さら
に、情報テクノロジーの進歩によって、企業が需要の変化をより迅速に把握し、
以前よりも容易に需要のペースにあった生産を行えるようになっている可能性
がある。第 2 に、サービス部門の相対的な重要性が高まっている。サービス部
門は鉱工業部門に比べ景気による振れ幅が小さく、経済全体が工業製品の需要
の変動による影響を受けにくくなっている(図表 75)。第 3 に、物価の安定も
プラスに働いている。1980 年代初頭以降、インフレ率の一時的な変動を引き
起こすショック要因に対して、(即、金融引き締めを行うのではなく)FOMC が
落ち着いて対応することが可能になっている。
言うまでもなく、先の世界金融危機は、マクロ経済のボラティリティ(変動
性)が恒久的に抑制されたわけではなく、恐らくそれが不可能であることを思い
起こさせた。景気後退入りの確率を推定する際は常に、金融セクターが混乱の
原因となるリスクを勘案する必要がある。ただし、足元の景気拡大期間が始ま
って以降、純粋なマクロ経済のボラティリティはかなり低水準にとどまってい
るという意味では、金融セクターに起因するリスクがない限り、景気の「大い
なる安定(Great Moderation)」が続きそうである。当然ながら、経済には引き
続きショック(急激な変化)が生じるだろう。ただし野村では、マクロ経済の低
ボラティリティ状態という全般的なパターンは変わらないと予想している。
55
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2016 年 1 月 21 日
図表 75: 景気後退期における実質 GDP への項目別寄与度
実質GDP成長率への寄与度(%ポイント)
2.0
政府支出
1.0
純輸出
0.0
個人消費支出
-1.0
非住宅固定投資
-2.0
住宅投資
-3.0
民間在庫投資増減
-4.0
1984年以前
1985年以降
1985年以降
(金融危機後の景
気後退期を除く)
実質GDP成長率(%)
出所: 米商務省、野村
イールドカーブと金融環境、景気後退の関係
かつて、イールドカーブ(利回り曲線)の長短金利の逆転は、景気後退の可能
性の高まりと関連付けられていた。高水準の短期金利と比較的低水準の長期金
利は、一般に、将来に対する投資家の期待に比べて金融政策が引き締め状態に
あり、投資家が将来の成長減速ないしは金利低下を予想していることを示す兆
候と考えられていた。
FRB スタッフエコノミストであった Wright は、2006∼07 年の論文で、イー
ルドカーブの傾き(長短金利差)とフェデラルファンド(FF)金利を取り入れたシ
ンプルなモデルを用いて、過去の景気後退入りをかなり正確に予測できること
を示した。FF 金利をモデルに含めることは重要である。なぜなら、FF 金利は
金融政策スタンスの尺度であり、イールドカーブの傾きの理由とその意味合い
を説明している部分もあるからである。具体的には、FF 金利が低水準で、タ
ームプレミアム(保有期間が長くなるにつれて増える不確実性を相殺するプレミ
アム)も低水準にあれば、将来の成長を刺激する要因となろう。これに対し、過
去の景気後退の前には、FF 金利が高水準にあり、長短金利差が逆転していた。
しかし、長短金利差と FF 金利のみを取り入れた単純なモデルには問題点も
少なくない。第 1 に、長期的には(物価やし失業率に影響しない)中立の金利水
準が変化するため、FF 金利の水準自体は政策スタンスを判断する尺度として
十分ではない。実質 FF 金利と中立金利の差の方が、金融政策スタンスを把握
する尺度として(名目)FF 金利よりも優れている。我々はこれを野村の景気後退
入り確率の推定モデルのいくつかで使う。
直近の危機時にみられたように、金融環境の他の要素も経済見通しに影響す
る。その結果、実質 FF 金利と中立金利の差に加えて、野村が構築した金融環
境指数も、景気後退入り確率の推定に用いる。ただし、金融環境は元々変動し
やすいため、経済環境について誤ったシグナルを示すこともある。
図表 76 は、様々なモデルの推定結果をまとめたものである。実質 FF 金利と
中立金利の差は、その後 4 半期以内にある時点で生じる景気後退の確率の変動
を、FF 金利単独の場合以上に説明しており、足元の金融政策スタンスの目安
とする上で、前者の方が優れているとの野村の見方を裏付けている。また、金
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2016 年 1 月 21 日
融環境指数をモデルに含めても予想精度は改善する。6 つのモデルの予想結果
からは、向こう 4 四半期の景気後退入りの確率が 2.6∼14.7%の範囲にあるこ
とがうかがえる。言うまでもなく、このところ金融環境はひっ迫しており、野
村の金融環境指数を含むモデルが示す 4 四半期以内のある時点での景気後退入
りの確率が最も高い。金融環境のひっ迫が進む場合、景気後退入りの確率は急
上昇しうる。
総合すると、これらの単純なモデルは、向こう 1 年間の景気後退入りの確率
は低いことを示唆している。当然ながら、金融危機後の深刻な景気後退以降、
経済・金融環境は大きく変化しており、とりわけ中立金利は大幅に低下した。
我々はこの点に留意し、足元の経済は異例の状況にあることに鑑み、モデルで
金融政策スタンスを把握することを試みたが、そうした予想の信頼度は過去に
比べ低下している可能性がある。これは特に、悪化要因となるショックを吸収
する金融政策の効果が足元では限られることが理由である。さらに、中立金利
の推定に関連する不確実要素がかなり多いため、推定結果の扱いには細心の注
意を必要としよう。
図表 76: 向こう 4 四半期に景気後退入りする確率(プロビット回帰)
モデ ル 独立変数
想定確率 (%)
係数
z 値 決定係数
0.43
4.06
0.16
4.32
0.37
3.29
0.37
4.89
0.45
3.72
0.10
2.64
0.27
1.95
実質FF金利と実質均衡短期金利の差
0.33
3.34
長短金利差
0.73
4.34
0.16
3.23
-0.79
-4.64
0.47
2.46
0.66
3.72
-1.01
-4.48
全期間
長短金利差
1
2.55
FF金利
長短金利差
2
0.30
8.07
実質FF金利と実質均衡短期金利の差
0.34
1976 − 2015 年
長短金利差
1
6.38
FF金利
長短金利差
2
0.26
8.08
1 + FCI FF金利
10.32
金融環境指数(FCI)
長短金利差
2 + FCI 実質FF金利と実質均衡短期金利の差
14.74
金融環境指数(FCI)
0.30
0.50
0.56
注: 長短金利差は 3 ヶ月物財務省証券と 10 年物米国債の利回り差。
出所: 米連邦準備制度理事会(FRB)、ブルームバーグ、野村
その他の尺度
鉱工業部門の活動に関する尺度は、経済の他部門に比べて低迷を続けている。
鉱工業関連のデータは、いくつかの理由から、経済状況を判断する上で有用と
考えられる。第 1 に、鉱工業の指標は、サービス部門よりも即時性が高い。多
くの点で、財の生産はサービス生産よりも測定しやすい。第 2 に、財の生産は
サービスの生産よりも振れ幅が大きい。工業製品の需要にやや弾性があり、財
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2016 年 1 月 21 日
の生産者は販売の増減に応じて生産と在庫を微調整することが可能である。な
お、全米産業審議会(コンファレンスボード)が発表する米国景気先行指数は 10
項目から構成されており、うち 4 項目(製造業の週平均労働時間、製造業の消費
財及び材料の新規受注、ISM 製造業景気指数の新規受注指数、製造業の非国防
資本財(製造業新規受注の航空機を除く)受注である。
ただし、鉱工業の活動は相対的に振れ幅が大きいため、経済全体の状況につ
いて誤ったシグナルを発することもあり得る。鉱工業のデータを用いて景気後
退入りの確率を推定する際、マルコフ・スイッチングモデルが有用なツールと
なる。マルコフ・スイッチングモデルは個別のデータの転換点を推定する計量
経済学の手法の 1 つで、モデルは各データが「ブーム」にあるのか「景気後退」
に該当するのかを判定し、経済が間もなく「景気後退」の状態に入る確率を推
定する。個別データについて推定された転換点を実際の景気後退入りのタイミ
ングと比較することで、それぞれのデータが経済全体のトレンドを判断する上
でどれだけ有用かを把握できる。
ボルカー元 FRB 議長時代のディスインフレ期以降、マクロ経済のボラティ
リティが全般的に低下している点を踏まえ、分析期間全体を 1950∼1984 年と
1985∼2015 年の 2 つに分ける。推定の結果、ISM 製造業景気指数は、1984 年
までの景気後退入りを概ね的確に予想した。ただし誤ったシグナルを発したこ
とも何度かある(図表 77)。他方、1985 年以降、「景気後退入り」に関して
ISM 製造業景気指数が発したシグナルの半分は誤りだった(図表 78)。現在、
このシンプルなモデルで ISM 製造業景気指数は「景気後退」域に入りつつある。
ただし、必ずしも経済全体が景気後退入りしつつあることを意味するわけでは
ない。
その他の重要な指標で、景気後退入りしつつあることを示唆するものはない。
たとえば、鉱工業生産指数に基づくと、経済が景気後退入りする可能性は低い
(図表 80)。さらに、新規失業保険申請件数や建築許可件数など、しばしばよ
り幅広い経済の先行指標として用いられる、鉱工業以外の部門に関する他の主
な指標についても検証したところ、景気後退リスクの高まりを示唆するものは
現時点では見当たらない(図表 81∼84)。
図表 77: ISM 製造業指数に基づく景気後退入り確率
(1950∼84 年)
(確率、1=100%)
図表 78: ISM 製造業指数に基づく景気後退入り確率
(1985∼2015 年)
(確率、1=100%)
1.0
1.0
0.9
0.9
0.8
0.8
0.7
景気後退期
調整後確率
0.5
0.4
0.4
0.3
0.3
0.2
0.2
0.1
0.1
0.0
50年1月 57年1月 64年1月 71年1月 78年1月
0.0
85年1月 90年3月 95年5月 00年7月 05年9月 10年11月
出所: 全米供給管理協会(ISM)、野村
調整後確率
0.7
0.6
0.6
0.5
景気後退期
出所: 全米供給管理協会(ISM)、野村
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2016 年 1 月 21 日
図表 79: 鉱工業生産に基づく景気後退入り確率(1950∼
84 年)
(確率、1=100%)
図表 80: 鉱工業生産に基づく景気後退入り確率(1985∼
2015 年)
(確率、1=100%)
1.0
1.0
0.9
0.9
0.8
0.8
0.7
0.6
0.5
0.7
景気後退期
調整後確率
0.6
0.5
0.4
0.4
0.3
0.3
0.2
0.2
0.1
0.1
0.0
