取り組みに至った背景 - キャリア・コンサルネット

キャリア・コンサルティング好事例 [キャリア教育・若年者 26-2]
キャリア・コンサルネット
小学生へのキャリア教育を考える
~曲がり角の向こうに素晴らしい未来を見つける力を
如何に楽しく育むか?~
上村 眞智子 キャリアデザイン工房 有限会社オフィス UEMURA 代表
取り組みに至った背景
「赤毛のアン」の主人公アンは、想像力豊かな少女。彼女は言います。
"曲り角をまがったさきになにがあるのかは、わからないの。でも、きっといちばんよいも
のにちがいないと思うの。"(『赤毛のアン』村岡花子訳/新潮文庫)(米光一成)
想像力豊かで、自由な魂を持ち、大らかで思いがけない事をやってのけていた子供達が、
その想像の翼を窄め、大人の職業観によって敷かれたレールの上を走り、狭められた世界の
中で職業を選択する若者、或いは、現実から逃避し、社会との接触を拒み、引きこもる若者
へと変わって行く様になってどの位の時間が経ったでしょうか。
更には、終身雇用制から様々な雇用形態へと世の中は変化を見せ、「7・5・3」現象と
揶揄される大卒・高卒・中卒の若者が3年以内で早期離職する現象は企業、教育機関、そし
て家庭でも大きな問題となって来ました。
これらの問題を解決していく術として、
「生きる事・働く事」の大切さを芯としたキャリ
ア教育が小学生から導入されたことは、私達キャリア・コンサルタントが、その役目を果た
すべき時と受け止め、彼らの窄んだ想像の翼を広げ、素直で豊かな感性を育むムーブメント
を起こすことを企画立案し、実践致しました。
1/7
キャリア・コンサルティング好事例 [キャリア教育・若年者 26-2]
キャリア・コンサルネット
小学生向けキャリア教育に取り入れた事例とその成果
事例1
パレアフェスタ 親子塾
「私と僕の宝物探検隊」
~親子で楽しく“しごと”ば語らんね!!~
サー、質問で~す!給食のメニュー「カレーライス、野菜サラダ、ミカンゼリー、牛乳」が
出来上がるまでに、どんな人達がどんな働きをして下さっているでしょうか?
<目
標>
下記の目標が達成出来る内容である事
小
低
学
年
学
中
学
校
年
高
学 年
進路の探索・選択にかかわる基盤形成の時期
・自己及び他者への積極的関心の形成・発展
目
標
・身の回りの仕事や環境への関心・意欲の向上
・夢や希望、憧れる自己イメージの獲得
・勤労を重んじ目標に向かって努力する態度の形成
職業観・勤労観を育む学習プログラムの枠組み(例)
―職業的(進路)発達にかかわる諸能力の育成の視点からー より抜粋
<進め方>
1.親チーム、子供チームに分かれて、どんな職業の人が働いた事で、給食を食べる事が出
来るのかを競争して模造紙に書き出す
2.制限時間が過ぎたら、書き出した職業名をそれぞれ発表する
<成
果>
・直接的な材料(野菜、果物、肉等)や仕事に関わる人に留まらず、材料を運ぶ車、車が通
る道路、車を動かすガソリン、石油を運ぶタンカー、料理を作る建物、建物の建材、鍋、
包丁、器、調理をする人、作業着を作る人、天気予報士等まで限りなく多くの職業を考え
出すことが出来た。
・4つのメニューを作るだけでも、直接的・間接的に沢山の人が関わっている、働いている
んだと言うことへの気付きにつなげる事が出来た。
・お互い思いもつかなかった仕事の登場に、素直に拍手を送っている姿はほほえましく、良
好なコミュニケーションを交わす場の提供となった。
2/7
キャリア・コンサルティング好事例 [キャリア教育・若年者 26-2]
キャリア・コンサルネット
事例2
くまもと森都心プラザ
わくわく ジュニア ビジネススクール(小学生編)
<目標>
下記の4領域8能力と基礎的・汎用的能力を発揮できる内容である事
*小学校キャリア教育の手引き(改訂版)第1章 キャリア教育の必要性と意義(その2)より引用
<進め方>
1.フリートーク
(9時5分~9時20分)
「熊本について知ろう! 熊本の有名なものって 何?」
・食べ物
・場所(景色)
・人物(今。昔)
・歴史(歴史上の出来事)
・観光、お祭り
・スポーツ
・会社、企業
・産業(第1次、第2次、第3次、第 6 次)
*やり方:①二人一組を作って、自己紹介
:②二人で、熊本の有名なものを探しましょう!
:③ポストイットに記入
:④第1次、第2次、第3次、第 6 次の模造紙上に張りましょう!
3/7
キャリア・コンサルティング好事例 [キャリア教育・若年者 26-2]
キャリア・コンサルネット
2.みんなで一緒に考えましょう!
(9時20分~9時50分)
1)知っている熊本の有名な食べ物や産業を考えましょう
2)考えた中から、3つに絞りましょう!
何が出るかな???
3)グループを編成します
4)調べることを確認します
①何で作られているのかな?:原材料、生産地
②どこで、誰が、何時から、製造しているのかな?:場所、会社
③どこで、どこへ、販売されているのかな?:熊本県内外、国外
(例:小売店、コンビニ、量販店、ショッピングセンター、百貨店)
休憩10分を挟みながら移動
☆約束:図書館へは静かに移動し、静かに行動しましょう!
