ECHONET Lite 規格と エコーネットコンソーシアムの取組み - ITU-AJ

ECHONET Lite 規格と
エコーネットコンソーシアムの取組み
こ だま
一般社団法人 エコーネットコンソーシアム 専務理事
ひさし
児玉 久
1.はじめに
2.エコーネットコンソーシアムのこれまでの取組み
サスティナブルな社会を実現するうえで、エネルギー消
ECHONET Liteは、スマートハウスとHEMSを支える、
費が増加し続けている家庭部門での取組みは重要である。
日本発のオープンな通信プロトコルである。従来は、ネッ
また、近年では、省エネ家電のみならず、太陽光発電シス
トワークで機器をどうつなぐかという、手段系の議論が先
テム、燃料電池システム、蓄電池等の創エネルギー機器や
行していたが、アプリケーションやニーズに基づいた規格
蓄エネルギー機器も急速に普及しており、家庭でのエネル
とするため、どういう世界をつくりたいのか、それを実現
ギーの効率的な運用は、より複雑になってきている。
するためにはどうあるべきかという議論から標準化を進め
そのため、これらの機器を制御し効率的な運用が行える
てきた。実際には、エネルギーマネジメントやホームヘル
HEMS(Home Energy Management System)の導入が
スケアなどの六つのアプリケーション領域を設定し、これ
不可欠であり、その際には、各メーカから提供されるコン
らの社会課題を解決できるサービスを提供できるような規
トローラや各機器が標準化されたインタフェースを採用す
格を目指した。図1にエコーネットが提供する生活支援サー
ることが必須となる。
ビスを示す。
ここでは、スマートハウス実現のための公知な標準イン
エコーネットコンソーシアム設立は、電気・家電業界各
の概要と、本規
社により構成された「21世紀のホームネットワークのあり
タフェースであるECHONET Lite規格
[1]
格の策定とスマートハウス普及・推進を行うエコーネット
方に関する調査研究委員会」
(1996年10月~ 1997年5月)
コンソーシアムの活動について紹介する。
にて、次世代ホームネットワークのあり方として、マルチ
図1.エコーネットが提供する生活支援サービス
ITUジャーナル Vol. 45 No. 4(2015, 4)
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特 集 会合報告 スマートハウス ~HEMSからの取組み~
ベンダによる設備系ネットワーク開発と国際標準化の推進
ており、インターネットプロトコルを使えるようにしたり、
について、1997年6月に経済産業省(当時、通商産業省)
通信メディアを自由に使えるようにしたいという要望も多
へ提案を行ったことから始まり、その提案を実行する組織
く、OSIレイヤの5層から7層を規定するのみとして、トラ
として1997年12月に設立された。その後、国からの支援も
[2]
ンスポートフリーとし、IPアドレスを使えるようにした。
頂き、標準規格策定と普及活動を続け、現在では合計240
更に、より多くの機器への実装を実現するため、ミドルウェ
社以上の会員を数えるまでになった。
ア部の軽装化も合わせて実施し、ECHONET Lite規格と
エコーネット規 格は、大 別するとECHONET規 格と
して制定し、2011年7月に会員に公開した。また、同年12月
ECHONET Lite規格の2種類がある。図2に、それぞれの
には、ECHONET Lite規格仕様書を広く一般に公開し、
プロトコルスタックを示す。
名実ともにオープンな規格となった。
3.ECHONET機器オブジェクト
エコーネット規格の根幹をなす機器オブジェクトの概要
を説明する。
家庭内のネットワークには、様々な企業が販売する様々
な機器が接続されることが想定され、むしろ管理しやすい
業務系以上の多様性に対応する事が要求される。例えば、
エアコンでは、センサ群の計測データと組み込みソフトの
プログラムで機能を実現しており、これらはメーカごとや
図2.ECHONET Lite規格とECHONE規格
機種ごとに実装の方法が異なるが、全てのエアコンを共通
に表現できるように抽象化したモデルとして機器オブジェ
ECHONET規格は、1999年に最初のバージョンを制定
クトを規格化している。それらの規格化されたオブジェク
し、2009年までに国際標準化まで完了させた。この過程で、
トのプロパティ値を参照したり制御したりすることで、ア
家電機器や設備機器のオブジェクトによるモデル化やプロ
プリケーションプログラムを変更せずに、全てのエアコン
トコルの標準化を行い、エコーネットの基本の仕組みをつ
に対応できるようになる。図3にECHONET機器オブジェ
くりあげた。また、当時は家庭で使える工事不要の通信メ
クトの概要を示す。
ディアもなく、特定小電力無線や電力線通信を用いた独自
また、ECHONET機器オブジェクトは、単にオン・オフ
の通信メディアを開発し、OSIレイヤの1層から7層まで規
などのリモコンコマンドレベルだけでなく、高機能機器の
定したものであった。
場合はそれらの機能も含めて規格化されていて、エネル
しかし、最近は各種の通信メディアが非常に発展してき
ギー管理アプリケーションに必要となる高度な制御も実現
図3.ECHONET機器オブジェクトの概要
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ITUジャーナル Vol. 45 No. 4(2015, 4)
可能にしている。
Electrotechnical Commission)の場で、デジュール
図4に定義されている機器オブジェクトの例を示す。
標準化活動を行っている。具体的には、エコーネットの仕
現時点で、火災センサ、人体検知センサといった、セキュ
様を6個の部分に分けて、IEC TC100とISO/IEC JTC1/
[3]
リティ関連機器、エアコン、照明といったエネルギーを消
SC25/WG1の二つのルートから提案し、ECHONET機器