50年1月 57年1月 64年1月 71年1月 78年1月
0.0
85年1月 90年3月 95年5月 00年7月 05年9月 10年11月
景気後退期
調整後確率
注: 指数の水準の代わりに 3 ヶ月前と比較した変化率を用いた。
出所: 米連邦準備制度理事会(FRB)、野村
注: 指数の水準の代わりに 3 ヶ月前と比較した変化率を用いた。
出所: 米連邦準備制度理事会(FRB)、野村
図表 81: 新規失業保険申請件数に基づく景気後退入り
確率(1967∼84 年)
図表 82: 新規失業保険申請件数に基づく景気後退入り
確率(1985∼2015 年)
(確率、1=100%)
(確率、1=100%)
1.0
1.0
0.9
0.9
0.8
0.8
0.7
0.7
0.6
0.5
景気後退期
調整後確率
0.6
0.4
0.4
0.3
0.3
0.2
0.2
0.1
0.1
0.0
67年5月 70年12月 74年7月 78年2月 81年9月
0.0
85年1月 90年3月 95年5月 00年7月 05年9月 10年11月
注: 申請件数の水準の代わりに 3 ヶ月前と比較した変化率を用いた。
出所: 米労働省、野村
景気後退期
0.5
調整後確率
注: 申請件数の水準の代わりに 3 ヶ月前と比較した変化率を用いた。
出所: 米労働省、野村
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2016 年 1 月 21 日
図表 83: 建築許可件数に基づく景気後退入り確率(1959
∼84 年)
(確率、1=100%)
図表 84: 建築許可件数に基づく景気後退入り確率(1985
∼2015 年)
(確率、1=100%)
1.0
1.0
0.9
0.9
0.8
0.8
0.7
0.7
0.6
0.6
0.5
0.5
0.4
0.4
0.3
景気後退期
0.3
0.2
調整後確率
0.2
0.1
0.1
0.0
59年4月 64年6月 69年8月 74年10月79年12月
0.0
85年1月 90年3月 95年5月 00年7月 05年9月 10年11月
景気後退期
調整後確率
注: 許可件数の水準の代わりに 3 ヶ月前と比較した変化率を用いた。
指数の振幅が大きいため、3 ヶ月前との変化率を計算する前にトレン
ドを除去した。
注: 許可件数の水準の代わりに 3 ヶ月前と比較した変化率を用いた。
指数の振幅が大きいため、3 ヶ月前との変化率を計算する前にトレン
ドを除去した。
出所: 米商務省、野村
出所: 米商務省、野村
計量経済マクロモデルによるモンテカルロシミュレーション
上記に加えて、計量経済マクロモデルによるモンテカルロシミュレーション
(乱数を使うシミュレーション)で景気後退入りの確率を推定した。具体的には、
FRB スタッフが用いる FRB/US モデルで米国経済を確率論的にシミュレーショ
ンすることによって、向こう 5 年間のいずれかの時点で景気後退入りする確率
を推定した。
ここでは、経済の基本シナリオを 2 通り用意した。「高成長」シナリオでは、
潜在成長率は+3%、短期金利は 3.5%に収れんするとの前提を取る(つまり、均
衡実質金利(R*)は 1.5%に戻ることになる)。「低成長」シナリオでは、潜在成
長率は+1.5%、短気金利は 2%に収れんするとの前提を取る(つまり、均衡実質
金利は 0%にとどまる)。
それぞれの基本シナリオで 1 万回のシミュレーションを行う。このシミュレ
ーションでは、金融政策がテイラールール(物価上昇率や経済の余剰の程度に沿
って、中央銀行が政策金利を決定するとするモデル。同モデルには様々なタイ
プがあるが、ここでは、伝統的なモデルより、政策金利の調整が緩やかに行わ
れるタイプのモデル(inertial Taylor rule)を使用)に沿って推移すると想定する。
ここでは、テイラールールの切片が、野村の推計による均衡実質金利(R*)と想
定した。
図表 85 は、経済が景気後退(2 四半期連続の前期比マイナス成長)を経験する累
積確率を示している。「高成長」シナリオでは、向こう 1 年で景気後退入りす
る確率は 3.0%、向こう 5 年で 23.0%である。これに対し、「低成長」シナリ
オ では向こう 1 年の景気後退入り確率は 13.9%、向こう 5 年では 67.8%とな
る。
「低成長」シナリオ で、景気後退入り確率が「高成長」シナリオよりも高く
なるのは 2 つの理由による。第 1 に、成長率が低めに推移すれば、より小規模
なショックで経済がマイナス成長に陥る。さらに、金利が低めに推移すれば、
60
Nomura | 国際金融為替マンスリー
2016 年 1 月 21 日
金融政策は利下げ余地が少ないことに制約されよう。その結果、マイナスのシ
ョックを相殺する金融政策の効力が低下しよう。
さらに、通常のテイラールールが示す望ましい政策金利の推定値がマイナス
となる確率についても試算した。なお、この試算では、テイラールールの切片
は均衡実質金利(R*)の予想推移と想定した。マイナスの政策金利が必要という
ことは、マクロ経済環境が通常の政策では実現できない金融政策刺激を必要と
していることを意味する。なお我々が推定する 2 つの基準、景気後退になる確
率、政策金利がマイナスになる確率は、異なるものである。景気後退は純粋に
GDP の伸び率がもたらす結果だが、テイラールールは GDP ギャップとインフ
レ率(並びに均衡実質金利)に左右される。テイラールールが示す金利水準がマ
イナスにならなくても景気後退入りし得る。同様に、景気後退入りしなくとも
テイラールールが示す金利水準がマイナスになることもあり得る。
「高成長」基本シナリオに基づくと、テイラールールが示す金利水準が向こ
う 1 年でマイナスになる確率は 9.5%、向こう 5 年では 32.7%になる。「低成
長」基本シナリオでは、向こう 1 年が 19.0%、向こう 5 年が 51.3%だった。
留意すべき点が 1 つある。確率論的シミュレーションは、必ずしも海外発の
リスク(中国など)を十分に捉えていない可能性がある。こうしたバイアスはそ
れほど大きくないかもしれないが、中国経済の構造が変化していることを踏ま
えると、足元のリスクを、FRB/US モデルに対する過去のショックでは十分捉
えきれていない可能性がある。
図表 85: 少なくとも 1 度の景気後退に直面する累積確
率
(%)
70
(%)
70
低成長
高成長
60
60
50
図表 86: テイラールールが示す短期金利がマイナスに
なる累積確率
(%)
60
(%)
60
低成長
高成長
50
50
40
40
30
30
20
20
10
10
50
40
40
30
30
20
20
10
10
(年)
0
(年)
0
2016
2017
2018
出所: 米連邦準備制度理事会(FRB)、野村
2019
2020
0
0
2016
2017
2018
2019
2020
出所: 米連邦準備制度理事会(FRB)、野村
見通しとリスク
ファンダメンタルズ(基礎的条件)からみると、過去に比べると成長の余地は
小さくなっている。労働力人口の高齢化、企業設備投資が占める割合の低下、
生産性の伸び鈍化などの構造的要因がいずれも潜在成長力を押し下げている。
野村では、こうした要因を受けて潜在成長率が年+1.5%程度まで低下しており、
短期的には同+1.75%前後への小幅回復にとどまり、深刻な景気後退期以前の
同+2.5∼3.0%を大幅に下回ると分析している(詳細は 2015 年 12 月 11 日付
【米国スペシャルレポート】「2016 年の米国経済見通し」を参照)。
61
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2016 年 1 月 21 日
野村では、16 年の経済成長率は、個人消費に主導され、潜在成長率をやや上
回る前年比+2%前後になるとみている。消費者信頼感は、全般的に金融市場
の不安定化や対外要因にさほど影響されておらず、これが 15 年の個人消費の
堅調につながったとみられる。低インフレと雇用の力強い伸びが相まって、実
質所得の伸びが著しく加速している。加えて、ドル高や原油安など、企業活動
への逆風とみられる要因は消費者にとってはプラス材料になろう。こうした状
況にもかかわらず、消費者はやや慎重である。こうした良好な環境にある点を
踏まえると、個人貯蓄率は依然として高い。全体として、消費者は米経済への
ショックを乗り切る十分な備えがある状態とみられる。
住宅投資は、向こう数四半期の成長にとってもう一つの原動力となろう。労
働市場の回復、過去最低水準の住宅ローン金利、融資条件の緩和、住宅バブル
崩壊後先送りされていた潜在的(買い控え)需要、人口動態の変化による追い風
などを受け、16 年の住宅需要は高水準で推移しよう。加えて、住宅の供給不足
による需給バランスの崩れを考慮すると、住宅建設活動が拡大するとみられる。
最終的に、金融セクターがマクロ経済へのショックを増幅させるリスクは低
いようだ。銀行が保有する資本と流動資産は拡大している。同時に、信用の伸
びはかなり小幅である。図表 87 は、米国の「信用ギャップ」の推移を示して
いる。国際決済銀行(BIS)などの分析では、金融を除く民間部門向け信用の伸び
の加速は金融セクター全体に波及する危機を捉える最も有効な先行的指標と考
えられている(1)。深刻な景気後退後、米国の信用の伸びは低迷していた。この
数年で回復し始めているが、依然として極めて低水準である。
当然ながら、野村予想には下振れリスクがある。このところ金融環境がタイ
ト化するなか、短期金利がさらに上昇するとの見通しに対して市場の調整が進
み、金融環境が一段とタイト化する可能性がある。加えて、米国の利上げが開
始されたことを踏まえると、資産市場はマクロ経済へのショックに対してより
強く反応するかもしれない。しかし、米国の信用ギャップの動きをみると、金
融システムの中核にあるストレスがマイナスのショックを増幅させる可能性は
小さいことがうかがえる。
対外部門では、中国経済がハードランディング(大幅な景気減速)に陥る懸念
が高まっており、多くの新興国・地域で経済・金融全体に波及しうる金融危機
発生のリスクが高止まりしている。とりわけ、一部の国・地域では信用ギャッ
プが高水準にあり、こうした要因がショックとなる可能性を完全には排除でき
ない。
前述の通り、低成長及び低水準の実質均衡金利という環境のなか、マイナス
のショックが影響を及ぼす際、米経済が景気後退に陥るリスクが上昇している。
こうした状況では、経済・金融へのマイナスのショックはこれまで以上に悪材
料となり得るため、短期金利の追加引き上げを巡る FOMC の姿勢が過度に慎重
になるもう一つの要因になろう。
1) 信用ギャップは、金融以外の民間部門(家計部門及び金融機関以外の事業会社)向け信用の GDP
比のトレンドの差。信用ギャップがプラス(マイナス)であれば、実質 GDP 成長率よりも信用の伸
びの方が高い(低い)ことを意味する。BIS の推定によると、4∼6%が節目の水準となり、将来の金
融危機発生のリスクが高い。詳細については、2013 年 4 月 4 日付【米国スペシャルレポート】