3.調べ隊出発!
(10時~10時30分)
1)図書館に行こう!
2)図書を探すぞ!
3)探した本を持って6階に戻りましょう!
4.まとめに入りましょう!
(10時35分~11時20分)
1)模造紙に書き込み開始!
2)役割分担を決めて、発表の練習を開始します
休憩10分
5.発表
(11時30分~11時50分)
1)各グループごとに発表します
(時間 10 分)
2)質問しましょう!
<成
果>
*第1次、第2次、第3次、第 6 次産業の内容と存在意義を知る事が出来た。
*働くことの大切さ・働く人の存在意義を学べた。
*図書館利用法を知る事が出来た。
*プレゼンテーション技法の習得までには、時間の関係上、厳しいものがあった。
*グループワークを通して共同作業の楽しさと意義を理解してもらえた。
*公共施設内での行動を通して、マナーを学ぶ機会を得た。
4/7
キャリア・コンサルティング好事例 [キャリア教育・若年者 26-2]
キャリア・コンサルネット
評価と今後の展開
給食メニューから色々な仕事や働く人の存在意義を見つけて行く事例①は、小学校にお
けるキャリア教育の目標達成が可能なプログラムであり、昨年4回目となった事例②ジュ
ニア・ビジネススクールは、そのプログラムを達成していくプロセスが、現在、教育の現場
で積極的に導入されているアクティブラーニングそのものであり、「キャリア発達に関わる
諸能力:4つの領域と8つの能力」と「基礎的・汎用的能力」の発達を促す好事例に成り得
ると、再認識することが出来ました。
「給食メニュー」は「制服或いは教科書が出来るまで」等と形を変えても良いし、PTA の
レクレーション活動として採用して頂くのも一考かと思います。
ジュニアビジネススクールは、郷土の産業を知り、興味を持たせ
ることが出来るので、ネーミングを変えて、小学校に留まらず更
に上級学校での実施、地域を跨いでのコンテスト開催なども
面白いのではないでしょうか。
好奇心旺盛な子供たちが想像の翼を思いっきり広げて豊かな発想力を発揮して仕事・職
業を意識するには、彼らを導く私達キャリア・コンサルタントにも、様々なスキルと共に豊
かな発想力や想像力、そして遊び心と楽しむ力が求められます。
私のお気に入りは、某飲料メーカーの CM「世界は誰かの仕事で出来ている」のキャッチ
コピー。様々な働き人が仕事に誇りを持って働く様を映像を通して伝えるのもキャリア教
育の一つと言えるでしょう。
固定概念に囚われず、自由な発想で楽しいプログラム満載のキャリア教育を行うことが、
曲がり角の向こうに素晴らしい未来を見つける力を得た子供達の誕生に繋がると信じ、今
からも頑張って参ります。
〔ジュニアビジネススクール・プレゼンの様子〕
5/7
キャリア・コンサルティング好事例 [キャリア教育・若年者 26-2]
キャリア・コンサルネット
6/7
キャリア・コンサルティング好事例 [キャリア教育・若年者 26-2]
キャリア・コンサルネット
導入先のコメント
小・中学生ジュニアビジネススクールは、熊本市の指定事業としてくまもと
森都心プラザビジネス支援センター主催で、平成24年から毎年夏休みを利
用して開催しております。
地元の経済を担う人材を育成するため、小・中学生を対象に早期の段階で仕
事や経済のしくみを学んで貰うことをスクール目的に掲げ、プラザ内の図書
館を利用した調べ学習や親子参加等、子ども達が楽しく学べるプログラムを
実施しております。
当初より、上村先生には講師として、平成26年度まで、延べ28校・87
名の小・中学生にご教授いただきました。
スクールの感想では、「楽しく学習ができた」、「新しくお友達ができてよ
かった」、「また参加したい」、「知らない事をわかりやすく教えてもらっ
た」など、参加の大多数の子ども達から前向きな回答をいただいています。
今後も、上村先生のご協力のもと更に発展させていきたいと考えておりま
す。
くまもと森都心プラザビジネス支援センター
センター長 福嶌 隆彦
上村




眞智子(うえむら まちこ)
キャリアデザイン工房 オフィス UEMURA 代表
2級キャリア・コンサルティング技能士
日本キャリア開発協会認定 CDA‐J.Master PFA(ピアファシリテーター)
日本キャリア開発協会九州支部熊本地区長
大学卒業後、日本電信電話公社九州電気通信局(現:NTT 西日本)局長室
秘書課に秘書として勤務。結婚退職し、育児に一段落した後、専門学校で
ビジネスマナー講師として若年者と関わり始めて 26 年を迎える。
2001 年 4 月、熊本初のキャリアカウンセラー(CDA)取得後、有限会社オフィス UEMURA、
その後、CDA 仲間と有限責任事業組合キャリア・プロデュースを設立。以来、教育機関でのキ
ャリア教育セミナー、行政機関並びに各事業団体主催の就職支援セミナー、企業内でビジネスス
キルやコミュニケーションスキルアップトレーニング、男女脳差理解によるダイバーシティ・コ
ミュニケーション講座等を開催。
小学生から新卒学生、再就職や転職、企業内でのキャリアアップを目指す人々のキャリア開発・
キャリア支援へ意欲的に従事。
7/7