平成26年度税制改正(法人編)(PDF/569KB)

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営相
談 平成26年度税制改正(法人編)
坂本和則
執行正浩
2014.9.1
相談部 東京相談室
相談部 大阪相談室
平成26年度税制改正において、法人課税では、デフレ脱却・経済再生に向けて民間投
資と消費を拡大するための措置を中心に改正が行われました。
今回は、それらの税制改正事項の中から、多くの会社に関係する主な改正項目の内容
を解説します。
1. 民間投資の拡大
[1]生産性向上設備投資促進税制の創設
青色申告書を提出する法人が、産業競争力強化法(以下「産競法」という)の施行日である平成 26
年1月 20 日から平成 29 年3月 31 日までの間に、生産等設備(注1)を構成する機械装置、工具、器
具備品、建物、建物附属設備、構築物およびソフトウエアで、同法に規定する生産性向上設備等(注
2)のうち一定規模以上のものの取得等をして、それを国内にあるその法人の事業の用に供した場合
は、
「その取得価額の 50%(建物・構築物は 25%)の特別償却」または「その取得価額の4%(建物・
構築物は2%)の税額控除(当期の法人税額の 20%が上限)
」の選択適用ができる制度で、業種・業
態、企業規模に関係なく利用可能です。
なお、施行日から平成 28 年3月 31 日までの間に取得等をしたものについては、
「即時償却(その
取得価額の 100%までの特別償却)
」または「その取得価額の5%(建物・構築物は3%)の税額控除」
の選択適用ができます。
注1:生産等設備とは、その法人の事業の用に直接供される減価償却資産で構成されているものをいう。なお、本店、
寄宿舎等の建物、事務用器具備品、福利厚生施設等は該当しない。
注2:生産性向上設備等とは、先端設備および生産ラインやオペレーションの改善に資する設備として産競法に規定す
るものをいう。
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相 談
2014.9.1
設備等の種類
~平成 28 年3月 31 日
~平成 29 年3月 31 日
機械装置など
即時償却
または5%税額控除
50%特別償却
または4%税額控除
建物・構築物
即時償却
または3%税額控除
25%特別償却
または2%税額控除
注:平成 26 年3月 31 日以前に終了する事業年度において取得等をした設備等については、平成 26 年
4月1日を含む事業年度において相当額の償却または税額控除ができることとする。
資料:財務省パンフレット「平成 26 年度税制改正」
(平成 26 年4月)
[2]中小企業投資促進税制の拡充・延長
中小企業者等(注1)が機械等を取得した場合の特別償却または税額控除制度について、その適用期
限が平成 29 年3月 31 日まで3年間延長されました。また、産競法の施行日(平成 26 年1月 20 日)
から平成 29 年3月 31 日までの間に取得等をした特定機械装置等のうち、前項(1)の「生産性向上
設備投資促進税制」の生産性向上設備等に該当するものについては、
「即時償却」または「取得価額の
7%(特定中小企業者等(注2)は 10%)の税額控除」の選択適用ができることとされました(税額
控除における控除限度超過額は1年間の繰越しが可能)
。
改正前は「30%の特別償却」または「7%の税額控除」が認められていた特定中小企業者等に対し、
30%の特別償却しか認められなかった資本金額 3,000 万円超1億円以下の中小企業者等も、改正後は
生産性向上設備等に該当するものに限り、
「即時償却」または7%の税額控除(控除限度超過額の1年
間の繰越しも含めて)
」の選択適用ができるようになりました。
なお、平成 26 年3月 31 日以前に終了する事業年度において取得等した設備等については、平成 26
年4月1日を含む事業年度で相当額の償却または税額控除等ができる特例が設けられています。
注1: 中小企業者等とは、資本金の額が1億円以下の法人などのうち、その発行済株式総数等の2分の1以
上が同一の大規模法人(資本金の額が1億円超などの一定の法人)に所有されていないことなど一定
の要件を満たす法人で、青色申告書を提出するものをいいます。
注2: 特定中小企業者等とは、中小企業者等のうち資本金の額が 3,000 万円以下の法人などで、青色申告
書を提出するものをいう。
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[3]研究開発税制の拡充
時限的措置である「試験研究費の増加額に係る税額控除(増加型)
」または「平均売上金額の 10%
を超える試験研究費に係る税額控除(高水準型)
」を選択適用できる制度の適用期限が平成 29 年3月
31 日まで3年間延長されました。また、増加型について、青色申告書を提出する法人の増加試験研究
費の額が比較試験研究費の額の5%を超え、かつ試験研究費の額が基準試験研究費の額を超える場合
は、増加試験研究費の額に 30%(増加割合が 30%未満の場合にはその増加割合、改正前は一律5%)
を乗じて計算した金額の税額控除(法人税額の 10%が限度)ができる制度に改組されました。
増加試験研究費の額 = 試験研究費の額 - 比較試験研究費の額
増加割合 = 増加試験研究費の額 ÷ 比較試験研究費の額
2. 消費の拡大
[1]所得拡大促進税制の拡充・延長
雇用者給与等支給額が増加した場合の税額控除制度(雇用者給与等支給増加額の 10%を当期の法人
税額の 10%(中小企業者等については 20%)を限度として控除)が以下のように見直され、その適用
期限が平成 30 年3月 31 日まで2年間延長されました。なお、雇用促進税制との併用はできません。
(1)雇用者給与等支給増加割合「5%以上」という要件が緩和され、適用年度の区分に応じて段階
的に変更されることとなりました。
給与等支給増加割合
平成 27 年4月1日前
に開始する適用年度
平成 27 年4月1日か
ら 平 成 28 年 3 月 31
日までの間に開始する
適用年度
平成 28 年4月1日か
ら平成 30 年3月 31 日