「金融政策とシステミックリスク」を参照。
62
Nomura | 国際金融為替マンスリー
2016 年 1 月 21 日
図表 87: 信用ギャップ
(%)
12
(%)
12
10
10
8
8
6
6
4
4
2
2
0
0
-2
-2
-4
-4
-6
-6
-8
-8
-10
-12
1965
-10
(年)
1970
1975
1980
1984
1990
1995
2000
2004
2009
-12
2015
出所: 米連邦準備制度理事会(FRB)、野村
まとめ
15 年 12 月 FOMC 後の記者会見で FRB のイエレン議長は、既に年数を経て
いるため足元の景気拡大期は終わる可能性があるとの見方に強い抵抗感を示し
た。野村も同議長の姿勢に同意したい。現在、景気後退に陥る確率はとりわけ
高くないようだ。経済全体の尺度となる指標や足元の金融環境は、景気後退が
差し迫っていることを示唆していない。鉱工業部門は減速しており、「景気後
退」の可能性を示す警告シグナルはあるが、野村では、ここ最近の製造業部門
からのシグナルは米経済が景気後退に陥る信頼に足る予兆ではないとみている。
しかし、潜在成長率が低水準にあり、均衡実質金利が抑制されていることが
景気後退の確率を上昇させよう。低成長の下、小幅なマイナスのショックによ
って米経済が景気後退に陥る可能性がある。低金利状態にあるため、伝統的な
金融政策でそうしたショックを打ち消すことは難しい。また、新興国・地域で
経済・金融全体に波及する金融危機が発生するリスクが高まっている点も米経
済にとって悪材料になりかねない。ただし、米国の信用ギャップの動きから、
米国の金融システムが何らかのマイナスのショックをさらに増幅させる可能性
は低いことがうかがえる。
(Lewis Alexander、雨宮 愛知、Joseph Song、Roiana Reid)
63
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2016 年 1 月 21 日
7.欧州経済・金利: 2016 年も課題は変わら
ず
物価見通しを取り巻くリスクは依然として下向き方向であり、野村では、欧州
中央銀行(ECB)が 16 年前半に追加措置を講じると引き続き予想している。
景気動向:2015 年 12 月時点における野村のユーロ圏景気循環分析によれば、
ユーロ圏の景気は、引き続き拡大局面にあることが示唆される。ユーロ圏の景
気は、様々な材料(原油安、ユーロ安、金融緩和措置の効果波及、中立ないし小
幅に拡張的な財政スタンスなど)に支えられ、底堅さを維持しているが、対外要
因が引き続き経済成長の重しになると予想される。15 年 10−12 月期の実質
GDP 成長率については前期比+0.3%の予想を維持するが、足元の景況感調査
は 15 年 10−12 月期の成長率が前期比+0.4%になる水準と整合的であり、わ
ずかに上振れリスクがあろう。ユーロ圏経済が、バランスシート調整の継続、
世界的な成長減速、賃金の伸び悩みがもたらす課題に引き続き直面するなか、
野村では、かねてからの慎重な中期見通しを維持し、16∼17 年の実質 GDP 成
長率がコンセンサス予想及び ECB の見通しを下回ると引き続き予想している。
物価動向:15 年 12 月のユーロ圏消費者物価(HICP)上昇率は 11 月と同じ前
年同月比+0.2%だった。原油価格の急落によって、比較対象となる前年のエネ
ルギー安効果の剥落が希釈される形となった。短期的な物価見通しは(低下方向
に)大幅に悪化しており、1 月の HICP 上昇率の予想は同+0.5%と、11 月初め
の同+1.0%から低下している。野村のインフレモデルは 16 年 4−6 月期の
HICP 上昇率が前年同期比でマイナスに戻ることを示唆している。これに対し
て、15 年 12 月の ECB スタッフ予想は同+0.65%前後とみられる。コアインフ
レ率の回復は緩慢なペースにとどまり、HICP 上昇率(およびコアインフレ率)は
引き続き ECB の予想を下回って推移するとの野村の見方は変わらない。最近
の動向を踏まえ、野村では、16 年の HICP 上昇率が前年比+0.2%、17 年は同
+1.2%になると予想する(なお、ECB と同様に、先物市場の価格に基づく原油
価格の想定を用いた場合、野村見通しは 16 年が同+0.4%、17 年が同+1.5%
である)。これに対し、15 年 12 月時点の ECB スタッフ予想は 16 年が同 1.0%、
17 年は同+1.6%と、野村予想を上回る。
金融政策:ECB は 12 月 3 日の政策理事会で一連の追加緩和措置を発表した。
主な内容として、(1)中銀預金金利を 0.10%ポイント引き下げて−0.30%とし、
(2) 2016 年 9 月末までとしていた資産購入プログラム(APP)の期限を「17 年 3
月、またはそれ以降」へと 6 ヶ月延長(その結果、APP の資産は 1.5 兆ユーロ、
域内 GDP 比 14%に達する見込みとなった)、(3) APP を通じて保有する資産が
償還を迎えた場合、必要な期間、元本を再投資するとした。ただし、直近の措
置が中期的なインフレ期待の安定に十分なものとなるかどうかについて、野村
は引き続き懐疑的であり、とりわけ 16 年前半のインフレ率が政策目標を大幅
に下回る見込みとなったことも、そうした見方を強める根拠である。12 月の追
加緩和による中期的な物価見通しに対する影響(ECB の基本シナリオと比較し
たコアインフレ率の推移を含めて)を政策理事会が評価するまでには時間を要す
るだろうが、直近の物価統計は少しも安心材料とはならず、野村の基本シナリ
オでは、政策理事会は 16 年前半(4−6 月期の可能性がより高い)に、APP の条
件及び預金金利の引き下げといった追加措置の実施を迫られるとみている(詳細
は、2015 年 12 月 4 日付【ユーロ圏:2015 年 12 月 ECB 政策理事会】「追加
緩和を打ち出すが市場の期待に及ばず」を参照)。
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2016 年 1 月 21 日
リスク要因:世界経済減速と外需低迷が引き続き野村予想に対する主な下振
れリスクとなろう。上振れリスクとしては、政策緩和措置、あるいはまた原油
安が、ユーロ圏の内需に足元の野村予想を上回るプラスの効果をもたらすこと
が挙げられる。
(Nick Matthews、Anna Titareva)
図表 88: ユーロ圏経済見通し要約表
(%)
14Q4 15Q1 15Q2 15Q3 15Q4 16Q1 16Q2 16Q3 16Q4 17Q1 17Q2
( 季節調整済み前期比%)
実質GDP
個人消費
2015年 2016年 2017年
( 前年比%)
0.4
0.5
0.4
0.3
0.3
0.3
0.4
0.4
0.4
0.4
0.4
1.5
1.4
1.5
0.5
0.5
0.3
0.4
0.4
0.4
0.4
0.4
0.4
0.4
0.4
1.7
1.6
1.6
総固定資本形成
0.6
1.5
0.1
0.0
0.4
0.5
0.5
0.5
0.5
0.5
0.5
2.2
1.5
1.9
政府消費
輸出( 財・サービス)
0.2
0.5
0.3
0.6
0.2
0.2
0.2
0.2
0.2
0.3
0.3
1.4
0.9
0.8
1.2
1.3
1.6
0.2
0.5
0.7
0.7
0.8
0.8
0.9
0.9
4.8
2.7
3.5
輸入( 財・サービス)
1.2
1.9
0.9
0.9
0.8
0.8
0.9
0.9
0.9
1.0
1.0
5.1
3.5
3.9
( 季節調整済み前期比%ポイント)
( 前年比%ポイント)
GDPへの寄与度
国内最終需要
在庫投資
純輸出
実質GDP
( 季節調整済み前期比年率%)
失業率(%)
0.5
0.7
0.2
0.4
0.4
0.3
0.4
0.4
0.4
0.4
0.4
1.7
1.4
1.5
-0.1
0.1
-0.2
0.2
0.0
0.0
0.1
0.0
0.0
0.0
0.0
-0.2
0.2
0.1
0.1
-0.2
0.4
-0.3
-0.1
-0.1
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
-0.2
0.0
1.5
2.2
1.6
1.2
1.3
1.4
1.4
1.5
1.4
1.5
1.5
1.5
1.4
1.5
11.5
11.2
11.0
10.8
10.8
10.7
10.6
10.5
10.4
10.3
10.2
10.9
10.5
10.2
( 前年同期比%)
雇用者報酬( 一人当たり)
1.4
1.2
1.3
1.1
1.4
1.4
1.5
1.5
1.5
1.5
1.6
1.2
1.5
1.6
労働生産性
0.1
0.4
0.6
0.5
0.5
0.3
0.3
0.4
0.4
0.5
0.5
0.5
0.4
0.5
単位労働コスト
財政収支(対GDP比%)
1.3
0.9
0.7
0.6
0.9
1.1
1.1
1.0
1.0
1.0
1.1
0.7
1.1
1.1
-2.1
-2.0
-1.7
2.8
2.5
2.4
経常収支(対GDP比%)
( 前年同期比%)
消費者物価(HICP)
政策金利
( 主要リファイナンス金利)
3ヶ月物EURIBOR金利
10年物ドイツ国債利回り
ユーロ /ドル為替レート( ドル)
0.2
-0.3
0.2
0.1
0.2
0.2
-0.1
0.2
0.6
1.1
1.2
0.0
0.2
1.2
0.05
0.05
0.05
0.05
0.05
0.05
0.05
0.05
0.05
0.05
0.05
0.05
0.05
0.05
0.08
0.02 -0.01 -0.04 -0.13 -0.15 -0.15 -0.15 -0.15 -0.15 -0.15
-0.13
-0.15
-0.15
0.54
0.20
0.78
0.59
0.63
0.50
0.60
0.65
0.75
0.80
0.85
0.63
0.75
0.95
1.21
1.07
1.12
1.12
1.09
1.05
1.00
1.00
1.00
0.95
0.95
1.09
1.00
1.00
注: 1. 失業率は労働力人口に対する比率。2. 金利・為替は期末値。3. 太字は実績値、その他は野村予測。4. 2016 年 1 月 8 日現在。
出所: 欧州連合(EU)統計局、欧州中央銀行(ECB)、トムソン・ロイター・データストリーム、野村
65
Nomura | 国際金融為替マンスリー
2016 年 1 月 21 日
8.英国経済・金利:景気サイクルに対し利上
げが遅れる
英国経済は余剰生産能力を使い果たしているが、政策は据え置かれている。住
宅市場や国際収支上の対外資産負債残高の状況などに大きな不均衡が生まれて
いるものの、欧州連合(EU) 離脱のようなショックが引き金とならない限り、調
整は始まらないだろう。
英国経済の堅調な成長は予想以上に労働集約的で、余剰労働力の吸収ペース
が速く、結果として、労働力調査(LFS)ベースの失業率は大きく低下し、金融
