マミー田布施店の氷蓄熱システム

―― 実 施 例 ――
マミー田布施店の氷蓄熱システム
!中電工 柳井営業所 木 村 壮
!中電工 営業本部 空調管技術部 中 川 英 成
■キーワード/エコアイス・地球温暖化防止・ピークCO2低減率
1.はじめに
3.氷蓄熱システムの基本設計
田布施町は山口県南東部,瀬戸内海に面した町である。
氷蓄熱システムについての基本設計コンセプトは,次
温暖な気候に恵まれ,農産物や海産物を中心に,さまざ
のとおりである。
まな特産品がある。中でもイチヂクは山口県下No.1の
q
収穫量を誇り,全国でも有数の産地である。
電力使用量を昼間から夜間へ蓄熱運転により負荷移
行を行い,電力の負荷平準化に努める。
岸信介・佐藤栄作兄弟宰相輩出の地としても知られて
w
おり,今なおその生家を町内に見ることができる。また
昼間に比べ,CO2排出量の低い夜間電力を利用して
明治の文豪国木田独歩は青年期の多くをこの田布施で過
蓄熱するので,地球温暖化防止に寄与する。
e
ごしている。
熱源機器の圧縮により,受電設備費および契約電力
の低減をはかる。
1マミーは山口県東部を中心に店舗展開をしているス
r
昼間に使用する熱を夜間の安価な電力を使って蓄え
ーパーマーケットである。このたびマミー田布施店が進
るため,電力使用料金の削減がはかれる。また契約電
出するにあたって,エコアイスを導入した空調設備工事
力の縮小により,毎月の基本料金の低減化がはかれる
に携わったので,以下にその概要を紹介する。
ため,ランニングコストの低減ができる。さらに蓄熱
ピーク調整制度の利用による一層の電力料金の低減化
2.建物概要
建物名称 1マミー田布施店
がはかれる。
t
エコアイスの運転方式は大別してピークカットタイ
所 在 地 山口県熊毛郡田布施町
プ(冷媒ポンプ方式),ピークシフトタイプ(冷媒過冷
建物用途 スーパーマーケット
却方式),ピークシフト・ピークカット併用タイプの
延床面積 マミー 2,273g
3種類に分類できるが,本事例ではピークシフト機を
テナント 1,050g
導入した。図−1に運転電力量比,図−2にピーク時
構 造 鉄骨造地上1階(2棟共)
のCO2排出低減率を,また表−1にランニングコスト
設計監理 大和ハウス工業1
メリットを示す。
空調施工 1中電工 柳井営業所
工 期 平成12年7月∼平成12年9月
写真−1 建物外観
ヒートポンプとその応用 2001.11.No.56
― 28 ―
―― 実 施 例 ――
ピークカット率
42%
非蓄熱システム
電
力 100
量
比
︵ 80
%
︶ 60
外 40
気
︵
℃ 20
︶
0
エコ・アイス
昼間
夜間
夜間
0
2
4
6
8
エコ・アイス
・ピーク電力量 80%
・ピーク発生時刻 14:00
10 12
時 刻
14
16
18
20
22 時
非蓄熱システム
・ピーク電力量 100%
・ピーク発生時刻 14:00
写真−2 売り場
図−1 運転電力量比
非蓄熱システム
CO2 100
排
出 80
量
比
︵ 60
%
︶ 40
夜間
ピークCO2
低減率 34%
夜間
昼間
エコ・アイス
20
0
0
2
4
6
8
10 12 14
時 刻
エコ・アイス
・ピーク発生時刻 14:00
・ピークCO2排出低減率 34%
16 18
20
22 時
非蓄熱システム
・ピーク発生時刻 14:00
写真−3 マミー 室外機まわり
【CO2排出量換算】昼間:103g-C/kW 夜間:83g-C/kW
図−2 ピークCO2排出低減率
表−1 ランニングコストメリット指数比較
基
電
力
料
金
本
料
非蓄熱ビル用
エコ・アイスビル用
マルチ方式
マルチ方式
100
66
100
55
100
62
金
(業務用電力)
夏 季 従 量 料金
その他季従量料金
夜 間 従 量 料 金
ランニングコスト計
(非蓄熱ビル用マルチ方式を100とした)
写真−4 テナント 室外機まわり
4.空調設備概要
室内機 天井カセット形(青果作業場,グロッサリー)
4−1 主要空調機器
(冷)
14.0kW
q
天井カセット形
(惣菜)
マミー
× 2台
(冷)
11.2kW
氷蓄熱ヒートポンプエアコン(ビルマルチ)
× 2台
室外機 (冷)
45.0kW
(暖)
45.0kW
× 2台
天井カセット形
(鮮魚作業室)
(冷)
35.5kW
(暖)
35.5kW
× 2台
(冷)8.0kW
w
室内機 天井カセット形
(暖)9.0 kW
テナント
氷蓄熱ヒートポンプエアコン
(ビルマルチ)
(冷)
16.0kW
(暖)
18.0kW
× 7台
(冷)
14.0kW
(暖)
16.0kW
× 3台
室外機 (冷)
35.5kW
(冷)5.6kW
(暖)6.3kW
× 1台
室内機 天井カセット形
蓄熱槽 蓄熱量 920MJ
× 4台
(冷)
11.2kW
(暖)
31.5kW
(暖)
12.5kW
蓄熱槽 蓄熱量 920MJ
空気熱源冷房専用エアコン
室外機 (冷)
14.0kW
× 2台
(冷)
11.2kW
× 1台
― 29 ―
× 1台
× 4台
×12台
× 4台
ルームエアコン
(冷)2.8kW
(暖)3.2kW
× 1台
ヒートポンプとその応用 2001.
