中小企業銀行 - 日本格付研究所

14-I-0095
2015 年 3 月 31 日
株式会社日本格付研究所(JCR)は、以下のとおり信用格付の結果を公表します。
中小企業銀行
(証券コード:−)
【据置】
外貨建長期発行体格付
格付の見通し
自国通貨建長期発行体格付
格付の見通し
A+
安定的
AA−
安定的
■格付事由
(1) 中小企業銀行(Industrial Bank of Korea(IBK)
)は、中小企業銀行法(IBK 法)に基づき 1961 年に設立さ
れた、中小企業の育成・支援を目的とする韓国の政府系金融機関。韓国証券取引所に上場しているが、韓
国政府が事実上、株式の 61.7%を保有している。当行は、設立根拠法である IBK 法において、資本不足
が生じた場合の政府による損失補填義務が規定されるなど、韓国政府による強固な法的保護を享受してい
る。こうした韓国政府との強固な関係を背景に、当行の格付は韓国政府の信用力を反映している。現朴政
権は、政府系金融機関による金融危機時の流動性供給機能は今後とも重要であるとして、前政権が進めて
きた政府系金融機関の完全民営化方針を転換すると共に、経済革新 3 ヵ年計画の柱のひとつである中小企
業振興の手段として積極的に当行を活用する方針を示している。当行は、中小企業向け金融支援を担当す
る政策金融機関として、引き続き、政府の経済政策のなかで、重要な役割を担っていくと見られる。以上
を踏まえ、格付を据え置き、見通しを安定的とした。
(2) IBK は、中小企業の育成・支援を目的とする政府系金融機関として、1961 年に IBK 法に基づき韓国政府
により設立された。同法では、①IBK の毎年の純損失は準備金で充当されるものの、準備金充当後にも純
損失が残る場合には、政府が残る損失を補填しなければならない(第 43 条)
、②IBK の総裁は韓国大統領
により任命され、他の取締役および監査役は金融監督委員会(FSC)により任命される(第 26 条)、③
IBK は、会計年度開始1ヵ月前に事業計画と資金計画とからなる年度業務計画を FSC に提出し、その承
認を得なければならない(第 35 条)
、④IBK は払込資本と準備金の合計額の 20 倍を限度として、中小企
業金融債を発行することができる(第 36-2 条)――等、法的保護を含む政府との強固な関係が規定され
ている。94 年の株式公開(IPO)以降、IBK の株式の一部は民間投資家が保有。97 年の IBK 法改正では、
「政府の持株比率を 50%超に維持する」との条項が削除された。しかしながらその後も、政府は、一貫
して株式の過半数を保有しているほか、政策的なニーズに基づき追加出資を行ってきている。現時点での
政府による当行の普通株式の直接所有比率は 50.6%。これに政府系金融機関である韓国産業銀行(KDB)
の所有比率 8.8%、韓国輸出入銀行(KEXIM)の所有比率 2.3%を合わせた直接・間接的な所有比率は
61.7%に達する。
(3) 韓国政府は従来、将来的に IBK を民営化する方針を打ち出していた。07 年 9 月には、当時の財政経済部
が民営化計画を発表。IBK の中小企業金融専門の商業銀行への転換や中小企業政策金融の役割の他機関へ
の移管などにかかる検討を踏まえた基本計画を 08 年末までに策定し、市場環境が整った折に民営化を推
進する、との方針が打ち出された。しかし、08 年秋以降の経済・金融情勢の悪化を受け、政府は民営化
基本計画の策定を先送りすると共に、中小企業支援のために当行に追加出資も行った。13 年 2 月に発足
した現朴槿惠政権は、政府系金融機関が危機時における流動性供給機能は今後とも重要であるとの認識に
基づき前政権が進めてきた政府系金融機関の民営化路線を転換し、輸出型大企業に依存した経済構造から
の脱却を目指すために中小企業支援に力を入れる方針を示している。13 年 8 月には FSC が「政策金融機
関の役割の再編計画」を発表。IBK については、出融資を組み合わせた統合的な中小企業向け金融支援が
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規定された。また、民営化の停止を受け、企画財政部は 14 年 1 月、IBK を再び公的機関管理法の適用対
象に再指定した。中小企業向け金融支援を担当する政策金融機関として、引き続き、政府の経済政策のな
かで、重要な役割を担っていくと見られる。今後、将来的に民営化にかかる検討が再開された場合には、
JCR は、①具体的な計画と政府保有比率の見通し②民営化後のビジネスモデルと政府関与の形態・程度③
IBK 法に基づく政府による損失補填義務の取り扱い④既存債務の取り扱い(経過措置など)⑤その他の当
行と政府との関係に強く影響する要因などを多角的に評価し、総合的に判断していく。
(4) 当行の総資産規模(単体ベース)は、14/12 期末時点で 222.9 兆ウォン。IBK は、韓国における唯一の中
小企業専門政策銀行として、国内中小企業金融市場において主導的地位を確立している。14/12 期末の中
小企業向け融資における市場シェアは 23%。民間商業銀行と競争しているものの、景気循環に左右され
ない融資姿勢や、蓄積された専門性を基にニーズに合わせた多様なサービスを提供することで、市場シェ
アは緩やかに上昇を続けている。08 年以降、国内の景気悪化を受け民間商業銀行が中小企業向け貸出を
抑制するなかでも、当行は一貫して貸出を拡大。14/12 期末の貸出残高(単体ベース)は 152 兆ウォンと、
前期末から 6.8%増加した。当行は中央銀行の規定により、IBK 法 33 条および 36 条による調達資金の
70%以上を中小企業向けとすることが義務づけられており、14/12 期末時点でその割合は 77%となってい
る(残りは個人向けが 19%、大企業向け等が 4.7%等)
。中小企業向け貸出の 6 割超を製造業向けが占め
ている。
(5) 当行は、中小企業向けの政策金融を中心に手がけているにもかかわらず、資金調達にかかる法規制上の優
遇措置や慎重な信用リスク管理体制、担保・保証などの信用補完の活用などにより、収益性や資産の質な