危機前の水準に戻っている。労働参加率や平均労働時間も当時の水準に迫って
おり、景況感調査からは生産資源のひっ迫が記録的水準に達していることがう
かがえ、定量的な経済指標は GDP ギャップ((実際の GDP−潜在 GDP)/潜在
GDP)が極めて大幅なプラスとなっている可能性を示唆している。重要な点と
して、これがインフレ圧力に波及しつつある兆しが現れており、単位賃金コス
トの伸びも野村の予想を上回っている。ただし、ポンド高による輸入インフレ
低下により、(企業のコストに占める輸入物価のシェアは、これまでの価格低下
の結果、過去と比べて小さくなっているものの)、そうした状況は見えにくい。
生産資源のひっ迫によってインフレ率が政策目標を上回る水準に加速するか不
確実性があるなか、イングランド銀行(BOE:中央銀行)の金融政策委員会
(MPC)は、物価が遅行指標であるにもかかわらず、足元のインフレ率を重視し
ている。そうした点を踏まえ、野村では、BOE による利上げ開始時期の予想を
従来の 16 年 5 月から 11 月に後ずれさせた。16 年 11 月以降、四半期に 0.25%
ポイントのペースで利上げが実施され、18 年 2 月には 2.0%になると予想して
いる。
そのように利上げ開始を大幅に先送りすれば、たとえ消費者物価(CPI)上昇率
が低水準にあるとしても、弊害も伴う。金融資産の価格が過度に押し上げられ、
既存の資産の価格が押し上げられる方向に、投資配分に偏りが生じよう。その
結果、家計世帯が負担しうる金利の上限が低下する。全体として、英国の実質
的な中立金利は低下していると考えられる。こうした構造的な不均衡が調整さ
れるきっかけとなり得る 16 年の主な国内リスクイベントとして、欧州連合
(EU)加盟継続の是非を問う国民投票の実施が挙げられる。投票実施のタイミン
グは 9 月が最も濃厚であり、EU 離脱となる確率は 25%とみている(野村では、
ジェレミー・コービン氏が 15 年 9 月に野党・労働党の党首に選出されたこと
を受けて、同確率を 25%に引き上げた)。
なお、仮に EU 離脱となる場合、2 年間の交渉期間が設けられるが、移行の
コストは痛みを伴うものとなろう。経常収支赤字を補てんしている外国からの
投資資金が引き揚げられれば、通貨急落、輸入インフレ、そして実質所得減少
の原因となり、ひいては家計部門の突然の債務削減の引き金となりかねない。
その場合、1992 年の英国の景気後退と似た状況になろう(ただし、そこまで深
刻ではないだろう)。仮に EU 離脱となれば、当然ながら野村の基本見通しも大
幅な変更を迫られよう。その場合、中長期的には、EU との関係がどのような
ものになるかで影響は変わってこよう。ただし、新たな、より良い妥協点を見
出すことは可能であろう。
(Philip Rush)
66
Nomura | 国際金融為替マンスリー
2016 年 1 月 21 日
図表 89: 英国経済見通し要約表
(%)
実質GDP
民間消費
政府消費
総固定資本形成
輸出( 財・サービス)
輸入( 財・サービス)
GDPへの寄与度
国内最終需要
純輸出
在庫投資
失業率(%)
2015年 2016年 2017年
( 前年比%)
2.2
2.4
2.5
2.8
2.5
1.9
1.7
1.3
0.8
4.5
5.3
6.5
5.4
2.9
3.1
5.9
3.1
3.0
( 前年比%ポイント)
15Q1
15Q2
15Q3
15Q4
( 季節調整済み前期比%)
0.6
0.4
0.5
0.4
0.7
0.7
0.9
0.8
0.3
0.5
1.0
0.6
1.2
0.9
1.6
0.7
0.5
0.0
2.8
-0.3
0.7
3.0
-2.2
2.7
( 季節調整済み前期比%ポイント)
16Q1
16Q2
16Q3
16Q4
0.6
0.5
0.2
1.5
0.7
0.7
0.6
0.5
0.2
1.4
0.8
0.7
0.6
0.5
0.2
1.3
0.8
0.7
0.7
0.6
0.2
1.3
0.8
0.7
0.7
-1.0
0.7
5.3
0.7
-0.1
0.0
5.1
0.6
0.0
0.0
5.0
0.6
0.0
0.0
5.0
0.6
0.0
0.0
4.9
0.6
0.0
0.0
4.7
2.9
-0.3
-0.4
5.4
2.8
-0.2
-0.2
4.9
2.6
0.0
0.0
4.5
0.0
0.9
0.50
0.0
1.0
0.50
0.3
1.4
0.50
0.6
1.8
0.50
0.9
2.1
0.50
1.6
2.8
0.75
0.0
1.0
0.50
0.9
2.0
0.75
2.3
3.6
1.75
375
1.76
375
1.96
375
2.00
375
2.20
375
2.25
375
2.45
375
1.96
375
2.45
375
2.30
0.7
1.0
-1.0
1.6
0.6
-2.2
5.5
5.6
( 前年同期比%)
0.1
0.0
消費者物価
1.0
1.0
小売物価
0.50
0.50
政策金利( オフィシャル・バンクレート)
375
375
資産買い入れ枠(10億ポンド)
10年物国債利回り
1.58
2.02
注:1. 失業率は労働力人口に対する比率。2. 金利・為替は期末値。3. 在庫投資は統計誤差を含む。4. 財政収支は財政年度(4 月∼翌
年 3 月)の非金融公的部門純借入額に基づく。5. 太字は実績値、その他は野村予測。6. 2016 年 1 月 8 日現在。
出所: 英国政府統計局、イングランド銀行(BOE)、ブルームバーグ、トムソン・ロイター・データストリーム、野村
67
Nomura | 国際金融為替マンスリー
2016 年 1 月 21 日
9.ハンガリー経済・金利:非伝統的な政策が
続こう
2016 年には、従来実施してきた非伝統的な緩和政策の効果が剥落し、成長率
が低下しよう。ハンガリー国立銀行(MNB:中央銀行)と政府の成長押し上げの
ための協調関係が強まろう。
金融政策、物価、為替相場の見通し
野村のみるところ、MNB の政策の主要目標は経済成長の最大化である。消
費者物価(CPI)上昇率が物価目標の上限(前年比+4.0%)を下回って推移する限り、
成長の最大化が重点分野になろう。当面の目標は、16 年末までに銀行融資を+
7∼8%拡大(「成長のための資金調達スキーム(FGS)」やその他の支援措置を実
施しても、足元では−1%の減少となっている)、長短金利(イールドカーブ、利
回り曲線)の平たん化を通じた銀行の資金調達コストの引き下げ、対外ぜい弱性
の低減、通貨安の誘導、である。信用の伸び以外の目標は達成されるとみられ
る。長期にわたり政策金利を 1.35%に据え置き、実質金利をマイナスに維持す
ることで、大幅な経常収支黒字の下でも、緩やかな通貨安を実現しよう (為替
相場を 1 ユーロ=325 フォリント前後とする長期的(政治的な目標でもある)目
標も達成しよう)。長短金利の平たん化は、長期資金供給オペや、金融機関の短
期金融市場における運用を制限し国債投資を促す措置の強化によって実現しよ
う。より難しいのは、銀行融資の拡大目標の達成だろう。キャリー取引(かろう
じてプラスの利ザヤがある)、不動産建設、不動産投資向けの融資を通じて一時
的に目標を実現できる可能性があるが、依然としてハンガリー経済は、真に生
産的な投資向けの信用需要が不足しており、これは成長強化策が最終的に潜在
成長率の押し上げにつながらないことを意味する。全体的な債務削減をさらに
進める必要がある。よって、野村では 16 年の MNB が追加措置を打ち出すと予
想している。
短期的には 16 年前半に、長期資金供給オペ、準備預金付利金利の引き下げ、
預金金利の引き下げを通じた追加政策緩和が実施される可能性がある。流動性
を供給することなく、算出方法を変更することで、銀行間短期市場金利
(BUBOR)を政策金利期待を反映した HUFONIA(翌日物銀行間金利)に収れんさ
せるかどうかを注視している。このことで BUBOR の 0.3%ポイント程度の低
下が見込まれるが、そうなれば、3 ヶ月物 BUBOR を基準とする住宅ローン(ス
イスフラン建てからフォリント建てに転換されたもの)の金利も低下しよう。野
村では、MNB の期待通りに通貨安が進まない場合には、16 年の利下げ実施も
否定できないが、その可能性は低いとみている。我々は、スイスフラン建ての
住宅ローンのフォリント建て住宅ローンへの転換に伴い、ペースは一定ではあ
るが、大幅に減少するであろう外貨準備の動きを注視している。
金融政策、財政、政治見通し
財政は概ね制御可能である。政府は国債格付けの引き上げを視野に入れ、債
務水準の引き下げを目指している。16 年は、厳しい 1 年になろう。欧州連合
(EU)構造基金が減額されたため、その一部を政府支出の拡大によって補てんす
る必要が生じるとみられ、これが財政再建の停滞につながる可能性がある。野
村では、16 年末までにハンガリーの信用格付けが引き上げられるとみているが、
短期的に成長を押し上げる非伝統的な措置を受けて、格付け会社が成長の持続
可能性について懸念を持つ可能性があることを踏まえると、格上げの時期は後
ずれすると考えられる。
68
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2016 年 1 月 21 日
成長見通し
野村では、16 年の実質 GDP 成長率は前年比+2.4%と、15 年の同+2.9%か
ら減速すると予想している。リスクは上振れ方向、下振れ方向で概ね均衡して
おり、上振れ要因として MNB の政策対応、下振れ要因として EU 構造基金の
減額や対外要因、インフレ加速により実質可処分所得が抑制されること、など
が挙げられる。政府投資支出と個人消費が足かせになる一方、純輸出が成長を
押し上げるとみられるが、15 年よりもその押し上げ効果は小さいとみられる。
(Peter Attard Montalto)
図表 90: ハンガリー経済見通し要約表
図表 91: 実質 GDP 成長率の見通し
2014年 2015年 2016年 2017年
実質GDP成長率(前年比%)
3.6
2.9
2.4
2.8
140.8
128.3
127.6
135.0
経常収支(対GDP比%)
3.1
5.0
4.3
3.6
財政収支(対GDP比%)
-2.6
-2.0
-2.5
-2.9
CPI上昇率(前年比%、期末)
-0.9
0.9
3.2
2.8
CPI上昇率(前年比%、期中平均)
-0.2
-0.1
1.9
2.9
コアCPI( 期中平均%)
0.0
1.2
2.0
3.8
失業率(%)
7.2
7.3
7.0
7.0
外貨準備(10億ユーロ )
33.7
29.0
23.0
20.0
公的債務(対GDP比%)
76.9
74.5
73.0
72.0
政策金利(%)
2.10
1.35
1.35
1.35
為替レート(フォリント/ユーロ )
316
315
325
325
名目GDP(10億ドル)
注:1.太字は実績値、その他は野村予想。2.コア消費者物価指数
(CPI)は付加価値税(VAT)を除くベース。3.外貨準備・対外債務に
は国際通貨基金(IMF)、欧州連合(EU)による緊急融資を含む。4.