までの間に開始する適
用年度
2%以上
3%以上
5%以上
(2)平均給与等支給額に係る要件について、平均給与等支給額及び比較平均給与等支給額の計算の
基礎となる「国内雇用者に対する給与等」を「継続雇用者に対する給与等(注)」に見直したう
えで、
平均給与等支給額が比較平均給与等支給額を
「超えること」
(改正前は「以上であること」
)
とされました。
注:継続雇用者に対する給与等とは、適用年度およびその前年度において給与等の支給を受けた国内雇用者に
対する給与等のうち、雇用保険法の一般被保険者に対する給与等をいう。ただし、高年齢者等の雇用の安
定等に関する法律の継続雇用制度に基づき雇用される者に対する給与等を除く。
改正後の制度は、平成 26 年 4 月1日以後に終了する適用年度について適用されます。なお、同日
前に終了する事業年度(平成 25 年4月1日以後に開始し、旧制度の適用なし、新制度の要件満たす)
分の税額控除相当額は、一定の場合、平成 26 年4月1日以後最初に終了する事業年度で上乗せして控
除できる特例が設けられています。
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[2]復興特別法人税の1年前倒し廃止
企業の税負担を軽減し、賃金上昇につなげるきっかけとするため、復興特別法人税が1年前倒しで
廃止されました(原則として、課税期間は平成 26 年3月 31 日までの間に開始する事業年度をもって
終了)
。なお、復興特別法人税の課税期間終了後、法人が各事業年度において受け取る利子および配当
等に課される復興特別所得税の額は、各事業年度において利子および配当等に課される所得税の額と
合わせて、各事業年度の法人税の額から控除することとされました。この場合に、復興特別所得税の
額で法人税の額から控除しきれなかった金額があるときは、その金額は還付されます。
[3]交際費課税制度の見直し
交際費等の損金不算入制度が次のように見直され、その適用期限が平成 28 年3月 31 日まで2年間
延長されました。
(1)中小法人(資本金の額などが1億円以下の一定の法人)以外の法人も含めたすべての法人につ
いて、交際費等の額のうち、飲食のために支出する費用(注)の額の 50%が損金の額に算入す
ることとされました。平成 26 年 4 月 1 日以後に開始する事業年度について適用されます。
注:飲食のために支出する費用には、専らその法人の役員、従業員等に対する接待等のために支出する費用(い
わゆる社内接待費)は含まれない。
(2)中小法人に係る損金算入の特例(定額控除限度額 800 万円までの損金算入)について、上記(1)
との選択適用とし、その適用期限が平成 28 年3月 31 日まで2年間延長されました。
3. その他
[1]事業再編促進税制の創設
青色申告書を提出する法人が、産競法の施行日(平成 26 年1月 20 日)から平成 29 年3月 31 日ま
での間に、同法に基づく計画の認定を受けて、合併や会社分割など複数企業間で経営資源の融合によ
る事業再編を行う場合、その事業再編により設立された特定会社に対する出資金や貸付金の損失に備
えるために、出資金や貸付金の 70%を限度に準備金を積み立てたときは、その積立額を損金算入でき
る制度が創設されました(準備金は一定期間後5年間で取崩して益金算入)
。平成 26 年4月1日以後
に終了する事業年度について適用されますが、一定の経過措置があります。
[2]ベンチャー投資促進税制の創設
青色申告書を提出する法人が、産競法の施行日(平成 26 年1月 20 日)から平成 29 年3月 31 日ま
での間に、同法に基づき計画の認定を受けたベンチャーファンドを通じてベンチャー企業等へ出資し
た場合、その出資に係る損失に備えるために、出資金の 80%を限度に準備金を積み立てたときは、そ
の積み立てた金額を損金算入できる制度が創設されました(準備金は翌事業年度に全額を取崩し、益
金算入して洗い替え処理)
。平成 26 年4月1日以後に終了する事業年度について適用されます。
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[3]耐震改修投資促進措置の創設
平成 27 年3月 31 日までに耐震改修促進法の耐震診断結果の報告を行った青色申告書を提出する法
人が、平成 26 年4月1日からその報告日以後5年を経過する日までに耐震改修対象建築物の耐震改修
を行った場合に、その追加取得等した部分の取得価額の 25%の特別償却ができる制度が創設されました。
[4]地方法人課税の偏在是正
平成 26 年 10 月1日以後に開始する事業年度について、法人住民税法人税割(地方税)の税率を引
き下げ、その引き下げ分に相当する地方法人税(国税)が創設されるため、申告・納付が必要になり
ます。また、地方法人特別税(国税)の税率が引き下げられ、その分法人事業税(地方税)の税率が
引き上げられます。
[5]消費税の簡易課税みなし仕入率の見直し
簡易課税制度のみなし仕入率について、金融業および保険業は 60%(第4種事業)から 50%(第5
種事業)に、不動産業は 50%(第5種事業)から 40%(第6種事業)に引き下げられます。平成 27
年4月 1 日以後に開始する課税期間について適用されます。
[6]適用期限が延長される主な制度
(1)中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入特例の適用期限が平成 28 年3月 31 日
まで延長されました。
(2)特定資産の買換え特例の対象となる買換えについて見直しが行われ、適用期限が平成 29 年3月
31 日まで延長されました。ただし、
「長期所有土地等から国内にある土地・建物等への買換え
特例」の適用期限は平成 26 年 12 月 31 日のままで、平成 26 年度税制改正では延長されていま
せん。
(3)雇用促進税制の適用期限が平成 28 年3月 31 日まで延長されました。
内容は2014年7月30日時点の情報に基づいて作成されたものです。
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