昨今のトレンド:有形資産から無形資産へ

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2015 年 4 月 20 日
1.2.技術革新という名の経済行動(続き)
昨今のトレンド:有形資産から無形資産へ
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特許制度は必要か?不必要悪か?
「特許制度」は政府が作り出す独占:独占の代名詞
標準的な経済学の教科書的説明
独占企業の弊害:
独占保護も大事:
過少供給、Managerial Slack, 消極的 R&D(innovation)
競争制限的取引、Rent Seeking, etc.
新規企業による技術革新インセンティブを促進
独占利潤を獲得するには R&D(研究開発)大事 ⇒ 新規企業 R&D 積極的
一端独占企業になると R&D に消極的: ライバルの R&D を阻止へ
ex. 周辺特許を過剰に開発
シュンペーター的競争:創造的破壊
Joseph Alois Schumpeter (1883 - 1950)
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今日の視点:「反」知的独占
by David Levine and Michele Boldrin(NTT, 2008)
歴史を通じて特許制度はどの分野においても経済成長に貢献してない:特許制度は「不必要悪」だ
植物特許法(US):1930~
1970 年:植物種保護法強化(無性のみならず有性生殖植物も保護)
1980~1987 年:さらに強化(バイオテクの産物も保護対象)
その効果は↓
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ホイットニーから学ぶこと:二つのタイプの技術革新
綿繰り機タイプ:
模倣技術つくりやすい
特許保護が重要
防衛特許の収集も大事
規格化マスケット銃タイプ:
デファクトスタンダード
部品の補完性
模造品に価値なし
防衛特許あまり重要でない
特許保護の役割限定的
『「反」知的独占』が意味すること:
歴史的には後者のタイプの技術進歩が経済成長に寄与してきた
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経済成長をうながす技術進歩のパターン:
「ネットワーク外部性」をつうじた De Facto Standard 化
例:マイクロソフト分割
マイクロソフト:コンピューター関連業界の独占企業
OS:
Windows
Application Software :
Office
強い補完財:両方そろって初めて価値が生まれる(cf. 代替財)
Bundling(バンドリング)
ネットワーク外部性
なぜみんなマイクロソフトを使う?「みんながつかってるから」
ex. Net Auction (EBay, Yahoo!), Online Shopping, e-Commerce,
Mobilephone, Credit Cards ……
さらなる技術革新、新製品(ソフトウエア)開発に拍車
利用者数がクリティカルマスを超えるとテイクオフ
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ネットワーク外部性におけるマイクロソフトの競争制限的戦略:
ライバルOS企業参入を阻止
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アメリカ司法省:マイクロソフトは独占力を行使しすぎ
独占力を制限したい
マイクロソフト分割案:「OSとソフトを別会社に」(しかし不成立)
経済学の視点
分割することで独占の弊害が改善されるといいきれるか?
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関連する別の問題:知財取引ビジネス
大学 TLO(Technology Licencing Organization)、利用特許、未公開特許
様々な知財取引仲介システムの試み:
Old Fashions: Patent Broker, Patent Pool
New Trends:
Patent Troll, Online Marketplace (Yet2, Tynax)
Live Auction (Ocean Tomo), Unit-Lisence Auction (IPXI)
ネットワーク外部性: Ocean Tomo の失敗
強い補完性:
特許を複数組み合わせないと価値が生まれない
Bluetooth :
MPEG-4 :
IBM, Intel, etc.
Apple, AT&T, etc.
⇒ 「パテントプール」の役割重要
「パテントあるいはその利用許可ライセンスを個別に売るより
複数のパテントをバンドリング(パッケージ化)して
ライセンス販売した方が技術がより普及できるはずだ」
cf. 大学TLO苦戦:特許(ライセンス)を個別に扱っている
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マイクロソフト分割とそっくり
しかし見解は真逆
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パッケージ(OS+SOFT, あるいはパテントA+B)を
独占的に販売するケース
世間の見解:独占力行使しすぎ not recommend
知財利用活性 recommend
独占理論によって経済分析しよう!
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パテント販売の仕方について
パテントそのものを売却:全ての権利が移転
ライセンス(パテント利用権)を複数単位販売:
ライセンス料(価格)の設定
以下、ライセンス販売とする:
いくらでも注文に応じる(数量制限なし)
ライセンスの生産コストゼロ
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ライセンス A、ライセンス B に対する需要
「完全補完財」の仮定:
cf. 完全代替:
不完全代替:
不完全補完:
両ライセンスそろって初めて価値が生まれる
顧客は「A+B(パッケージ)」を購入するか
どちらも購入しないか、を決める
パッケージの購入量も決める
同質財
類似品(紅茶とコーヒー)
「A 単体の価値」+「B 単体の価値」<「A+B の価値」
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需要関数
x  D ( p ) 、 p  pA  pB
パッケージ A+B に対して p 円以上の価値がある
人たちの需要量の総和
例:私は1パッケージ p 円ならば、3パッケージほしい
(4パッケージ目に対する willingness to pay は p 円未満)
単純化のため、需要関数を
D( p)  1  p
とする:右下がりの需要曲線
「パッケージ単価 p 円の時、総需要量は D ( p )  1  p 単位」
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需要曲線: D ( p )  1  p
「逆」需要曲線: P ( x )  1  x
パッケージ生産コストゼロより、数量1までフルに供給される場合に
もっとも経済厚生が高まることになる
独占(パテントプール)の時、あるいは寡占(パテントプールなし)の時
フルに供給されるか、あるいはどの程度過少になるのか
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独占利潤: pD ( p )  p (1  p )
p はパッケージの価格
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独占利潤最大化: max pD( p)  max p(1  p)
p
p
パッケージ価格を限界的に微小アップした時の収入変化分:
dpD ( p )
 D( p )  pD( p )  1  2 p
dp
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利潤最大化を特徴付ける「一階条件(First-Order Condition)」
dpD ( p )
 0 ∴ 1 2 p  0
dp
1
p m  (  pA  pB )
よって、 独占価格は
2
1
xm  1  pm 
独占供給量は
2
過少供給!独占には弊害がある
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価格  円アップ
⇒
収入アップ:
一律  円追加収入
収入ダウン:
価格アップで需要ダウン
どっちが大きい?