金利・為替は期末値。5.2016 年 1 月 12 日現在。
コアCPI上昇率
消費者物価(CPI)上昇率
(前年同月比%)
5
4
3
2
1
0
-1
-2
14年1月
14年9月
15年5月
16年1月
16年9月
17年5月
出所: ハンガリー中央統計局、野村
出所: ハンガリー中央統計局、ハンガリー国立銀行(MNB)、野村
69
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2016 年 1 月 21 日
10.ポーランド経済・金利:市場の目先の懸
念は、成長への楽観に取って代わられよう
政権交代を経て、2016 年は政権移行リスクの年になろう。その後、与党「法
と正義(PiS)」の成長支援策が始まり、17 年に入ると財政状況が安定しよう。
政策金利は、当面据え置きが予想される。
財政・政治動向
16 年に入って数ヶ月は、金融市場がリスクを抱える時期になろう。PiS 政権
発足により、年金制度や国有企業改革などの構造改革の後戻りや、予算案やス
イスフラン建て住宅ローンを自国通貨に転換する法案の成立が予想される。し
かし金融市場は、時間の経過とともにやがて、こうしたプロセスを巡る懸念よ
りも、(目に見えない形の中長期的な潜在成長率低下のリスクは重視されず)、
長期の高成長を見込む楽観的な見通しを重視するようになるだろう。野村では、
17 年には財政状況がより安定化すると予想している。成長加速により税収が増
加し、歳入効率が改善するとの楽観的な見通しに依存する必要がなくなり、
PiS にとって有利な状況になろう。しかし 16 年は、依然としてリスクの多い年
になろう。歳出目標や歳入拡大策を巡る不透明感もあって、財政赤字が拡大し、
成長加速には時間がかかる可能性があるためだ。格付け会社スタンダード・ア
ンド・プアーズ(S&P)は 1 月 15 日にポーランドの政府債格付けを「※A−」(※
見通しポジティブ)から「※BBB+」(※見通しネガティブ)に引き下げた。政権
交代から時間がそれほど経過していない点を踏まえると、予想外の動きと言え
るが、新政権の政策動向を踏まえたものとみられる。
※は無登録の格付け業者が付与した格付け。
なお、野村予想は、新政権による予算案が未だ公表されていないため、前政
権「市民プラットフォーム(PO)」の基本シナリオに基づいている。
成長見通し
野村では、予算の詳細と投資プログラムの実施時期公表を待って、とりわけ
17 年について大幅な成長加速を予想に織り込むかどうかを判断したい。しかし、
野村の成長見通しには上振れリスクがあり、17 年の実質 GDP 成長率が前年比
+4.5%前後になる可能性があることも強調しておきたい。16 年は過渡期にな
ろう。銀行税による足かせもあるとみられるが、個人、とりわけ世帯単位の減
税措置、スイスフラン建て住宅ローンの自国通貨への転換による家計バランス
シートへの好影響(16 年末か 17 年初めには表面化しようが、ポーランドの家計
部門はハンガリーほど含み損を抱えていないため、プラスの影響はハンガリー
よりも小さいとみられる)もあって、上振れリスクは年を通じて上昇するとみら
れる。しかし、こうした足元の政策要因を除くと、内需がより力強く増大し、
個人消費の拡大と在庫調整の動きが続くなか、純輸出の赤字がさらに拡大しよ
う。実質可処分所得の伸びが向こう 1 年のインフレ加速に沿ったペースになる
かを見極めるのが重要だろう。生産性の高さを踏まえると、実質可処分所得は
インフレ加速に沿うペースで上昇しうるが、見通しは依然として不透明であり、
法人減税が手助けになろう。構造基金からの拠出減少が部分的な下振れリスク
であるが、政府の投資プログラムがその影響を相殺するとみられる。
70
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2016 年 1 月 21 日
金利・物価見通し
野村では、(投資プログラムが実施されなくても)内需が拡大し、対外要因に
よる物価の下落圧力が後退するなか、コアインフレが緩やかに加速するとみて
いる。ただし、原油価格の下落を踏まえると、加速のペースは極めて緩慢にな
ろう。実質金利の急低下と緩和的な財政政策、17 年にかけて成長加速が見込ま
れるため、交代後の金融政策委員会(MPC)新メンバーが 1−3 月期に大幅な利
下げに踏み切ることは難しいだろう。現に、名前が挙げられているメンバーは
意外なことにタカ派(インフレ警戒)寄りではない。他方、投資プログラムを通
じた銀行の下支え、政府からの長期資金供給オペの要請、スイスフラン建て住
宅ローンの自国通貨への転換が注目されよう。野村では、外貨建て住宅ローン
に関連する 400 億ユーロのスワップ取引が近いことを踏まえると、ポーランド
国立銀行(NPB:中央銀行)の外貨準備を使わないという現行スタンスを信頼に
足るとはみていない。NPB は、ハンガリーと同様の措置を取らざるを得なくな
る可能性もあろう。
(Peter Attard Montalto)
図表 93: 野村のインフレ見通し
図表 92: ポーランド経済見通し要約表
2014年 2015年 2016年 2017年
実質GDP成長率(前年比%)
名目GDP(10億ドル)
3.3
3.5
3.7
3.9
593.5
546.3
490.2
548.5
経常収支(対GDP比%)
-1.4
-0.3
-1.5
-2.5
財政収支(対GDP比%)
-3.2
-2.7
-2.5
-2.9
CPI上昇率(前年比%、期末)
-1.0
-0.5
1.3
1.9
CPI上昇率(前年比%、期中平均)
0.0
-0.9
0.3
1.5
コアCPI( 期中平均)
0.4
0.6
0.8
1.4
人口(100万人)
38.4
38.3
38.2
38.1
7.1
失業率(%)
8.2
7.5
7.3
外貨準備(10億ユーロ )
83.0
103.0
105.0
110.0
対外債務(対GDP比%)
71.6
68.6
65.0
64.2
公的債務(対GDP比%)
50.2
47.0
46.8
46.3
政策金利(レファレンス金利%)
2.00
1.50
1.50
2.50
為替レート(ズロチ/ユーロ )
4.29
4.26
3.95
3.85
消費者物価(CPI)上昇率
(前年同月比%)
4.3
コアCPI上昇率
3.3
2.3
1.3
0.3
-0.7
-1.7
14年1月
14年11月
15年9月
16年7月
17年5月
出所: ポーランド統計局より野村作成
注:1.太字は実績値、その他は野村予想。2.コア消費者物価指数
(CPI)は付加価値税(VAT)を除くベース。3.金利・為替は期末値。
4. 2016 年 1 月 12 日現在。
出所: ポーランド統計局、ポーランド国立銀行(NBP)より野村作成
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2016 年 1 月 21 日
11.チェコ経済・金利:為替政策の変更が課
題に
底堅い成長が続くとみられるが、為替上限設定政策の終了が主な課題になろう。
景気見通し
野村では、2015 年に実施した一回限りの財政緩和措置による効果が剥落し、
16 年の実質 GDP 成長率が前年比+2.7%に減速すると予想している。とは言え、
通貨安及び金融・財政政策が支えとなり、チェコの経済成長率は引き続きユー
ロ圏を上回ろう。
物価・通貨・政策金利見通し
16 年については、7−9 月期に予定されるチェコ国立銀行(CNB:中央銀行)
の総裁交代をいかに乗り切り、為替相場を 1 ユーロ=27.0 コルナ前後で維持す
る政策を解除し、その後も 17 年末まで政策金利を安定的に推移させることが
できるかが焦点になろう。予測期間を通じて消費者物価(CPI)上昇率は緩やかに
上向くとみられ、政策金利の安定的な調整はさほど難しくないだろう。他方、
為替政策は、投機的な動きや CNB の為替介入コストの上昇を考慮すると難し
いとみられる。CNB は、「16 年末まで通貨コルナの対ユーロ相場の上限水準
を維持するが、必要に応じて(現行の為替政策の変更後も通貨コルナが大幅に上
昇しないことを想定し)16 年 7−9 月期終盤にも上限を撤廃する用意がある」こ
とを強調すると考えられる。財政については、大きな動きはないとみられる。
しかし、16 年秋に上院選挙(3 分の 1 が改選)が予定される中、ゼマン大統領と
連立政権によって国民投票が実施される可能性もあろう。チェコの上院選挙は、
通常ならば金融市場で材料視されないが、反ユーロ派への支持の高まり、難民
危機、ゼマン大統領のタカ派発言と政府の政策に関する見解の相違拡大は、い
ずれも市場の期待が裏切られる可能性があることを意味する。
(Peter Attard Montalto)
図表 94: チェコ経済見通し要約表
実質GDP成長率(前年比%)
名目GDP(10億ドル)
経常収支( 対GDP比%)
財政収支( 対GDP比%)
CPI上昇率(前年比%、期末)
CPI上昇率(前年比%、期中平均)
コアCPI上昇率(前年比%、期中平均)
2014年
2.0
2015年
3.7
2016年
2.7
2017年
2.5
205.7
189.8
199.6
210.9
0.5
-2.8
-0.6
0.2
-2.0
-3.0
-2.8
-2.7
0.1
0.0
0.7
1.2
0.4
0.3
0.1
1.1
0.5
1.0
0.6
1.6
人口(100万人)
失業率(%)
10.5
10.2
10.1
10.1
7.5
6.0
5.6
5.4
外貨準備(10億ユーロ )
対外債務( 対GDP比%)
44.0
45.0
44.5
38.0
60.8
52.3
50.3
47.8
公的債務( 対GDP比%)
政策金利(2週間物レポレート%)
46.6
47.3
47.0
47.0
0.05
0.05
0.50
1.00
為替レート(コルナ/ユーロ )
27.70
27.02
26.50
26.00
注:太字は実績値、その他は野村予想。コア消費者物価指数(CPI)は付加価値税(VAT)を除く
ベース。金利・為替は期末値。2016 年 1 月 12 日現在。
出所: チェコ統計局、チェコ国立銀行(CNB)より野村作成
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2016 年 1 月 21 日
主要国の主な日程(2016 年 2 月)
図表 95: 2016 年 2 月イベント・カレンダー
オセア ニア
2月 1日
月
2月 2日
火
2月 3日
水
2月 4日
木
2月 5日
金
2月 6日
2月 7日
土
日
2月 8日
月
2月 9日
2月 10日
2月 11日
火
水
木
RBA 金融政策
アジア
欧州
米州
政府版中国PMI
米個人消費
Markit版中国製造業PMI
ISM製造業指数
インド金融政策
英サービス業PMI
豪貿易収支
ADP雇用統計
NZ失業率
ISM非製造業指数
豪企業信頼感
RBNZ総裁講演
BOE金融政策
米新規失業保険
BOEインフレレポート
米時間当たり賃金
独製造業受注
米雇用統計
豪小売売上高
NZ休場
中国休場
豪求人広告件数
NZ住宅価格
中国休場
豪消費者信頼感
中国休場
NZ製造業PMI
中国休場
英RICS住宅価格
日本休場
2月 12日
金
2月 13日
2月 14日
土
日
2月 15日
月
2月 16日
ユーロ圏GDP
米小売売上高
ミシガン消費者信頼感
米国休場
