タイ石油開発公社 - 日本格付研究所

15-I-0004
2015 年 4 月 2 日
株式会社日本格付研究所(JCR)は、以下のとおり信用格付の結果を公表します。
タイ石油開発公社
(証券コード:−)
【見通し変更】
外貨建長期発行体格付
格付の見通し
自国通貨建長期発行体格付
格付の見通し
A−
ネガティブ
A
ネガティブ
→
安定的
→
安定的
■格付事由
(1) 格付は、タイ政府のエネルギー政策におけるタイ石油開発公社(PTTEP)の重要性、並びに、法的地位や
資本、人的関係に見られるタイ政府との強固な関係などに基づき、タイ政府の格付(発行体格付:外貨建
A-/安定的、自国通貨建 A/安定的)を強く反映する。また、格付はこれらの要因を背景とした PTTEP の
十分なキャッシュフロー創出力や健全な財務状況なども考慮している。格付の見通し変更は、4 月 2 日に
公表したタイ政府の格付の見通し変更を反映している。
(2) PTTEP は、1985 年にタイ石油公社(PTT)の前身であるタイ石油公団により天然ガスや石油の探鉱・開
発・生産を行う子会社として設立された。PTT は PTTEP の株式の 65%を保有しており、PTT・PTTEP 共
に仏暦 2502 年(1959 年)予算手続法に規定される国営企業の地位にある。PTTEP の取締役には、政府お
よび PTT から人員が派遣されており、人的関係はきわめて強い。また、14 年には、PTTEP は PTT グル
ープの EBITDA の 70%を占めるなど、グループにおける重要性は高い。14 年、PTT が独占的に供給する
天然ガスを燃料とする発電は、総発電量の 67%に達しており、需要に見合う天然ガスの十分な供給およ
びその拡大が政府のエネルギー政策上の課題となっている。PTTEP は、石油・天然ガスの探鉱・開発・
生産を担う唯一の国営企業であり、14 年の国産天然ガスの生産シェアは 29%に達している。このように、
PTTEP はタイにおける電力の安定供給並びにエネルギー輸入依存度の低下を図るという国家エネルギー
政策の観点から、タイ政府にとって極めて重要な存在となっている。
(3) PTTEP は、タイ国内外における石油・天然ガスの探鉱・開発・生産並びに海外における天然資源プロジ
ェクトへの投資を行っており、14 年の天然ガスの販売量、確認埋蔵量はそれぞれ全体の 67%、76%を占
めている。PTTEP の手がけるプロジェクトは現在、11 ヵ国 43 ヵ所にわたり、タイ国内は 17 ヵ所、生産
中のプロジェクトは 22 ヵ所に上っている。14 年の探鉱・開発・生産事業については、掘削成功率が
58%、埋蔵資源の再調達率は 0.45 倍となった。14 年末時点での確認埋蔵量は 7.77 億 BOE であり、うち
60%がタイ国内に所在する。確認埋蔵量は生産量の拡大に伴い減少しており、14 年末の可採年数は 6 年
に低下している。当社は、埋蔵量と生産量の拡大に向けて、タイ国内のほか、ミャンマーなどの東南アジ
アの国々を始め、北米、アフリカ、オーストラリア等に進出している。14 年には、米国のヘスからタイ
国内の鉱区を買収し、生産量の拡大を図っている。
(4) 14 年の売上は、販売量の拡大により、前年比 8%増の 80 億ドルとなった。原油価格の下落は年の後半に
始まったことから、14 年の販売価格は前年比 3.4%減の平均 63.4 ドル/バレルにとどまったが、15 年には
大きく販売価格に反映される見込みである。14 年は、原油価格下落の影響を受け、モンタラ油田および
計画の見直しによるマリアナ・オイルサンドの減損約 10 億ドルを計上した。また、モンタラ油田の通年
での生産などから減価償却費が拡大し、14 年の純利益は前年比 63%減の 6.8 億ドルとなった。今後、原
油価格の下落により、当社の業績には下方圧力がかかる可能性があるものの、コストが低水準に抑えられ
ていることから、一定のマージンを確保できる見込みである。他方、14 年の EBITDA は前年比 2.5%増の
53 億ドル、EBITDA マージンは 69%とキャッシュフローは良好な水準に維持されている。14 年末の財務
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内容については、有利子負債の自己資本および EBITDA に対する比率は 0.34 倍、0.8 倍と各々の財務目標
である 0.5 倍、1.0 倍を下回っている。また、内部留保の積み上げにより自己資本比率は 53.9%と高水準
に維持されている。PTTEP は 15 年から 19 年にかけて 159 億ドルの投資計画を掲げているが、潤沢な営
業キャッシュフローと手元流動性により、財務の健全性は維持されると考えられる。
(担当)田村 喜彦・利根川
■格付対象
発行体:タイ石油開発公社(PTT Exploration and Production Public Company Limited)
【見通し変更】
対象
外貨建長期発行体格付
自国通貨建長期発行体格付
格付
見通し
AA
安定的
安定的
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浩司
格付提供方針に基づくその他開示事項