収入変化分 D ( p )  D ( p )
⇒
D ( p )  (1  p ) 
D ( p )  
 (1  p )      (2  p ) がゼロになるまで価格アップ!
1
1
m
m
p  p  、x  x 
2
2
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OS と SOFT, あるいはパテントAとB、を
別々に的に販売するケース(寡占)
世間の見解:
競争促進、Recommend
知財価値見いだせない not recommend
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寡占状態:
複数の企業(OS会社VSソフト会社、A社VSB社)が
戦略的相互依存(競争?共謀?)
ゲーム理論を使って理論分析
Question: もしパテントプールがない場合には
過少供給は改善されるのか?さらに過少になるか?
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パテントプールがないケース:ゲーム理論の応用
Hugo Sonnenschein, 1968, “The Dual of Duopoly Is Complementary Monopoly: or, Two of Cournot's Theories Are One”
Journal of Political Economy
Lerner, Josh, and Jean Tirole. 2004. "Efficient Patent Pools." American Economic Review
企業 A、企業 B は、各自のライセンス価格を独自に設定する
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個別企業による利潤最大化
相手企業の価格に対する「予想」をたてる
価格予想を所与として、個別に利潤最大化
企業 A: max p A D( p A  pB ) :予想価格 pB
pA
企業 B: max pB D( p A  pB ) :予想価格 pA
pB
企業 A に着目しよう!(企業 B についても全く同様に分析できる)
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ライセンス A の価格を限界的に微小アップした時の収入変化分:
dp A D ( p A  pB )
 D ( p A  pB )  p A D( p A  pB )
dp A
 1  pB  2 pA
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企業 A の利潤最大化を特徴付ける「一階条件」
dp A D ( p A  pB )
 1  pB  2 p A  0
dp A
1  pB
∴ pA 
2
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企業 A の最適反応関数
1  pB
RA ( p B )  p A 
2
相手のライセンス価格に対する予想 pB が高くなると
自社のライセンス価格を下げるのがベスト
相手の pB 高いと予想⇒需要低めに予想⇒価格下げないと売れない
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一方、企業 B の価格決定の仕方
企業 A と全く同様に最適反応関数が導かれる
1  pA
RB ( p A )  pB 
2
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二つの最適反応関数
1  pB
RA ( p B )  p A 
2
1  pA
RB ( p A )  pB 
2
戦略的相互依存
相手の価格に対する予想が決まらないと自身の価格が確定しない
どのように予想が決まるのか?
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ナッシュ均衡
John Nash (1928 ~)
「相手の行動に対する予想が
実際に観察される行動と無矛盾であること!」
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ナッシュ均衡
相手の価格に対する予想が、正しく、合理的に、たてられている状況を考える
予想が実際の価格と違っていると、訂正が必要になる。
訂正の余地のない状況を考えよ
∴
pA 
1  pB
1  pA
と pB 
が同時に成立する価格ベクトル ( p A , pB )
2
2
つまり
最適反応曲線の交点がパテントプールのない場合に実現
1
p A  pB 
3
これがナッシュ均衡!!
30
パテントプールのある場合には
p A  pB 
1
1
、あるいは、 p A  pB 
2
4
パテントプールがない場合の方が、価格が高く供給も少ない
パテントプールの時よりも(さらに)過少供給による弊害大
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なぜ、パテントプールがない場合の方が
パテントプールがある場合よりも高価格、過少供給(より悪い状態)になるのか?
パテントプールがライセンス A 価格を  円アップすると…
D( pA  pB )  分利潤アップ
⇒
( pA  pB ) D( pA  pB )  分利潤ダウン
企業 A が独自にライセンス A 価格を  円アップすると…
D( pA  pB )  分利潤アップ:パテントプールと同じ
⇒
pA D( pA  pB )  分利潤ダウン
pB D( pA  pB )  分の損失は相手企業 B の負担になる!
⇒
⇒
⇒
ライセンス価格をもっと上げよう
企業 B も同様に価格アップ
パテントプールの時より利潤も社会的便益もダウン
∴
パテントプールは利益の見込まれるビジネスチャンス!
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マイクロソフト分割案
パテント A を OS (Windows), パテント B を Soft (Office)
に置き換えれば同じモデル分析が当てはまる
「マイクロソフト分割(パテントプールなしに対応)は
分割しない場合(パテントプール有に対応)よりも
マイクロソフトの収益のみならず社会的便益も下がる」
「世間の予想と真逆の見解」が経済学の理論的知見として得られる
さらに経済学者が検討するべき論点:
このモデルははたして適切か
マイクロソフトにあってパテントプールにない要因は何か
......
(第一章終わり)