11.
No.56
―― 実 施 例 ――
AC
2 ×2
AC
1 ×2
屋外キュービクル
PAC
3
PAC
1
氷蓄熱ヒートポンプエアコン(ビルマルチ)C:45.0kW
室外機+蓄熱槽
H:45.0kW
AC
2
氷蓄熱ヒートポンプエアコン(ビルマルチ)C:35.5kW
室外機+蓄熱槽
H:35.5kW
AC
1-1
AC
2-1
カセット形室内ユニット
C:16.0kW
H:18.0kW
AC
2-3
AC
2-2
カセット形室内ユニット
C:14.0kW
H:16.0kW
PAC
1
R
R
AC
1
R
R
隣
地
境
界
線
青果作業場
PAC
1
R
R
屋上室外機置場
PAC 鮮魚作業場
3
D
R
隣地境界線
グロッサリー
PAC
1
D
D
休憩室
R
R
AC
2-3
R
R
R
R
AC
2-1
AC
2-1
R
R
PAC
2
R
D
D
R
R
R
隣
地
境
界
線
D
AC
1-1
R
D
AC
1-2
隣
地
境
界
線
AC
2-1
PAC 空気熱源冷房専用エアコン
2
C:11.2kW
RC
1
PAC
2
RC
1
ルームエアコン
AC
1
氷蓄熱ヒートポンプエアコン(ビルマルチ)C:35.5kW
室外機+蓄熱槽
H:35.5kW
AC
1-1
カセット形室内ユニット
C:11.2kW
H:12.5kW
RC
1
ルームエアコン
C: 2.8kW
H: 3.2kW
C: 2.8kW
H: 4.0kW
AC
2-2
R
AC
1-2
AC
1-1
精肉
D
隣地境界線
C:14.0kW
PAC 空気熱源ヒートポンプエアコン C: 8.0kW
3
H: 9.0kW
惣菜
R
AC
1-1
AC
1-1
PAC
1 空気熱源冷房専用エアコン
図−3 1階室内機配置平面図および屋上室外機配置平面図(マミー)
R
D
D
D
R
D
R
R
AC
1-1 ×12
RC
1
売り場
D
D
R
R
D
D
売り場
R
R
AC
1 ×4
事務室
RC
1
図−4 1階機器配置平面図
(テナント)
4−2 空調方式
当建物では,図−3・4に示すとおり,食料品店舗マ
5.おわりに
ミーとテナント棟の店舗の大部分を占める売り場エリア
本件はスーパーマーケットの店舗部分に大々的に氷蓄
に氷蓄熱空調システムを採用している。テナント棟につ
熱空調システムを採用した例である。長引く消費不況の
いては,すべてに氷蓄熱空調システムを採用している。
なか,大型スーパーやショッピングモールなどは一層の
生鮮食料品店舗マミーはビルマルチ4系統,テナント
コストダウンを追及されているなかで,ヒートポンプを
棟は2系統×2店舗とし,独立計量および故障対応にも
利用した氷蓄熱システムはランニングコスト低減に寄与
柔軟性をもたせている。
し,クリーンで効率のよい空調システムとして今後一層
エコアイスの夜間蓄冷運転時の騒音については,8台
の普及が期待される。
の室外機の配置を検討し,騒音計算の結果,距離減衰に
より隣地境界線上で運転騒音45dB以下をクリアできた。
ヒートポンプとその応用 2001.11.No.56
最後に,施工にあたり,お世話になりました建築主な
らびに関係各位の方々に,厚くお礼申しあげます。
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