J08-8033 直塚俊吾 青少年のスマートフォン利用における問題

青少年のインターネット利用における問題
J08-8033 直塚 俊吾
1.はじめに
近年、インターネットの利用者数及び人口普及率は
若年層では携帯電話の利用時間がパソコンに比べ長く、
利用の際の主なコミュニケーション手段の利用時間と
おおむね増加傾向にあり、利用者数は 10,044 万人、
して、若年層においてソーシャルメディアが増加傾向
人口普及率は 82.8%と高まっている。情報端末機器と
にあり、
「スマートフォン」の普及と共に「ソーシャル
しては、パソコンと従来の携帯電話(以降、フィーチ
メディア」の利用が高まっている。
ャーフォン)だけではなく、タブレット PC、スマー
また、インターネット利用においてフィルタリング
トフォンと小型で高性能なモバイル情報端末機器が出
ソフト・サービスの利用状況は増加傾向にある。出会
現している。それに伴い、利用される情報機器の利用
い系サイト及びコミュニティサイトに起因する被害児
割合も大きく変わり、ソーシャルメディアとして、多
童生徒等の対比では、出会い系サイト起因は減少傾向
様な SNS(ソーシャルメディアサービス)と動画共有
がみられ、コミュニティサイト起因は増加している。
サービスなどの利用も高まっている。
これらの情報端末機器の普及、ソーシャルメディア
主な SNS(Facebook、Google+、GREE、LINE、
mixi、Mobage、Twitter の7つ)を対象に、いずれか
の出現により、近年では不適切な投稿内容によって発
一つでも利用している人の割合は全体で 57.1%であ
生するトラブル、いわゆる「炎上」問題が注目されて
り、40 代以下では過半数を超える結果であった。また
きている。そのため、ソーシャルメディア利用におけ
SNS 毎では LINE が最も利用率が高く 40 代以下の年
るリテラシー教育の必要性が高まっている。
代では利用率が 30 ポイント以上増加している。SNS
本研究ではインターネット利用の内容や実際のイン
ターネットトラブルの事例から、ソーシャルメディア
利用におけるリテラシー教育の重要性にういて論じて
いく。
の利用率は増加傾向にあり幅広い年代で利用が高まっ
ている。
SNS は実名登録を推奨する Facebook と、推奨して
いないサービスがある。日本は、他国に比べて
本研究では、携帯電話はフィーチャーフォンとスマ
Facebook の利用率が低く、各国共通で「実名利用」
ートフォン双方を含み、従来型の携帯電話はフィーチ
が高いなか「匿名利用」が高い。一方で、Twitter の
ャーフォンと定義する。
利用者では「匿名利用」が 7 割を超え、他国に比べ多
い。SNS においての実名公開への抵抗感は、
「やや抵
2.インターネットの利用動向
抗感がある」と「抵抗感がある」の合計が日本は 6 割
インターネットの利用者数及び人口普及率は増加傾
を超えており、SNS の利用率の高い 10-20 代におい
向にある。端末別インターネット利用率では、
「自宅の
てもこの傾向がみられ、匿名性を好む傾向があるとい
パソコン」が最も多く 58.4%、次いで「スマートフォ
える。
ン」42.4%、
「自宅以外のパソコン」27.9%、
「フィー
SNS の利用率の高さ、匿名性を好む傾向があるなか
チャーフォン」24.5%であり、
「スマートフォン」の利
で、SNS における本人が特定される認識については、
用が高まっている。年代別の主なモバイル機器の利用
6 割が特定される可能性を認識している。匿名を起因
率では、
「スマートフォン」は全体が 52.8%で 20 代が
とする書き込み意向では、
「あてはまるものはない」が
最も高く 87.9%、
「フィーチャーフォン」
は全体が 51%
最も多く 6 割で、匿名起因により社会の一般常識やモ
で 20 代は 20.2%と若年層で「スマートフォン」の利
ラルに反する行為の露呈、つまり不適切な内容の書き
用率が顕著となっている。
込み意向が低く、匿名利用による関係性は見受けられ