日本GDP
中国貿易収支
火
RBA 議事録
英CPI
NZ 小売統計
英小売統計
独ZEW景況感
英雇用統計
2月 17日
米住宅着工件数
米PPI
水
米鉱工業生産
FOMC議事録
2月 18日
木
豪雇用統計
日本貿易収支
NZ 求人広告件数
中国CPI
ECB議事録
NZ消費者信頼感
2月 19日
2月 20日
2月 21日
2月 22日
金
土
日
月
2月 23日
火
2月 24日
水
2月 25日
木
2月 26日
金
2月 27日
2月 28日
2月 29日
土
日
月
米CPI
ユーロ圏PMI
独IFO景況感
CB消費者信頼感
米中古住宅販売件数
豪建設投資
米新築住宅販売
NZ出入国管理統計
英GDP
米耐久財受注
ユーロ圏CPI
NZ 貿易収支
日本CPI
独CPI
米GDP
ミシガン消費者信頼感
NZ 企業信頼感
シカゴPMI
出所: ブルームバーグ、野村
次回の国際金融為替マンスリー2016 年 3 月号の発行は、16 年 2 月 18 日を予定。
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2016 年 1 月 21 日
Appendix A-1
アナリスト証明
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対する各自の見方を正確に反映していることを保証いたします。 さらに、名前を記載されているアナリストは、各自の報酬が、
直接的あるいは間接的にこのレポートで議論した推奨や見方によって、現在、過去、未来にわたって一切影響を受けないこと、
ならびに、米国の NSI、英国の NIP あるいはその他の野村のグループ企業が行ったいかなる投資銀行案件とも関係ないことを
保証いたします。
重要なディスクロージャー
リサーチのオンライン提供と利益相反に関するディスクロージャー
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本レポートを作成したアナリストは、その一部は投資銀行業務によって得ている会社の総収入など、様々な要素に基づく報酬を得ています。特に断りがな
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ーチ・アナリストとしての登録・資格を得ておらず、NSI の関係者ではない場合があり、また、調査対象企業とのコミュニケーション、公の場での発言、ある
いはリサーチ・アナリスト個人が保有する証券の売買に関して、FINRA の規則 2711 や NYSE の規則 472 を適用されない場合があります。
ノムラ・グローバル・フィナンシャル・プロダクツ・インク(「NGFP」)、ノムラ・デリバティブ・プロダクツ・インク(「NDPI」)およびノムラ・インターナショナル plc
(「NIplc」)は、商品先物取引委員会および米国先物取引委員会にスワップ・ディーラーとして登録されています。NGFP、NDPI および NIplc は、通常業務
として、先物およびデリバティブ商品のトレーディングに従事しており、いずれの商品も本レポートの対象となることがあります。
米国で必要なその他のディスクロージャー
NSI ならびにその関連会社は、通常、このリサーチレポートで言及されている債券あるいはそのデリバティブの取引を行っています。アナリストは、NSI の
従業員と情報を交換しています。NSI ならびにその関連会社の債券アナリストは、それぞれがカバーする債券の流動性や価格情報を得るため、トレーディ
ング・デスクの従業員とも情報を交換しています。
評価方法:債券等
野村の債券アナリストならびにストラテジストは、個々の取引推奨を通じ債券や金融商品の価格について見通しを提供しています。これらの推奨は相対
価値、相場の方向性及び資産配分に係る取引推奨、ないし、これら三つの組み合わせとなります。個々の取引推奨が内包している証券分析には通常以
下の分析が含まれています。
・ 各証券価格とその背景にあるマクロあるいはミクロ経済との乖離に関するファンダメンタル分析
・ 価格の差異に関する計量分析
・ 法令諸規則の変更、市場におけるリスク選好の変化、予想外の格付けアクション、発行市場の動向や需給状況などに関するテクニカル要因の分析
債券や金融商品に対する推奨期間は個々の推奨で異なります。テクニカル要因に基づく取引推奨はより短期で、通常 3 ヶ月未満の期間を対象としていま
す。戦略的な取引推奨はより長期で、通常 3 ヶ月を超える期間を対象としています。
ディスクレイマー
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国) (「NFIK」) (韓国金融投資協会(「KOFIA」)に登録しているアナリストの情報は KOFIA のイントラネット http://dis.kofia.or.kr でご覧いただけます)、シン
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ります)、インドネシアの P.T.ノムラ・インドネシア (「PTNI」)、マレーシアのノムラ・セキュリティーズ・マレーシア Sdn. Bhd. (「NSM」)、台湾の NIHK 台北支
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House, Level 11, Plot F, Shivsagar Estate, Dr. Annie Besant Road, Worli, Mumbai- 400 018, India;電話: +91 22 4037 4037、ファックス: +91 22 4037 4111;
CIN 番号:U74140MH2007PTC169116、SEBI 登録番号(株式ブローカレッジ): BSE INB011299030、NSE INB231299034、 INF231299034、 INE
231299034, MCX: INE261299034、SEBI 登録番号(マーチャントバンキング):INM000011419、SEBI 登録番号(リサーチ):INH000001014)、スペインの
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2016 年 1 月 21 日
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含め、いずれの情報の正確性、完全性、適時性あるいは利用可能性を保証しておらず、原因が何であれ、(不注意あるいは他の理由による)誤りあるいは
削除、または当該内容の利用に起因する結果に対する一切の責任を負いません。第三者である情報提供者は、譲渡可能性あるいは特定の目的または
利用への適性の保証を含め(ただしこれに限定されない)、明示的あるいは暗黙の保証を行っていません。第三者である情報提供者は格付けを含め、提
供した情報の利用に関連する直接的、間接的、偶発的、懲罰的、補償的、罰則的、特別あるいは派生的な損害、費用、経費、弁護料、損失コスト、費用
(損失収入または利益、機会コストを含む)に対する責任を負いません。信用格付けは意見の表明であり、事実または証券の購入、保有、売却の推奨を
表明するものではありません。格付けは証券の適合性あるいは投資目的に対する証券の適合性を扱うものではなく、投資に関する助言として利用するこ
とはお控えください。
本資料中に含まれる MSCI から得た情報は MSCI Inc.(「MSCI」)の独占的財産です。MSCI による事前の書面での許可がない限り、当該情報および他の
MSCI の知的財産の複製、再配布あるいは指数などのいかなる金融商品の作成における利用は認められません。当該情報は現状の形で提供されてい
ます。利用者は当該情報の利用に関わるすべてのリスクを負います。これにより、MSCI、その関連会社または当該情報の計算あるいは編集に関与ある
いは関係する第三者は当該情報のすべての部分について、独創性、正確性、完全性、譲渡可能性、特定の目的に対する適性に関する保証を明確に放
棄いたします。前述の内容に限定することなく、MSCI、その関連会社、または当該情報の計算あるいは編集に関与あるいは関係する第三者はいかなる
種類の損失に対する責任をいかなる場合にも一切負いません。MSCI および MSCI 指数は MSCI およびその関連会社のサービス商標です。
Russell/Nomura 日本株インデックスの知的財産権およびその他一切の権利は野村證券株式会社および Frank Russell Company に帰属します。なお、野
村證券株式会社および Frank Russell Company は、当インデックスの正確性、完全性、信頼性、有用性、市場性、商品性および適合性を保証するもので
はなく、インデックスの利用者およびその関連会社が当インデックスを用いて行う事業活動・サービスに関し一切責任を負いません。
本資料は投資家のお客様にとって投資判断を下す際の諸要素のうちの一つにすぎないとお考え下さい。また、本資料は、直接・間接を問わず、投資判断
に伴う全てのリスクについて検証あるいは提示しているのではないことをご了解ください。野村グループは、ファンダメンタル分析、定量分析等、異なるタイ
プの数々のリサーチ商品を提供しております。また、時間軸の捉え方や分析方法の違い等の理由により、リサーチのタイプによって推奨が異なる場合が
あります。野村グループは野村グループのポータル・サイト上へのリサーチ商品の掲載および/あるいはお客様への直接的な配布を含め、様々な方法に
よってリサーチ商品を発表しております。調査部門が個々のお客様の要望に応じて提供する商品およびサービスはお客様の属性によって異なる場合が
あります。
当レポートに記載されている数値は過去のパフォーマンスあるいは過去のパフォーマンスに基づくシミュレーションに言及したものである場合があり、将来
のパフォーマンスを示唆するものとして信頼できるものではありません。情報に将来のパフォーマンスに関する示唆が含まれている場合、係る予想は将来
のパフォーマンスを示唆するものとして必ずしも信頼できるものではありません。また、シミュレーションはモデルと想定の簡略化に基づいて行われており、
想定が過度に簡略化され、将来のリターン分布を反映していない場合があります。
特定の証券は、その価値または価格、あるいはそこから得られる収益に悪影響を及ぼし得る為替相場変動の影響を受ける場合があります。
本資料に記載された証券は米国の 1933 年証券法に基づく登録が行われていない場合があります。係る場合、1933 年証券法に基づく登録が行われる、
あるいは当該登録義務が免除されていない限り、米国内で、または米国人を対象とする購入申込みあるいは売却はできません。準拠法が他の方法を認
めていない限り、いかなる取引もお客様の地域にある野村の関連会社を通じて行う必要があります。
本資料は、NIplc により英国および欧州経済領域内において投資リサーチとして配布することを認められたものです。NIplc は、英国のプルーデンス規制
機構によって認可され、英国の金融行為監督機構とプルーデンス規制機構の規制を受けています。NIplc はロンドン証券取引所会員です。本資料は、英
国の適用される規則の意味する範囲での個人的な推奨を成すものではなく、あるいは個々の投資家の特定の投資目的、財務状況、ニーズを勘案したも
