同 行 三 人 小野澤繁雄

エッ セ イ 教 室 「 清 紫 会 」 の 作 品 よ り
同行三人
小野澤繁雄 実家の片づけに往復することが頻繁になってからもずいぶん時間がたった。こちらは定年退職後
も元の職場に週三日の頻度で通っているので、まだ日程の調整の必要があるが、土曜日はあいてい
る。勢い土曜日にゆくことになる。こちらはワゴン車で、
兄さんは鉄道で、
途中駅での待ちあわせだ。
別途、市のクリーンセンターがやっている平日を選ぶ。家内にためておいたものを運び込むのだ。
この週末は、近くに住む下の妹も同行した。
多くごみとなるものからそうでないものを選別する作業ももう終盤となっている。前回は廊下に
置かれた棚から、もう最後といっていいアルバム類、写真がみつかったことで、二人とも心が騒い
だも の だ 。
駅に急いでいる間、車のなかでいろいろ妹とはなしができた。仕事のこと家族のことといろいろ。
魔法瓶のコーヒーをもらい、自家製の漬物に手を出したりする。醬油のもろみで漬けたものだとい
う。 県 境 の 山 々 が 見 え て い る 。
兄さんは、駅ナカでじかんつぶししている間に、酒饅や麩菓子に手を出したらしい。
途中、夫婦でやっている手打ちうどんの店で昼をとった。肉うどんとし、天ぷらを追加する。支
払い は も う 決 ま っ た よ う に 兄 さ ん だ 。
実家近くのコンビニで小休止する。ここもいつも通り。高速道が走る山際を雲がながれてゆく。
台所の片づけは終わっていたが、食器類が処分できないでいた。もちかえって使うものを妹にえ
らんでもらう。じぶんも湯呑を、九谷、有田とあるものの幾組かを選んだ。壊れにくく洗いやすい、
そんな湯呑をながく使っていたから。もう壊れたっていい。
洗面所の下の棚が片づいていないことに妹が気づいた。男二人では気づかなかった場所だ。
家の裏手、共同墓地にいってみた。新しい仏が出ていないかとなり伝いにみてまわる。
帰路も三人でいろいろな話をした。テニスのこと酒のことそれぞれ。
肩を近くに暮らしていた日々
は別な世界のことのように遠いが、今は身近にはなすことが多いのだった。
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展景 No. 77
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