機器別のインターネット平均利用時間においても、
なかった。
また、SNS における他者に見られることへの認識に
ついて日本は現実・インターネットでの友人関係から
3.SNS、動画共有サービスなどでのトラブル
青少年がよく利用されるソーシャルメディアを代表
の認識が各国同様高いが、
「職場の上司・学校の先生」、
的な SNS、動画共有サービスなどにわけ、それらに関
「元同級生」
、
「家族」などにおいては他国と比べ低い。
連するトラブルをあげる。
SNS におけるコミュニケーションの内容については、
3-1.SNS におけるトラブル事例
「友人・知人・恋人との雑談・連絡」は他国と差異は
事例1.不適切な投稿が学校に見つかり退学処分
ないが、家族との連絡・話題、社会や仕事、健康に関
実名で公開していた SNS に、恋人とキスする様子の
する話題は他国に比べて低く、日本の SNS 利用の特
画像などがあり、それを見つけた学校側が自主退学を
徴として友人や仲間内などのプライベートを意識した
求めた。女性は応じず退学処分。女性は退学処分前に
利用がされている。
提出した反省文はこう記していた。
「日常を赤裸々に公
ソーシャルメディア利用におけるリテラシー教育で
開し、コンピューターリテラシーすら持ち合わせてい
は、受講経験者が日本は「ある」が2割程と他国に比
ない保育者に子どもを預けたくない。経営者でも同じ
べ低いが「スマートフォン保有者」だと3割程になる。
で、そんな人間を雇おうとも思わない。友達や家族で
若年層に限定すると、すべての国において利用者全体
も同じ。本当にバカなことをしてきたと反省していま
よりも「ある」の割合は高く、若年層を中心にソーシ
す。
」
ャルメディア利用におけるリテラシー教育が行われて
おり、特に「スマートフォン保有者」は行われている
とわかる。
小中高の児童・青少年の情報通信端末の利用状況は、
3-2.動画共有サービス等におけるトラブル
事例
事例2.男性が東京都条例違反の疑いで逮捕
音楽家の動画アップロード者が、18歳未満である
「フィーチャーフォン・PHS」の利用率が約3割以上
ことを知りながら17歳少女とみだらな行為を氏、東
で、
「スマートフォン」は学年が上がるにつれて利用率
京都青少年健全育成条例違反の疑いで逮捕。
が伸び、高校生では 68.3%である。また小学校入学前
に子どもが情報通信端末を利用開始する割合は、ここ
3年で大きく上昇しており、初めて情報通信端末に接
触する年齢は早期化している。
4.結論
不適切な投稿内容によるインターネットトラブルは、
SNS 利用において実名・匿名に関係なく発生するとい
子どもが ICT を利活用する能力を身につける為に
える。第3章の事例から、不適切な投稿内容が犯罪か
は、
「家庭での適切な指導を行う」が6割以上と最も多
どうか、SNS 上での投稿内容の公開範囲に関わらず、
く、実際の指導状況については家庭において「日常的
道徳的な立場から控えるべき言動であったといえる。
に行っている」と「時々行っている」の合計が約5割
ソーシャルメディア利用のリテラシー教育は、親の世
である。
代の ICT リテラシー、家庭教育の重要性が大いにある
保護者は一定の問題意識の下、子どもの ICT 利活用
といえる。今後の課題として、著作権や肖像権にまつ
のあり方に関わろうとしているといえるが、端末の取
わるトラブルについても研究の余地がある。
り扱い方法など技術的内容については、学年が上がる
5.参考文献
につれて「子どもの方が詳しいと思う」の割合が高ま
・総務省 情報通信白書平成26年版 HTML 版
っている。インターネットの使用に係るリスク、安全
・総務省 通信利用動向調査 平成25年調査
確保上の課題等についても同様であり、子どもだけで
・IICP 情報通信政策研究所 高校生のスマートフォ
なく親の世代の ICT リテラシーにも対応していく必
ン・アプリ利用とネット依存傾向に関する調査
要がある。
・IICP 情報通信政策研究所 子どもの ICT 利活用能力
に係る保護者の意識に関する調査