のではありません。本資料は、英国の適用される規則の目的のために「適格カウンターパーティ」あるいは「専門的顧客」である投資家のみを対象にした
もので、したがって、当該目的のために「個人顧客」である者への再配布は認められておりません。本資料は、香港証券先物委員会の監督下にある
NIHK によって、香港での配布が認められたものです。本資料は、オーストラリアで ASIC の監督下にある NAL によってオーストラリアでの配布が認めら
れたものです。また、本資料は NSM によってマレーシアでの配布が認められています。シンガポールにおいては、本資料は NSL により配布されました。
NSL は、証券先物法(第 289 条)で定義されるところの認定投資家、専門的投資家もしくは機関投資家ではない者に配布する場合、海外関連会社によっ
て発行された証券、先物および為替に関わる本資料の内容について、法律上の責任を負います。シンガポールにて本資料の配布を受けたお客様は本資
料から発生した、もしくは関連する事柄につきましては NSL にお問い合わせください。本資料は米国においては 1933 年証券法のレギュレーション S の条
項で禁止されていない限り、米国登録ブローカー・ディーラーである NSI により配布されます。NSI は 1934 年証券取引所法規則 15a-6 に従い、その内容
に対する責任を負っております。本資料を作成した会社は、野村グループ内の関連会社が、顧客が入手可能な複製を作成することを許可しています。
野村サウジアラビア、NIplc、あるいは他の野村グループ関連会社はサウジアラビア王国(「サウジアラビア」)での(資本市場庁が定めるところの、)「オー
ソライズド・パーソンズ」、「エグゼンプト・パーソンズ」、または「インスティテューションズ」以外の者への本資料の配布、アラブ首長国連邦(「UAE」)におい
ては、(ドバイ金融サービス機構が定めるところの、)「専門的顧客」以外の者への配布、また、カタール国の(カタール金融センター規制機構が定めるとこ
ろの、)「マーケット・カウンターパーティー」、または「ビジネス・カスタマーズ」以外の者への配布を認めておりません。サウジアラビアおいては、「オーソラ
イズド・パーソンズ」、「エグゼンプト・パーソンズ」、または「インスティテューションズ」以外の者、UAE の「専門的顧客」以外の者、あるいはカタールの「マ
ーケット・カウンターパーティー」、または「ビジネス・カスタマーズ」以外の者を対象に本資料ならびにそのいかなる複製の作成、配信、配布を行うことは直
接・間接を問わず、係る権限を持つ者以外が行うことはできません。本資料を受け取ることは、サウジアラビアに居住しないか、または「オーソライズド・パ
ーソンズ」、「エグゼンプト・パーソンズ」、または「インスティテューションズ」であることを意味し、UAE においては「専門的顧客」、カタールにおいては「マー
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ケット・カウンターパーティー」、または「ビジネス・カスタマーズ」であることの表明であり、この規定の順守に同意することを意味いたします。この規定に従
わないと、サウジアラビア、UAE、あるいはカタールの法律に違反する行為となる場合があります。
本資料のいかなる部分についても、野村グループ会社から事前に書面で同意を得ることなく、(i)その形態あるいは方法の如何にかかわらず複製する、あ
るいは(ii)配布することを禁じます。本資料が、電子メール等によって電子的に配布された場合には、情報の傍受、変造、紛失、破壊、あるいは遅延もしく
は不完全な状態での受信、またはウィルスへの感染の可能性があることから、安全あるいは誤りがない旨の保証は致しかねます。従いまして、送信者は
電子的に送信したために発生する可能性のある本資料の内容の誤りあるいは欠落に対する責任を負いません。確認を必要とされる場合には、印刷され
た文書をご請求下さい。
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無登録格付に関する説明書
格付会社に対し、市場の公正性・透明性の確保の観点から、金融商品取引法に基づく信用格付業者の登録制が導入されております。
これに伴い、金融商品取引業者等は、無登録の格付業者が付与した格付を利用して勧誘を行う場合、金融商品取引法により、無登録の格付業者が付与
した格付(以下「無登録格付」といいます)である旨及び登録の意義等を顧客に告げなければならないこととされております。
○登録の意義について
登録を受けた信用格付業者は、①誠実義務、②利益相反防止・格付プロセスの公正性確保等の業務管理体制の整備義務、③格付対象の証券を保有し
ている場合の格付付与の禁止、④格付方針等の作成及び公表・説明書類の公衆縦覧等の情報開示義務等の規制を受けるとともに、報告徴求・立入検
査、業務改善命令等の金融庁の監督を受けることとなりますが、無登録の格付業者は、これらの規制・監督を受けておりません。
○格付業者について
スタンダード&プアーズ
・格付業者グループの呼称等について
格付業者グループの呼称:
スタンダード&プアーズ・レーティングズ・サービシズ(以下「S&P」といいます。)
グループ内の信用格付業者の名称及び登録番号:
スタンダード&プアーズ・レーティング・ジャパン株式会社(金融庁長官(格付)第5号)
・信用格付を付与するために用いる方針及び方法の概要に関する情報の入手方法について
スタンダード&プアーズ・レーティング・ジャパン株式会社のホームページ(http://www.standardandpoors.co.jp)の「ライブラリ・規制関連」の「無登録格付け
情報」(http://www.standardandpoors.co.jp/unregistered)に掲載されております。
・信用格付の前提、意義及び限界について
S&P の信用格付は、発行体または特定の債務の将来の信用力に関する現時点における意見であり、発行体または特定の債務が債務不履行に陥る確
率を示した指標ではなく、信用力を保証するものでもありません。また、信用格付は、証券の購入、売却または保有を推奨するものでなく、債務の市場流
動性や流通市場での価格を示すものでもありません。
信用格付は、業績や外部環境の変化、裏付け資産のパフォーマンスやカウンターパーティの信用力変化など、さまざまな要因により変動する可能性があ
ります。
S&P は、信頼しうると判断した情報源から提供された情報を利用して格付分析を行っており、格付意見に達することができるだけの十分な品質および量
の情報が備わっていると考えられる場合にのみ信用格付を付与します。しかしながら、S&P は、発行体やその他の第三者から提供された情報について、
監査、デュー・デリジェンスまたは独自の検証を行っておらず、また、格付付与に利用した情報や、かかる情報の利用により得られた結果の正確性、完全
性、適時性を保証するものではありません。さらに、信用格付によっては、利用可能なヒストリカルデータが限定的であることに起因する潜在的なリスクが
存在する場合もあることに留意する必要があります。
この情報は、平成 26 年 1 月 31 日現在、当社が信頼できると考える情報源から作成しておりますが、その正確性・完全性を当社が保証するものではあり
ません。詳しくは上記スタンダード&プアーズ・レーティング・ジャパン株式会社のホームページをご覧ください。
ムーディーズ
・格付業者グループの呼称等について
格付業者グループの呼称:
ムーディーズ・インベスターズ・サービス・インク(以下「ムーディーズ」といいます。)
グループ内の信用格付業者の名称及び登録番号:
ムーディーズ・ジャパン株式会社(金融庁長官(格付)第2号)
・信用格付を付与するために用いる方針及び方法の概要に関する情報の入手方法について
ムーディーズ・ジャパン株式会社のホームページ(ムーディーズ日本語ホームページ(http://www.moodys.co.jp)の「信用格付事業」をクリックした後に表示
されるページ)にある「無登録業者の格付の利用」欄の「無登録格付説明関連」に掲載されております。
・信用格付の前提、意義及び限界について
ムーディーズの信用格付は、事業体、与信契約、債務又は債務類似証券の将来の相対的信用リスクについての、現時点の意見です。ムーディーズは、
信用リスクを、事業体が契約上・財務上の義務を期日に履行できないリスク及びデフォルト事由が発生した場合に見込まれるあらゆる種類の財産的損失
と定義しています。
信用格付は、流動性リスク、市場リスク、価格変動性及びその他のリスクについて言及するものではありません。また、信用格付は、投資又は財務に関す
る助言を構成するものではなく、特定の証券の購入、売却、又は保有を推奨するものではありません。ムーディーズは、いかなる形式又は方法によっても、
これらの格付若しくはその他の意見又は情報の正確性、適時性、完全性、商品性及び特定の目的への適合性について、明示的、黙示的を問わず、いか
なる保証も行っていません。
ムーディーズは、信用格付に関する信用評価を、発行体から取得した情報、公表情報を基礎として行っております。ムーディーズは、これらの情報が十分
な品質を有し、またその情報源がムーディーズにとって信頼できると考えられるものであることを確保するため、全ての必要な措置を講じています。しかし、
ムーディーズは監査を行う者ではなく、格付の過程で受領した情報の正確性及び有効性について常に独自の検証を行うことはできません。
この情報は、平成 26 年 1 月 31 日現在、当社が信頼できると考える情報源から作成しておりますが、その正確性・完全性を当社が保証するものではあり
ません。詳しくは上記ムーディーズ・ジャパン株式会社のホームページをご覧ください。
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フィッチ
・格付業者グループの呼称等について
格付業者グループの呼称:フィッチ・レーティングス(以下「フィッチ」といいます。)
グループ内の信用格付業者の名称及び登録番号:
フィッチ・レーティングス・ジャパン株式会社(金融庁長官(格付)第7号)
・信用格付を付与するために用いる方針及び方法の概要に関する情報の入手方法について
フィッチ・レーティングス・ジャパン株式会社のホームページ(http://www.fitchratings.co.jp)の「規制関連」セクションにある「格付方針等の概要」に掲載され
ております。
・信用格付の前提、意義及び限界について
フィッチの格付は、所定の格付基準・手法に基づく意見です。格付はそれ自体が事実を表すものではなく、正確又は不正確であると表現し得ません。信用
格付は、信用リスク以外のリスクを直接の対象とはせず、格付対象証券の市場価格の妥当性又は市場流動性について意見を述べるものではありません。
格付はリスクの相対的評価であるため、同一カテゴリーの格付が付与されたとしても、リスクの微妙な差異は必ずしも十分に反映されない場合もあります。
信用格付はデフォルトする蓋然性の相対的序列に関する意見であり、特定のデフォルト確率を予測する指標ではありません。
フィッチは、格付の付与・維持において、発行体等信頼に足ると判断する情報源から入手する事実情報に依拠しており、所定の格付方法に則り、かかる
情報に関する調査及び当該証券について又は当該法域において利用できる場合は独立した情報源による検証を、合理的な範囲で行いますが、格付に