ど、財務の健全性について、国内の大手民間商業銀行と遜色のない水準を保持している。14/12 期には、
低金利環境下が続く中、純金利マージン(NIM)が 13/12 期の 1.9%から 2.0%まで改善し、連結ベースの
純利益は前期比 21%増となる 1.03 兆ウォンとなった。与信費用も、収益で十分カバーできる範囲に抑え
られている。不良債権比率も、積極的な不良債権処理などが寄与し、14/12 期末は 1.40%と 13/12 期末の
1.38%からほぼ横ばいで推移している。資本によるバッファーも、14/12 期末の BIS 自己資本比率は
12.4%、Tier I 比率は 9.0%と、引き続き良好な水準を維持している。
(担当)増田 篤・田村 喜彦
■格付対象
発行体:中小企業銀行(Industrial Bank of Korea)
【据置】
対象
外貨建長期発行体格付
自国通貨建長期発行体格付
格付
見通し
A+
AA-
安定的
安定的
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格付提供方針に基づくその他開示事項
1. 信用格付を付与した年月日:2015 年 3 月 26 日
2. 信用格付の付与について代表して責任を有する者:藤本
主任格付アナリスト:増田 篤
幸一
3. 評価の前提・等級基準:
評価の前提および等級基準は、JCR のホームページ(http://www.jcr.co.jp)の「格付方針等」に「信用格付の種類
と記号の定義」
(2014 年 1 月 6 日)として掲載している。
4. 信用格付の付与にかかる方法の概要:
本件信用格付の付与にかかる方法の概要は、JCR のホームページ(http://www.jcr.co.jp)の「格付方針等」に、
「ソブリン・準ソブリンの信用格付方法」
(2014 年 11 月 7 日)
、
「銀行等」
(2014 年 5 月 8 日)として掲載している。
5. 格付関係者:
(発行体・債務者等)
中小企業銀行(Industrial Bank of Korea)
6. 本件信用格付の前提・意義・限界:
本件信用格付は、格付対象となる債務について約定通り履行される確実性の程度を等級をもって示すものである。
本件信用格付は、債務履行の確実性の程度に関しての JCR の現時点での総合的な意見の表明であり、当該確実性
の程度を完全に表示しているものではない。また、本件信用格付は、デフォルト率や損失の程度を予想するもので
はない。本件信用格付の評価の対象には、価格変動リスクや市場流動性リスクなど、債務履行の確実性の程度以外
の事項は含まれない。
本件信用格付は、格付対象の発行体の業績、規制などを含む業界環境などの変化に伴い見直され、変動する。ま
た、本件信用格付の付与にあたり利用した情報は、JCR が格付対象の発行体および正確で信頼すべき情報源から入
手したものであるが、当該情報には、人為的、機械的またはその他の理由により誤りが存在する可能性がある。
7. 本件信用格付に利用した主要な情報の概要および提供者:
・ 格付関係者が提供した監査済財務諸表
・ 格付関係者が提供した業績、経営方針などに関する資料および説明
8. 利用した主要な情報の品質を確保するために講じられた措置の概要:
JCR は、信用格付の審査の基礎をなす情報の品質確保についての方針を定めている。本件信用格付においては、
独立監査人による監査、発行体もしくは中立的な機関による対外公表、または担当格付アナリストによる検証など、
当該方針が求める要件を満たした情報を、審査の基礎をなす情報として利用した。
9. JCR に対して直近 1 年以内に講じられた監督上の措置:なし
■留意事項
本文書に記載された情報は、JCR が、発行体および正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、また
はその他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、JCR は、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、
的確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、JCR は、当該情報の誤り、遺漏、また
は当該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。JCR は、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、
金銭的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因
のいかんを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。また、JCR の格付は意見の表明であ
って、事実の表明ではなく、信用リスクの判断や個別の債券、コマーシャルペーパー等の購入、売却、保有の意思決定に関して何らの推奨をするも
のでもありません。JCR の格付は、情報の変更、情報の不足その他の事由により変更、中断、または撤回されることがあります。格付は原則として
発行体より手数料をいただいて行っております。JCR の格付データを含め、本文書に係る一切の権利は、JCR が保有しています。JCR の格付データ
を含め、本文書の一部または全部を問わず、JCR に無断で複製、翻案、改変等をすることは禁じられています。
■NRSRO 登録状況
JCR は、米国証券取引委員会の定める NRSRO(Nationally Recognized Statistical Rating Organization)の 5 つの信用格付クラスのうち、以下の 4 クラ
スに登録しています。(1)金融機関、ブローカー・ディーラー、(2)保険会社、(3)一般事業法人、(4)政府・地方自治体。
■本件に関するお問い合わせ先
情報サービス部
TEL:03-3544-7013 FAX:03-3544-7026
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http://www.jcr.co.jp