1. 信用格付を付与した年月日:2015 年 3 月 30 日
2. 信用格付の付与について代表して責任を有する者:藤本
主任格付アナリスト:田村 喜彦
幸一
3. 評価の前提・等級基準:
評価の前提および等級基準は、JCR のホームページ(http://www.jcr.co.jp)の「格付方針等」に「信用格付の種類
と記号の定義」
(2014 年 1 月 6 日)として掲載している。
4. 信用格付の付与にかかる方法の概要:
本件信用格付の付与にかかる方法の概要は、JCR のホームページ(http://www.jcr.co.jp)の「格付方針等」に、
「ソブリン・準ソブリンの信用格付方法」
(2014 年 11 月 7 日)
、
「都市ガス」
(2011 年 12 月 7 日)、
「石油」
(2013 年
5 月 21 日)、
「親子関係にある子会社の格付け」
(2007 年 12 月 14 日)として掲載している。
5. 格付関係者:
(発行体・債務者等)
タイ石油開発公社(PTT Exploration and Production Public Company Limited)
6. 本件信用格付の前提・意義・限界:
本件信用格付は、格付対象となる債務について約定通り履行される確実性の程度を等級をもって示すものである。
本件信用格付は、債務履行の確実性の程度に関しての JCR の現時点での総合的な意見の表明であり、当該確実性
の程度を完全に表示しているものではない。また、本件信用格付は、デフォルト率や損失の程度を予想するもので
はない。本件信用格付の評価の対象には、価格変動リスクや市場流動性リスクなど、債務履行の確実性の程度以外
の事項は含まれない。
本件信用格付は、格付対象の発行体の業績、規制などを含む業界環境などの変化に伴い見直され、変動する。ま
た、本件信用格付の付与にあたり利用した情報は、JCR が格付対象の発行体および正確で信頼すべき情報源から入
手したものであるが、当該情報には、人為的、機械的またはその他の理由により誤りが存在する可能性がある。
7. 本件信用格付に利用した主要な情報の概要および提供者:
・ 格付関係者が提供した監査済財務諸表
・ 格付関係者が提供した業績、経営方針などに関する資料および説明
8. 利用した主要な情報の品質を確保するために講じられた措置の概要:
JCR は、信用格付の審査の基礎をなす情報の品質確保についての方針を定めている。本件信用格付においては、
独立監査人による監査、発行体もしくは中立的な機関による対外公表、または担当格付アナリストによる検証など、
当該方針が求める要件を満たした情報を、審査の基礎をなす情報として利用した。
9. JCR に対して直近 1 年以内に講じられた監督上の措置:なし
■留意事項
本文書に記載された情報は、JCR が、発行体および正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、また
はその他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、JCR は、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、
的確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、JCR は、当該情報の誤り、遺漏、また
は当該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。JCR は、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、
金銭的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因
のいかんを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。また、JCR の格付は意見の表明であ
って、事実の表明ではなく、信用リスクの判断や個別の債券、コマーシャルペーパー等の購入、売却、保有の意思決定に関して何らの推奨をするも
のでもありません。JCR の格付は、情報の変更、情報の不足その他の事由により変更、中断、または撤回されることがあります。格付は原則として
発行体より手数料をいただいて行っております。JCR の格付データを含め、本文書に係る一切の権利は、JCR が保有しています。JCR の格付データ
を含め、本文書の一部または全部を問わず、JCR に無断で複製、翻案、改変等をすることは禁じられています。
■NRSRO 登録状況
JCR は、米国証券取引委員会の定める NRSRO(Nationally Recognized Statistical Rating Organization)の 5 つの信用格付クラスのうち、以下の 4 クラ
スに登録しています。(1)金融機関、ブローカー・ディーラー、(2)保険会社、(3)一般事業法人、(4)政府・地方自治体。
■本件に関するお問い合わせ先
情報サービス部
TEL:03-3544-7013 FAX:03-3544-7026
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http://www.jcr.co.jp