資料(PDF 232KB)

2015/4/15
松本・長野・飯田支店
【問い合わせ先】松本支店
住所:松本市中央 2-1-27
TEL:0263-33-2180
URL:http://www.tdb.co.jp/
特別企画:長野県内貨物自動車運送業者の倒産動向調査
2014 年度は 6 件に急増、過去最多と並ぶ
破産申請準備中も3件判明、厳しい経営環境続く
はじめに
全国的に倒産減少傾向が長期化している。既報の通り、2014 年度(2014 年4月~2015 年3月)
に県内では 85 件の倒産(法的整理、負債 1000 万円以上)が発生したが、3年連続の減少となる
とともに、比較可能な 2005 年度(同年度に倒産集計の対象を法的整理に限定)以降の最低を2年
続けて更新した。前年度比では 12.4%減、この間のピークである 2009 年度の 184 件からは 53.8%
の減少である。
業種別にみても、近年減少傾向をたどったり、2014 年度の倒産が 2013 年度を下回ったりしてい
るケースが多いが、2011~2013 年度まで3年連続して0件だった「貨物自動車運送」が一転して
6件に増加しているのが目を引く。一時に比べれば荷動きが改善し、2014 年半ばからは燃料価格
も低下したが、長年厳しい経営環境に晒され体力を失い、ここに来て倒産処理を行わざるを得な
くなるケースが相次いで表面化している。
帝国データバンクでは今回、年度ベースの県内倒産集計の中から「貨物自動車運送」に焦点を
当て、2014 年度の倒産発生状況及び 2005 年度以降の 10 年間の推移を改めて振り返ってみた。
調査結果(要旨)
■2014 年度の倒産は6件、2010 年度と並び過去最多
2014 年度、
「貨物自動車運送」を主業とする企業の倒産は6件発生した。例年、「貨物自
動車運送」の倒産はそれほど多くなく、2005 年度以降では 2010 年度の6件が最多だった
が、2014 年度は 2010 年度と肩を並べた。2011 年度~2013 年度は3年連続して0件だった
ため、2014 年度は4年ぶりの発生となる。
■2014 年度の6件のうち負債「1億円以上」は3件
2014 年度の倒産6件の負債総額は 12 億 4500 万円。1件平均では約2億 700 万円だが、
6件中3件が負債「1000 万円以上 5000 万円未満」に該当するなど小規模業者も多い。な
お、2014 年度は負債「5億円以上」に含まれる倒産が1件発生している(
「5億円以上」
は過去 10 年間で3件だけ)。
■地区別では「中信」が4件で最多、過去 10 年間では「南信」が最多
地区別にみると、
「中信」が4件、「東信」2件。2005 年度~2014 年の 10 年間では、「南
信」が9件で最も多く、以下「中信」が8件、
「北信」と「東信」が各5件だった。
©TEIKOKU DATABANK,LTD
1
2015/4/15
特別企画:長野県内貨物自動車運送業者の倒産動向調査
1.全業種では 2014 年度も倒産減少傾向に変化はなかったが
2014 年度、県内で法的整理により倒産した「貨物自動車運送」業者は6件だった。以前より、
倒産集計の業種別分類で「貨物自動車運送」に該当する企業はそれほど多くない。リーマン・シ
ョックの影響を受け倒産全体が大幅に増加した 2008 年度は3件、その後 2009 年度2件、2010 年
度6件と続き、倒産集計の対象を法的整理に限定した 2005 年度以降ではこの 2010 年度の6件が
ピークとなっていた。
2011 年度以降は、中小企業金融円滑化法を核とした金融機関の支援を背景に倒産が急減。この
時期は、全業種で減少傾向をたどっていたが、
「貨物自動車運送」は 2011 年度、2012 年度、2013
年度と3年連続で倒産が発生せず、極端な減少を示していた。
こうした状況が急変したのが 2014 年度。
「貨物自動車運送」の倒産が4年ぶりに発生するとと
もに、過去最多と並ぶ6件に達したのである。全体(全業種)では 2014 年度も倒産減少傾向に変
化がなかっただけに、「貨物自動車運送」の急増は目立っている。2014 年度は負債も 12 億 4500 万
円と 10 億円を突破し、2006 年度の
13 億 2700 万円に次いで過去2番目
の大きさとなった。
なお、帝国データバンクの倒産集
計は事業停止時点ではなく、破産な
ど法的整理の申請が確認できた段階
でカウントしている。2014 年度に集
計された6件とは別に、年度中に事
業を停止し、破産申請の準備に入っ
ている企業が3件、また同じく年度
中に事業を停止し、事後処理を弁護
士に一任したものの、申請費用・配
当資産不足のため任意整理に終わっ
た企業が1件明らかとなっている。
2.小規模倒産が中心ながら負債「5億円以上」も発生した 2014 年度
2014 年度の「貨物自動車運送」の倒産
負債別内訳
6件を負債別にすると、「1000 万円以上
5000 万円未満」が3件で最も多く、「1億
円以上5億円未満」が2件、「5億円以
上」が1件だった。6件の平均負債額は
2億 700 万円。負債が最も大きかったの
は、2015 年2月5日に自己破産を申請し
た(株)ケーサービス(安曇野市、負債
約8億 7600 万円)
。同社は 100 人近い従
業員を雇用し、年収入高も 10 億円以上を
1000万円〜 5000万円〜
