民間企業におけるマイナンバー制度対応の3ステップ

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編集・発行 三井住友銀行グループ・SMBCコンサルティング株式会社
2015.4.6 第 1465 号
SMBC経営懇話会
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【中小企業とマイナンバー】
民間企業におけるマイナンバー制度対応の3ステップ
牛島総合法律事務所
弁護士 影島 広泰
1. 民間企業におけるマイナンバー制度への対応は、(1)個人番号の取得(本人確認)、(2)個人番号の保管
(安全管理措置)、(3)行政機関等への提出、の 3 ステップです。
2. 個人番号の流出は、企業の評判に大きなダメージを与える恐れがあり、ガイドラインに則った情報管理体
制の構築が必要です。
1.民間企業にとってのマイナンバー制度とは
2016 年 1 月から実施される「社会保障・税番号制度」(マイナンバー制度)とは、主として社会保障と税の行政手続にお
いて 1 人に 1 つ付番された個人番号を利用することで、行政機関が名寄せして情報を管理できるようにし、社会保障の公
平な支給や正確な所得把握等を行うためのものです。本制度の実施に伴い、民間企業は、社会保険や税に関して行政
機関等に提出する書類に、従業員・取引先・株主等の個人番号を記載して提出することが義務付けられます。したがっ
て、これらの者から個人番号を(1)取得し、(2)保管し、(3)行政機関等に提出する書類に記載しなければなりません。
(2)個人番号の保管
(1)個人番号の取得
(3)行政機関等への
(安全管理措置)
(本人確認)
提出
2.民間企業におけるマイナンバー制度対応の 3 ステップ
(1)ステップ 1:個人番号の取得(本人確認)の実務
個人番号の提供を受ける際には必ず「本人確認」を行う必要があります(詳細は 2015 年 1 月 5 日発行「民間企業
におけるマイナンバー法への実務対応」に掲載)。
番号確認
①
②
身元(実在)確認(※)
個人番号カード
通知カード又は住民票の写し
運転免許証やパスポート等
※身元(実在)確認については、主として以下の 3 つの場合には不要とされています。
ア.会社がプレ印字した書類(例:扶養控除等申告書)で番号の提供を受ける場合
イ.入社時に運転免許証等で本人確認している従業員から、対面等で提供を受ける場合
ウ.同一の者から継続して対面で提供を受ける場合(例:2 年目以降の扶養控除等申告書)
(2)ステップ 2:個人番号の保管(安全管理措置)の実務
マイナンバー制度においては、当初より個人番号が流出した場合のリスクが心配されてきました。万
一流出してしまった場合には、その企業の評判に大きなダメージを与えかねません。加えて、発覚時に
特定個人情報委員会が公表しているガイドラインに沿った体制が構築されていない場合、社会的な非難
がさらに大きくなることが危惧されます。情報管理体制の整備は急務といえます。
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情報管理体制を構築するポイントは、以下の 5 点です。
①基本方針および取扱規程等の策定
特定個人情報(個人番号をその内容に含む個人情報)は慎重な取り扱いを要するものであり、役員
を含めた従業員に会社の考えを徹底する観点から、基本方針の策定は重要です。また、具体的な手順
につき、取扱規程等を作成することが必要です。
②書類・データの削除・廃棄
特定個人情報は、行政機関等に個人番号を記載した書面を提出する事務を処理するために必要な場
合にのみ、収集・保管できます。したがって、たとえば退職者の個人番号は、そのような事務を行う
必要がなくなり、書類の法定保存期間が経過した時点で、削除または廃棄しなければなりません。
③委託の取り扱い
特定個人情報の取り扱いを委託することは可能です。たとえば、会計事務所や社労士事務所等に帳
票の作成を委託したり、子会社等に人事情報の管理を委託することができます。ただし、委託先にお
いて、委託者自らが果たすべき必要な安全管理措置が講じられているかを、委託者があらかじめ確認
しなければならないので、注意が必要です。
加えて、再委託・再々委託等については、最初の委託者の許諾が必要とされています。
④物理的な安全管理措置
以下を明確にし、物理的な安全管理措置を講じなければなりません。
「管理区域」=特定個人情報ファイルを取り扱う情報システムを管理する区域(例:サーバ室)
「取扱区域」=特定個人情報等を取り扱う事務を実施する区域(例:人事や経理のオフィス)
…壁または間仕切り等の設置及び座席配置の工夫等も一つの方法です
⑤3 種類の「記録」の義務化
以下の 3 種類の記録が必要です。
ア.取扱規程等に基づく運用状況を確認するため、システムログまたは利用実績を記録する
イ.特定個人情報ファイルの取扱状況を確認するための手段を整備する
ウ.削除または廃棄した記録を保存する
(3)ステップ 3:行政機関等への提出の実務
【個人番号の記載が義務付けられる帳票例と開始時期】
対象者
従業員
扶養親族等
個人番号の記載が必要となる帳票の代表例
税
社会保険
帳票への記載開始時期
源泉徴収票、扶養控除等(異動)申告書
2016 年分の給与所得等から
雇用保険の書類
2016 年 1 月 1 日から
健康保険・厚生年金保険の書類
2017 年 1 月 1 日から
2016 年分の支払いから
2016 年分の支払いから
(既存の株主について 3 年間猶予)
取引先
税
報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
不動産の使用料等の支払調書
株主
税
配当、剰余金の分配及び基金利息の支払
調書
3.法人番号の活用
以上の個人番号とは異なり、法人番号には取り扱いに関する規制はなく、国税庁のウェブサイトで法人番号が公開
され、検索・データダウンロードができるようになります。
民間企業においても、システム統合の際の「取引先マスタ」の ID として利用したり、会社全体・グループ全体で共通
の ID として名寄せを行い、販売額や仕入額を把握し、債権管理・与信枠管理に利用したり、仕入れ値引きへの有力
な交渉材料として利用するなど、積極的な利用が考えられます。
<関連トピックス>
【2016 年 1 月の実施に向けての留意点】 民間企業におけるマイナンバー法への実務対応
【本稿に関するご照会窓口】 SMBCコンサルティング・経営相談部 TEL:0120-7109-49
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