関して依拠する全情報又はその使用結果に対する正確性、完全性、適時性が保証されるものではありません。ある情報が虚偽又は不当表示を含むこと
が判明した場合、当該情報に関連した格付は適切でない場合があります。また、格付は、現時点の事実の検証にもかかわらず、格付付与又は据置時に
予想されない将来の事象や状況に影響されることがあります。
信用格付の前提、意義及び限界の詳細にわたる説明については、フィッチの日本語ウェブサイト上の「格付及びその他の形態の意見に関する定義」をご
参照ください。
この情報は、平成 26 年 1 月 31 日現在、当社が信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、その正確性・完全性を当社が保証するものでは
ありません。詳しくは上記フィッチのホームページをご覧ください。
日本で求められるディスクレイマー
レポート本文中の格付記号の前に※印のある格付けは、金融商品取引法に基づく信用格付業者以外の格付業者が付与した格付け(無登録格付け)です。
無登録格付けについては「無登録格付に関する説明書」https://www.nomura.co.jp/retail/bond/noregistered.html をご参照ください。
当社で取り扱う商品等へのご投資には、各商品等に所定の手数料等(国内株式取引の場合は約定代金に対して最大 1.404%(税込み)(20 万円以下の
場合は、2,808 円(税込み))の売買手数料、投資信託の場合は銘柄ごとに設定された購入時手数料(換金時手数料)および運用管理費用(信託報酬)等
の諸経費、等)をご負担いただく場合があります。また、各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。商品ごとに手数料等およびリ
スクは異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面、上場有価証券等書面、目論見書、等をよくお読みください。
国内株式(国内 REIT、国内 ETF、国内 ETN を含む)の売買取引には、約定代金に対し最大 1.404%(税込み)(20 万円以下の場合は 2,808 円(税込み))
の売買手数料をいただきます。国内株式を相対取引(募集等を含む)によりご購入いただく場合は、購入対価のみお支払いいただきます。ただし、相対取
引による売買においても、お客様との合意に基づき、別途手数料をいただくことがあります。国内株式は株価の変動により損失が生じるおそれがあります。
国内 REIT は運用する不動産の価格や収益力の変動により損失が生じるおそれがあります。国内 ETF は連動する指数等の変動により損失が生じるお
それがあります。
外国株式の売買取引には、売買金額(現地約定金額に現地手数料と税金等を買いの場合には加え、売りの場合には差し引いた額)に対し最大 1.026%
(税込み)(売買代金が 75 万円以下の場合は最大 7,668 円(税込み))の国内売買手数料をいただきます。外国の金融商品市場での現地手数料や税金
等は国や地域により異なります。外国株式を相対取引(募集等を含む)によりご購入いただく場合は、購入対価のみお支払いいただきます。ただし、相対
取引による売買においても、お客様との合意に基づき、別途手数料をいただくことがあります。外国株式は株価の変動および為替相場の変動等により損
失が生じるおそれがあります。
信用取引には、売買手数料(約定代金に対し最大 1.404%(税込み)(20 万円以下の場合は 2,808 円(税込み)))、管理費および権利処理手数料をいた
だきます。加えて、買付の場合、買付代金に対する金利を、売付けの場合、売付け株券等に対する貸株料および品貸料をいただきます。委託保証金は、
売買代金の 30%以上で、かつ 30 万円以上の額が必要です。信用取引では、委託保証金の約 3.3 倍までのお取引を行うことができるため、株価の変動
により委託保証金の額を上回る損失が生じるおそれがあります。詳しくは、上場有価証券等書面、契約締結前交付書面、等をよくお読みください。
CBの売買取引には、約定代金に対し最大 1.08%(税込み)(4,320 円に満たない場合は 4,320 円(税込み))の売買手数料をいただきます。CBを相対取
引(募集等を含む)によりご購入いただく場合は、購入対価のみお支払いいただきます。ただし、相対取引による売買においても、お客様との合意に基づ
き、別途手数料をいただくことがあります。CBは転換もしくは新株予約権の行使対象株式の価格下落や金利変動等によるCB価格の下落により損失が
生じるおそれがあります。加えて、外貨建てCBは、為替相場の変動等により損失が生じるおそれがあります。
債券を募集・売出し等その他、当社との相対取引によってご購入いただく場合は、購入対価のみお支払いいただきます。債券の価格は市場の金利水準
の変化に対応して変動しますので、損失が生じるおそれがあります。また、発行者の経営・財務状況の変化及びそれらに関する外部評価の変化等により、
投資元本を割り込むことがあります。加えて、外貨建て債券は、為替相場の変動等により損失が生じるおそれがあります。
個人向け国債を募集によりご購入いただく場合は、購入対価のみお支払いいただきます。個人向け国債は発行から 1 年間、原則として中途換金はできま
せん。個人向け国債を中途換金する際、原則として次の算式によって算出される中途換金調整額が、売却される額面金額に経過利子を加えた金額より
差し引かれます。(変動 10 年:直前 2 回分の各利子(税引前)相当額×0.79685、固定 5 年、固定 3 年: 2 回分の各利子(税引前)相当額×0.79685)
物価連動国債を募集・売出等その他、当社との相対取引によって購入する場合は、購入対価のみをいただきます。当該商品の価格は市場の金利水準及
び全国消費者物価指数の変化に対応して変動しますので、損失が生じるおそれがあります。想定元金額は、全国消費者物価指数の発行時からの変化
率に応じて増減します。利金額は、各利払時の想定元金額に表面利率を乗じて算出します。償還額は、償還時点での想定元金額となりますが、平成 35
年度以降に償還するもの(第 17 回債以降)については、額面金額を下回りません。
投資信託のお申込み(一部の投資信託はご換金)にあたっては、お申込み金額に対して最大 5.4%(税込み)の購入時手数料(換金時手数料)をいただき
ます。また、換金時に直接ご負担いただく費用として、換金時の基準価額に対して最大 2.0%の信託財産留保額をご負担いただく場合があります。投資信
託の保有期間中に間接的にご負担いただく費用として、国内投資信託の場合には、信託財産の純資産総額に対する運用管理費用(信託報酬)(最大
5.4%(税込み・年率))のほか、運用成績に応じた成功報酬をご負担いただく場合があります。また、その他の費用を間接的にご負担いただく場合があり
ます。外国投資信託の場合も同様に、運用会社報酬等の名目で、保有期間中に間接的にご負担いただく費用があります。
投資信託は、主に国内外の株式や公社債等の値動きのある証券を投資対象とするため、当該資産の市場における取引価格の変動や為替の変動等によ
り基準価額が変動します。従って損失が生じるおそれがあります。投資信託は、個別の投資信託ごとに、ご負担いただく手数料等の費用やリスクの内容
や性質が異なります。また、上記記載の手数料等の費用の最大値は今後変更される場合がありますので、ご投資にあたっては目論見書や契約締結前交
付書面をよくお読みください。
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Nomura | 国際金融為替マンスリー
2016 年 1 月 21 日
金利スワップ取引、及びドル円ベーシス・スワップ取引(以下、金利スワップ取引等)にあたっては、所定の支払日における所定の「支払金額」のみお受払
いいただきます。金利スワップ取引等には担保を差入れていただく場合があり、取引額は担保の額を超える場合があります。担保の額は、個別取引によ
り異なりますので、担保の額及び取引の額の担保に対する比率を事前に示すことはできません。金利スワップ取引等は金利、通貨等の金融市場におけ
る相場その他の指標にかかる変動により、損失が生じるおそれがあります。また、上記の金融市場における相場変動により生じる損失が差入れていただ
いた担保の額を上回る場合があります。また追加で担保を差入れていただく必要が生じる場合があります。お客様と当社で締結する金利スワップ取引等
と「支払金利」(又は「受取金利」)以外の条件を同一とする反対取引を行った場合、当該金利スワップ取引等の「支払金利」(又は「受取金利」)と、当該反
対取引の「受取金利」(又は「支払金利」)とには差があります。商品毎にリスクは異なりますので、契約締結前交付書面やお客様向け資料をよくお読みく
ださい。
クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)取引を当社と相対でお取引いただく場合は手数料をいただきません。CDS 取引を行なうにあたっては、弊社との間
で合意した保証金等を担保として差し入れ又は預託していただく場合があり、取引額は保証金等の額を超える場合があります。保証金等の額は信用度
に応じて相対で決定されるため、当該保証金等の額、及び、取引額の当該保証金等の額に対する比率をあらかじめ表示することはできません。CDS 取
引は参照組織の一部又は全部の信用状況の変化や、あるいは市場金利の変化によって市場価値が変動し、当該保証金等の額を超えて損失が生じるお
それがあります。信用事由が発生した場合にスワップの買い手が受取る金額は、信用事由が発生するまでに支払う金額の総額を下回る場合があります。
また、スワップの売り手が信用事由が発生した際に支払う金額は、信用事由が発生するまでに受取った金額の総額を上回る可能性があります。他の条
件が同じ場合に、スワップの売りの場合に受取る金額と買いの場合に支払う金額には差があります。 CDS 取引は、原則として、金融商品取引業者や、あ
るいは適格機関投資家等の専門的な知識を有するお客様に限定してお取り扱いしています。
有価証券や金銭のお預かりについては料金をいただきません。証券保管振替機構を通じて他の証券会社へ株式等を移管する場合には、数量に応じて、
移管する銘柄ごとに 10,800 円(税込み)を上限額として移管手数料をいただきます。
野村證券株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商) 第 142 号
加入協会/日本証券業協会、一般社団法人 日本投資顧問業協会、一般社団法人 金融先物取引業協会、一般社団法人 第二種金融商品取引業協会
野村グループは法令順守に関する方針および手続き(利益相反、チャイニーズ・ウォール、守秘義務に関する方針を含むがそれに限定されない)やチャイ
ニーズ・ウォールの維持・管理、社員教育を通じてリサーチ資料の作成に関わる相反を管理しています。
ご要望に応じて追加情報を提供いたします。ディスクロージャー情報については下記のサイトをご参照ください。
http://go.nomuranow.com/research/globalresearchportal/pages/disclosures/disclosures.aspx
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