5000万円
1億円
2005年度
2006年度
2007年度
2008年度
2009年度
2010年度
2011年度
2012年度
2013年度
2014年度
合 計
構成比
(%)
1
0
0
2
0
2
0
0
0
3
8
29.6
0
0
2
1
2
1
0
0
0
0
6
22.2
1億円〜
5億円
3
1
2
0
0
2
0
0
0
2
10
37.0
5億円以上
0
1
0
0
0
1
0
0
0
1
3
11.1
合計
4
2
4
3
2
6
0
0
0
6
27
100.0
©TEIKOKU DATABANK,LTD
2
2015/4/15
特別企画:長野県内貨物自動車運送業者の倒産動向調査
確保していたが、2013 年8月に代表らが ETC を不正に利用した疑いで逮捕され信用が失墜。同月
下旬までには事業停止を余儀なくされ、事後処理を弁護士に一任、自己破産申請の準備に入って
いた。申請したのが今年2月だったため、2014 年度の倒産として集計している。
なお、過去 10 年間では、負債「1億円以上5億円未満」が 10 件で最多、以下「1000 万円以上
5000 万円未満」8件、
「5000 万円以上1億円未満」6件と続き、
「5億円以上」は(株)ケーサー
ビスを含め3件だけだった。
3.2014 年度は「中信」4件、
「東信」2件
2014 年度の6件を地区別にみると、
「中信」が4件、
「東信」が2件。
「北信」と「南信」では発
生がなかった。「中信」が全体の3分の2を占めているが、前記の破産申請準備中企業の3件中2
件、また弁護士一任後任意整
理となった1件も「中信」で
地区別内訳
北 信
ある。
なお、10 年間のトータル
2005年度
では、「南信」が9件で最も
2006年度
多く、以下「中信」8件、
「北
2007年度
信」と「東信」が各5件。市
2008年度
2009年度
郡別では、「下伊那郡」の5
2010年度
件が最多となり、「長野市」
2011年度
「松本市」「上田市」が各3
件で続いている。
東 信
中 信
南 信
負債 件数 負債 件数 負債 件数 負債
件数 (百万円)
(百万円)
(百万円)
(百万円)
2012年度
2013年度
2014年度
合 計
構成比
(%)
1
0
2
0
1
1
0
0
0
0
5
18.5
28
0
182
0
81
170
0
0
0
0
461
0
0
1
0
0
2
0
0
0
2
5
9.4 18.5
0
0
92
0
0
70
0
0
0
130
292
1
2
0
0
0
1
0
0
0
4
8
6.0 29.6
290
1,327
0
0
0
569
0
0
0
1,115
3,301
合 計
件数
負債
(百万円)
2
0
1
3
1
2
0
0
0
0
9
299
0
180
137
55
180
0
0
0
0
851
4
2
4
3
2
6
0
0
0
6
27
617
1,327
454
137
136
989
0
0
0
1,245
4,905
67.3 33.3
17.3
100.0
100.0
4.まとめ
2014 年夏場以降に下降に転じた燃料価格。燃料費は貨物自動車運送業者にとってコストの中核
に位置するものだけに、低価格化がプラス作用をもたらしたことは間違いない。にもかかわらず、
2014 年度は倒産が急増。中には、2014 年度以前に事業停止に追い込まれていた企業もあるが、逆
に年度中に事業を停止し、破産申請の準備に入った倒産集計予備軍的な企業も複数存在しており、
高水準だったことに変わりはない。
帝国データバンクが毎月行っている TDB 景気動向調査では、業界各社から厳しい声が寄せられ
ている。「仕事は(選ばなければ)相応にある」とする声は聞かれるものの、「大型車の需要がま
ったくない」「他県の同業者から『長野県の仕事はしたくない』と言われる」「人手不足やドライ
バーの高齢化がネックとなっている」「荷動きの改善が運賃の改善につながっていない」「ドライ
バーの確保に加え、高速道路料金の実質値上げも打撃」などと厳しさを訴える指摘は後を絶たな
い。燃料コストの低下にしても、これまで長期的に高水準状態に置かれてきたうえ、他にも厳し
い要因が山積しているため、プラス効果を十分吸収できなかったとの見方もできる。なお、燃料
価格は3月に上昇に転じるなど変化の兆しをみせており、注視していく必要がある。
©TEIKOKU DATABANK,LTD
3
2015/4/15
特別企画:長野県内貨物自動車運送業者の倒産動向調査
貨物自動車運送業者の場合、景気回復が進み、得意先の業績改善に伴い荷動き、さらに運賃が
改善するといった循環が確立しないと、なかなか景況感の上昇にはつながらない。人件費などの
コストアップ要因も多く、今後得意先企業の業績回復はもちろん、業績の回復した優良得意先を
安定的に確保できるかどうかもポイントになると言えよう。
当レポートの著作権は株式会社帝国データバンクに帰属します。
当レポートはプレスリリース用資料として作成しております。報道目的以外の利用につきましては、著作権法
の範囲内でご利用いただき、私的利用を超えた複製および転載を固く禁じます。
【内容に関する問い合わせ先】
株式会社帝国データバンク 松本支店 担当:奥原
TEL 0263-33-2180
FAX 0263-35-7763
©TEIKOKU DATABANK,LTD
4