新 規 乳 酸 菌 宿 主 ベ ク タ ー 系 の 構 築 と食 品 加 工 へ の 利 用 に 関 す る試 験 研 究 応 用 技 術 部 生 物 工 学 科 池 田 隆幸 八 十 川 大 輔 長 島 浩 二 1.研 究 の 目的 と概 要 乳酸菌 は多 くの発酵食 品製造 に関与す る重 要な菌 で ある。特 に本道 にお い ては各種乳 製 品、味噌、醤油、漬物 な どの乳酸 菌 関与食 品の生 産額 が食品工 業出荷額 の約 15%を 占 めている。 これ らの食 品 の付加価値 をさらに高 めるために、乳 酸菌改良技術 の確 立 は極 めて重要な研 究課題 の 一 つ で ある。 中で も、 味噌、醤油、漬物 な どの農産 品発酵食 品 に 極 めて重 要な役割 を果 た してい るたdi… ‖幅 と呼 ばれる乳酸菌 の育種改良技 術 は、乳関 係 の乳 酸菌 に比 べ て非常 に研 究が遅れて い る。 一方、遺伝子組換 え技術 は近年急速 に発 展 した微 生物 育種改良技 術 で あ り、新規食 品 の 開発や食 品製造 プ ロセスの改善 のため に は必要不可欠 な先 端技術 で ある。 この様 な観点 か ら、本試験研究 はPediOcOccυ を中心 と 幅 ー る す 乳酸菌の育種 改良 のための宿 主 ベ クタ 系 の 開発 と有用形質 の探索導入技 術 を確 立 し、 食 品工 業 へ の 目的 と して行 っている。本 年度 は、遺伝子組換 えに必要なプラス ミ ド ベ ク ター として、味噌由来乳 酸菌Ё18株か ら得 られた プラスミ ド pSKPB18の 解析 を行 った。 2.試 験研 究 の 方法 pSKPB18を 分離 した味噌 由来好塩性乳 酸菌 B18株 か ら大量調整 し、制限酵 素 B“劇I、 EcoRH、題劇Ⅲ 、KpnI、PsI、 助Л、xbal、xrloIで 切断 し、制限酵 素地図 を作製 した 。次 に、 ー クェ ンス を シ pSKPB18の 決定す るために、pSKPB18を 20RIお よびHindⅢ切断部位 で大 腸 菌 プラス ミ ドpUC19と 連結 し、得 られた組換 えプラス ミ ドで大腸菌JMlo9株 を形質転換 した。得 られたア ンピシ リン耐性形 質転換株 か らプラス ミ ドをアルカ リ法 で 調製 し、 日 的 の組換 えプラス ミ ドを制限酵 素解析 で確認 した。 さらに、得 られた組換 えプラス ミ ド を、宝 酒造 (株)Dettion Kitを用 い て、順次pSKPB18の 欠失 プラス ミ ドを作製 し、 同様 に大腸 菌JMlo9株 か ら調製 したプラス ミ ドを制限酵素解析 で確認 した。 この られた 得 欠失 プラス ミ ド約 10o種類 を、ポ リエ チ レング リコール60∞ とフェノ ー ル によって タ ンパ 除 ク 後精製 した。それぞれの欠失 プラス ミ ドlμ gを 用 い て、PERKIN ELMERttTaq Dye Deoxy Terrninator Cycle Seqencingキ ッ トを用 い た ダイデオキシチ ェー ン ター ミネー シ ョン 法 で シー クエ ンス 反応 を行 い 、pSKPB18の 全塩基配列 をアプライ ドバ イオシステムズ社 DNAシ ー クエ ンサ ー373Aを 用 い て決定 した。得 られた塩 基配列 は、 帝人 シス テム テクノ ロ ジー (株)DNA解 析 ソフ トウエ アGene WorksおよびbNAデ ー ターベ ース GenBankを 用 い て解析 した。 3.実 験 結 果 組換えプラスミ ドの作製】 【 pSKPB18を制限酵素EcoRI切断 し、大腸菌プラスミ ドベクターpuc19のEcoRI部 位に連結 し大腸菌JM109株を形質転換 した。得 られたアンピシリン耐性大腸菌の中から、目的通 り -43- p U C 1 9 の E c o R I 部位 にp S K P B 1 8 が 連結 された組換 え プ ラス ミ ドp S K E 1 0 1 お よびp S K E 1 0 1 R を 得 た。 同様 に してH i n d Ⅲ部位 を用 い てp S K E 1 0 2 、 p S K E 1 0 2 R を 作 製 した 。 欠失プラスミドの作製】 【 得 られ た 組換 え プ ラス ミ ドp S K E 1 0 1 、 p S K E 1 0 1 R 、 p S K E 1 0 2 、 p S K E 1 0 2 R の それぞ れ に つ い て 、欠失 反応後 大腸 菌 J M 1 0 9 株 を形 質転換 した。得 られ た ア ン ピシ リ ン耐性株 の 中か ら目的の欠失 プラスミ ドを保 有す る株 を選択 し、約200塩基対ず つ欠失 したプラス ミ ドを それぞ25種類ずつ分離 した。 【 pSKPB18塩 基配列 の決定】 欠失 プラス ミ ドをそれぞれシー クエ ンス反応 した後、DNAシ ー クエ ンサーで塩基配列 を決定 した。遺伝子解析 ソフ トウエ アGene Worksで 解析 した結果、pSKPB18は全長3350べ ―スペ ア (bp)で、遺伝子 にお ける塩基 の割合 であ るグアニ ン (G)+シ トシン (C)含 有率 は36%で 、染色体のGC含 有率 である40%よ りも低 いこ とが明か となった。50アミノ 酸以上の蛋 白質 をコー ドで きるオー プン リーデ イングフレーム (oRF)を 検索 した とこ ろ、下 図 に示 した 3カ 所 にORFが 存在 した。デー ターベ ース検索 では、現在 までの とこ ろ相同性 の高 いDNA塩 基配列 は確認 されなか った。 EcoR! 3an!‖ pSKPB18 Pソυll 3350 bp Hlir7d‖ │ Hlir7d‖ l 4.要 約 北海道産味噌由来好塩性乳酸菌 からプラス ミ ドpSKPB18を分離 し、その制限酵素地図 を作 製 した。その知見 をもとに、大腸 菌 との組換え プラス ミ ド4種 類 を作製後それぞれ の欠失プラス ミ ドを用 いてpSKPB18の全塩基配列3350bpを決定 した。その 中には、 3カ 所 の蛋白質 をコー ドで きるORFが 存在 した。本試験研究に よ り、世界で初めて好塩性 の 乳酸菌 プラス ミ ドの塩基配列 が明 かとな り、今後 の農産物発酵食品に関与する乳酸菌 の 育種改良技術 が一段 と加速 で きると考 えられる。 -44-
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