費する家電機器及び、太陽光発電システム、家庭用燃料
オブジェクトについては、2013年10月に国際標準化を完了
電池、家庭用蓄電池などのいわゆる創蓄エネ機器等の90
し、ECHONET Liteプロトコルについても、2015年度早
種類以上のECHONET機器オブジェクトが定義されてい
期の規格化を目標に活動を継続している。
る。また、新規の機器に対応するために、エコーネットコ
また、スマートグリッドと需要家間のインタフェース規
ンソーシアムでは、会員からの提案により、機器オブジェ
格の標準化を行っているIEC TC57にて、ECHONET Lite
クトを改訂、新規策定を行う専門のワーキンググループを
を利用したユースケースの提案を行い、国際的な認知を高
常設し、拡張を続けている。
める活動も行っている。
4.国際標準化活動
5.ECHONET Liteの普及促進
図5にECHONET Lite規格の国際標準化活動について
経済産業省は、社会からの節電、省エネの要請に応え
示す。
るべく、スマートハウスに関わる標準化を推進するために、
エコーネットコンソーシアムでは、ISO(International
2011年11月に「JSCA国際標準化WG スマートハウス標準
Organization for Standardization)や、
IEC(International
化検討会」を発足。2012年2月に開催された第3回検討会
図4.ECHONET機器オブジェクトの種類
図5.国際標準化活動
ITUジャーナル Vol. 45 No. 4(2015, 4)
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特 集 会合報告 スマートハウス ~HEMSからの取組み~
にて、HEMS(コントローラ)と家庭内機器及び、HEMS
ムでは、認証仕様書を定め、第三者認証機関を認定して
とスマートメーター間の 標 準インタフェースとして、
ECHONET Lite認証制度を運営している。また、会員向
ECHONET Liteが推奨された。 このことにより、2012年
けの製品開発と認証取得支援の取組みとして、マルチベン
[4]
4月から、各メーカによるECHONET Lite機器の市場投入
ダでの相互接続を実際に試せる機会を提供する、プラグ
が始まった。
その後、
前述委員会の後継である
「JSCAスマー
フェストと呼ばれるイベントを定期的に開催している。
トハウス・ビル標準・事業促進検討会」を2012年6月に設
置し、本検討会の中で、スマートハウスにおける重点8機
6.おわりに
器(スマートメーター、太陽光発電、蓄電池、燃料電池、
スマートハウスにおける公知な標準インタフェースであ
電気自動車充電システム、エアコン、照明、給湯器)を定
るECHONET Lite規格と、エコーネットコンソーシアムの
を策定し、HEMS機器の普及を推
活動について紹介した。2014年4月に、エコーネットコン
進している。また、各企業における商品開発をサポートす
ソーシアムは、今までの任意団体という枠組みから、一般
るた めに、 神 奈 川 工 科 大 学 内に「HEMS(ECHONET
社団法人として新たな一歩を踏み出し、体制を強化しつつ、
Lite)認証支援センター」が開設され、ECHONET Lite
今まで以上に活動の場を広げて社会の要請に応えていく
規格を用いて開発した機器の認証申請支援や、製品開発
所存である。ECHONET Lite規格と製品の普及に向けた
環境、相互接続環境の提供を行っている。
活動を通して、日本がこれまで培ってきた家庭用電気機器
図6に、2014年12月現在のECHONET Lite機器の認証登
や住宅設備機器の利点を活かし、国際的なビジネス展開を
録件数を示す。前述の様な、産官学が連携したスマート
推進し、スマートでサスティナブルな社会実現に向けて貢
ハウス普及促進の取組みによって、HEMS(コントローラ
献していきたい。
め、運用ガイドライン
[5]
とエネルギーの見える化)機器の市場投入が促進されて
いることが分かる。このように、スマートハウス普及のス
テップとして、そのベースとなるHEMS機器の導入が進め
られているのが現状である。
ただし、真のスマートハウスを実現するためには、見え
る化による省エネだけではなく、創エネルギー機器や畜エ
ネルギー機器を最適制御して更に効果をあげるとともに、
ユーザにメリットが実感できるようなサービスを提供でき
るようにする必要がある。今後、次のステップとして、制
御される側の機器の市場投入が急がれ、重点8機器の商品
化の支援など、会員企業の商品化促進に貢献できる活動
を強化していく。
また、これらの機器の普及促進のためには、相互接続
参考文献
[1]エコーネットコンソーシアム:ECHONET Lite規 格 書
Ver.1.11、http://www.echonet.gr.jp/spec/
[2]情報通信技術委員会:TR-1043 ホームネットワーク通信イ
ンタフェース実装ガイドライン
[3]エコーネットコンソーシアム:APPENDIX ECHONET機
器 オ ブ ジ ェ ク ト 詳 細 規 定 Release F、http://www.
echonet.gr.jp/spec/
[4]経済産業省:JSCA国際標準化WGスマートハウス標準化
検討会とりまとめの公表、http://www.meti.go.jp/press/2
011/02/20120224007/20120224007.html
[5]経済産業省:スマートハウス・ビル標準・事業促進検討会
(第4回)‐ 配布資料、http://www.meti.go.jp/committee/
kenkyukai/shoujo/smart_house/004_haifu.html
性の確保も非常に重要である。エコーネットコンソーシア
図6.ECHONET Lite機器の認証件数(2014年12月現在)
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